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JHO 病気ペディア

卵巣がんとは?サイレントキラーの症状・診断・生存率を解説らんそうがん / Ovarian Cancer

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

卵巣がんは、卵巣の細胞が悪性化して増える病気で、初期にはほとんど自覚症状が出ないことから、編集部では「サイレントキラー」と表現しています。組織のタイプは大きく「上皮性腫瘍」「胚細胞腫瘍」「性索間質性腫瘍」の3つに分かれ、患者数の多くを占めるのは上皮性卵巣がんです[2]。2023年の罹患数は12,926例、2024年の死亡数は5,116人と推計されており、5年相対生存率は60.0%(2009〜2011年診断例)と報告されています[5]。腹部の張り・頻尿・食欲不振が2〜3週間以上続く場合は、婦人科(産婦人科)の受診が目安になります。

主な組織型 上皮性卵巣がん(最多)・胚細胞腫瘍(若年に多い)・性索間質性腫瘍(ホルモン産生を伴うことがある)[2]
主な症状 腹部膨満感・下腹部のしこり・食欲不振・頻尿・便秘など、初期は目立たない[1]
主な検査 経腟超音波検査・CT/MRI・腫瘍マーカー(CA125など)・最終的には手術による病理診断[3]
5年相対生存率 60.0%(全病期・2009〜2011年診断例、全国がん登録集計)[5]
受診の目安 腹部膨満感・頻尿・食欲不振などが2〜3週間以上続く、あるいは急激な腹部の張りや強い痛みがある場合はすぐに婦人科へ

卵巣がんとは?原因と症状が出る仕組み

卵巣がんは、骨盤内にある卵巣(および卵管・腹膜)の細胞が異常に増殖してできる悪性腫瘍です。国立がん研究センターの解説では、卵巣がんは「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」として一体的に扱われることが多いとされています[1]。卵巣は骨盤の奥深くにあり、周囲には腸や膀胱など可動性のある臓器が多いため、初期の小さな腫瘍が周囲の臓器を強く圧迫することは少なく、症状が出にくい構造になっています。腫瘍がある程度大きくなって初めて、服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりを触れる、食欲がなくなるといった変化が現れ、さらに進行すると足のむくみや、膀胱・直腸の圧迫による頻尿・便秘が起こるとされています[1]。

このように「初期の段階ではほとんど自覚症状がない」ことが、卵巣がんが見つかったときにはすでに進行していることが多い最大の理由です[1]。腹部膨満感・頻尿・食欲不振は、便秘や更年期症状、単なる体重増加など他の原因でもよく起こるため、本人はもちろん医療機関でも見過ごされやすいという課題があります。だからこそ「いつもと違う不調が2〜3週間以上続く」という時間軸を、体からのサインとして意識することが重要です。

卵巣の位置と上皮性・胚細胞性・性索間質性の3つの組織型(国立がん研究センターの解説をもとにJHO編集部が作図)

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」[1]

3つの組織型:上皮性・胚細胞性・性索間質性はまったく別の病気

卵巣がんは一つの病気ではありません。国立がん研究センターは、卵巣にできる悪性腫瘍を大きく「上皮性腫瘍」「胚細胞腫瘍」「性索間質性腫瘍」の3つに分類しています[2]。この3つは発生する細胞の由来がまったく異なり、好発年齢・進行の仕方・使う腫瘍マーカーもそれぞれ違うため、混同せずに区別して理解する必要があります。

① 上皮性卵巣がん(最も患者数が多い)

卵巣の表面を覆う上皮細胞から発生するタイプで、卵巣がん全体のなかで最も患者数が多いとされています[2]。国立がん研究センターの解説では、上皮性腫瘍はさらに「漿液性がん」「明細胞がん」「類内膜がん」「粘液性がん」などに分類され、それぞれ性質が異なると説明されています[2]。中高年以降での発症が中心で、一般に「卵巣がん」という言葉が指すのは主にこの上皮性卵巣がんです。

② 胚細胞腫瘍(若い世代に多い)

