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JHO 病気ペディア

おならおなら / Flatulence / Intestinal Gas

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
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✦ 結論から言うと

おなら(腸内ガス)は、胃や大腸にたまったガスの65〜70%が食事や会話のときに無意識に飲み込んだ「嚥下空気」で、残りは大腸に届いた未消化の糖質を腸内細菌が発酵させることで発生します[6]。健康な人でも1日平均10±1回、多い人でも1日20回程度までは正常範囲とされ[2]、回数だけで心配しすぎる必要はありません。ただし回数の急な増加に加えて体重減少・血便・強い腹痛が続く場合は、過敏性腸症候群や大腸の病気のサインである可能性があるため消化器内科の受診が勧められます[1]。

主な原因 ①食事や会話で飲み込む空気(嚥下空気)②大腸での腸内細菌による発酵③早食い・炭酸飲料・ガムなどの習慣[6]
正常な回数 健常者の1日平均は10±1回、上限の目安は20回程度[2]
受診の目安 回数急増+体重減少・血便・強い腹痛・排便習慣の変化が続くとき[1][7]

おならとは?ガスが出る仕組みと2つの原因

おならとは、胃や腸の中にたまったガスが肛門から排出される、誰にでも起こる生理現象です。心身医学領域の症例報告によれば、実際に胃や大腸に存在するガスの65〜70%は、食事中や会話中、緊張時の食いしばりなどで無意識に飲み込んでしまった空気(嚥下空気)だと考えられています[6]。この飲み込む動作が過剰になり、げっぷや上腹部の張りなど日常生活に支障をきたすほどになった状態は「空気嚥下症(呑気症)」と呼ばれます[6]。

もう一つの原因は、大腸で暮らす腸内細菌による発酵です。小腸で分解・吸収されにくい糖質(FODMAPと呼ばれる発酵性の糖類)がそのまま大腸に届くと、腸内細菌が急速に発酵・分解し、水素ガスやメタンガスなどを発生させます[1]。日本消化器病学会の機能性消化管疾患診療ガイドライン2020は、小麦・タマネギ・ひよこ豆・レンズ豆・リンゴ・トウモロコシ・牛乳・ヨーグルト・はちみつなどをFODMAPを多く含む代表的な食品として挙げています[1]。

腸のガスの主な由来は「飲み込んだ空気」(約65〜70%)と「腸内細菌による発酵」(約30〜35%)の2つ。健常者の1日の回数目安とあわせてJHO編集部が作図[6][2]

おならの臭いの強さは、主に硫黄を含む食品(ニンニク・ネギ類・卵・肉類など)をどれだけ摂ったか、腸内でどの細菌がどれだけ発酵を行ったかによって変わります。日本消化器病学会のガイドラインは、便秘型の過敏性腸症候群に大建中湯を投与した症例集積研究で、腹部単純X線による腸管ガス面積の低下とともに腹部膨満・放屁・腹鳴・残便感が有意に改善したことを紹介しており、ガスの量と腹部膨満感には関連があることを裏づけています[1]。

出典:心身医学58巻8号(2018)本間洋州ほか[6]/日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]

ガスの成分と臭いの正体

腸内ガスの研究をまとめた学術レビューは、腸管内ガスの99%以上は水素・二酸化炭素・メタンガスで占められており、臭いのもととなる成分は全体の1%にも満たないと報告しています[11]。つまり「量が多い=臭いが強い」とは限らず、量の大部分を占める水素やメタンはそれ自体にほとんど臭いがありません。同レビューは、Bacteroides・Ruminococcus・Roseburia・Clostridium・Eubacterium・Desulfovibrio・Methanobrevibacterなどの腸内細菌が、大腸でのガス産生に関わる代表的な菌種として挙げられると整理しています[11]。臭いの強さを左右するのは、これら細菌がどんな食品を分解するか、特にニンニク・ネギ類・卵・肉類など硫黄を含む食品をどれだけ摂ったかによるところが大きいと考えられます[11]。

