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いぼ痔(痔核)とは

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

いぼ痔(痔核)は、肛門の内側にある静脈叢(血管の集まり)が排便時のいきみや妊娠、長時間の座位などでうっ血・肥大してできる、非常にありふれた肛門の病気です[1]。歯状線より直腸側にできる内痔核は痛みを感じる神経がないため出血だけのことが多く、歯状線より肛門側にできる外痔核は皮膚の神経があるため強い痛みを伴いやすい、という違いがあります[1]。多くは生活習慣の見直しと市販薬・処方薬で改善しますが、排便と関係なく便に血が混じる、便が細くなるといった症状がある場合は、痔ではなく大腸がんなど別の病気が隠れている可能性があるため自己判断せず受診が必要です[3]。

原因 排便時の強いいきみ、長時間の座位・立ち仕事、妊娠・出産、重い荷物を持つ仕事や筋トレによる腹圧、アルコールの多飲、香辛料の多食、お尻を冷やすことなど[2]
主な症状 出血(排便時の鮮紅色の出血)、脱出(いぼが肛門の外に出る)、痛み、腫れ。内痔核は痛みを感じにくく、外痔核は痛みを感じやすい[2]
受診の目安 市販薬を1〜2週間使っても改善しない、脱出したものが自然に戻らない、痛みが強い、貧血症状がある、排便と無関係な出血・便が細いなどの症状がある場合はすぐ受診[1][3]

いぼ痔(痔核)とは?できる仕組みと内痔核・外痔核の違い

肛門の内側には、もともと生まれつき「静脈叢(じょうみゃくそう)」と呼ばれる血管の集まりがあり、排便物が漏れないよう肛門を閉じるクッションの役目を果たしています。日本大腸肛門病学会は「痔核の基本的な構造(肛門内の静脈叢)は生まれながらにあるものです」と説明しており[2]、直立二足歩行で肛門に血液がうっ血しやすいこと、排便時の強いいきみ、重い荷物を持つ仕事や筋力トレーニングによる腹圧、長時間の座り仕事、アルコールの多飲、辛い食べ物の多食、お尻を冷やすことなどが誘因として挙げられています[2]。これらが繰り返されることで静脈叢がうっ血・肥大し、いぼ状に膨らんだものが「痔核(いぼ痔)」です。

いぼ痔は、できる位置によって「内痔核」と「外痔核」に分けられます。この境目になるのが、直腸と肛門の粘膜が切り替わる「歯状線(しじょうせん)」です。日本大腸肛門病学会は「歯状線の内側のものが内痔核、外側のものが外痔核」と説明しており[1]、実際には両方が一体化している例も多いとされています[1]。歯状線より直腸側(内側)の粘膜には痛みを感じる知覚神経がないため、内痔核は脱出や出血があっても痛みを感じにくいのが特徴です。一方、歯状線より肛門側(外側)の皮膚には知覚神経があるため、外痔核は腫れると強い痛みを伴いやすく、急に血のかたまり(血栓)ができる「血栓性外痔核」ではとくに痛みが強く出ます。

出典:日本大腸肛門病学会「痔核の治療」「痔核についてのQ&A」(市民のみなさまへ)[1][2]

症状について、日本大腸肛門病学会は「痔核の症状は、出血、脱出、痛み、腫れなどがあります」とまとめています[2]。出血は「鮮紅色で、排便時に出血しますが排便終了後には自然に止まります」とされ[2]、トイレットペーパーに血が付く程度から、便器の水が真っ赤に染まるほどの出血まで幅があります。内痔核が進行すると、排便時に肛門の外へ脱出するようになり、はじめは自然に戻りますが、進行すると指で押し戻す必要が出てきます。より詳しい原因とセルフケアの17項目は、当サイトの「自宅でできる痔(いぼ痔)のケア」の記事で詳しく解説しています。

なぜ「いきみ」で痔核が悪化するのか

排便時に強くいきむと、腹圧が上がり、肛門を通る血管に強い圧力がかかります。これが繰り返されると、静脈叢の血液がうっ滞し、血管が拡張したまま元に戻りにくくなります。さらに、便秘で硬い便を無理に出そうとすると、いきみの時間そのものが長くなり、肛門にかかる負担も比例して大きくなります。逆に下痢を繰り返す場合も、排便の回数が増えることで肛門周囲の粘膜や皮膚が刺激され、うっ血や炎症を助長することがあります。つまり、便秘・下痢のどちらの方向にせよ「排便のリズムが崩れること」自体が、痔核の誘因になり得るという点が重要です。妊娠中は、大きくなった子宮が骨盤内の静脈を圧迫して血流を悪くすることに加え、便秘になりやすいことも重なり、痔核ができやすい・悪化しやすい時期とされています。

