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アトピー性皮膚炎

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患で、皮膚のバリア機能低下・アレルギー体質・環境要因など複数の原因が重なって起こると考えられています[1]。日本皮膚科学会・日本アレルギー学会のガイドラインでは、乳児期は2か月以上、それ以外の年齢では6か月以上、湿疹が慢性的・反復的に続くことを診断の目安の一つとしています[1]。治療の柱はスキンケア(保湿)・薬物療法(ステロイド外用薬などによる炎症の鎮静)・悪化因子への対策の3つで、多くの場合は適切な治療により症状のない状態、または軽微な状態を維持できます[1][2]。

主な原因 皮膚バリア機能の低下(フィラグリンの機能低下等)+アレルギー体質+汗・乾燥・掻破などの環境要因が重なる多因子性[1]
主な症状 左右対称に出る、かゆみを伴う湿疹。年齢によって出やすい部位が変わる[1]
受診の目安 湿疹とかゆみが2週間以上続く、市販の保湿剤だけでは改善しない、眠れないほどかゆい場合は皮膚科(小児は小児科でも可)を受診[1]

アトピー性皮膚炎とは?原因と症状が出る仕組み

日本皮膚科学会のガイドラインによると、アトピー性皮膚炎は「増悪・寛解を繰り返す,瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています(「瘙痒(そうよう)」とは強いかゆみを指します)[1]。ここでいう「アトピー素因」とは、①本人または家族に気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎・アトピー性皮膚炎のいずれかの既往がある、②IgE抗体を作りやすい体質がある、のどちらかを指し、ガイドラインは「アトピー性皮膚炎の定義ではアレルギーの存在は必須ではない」と明記しています[1]。つまり「アトピー=食物アレルギーが原因」という単純な図式ではなく、アレルギーが関与しない例も含まれるということです。

症状が出る仕組みは、大きく分けて「皮膚のバリア機能の低下」と「免疫の過剰反応(炎症)」の2段階で説明されます。皮膚の一番外側にある角層は、フィラグリンというたんぱく質やセラミドなどの脂質でできたバリアによって、外からの刺激や異物の侵入を防いでいます。ガイドラインは「フィラグリンの機能喪失型遺伝子変異や炎症にともなう発現の低下がアトピー性皮膚炎で確認されている」と述べており[1]、このバリアが弱くなると、ダニの死骸や花粉などのアレルゲンが皮膚の内部に侵入しやすくなります。ガイドラインの説明によれば、侵入した異物に対して免疫が過剰に反応すると、IL-4・IL-13・IL-31といった炎症を起こす物質(サイトカイン)が作られ、これが強いかゆみと湿疹を引き起こします[1]。かいてしまうとバリアがさらに壊れ、また炎症が悪化するという悪循環に陥りやすいことも、ガイドラインで重要な病態として説明されています[1]。

出典:公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」(2021年)[1]

どれくらいの子どもが経験する病気か

ガイドラインが引用する多施設の一般集団を対象とした出生コホート調査(JECS cohort)によると、1歳時・2歳時・3歳時におけるアトピー性皮膚炎の有症率はそれぞれ4.0%、7.3%、6.0%であったと報告されています[1]。また、自然寛解に至った外来患者の家族への問診調査では、自然寛解は2〜3歳ごろから見られ始め、50%が自然寛解に到達する年齢は8〜9歳、16歳を過ぎると全体の約90%が自然寛解すると報告されていることも紹介されています[1]。別の9年間の追跡調査では、アトピー性皮膚炎の経過は「Never/infrequent(ほとんど症状が出ない)62.7%」「Early-onset(早期発症)17.8%」「Late-onset(遅発)9.5%」「Persistent(持続)10.1%」の4つの型に分けられると報告されています[1]。これらの数字は特定の調査集団における結果であり、すべての人に同じ経過をたどるという意味ではありませんが、「多くの子どもは年齢とともに自然に軽快していく一方、一部は持続する」という全体像をつかむ参考になります。

症状の特徴:年齢によって出やすい場所が変わる

アトピー性皮膚炎の湿疹は「特徴的な左右対称性の分布を示す」ことがガイドラインで定義の一部とされています[1]。つまり、体の右側だけ、左側だけといった片側性の湿疹は、アトピー性皮膚炎らしさが薄く、接触皮膚炎など別の病気を疑う材料になります。皮疹そのものは、急性期には赤み(紅斑)・じくじくした赤み・ぶつぶつ(丘疹)・かさぶた(痂皮)などが、慢性期には皮膚が厚くなり皮溝が深くなる「苔癬化(たいせんか)」病変が主体になります[1]。日本皮膚科学会のガイドラインは、年齢によって好発部位が大きく異なることを診断基準の参考所見として示しており、年齢ごとにまとめて理解することが大切です[1]。

乳児期(生後2か月〜2歳頃)

ガイドラインの参考所見では「乳児期:頭、顔にはじまりしばしば体幹、四肢に下降」と記載されています[1]。まず頭皮や顔(額・眼囲・口囲)に赤みが出て、進行すると胸や背中、手足へと広がっていく経過が典型的とされます。ガイドラインによれば、生後まもない時期は乳児脂漏性湿疹との見分けが難しいこともあり、慢性・反復性の経過(乳児では2か月以上続くこと)が診断の判断材料の一つになります[1]。国立成育医療研究センターは、重症の乳児アトピー性皮膚炎で成長障害や電解質異常を来す例の診療経験があるとした上で、時間をかけて適切な治療を行うことで皮膚のコントロールが可能になるとしています[3]。