なお、腸内細菌の発酵によるガス産生だけがおなかの張り(腹部膨満感)の原因とは限らない、という指摘もあります。腸内でのガスの絶対量よりも、腸がガスに対してどれだけ敏感に反応するか(内臓知覚過敏)が張りの感じ方に影響するとの見方もあり[1]、日本消化器病学会のガイドラインも過敏性腸症候群の病態として「内臓知覚過敏」を挙げています[1]。同じ量のガスでも、感じ方には個人差があるということです。

診断の目安となる数値・基準:1日の回数と体内のガス量

英国の消化器研究者Tomlin氏とRead氏による健常者25名を対象にした研究では、ベースラインの1日あたりの放屁回数は平均10±1回で、平均値に標準偏差の2倍を加えた「正常範囲の上限の目安」は20回程度と報告されています[2]。同研究では、発酵性の糖質(ラクツロース10g/日)を摂取させると回数は19±2.4回まで増加した一方、性別・年齢・体内でメタンガスを産生しやすい体質かどうかは、回数に大きな影響を与えなかったと述べられています[2]。つまり「男性だから」「年齢のせいで」おならの回数が多い、という単純な理由づけは科学的な裏づけが乏しく、実際には食事内容や腸内細菌の状態のほうが回数に影響しやすいと考えられます[2]。

おならの回数・関連する目安数値
項目 目安の数値 出典・備考
健常者の1日の平均回数 10±1回 Tomlin & Read(1996年)健常者25名の研究[2]
正常範囲の上限の目安 約20回/日 平均値+標準偏差2倍で算出[2]
発酵性糖質(ラクツロース10g)摂取後 19±2.4回/日 同研究、糖質負荷試験[2]
胃・大腸のガスに占める嚥下空気の割合 約65〜70% 空気嚥下症に関する心身医学領域の報告[6]
日本人のIBS(過敏性腸症候群)有病率 2.2% Rome IV基準による世界疫学調査の日本データ[1]
日本人の機能性腹部膨満の有病率 1.2% 同上、機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]
日本人のIBS関連疾患群の合計有病率 25.2% 機能性便秘16.6%+機能性下痢5.2%+機能性腹部膨満1.2%+IBS本体2.2%の合計[1]
消化器内科受診患者に占めるIBSの割合 約30% 日本消化器病学会ガイドラインが紹介する国内の受診動向[1]

出典:Tomlin J, Read NW. Dig Dis Sci. 1996[2]/日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]/心身医学58巻8号(2018)[6]

回数だけでなく「回数が急に増えた」「臭いが急に強くなった」という変化のスピードも重要な手がかりです。長年の生活習慣として回数が多い人よりも、これまで普通だった人が短期間で回数や臭いが変わった場合のほうが、体調変化のサインとして注意が必要です[1]。

日本消化器病学会のガイドラインは、機能性消化管疾患(IBSを含む)を持つ人が全世界で人口の40.7%にのぼるとするRome IV基準の国際疫学調査を紹介しており、日本国内での機能性消化管疾患の有病率は40.3%と報告されています[1]。おならや腹部膨満感の悩みは、決して珍しいものではなく、多くの人が経験する症状だということが、この数字からもわかります[1]。

過敏性腸症候群・呑気症・乳糖不耐症との見分け方

おなかの張りやガスが続く原因は一つではありません。以下は主な3つの状態を比較したものです。いずれも自己判断だけで区別するのは難しく、症状が続く場合は消化器内科での検査が確実です[1]。

おなかの張り・ガスが多い状態の見分け方
項目 過敏性腸症候群(IBS) 呑気症(空気嚥下症) 乳糖不耐症
主な症状 腹痛を伴う便通異常(下痢・便秘)、腹部膨満[1] 繰り返すげっぷ、上腹部膨満感[6] 乳製品摂取後の水様下痢、腹鳴、腹部膨満[5]
症状が出るタイミング ストレスや特定の食品(FODMAP)摂取と関連[1] 食事中・会話中・緊張時に空気を飲み込みやすい[6] 乳糖を含む食品を摂ってから数時間〜1日程度[5]
診断の手がかり Rome IV基準+器質的疾患の除外[1] Rome III基準に基づく空気嚥下の客観的確認+器質的疾患の除外[6] 経口乳糖負荷試験、呼気中水素濃度測定[5]