卵子のもとになる胚細胞から発生するタイプで、他の組織型に比べて若い年代(10代後半〜20代・30代)での発症が多いとされる腫瘍です。進行が早いこともある一方で、抗がん剤治療への反応性が比較的良いとされる組織型が含まれます。妊孕性(妊娠する力)を温存する治療の対象になりやすい点も、上皮性卵巣がんとの大きな違いです。現時点で参照した公的資料には、胚細胞腫瘍の年齢分布や生存率を詳細に示す独立ページは見当たらず、上皮性がんに比べて情報が限られています。この点は資料の限界として、今後の追加取材課題としています。

③ 性索間質性腫瘍(ホルモンを産生することがある)

卵巣内でホルモンを作る細胞(顆粒膜細胞・莢膜細胞など)に由来するタイプです。腫瘍そのものがエストロゲンなどのホルモンを産生することがあり、不正出血や月経異常といった、他の組織型とは異なる症状のきっかけで発見されることがあります。頻度は上皮性卵巣がんに比べて少ないとされています。

3つを混同してはいけない理由:治療方針(手術の範囲、妊孕性温存の可否、化学療法の内容)は組織型によって大きく変わります。「卵巣がん」と一括りにネット検索すると、実際には自分と異なる組織型の情報(生存率・治療法)を読んでしまうことがあるため、病理診断で組織型が確定した後は、その組織型名で改めて情報を確認することをおすすめします。

なぜ「サイレントキラー」と呼ばれるのか

卵巣がんが「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれる背景には、①卵巣が骨盤の奥にあり腫瘍が周囲を圧迫するまで自覚しにくいこと、②現れる症状(腹部膨満感・頻尿・食欲不振・便秘)が便秘や胃腸の不調、更年期症状などありふれた症状と区別しにくいこと、③現時点では無症状の段階で確実に見つけられる検診方法が確立していないこと、の3つが重なっている事情があります[1]。

この「症状の非特異性」こそが、卵巣がんが婦人科がんの中でも発見時点での進行例が多い理由です。腹部膨満感・頻尿・食欲不振のいずれかが、はっきりした原因(食べ過ぎ、風邪、生理前など)なしに2〜3週間以上続く場合、あるいは徐々に悪化していく場合は、我慢せずに婦人科を受診することが推奨されます。

診断の目安となる数値・基準

卵巣がんの主な検査と特徴
検査 わかること 限界・注意点
経腟超音波検査 腟の中から超音波をあて、子宮・卵巣を近い位置から観察する[3] 腫瘍の大きさ・性状はわかるが、良性・悪性の確定はできない
CT検査 体の断面を画像化し、リンパ節転移や遠隔転移の有無を調べる[3] 小さな病変や腹膜への広がりは判定が難しい場合がある
MRI検査 骨盤内の軟部組織のコントラストに優れ、腫瘍の性状評価に用いられる 被曝はないが検査時間が長い
CA125(腫瘍マーカー) 血液検査で測定する腫瘍マーカーの一つ[3] 「腫瘍マーカーの値だけでは診断できません」と明記されている[3]。子宮内膜症・月経中・妊娠などでも上昇することがある
PET検査 全身のがん細胞の活動性を画像化する 保険適用や実施施設が限られる場合がある
病理診断(確定診断) 手術で採取した組織を顕微鏡で調べ、組織型・悪性度を確定する 卵巣は体の深い位置にあり針生検が難しいため、多くは手術中〜術後に確定する[3]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 検査」[3]

CA125検査の限界を正しく理解する

CA125は卵巣がんの代表的な腫瘍マーカーですが、国立がん研究センターは「腫瘍マーカーの値だけでは診断できません。また、がんの進行や転移などの経過についても、腫瘍マーカーの値の変化だけでは判断できません」と明記しています[3]。CA125は子宮内膜症、月経中、骨盤内の炎症、さらには妊娠などでも上昇することがあり、「数値が高い=がん」でも「数値が正常=がんではない」でもありません。逆に、初期の卵巣がんではCA125が正常範囲にとどまることもあります。このため、CA125は単独の確定診断ツールではなく、超音波・CT・MRIなどの画像検査や症状と組み合わせて総合的に判断するための材料の一つと位置づけられています。

