序論:

頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)は、加齢に伴う頚椎(首の骨)の変形が原因で脊髄が圧迫されることで発症します。この病気は進行すると手や足に多岐にわたる症状を引き起こし、日常生活に重大な支障を及ぼすことがあるため、早期の発見と治療が重要です。本記事では、頚椎症性脊髄症に関する基礎情報や症状、原因、診断方法、具体的な治療法について解説し、生活上の注意点や術後のリハビリテーションについても述べます。

参考資料/専門的相談:

本記事の情報は、藤田医科大学 整形外科学講座 教授 藤田 順之 先生のインタビューを基にしています。記事内容の正確性と最新性を確保するために、複数の医療情報源を参照しました。

頚椎症性脊髄症とは

頚椎症性脊髄症は、加齢に伴う頚椎(首の骨)およびその周辺組織の変形や変化が原因で発症します。具体的には、椎間板や椎体(頚椎を形成する骨)の組織が傷んで後方に突出したり、骨棘(骨のトゲ)ができたりすることが原因です。このため、脊柱管(脊髄が通る管)が狭くなり、脊髄が圧迫されることになります。

頚椎の構造

頚椎は7つの骨から成り、これらは椎間板という柔軟な組織によってつながれています。椎間板はクッションの役割を果たし、骨同士の摩擦を防ぎます。このクッションが加齢と共に劣化し、骨同士の間に狭窄が生じることが頚椎症性脊髄症の主な原因となります。

高リスク群

この病気は50歳代以降の高齢者に多く見られます。年齢と共に椎間板や軟骨が劣化するため、超高齢社会の現代日本では患者数が増加しています。

原因:

頚椎症性脊髄症の原因は主に3つの因子が関与しています。

1. 静的圧迫因子

骨棘や椎間板の膨隆、黄色靱帯の肥厚などが静的圧迫因子に該当します。これらの因子が脊柱管を狭くし、脊髄を圧迫します。

2. 動的圧迫因子(不安定性)

靱帯が緩んだり、椎体がすべったりすることによって頚椎に不安定性が生じます。この動的不安定性が病気の進行を助長します。

3. 循環障害因子

脊髄への血流が悪くなることも症状の発現に影響します。圧迫された脊髄は適切な血流を失い、結果として神経に障害が生じます。

症状:

初期症状

最も一般的に見られる初期症状は手のしびれです。これは、脊髄が圧迫され神経に影響を与えるためです。

病気が進行すると

箸を使う、文字を書く、ボタンをかけるといった細かい運動が難しくなる“巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)”や、歩行が困難になる“痙性歩行(けいせいほこう)”などの症状が出てきます。

重症化すると

頻尿、尿漏れ、残尿感などの排尿障害が発生する可能性があります。

検査・診断:

問診

患者の症状を把握するために、以下の質問を行います。
– 「どの部分がしびれていますか?」
– 「箸を持つことはできますか?」
– 「字を書くことができますか?」
– 「服のボタンはかけられますか?」

身体所見のテスト

筋力テスト、触覚検査、痛覚検査、反射テストなどを行い、どの領域に障害があるかを確認します。

X線検査

脊柱管の狭窄や頚椎の変形、不安定性を確認するために行いますが、これだけでは確定診断はできません。

MRI

MRIは椎間板や脊髄の状態を詳細に見ることができるため、確定診断に使用されます。

CT

特定の靱帯骨化症など他の病気との区別や、手術計画のために行います。

治療

保存療法

装具療法

主に頚椎の不安定性がある軽症の患者に対して行われ、頚椎カラーを着用します。

薬物療法

神経由来の痛みやしびれを軽減するための薬物療法を行います。

手術療法

椎弓形成術

脊柱管を広げる手術で、片開き式と両開き式の方法があります。

後方除圧固定術

頚椎の不安定性を改善するために金属製のスクリューなどで固定を行う手術です。

前方除圧固定術

頚椎の前方からアプローチして椎間板や骨棘を削り、脊髄の圧迫を取り除く手術です。

術後の経過とリハビリテーション

一般的な経過

椎弓形成術の場合、術後1週間以内に退院が一般的です。特別な装具も使わないことが多いです。

リハビリテーション

術後の早期から歩行訓練や手先のリハビリを開始します。

日常生活での注意点

初期の症状を見逃さずに早期に受診することが重要です。また、手術前後も転倒しないように注意することが必要です。

結論と推奨

結論:

頚椎症性脊髄症は早期に発見し治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、日常生活の質を保つことができます。具体的な症状や原因に基づいて適切な治療法を選択することが重要です。

推奨:

症状が軽いうちに医療機関を受診し、専門医と相談の上、適切な治療を受けることが推奨されます。治療が遅れることが最も避けるべきリスクですので、手のしびれなどの初期症状を見逃さずに早めに行動しましょう。

参考資料

  1. 藤田医科大学 整形外科学講座 教授 藤田 順之 先生のインタビュー
  2. Medical Note: 頚椎症性脊髄症
  3. 日本整形外科学会
  4. 全国健康保険協会(協会けんぽ)による頚椎症関連情報