痔核はなぜできる?2つの成因説と「肛門の3大疾患」

痔核が発生する仕組みについて、日本大腸肛門病学会は「病的な痔核が発生する原因として、『静脈瘤説(肛門管の痔静脈叢の静脈瘤と考える)』と『肛門クッション滑脱説(肛門管の粘膜下組織が伸びて滑脱するようになったと考える)』という2つの考え方に大別できます」と説明しています[1]。静脈瘤説は血管そのものがうっ血・拡張して膨らむと考える立場、肛門クッション滑脱説は肛門を閉じる役目のクッション状組織そのものがゆるんで肛門の外へ滑り出てくると考える立場で、実際にはどちらの要素も関わっていると理解されています。同学会はまた、「肛門の3大疾患として痔核(俗称イボ痔)、痔瘻(穴痔)、裂肛(キレ痔)があり、最も頻度が高いのが痔核です」とも述べており[1]、「お尻のトラブル=痔」と一括りにされがちな症状の中でも、痔核がもっとも頻度の高いタイプであることがわかります。

重要なのは、痔核のもとになる静脈叢・クッション組織そのものは、誰の肛門にも生まれつき存在しているという点です。日本大腸肛門病学会は「痔核の基本的な構造は正常な肛門内にも存在しており、“何らかの症状を呈して初めて病気の痔核として扱う”と考えるとわかりやすいでしょう」と説明しています[1]。たとえるなら、口の中に歯があること自体は正常で、それが虫歯になって初めて「病気」として扱われるのと同じ考え方です。つまり、肛門の診察で痔核の基本構造が見つかっても、出血や脱出などの症状がなければ、治療の対象にはなりません。

内痔核・外痔核の境目は、実際にはあいまいなことも多い

内痔核・外痔核は歯状線を境に分類されますが、日本大腸肛門病学会はこの分類について「分類上はすっきりと明確であるようですが、純粋に歯状線の奥側にだけに限局してとどまるような内痔核単独例はほとんどないため、実際上は、あまり意味がないともいえます」と述べています[1]。歯状線付近の上下にまたがるように膨らんだ痔核が一塊となって脱出するものも、一般的には内痔核と呼ばれています。さらに外痔核についても、肛門管の中にある「肛門管内の外痔核」と、肛門の出口付近の皮膚にできる「狭義の外痔核」を区別することが大切で、「肛門管内の外痔核」は治療のうえでは内痔核と同様に扱われるとされています[1]。手術が必要になるような痔核は、内痔核と外痔核が合併した「内外痔核」の形になっていることが多いともされています[2]。つまり実際の診療では、「内痔核か外痔核か」をきっちり線引きするより、「どこまで広がっているか」「症状はどうか」を総合的にみて治療方針が決められます。

脱出の正確な診断に使われる「怒責肛門診」

痔核の治療で最も多い症状は脱出であり、その正確な診断が重要になります。専門の医療機関では、実際に便器で排便するようにいきんでもらい、その様子をカメラで撮影して脱出の程度を確認する「怒責肛門診(どせきこうもんしん)」という診察方法が行われています[1]。診察室で横向きに寝た状態を見ただけでは、実際の排便時にどこまで脱出するかが正確にはわからないため、こうした工夫によって、Goligher分類のどの病期にあたるかをより正確に判断しています。

内痔核の進行度(Goligher分類)と受診の目安となる基準

内痔核がどこまで脱出し、どこまで自然に戻るかは、国際的にも広く使われる「Goligher(ゴリガー)分類」というⅠ度からⅣ度までの4段階で評価されます。日本大腸肛門病学会の解説によれば、Ⅰ度は「排便時に肛門内で膨隆する」、Ⅱ度は「排便時に脱出するが、排便後に自然還納する」、Ⅲ度は「用手的還納を要する」、Ⅳ度は「完全には還納できない」状態とされています[1]。この病期は治療法を選ぶ際の重要な目安になります[1]。

内痔核の進行度(Goligher分類)
病期 脱出・還納の状態 目安となる対応
Ⅰ度 排便時に肛門内で膨隆する(肛門の外へは脱出しない)[1] 生活改善・薬物療法が中心
Ⅱ度 排便時に脱出するが、排便後に自然に戻る[1] 生活改善・薬物療法、改善しなければ外来処置
Ⅲ度 脱出したものを指で押し戻す必要がある(用手的還納)[1] ALTA療法・輪ゴム結紮療法・手術を検討
Ⅳ度 痔核が大きく外痔核と一塊化し、完全には戻せない[1] 結紮切除術など手術が中心

出典:日本大腸肛門病学会「痔核の治療」(市民のみなさまへ)[1]

どうやって病期を診断するのか

Goligher分類による病期は、自分で判断するものではなく、医療機関での問診・視診・触診・指診、そして肛門鏡を使った診察によって確認されます。問診では出血の色や量、脱出の有無とタイミング、いきみの習慣や排便回数などを確認し、視診・触診で肛門周囲の腫れや外痔核の有無を調べます。内痔核は歯状線より内側にあり、外から見ただけでは正確な病期がわかりにくいため、肛門鏡を用いて直腸粘膜側の状態を直接観察することが重要です。市販薬で様子を見ていた期間が長く、脱出が戻りにくくなってきた(Ⅲ度以上が疑われる)と感じたら、自己判断で市販薬を使い続けるより先に、一度診察を受けて正確な病期を確認することが、適切な治療法を選ぶ近道になります。