この限界がある一方で、CA125は「治療前と治療後の同じ人での変化」を追う経過観察の指標としては広く使われています。数値そのものの絶対値よりも、自分自身の過去の値からの推移を主治医と一緒に確認することが実用的な使い方です。

卵巣嚢腫(卵巣嚢胞)との見分け方

卵巣がん(悪性)と卵巣嚢腫・卵巣嚢胞(多くは良性)の違い
項目 卵巣がん 卵巣嚢腫・卵巣嚢胞(多くは良性)
性質 悪性腫瘍。周囲組織や他臓器へ広がる可能性がある 多くは良性のふくろ状の変化で、機能性のものは自然に縮小することもある
症状 初期は無症状が多く、進行すると腹部膨満感・頻尿・食欲不振[1] 無症状のことが多いが、ねじれ(茎捻転)や破裂で急な激痛が出ることがある
経過 基本的に自然には縮小しない。放置すると進行しうる 数か月の経過観察で縮小・消失することがある
確定方法 画像検査+腫瘍マーカー+最終的に病理診断で確定 画像検査の特徴(内部が均一な液体か、充実成分があるか等)で良性を推定するが、最終確認には経過観察や手術を要することもある

見分けるカギ:自己判断で「良性の嚢腫だろう」と決めつけず、婦人科で画像検査を受けたうえで、医師が示す経過観察・追加検査・手術の方針に従うことが最も安全です。症状や画像所見の違いをより詳しく知りたい方は、当サイトの別記事「【卵巣嚢胞と卵巣がん】症状の違い・受診の目安と早期発見のポイント」も参考にしてください。

病期分類(ステージI〜IV)と治療の考え方

卵巣がんの病期(FIGO分類に基づく考え方)の大まかな区分
病期 目安となる広がり 治療の考え方
ステージI がんが卵巣・卵管の範囲にとどまっている[4] 手術が中心。条件を満たせば妊孕性温存手術が検討されることもある[4]
ステージII 骨盤内の他の臓器(子宮・卵管・膀胱・直腸など)へ広がっている 手術+術後化学療法が基本
ステージIII 骨盤を超えて腹膜や腹腔内リンパ節に広がっている 手術と化学療法を組み合わせる。摘出しきれない場合は先に化学療法を行うこともある[4]
ステージIV 腹腔の外、肝臓実質や肺など遠くの臓器に転移している[4] 全身化学療法が中心。分子標的薬の併用が検討される[4]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」[4]/病期ごとの詳細なサブステージ(IA・IB・IC等)は資料により表記が細分化されており、正確な区分は主治医から提示される病理診断書で確認してください。

FIGO病期分類(I〜IV期)と進行度の目安(国立がん研究センターの資料をもとにJHO編集部が作図)

経過と治療:手術・化学療法・分子標的薬

国立がん研究センターは「手術によってがんが取りきれたかどうかが予後に影響します」と説明しており[4]、卵巣がん治療の土台は手術です。標準的な手術では、両側の卵巣・卵管、子宮、大網(胃の下に垂れ下がる脂肪組織)を摘出し、必要に応じてリンパ節郭清や腹膜の切除を行います[4]。早期(ステージI相当)で条件を満たす場合には、片側の卵巣・卵管のみを残す妊孕性温存手術が検討されることがあります[4]。腫瘍が広範囲で一度に摘出しきれないと判断された場合は、先に化学療法を行って腫瘍を縮小させたうえで手術(インターバル・デバルキング手術)を行う方法も用いられます[4]。

化学療法の第一選択は、パクリタキセルとカルボプラチンを組み合わせるTC療法です[4]。パクリタキセルの代わりにドセタキセルを使うDC療法、リポソーム化ドキソルビシンを使うPLD-C療法なども選択肢とされています[4]。進行した病期(III〜IV期)では、分子標的薬のベバシズマブを併用することが検討され、その後の維持療法として、BRCA遺伝子変異やHRD(相同組換え修復欠損)の有無といった検査結果をもとに、オラパリブやニラパリブといったPARP阻害薬を選ぶ場合があります[4]。どの薬をどの順番で使うかは、組織型・病期・全身状態・遺伝子検査の結果によって個別に判断されるため、「この病期には必ずこの薬」と一律には決まりません。