見分けるカギ:乳製品を摂った後にだけ症状が出るなら乳糖不耐症、げっぷと空気を飲み込む自覚があれば呑気症、ストレスや特定の食品と連動した腹痛・便通異常が続くなら過敏性腸症候群の可能性が高くなります[5][6]。ただし小児慢性特定疾病情報センターは、乳糖不耐症はLCT遺伝子の異常による先天性のものと、感染症などで一時的に乳糖分解酵素が減る二次性のものがあると説明しており[5]、原因の特定には検査が必要です。

出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]/小児慢性特定疾病情報センター「乳糖不耐症」[5]/心身医学58巻8号(2018)[6]

過敏性腸症候群(IBS)のタイプと診断の考え方

おなかの張りやガスの悩みの背景としてよく挙がるIBSは、便通のパターンによっていくつかのタイプに分けられます。日本消化器病学会のガイドラインは、国際的な診断基準であるRome IV基準を用いて、器質的な病気(がんや炎症性腸疾患など)を除外したうえで診断することを標準としています[1]。

IBSの主なタイプ
タイプ 便通の特徴
便秘型(IBS-C) 硬い便・コロコロ便が多い[1]
下痢型(IBS-D) 軟便・水様便が多い[1]
混合型(IBS-M) 便秘と下痢を繰り返す[1]

出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]

日本消化器病学会のガイドラインは、器質的疾患が除外された場合でも、腹痛を伴わない便通異常は「機能性便秘」「機能性下痢」、便通異常を伴わない腹部膨満感は「機能性腹部膨満」として、IBSとは別に整理されると説明しています[1]。つまり「おなかが張るけれど便通は普通」という状態も、IBSとは異なる独立したタイプとして医学的に位置づけられているということです。どのタイプに近いかによって食事指導や治療の進め方が変わるため、自己判断でタイプを決めつけず、症状が続く場合は消化器内科で相談することが勧められます[1]。

経過と対処法:原因別のセルフケア

おならの回数や臭いが気になる場合、まず見直したいのは食事と生活習慣です。日本消化器病学会のガイドラインは、間食や欠食を慎み、規則的な食事習慣を持つことをIBS患者に共通して有用な事項として挙げています[1]。

食事でできる対処(NEXT-THEN形式):

豆類・芋類・小麦・乳製品・りんごなど特定の食品を摂った後に張りが強くなるなら、その食品がFODMAP(発酵性の糖類)を多く含んでいる可能性があるため、摂取量を一時的に減らして反応を見るとよいでしょう。米国消化器病学会(ACG)は、FODMAPが大腸に届くと腸内細菌が糖を分解してガスを発生させ、そのガスが大腸の壁を広げることで腹部膨満・張り・けいれん・痛み・下痢または便秘を引き起こすと説明しています[10]。

早食いや炭酸飲料、ガムを噛む習慣が思い当たるなら、空気を飲み込みやすくなっている可能性があるため、ゆっくりよく噛んで食べる、炭酸飲料を控える、ストローの使用を減らすといった対処が有効な場合があります。心身医学領域の報告では、実際にげっぷをしている動画や画像検査で空気嚥下の様子を本人に示し、生活指導を行うことで症状の頻度が改善した症例が紹介されています[6]。

ソルビトール・キシリトール・マルチトールなどの人工甘味料(ポリオール)を含むガムや飲料を日常的に摂っているなら、これらもガスの原因になりうるため、摂取を控えて変化を確認するとよいでしょう[10]。

これらのセルフケアを2〜4週間試しても改善しないなら、自己判断でFODMAP制限を長く続けるのではなく、消化器内科を受診して原因を確認することが勧められます[1]。

ガスが増えやすい食品・増えにくい食品の目安

オーストラリアのモナッシュ大学は低FODMAP食の概念を確立した研究機関で、FODMAP制限食を実践したIBS患者の4人に3人で症状が改善したとしています[4]。以下は、米国消化器病学会(ACG)と日本消化器病学会のガイドラインで挙げられている代表的な食品の傾向をまとめたものです。