なお外痔核には、内痔核のようなⅠ〜Ⅳ度の脱出分類は使われません。外痔核は主に「急性の腫れ・痛みがあるかどうか」「血栓(血のかたまり)ができているかどうか」で治療方針が決まります。血栓性外痔核で痛みが強い場合は、市販の痔疾用薬で経過をみるより先に、外科的な処置(血栓除去)で早く痛みが取れることもあるため、痛みが激しいときは自己判断で様子を見続けず受診してください。外痔核の症状・原因から市販薬・手術・費用までの詳しい解説は、当サイトの「外痔核(いぼ痔)のすべて」の記事にまとまっています。

【緊急度が高いサイン】嵌頓痔核(かんとんじかく)とは

いぼ痔の中でも、突然の激痛と大きな腫れを伴い、すぐに医療機関の対応が必要になるのが「嵌頓痔核(かんとんじかく)」です。日本大腸肛門病学会はQ&Aの中で「急に動けないほどの激痛と大きな腫れ―これは何?」という問いに対し、「嵌頓痔核(かんとんじかく)が考えられます。以前から脱出を繰り返していた痔核が絞扼されて、血流障害のため激痛とともに膨らんで急に戻らなくなり、肛門外に脱出したままの状態になるものです。緊急手術あるいは待機手術が必要です」と説明しています[2]。つまり、ふだんは排便時だけ出て自然に戻っていた痔核が、何らかのきっかけで肛門括約筋に締めつけられて血流が止まり、押し戻せないほど腫れ上がってしまった状態です。

日本大腸肛門病学会は「通常の痔核は突然できるものではありません」としたうえで、「ただし、『嵌頓痔核』や『血栓性外痔核』は突然できて痛みと腫れがみられます」とも述べています[2]。つまり、これまで痔核と診断されたことがない人でも、血栓性外痔核や嵌頓痔核は前触れなく起こり得るということです。座っていられない・眠れないほどの痛みが急に出た、指で押しても大きく腫れた塊が戻らない、という場合は、市販薬で様子を見ようとせず、できるだけ早く肛門科・大腸肛門科(休診時間帯なら救急外来)を受診してください。なお、後述するALTA療法(ジオン注射)は、嵌頓痔核がある人には使用できない治療法として明記されています[4]ので、痛みを我慢して市販薬や自己流のケアで様子を見続けることは、適切な治療のタイミングを逃すことにもつながります。

痔核・裂肛(切れ痔)との見分け方

肛門の症状で受診する人の多くは「痔」とひとくくりに考えがちですが、実際には痔核(いぼ痔)と裂肛(切れ痔)は原因も痛みの出方も異なります。歯状線を境に内側にできる内痔核・外側にできる外痔核の違いに加え、肛門の出口の皮膚が切れる裂肛(切れ痔)は、便秘で硬い便を出そうとしたときに肛門の粘膜が裂けて起こることが多く、排便のたびに鋭い痛みが走るのが特徴です。痔核・裂肛のどちらも「痔」と呼ばれますが、治療の考え方が異なるため、まず見分けることが重要です。

内痔核・外痔核・裂肛(切れ痔)の見分け方
項目 内痔核 外痔核 裂肛(切れ痔)
できる位置 歯状線より直腸側(内側)[1] 歯状線より肛門側(外側)[1] 肛門の出口の皮膚(多くは後方)
痛み 感じにくい(知覚神経がない)[1] 感じやすい(知覚神経がある)[1] 排便時に鋭い痛みが出やすい
出血 鮮紅色、排便時に出て自然に止まる[2] 血栓化すると腫れと共に出血することがある 少量の鮮血がペーパーに付く程度が多い
主な誘因 いきみ・妊娠・長時間の座位[2] 同上、急な血栓形成 便秘による硬い便、下痢の繰り返し

見分けるカギ:排便時に痛みなく血だけが出るなら内痔核、腫れて強く痛むなら外痔核(とくに血栓性)、排便のたびに切れるような鋭い痛みが走るなら裂肛の可能性が高いといえますが、複数が合併していることも多いため、自己判断だけに頼らず肛門科・大腸肛門科での視診・触診・肛門鏡による確認が推奨されます[1]。とくに「痛みの有無」は、内痔核か外痔核かを見分ける最もわかりやすい手がかりですが、内痔核が進行して外に出た状態(脱出)で外気に触れたり、肛門括約筋に締め付けられたりすると、内痔核であっても痛みを感じることがあるため、痛みがないからといって軽症とは限らない点にも注意が必要です。

