序論

特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura / ITP)は、免疫系の異常によって血小板が減少し、出血や紫斑(皮下出血)などの症状を引き起こす病気です。この病気には急性型と慢性型があり、それぞれに対する治療法が異なります。急性型は主に子どもに多く、急速に血小板数が低下します。一方、慢性型は長期間にわたって血小板数が低い状態が続くことが特徴です。

今回は、ITPに関する治療法について段階別に詳しくご紹介します。各治療法のメリットやリスク、日常生活での注意点についても解説しますので、ITPと診断された方やそのご家族に役立つ情報を提供したいと思います。

専門的な助言

この記事は、慶應義塾大学病院臨床検査科の村田 満(むらた みつる)先生のインタビューに基づいています。

慢性型ITPにおける治療法

段階1:ピロリ菌の除菌療法

まず最初に行われるのが、ピロリ菌の検査です。慢性型ITPの患者の一部はピロリ菌が原因とされています。検査で陽性だった場合は、除菌療法が行われます。除菌によって約30%のケースで血小板数が改善することが報告されています。

ピロリ菌が陰性の場合:

段階2:ファーストライン治療

副腎皮質ステロイド療法がこの段階での主要な治療法です。初期の1か月は多量のステロイドを使用して血小板数を上昇させ、徐々に量を減らしていきます。これにより、患者の約20〜25%は血小板数が安定し、無治療状態が維持可能になります。

副作用:

これらのリスク管理には特に注意が必要です。

段階3:セカンドライン治療

副腎皮質ステロイド療法が効かない場合、あるいは持続的に高用量のステロイドが必要な場合、次のオプションが検討されます:

トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)の投与

これは血小板の産生を促進する薬で、80%以上の症例で効果的とされています。しかし、副作用として血栓症骨髄線維化のリスクもあるため、長期的な治療計画が必要です。

リツキシマブの投与

B細胞への攻撃を抑制することで抗体の産生を減少させる薬です。ただし、約50〜60%の有効率とされています。

脾臓の摘出

免疫系が異常に過剰な血小板破壊を行っているため、脾臓を摘出するという選択肢もあります。50〜60%の症例で有効です。

段階4:サードライン治療

ここでは、ファーストラインおよびセカンドライン治療が失敗した場合の選択肢となります。以下の薬剤が一般的に使用されます:

これらの薬剤は保険適用外となる場合が多いため、患者と医師の間で慎重な話し合いが必要です。

重篤な出血症状を伴う急性型ITPに対する治療

急性型ITPで重篤な出血が生じた場合、迅速な治療が必要です。特に脳出血などの緊急事態に対しては、以下の治療が行われます:

血小板輸血

緊急に血小板を補充するための手段です。ただし、根本治療にはならないため、他の治療法と併用されます。

免疫グロブリン大量療法

免疫系の反応を抑制するために大量の免疫グロブリンを投与します。効果は一時的ですが、緊急時には有効な治療法です。

メチルプレドニゾロンパルス療法

高用量のメチルプレドニゾロンを短期間投与することで、急速に血小板数を改善します。後に経口プレドニゾロンによる維持療法が行われます。

ITPは完治するのか?

急性型の約90%、慢性型の約10%の患者が完治することが報告されています。ただし、慢性型の90%は何かしらの治療が必要で、経過観察が続きます。

今後の展望

現在、ITP治療は新たな局面を迎えていますが、依然として根本治療法の開発が急務です。病態のさらなる解明とともに、より効果的で安全な治療法の開発が期待されます。

日常生活での注意点

けがを避けること

出血を防ぐため、打撲や怪我には細心の注意が必要です。

むやみな薬の使用を避けること

市販薬やサプリメントの服用には注意を払いましょう。何か他の病気で薬を処方された場合には、必ず医師にITP患者であることを伝えてください。

血圧の管理

特に高血圧の方は脳出血リスクを減らすため、血圧コントロールが必要です。

結論と推奨事項

結論

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は免疫系の異常によって引き起こされる病気であり、特に慢性型では長期的な治療が必要です。ピロリ菌検査から始まり、副腎皮質ステロイド療法、トロンボポエチン受容体作動薬、リツキシマブなどの複数の治療法があり、症例に応じて適切な選択が求められます。

推奨事項

ITP患者およびその家族には、以下の注意点を心に留めていただきたいです:

患者と医師が協力し合うことで、より良い治療結果を得ることができるでしょう。日常生活での注意を守りつつ、積極的に治療に取り組んでいきましょう。

参考文献