ガスが増えやすい食品・比較的増えにくい食品の例
分類 ガスが増えやすい食品例 比較的増えにくい食品例
穀類・豆類 小麦、ひよこ豆、レンズ豆[1] 米、キヌア
野菜 タマネギ、ニンニク[1] にんじん、トマト
果物 リンゴ、トウモロコシ[1] バナナ、ぶどう(適量)
乳製品 牛乳、ヨーグルト[1] 乳糖不使用(ラクトースフリー)製品
甘味料 ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなどのポリオール[10] 砂糖(少量)
その他 はちみつ、炭酸飲料[1] 水、ノンカフェイン茶

出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]/米国消化器病学会(ACG)Low-FODMAP Diet[10]/モナッシュ大学 FODMAP情報[4]

米国消化器病学会は、FODMAPが大腸に到達すると腸内細菌が糖を分解してガスを発生させ、そのガスが大腸の壁を広げることで腹部膨満・張り・けいれん・痛み・下痢または便秘を引き起こすと説明しており[10]、低FODMAP食を実践した場合に改善しやすい症状として腹部膨満と腹痛を挙げています[10]。ただし、これらの食品を一律に「絶対に避けるべき食品」と考える必要はなく、自分がどの食品に反応しやすいかを記録しながら少しずつ確認していくことが大切です。

出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]/米国消化器病学会(ACG)Low-FODMAP Diet[10]/心身医学58巻8号(2018)[6]

受診の目安:今すぐ受診か、自宅で様子見か

おなら自体は生理現象であり、回数や臭いだけで重い病気を心配しすぎる必要はありません[1]。ただし、以下のサインを伴う場合は自己判断せず、消化器内科(内科・消化器科)を受診してください。

🔴 すぐに受診:血便・黒い便、原因不明の体重減少、激しい腹痛、嘔吐を伴う場合。国立がん研究センターは、大腸がんが進行すると腸閉塞となり、便が出なくなって腹痛や嘔吐などの症状が起こると説明しています[7]。

🟡 早めに受診:便秘・下痢を繰り返す、便が細くなる、便が残る感じが続く、おなかの張りが2週間以上続く場合。国立がん研究センターは、大腸がんの症状として便通異常・便が細くなる・残便感・おなかが張るなどを挙げています[7]。

🟢 自宅で様子見可:特定の食品を摂った後だけ張りやガスが増える、ストレスが強い時期だけ症状が出るなど、原因に心当たりがあり他の症状を伴わない場合。

特に女性の場合、国立がん研究センターは卵巣がんについて「初期の段階ではほとんど自覚症状がありません」と説明しています[9]。おなかの張りが続くだけで卵巣がんと結びつけて過度に不安になる必要はありませんが、初期に症状が出にくい病気であることは知っておくとよいでしょう[9]。なお、大腸がんの手術後に一時的に「おならが出にくくなりおなかが張る」という状態が起こることもありますが、これは術後の一過性の変化であり、がんそのものの初期症状とは区別されています[8]。

何科を受診すればよいか

おなかの張りやガスの悩みが続く場合、まず相談する診療科は消化器内科(内科を掲げるクリニックでも対応可能な場合があります)です。排便習慣の変化や血便を伴う場合は、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)による確認が必要になることがあります[7]。女性で下腹部の張りが続き、月経周期と関係なく症状が長引く場合は、婦人科での相談もあわせて検討するとよいでしょう[9]。乳製品を摂った後だけ症状が出る場合は、消化器内科または内科で乳糖不耐症の検査(呼気中水素濃度測定など)が可能です[5]。これらの検査や大腸内視鏡検査は、症状の診断を目的とする場合は保険適用となり、自己負担は年齢や所得に応じて1〜3割です(制度の詳細は加入している健康保険や医療機関にご確認ください)。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」[7]「大腸がんQ&A」[8]「卵巣がん」[9]/小児慢性特定疾病情報センター「乳糖不耐症」[5]

