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JHO 病気ペディア

アルコール依存症

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

アルコール依存症は「意思が弱い」性格の問題ではなく、飲酒を繰り返すうちに脳の仕組みが変化し、自分の意思だけでは飲酒量をコントロールできなくなる病気です[2]。久里浜医療センターのAUDIT(WHOが作った10項目のスクリーニングテスト)で15点以上は依存症の疑いがあり、専門医療機関への相談が目安になります[1]。手のふるえ・発汗・不眠などの離脱症状が出ている場合は、自己判断で急に酒をやめず、まず医療機関に相談してください。

原因 長期・多量の飲酒により脳の報酬系が変化し、耐性→精神依存→身体依存の順に進行する[2]
主な症状 飲酒のコントロール喪失、飲酒中心の生活、やめると手のふるえ・発汗・不眠などの離脱症状
目安となる検査 AUDIT 15点以上で依存症の疑い(0〜7点は現状維持、8〜14点は減酒を検討)[1]
受診の目安 手指のふるえ・大量の発汗・幻覚・けいれんが出ている、または自分で飲酒量を止められないと感じたとき

アルコール依存症とは?飲酒がやめられなくなる仕組み

アルコール依存症とは、長期間にわたり多量の飲酒を続けることで脳の働きが変化し、「飲みたい」という欲求を自分の意思でコントロールできなくなる病気です。厚生労働省 e-ヘルスネットは、飲酒を続けると①同じ酔い方を得るために必要な酒量が増える「耐性」、②お酒への欲求が強くなる「精神依存」、③飲酒を中断すると手のふるえ・発汗・不眠などの症状が出る「身体依存」の順に進み、最終的に自分の意思で飲酒量を制御できなくなる(自己制御の喪失)と説明しています[2]。

これは「性格が弱いから」「意志が足りないから」起きる現象ではありません。飲酒を繰り返すことで脳の報酬に関わる仕組みそのものが変化してしまうために起きる、医学的な病気です。だからこそ、叱責や説教ではなく、医療的な治療と支援が必要になります。

「依存症」という言葉には、本人だけでなく周囲の人にも強い不安やとまどいを与えることがあります。しかし、依存症は糖尿病や高血圧のように、生活習慣や体質、環境要因が積み重なって発症する慢性疾患のひとつとして理解されています。早い段階で気づき、専門的な支援につながることができれば、断酒・減酒によって生活を立て直していくことは十分に可能です。まずは「自分は大丈夫」と決めつけず、AUDITのような客観的な指標で今の飲み方を振り返ってみることが、最初の一歩になります。

耐性・精神依存・身体依存という3つの段階

最初の変化は「耐性」です。以前と同じ量を飲んでも酔いにくくなり、同じ満足感を得るために必要な酒量がだんだん増えていきます。次に現れるのが「精神依存」で、「お酒を飲みたい」という欲求そのものが強くなり、飲酒のことを考える時間が増えていきます。さらに進行すると「身体依存」が形成され、体内のアルコール濃度が下がるだけで手指のふるえ・発汗・不眠・イライラといった離脱症状(禁断症状)が現れるようになります[2]。

この3段階が揃うと、「今日は飲まないでおこう」と本人が思っても、離脱症状のつらさを避けるためについ飲んでしまう、という悪循環に陥ります。これが「自己制御の喪失」と呼ばれる状態で、依存症の中核的な特徴です[2]。

日本にはどれくらいの人がいるのか

厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21)は、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合について、策定時(2010年)の男性15.3%・女性7.5%から、直近値(2019年)で男性14.9%・女性9.1%へと推移したことを示しています。男性はやや減少、女性はむしろ増加している点が特徴です[3]。また、妊娠中の飲酒率は策定時8.7%から直近値1.0%へと大きく減少しており、啓発の効果が表れている項目の一つとされています[3]。

この数字が示すのは、生活習慣病のリスクを高める飲酒が特別な人だけの問題ではなく、成人のうち一定の割合が該当しうる身近なテーマだということです。AUDITで15点以上になったとしても、それは「重症になってしまった特殊な人」という意味ではなく、「早めに専門家へ相談したほうがよい段階に来ている」というサインとして受け止めることが大切です。なお、依存症が疑われる人の正確な人数推計については、今回参照した資料の範囲では確認できませんでした。

なりやすい人・悪化しやすい状況

アルコール依存症は誰にでも起こりうる病気ですが、飲酒を始める年齢が早い、日常的にストレスの発散を飲酒に頼っている、身近に飲酒量の多い人が多い環境にいる、といった状況では飲酒量が増えやすく、結果として依存が進みやすくなると考えられています。うつ病や不安症など他の心の不調があると、つらさを紛らわせるために飲酒量が増え、依存症と併存しやすいことも知られています。