経過と治療:保存的治療から手術まで、段階別のケア

いぼ痔の治療は、症状が出てからの経過(Goligher分類の病期)に応じて、保存的治療(生活改善・薬物療法)から外来での低侵襲処置、手術までを段階的に検討します。

保存的治療(生活改善・薬物療法)

日本大腸肛門病学会は「果物・食物繊維の摂取と、便通をよくしていきみを避けることが、症状のある痔核の保存的治療の基本」としています[1]。痛みや出血など、局所の血流障害を伴う症状に対しては「温める温浴療法が良い」ともされています[1]。湯船に浸かる、温水洗浄便座を適切に使うなどして肛門周囲の血流を保つことは、市販薬と併用しやすいセルフケアの一つです。薬物療法(外用薬・内服薬)は「疼痛、出血の緩和に効果がみられますが、一定期間使用しても痔核自体が消失するわけではない」とされ[1]、日本大腸肛門病学会は薬物療法だけでは「脱肛症状を消失させることはできない」としており[1]、とくにGoligherⅢ・Ⅳ度の脱出には薬物療法は効果が乏しいとされています[1]。Ⅲ度以上で脱出が続く場合は薬だけに頼らず次の段階の処置を検討することになります。

外来でできる処置(硬化療法・ALTA療法・輪ゴム結紮療法)

脱出のあるⅡ〜Ⅲ度の内痔核に対しては、切らずに行える処置が広がっています。硬化療法にはもともと油性のフェノールアーモンドオイル(PAO)が使われてきましたが、日本大腸肛門病学会によると「出血のある痔核の止血を図りたい時には非常に有効で速効性があります」が、「脱出する痔核(=脱肛)を脱出しないように治す効果は期待できません」とされています[1]。この弱点を補う形で2005年3月に登場したのが、水溶性のALTA(アルタ)注(商品名「ジオン注」)です[1]。日本大腸肛門病学会はALTA療法について、脱出する内痔核に対して「注射で退縮」させる治療法で、「初回排便時から脱出がみられなくなることが多い」と説明しています[1]。同学会は「ALTA(アルタ)は脱出する痔核に対して初めて効能・効果を有する注射薬であり、今までは手術以外に治療法のなかったGoligherⅢ、Ⅳ度の脱出する痔核に対して適応となる画期的な治療法」とも位置づけています[1]。

ALTAの成分は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の患者向医薬品ガイドによると「日局 硫酸アルミニウムカリウム水和物/タンニン酸」で、1バイアル10mL中に硫酸アルミニウムカリウム水和物400mg(4w/v%)・タンニン酸14mg(0.14w/v%)を含みます[4]。使用量は「あなたの症状などにあわせて、医師が決めます」としつつ、通常成人では「1つの主痔核あたり硫酸アルミニウムカリウム水和物2%溶液として9〜13mL」、「1回の治療あたりの使用量は硫酸アルミニウムカリウム水和物2%溶液として60mL以内」という目安が示されています[4]。局所麻酔で肛門括約筋を弛緩させたうえで、痔核ごとに粘膜下へ分割して注射し、日本大腸肛門病学会の解説によれば「四段階注射法」という決まった手順を守って投与することが求められています[1]。

ALTA療法が使えない人(禁忌)——PMDAの患者向医薬品ガイドは、次にあたる人は「この薬を使用することはできません」としています[4]:妊婦または妊娠している可能性のある人/授乳中の人/透析療法を受けている人/嵌頓(かんとん)痔核がある人/過去にジオン注に含まれる成分やリドカインなどのアミド型局所麻酔剤に過敏症があった人。また、前立腺がんなどで放射線治療を受けたことがある人、腎臓・肝臓に重篤な障害がある人などは「特に注意が必要」とされ、事前に医師・薬剤師へ申告する必要があります[4]。

副作用・合併症——PMDAは、注意すべき重大な副作用として、血圧低下・徐脈(脱力感、めまい、ふらつき、立ちくらみなど)、アナフィラキシー(全身のかゆみ、じんま疹、息苦しさなど)、直腸潰瘍(腹痛、便に血が混じる、肛門の痛みなど)、直腸狭窄(下腹部の痛み、便が出にくいなど)、直腸腟瘻(女性で、腟から便やガスがもれるなど)を挙げています[4]。また「この薬の使用後2週間後までに一時的に熱が出ることがある」ともされており[4]、日本大腸肛門病学会も全身的な副作用として発熱が最も多いが重篤なものではないとしたうえで、局所的には注射部位の潰瘍やびらん、直腸狭窄、(男性の場合)前立腺炎などが報告されているとしています[1]。投与部位が硬結として触れることがあり、あとの診察で痔核とがんを誤認しないよう注意が必要ともされています[1]。

