ヒルシュスプルング病の包括ガイド

序論:

ヒルシュスプルング病は、生まれつき腸管の一部もしくは全体で食べ物を運ぶための蠕動運動(ぜんどううんどう)を行う神経節細胞が欠如している病気です。この病気は生後早期から症状が現れ、適切な治療を行わないと深刻な合併症を引き起こす可能性があります。本記事では、ヒルシュスプルング病の症状、原因、検査方法について詳しく解説します。

参考資料/専門的相談:

この記事の執筆にあたり、信頼できる情報源と専門家の意見を参考にしています。情報は最新のものであり、正確性を確保するために専門家のレビューを受けています。

ヒルシュスプルング病の概要

ヒルシュスプルング病は、生まれつき腸の一部またはすべてにおいて蠕動運動を行うための神経節細胞がない病気です。神経節細胞がない部分の腸管は正常に機能せず、食べ物や便が通過しにくくなるため、腹部の膨満や便秘などが現れます。

神経節細胞の発達とヒルシュスプルング病

胎児が成長する過程で、神経節細胞は必ず小腸から大腸、そして肛門へと順番に発達していきます。しかし、何らかの原因でその過程が途中で止まってしまうと、神経節細胞が欠如した腸管ができ、これがヒルシュスプルング病となるのです。

ヒルシュスプルング病の種類

ヒルシュスプルング病にはいくつかのタイプがあります。最も一般的なのは、肛門からS状結腸までの神経節細胞が欠如しているタイプですが、場合によっては大腸すべてや小腸にまで病変が及ぶこともあります。

発生頻度と男女比

ヒルシュスプルング病の発生頻度は約5000人に1人といわれており、男女比は3:1で男児に多く見られます。ただし、神経節細胞の欠如が広範囲にわたる場合、男女差はなくなってきます。

ヒルシュスプルング病の原因

遺伝的要因と孤立性

ヒルシュスプルング病の原因は主に遺伝的要因と孤立性のものに分かれます。遺伝的要因としては、RET(レット)遺伝子の変異が一つの主要な原因として知られています。この遺伝子の変異が神経節細胞の発生を止める結果になります。

その他にも、エンドセリン受容体の異常など、別の遺伝的要因も 数多くありますが、多くの場合は遺伝性とは関係なく孤立的に発症しています。

ヒルシュスプルング病の症状

新生児期の症状

ヒルシュスプルング病の症状は、生まれた直後から現れることが多いです。以下は特に特徴的な症状です。

  1. 生後24時間以上の排便の欠如
  2. 腹部の膨満
  3. 胆汁性嘔吐

これらの症状が見られた場合、ヒルシュスプルング病や小腸閉鎖症の可能性が疑われます。

後期の症状

新生児期には症状が現れない場合でも、生後しばらくしてから以下のような重度の便秘症状が見られることがあります。

重症例の注意点

病状が進行すると、大きく拡張した腸管が破裂することがあり、新生児大腸穿孔が起こることもあります。早期診断が進んでいる現在、このような重篤な事態は減少していますが、それでも油断は禁物です。

ヒルシュスプルング病の検査方法

ヒルシュスプルング病が疑われる場合、主に以下の3つの検査が行われます。

  1. 注腸造影検査
  2. 直腸肛門弛緩反射検査
  3. 直腸吸引粘膜生検

注腸造影検査

肛門からバリウムを注入し、腸の形状を確認する検査です。ヒルシュスプルング病では神経節細胞がない部分の腸管が細く、その手前の腸管が拡張する特徴が見られます。

直腸肛門弛緩反射検査

通常、便が直腸に到達すると外肛門括約筋が一瞬緩みますが、ヒルシュスプルング病患者にはこの反射がありません。この検査ではバルーンを用いて直腸を膨らませ、外肛門括約筋の反応を確認します。

直腸吸引粘膜生検

直腸の組織を一部取り、アセチルコリンエステラーゼ染色を用いて神経節細胞の欠如を確認します。この検査で確定診断が可能となり、結果が出次第適切な治療が行われます。

結論と推奨

結論:

ヒルシュスプルング病は生まれつきの病気であり、早期発見と適切な治療が非常に重要です。神経節細胞が欠如しているため、腸管が正常に機能せず、早期に症状が現れることが多いです。具体的な症状や検査方法について詳しく紹介してきましたが、不安を感じる場合には専門医の診察を受けることが重要です。

推奨:

ヒルシュスプルング病かもしれないと感じる場合や、子供に特徴的な症状が見られる場合は、なるべく早く小児外科専門医の診察を受けることを強くお勧めします。適切な検査と診断を受けた後には効果的な治療法が用意されており、症状の改善が期待できます。

参考資料

  1. 高松英夫・福澤正洋 (2017) 『標準小児外科学第7版』 医学書院
  2. 名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学教授 内田 広夫 先生