幼小児期(2歳頃〜12歳頃)

ガイドラインは「幼小児期:頸部、四肢関節部の病変」を参考所見として挙げています[1]。ガイドラインによれば、首まわりや肘・膝の内側(屈曲部)に湿疹が出やすくなり、繰り返しかくことで皮膚が厚く硬くなる苔癬化病変や、かゆみの強いしこり状の皮疹(痒疹結節)がみられることもあります[1]。この時期は保育園・幼稚園・学校での集団生活が始まり、かくのを我慢しにくい環境でもあるため、悪化因子(汗・掻破・ダニなど)への対策と並行した治療の継続が特に重要になります。

思春期・成人期(13歳以上)

ガイドラインは「思春期・成人期:上半身(頭、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向」と記載しています[1]。ガイドラインには、体幹部や肩には、かいた跡に一致してしこり状に盛り上がった皮疹がみられることもあるとされています[1]。頻度は高くないものの、子どもの頃に症状がなかった人が思春期以降に新たに発症する「思春期/成人発症のアトピー性皮膚炎」も存在するとガイドラインに明記されており[1]、「子どもの病気だから大人にはならない」という思い込みは正確ではありません。後述する「大人のアトピー」の章で詳しく解説します。

アトピー性皮膚炎については、今回参照した資料の範囲では、症状の重さや部位の広がり方に地域差・季節差があるかどうかについて、明確な数値での記載が見当たりませんでした。顔にできるアトピー性皮膚炎の特徴やケアの詳細は顔のアトピー性皮膚炎:知っておくべきこと、足のかゆみ・湿疹については足のアトピー性皮膚炎の記事で詳しく解説しています。

原因・悪化因子:1つではなく、いくつもの要因が重なって起こる

アトピー性皮膚炎は「遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患そのものを完治させうる治療法はない」とガイドラインは述べています[1]。「多病因性」という言葉が示す通り、単一の原因を特定して取り除けば治る病気ではなく、複数の要因が重なり合って症状を作り出しています。ここで「原因が1つに決められない=原因不明でお手上げ」という意味ではない点に注意が必要です。原因が複数あるからこそ、皮膚科の治療は「バリア機能を補う(保湿)」「起きてしまった炎症を鎮める(薬物療法)」「悪化因子を減らす(生活面の対策)」という複数の方向から同時にアプローチする設計になっています[1]。

①皮膚バリア機能の低下

ガイドラインの説明では、表皮の一番外側にある角層は、フィラグリンなどのたんぱく質と細胞間脂質によって強固なバリアを形成しています[1]。また、表皮細胞どうしの隙間をふさぐ「タイトジャンクション」という構造があり、その形成に関わるclaudin-1というたんぱく質の発現低下もアトピー性皮膚炎患者で確認されているとガイドラインは説明しています[1]。これらのバリア機構が弱いと、外からの刺激やアレルゲンが侵入しやすくなり、皮膚も乾燥しやすくなります。

②アレルギー素因(体質)

前述の通り、本人や家族が気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎・アトピー性皮膚炎のいずれかを持っている、あるいはIgE抗体を作りやすい体質であることは、アトピー性皮膚炎になりやすさに関わる要因の一つです[1]。ただし、繰り返しになりますが、ガイドラインは「アトピー性皮膚炎の定義ではアレルギーの存在は必須ではない」としており[1]、アレルギー検査で特定の抗原が陽性でなくてもアトピー性皮膚炎と診断されることはあります。

③環境・生活習慣による悪化因子

汗・乾燥・ダニやほこりなどのアレルゲン・掻破(かくこと)・精神的ストレス・洗浄剤による刺激などは、いずれも症状を悪化させる要因として知られています[1]。ガイドラインは、皮膚バリア機能の低下、皮膚の乾燥、掻破行為の刺激などによって湿疹がますます悪化する悪循環が生じうるため、薬物療法で炎症を制御することはアトピー性皮膚炎の悪化因子を減らすことにもなる、と説明しています[1]。ガイドラインには、洗浄剤に含まれる成分が皮膚バリア機能をさらに低下させる可能性についても言及があります[1]。

アトピー性皮膚炎については、今回参照した資料の中で「原因は1つに特定できる」という趣旨の記載は見当たりませんでした。単一の犯人探しをするのではなく、上記①〜③の要因を1つずつ地道に整えていくことが、ガイドラインが示す治療方針の考え方です。

季節・生活環境による悪化パターン

ガイドラインには、季節や生活環境によって悪化因子の現れ方が変わる点についても具体的な記載があります。ガイドラインによれば、夏は日焼けや発汗で悪化しやすく、とくに学校生活で困難が起こることがあるものの、学校でのシャワー浴など適切な管理で改善するとされています[1]。ガイドラインによれば、冬は乾燥で悪化しやすい一方、スギ花粉飛散期には特に顔を中心に皮疹が悪化することがあり、花粉症の発症年齢が低くなっている近年は幼児でも注意が必要と指摘されています[1]。また、ガイドラインではイヌ・ネコなど動物由来のアレルゲンについても、問診時にペット飼育の有無を確認することが勧められています[1]。ガイドラインは、幼稚園・保育園や学校に対しては、アレルギー疾患生活管理指導表を活用して、汗や乾燥などの悪化要因への配慮を求めることが有効だとされています[1]。ガイドラインでは、ストレスも悪化要因の一つとして重要視されています[1]。

