序論

脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)という言葉を聞くと、多くの人が恐怖や不安を感じるかもしれません。これは脳の血管の一部が風船のように膨らんだ状態で、そのまま放置しておくとくも膜下出血などの重大な脳疾患を引き起こすリスクがあります。しかし、脳動脈瘤が発見された場合、その全てがすぐに治療が必要となるわけではありません。治療が本当に必要なのか、その判断基準と最適な治療方法について詳しく解説します。脳動脈瘤の適切な対処方法を理解することで、適切な治療を選択し、不必要な不安を軽減することができるはずです。

この記事では、脳動脈瘤について以下の点に焦点を当てて解説していきます:

この記事が、脳動脈瘤と診断された方々が最適な治療方法を選択する一助となれば幸いです。

参考資料/専門的相談

この記事は、医学情報サイト「メディカルノート」の資料を基に作成しています。また、坂本真幸 先生(医療法人社団 親和会 西島病院 院長)の監修を受けています。坂本先生は12,000以上の脳神経外科手術を実施しており、脳動脈瘤の治療について豊富な経験を持っています。

脳動脈瘤の治療判断基準:治療するべきか?

治療の要否は患者個別の判断

脳動脈瘤の治療が必要かどうかは、患者個々の状況や意見に依存します。一般的に、脳動脈瘤が自然治癒することはありません。そして、その破裂率は年間平均0.95%であるとされています。この数値を高いと感じるか、低いと感じるかは個々の患者によるため、治療の判断は患者に委ねられます。

判断を左右する要因

治療が推奨される具体的なケースとして以下のようなものがあります:

これらの条件が揃うと、破裂率が高まるため、医師は治療を提案することが多いです。

治療のメリットとデメリット

治療の大きなメリットは、脳動脈瘤の破裂に関する不安を解消できることです。くも膜下出血などの重大な合併症を予防することで、患者はより安心して日常生活を送ることができます。

しかし、治療にはリスクも伴います。以下では、代表的な治療法であるクリッピング術とコイル塞栓術の詳細とその利点・欠点について説明します。

主要な治療法:クリッピング術とコイル塞栓術

クリッピング術

クリッピング術は、開頭手術によって行われる治療法です。チタン製のクリップを使用して、脳動脈瘤のネック部分を挟むことで、血液の流入を防ぎます。

メリット

デメリット

コイル塞栓術

コイル塞栓術は、カテーテルを脳動脈瘤内に挿入し、プラチナ製のコイルを埋めることで血液の流入を防ぎます。カテーテルは太ももの付け根から挿入されます。

メリット

デメリット

最適な治療法の選択:形状と部位で変わる

脳動脈瘤の形状と比率

脳動脈瘤の形状によって、コイル塞栓術が適切でない場合があります。その場合、クリッピング術が選択されることが多いです。

脳動脈瘤の存在部位

脳動脈瘤の位置によっても治療法が異なることがあります。特に脳底動脈や眼動脈が近接する部位に動脈瘤が発生した場合、コイル塞栓術が選択されることが多いです。

西島病院の低侵襲手術事例

西島病院では、患者の体に負担をかけない低侵襲手術を重視しています。特に、こめかみ部分に限局した小さな切開を行い、操作自由度を犠牲にしない範囲内での低侵襲手術を実施しています。この手法により、術後の回復もより早く、患者への負担が軽減されます。

部位別手術の効果

従来の大規模な開頭手術と比較して、現行の低侵襲手術は開頭面積や皮膚切開の長さを大幅に減少させることができ、これは具体的なデータでも示されています。

問題に関するよくある質問 (FAQ)

1. 脳動脈瘤のサイズが5mm未満でも手術は必要?

答え:

一般的には必ずしも必要ではありません。サイズが小さい場合は定期的な検査と経過観察が推奨されます。

説明:

脳動脈瘤の破裂率はサイズに依存するため、5mm未満の小さな動脈瘤は破裂リスクが低いとされています。しかし、家族歴にくも膜下出血の既往がある場合や、臨床的に他のリスクファクターがある場合は、治療が検討されることもあります。

2. コイル塞栓術後に再治療が必要になる確率は?

答え:

約10-20%の患者で再治療が必要になるとされています。

説明:

コイル塞栓術は低侵襲で回復が早い一方、コイルが徐々に縮小し動脈瘤が再膨張するリスクがあります。特に大きな動脈瘤や特殊な形状のものに対しては再治療の確率が高くなります。

3. MRI検査は治療後でも受けられますか?

答え:

はい、受けられます。

説明:

クリッピング術で使用されるクリップはチタン製、コイル塞栓術で使用されるコイルはプラチナ製であり、どちらもMRI検査に対する影響が少ないため、安全に受けることができます。

4. 脳動脈瘤は遺伝しますか?

答え:

一定の遺伝的要因があります。

説明:

脳動脈瘤には家族歴が関与することが知られています。特に一親等以内でくも膜下出血を経験した家族がいる場合、そのリスクが高まるとされています。

5. 術後の生活に制限はありますか?

答え:

基本的に特別な制限はありません。

説明:

脳動脈瘤の治療後、医師から特別な指示がない限り、通常の生活を続けることができます。ただし、激しい運動や過度のストレスは避けるようにした方が良いでしょう。

結論と推奨

結論

脳動脈瘤の治療は、動脈瘤のサイズ、形状、位置、そして患者の不安と生活環境に基づき慎重に決定されるべきです。クリッピング術とコイル塞栓術のどちらを選択するにせよ、最も重要なのは患者が十分な情報をもとに治療方法を理解し、納得のいく選択をすることです。

推奨

治療の際には専門医と詳細な相談を行い、自分に最適な治療方法を選択しましょう。また、定期的な検査を受けることで、脳動脈瘤の経過を見守り、必要な場合には迅速に対応することが可能です。健康な生活を維持し、リスクを軽減するためにも、医療専門家との連携を大切にしましょう。

参考資料

  1. Sasaki, T., et al. (2013). “Advances in the Endovascular Treatment of Cerebral Aneurysms.” Journal of Neurosurgery, 118(5), 1139-1148. doi:10.3171/2013.4.JNS121978
  2. Yasargil, M.G., et al. (1998). “Microneurosurgery of CNS Tumors.” Thieme.
  3. International Study of Unruptured Intracranial Aneurysms Investigators. (1998). “Unruptured intracranial aneurysms – risk of rupture and risks of surgical intervention.” New England Journal of Medicine, 339(24), 1725-1733. doi:10.1056/NEJM199812103392403