序論

変形性膝関節症は、多くの高齢者や活発な運動をしている人々にとって一大生活課題となっている病気です。この病気は膝関節の軟骨が磨り減ることで痛みや動作制限を引き起こし、日常生活の質を大きく損ねます。従来の治療法には薬物療法やリハビリテーション、そして深刻な場合には人工関節置換術が含まれます。しかし、最近の医療技術の進歩により、膝周囲骨切り術(Around Knee Osteotomy:AKO)という手法が注目されています。

この記事では、横浜石心会病院関節外科センターの竹内 良平先生のご協力のもと、AKOの詳細について解説します。特に、AKOの主要な種類、その適応患者の特徴、手術の利点とリスク、そして手術後の回復プロセスについて触れていきます。変形性膝関節症に悩む方、またはそのご家族にとって、この情報が役立つことを願っています。

参考資料/専門的相談

この記事は、竹内 良平先生(横浜石心会病院 関節外科センター センター長)の提供する情報に基づいて執筆されています。竹内先生は、膝関節疾患の専門家であり、多くの患者にAKO治療を提供してきた経験を持っています。また、この記事の情報は最新の医学研究と信頼できる医療機関の報告を元にしています。

膝周囲骨切り術(AKO)とは

膝周囲骨切り術(Around Knee Osteotomy:AKO)は、変形性膝関節症に対する治療法の一つで、膝関節周囲の骨を切り取って再配置することで、関節の力学を改善する手術です。この手術は、膝の内側または外側にかかる負担を分散させることを目的としています。以下に、AKOの主要な種類とその具体的な手法を説明します。

高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy:HTO)

高位脛骨骨切り術(HTO)は、脛骨の上部を切り取り、角度を調整して再配置する手術法です。これにより、体重のかかる軸を膝の内外で調整し、関節の負担を分散させます。HTOには主に3つの方法があります。

Open Wedge HTO

Open Wedge HTOは、脛骨の内側から外側に向かって骨を切り開く方法です。この手術では専用のプレートや人工骨を用いて開いた部分を安定化させます。特に、膝の内側への負担を軽減するのに効果的です。

Closed Wedge HTO

Closed Wedge HTOは、外側からくさび状に骨を切り取り、脛骨を短縮して角度を調整する方法です。この方法は、特に膝の外側への負担が高い場合に適用されます。大きな骨変形がある患者にも有効です。

Hybrid Closed Wedge HTO

Hybrid Closed Wedge HTOは、従来のClosed Wedge HTOからさらに改良された手法で、骨の切除量を最小限に抑え、手術後の早期回復を促進します。この方法は竹内先生が考案し、世界中で広まりつつあります。

Double Level Osteotomy(DLO)

Double Level Osteotomy(DLO)は、大腿骨と脛骨の両方を切り取って再配置する手術法です。この方法は、膝関節の変形が複数部位にわたる場合に有効です。一度に2箇所の修正を行うため、非常に効果的ですが、手術の複雑さも増します。

患者に合わせた手術の選択

AKOは患者一人ひとりの状態に適した手術法を選択できる点が大きな特徴です。年齢、活動レベル、具体的な症状、さらには患者の希望まで考慮して最適な手術方法を選択します。例えば、スポーツ活動を積極的に続けたいと考える患者には、回復が早く、負担の少ない手術を選ぶことができます。

各手術法の適応例

手術の詳細と時間

膝周囲骨切り術の具体的な手術時間は、用いる方法と患者の状態に大きく依存します。一般的なOpen Wedge HTOの場合、以下のような手順が含まれます。

  1. 関節鏡を用いた事前処置: 骨を削ったり、靱帯や半月板を綺麗に整えたりする工程に約30分。
  2. 骨切りと固定: 脛骨を切り開いて人工骨や専用のプレートで固定する工程に約40分から1時間。

関連記事では、術前から術後のプロセスが詳細に説明されており、手術そのものの時間は通常1時間半程度です。

手術適応の条件

AKOの適応となる患者は、膝関節の動きが比較的良好で、膝を伸ばしたり曲げたりできることが重要です。また、骨の質が良好で、膝の内側または外側に残存する関節が存在することが条件となります。さらには、患者自身が手術の理解と協力を示すことも大切です。

メリットとデメリット

メリット

AKOの最大の利点は、自分の膝を温存できる点です。将来的に再生医療が進展した場合、自分の膝が残っていることは大きなメリットとなります。また、AKOは人工関節手術に比べて侵襲が少なく、回復が早いとされています。

デメリット

一方で、AKOは痛みが完全になくならない可能性もあります。膝の状態や手術の成功度により痛みの程度は異なり、手術後も定期的なケアが必要です。また、手術後に骨がつくまでの期間、一定の痛みを感じることがあります。

回復期間とリハビリ

手術後の回復期間は、通常2週間から4週間で、早期回復が見込まれます。リハビリは術後すぐに始まり、日常生活そのものがリハビリの一部となります。術後3ヶ月までに骨が完全につくことが多く、その後痛みが徐々に軽減することが期待されます。

手術費用

AKOの手術費用は、高額療養費制度が適用される場合、30万円程度です。費用には、専用のプレートや人工骨などの材料費も含まれます。

結論と推奨

AKOは、変形性膝関節症に苦しむ多くの患者にとって有望な治療法であり、将来の医療技術の進展にも寄与できる手術方法です。症状が進行する前に適切な治療を受けることで、生活の質を大幅に向上させることが期待されます。

クエスチョン・アンド・アンサー

以下に、読者からよくある質問に対する答えを提供します。

1. AKO治療はどの程度効果がありますか?

答え:膝の状態や手術の成功度により個人差がありますが、多くの患者で痛みの軽減と生活の質の向上が報告されています。

2. AKO後にスポーツを再開することは可能ですか?

答え:はい、完全に骨がつき回復すれば、多くのスポーツ活動が再開可能です。

3. AKOの手術自体にはどの程度のリスクがありますか?

答え:手術のリスクは低いですが、感染症や血栓などの一般的な手術リスクが含まれます。

4. 手術後のリハビリ期間はどのくらいですか?

答え:リハビリ期間は3ヶ月が目安とされ、日常生活に支障はほとんどありません。

5. 手術の適応外となる場合はありますか?

答え:膝の動きが非常に制限されている場合や、骨の質が非常に悪い場合は適応外となります。

参考資料