診断の目安となる基準・重症度分類

アトピー性皮膚炎の診断は、問診と視診による医学的な判断が必要であり、自己判断だけで確定できるものではありません。ただし、日本皮膚科学会が公表している診断基準の骨子を知っておくことは、症状を医師に伝える際や、市販薬だけで様子を見てよいかを考える際の参考になります。ガイドラインが示す診断基準は、次の3項目をすべて満たすことを軸としています[1]。

アトピー性皮膚炎の診断基準(3項目)
項目 内容 備考
1.瘙痒(そうよう) かゆみがあること 湿疹のない乾燥肌だけでは該当しない[1]
2.特徴的皮疹と分布 左右対称の湿疹で、年齢による好発部位に一致 急性病変(紅斑・丘疹・鱗屑等)または慢性病変(苔癬化・痒疹等)[1]
3.慢性・反復性経過 乳児は2か月以上、その他の年齢は6か月以上 新旧の皮疹が混在することもしばしば[1]

出典:公益社団法人日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」表1(2021年)[1]

ガイドラインは「上記1、2、および3の項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考にして診断する」とガイドラインは述べています[1]。また、接触皮膚炎・手湿疹・脂漏性皮膚炎・皮膚リンパ腫などは「除外すべき診断(合併することはある)」として挙げられており、似た症状の病気を除外した上で診断されるものであることも分かります[1]。

ガイドラインによれば、重症度については、国際的にはSCORAD(Severity Scoring of Atopic Dermatitis)やEASI(Eczema Area and Severity Index)といった評価法が用いられ、患者自身が答える質問票としてPOEM(The Patient Oriented Eczema Measure)の日本語版も紹介されています[1]。日本国内の診療では、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎重症度分類検討委員会による重症度分類も使われており、軽症・中等症・重症・最重症に分ける考え方が採用されています[1]。いずれも医師が皮疹の範囲や程度を診察した上で判定するものであり、セルフチェックだけで確定させるものではありません。

血液検査(TARC値)で分かること

皮膚科での血液検査として、TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)という項目を測定することがあります。ガイドラインによると、アトピー性皮膚炎患者の血清中TARC値は重症度に一致して上昇し、血清IgE値・LDH値・末梢血好酸球数と比べて病勢をより鋭敏に反映するとされ、保険適用の検査として、TARC値を指標に患者教育や治療方針の見直しを行うことも可能とされています[1]。ただし、小児では低年齢、とくに2歳以下で高値となりやすいため、数値の解釈には年齢を考慮した注意が必要だとガイドラインは述べています[1]。「TARCの数値が高い=重症」と単純に受け取るのではなく、年齢や治療経過も含めて医師が総合的に判断するものです。

アトピー性皮膚炎と間違えやすい病気との見分け方

項目 アトピー性皮膚炎 脂漏性皮膚炎 接触皮膚炎
分布 左右対称、年齢で好発部位が変化[1] 頭皮・眉間・鼻の脇など皮脂の多い部位が中心 原因物質が触れた部位に一致(片側性のこともある)
経過 慢性・反復性(乳児2か月以上、他は6か月以上)[1] 乳児期に自然軽快しやすいことが多い 原因物質との接触後に急性に出現、除去で改善しやすい
ガイドライン上の扱い 診断基準1〜3を満たすもの[1] 「除外すべき診断」の一つとして明記[1] 「除外すべき診断」の一つとして明記[1]

見分けるカギ:左右対称かどうか、そして皮疹が2か月〜6か月以上と長く続いているかどうかが、自己判断の目安の一つになります。ただし最終的な鑑別には皮膚科医の診察が必要で、上記の表だけで自己診断を確定させることは避けてください。小児では新生児ざ瘡・新生児中毒疹・貨幣状湿疹・汗疹(あせも)・尋常性乾癬なども鑑別の対象として挙げられており[1]、症状が似ていても治療方針が異なるため、自己判断だけで市販薬を選ぶより先に、皮膚科(乳幼児は小児科でも可)での鑑別を受けることが安全です。

治療:3つの柱を組み合わせる

ガイドラインは、アトピー性皮膚炎の治療について「疾患そのものを完治させうる治療法はない。ガイドラインは「したがって、薬物療法は対症療法を行うことが原則である」としながらも、「病変部では、皮膚の炎症による表皮バリア機能のさらなる低下や被刺激性の亢進、掻破行為の刺激などによって湿疹がますます悪化する悪循環が生じうるため、薬物療法で炎症を制御することは、アトピー性皮膚炎の悪化因子を減らすことにもなる」と説明しています[1]。ガイドラインによれば、治療の最終目標は「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」とされています[1]。この目標に向けて、治療は次の3本柱で構成されます。

①スキンケア(保湿)

乾燥した皮膚はバリア機能が弱く、刺激やアレルゲンの侵入を受けやすいため、保湿剤による日常的なスキンケアは症状のない時期も含めて継続することが基本とされています。保湿はあくまで炎症を起こしにくい状態を維持するためのケアであり、すでに起きてしまった強い炎症を鎮める力はスキンケア単独では不十分です。そのため、炎症がある間は次に述べる薬物療法と併用することが重要になります。スキンケアと薬物療法は役割が異なるものであり、「保湿さえしていれば薬はいらない」「薬さえ塗れば保湿は不要」という一方だけの考え方は、ガイドラインが示す治療設計とは異なります[1]。