効果の持続と再発——日本大腸肛門病学会によると、「ほとんどの症例で初回排便時から脱出はみられなくなります」が、「1年後には2〜10%の症例で脱出の再発が生じています」とされ、長期成績はまだ十分にはわかっていないとしています[1]。それでも「再発しても患者さんがもう一度『ALTA療法を受けたい』と希望することが多いのが本治療法の特徴」ともされており[1]、痛みの少なさが選ばれる理由の一つになっています。投与日は入院であればベッド上安静とし、翌日から入浴も可能で、入院期間は1〜3泊程度、日帰り外来手術として行っている施設もあるとされています[1]。

輪ゴム結紮療法(ゴム輪結紮療法)

もう一つの代表的な外来処置が輪ゴム結紮療法で、日本大腸肛門病学会は「専用の小さな輪ゴムを内痔核膨隆部の基部にかけ、ゴムの収縮力を利用」して痔核を壊死・脱落させる方法と説明しています[1]。「やわらかで牽引しやすいものや、単結節状に膨隆している内痔核が好適応であり、線維化で硬かったり、痔核の膨隆が小さすぎるものは、すぐ外れてしまい適応とならない可能性があります」とされ[1]、比較的小さな脱出した内痔核や出血例に向いている処置です。いずれも入院を要さず日帰りで行えることが多い処置ですが、適応となる病期や痔核の状態は医師の診察で判断されます。

手術(結紮切除術など)

Ⅲ〜Ⅳ度で脱出が大きい場合や、外痔核を合併して一塊化している場合は、手術が標準的な選択肢になります。日本大腸肛門病学会は結紮切除術について「痔核を肛門管の外から内へ縦方向に切離し根部を結紮後に痔核を切除する」方法と説明しており、この術式が標準術式とされています[1]。同学会によれば、この結紮切除法は「1937年に英国のMilliganとMorganが発表したもの」で、「本邦には1960〜1970年頃に導入」されて以降、術後出血や疼痛などの合併症を減らすための工夫・改良が重ねられてきました[1]。「結紮切除手術はあらゆるタイプの痔核、あらゆる重症度の痔核に対しても適応となる手術方法」で「根治性も高い」一方、「術後の疼痛や出血などの合併症が多いところが欠点」ともされています[1]。日本大腸肛門病学会は結紮切除法のほかに「PPH法」という術式にも触れていますが[1]、市民向け解説では「汎用されている結紮切除法」を中心に説明しており、術式の選択は痔核の状態や医療機関の方針によって医師が判断します。近年はレーザーを使った切除術など、痛みや出血の軽減を目的とした術式を導入する医療機関も増えています。レーザーによる痔核切除術の痛み・費用・回復期間については、当サイトの「レーザーによる痔核切除術」の記事で専門的に解説しています。

治療法をひと目で比較する

保存的治療・外来処置・手術の位置づけ比較(日本大腸肛門病学会の解説をもとに作成)
治療法 主な対象 効果の特徴 入院・回復の目安
保存的治療(生活改善・薬物療法) Ⅰ〜Ⅱ度、軽症 症状の緩和はできるが脱出そのものは消失させられない[1] 通院不要〜通常の外来通院
硬化療法(PAO) 出血が主体の痔核 止血効果は速効性だが脱肛への効果は期待できない[1] 外来
ALTA療法(ジオン注) 脱出する内痔核(Ⅱ〜Ⅳ度) 初回排便から脱出消失が多いが1年で2〜10%が再発[1] 入院1〜3泊、または日帰りの施設もある[1]
輪ゴム結紮療法 比較的小さい脱出・出血例[1] やわらかく単発の痔核に好適応、硬い線維化痔核には不向き[1] 外来(日帰り)
結紮切除術 Ⅲ〜Ⅳ度、外痔核合併・一塊化例 根治性が高い一方、術後の疼痛・出血などの合併症が多い[1] 医療機関により異なる(要問い合わせ)

出典:日本大腸肛門病学会「痔核の治療」(市民のみなさまへ)[1]。費用の目安は本記事後半の「医療費の目安」の項を参照してください。具体的な入院日数・費用は医療機関ごとに異なるため、受診先で必ず確認してください。

どの治療法にも一長一短があり、体質・持病・症状の程度によって向き不向きがあります。薬機法上、特定の治療法が「誰にでも必ず効く」とは言えず、実際にどの治療が適しているかは、肛門の診察を受けたうえで医師と相談して決めることが基本です。

治療後の生活・回復の目安

ALTA療法や輪ゴム結紮療法など日帰りで行える処置の場合、当日から普段どおりの生活に戻れることが多い一方、処置後しばらくは出血や違和感が残ることがあります。結紮切除術のような手術では、創部の痛みが数日〜1、2週間続くことがあり、排便時の痛みを避けようといきみを我慢しすぎると、かえって便秘を招き回復を遅らせることもあります。いずれの治療後も、食物繊維と水分を十分にとり、便を軟らかく保つことが、痛みを抑えながら回復を早める基本になります。治療方法ごとの具体的な費用・入浴や運動を再開できる時期の目安は、担当医療機関の指示に従ってください。