⚠ 妊娠中の女性は、依存症の診断の有無にかかわらず、少量であっても飲酒を避けるべきとされています。厚生労働省 e-ヘルスネットは、妊娠中の飲酒が胎児の低体重、顔面を中心とした形態異常、脳の障害などを引き起こす「胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)」につながる可能性があり、妊娠のどの時期の飲酒でも影響しうるため、妊娠中は完全に禁酒することを勧めています[8]。この限界は他の一般的な「減酒の目安」とは別に考える必要があります。妊娠を計画している段階から、飲酒習慣について主治医や産婦人科医に相談しておくことも一つの方法です。

依存が進む仕組み(図解)

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと依存」[2]

依存症の疑いを測る目安となる数値・基準

検査・基準 数値の目安 意味
AUDIT(WHO作成・10項目) 0〜7点 今の飲み方を維持してよい水準[1]
AUDIT 8〜14点 将来飲酒問題が起きる、または既に生じている可能性があり、減酒が勧められる水準[1]
AUDIT 15点以上 アルコール依存症の疑いがあり、精神保健福祉センターや依存症専門医療機関への相談が目安[1]
生活習慣病のリスクを高める飲酒量(純アルコール換算・1日あたり) 男性40g以上/女性20g以上 厚生労働省 健康日本21が定める、生活習慣病リスクが上がる飲酒量の目安[5]

出典:久里浜医療センター「AUDIT」[1]/厚生労働省 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン[5]

純アルコール量の目安は「飲んだ量(ml)×アルコール度数(%/100)×0.8」で計算できます。例えばビール500ml(度数5%)なら、500×0.05×0.8=約20gです。ビール中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯がおおむね純アルコール20g前後に相当します。缶チューハイ(度数9%程度)500mlでは純アルコール量が約36gになり、ビールよりも高濃度になりやすい点に注意が必要です。度数の高いお酒を飲む場合は、飲んだ「杯数」ではなく、純アルコール量で振り返る習慣をつけると、自分の飲酒量を客観的に把握しやすくなります。

「多量飲酒」「有害な使用」「依存症」との見分け方

項目 生活習慣病リスクを高める飲酒 有害な使用 アルコール依存症
飲酒量の目安 純アルコール男性40g/女性20g以上/日[5] 心身の健康障害が実際に生じている状態 コントロール喪失・耐性・離脱症状を伴う[2]
コントロール 自分の意思で減らすことができる できる場合もある 自分の意思だけでは困難[2]
離脱症状 通常みられない みられないことが多い 手のふるえ・発汗・不眠などがみられうる
対応 減酒の心がけ 減酒指導・専門相談 専門医療機関での治療が必要[4]

見分けるカギ:「量を減らそうと思えば自分で減らせるか」「やめると手のふるえなどの体の症状が出るか」の2点です。自分の意思でコントロールできず、飲酒を中断すると身体症状が出る場合は、依存症の可能性を考えて専門医療機関に相談してください。

健康診断などで「多量飲酒」を指摘された場合、それがすぐに依存症を意味するわけではありません。しかし、生活習慣病のリスクを高める量を日常的に飲み続けている状態は、時間の経過とともに耐性が進み、精神依存・身体依存へと移行していく入り口になりうる段階でもあります。指摘された時点で飲酒量を見直すことは、依存症への進行を防ぐという意味でも重要です。

治療の流れ:断酒・減酒・離脱症状のケアまで

久里浜医療センターの受診案内によれば、男性患者は「内科病棟(1階病棟)に約3週間入院します。その間に離脱症状(禁断症状)の治療と、頭部MRI、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、各種血液検査などの内科的検査・治療を行い」、身体状態が落ち着いてから精神科病棟に移り、断酒に向けた教育プログラムを受けます。女性患者も同様の流れで、まず内科病棟で離脱症状の治療と身体検査を行います[4]。標準的な入院期間は男性3か月・女性2か月とされています[4]。

近年は「断酒(完全に飲まない)」だけでなく、生活習慣病リスクを減らすことを目的に飲酒量を段階的に減らす「減酒」も治療選択肢の一つとして位置づけられています。どちらを目指すかは、依存の重症度・合併症の有無・本人の状況によって医師と相談しながら決めます。一般的には、身体依存が形成され離脱症状のリスクがある人や、重い合併症がある人には断酒が強く勧められ、生活習慣病リスクを高める飲酒段階にとどまり依存の程度が軽い人には、まず減酒から取り組む選択肢が検討されやすいとされています。どちらの場合も、自己判断で急に飲酒量を大きく変えるのではなく、医療機関のサポートを受けながら進めることが安全です。