②薬物療法(抗炎症外用薬が中心)

ガイドラインは、アトピー性皮膚炎の炎症を鎮めるための薬剤として、有効性と安全性が多くの臨床研究で検討されている外用薬に、ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏(カルシニューリン阻害外用薬)・デルゴシチニブ軟膏(JAK阻害外用薬)の3種類を挙げています[1]。ガイドラインによれば、急性増悪した皮疹には1日2回外用して速やかに軽快させ、軽快後は寛解を目指して1日1回に減らしていく方法が基本とされています[1]。近年は、中等症から重症の患者に対して、生物学的製剤(デュピルマブなど)や内服JAK阻害薬(バリシチニブなど)といった全身療法も選択肢に加わっています。これらは外用治療だけでは十分な効果が得られない例に検討される治療で、使用には一定の基準が設けられています(詳しくは次章)。

③悪化因子への対策

汗をかいたらこまめに洗い流す・爪を短く切って掻破による皮膚ダメージを減らす・ダニやほこりの少ない環境を整える・刺激の少ない衣類や洗浄剤を選ぶ、といった生活面の対策です。これらは薬物療法の効果を支える土台であり、単独で症状を消すものではありません。①〜③はいずれも欠かせない要素であり、「スキンケアと薬物療法をまとめて“治療”と呼ぶ」ような単純化は、それぞれの役割の違いを見えなくしてしまうため避けるべきです。

小児特有の治療の工夫

ガイドラインは、小児の治療について「重症度に応じた治療によって比較的短期間で寛解状態に導ける。ガイドラインは、低年齢でも漫然とマイルド(IV群)のステロイド外用薬を続けずに、皮疹の改善が乏しい場合にはランクアップが必要である」と述べています[1]。ガイドラインによれば、タクロリムス軟膏は小児用0.03%が使われますが、乳児(2歳未満)には適応がなく、1回の最大塗布量は年齢と体重によって、2歳〜5歳(20kg未満)1g、6歳〜12歳(20kg以上50kg未満)2g〜4g、13歳以上(50kg以上)5gと定められています[1]。また、ガイドラインによれば掻破を我慢することは特に乳幼児では難しいため、かゆみのコントロール目的で経口抗ヒスタミン薬を併用する場合が多いとされ、成長過程にある小児には脳内移行の少ない第2世代抗ヒスタミン薬が用いられます[1]。ガイドラインによれば、ステロイド薬の全身投与(飲み薬や注射)は、小児のアトピー性皮膚炎の治療としては推奨されておらず、長期投与による成長障害や副腎機能抑制などの副作用への注意が必要とされています[1]。ガイドラインによれば、通常の治療で改善しない小児の難治例には、経口シクロスポリン薬や生物学的製剤の使用が保険適用となっていますが、経口シクロスポリン薬は1回の治療を12週以内で終了するなど、副作用の面から漫然と使用しない運用が求められています[1]。

ステロイド外用薬を正しく知る:ランクと部位で使い分ける

「ステロイド外用薬は怖い薬」というイメージを持つ方も少なくありませんが、ガイドラインは、ステロイド外用薬について「1952年にハイドロコルチゾンが世界で初めて開発され、その後60年以上アトピー性皮膚炎の薬物療法として使用されてきた」薬剤であり、「有効性と安全性は多くの臨床研究で検討されて」いると位置づけています[1]。重要なのは「怖いか怖くないか」ではなく、症状の強さ・使う部位に応じて正しいランク(強さ)を選び、正しい量と期間で使うことです。

日本のガイドラインでは、ステロイド外用薬は効果の強さによって、ストロンゲスト(I群)・ベリーストロング(II群)・ストロング(III群)・ミディアム(IV群)・ウィーク(V群)の5段階に分類されています[1]。

ステロイド外用薬のランク(5段階)と代表的な薬剤
ランク 代表的な薬剤名(先発品) 主な使い分けの考え方
ストロンゲスト(I群) クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)等[1] 重症で、ベリーストロングでも効果不十分な部位に限定して選択することがある[1]
ベリーストロング(II群) モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ)、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロンDP)等[1] 重症の皮疹に対する第一選択とされる[1]
ストロング(III群) デプロドンプロピオン酸エステル(エクラー)、ベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロンV)等[1] 中等症の第一選択(ミディアムと併記)[1]
ミディアム(IV群) ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド)等[1] 軽症の第一選択。中等症にも使用[1]
ウィーク(V群) プレドニゾロン等[1] 軽微な症状、または顔など皮膚の薄い部位向け

出典:日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」表11・表12(2021年3月現在)[1]/米国は7段階、欧州は4段階と国によりランクの分け方自体が異なる点にガイドラインは注意を促しています[1]。

部位によっても使い分けが必要です。ガイドラインは、皮疹の重症度に応じて「重症=ベリーストロング(十分な効果が得られない場合は部位を限定してストロンゲストも検討)」「中等症=ストロングないしミディアム」「軽症=ミディアム以下」「軽微=ステロイドを含まない外用薬」という選び方の目安を示しています[1]。また、ガイドラインでは顔には原則としてミディアム(IV群)以下のステロイド外用薬を用いることが推奨されています[1]。これは、部位によって薬の吸収率が大きく異なるためです。ガイドラインは、前腕の内側を「1」とした場合の吸収率の目安として、頬は13.0倍、頭部は3.5倍、頸部は6.0倍、陰嚢は42倍にもなると説明しており[1]、皮膚が薄く吸収率の高い部位ほど、弱いランクの薬を選ぶ必要があることが分かります。