手術・化学療法それぞれの詳しい流れ、副作用への対処、標準治療以外の選択肢(漢方治療を含む)については、当サイトの以下の記事で詳しく解説しています。卵巣がん治療の全貌:最新ガイドラインで見る手術・化学療法・分子標的薬、卵巣がん漢方治療の科学的真実をご覧ください。

受診の目安:今すぐ婦人科か、しばらく様子を見てよいか

🔴 できるだけ早く婦人科(産婦人科)を受診:腹部膨満感・下腹部のしこり・食欲不振・頻尿・便秘のいずれかが、はっきりした原因なく2〜3週間以上続いている、あるいは徐々に悪化している場合[1]。急な強い腹痛や高熱を伴う場合は、卵巣腫瘍のねじれ(茎捻転)や破裂の可能性もあるため、婦人科・救急を速やかに受診してください。

🟡 数週間以内に婦人科を予約:原因不明の不正出血、閉経後の出血、急激な体重の増減、下腹部の張りが続く場合。

🟢 次の健診・人間ドックで相談:症状はないが、家族に乳がん・卵巣がんの方が複数いる、あるいは自分が乳がんの既往がある場合は、次回の受診時に遺伝性リスクについて相談することをおすすめします。

何科を受診すべきか迷う場合は、まず「婦人科」または「産婦人科」を受診してください。3割負担の場合の外来受診・検査の自己負担額の目安、入院・手術にかかる医療費と高額療養費制度については、下の「医療費の目安」をご覧ください。

遺伝性のリスク:BRCA1・BRCA2と遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)

卵巣がんの一部には、生まれつきBRCA1またはBRCA2という遺伝子に変化(病的バリアント)を持つことに関連して発症する「遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)」が含まれます。BRCA1・BRCA2は本来、細胞のDNA損傷を修復する働きに関わる遺伝子で、この機能が生まれつき低下していると、乳がん・卵巣がんなどが発症しやすくなると考えられています。近い血縁者(親・きょうだい・子)に乳がんや卵巣がんを発症した方が複数いる場合、あるいは自分自身が乳がんを経験している場合は、遺伝性のリスクについて婦人科・遺伝カウンセリングの窓口で相談する価値があります。

治療の面では、BRCA遺伝子変異の有無やHRD(相同組換え修復欠損)の検査結果が、PARP阻害薬(オラパリブ・ニラパリブなど)による維持療法を選ぶかどうかの判断材料として使われています[4]。なお、BRCA変異を持つ人の生涯における卵巣がん発症リスクの具体的なパーセンテージについては、報告によって前提となる集団や算出方法が異なり、今回参照した国立がん研究センターの公開資料には確定的な数値の記載が見当たりませんでした。数値を用いた個別のリスク評価は、遺伝カウンセリングを通じて専門家に確認することをおすすめします。

日本と米国のガイドライン比較:無症状の人への「検診」をめぐる考え方の違い

項目 日本の実務での一般的な考え方 米国(USPSTF、2018年改訂)
無症状・平均的リスクの女性への卵巣がん検診(経腟超音波+CA125) 症状がない人への集団検診として制度化はされておらず、人間ドック等でのオプション検査として提供されることがある(編集部整理) 推奨グレードD=「無症状の女性への卵巣がん検診を行わないことを推奨する」と明記[6]
根拠とされる主な研究 国内の大規模ランダム化比較試験による検診の死亡率減少効果は、今回参照した資料では確認できませんでした UKCTOCS・PLCO試験など複数の大規模試験で、経腟超音波・CA125による検診が卵巣がんによる死亡を有意に減らさなかったと報告[6]
デメリットの扱い 個別の相談の中で、偽陽性による不要な手術のリスクが説明されることがある 偽陽性率が4.2〜44.2%に及び、偽陽性により卵巣・卵管摘出などの手術を受けた人のうち最大15%に重大な合併症が生じたとの報告を根拠に挙げる[6]
遺伝性リスクが高い人への扱い BRCA変異保因者など高リスク者には、個別に画像検査や腫瘍マーカーによる経過観察が検討される この推奨は遺伝性がん症候群が疑われる高リスク女性には適用されないと明記[6]