日本と米国のガイドライン比較:FODMAP食への向き合い方の違い

日本消化器病学会のIBS診療ガイドラインは、2014年の初版に続き、2020年に改訂第2版として刊行されました[1]。改訂版では、最新のエビデンスを取り入れて内容がより充実したとされています[1]。ガイドラインは今後も継続的な改訂が予定されており、FODMAPに関する記載も今後のエビデンス次第で更新される可能性があります[1]。

おならや腹部膨満感の対処法として近年注目されるのが低FODMAP食ですが、日本と米国のガイドラインでは推奨の強さに違いがあります。ここでは両者を横に並べ、どこが同じでどこが違うかを示します。

項目 日本(日本消化器病学会 2020) 米国(ACG 2021)
低FODMAP食の推奨 欧米の複数の無作為比較試験で症状軽減が示されているが、本邦における受容性・有効性はさらなる検討が必要と明記[1] IBS患者の症状全般を改善する目的で、低FODMAP食の限定的な試行を推奨(条件付き推奨)[10]
腹部膨満感(おなかの張り)の位置づけ 便通異常のない腹部膨満感は「機能性腹部膨満」として独立して扱う(有病率1.2%)[1] 腹部膨満はIBSでよく見られる症状だが、IBS診断に必須の症状ではないと整理[10]

日本のガイドラインが低FODMAP食に慎重な表現を使っているのは、欧米の研究結果をそのまま日本人に当てはめてよいかのデータがまだ十分でないためです[1]。一方、米国のガイドラインは同じ研究群を根拠に一歩踏み込んで「試してみる価値がある」という推奨まで進めています[10]。日本の医療機関にかかる際は、この温度差を知ったうえで、自己判断で長期間の食事制限を続けるのではなく、医師や管理栄養士に相談しながら試すことが望ましいといえます。

この「同じ研究を見ても踏み込み方が違う」という点こそ、日本の情報だけを見ていては気づきにくい部分です[1][10]。

よくある質問(FAQ)

おならの回数が多すぎるのは病気ですか?
健常者でも1日平均10±1回、上限の目安20回程度までは正常範囲とされています[2]。回数だけでなく、体重減少や血便など他の症状を伴うかどうかが受診の判断材料になります[1]。
おならの臭いが急に強くなったのはなぜですか?
ニンニクや肉類など硫黄を含む食品の摂取量や、腸内細菌による発酵の内容が変わったことが主な理由と考えられます[1]。臭いの急な変化に加えて便通の変化が続く場合は消化器内科での相談が勧められます[1]。
おならを我慢するのは体によくないですか?
今回参照した資料には、我慢そのものの健康影響を直接示す数値は見当たりませんでした。ただし腸にガスがたまることで腹部膨満感が強まることは、腸管ガス面積とIBS症状の関連を示した研究からも裏づけられています[1]。
おなかが張ってガスがたまるのはストレスが原因ですか?
ストレスや緊張時の食いしばりが、無意識に空気を飲み込む動作を誘発する要因の一つとして報告されています[6]。心理社会的な背景を持つ空気嚥下症の症例では、生活環境の調整とともに症状が改善したケースがあります[6]。
豆類を食べるとガスが増えるのは本当ですか?
本当です。日本消化器病学会のガイドラインは、豆類(ひよこ豆・レンズ豆など)をFODMAPを多く含む代表的な食品として挙げており、大腸で腸内細菌に急速に発酵されることで水素ガスなどが発生すると説明しています[1]。
おならが全く出ないのも問題ですか?
今回参照した資料には、おならが出ないこと自体の基準値は見当たりませんでした。国立がん研究センターは、大腸がんが進行すると腸閉塞となり便もガスも出なくなり、腹痛や嘔吐を伴うことがあると説明しているため[7]、排便もガスも数日出ず腹痛や嘔吐を伴う場合は速やかな受診が必要です。
市販のガス止めの薬は効果がありますか?
今回参照した資料には市販薬の効果を直接検証したデータは見当たりませんでした。日本消化器病学会のガイドラインでは、便秘型IBSで腹部膨満を伴う患者への漢方薬(大建中湯)投与により、腸管ガス面積の低下とともに腹部膨満・放屁の有意な改善が報告された症例集積研究が紹介されています[1]。薬の使用は自己判断せず医師に相談してください。
低FODMAP食はずっと続けたほうがいいですか?
米国消化器病学会は低FODMAP食を「限定的な試行」として位置づけています[10]。日本消化器病学会も、長期の食事制限について本邦でのデータがさらに必要だとしており[1]、自己判断で長期間続けるのではなく専門家に相談しながら進めることが望ましいといえます。
子どもや高齢者でもおならの回数の目安は同じですか?
今回参照した資料(Tomlin & Readの研究)は成人の健常者を対象にしたものであり[2]、子どもや高齢者に同じ回数目安をそのまま当てはめられるかについてのデータは見当たりませんでした。年齢によって食事内容や腸内細菌の状態も異なるため、気になる場合は年齢に応じて小児科・内科に相談してください。
おならが臭くないのに回数だけ多いのはなぜですか?
学術レビューによれば、腸内ガスの99%以上は水素・二酸化炭素・メタンガスといったほぼ無臭の成分で占められており、臭いのもととなる成分は全体の1%未満です[11]。回数が多くても、硫黄を含む食品の摂取が少なければ臭いは強くなりにくいと考えられます。
妊娠中におならやおなかの張りが増えるのは異常ですか?
今回参照した資料には、妊娠中に限定したおならの回数データは見当たりませんでした。ホルモンバランスの変化や子宮の増大で腸が圧迫されることが一般的な要因として知られていますが、強い腹痛や出血を伴う場合は自己判断せず産婦人科・かかりつけ医に相談してください。