ガイドラインでは、全身性の副作用は「ランクの高いステロイド外用薬を、大量に、長期使用すると起こりやすくなる」とされ、皮膚のバリア機能が低下した状態(紅皮症など)では経皮吸収が高いため注意が必要とされています[1]。また、ガイドラインには小児は体重に対する体表面積の割合が大きいため、全身性副作用を起こしやすいとも記載されています[1]。これらは「正しく使えば安全に使える薬である」ことと「量・期間・部位を無視してよい」ことはまったく別だという意味であり、いずれか一方だけを強調することは避けるべきです。不安な点は自己判断で使用を中止・変更せず、処方した医師に確認することが推奨されます。

タクロリムス軟膏・JAK阻害外用薬・生物学的製剤・内服JAK阻害薬

タクロリムス軟膏(カルシニューリン阻害外用薬)は、ステロイド外用薬とは異なる作用機序を持つ抗炎症外用薬で、ガイドラインは「ミディアム〜ストロングクラスのステロイド外用薬」に相当する効果があるとしています[1]。顔や首など、ステロイドの長期使用で懸念される部位に使われることがある薬剤です。デルゴシチニブ軟膏(JAK阻害外用薬)は比較的新しい抗炎症外用薬として、ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏と並んでガイドラインに位置づけられています[1]。

中等症〜重症で、外用治療だけでは十分にコントロールできない患者に対しては、生物学的製剤や内服JAK阻害薬という選択肢があります。ガイドラインには、IL-4受容体・IL-13受容体を標的とする生物学的製剤デュピルマブや、JAK1/JAK2を選択的に阻害する内服薬バリシチニブについての記載があり、いずれも複数の臨床試験でプラセボと比較した有効性が報告されています[1]。ガイドラインでは、デュピルマブについては「EASIスコア16以上、又は顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する」ことなどが、適応患者を選ぶ際の目安の一つとして示されています[1]。これらは重症例に対する専門的な治療であり、投与の可否や具体的な用量は必ず皮膚科専門医の診察・判断のもとで決定されるべきもので、本記事の情報だけで自己判断することはできません。

「ステロイドが怖い」という不安と、自己判断で中止するリスク

ステロイド外用薬に対して漠然とした不安を持ち、使用をためらう、あるいは自己判断で急にやめてしまう方が一定数いることは、医療現場でもたびたび指摘されています。ガイドラインは、ステロイド外用薬を長期間使用した患者が「ステロイド外用薬を突然中止すると、紅斑や潮紅、浮腫、丘疹や膿疱などが出現、悪化することがある」とし、「このような状況が疑われる場合は、皮膚科専門医に紹介することが望ましい」と明記しています[1]。つまり、自己判断による急な中止そのものが、症状を悪化させるリスクになり得るということです。

また、保護者の「ステロイド忌避」の傾向についてもガイドライン中で言及があり、ステロイド忌避のある保護者がステロイドに頼らない代替的なケアに頼った結果、通常の医療に対するアドヒアランス(治療の継続性)が不足し、症状がコントロールしにくくなる例が課題として挙げられています[1]。ガイドラインが一貫して示しているのは、「正しいランクを、正しい部位に、正しい期間使う」という運用であり、「使う/使わない」の二択で語れる話ではないということです。いわゆる「脱ステロイド」を独自の方法で行うことについて、本記事が参照した資料の範囲では、学会として推奨する記載は見当たりませんでした。治療方針を見直したい場合は、自己判断で中止するのではなく、皮膚科専門医に相談した上で進めることが、ガイドラインの記載から読み取れる基本的な考え方です。

日常生活・スキンケアのポイント

入浴・洗浄については、ナイロンタオルなど硬い素材でのごしごし洗いは皮膚バリアへの刺激になるとガイドラインで注意喚起されています[1]。お湯の温度についてガイドラインは、皮膚バリア機能回復の至適温度とされる38〜40℃がよいとし、42℃以上の湯温は皮脂や天然保湿因子の溶出が生じること、かゆみが誘発されることから推奨できないと明記しています[1]。ガイドラインには、入浴後は速やかに保湿剤を塗布し、水分の蒸散を最小限にとどめることが望ましいとされています[1]。ガイドラインによれば、保湿剤の塗布量の目安としては「finger tip unit」という考え方があり、人差し指の先端から第1関節までチューブから押し出した量(約0.5g)が、成人の手のひら2枚分、体表面積のおよそ2%分の適量とされています[1]。保湿外用薬は、見た目に異常のない部分も含めて全身に塗布することが望ましいとされ、皮膚炎が寛解した後も保湿を継続することが寛解状態の維持に有効だとガイドラインは述べています[1]。

保湿については、入浴後などの皮膚がまだ潤っているタイミングで保湿剤を塗ることが基本とされます。国立成育医療研究センターに関連する研究として、新生児期からの保湿剤塗布によってアトピー性皮膚炎の発症リスクが低下したとする報告が知られています[3]。ただし、これは発症予防に関する研究知見であり、すでに発症している場合の治療の代わりになるものではありません。