受診の目安:今すぐ受診すべきサインと、自宅で様子を見てよい場合

いぼ痔の出血や脱出の多くは命に関わるものではありませんが、「痔だと思っていたら別の病気だった」というケースは珍しくありません。とくに注意すべきなのが、痔とよく似た症状で見つかる大腸がん・直腸がんです。

すぐに受診したほうがよいサイン

  • 市販の痔疾用薬を1〜2週間使用しても症状が改善しない
  • 脱出した痔核が指で押しても戻らない、または強い痛みで動けない
  • 出血量が多く、めまい・立ちくらみなど貧血の症状がある
  • 発熱を伴う強い痛みや腫れがある(感染を伴う可能性)
  • 排便時の出血だけでなく、便が以前より細くなった・便秘と下痢を繰り返す・原因不明の体重減少がある

痔とがんの出血、何が違うのか

国立がん研究センター がん情報サービスは、大腸がんについて「早期の段階では自覚症状はほとんどありません」としたうえで、「進行すると、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着するなどの症状があらわれます」と説明しています[3]。同センターはまた、「大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸にできやすい」とし、「腺腫という良性の腫瘍ががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります」としています[3]。直腸は肛門にもっとも近い部位であり、直腸にできたがんからの出血は、痔核による出血と同じく鮮やかな赤(鮮血)として現れやすいという点が、自己判断を難しくしている理由の一つです。つまり、大腸がん・直腸がんの出血は、痔核の出血と見た目だけでは区別がつかないことがあります。「鮮血だから痔」と自己判断してしまうことが、受診の遅れにつながる大きな要因になります。痔核による出血は排便時に一時的に出て自然に止まるのが典型的なパターンですが[2]、40歳以降で出血が続く場合や、家族に大腸がんの人がいる場合は、痔の既往があっても大腸内視鏡検査などで一度は大腸の状態を確認しておくことが勧められます。

痔核の出血と大腸がん・直腸がんの出血、見分けの手がかり(自己判断の基準にはできません)
手がかり 痔核(いぼ痔)に典型的な傾向 大腸がん・直腸がんを疑うべき傾向
出血のタイミング 排便時に出て、排便後は自然に止まる[2] 排便と関係なく出血・下血が続くことがある[3]
色 鮮紅色[2] 鮮血のことも、便に暗く混じることもあり、色だけでは区別できない[3]
排便習慣 通常は大きな変化を伴わない 便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すなどの変化を伴うことがある
体重 変化なし 原因不明の体重減少を伴うことがある
初発年齢・家族歴 年齢を問わず起こりうる 40歳以上で初めての血便、大腸がんの家族歴がある場合はリスクが上がる
早期の自覚症状 出血・脱出などではじめから自覚しやすい 「早期の段階では自覚症状はほとんどありません」[3]ため、無症状でも進行していることがある

出典:日本大腸肛門病学会「痔核についてのQ&A」[2]、国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」[3]。この表はあくまで一般的な傾向であり、実際の診断は医療機関での検査によってのみ確定できます。

結論として、「痔だから大丈夫」と自己判断せず、出血のパターンがいつもと違う・便通の変化を伴う・年齢的にリスクがある場合は、肛門科だけでなく消化器内科・大腸肛門科を受診し、必要に応じて大腸内視鏡検査を受けることが、痔核と大腸がんを取り違えないための唯一確実な方法です。

「痔の既往があるから安心」とは限らない理由

以前から痔核の診断を受けている人は、新しい出血も「いつもの痔だろう」と考えがちですが、これがかえって受診を遅らせる落とし穴になります。痔核と大腸がん・直腸がんは併存することがあり、痔核があるからといって大腸に別の病気がないとは限りません。国立がん研究センターは大腸がんについて、早期には自覚症状がほとんどない一方、進行すると血便・下血や便への血液付着が現れるとしています[3]。出血の量や色、痛みの有無だけで「痔か、がんか」を自分で判定することはできないため、出血が続く場合や、これまでと出血のパターンが変わった場合は、痔核の既往があっても改めて受診し、必要な検査を受けることが勧められます。

日本と米国(ASCRS)のガイドライン比較

いぼ痔の治療方針は国によって大きく異なるわけではありませんが、guidelineの重点の置き方には違いがあります。日本大腸肛門病学会は前述のとおりGoligher分類による病期別のアプローチ(Ⅰ・Ⅱ度は保存的治療、Ⅱ・Ⅲ度でALTA療法・輪ゴム結紮療法、Ⅲ・Ⅳ度で手術)を軸にしています[1]。米国大腸肛門外科学会(American Society of Colon and Rectal Surgeons、ASCRS)も2024年改訂のガイドラインで、症候性の痔核に対してまず食物繊維・水分摂取や排便習慣の指導といった保存的治療を第一選択とし、グレードⅠ・Ⅱおよび治療に反応しにくい一部のグレードⅢに対して、輪ゴム結紮法をはじめとする外来処置(office-based procedures)を提示、外痔核や脱出を伴うグレードⅣなどには痔核切除術(hemorrhoidectomy)を提示するという趣旨の内容を示しています(Hawkins et al., Dis Colon Rectum 2024)[5]。

