序論

肝臓は私たちの体の中で非常に重要な役割を果たしていますが、その重要性にもかかわらず、この臓器がんにかかるリスクについてはあまり知られていないことが多いです。肝臓がんは初期症状がほとんど現れないため、「沈黙の臓器」とも称されます。進行がんに移行すると、非常に深刻な健康状態を引き起こす可能性があり、治療が難しくなります。本記事では、肝臓がんの重要な役割とその兆候、進行時の症状、早期発見の重要性について詳しく説明していきます。これにより、健康維持のための実践的な対策を考える手助けとなれば幸いです。

肝臓の働きとは?

肝臓の基本機能

肝臓は「体の工場」とも称されるほど、多くの重要な機能を持っています。以下の3つの主な機能について説明します:

肝臓が正常に機能しなくなると、人間は生きていくことが非常に困難となります。現代の医療技術では、腎臓の代わりに機能する透析や、心臓の代わりに人工心臓を用いることができますが、肝臓に関しては代替となる「人工肝臓」はまだ開発されていません。そのため、劇症肝炎や急性肝不全などで肝臓が機能しなくなった場合は早急に肝移植が必要です。

肝臓がんについて−原発性と転移性がある

肝臓がんは、大きく「原発性肝がん」と「転移性肝がん」に分けられます。

原発性肝がん

原発性肝がんは、肝臓の細胞自体ががん化したものです。肝臓を構成する主な細胞は肝細胞で、この肝細胞にできたがんを「肝細胞がん」と呼びます。また、肝臓には胆汁を流す胆管があり、この胆管にできたがんを「胆管細胞がん」と呼びます。本邦では、原発性肝がんの95%が肝細胞がん、約4%が胆管細胞がんです。

転移性肝がん

転移性肝がんは、肝臓以外の臓器に生じたがんが肝臓に転移してきたものです。肝臓は血管が非常に多く、栄養豊富でがんが着床しやすい環境を持つため、転移のリスクが高い臓器の一つです。

肝臓がんの初期症状は?

初期で自覚できる症状はほぼない

肝臓がんは初期段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、「沈黙の臓器」と呼ばれるのです。これは他の一部のがんと同様で、症状が出たときにはすでに進行している場合が多いという特徴があります。

肝臓がんの進行による症状は?

肝不全の症状として腹水やむくみ、肝性脳症が起こる

肝臓がんが進行すると、以下のような肝不全の症状が現れることがあります:

まれな破裂による出血

肝臓の表面にできたがんが大きくなると、まれにがん表面が破裂し、出血を引き起こします。これは非常に強い痛みを伴うことがあり、出血量が多い場合はショック状態に陥ることもあるので注意が必要です。

進行しても痛みは少ない

一部のがんでは進行とともに痛みが増し、鎮痛薬が必要になることがあります。しかし、肝臓がんの場合、進行しても痛みを感じることはまれで、鎮痛薬が使用されることもほとんどありません。

症状が現れにくい理由は?

肝臓の余力が大きい

肝臓がんが初期段階では自覚症状がほとんどなく、進行しても症状が現れにくい理由として、肝臓の余力が非常に大きいことが挙げられます。肝臓は50%程度まで機能が低下しても、残りの機能で通常の役割を果たすことができる臓器です。このため、肝不全として症状が出るのは肝臓がかなりダメージを受けた段階です。

肝臓がんで黄疸やかゆみの症状が起こる原因

閉塞性黄疸によるもの

肝臓がんの患者さんの中には、黄疸(皮膚や粘膜が黄色になる症状)が現れることがあります。これは胆管細胞がんが胆管を閉塞することにより、ビリルビンという物質が血液中に増加し、黄疸を引き起こします。ビリルビン濃度の上昇によって、皮膚のかゆみも誘発されることがあります。

原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変)によるもの

原発性胆汁性胆管炎は、慢性的に進行する胆汁うっ滞性肝疾患であり、これが原因で肝臓がんを発症する人もいます。この場合も、胆汁の流れが妨げられることで黄疸やかゆみが生じます。

肝臓がんの早期発見とその重要性

肝炎の定期検査や治療の段階で発見されることが多い

肝臓がんは症状が現れにくい疾患であるため、定期検査や治療の段階での早期発見が重要です。肝臓がんの原因の多くを占めるC型肝炎やB型肝炎に感染している方は、定期的な検査を受けることが推奨されています。これにより、肝臓がんの発症リスクが高いとされる人々が早期にがんを発見する可能性が高まります。

定期検査の重要性

以下に日本で肝臓がんの早期発見のために推奨されている定期検査の例を挙げます:

記事のテーマに関連する一般的な質問

1. 肝臓がんのリスクを減らすにはどうすればよいですか?

回答

肝臓がんのリスクを減らすためには、生活習慣の改善や定期的な健康チェックが重要です。

説明

肝臓がんの多くはC型肝炎やB型肝炎に感染することで発症するため、これらの感染を予防することが基本です。また、アルコールの過剰摂取や肥満による脂肪肝も肝臓がんのリスクを高めるため、適切な食事と運動を心がけることが推奨されます。

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2. 肝臓がんの診断方法にはどのようなものがありますか?

回答

肝臓がんの診断には、血液検査、画像診断、肝生検などが用いられます。

説明

肝臓がんの診断は複数の方法を組み合わせて行われます。血液検査では、がんのマーカーとなる物質の濃度を測定することができます。画像診断(超音波、CT、MRI)は、肝臓の構造や異常を詳細に観察するために使用されます。肝生検は、肝臓の組織を直接採取してがん細胞の有無を確認する方法です。

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3. 肝臓がんの治療方法について教えてください。

回答

肝臓がんの治療方法には、外科手術、放射線治療、化学療法、ラジオ波焼灼療法(RFA)などがあります。

説明

治療方法はがんの進行度や患者の体力、健康状態によって異なります。外科手術は肝臓がんの最も根本的な治療方法で、がん細胞を完全に取り除くことを目指します。放射線治療や化学療法は、手術が難しい場合や再発防止のために用いられます。ラジオ波焼灼療法は、特定の部位に高周波波を当ててがん細胞を焼き切る方法です。

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結論と推奨事項

結論

肝臓がんは初期症状がほとんど現れず、進行してからようやく症状が出ることが多い、非常に忍び寄る病です。しかし、定期的な健康チェックや注意深い生活習慣の管理によって、肝臓がんのリスクを大幅に低減することが可能です。肝臓の働き、肝臓がんの症状、診断方法、治療法についての知識を持つことは早期発見と効果的な治療に繋がります。

推奨事項

参考文献

  1. 国立国際医療研究センター. 肝臓がん診療ガイドライン.
  2. 日本肝臓学会. 肝硬変診療ガイドライン.
  3. 厚生労働省. C型肝炎診療の手引き.
  4. Mayo Clinic. Hepatocellular carcinoma.