掻破(かくこと)対策としては、爪を短く切って皮膚を傷つけにくくする、かゆみが強い時間帯(特に就寝前後)に保湿や外用薬を丁寧に行う、室温や衣類を調整して汗による刺激を減らす、といった対策が一般的です。ガイドラインの記載を踏まえると、環境面では、ダニやほこりを減らすための掃除・寝具の管理、化学繊維など肌に合わない素材を避けることも、悪化因子対策の一部として位置づけられます[1]。

衣類による摩擦もかゆみの引き金になります。ガイドラインは、唾液・汗・髪の毛の接触・衣類との摩擦といった日常生活での非特異的な刺激でアトピー性皮膚炎が悪化することがあると指摘し、唾液や汗は洗い流すか濡れた柔らかいガーゼなどで拭き取ること、羊毛素材やごわごわした素材の衣類を避けること、髪の毛を短く切る・束ねるなどの工夫が必要だと述べています[1]。かゆみに過敏になった皮膚では、こうした軽微な刺激でもかゆみが誘発されるため、肌ざわりのやわらかい素材を選ぶことが悪化因子対策の一環になります。

保湿剤の種類と選び方

ガイドラインは、保湿・保護を目的としたスキンケア外用薬を大きく2種類に分けて紹介しています。ガイドラインによれば、1つは「皮表の保湿を主としたもの」で、ヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイドクリーム等)や尿素製剤(パスタロンクリーム等)が該当します[1]。ガイドラインによれば、もう1つは「皮表の保護を主としたもの」で、白色ワセリンや亜鉛華軟膏などの油脂性軟膏が挙げられています[1]。ガイドラインは、ドライスキンに対するスキンケアの要点として、低下している皮表の保湿性を補うために保湿性の高い親水性軟膏や吸水性軟膏を外用することを挙げ、外用回数は1日1回よりも1日2回(朝・夕)の方が望ましいとしています(エビデンスレベルA)[1]。なお、ガイドラインによれば、まれに保湿外用薬そのものによる接触皮膚炎が起こることがあり、アトピー性皮膚炎の再燃との見分けが重要になるとも指摘されています[1]。また、ステロイド外用薬と保湿外用薬を独自に混合して処方することは、薬剤の安定性や経皮吸収性が変化する可能性があるため、安易に行うべきではないとガイドラインは注意を促しています[1]。

大人のアトピー:子どもの病気ではない

アトピー性皮膚炎は乳幼児期に発症するイメージが強い病気ですが、ガイドラインは「頻度は低いが思春期/成人発症のアトピー性皮膚炎も存在する」と明記しています[1]。子どもの頃に症状があった人が寛解せずそのまま成人期まで持続するケースと、子どもの頃は無症状だったにもかかわらず思春期以降に新たに発症するケースの、両方が含まれます。ガイドラインでは、思春期・成人期の好発部位は「上半身(頭、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向」とされ、乳幼児期とは分布のパターンが異なることも特徴です[1]。

大人になってからのアトピー性皮膚炎は、仕事や家事によるストレス・不規則な生活・化粧品や整髪料などによる接触刺激・マスク着用による摩擦など、乳幼児期にはなかった悪化因子が加わりやすいという特徴もあります。症状のコントロールという治療の考え方自体は年齢によって変わりませんが、生活背景に合わせた悪化因子対策の工夫が必要になる点は、大人特有の課題といえます。

よくある誤解

人にうつる病気ですか?

アトピー性皮膚炎は感染症ではなく、他人にうつることはありません。ガイドラインの定義においても、「増悪・寛解を繰り返す,瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患」とされており[1]、感染性の病原体が原因ではないため、患部に触れたり、同じタオルを使ったりしたことだけで他人に感染するものではありません。ただし、ガイドラインによれば、アトピー性皮膚炎の患部はバリア機能が低下しているため、伝染性膿痂疹(とびひ)やカポジ水痘様発疹症(単純ヘルペスウイルスの感染による合併症)といった、別の感染症を「合併」しやすい状態にはなります[1]。うつるのはアトピー性皮膚炎そのものではなく、皮膚が弱っているところに二次的に感染する病原体である、という違いを理解しておくことが大切です。

完全に治りますか?

ガイドラインは「アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患そのものを完治させうる治療法はない」と明言しています[1]。一方で、治療の目標は「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」とされており[1]、多くの患者がこの状態(寛解の維持)に到達しています。「完治」という言葉よりも「良好な状態を長く維持する」という考え方の方が、ガイドラインの治療目標に近い表現です。国立成育医療研究センターも、重症だった子どもの症例で、時間をかけた治療により95%がステロイド外用薬の使用頻度を週2日以下まで減らせたとする経過を紹介しています[3]。「完治」という言葉そのものを軸にした情報の整理はアトピー性皮膚炎は治る?完治の現実と、症状別の記事で別途まとめています。

食物アレルギーが原因ですか?