離脱症状(禁断症状)と振戦せん妄について

長期間多量に飲酒していた人が急に飲酒を中断すると、手指のふるえ・発汗・動悸・不眠・不安といった離脱症状が出ることがあります。重症化すると、意識の混濁や幻覚を伴う「振戦せん妄」やけいれん発作に至ることもあり、命に関わる場合があります。そのため、依存症が疑われる状態から自己判断で急に断酒することは避け、医療機関で身体状態を確認しながら離脱症状の治療を受けることが重要です[4]。

心理社会的治療と自助グループ(AA・断酒会)

身体的な離脱症状のケアが落ち着いた後は、再び飲酒に戻らないための心理社会的な治療が中心になります。久里浜医療センターでは、集団精神療法(ミーティング)、認知行動療法、断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)といった自助グループへの参加、作業療法、家族教育などを組み合わせたプログラムが行われています。

自助グループ参加の効果について、久里浜医療センターは「標準的な医療だけの治療では断酒成功率は1.8倍であるのに対し、AAに参加した場合は4.5〜5.9倍に高まる」という報告を紹介しています[7]。断酒会・AAのようなグループは、同じ経験を持つ仲間と定期的に顔を合わせ続けることで、一人で頑張るよりも再飲酒を防ぎやすくなる仕組みとして位置づけられています。

再飲酒(スリップ)は「治療の失敗」ではない

断酒・減酒に取り組んでいる途中で再び飲んでしまうことは珍しくありません。アルコール依存症は糖尿病や高血圧のような慢性の病気と同じように、良い時期と悪化する時期を繰り返しながら長期的に付き合っていく病気だと考えられています。再飲酒が起きたときに大切なのは、本人や家族が「もうだめだ」とすべてを諦めることではなく、なるべく早く主治医や自助グループに相談し、次の対処につなげることです。

長期の多量飲酒が体に及ぼす影響(合併症)

依存症そのものだけでなく、長期間にわたる多量飲酒は全身のさまざまな臓器に影響します。厚生労働省 e-ヘルスネットは、アルコールと肝臓がんの関係について、男性で1日あたり純アルコール69g以上(日本酒に換算して約3合相当)の飲酒を続けると肝臓がんのリスクが1.66〜1.76倍、女性では23g以上でリスクが3.6倍になるとするデータを紹介しています[9]。

影響を受ける部位 主な合併症
肝臓 脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変、肝臓がん[9]
すい臓 慢性すい炎、すい臓がんのリスク上昇
消化管 口腔・咽頭・食道がん、大腸がんのリスク上昇(特にアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い人)
脳・神経 記憶障害、末梢神経障害、離脱症状に伴うけいれん・振戦せん妄
循環器 高血圧、不整脈のリスク上昇

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと肝臓病」[9]

これらの合併症は、依存症の治療において「断酒・減酒がなぜ必要か」を考える際の重要な理由にもなります。すでに肝機能の数値を指摘されている場合は、アルコール依存症の専門医療機関だけでなく、消化器内科など身体疾患を診る診療科とも連携して治療を進めることが望まれます。

今すぐ受診すべき目安:家庭で様子を見てよいか

次のいずれかに当てはまる場合は、様子見をせず速やかに医療機関(救急を含む)に相談してください。

  • 🔴 今すぐ受診・救急相談:意識がもうろうとしている、幻覚が見える、けいれんを起こした、大量の発汗と手指の激しいふるえがある(振戦せん妄が疑われる状態)
  • 🟡 できるだけ早く専門医療機関に相談:AUDITが15点以上、飲酒を減らそうとしても自分の意思でコントロールできない、飲酒によって仕事や家庭に支障が出ている
  • 🟢 まずは減酒を心がける:AUDITが8〜14点で、生活習慣病のリスクを高める飲酒量(純アルコール男性40g/女性20g以上)を日常的に飲んでいる

出典:久里浜医療センター「AUDIT」[1]/同「アルコール科 受診案内」[4]

日本と海外のアルコール使用障害の考え方の比較

項目 日本(久里浜医療センター・厚生労働省) WHO(国際基準)
スクリーニング AUDIT(WHO作成)を国内の医療・保健指導で広く使用[1] AUDITはWHOが問題飲酒者のスクリーニング用に開発した国際標準ツール[1]
疾病分類 国内の統計・診療でICD-10/ICD-11に基づく分類が用いられる ICD-11では「有害な使用パターン」と「依存」を区別して分類している[6]
飲酒量の目安 健康日本21:生活習慣病のリスクを高める量=純アルコール男性40g/女性20g以上/日[5] 国により基準量の設定は異なり、共通の「安全な飲酒量」は定めていない