ここが日米で違う:米国USPSTFは「症状のない平均的リスクの女性」に対する卵巣がん検診について、利益よりも不利益(偽陽性による不要な手術など)が上回るとして、少なくとも中程度の確実性で「推奨しない(グレードD)」という明確な立場を示しています[6]。日本には、これに正面から対応する検診プログラムの是非を論じた国内の公的ガイドライン文書を、今回の調査では特定できませんでした。この点は、日本側に対応する一次資料を確認できなかったという調査の限界として、正直に記載しています。婦人科で「卵巣がん検診」という名目のオプション検査を勧められた場合は、その検査の感度・偽陽性率・想定される次のステップ(陽性が出たらどうするか)を、事前に担当医へ確認することをおすすめします。

治療後の生活・経過観察で気をつけたいこと

手術や化学療法を終えた後も、卵巣がんは定期的な経過観察が続きます。診察の間隔や検査内容(内診、経腟超音波、CA125などの腫瘍マーカー、必要に応じてCT)は、病期・組織型・治療内容によって主治医が個別に組み立てます。国立がん研究センターも、腫瘍マーカーの変化だけで進行や転移を判断することはできないと注意を促しており[3]、数値の一時的な変動に過度に一喜一憂しないことが、長期的に付き合っていくうえで大切です。

化学療法中・後の体調管理としては、吐き気やしびれ(末梢神経障害)、血液検査値の低下(白血球・血小板減少)など、薬剤ごとに特徴的な副作用が知られています。発熱や体調の急な変化があった場合は、次回の予約日を待たずに治療を受けている病院へすぐに連絡することが推奨されます。手術で両側の卵巣を摘出した場合は、閉経前の年齢であってもホルモンバランスの急激な変化(更年期様症状)が起こることがあり、ホルモン補充療法の可否を含めて主治医と相談する価値があります。妊孕性温存手術を受けた方は、その後の妊娠・出産の計画についても、婦人科でのフォローアップの中で相談を続けることが望ましいとされています。

家族や周囲のサポートも治療の継続を支える重要な要素です。がん相談支援センターなど、治療費・生活・仕事との両立について無料で相談できる公的な窓口が全国のがん診療連携拠点病院に設置されています。一人で抱え込まず、看護師・医療ソーシャルワーカーなど多職種のサポートを活用することも、治療を続けるうえでの現実的な選択肢です。

医療費の目安

卵巣がんの治療は、手術・入院・化学療法を含めると医療費が高額になりやすい病気の一つです。健康保険が適用される治療であれば、年齢・所得に応じた自己負担割合(多くは3割負担)に加えて、1か月あたりの自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」を利用できます。事前に「限度額適用認定証」を医療機関に提示しておくと、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。具体的な自己負担限度額の区分・金額・最新の制度変更については、下記に自動反映される公的資料の最新版を確認してください。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

よくある質問(FAQ)