ガイドラインは、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関連について複数の記述をしており、「乳児期のアトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症に先行する」といった経過や、皮膚から抗原に触れることが食物アレルギーの発症に関与するとする「二重抗原暴露仮説」という考え方を紹介しています[1]。ただし、これは「食物アレルギーがアトピー性皮膚炎を引き起こす」という単純な図式ではなく、皮膚のバリア機能低下がアレルゲンの侵入経路になり、食物アレルギーの発症に関与しうるという、皮膚から出発する経路についての知見です。自己判断で特定の食品を除去することは、栄養面での不利益につながる可能性もあるため、食物アレルギーの関与が疑われる場合は、治療開始前に医師による評価を受けることがガイドラインでも前提とされています[1]。食事とアトピー性皮膚炎の関係についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

受診の目安:今すぐ皮膚科に行くべきか

アトピー性皮膚炎そのものが命に関わる緊急疾患ではありませんが、次のような状態は、市販薬や自己流のケアだけで様子を見続けず、早めに皮膚科(乳幼児は小児科でも可)を受診する目安として参考にしてください。

🔴 すぐに医療機関へ相談:湿疹が全身に急速に広がっている/発熱を伴い、じくじくした患部から黄色い分泌物が出る(伝染性膿痂疹=とびひや、カポジ水痘様発疹症などの二次感染が疑われる)/かゆみで眠れず日常生活が大きく妨げられている[1]。

🟡 早めに皮膚科を受診:湿疹とかゆみが、乳児で2か月以上、それ以外の年齢で6か月以上、繰り返し続いている/市販の保湿剤・弱いステロイド外用薬を1〜2週間使っても改善しない/ステロイド外用薬を長く使った後、自己判断で中止してから赤みや腫れが悪化した[1]。

🟢 セルフケアを継続しつつ経過観察:軽い乾燥や一時的な軽度の赤みのみで、かゆみによる生活への支障がない場合。ただし悪化の兆候があれば速やかに🟡・🔴の対応に切り替えてください。

見落とされやすい合併症:目の症状

アトピー性皮膚炎は皮膚だけの病気と思われがちですが、ガイドラインは眼の合併症についても推奨文を示しています。ガイドラインは「アトピー性皮膚炎及びその治療に伴って眼病変が生じることがあるので、重症なアトピー性皮膚炎、特に、顔面の皮疹が重症な症例では適宜眼科医の診察を受けさせることが望ましい」とされ、眼合併症の予防のためには顔面・特に眼囲の皮疹を早期に十分にコントロールすることが重要だと明記されています[1]。ガイドラインによれば、主な眼合併症として、眼瞼炎・角結膜炎・円錐角膜・白内障・緑内障・網膜剝離・細菌およびウイルス感染症などが挙げられており、角膜炎や結膜炎は重症のアトピー性皮膚炎で頻度が高いとされています[1]。「ステロイドが白内障の原因になるのでは」という不安を持つ方もいますが、ガイドラインは「ステロイドは白内障のリスクとなる可能性があるものの、必ずしも関連せず、ステロイドの登場以前にすでにアトピー性皮膚炎に白内障がみられていた」とも解説しており[1]、白内障を単純にステロイドだけの副作用と決めつけることはできません。顔・目のまわりの皮疹が重症な場合は、皮膚科と合わせて眼科の受診も検討する目安になります。

皮膚科の診察で聞かれること・伝えるとよいこと

初めて皮膚科を受診する際は、次のような情報を整理しておくと診察がスムーズになります。①いつから症状があるか(乳児は2か月、それ以外は6か月という慢性・反復性の目安と照らし合わせて)[1]、②どの部位に出ているか(左右対称かどうかも含めて)、③本人・家族に気管支喘息やアレルギー性鼻炎などの既往があるか(アトピー素因の確認)[1]、④これまでに使った市販薬・処方薬とその効果、⑤ステロイド外用薬に対する不安の有無です。ガイドラインの趣旨を踏まえると、特に⑤は、自己判断での中止や減量による悪化を防ぐために、遠慮せず医師に伝えることが勧められます[1]。ガイドラインを踏まえると、学校・保育園に通うお子さんの場合は、アレルギー疾患生活管理指導表の対象になるかどうかも合わせて確認するとよいでしょう[1]。

医療費の目安

アトピー性皮膚炎の治療は、外用薬中心の場合と、生物学的製剤や内服JAK阻害薬などの全身療法を要する重症例とで、自己負担額に幅があります。高額療養費制度の対象になるかどうかも含め、実際の費目・自己負担額の目安は下の一覧で確認してください。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

日本と欧米のガイドライン比較

項目 日本(日本皮膚科学会・日本アレルギー学会 2021年) 米国(ガイドライン上の記載)
ステロイド外用薬のランク数 5段階(ストロンゲスト〜ウィーク)[1] 7段階(very high potency〜lowest potency)[1]
重症度評価 日本皮膚科学会独自の重症度分類に加え、国際的なSCORAD・EASIも併用可[1] SCORAD・EASIが国際的な臨床試験の標準として使用[1]

日本のステロイド外用薬のランクは5段階、米国のランクは7段階と、そもそも分類の数と区切り方が異なります。ガイドラインは「海外の臨床試験データを参考にする場合には、日本とはステロイド外用薬のランクの分類が違うことに注意する必要がある」と明記しており[1]、海外の情報サイトで見た「〇〇ランクの薬」という表現を、そのまま日本の薬剤選びに当てはめることはできません。欧州は4段階(very potent・potent・moderate potency・mild potency)に分けているともガイドラインは述べています[1]。海外の一次資料(米国皮膚科学会・欧州皮膚科学会等のガイドライン原文)そのものについては、今回の調査では直接確認できておらず、上記の対比は日本側のガイドラインが紹介する範囲の情報である点にご留意ください。

ガイドラインの改訂の歴史(数字の出どころ)