日本ではAUDITという国際共通のスクリーニングツールを使いながら、生活習慣病予防の観点から独自に「リスクを高める飲酒量」の数値目標を健康日本21で設定している点が特徴です。同じAUDITスコアでも、国や機関によって「専門医療機関につなぐ点数のライン」の運用が異なる場合があるため、数値は目安として捉え、疑わしい場合は専門医療機関に相談することが重要です。

また、WHOのICD-11では「有害な使用パターン(harmful pattern of use)」と「依存(dependence)」を分けて捉える考え方が採用されています[6]。「有害な使用パターン」は、実際に心身の健康に害が生じている飲酒の仕方を指し、必ずしも耐性や離脱症状といった依存の中核症状を伴うとは限りません。一方で「依存」は、コントロール喪失・耐性・離脱症状といった特徴がそろった、より進行した状態を指します。日本の医療現場でも、この2つの概念の違いを踏まえて「まだ有害な使用の段階か、依存まで進んでいるか」を評価したうえで治療方針が検討されます。

医療費・公的支援の目安

アルコール依存症の入院治療は数か月に及ぶこともあり、医療費の負担が気になる方も多いはずです。医療保険の高額療養費制度を使うと、ひと月あたりの自己負担には所得に応じた上限が設けられます。上限額や申請方法は毎年見直されることがあるため、以下の最新シミュレーターで目安を確認してください。通院・入院どちらの治療でも、ソーシャルワーカーに相談すると利用できる制度を案内してもらえることが多いです。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

依存症の治療を続けやすくする公的な相談窓口

費用面だけでなく、「どこに相談したらよいかわからない」という悩みも多く聞かれます。まずはお住まいの都道府県・政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターに電話で相談すると、地域の依存症専門医療機関や自助グループの情報を無料で教えてもらえます。匿名での相談が可能な窓口も多いため、まずは電話で聞いてみるところから始めても構いません。久里浜医療センターのAUDITは、こうした相談を検討する際の目安の一つとして利用できます[1]。

初めて受診するときの流れ

「専門医療機関に行く」と決めても、初診で何をされるのか分からず足が向かないという人は少なくありません。一般的な流れの目安は次のとおりです。

  1. 問診・スクリーニング:飲酒歴、1日あたりの飲酒量、これまでに離脱症状が出たことがあるかなどを聞かれます。AUDITのような質問票に回答することもあります[1]。
  2. 身体状態の確認:血液検査で肝機能などを確認し、必要に応じて他の内科的検査が行われます。長期の多量飲酒がある場合は、離脱症状の管理も含めて入院での身体治療が検討されることがあります[4]。
  3. 治療方針の相談:断酒を目指すか、まず減酒から始めるかを、重症度や合併症の有無、本人の希望を踏まえて医師と相談します。
  4. 継続的な通院・自助グループの案内:入院治療が必要ない、または退院後は、定期的な通院に加えて断酒会・AAなどの自助グループが案内されることが多くあります[7]。

「今日行ったら即入院させられるのでは」と不安に感じて受診をためらう人もいますが、多くの専門医療機関では、まず外来で状態を確認したうえで、必要な場合に入院を検討するという段階を踏みます。分からないことは初診の時点で遠慮なく質問して構いません。会社や家族に知られたくないという理由で受診をためらう場合も、まず本人だけで匿名に近い形で相談できる窓口(精神保健福祉センターの電話相談など)から始める方法もあります。

よくある誤解

誤解 実際のところ
毎日飲まなければ依存症ではない 連続して飲まなくても、飲酒のコントロールができない状態や離脱症状があれば依存症が疑われます。飲酒の「頻度」だけでなく「コントロールできているか」が重要な判断材料です[2]。
意志が強ければやめられる 耐性・精神依存・身体依存が形成された状態は、脳の仕組みの変化によるものであり、意志の力だけで解消するのは難しいとされています[2]。
入院さえすれば断酒はそこで完了する 入院治療は離脱症状の管理や身体回復には有効ですが、退院後の自助グループ参加や通院継続が再飲酒予防に大きく関わるとされています[7]。
一度失敗したら治療は無意味 再飲酒は治療過程で起こりうるものであり、そこで治療をやめてしまうのではなく、早期に相談し直すことが回復への近道とされています。