日本と米国(ASCRS)のガイドライン比較(趣旨)
項目 日本(日本大腸肛門病学会) 米国(ASCRS 2024年改訂)
分類の軸 Goligher分類(Ⅰ〜Ⅳ度)を明記[1] グレード分類を用いつつ症状の程度も重視(趣旨)[5]
第一選択 食物繊維摂取・便通改善による保存的治療[1] 食物繊維・水分摂取と排便習慣の指導(趣旨)[5]
外来処置 ALTA療法(注射による硬化療法)・輪ゴム結紮療法[1] 輪ゴム結紮法を中心とした外来処置(趣旨)[5]
手術の位置づけ 結紮切除術が標準術式[1] 症状の強い外痔核合併例などに痔核切除術(趣旨)[5]

大きな方向性(保存的治療→外来処置→手術という段階的アプローチ)は共通していますが、日本ではALTA療法という薬剤による硬化療法が独自に広く普及している点が特徴的です[1][4]。どちらが優れているかを一概に決めるものではなく、痔核の状態や体質に応じて医師が選択します。日本の医療機関を受診する場合でも、海外の学会がどのような考え方を示しているかを知っておくと、「なぜこの処置を勧められたのか」を医師に質問する際の手がかりになります。

いぼ痔を悪化させない生活習慣・予防

いぼ痔そのものの体質(静脈叢の存在)は生まれつきのものですが[2]、悪化のきっかけになる生活習慣は日々の工夫で減らせます。日本大腸肛門病学会が挙げる誘因(いきみ・長時間の座位・重い荷物や筋トレによる腹圧・アルコールの多飲・辛い食べ物の多食・お尻の冷え)[2]を踏まえると、次のような対策が考えられます。

  • 便秘・下痢を防ぐため、食物繊維と水分を十分にとる[1]
  • 排便時に強くいきまない。長く座り込みすぎない
  • デスクワーク・長時間の運転では1時間に一度は立ち上がって血流を促す
  • 重い荷物を持つ作業や激しい筋力トレーニングが続くときは腹圧のかけすぎに注意する
  • アルコールの多飲・辛い食べ物のとりすぎを控える
  • 入浴などでお尻を温め、冷やしすぎない
  • 排便後は温水洗浄などで清潔を保ちつつ、こすりすぎない

より具体的な自宅ケア17項目(座り方・食事・トイレ習慣の工夫など)は、当サイトの「自宅でできる痔(いぼ痔)のケア」の記事にまとめています。なお、いぼ痔は再発しやすい病気であり、いったん症状が落ち着いても、いきみや長時間の座位といった誘因が続けば繰り返すことがあります。生活習慣の見直しは、治療後の再発を防ぐうえでも役立ちます。

デスクワーク・トラック運転など「座り仕事」の人が気をつけたいこと

長時間の座り仕事は、日本大腸肛門病学会が挙げる誘因の一つです[2]。座った姿勢が続くと、肛門周囲の血液がうっ滞しやすくなるため、デスクワークやトラック運転、長距離の移動が多い人は、1時間に一度は立ち上がって歩く、クッションで座面の圧力を分散させる、といった工夫が役立ちます。また、トイレでスマートフォンを見ながら長時間座り続けることも、知らず知らずのうちに肛門への負担といきみの時間を増やしてしまうため、排便は短時間で済ませる意識を持つことも大切です。筋力トレーニングや重量物を扱う仕事をしている人は、動作の瞬間に強く息を止めて腹圧をかけすぎないよう、呼吸を止めずに力を入れるフォームを意識することも、誘因を減らす一つの工夫になります。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16


よくある質問(FAQ)