今回の記事で紹介しているステロイド外用薬のランク表や治療の3本柱の考え方は、2021年12月に発行された「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」(日本皮膚科学会・日本アレルギー学会)に基づいています[1]。このガイドラインは、それ以前の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」を改訂したもので、デュピルマブやバリシチニブといった生物学的製剤・内服JAK阻害薬に関する記載は、2018年版の時点よりも治療選択肢として整理が進んだ内容になっています。ガイドラインの数字(ステロイドのランク表、EASIスコアの基準値など)は医学の進歩とともに改訂される性質のものであり、本記事の情報も将来のガイドライン改訂によって更新される可能性があります。最新の治療方針は、必ず診察時点の主治医の判断を優先してください。

よくある質問(FAQ)

アトピー性皮膚炎は完治しますか?
ガイドラインは「疾患そのものを完治させうる治療法はない」としていますが[1]、治療の目標は症状がないか軽微な状態を維持することであり、多くの患者がこの状態に到達しています[1]。「完治」より「良好な状態の維持」という考え方が実情に近い表現です。
ステロイド外用薬は毎日長期間使っても大丈夫ですか?
症状の強さに応じたランクを、正しい部位・期間で使うことが基本です。急性期は1日2回、軽快後は寛解を目指して1日1回に減らしていく方法がガイドラインで示されています[1]。不安な点は自己判断で中止せず医師に相談してください。
ステロイドを急にやめても大丈夫ですか?
長期間使用した後に突然中止すると、紅斑や浮腫、丘疹などが悪化することがあるとガイドラインに記載されています[1]。自己判断での急な中止は避け、皮膚科専門医に相談することが推奨されます。
アトピー性皮膚炎は人にうつりますか?
うつりません。ガイドラインの定義によれば感染症ではなく、遺伝的素因や皮膚バリア機能の低下などが関わる疾患です[1]。ただし、ガイドラインによれば患部はバリアが弱いため、とびひなど別の感染症を合併しやすい状態にはなります[1]。
子どものアトピーは大人になったら治りますか?
寛解して症状が消える例もありますが、頻度は低いものの思春期・成人期に新たに発症する例もあるとガイドラインに記載されています[1]。「大人になれば必ず治る」とは言い切れません。
食物アレルギーがアトピーの原因ですか?
単純な因果関係ではありません。乳児期のアトピー性皮膚炎が皮膚からのアレルゲン侵入を通じて食物アレルギーの発症に関与しうるという「二重抗原暴露仮説」が紹介されていますが[1]、自己判断での食品除去は推奨されず、評価は医師のもとで行うべきとされています[1]。
保湿だけしていれば薬は不要ですか?
保湿はバリア機能を補うケアであり、すでに起きている炎症を鎮める力は限定的です。ガイドラインでは、炎症がある間は抗炎症外用薬との併用が基本とされています[1]。
顔にステロイドを塗っても大丈夫ですか?
顔は薬剤の吸収率が前腕の13倍と高いとされる部位のため[1]、原則としてミディアム(IV群)以下の弱いランクを用いることがガイドラインで推奨されています[1]。強いランクを自己判断で顔に使うのは避けてください。
タクロリムス軟膏はステロイドより安全ですか?
ガイドラインによれば作用機序が異なる薬剤で、ミディアム〜ストロングクラスのステロイドに相当する効果があるとされています[1]。どちらが「安全」かは単純比較できず、部位や症状に応じて医師が選択します。
生物学的製剤(デュピルマブなど)はどんな人が対象ですか?
ガイドラインでは外用治療だけでは十分にコントロールできない中等症〜重症患者が対象で、EASIスコア16以上などの目安が示されています[1]。適応の判断は皮膚科専門医が行います。
症状が良くなったら薬をやめていいですか?
症状が軽快した後も、寛解を維持するために外用の頻度を減らしながら継続する「プロアクティブ療法」的な考え方がとられることがあります。ガイドラインの趣旨に沿えば、自己判断で急にゼロにするのではなく、医師の指示に沿って減らしていくことが基本です[1]。
大人になってから急に発症することはありますか?
頻度は高くありませんが、思春期/成人発症のアトピー性皮膚炎の存在がガイドラインに明記されています[1]。ガイドラインには、上半身に皮疹が強く出る傾向があるとされます[1]。
市販の保湿剤だけで様子を見てもいい期間はどれくらいですか?
明確な日数はガイドラインに一律の記載はありませんが、湿疹とかゆみが乳児で2か月以上、それ以外で6か月以上続く場合は診断基準の慢性・反復性の目安に該当するため[1]、それより早い段階でも改善がなければ皮膚科受診を検討してください。

アトピー性皮膚炎に関する記事一覧

治療の細かな数値・薬剤の用法用量・悪化因子への個別の対応方法などについて、今回参照した資料に明記が見当たらなかった部分は、断定を避け「資料に記載が見当たりませんでした」という形で明示しています。ガイドラインの数値・分類・薬剤名は今後の改訂で変わり得るため、実際の治療方針は必ず皮膚科専門医の診察のもとで、その時点の最新情報に基づいて決定してください。本記事の内容に誤りや古い情報があるとお気づきの際は、事実関係を確認のうえ訂正いたします。

参考文献

  1. 公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」2021年 dermatol.or.jp(PDF)
  2. 厚生労働省 資料「アトピー性皮膚炎について」加藤則人(京都府立医科大学) mhlw.go.jp(PDF)
  3. 国立成育医療研究センター「アトピー性皮膚炎」 ncchd.go.jp