家族はどう向き合えばよいか

依存症の本人だけでなく、共に暮らす家族も長期間にわたって心身ともに疲弊しやすいことが知られています。家族が「もっと厳しく叱れば飲まなくなるはずだ」「自分がもっと我慢すればうまくいく」と抱え込んでしまうと、かえって状況が長引くことも少なくありません。

家族自身が精神保健福祉センターの家族相談や、断酒会・AAに準じた家族向けの自助グループ(例:アラノン等)を利用することで、「本人を変えようとする」のではなく「自分の対応を変える」という視点を得られることがあります。本人がまだ治療を望んでいない段階でも、家族だけで相談を始めることは可能です。

家族がお酒を隠したり、失敗を穴埋めし続けたりする「イネイブリング」と呼ばれる関わり方は、結果として本人が飲酒の問題に向き合う機会を先延ばしにしてしまうことがあると指摘されています。家族がすべてを一人で背負い込まず、専門機関や自助グループとつながりながら、本人が治療につながるタイミングを整えていくという視点が役立ちます。

よくある質問(FAQ)

アルコール依存症は自分の意思だけで治せますか?
耐性・精神依存・身体依存が進んだ状態では、自分の意思だけでのコントロールは難しいとされています[2]。専門医療機関での治療・支援を受けることが回復への近道です。
AUDITは何点から病院に相談すべきですか?
久里浜医療センターの案内では、15点以上でアルコール依存症の疑いがあり、精神保健福祉センターや依存症専門医療機関への相談が目安とされています[1]。8〜14点でも減酒を検討する段階です。
お酒をやめると手が震えるのはなぜですか?
身体依存が形成されると、アルコールが体内からなくなることで手指のふるえ・発汗・不眠などの離脱症状が出ることがあります[2]。重い場合は振戦せん妄に至ることもあるため、自己判断での急な断酒は避け、医療機関に相談してください。
断酒と減酒、どちらを選べばよいですか?
依存の重症度や合併症の有無によって適切な選択は異なります。どちらを目指すかは自己判断せず、専門医療機関で相談しながら決めることが勧められます。
入院治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
久里浜医療センターの案内では、標準的な入院期間は男性3か月・女性2か月とされています。まず内科病棟で約3週間、離脱症状の治療と身体検査を行い、その後精神科病棟に移ります[4]。
家族はどう接すればよいですか?
本人を責めるだけでは状況が改善しにくいことが知られています。家族自身が精神保健福祉センターや依存症専門医療機関の家族相談・家族教育プログラムを利用することも、対応を考えるうえで役立ちます。
生活習慣病のリスクを高める飲酒量とはどのくらいですか?
厚生労働省の健康日本21では、純アルコール換算で1日あたり男性40g以上、女性20g以上を「生活習慣病のリスクを高める量」としています[5]。ビール中瓶1本がおよそ純アルコール20gに相当します。
依存症の疑いがあるとき、まずどこに相談すればよいですか?
AUDITなどで依存症が疑われる場合、精神保健福祉センターや依存症専門医療機関への相談が目安とされています[1]。かかりつけ医がいる場合は、そこから専門医療機関を紹介してもらう方法もあります。
飲酒量を自己申告するとき、正確に計算する方法はありますか?
純アルコール量(g)は「飲んだ量(ml)×アルコール度数(%/100)×比重0.8」で概算できます。缶チューハイやハイボールなど度数が高い飲料は、見た目の量以上にアルコール摂取量が多くなる点に注意してください。

アルコール依存症に関する記事一覧


飲酒の心理的な背景や、個々の生活状況ごとの最適な減酒・断酒の進め方については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。気になる場合は、専門医療機関で直接相談することをおすすめします。

参考文献

  1. 久里浜医療センター「AUDIT(アルコール依存症スクリーニングテスト)」 kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/audit.html
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと依存」 kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-05-001.html
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康日本21(第二次)におけるアルコール対策」 kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-06-002.html
  4. 久里浜医療センター「アルコール科(アルコール依存症治療)受診案内」 kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/alcohol_info.html
  5. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」啓発資料(健康日本21) kennet.mhlw.go.jp(飲酒ガイドライン啓発資料)
  6. 世界保健機関(WHO)「ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics」 icd.who.int/browse11/l-m/en
  7. 久里浜医療センター「自助グループ(AAと断酒会)への参加による回復効果」 kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/self_help_group_effect.html
  8. 厚生労働省 e-ヘルスネット「胎児性アルコール・スペクトラム障害」 kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-015.html
  9. 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと肝臓病」 kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-002.html