卵巣がんの初期症状はどんなものですか?
初期にははっきりした症状がないことが多いです。進行すると、腹部膨満感、下腹部のしこり、食欲不振、頻尿、便秘などが現れます[1]。これらの症状が原因不明のまま2〜3週間以上続く場合は、婦人科の受診が目安になります。
卵巣がんと卵巣嚢腫(卵巣嚢胞)はどう違いますか?
卵巣がんは悪性腫瘍で自然には縮小しません。卵巣嚢腫・卵巣嚢胞の多くは良性で、数か月の経過観察で縮小・消失することがあります。自己判断はできないため、婦人科での画像検査と経過観察が必要です。詳しくはこちらの記事で解説しています。
CA125の数値が高いと卵巣がんですか?
CA125だけでは診断できません[3]。子宮内膜症、月経中、妊娠などでも上昇することがあり、逆に初期の卵巣がんでは正常範囲のこともあります。画像検査や症状とあわせて総合的に判断されます。詳細は卵巣がん診断におけるCA-125検査の真実をご覧ください。
卵巣がんの生存率はどのくらいですか?
全国がん登録の集計では、全病期をあわせた5年相対生存率は60.0%(2009〜2011年診断例)と報告されています[5]。生存率は病期・組織型・年齢・全身状態によって大きく異なるため、この数値はあくまで全体の目安であり、個別の見通しは主治医に確認することが必要です。
卵巣がんは何種類ありますか?
大きく分けて「上皮性腫瘍」「胚細胞腫瘍」「性索間質性腫瘍」の3つがあります[2]。最も患者数が多いのは上皮性卵巣がんです。組織型によって好発年齢や治療方針が異なります。
卵巣がんの治療で使われる薬は何ですか?
化学療法の第一選択はパクリタキセルとカルボプラチンを組み合わせるTC療法です[4]。進行例では分子標的薬ベバシズマブの併用や、BRCA変異・HRDの検査結果に応じたPARP阻害薬(オラパリブ、ニラパリブ等)による維持療法が検討されます[4]。詳しくは卵巣がん治療の全貌をご覧ください。
卵巣がんに漢方薬は効果がありますか?
漢方治療単独で卵巣がんを治すという科学的根拠は確立していません。標準治療(手術・化学療法)と併用する場合の位置づけについては、当サイトの卵巣がん漢方治療の科学的真実で詳しく解説しています。自己判断で標準治療を中断・遅らせることは避けてください。
家族に乳がん・卵巣がんの人が多いのですが、私も検査すべきですか?
近い血縁者に乳がん・卵巣がんを発症した方が複数いる場合は、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の可能性について、婦人科や遺伝カウンセリングの窓口で相談することが推奨されます。BRCA遺伝子検査を受けるかどうかは、カウンセリングを通じて個別に判断されます。
症状がなくても卵巣がん検診を受けたほうがよいですか?
米国USPSTFは、症状のない平均的リスクの女性への卵巣がん検診について、偽陽性による不要な手術などの不利益が利益を上回るとして推奨していません(グレードD)[6]。日本でこの点に正面から答える公的ガイドラインは、今回の調査では特定できませんでした。人間ドック等で検診を勧められた場合は、検査の限界を担当医に確認することをおすすめします。
見過ごされやすい初期症状にはどんなものがありますか?
腹部膨満感、頻尿、食欲不振、便秘、下腹部の違和感などは、他の一般的な体調不良と区別しにくく見過ごされやすい症状です。当サイトの卵巣がん:見過ごされやすい症状の理解から最新治療の選択肢までで具体的に解説しています。

卵巣がんは組織型によって性質が大きく異なるうえ、初期症状が乏しいために発見が遅れやすい病気です。腹部膨満感・頻尿・食欲不振が原因不明のまま続く場合は、我慢せず婦人科を受診することが、進行を防ぐ最も確実な一歩になります。CA125をはじめとする腫瘍マーカーや画像検査には、それぞれ「わかること」と「わからないこと」があり、単一の検査結果だけで一喜一憂しないことも大切です。なお、卵巣がんの病期の細分類や、個々の治療選択の妥当性については、専門家の間でも症例ごとに判断が分かれる場面があり、本記事だけで確定的な結論を出すことはできません。気になる症状がある場合や、治療方針で迷う場合は、必ず婦人科の担当医に直接相談してください。

卵巣がんに関する記事一覧

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」 ganjoho.jp/public/cancer/ovary/index.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん について(組織型)」 ganjoho.jp/public/cancer/ovary/about.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 検査」 ganjoho.jp/public/cancer/ovary/diagnosis.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」 ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣 全国がん罹患・死亡データ/5年相対生存率」 ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/19_ovary.html
  6. U.S. Preventive Services Task Force「Ovarian Cancer: Screening」(2018年改訂) uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/ovarian-cancer-screening