序論:

人工股関節手術は、股関節の機能を回復させ、痛みを軽減するために行われる重要な医療行為です。大腿骨頸部骨折大腿骨頭壊死変形性股関節症など、さまざまな原因で関節のダメージが進行する場合に適用されます。この記事では、具体的な手術の種類、手術の流れ、術後のリハビリテーション、コスト、および合併症について詳しく解説します。人工股関節手術を検討されている方や、その家族の方々が安心して選択できるよう、信頼性の高い最新の情報を提供します。

参考資料/専門的相談:

この記事は、東京医科大学病院整形外科主任教授の山本謙吾先生の専門的なアドバイスを基にしています。山本先生が提供してくださった情報を元に、信頼性の高い内容をお届けします。

手術の種類とその違い:

人工股関節手術には大きく分けて、人工骨頭置換術(BHA: Bipolar Hip Arthroplasty)人工股関節全置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)、および最小侵襲手術(MIS: Minimally Invasive Surgery)の3種類が存在します。以下、それぞれの手術法について詳しく説明します。

1. 人工骨頭置換術(BHA)

人工骨頭置換術は、骨頭のみを人工物に置換する手術です。主に大腿骨頸部骨折大腿骨頭壊死の患者に対して行われます。この手術は比較的侵襲性が低く、回復も速いとされています。BHAは大腿骨の骨頭だけが損傷を受けている場合に効果的です。

2. 人工股関節全置換術(THA)

人工股関節全置換術は、骨盤側の寛骨臼(かんこつきゅう)部分も含めて置換する手術です。変形性股関節症重度の関節リウマチ、または大腿骨頭壊死が進行した場合に適応されます。THAはより侵襲的であり、回復までの期間も長くなることが多いですが、広範囲の関節破壊に対して効果的です。

3. 最小侵襲手術(MIS)

最小侵襲手術は、手術時の体への負担を最小限に抑えるために開発された方法です。手術の際に切開する部分を最小限に抑え、筋肉へのダメージを減らします。特に回復が早く、入院期間も短くなることが特徴です。しかし、すべての患者に対して適用できるわけではなく、事前の詳細な評価が必要です。

手術の流れ:

人工股関節手術の具体的な流れを理解することは、患者さんにとって安心感を与えます。このセクションでは、手術の一般的なステップについて詳しく述べます。

人工骨頭置換術(BHA)のステップ

  1. 骨頭の摘出: 手術室で麻酔下に置かれた患者の骨頭を摘出します。
  2. 骨髄腔の形成: 大腿骨髄腔に穴を開け、インプラントを挿入するための空間を作ります。
  3. 人工骨頭の挿入: 形成された骨髄腔に人工骨頭を挿入し、安定させます。

人工股関節全置換術(THA)のステップ

  1. 寛骨臼の処理: 骨盤側の寛骨臼に人工カップを取り付けます。
  2. 骨頭の摘出: 骨頭を摘出し、大腿骨髄腔を削ります。
  3. 人工関節の挿入: 大腿骨髄腔にステムを挿入し、人工関節を固定します。

素材とサイズの選定:

人工股関節の素材やサイズは、患者さん個々のニーズに合わせて決定されます。一般的な素材には、チタンコバルトクロムポリエチレンセラミックなどが使用されます。サイズは約1mm刻みで用意され、手術前に股関節の大きさを正確に計測して最適な物を選定します。

手術時間と入院期間:

手術時間は、手術の種類や患者の状態によって異なります。一般的に、人工骨頭置換術(BHA)は約30分から1時間程度、人工股関節全置換術(THA)は約1時間です。入院期間はリハビリテーションの進行具合にもよりますが、通常2〜3週間です。

合併症と術前検査の重要性:

人工股関節手術には、術後の感染や静脈血栓、肺塞栓などの合併症が起こる可能性があります。これを防ぐために、東京医科大学では術前検査に力を入れています。例えば、感染リスクを減少させるために、術前に虫歯や水虫MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などのチェックを行います。

術前検査の具体例

  1. 感染症リスクの確認: 虫歯、水虫、MRSAなどを検査し、必要に応じて治療を行います。
  2. 生活習慣の確認: 糖尿病などの病歴がある場合、それに対する適切な管理を行います。

費用と高額療養制度:

人工股関節手術には高額な費用がかかるため、高額療養制度を活用することが重要です。この制度を利用することで、自己負担額を一定額に抑えることができます。患者さんの収入に応じて負担額は異なりますが、適切な手続きで経済的な負担を軽減することが可能です。

術後のリハビリテーション:

手術後のリハビリテーションは、脱臼を防ぐために非常に重要です。臀部の筋肉強化訓練日常生活動作訓練が中心です。特に初期には、脱臼しやすい姿勢を避け、洋式の生活スタイルを推奨します。

日常生活での注意点

  1. 脱臼しやすい姿勢を避ける: 割座や鳶座り、膝を過度に曲げる姿勢を避ける。
  2. 適度な運動: 1日5000歩程度を目安に、日常的な歩行運動を続ける。
  3. 体重管理: 適切な体重を維持し、人工関節への負荷を軽減する。

問題に関するよくある質問:

1. 人工股関節手術はどのくらいの頻度で行われますか?

答え: 年間に数万件以上

2. 若い世代でも人工股関節手術を受ける必要がありますか?

答え: 必要な場合があります

3. 手術後にどのくらいの期間で日常生活に戻れますか?

答え: 平均して2〜3ヶ月

4. 術後に運動を続けることは可能ですか?

答え: 可能ですが、無理のない範囲で行うことが重要です

5. 人工股関節の寿命はどのくらいですか?

答え: 平均して15〜20年

結論と推奨

結論:

人工股関節手術は、多くの患者さんにとって生活の質を大幅に改善するための有効な手段です。正しい手術方法の選定、術前の準備、術後の適切なリハビリテーションが成功の鍵となります。

推奨:

手術を検討している場合は、信頼できる医療機関で十分な情報収集を行い、自分に最も適した治療方法を選びましょう。また、術後も継続的なリハビリテーションと適切な生活習慣の管理を心がけることが重要です。

参考資料:

  1. 山本 謙吾先生(東京医科大学病院)
  2. 日本整形外科学会
  3. 日本リハビリテーション医学会