今日からできる生活習慣チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、日常生活で振り返りやすいポイントをまとめました。すべてに当てはまる必要はなく、思い当たる項目から一つずつ見直すことをおすすめします。

おなら・おなかの張りが気になるときのセルフチェック
チェック項目 関連する原因
早食いをしていないか 嚥下空気の増加[6]
炭酸飲料やガムを日常的に摂っていないか 嚥下空気の増加[6]
豆類・小麦・乳製品を摂った後に張りが強くなっていないか FODMAP発酵によるガス産生[1]
人工甘味料(ソルビトールなど)入りの食品を摂っていないか ポリオールによるガス産生[10]
ストレスや緊張が続いていないか 空気嚥下の増加、内臓知覚過敏[6][1]
不規則な食事や欠食が続いていないか IBS症状の悪化要因[1]

出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020[1]/心身医学58巻8号(2018)[6]/米国消化器病学会(ACG)Low-FODMAP Diet[10]

チェックリストで複数の項目に当てはまったからといって、必ずしも重い病気があるわけではありません[1]。まずは生活習慣を1〜2週間ほど見直し、それでも改善しない場合や、前述の🔴🟡のサインが当てはまる場合に、消化器内科で相談することが確実な進め方です[1][7]。

おならに関する記事一覧

おならを我慢することの長期的な健康影響や、日本人におけるFODMAP制限の詳しい効果データについては、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。研究が進み次第、内容を更新します。

参考文献

  1. 日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)」2020年7月 jsge.or.jp↩
  2. Tomlin J, Read NW. “Factors influencing frequency of flatus emission by healthy subjects.” Dig Dis Sci. 1996 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov↩
  3. 小児慢性特定疾病情報センター「乳糖不耐症」 shouman.jp↩
  4. 本間洋州ほか「職場不適応を背景とした難治性空気嚥下症例に対して生物心理社会的観点からの多角的治療が奏効した1例」心身医学58巻8号:734-739, 2018 jstage.jst.go.jp↩
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」 ganjoho.jp↩
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん Q&A」 ganjoho.jp↩
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん」 ganjoho.jp↩
  8. Lacy BE, et al. “ACG Clinical Guideline: Management of Irritable Bowel Syndrome.” Am J Gastroenterol. 2021/米国消化器病学会(ACG)Low-FODMAP Diet gi.org↩
  9. Mutuyemungu E, Singh M, et al. “Intestinal gas production by the gut microbiota: A review.” Journal of Functional Foods, 2023 sciencedirect.com↩