いぼ痔は自然に治りますか?
軽度(Ⅰ度)であれば、いきみを避け食物繊維をとるなどの生活改善で症状が落ち着くことはありますが[1]、脱出を伴う痔核(Ⅱ度以上)は自然に消えるとは限らず、放置すると進行することがあります。薬物療法だけでは脱出症状は消失しないとされているため[1]、症状が続く・悪化する場合は医療機関での評価をおすすめします。
痔核の出血は何色ですか?がんの出血と見分けられますか?
痔核の出血は「鮮紅色で、排便時に出血しますが排便終了後には自然に止まります」とされています[2]。ただし直腸がんなどの出血も鮮血のことがあり、見た目だけでは区別できません[3]。出血が続く、便の性状が変わった場合は自己判断せず受診してください。
内痔核と外痔核、痛いのはどちらですか?
歯状線より肛門側の皮膚にできる外痔核は知覚神経があるため痛みを感じやすく、歯状線より直腸側の粘膜にできる内痔核は知覚神経がないため痛みを感じにくいとされています[1]。「痛くないから軽症」とは限らず、内痔核も進行すれば脱出や出血が悪化することがあります。
ALTA療法(ジオン注射)とはどんな治療ですか?
脱出する内痔核に対して薬剤を注射し、痔核を硬化・退縮させる治療法で、「初回排便時から脱出がみられなくなることが多い」とされています[1]。切らずに行える処置として広く行われていますが、適応となる病期は医師の診察で判断されます。
手術(結紮切除術)はどのくらいの入院が必要ですか?
結紮切除術は「痔核を肛門管の外から内へ縦方向に切離し根部を結紮後に痔核を切除する」標準術式です[1]。入院期間や日帰りの可否は病院の方針や痔核の状態によって異なるため、受診先で確認してください。レーザーを使った術式の痛み・回復期間の目安はこちらの記事で解説しています。
妊娠中にいぼ痔ができやすいのはなぜですか?
妊娠中は子宮の増大による骨盤内の血流変化や、便秘によるいきみが誘因として関係すると考えられています。妊娠・出産は痔核の誘因の一つとして挙げられています[2]。妊娠中は使用できる薬剤が限られるため、自己判断で市販薬を使わず、産婦人科・肛門科に相談することが大切です。
市販の痔疾用薬はどのくらい使っても大丈夫ですか?
薬物療法は症状の緩和に有効ですが、脱出症状そのものを消失させる効果はないとされています[1]。1〜2週間使用しても改善しない、悪化する場合は自己判断で使い続けず、医療機関を受診してください。
いぼ痔と切れ痔はどう違いますか?
いぼ痔(痔核)は歯状線を境にした静脈叢のうっ血・肥大で、内痔核は痛みが少なく外痔核は痛みやすいのが特徴です[1]。一方、切れ痔(裂肛)は便秘などで硬い便を出す際に肛門の皮膚が裂けてできるもので、排便のたびに鋭い痛みが出やすい点が異なります。両方を合併していることもあります。
いぼ痔の手術後、再発することはありますか?
手術で痔核そのものを切除しても、いきみや長時間の座位といった誘因が続けば、別の場所に新たな痔核ができることがあります。再発を防ぐうえでも、食物繊維の摂取や排便習慣の見直しなどの生活改善が引き続き重要です[1]。
痔核があると診断されていますが、今回の出血もいつもと同じか不安です。どうすればよいですか?
出血の見た目だけで痔核とがんを区別することはできません[3]。痔核の既往があっても、出血のパターンがいつもと違う、便通の変化を伴う、40歳以降で出血が続くといった場合は、自己判断せず消化器内科・大腸肛門科を受診し、必要に応じて大腸内視鏡検査を受けることが勧められます。
お尻を冷やすといぼ痔が悪化するというのは本当ですか?
お尻を冷やすことは、痔核の誘因の一つとして日本大腸肛門病学会が挙げている要因です[2]。冷えによって肛門周囲の血流が悪くなることがうっ血につながると考えられており、入浴などで体を温め、冷えを避けることが生活上の工夫として勧められます。
急に激痛と大きな腫れが出ました。すぐ病院に行くべきですか?
はい。以前から脱出を繰り返していた痔核が絞扼されて血流障害を起こし、急に戻らなくなる「嵌頓痔核」の可能性があります[2]。緊急手術または待機手術が必要になることがあるため[2]、市販薬で様子を見ようとせず、できるだけ早く肛門科・大腸肛門科(時間外なら救急外来)を受診してください。
ALTA療法(ジオン注)は誰でも受けられますか?
いいえ。PMDAの患者向医薬品ガイドによると、妊婦または妊娠している可能性のある人、授乳中の人、透析療法を受けている人、嵌頓痔核がある人、過去にジオン注やアミド型局所麻酔剤に過敏症があった人は使用できません[4]。放射線治療歴や腎臓・肝臓の障害がある人は事前に医師へ申告する必要があります[4]。
ALTA療法を受けても再発しますか?
日本大腸肛門病学会によると、ほとんどの症例で初回排便時から脱出はみられなくなりますが、1年後には2〜10%の症例で脱出の再発が生じているとされています[1]。それでも再発時にもう一度ALTA療法を希望する患者が多いのが特徴とされています[1]。

いぼ痔(痔核)に関する記事一覧

本記事で扱いきれなかった個々の薬剤の副作用の詳細や、手術ごとの正確な費用については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。実際の治療選択は、肛門の診察を受けたうえで医師と相談して決めることをおすすめします。

参考文献

  1. 日本大腸肛門病学会「痔核の治療」市民のみなさまへ coloproctology.gr.jp
  2. 日本大腸肛門病学会「痔核についてのQ&A」市民のみなさまへ coloproctology.gr.jp
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」 ganjoho.jp
  4. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)患者向医薬品ガイド「ジオン注 無痛化剤付」2023年4月更新 info.pmda.go.jp
  5. American Society of Colon and Rectal Surgeons「Clinical Practice Guidelines for the Management of Hemorrhoids」Hawkins et al., Dis Colon Rectum, 2024 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov