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JHO 病気ペディア

卵巣嚢腫

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
放置すると破裂する? 記事へ 入院費用の総額はいくら? 記事へ この嚢胞は悪性? 記事へ 癌の可能性はある? 記事へ

✦ 結論から言うと

卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)の多くは良性で、20〜30歳代の女性に多く見られます[1]。小さいうちはほとんど無症状で、健診の超音波検査で偶然見つかることが大半です[2]。ただし大きさが4〜6cm以上になったり充実性部分(組織が詰まった部分)が見つかると手術が検討され[2]、卵巣がねじれる「茎捻転」や被膜が破れる「破裂」が起これば激しい下腹痛で緊急手術になることもあるため[2]、大きさと種類に応じた経過観察・手術の判断が重要です。

出典:公益社団法人日本婦人科腫瘍学会「卵巣腫瘍」/JHO編集部が作図

原因 卵巣に液体や組織がたまってできる袋状の病変。多くは排卵に関わるホルモンの働きや子宮内膜症が背景にあります[1]
主な症状 小さいうちは無症状。大きくなると下腹部の張り・頻尿・便秘、まれに下肢のむくみ[2]
危険なサイン 突然の激しい下腹痛+吐き気・発熱=茎捻転・破裂の疑い、直ちに婦人科(救急)受診[2]

卵巣嚢腫とは?できる仕組みと主な種類

卵巣は子宮の両側に1つずつあり、親指の先ぐらいの大きさの臓器です[2]。卵巣嚢腫は、この卵巣の中に液体状の内容物をためた袋(嚢胞)ができる病変で、日本産科婦人科学会は腫瘍細胞の悪性度によって①良性、②境界悪性(良性と悪性の中間)、③悪性(がん)の3つに分け、さらに腫瘍のもとになった組織によって①上皮性腫瘍、②胚細胞腫瘍、③性索間質性腫瘍の3タイプに分類しています[1]。公益社団法人日本婦人科腫瘍学会によると、卵巣腫瘍全体の約90%が良性で、約10%が悪性です[2]。

日本産科婦人科学会は、腫瘍のもとになった組織によって①上皮性腫瘍、②胚細胞腫瘍、③性索間質性腫瘍の3タイプに分類しています[1]。代表的な良性の卵巣嚢腫として、上皮性腫瘍にあたるしょう液性嚢腫・粘液性嚢腫、胚細胞腫瘍にあたる皮様嚢腫(成熟奇形腫、内部に皮膚組織・毛髪・脂肪などの成分を含む)が知られています(各タイプの内容物・特徴はJHO編集部による一般的な整理です)。子宮内膜症の病変が卵巣に入り込み、月経血のようなチョコレート色の液体をため込むのが卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)で、20〜30歳代に多く、まずはホルモン治療などで経過を観察することが一般的とされています[1]。日本産科婦人科学会は、チョコレート嚢胞について「約1%が悪性化し、がんになると言われています」と説明しています[1]。


症状:小さいうちは無症状、大きくなると何が起こる

卵巣は通常2〜3cm程度の小さな臓器ですが、卵巣嚢腫はときに10〜20cmを超える大きさになることもあります[1]。嚢腫が小さいうちはほとんどの場合まったく症状がなく、日常生活に支障を来すことは稀です[2]。健診や他の病気の検査で受けた超音波検査で偶然見つかるケースが少なくありません。

嚢腫が大きくなってくると、お腹が張って苦しい(腹部膨満感)、下腹部が痛い、尿意が近くなる(頻尿)といった症状が徐々に現れてきます[1]。さらに大きくなると、周囲の臓器である膀胱や直腸を圧迫して頻尿や便秘を生じたり、血管やリンパの流れが妨げられて下肢のむくみ(浮腫)を来すことがあります[2]。これらの症状はゆっくり進むため、本人が「太った」「便秘がち」と勘違いして見過ごしてしまうことも珍しくありません。特に下腹部の張りや頻尿は月経前の体調不良や膀胱炎など、ほかのありふれた不調と区別がつきにくく、症状だけで卵巣嚢腫かどうかを見分けることはできません。気になる症状が数週間続く場合は、自己判断せず婦人科での超音波検査を受けることをおすすめします。市販薬や整体で様子を見ているうちに嚢腫が大きくなっていた、というケースも珍しくありません。

一方で、卵巣腫瘍と子宮・骨盤との付け根がねじれる「茎捻転」や、腫瘍を包む被膜が破れる「破裂」が起こると、これまで無症状だった人でも突然激しい下腹痛に襲われます[2]。この場合はゆっくり様子を見てよい症状ではなく、緊急手術が必要になることもあるため、次の章で説明する「受診の目安」を確認してください。

卵巣嚢腫の主な種類と特徴の一覧

種類 内容物 特徴
しょう液性嚢腫 水のような液体 上皮性腫瘍の代表的な良性タイプ
粘液性嚢腫 粘り気のある液体 上皮性腫瘍のタイプの一つ
皮様嚢腫(成熟奇形腫) 皮膚組織・毛髪・脂肪・軟骨・骨など 胚細胞腫瘍のタイプの一つ[1]
チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞) 月経血に似たチョコレート色の液体 20〜30歳代に多く、約1%が悪性化するとされる[1]

出典:公益社団法人日本産科婦人科学会「卵巣の腫瘍とがん」[1]

これらの種類は「何が悪いか」というより「もともとの性質が違う」と捉えると理解しやすくなります。上皮性腫瘍・胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍という分類は、腫瘍のもとになった組織の違いによるものです[1]。チョコレート嚢胞は子宮内膜症という別の病気が卵巣に及んだ結果できる嚢胞という点で、他の種類とは成り立ちが異なります[1]。同じ「卵巣嚢腫」という言葉でくくられていても、できる仕組みが違うため、経過観察の間隔や手術を検討するタイミングの考え方も種類によって変わってきます。自分がどのタイプと言われているのかを診察の際に確認しておくと、その後の説明が理解しやすくなります。

診断の目安となる数値・基準

診断は問診・身体検査から始まり、経腟超音波検査、必要に応じてMRI検査・血液中の腫瘍マーカー測定へと進み、確定診断は手術で摘出した組織の病理検査で行われます[1]。超音波検査では、腫瘍が嚢胞性(液体だけ)の場合は良性のことが多く、内部に充実性の部分(組織が詰まった部分)を認めた場合は悪性もしくは境界悪性の可能性が疑われます[1]。日本婦人科腫瘍学会は「術前の画像検査では良性、境界悪性あるいは悪性の区別が難しいこともあります」と述べ、腫瘍マーカー(CA125など)は確定診断ではなく「診断の補助」として用いられるとしています[2]。

大きさの目安 一般的な対応 備考
4cm未満 経過観察が中心 悪性を疑う所見がなければ経過観察の対象になりやすい[2]
4〜6cm以上 手術を検討 公益社団法人日本婦人科腫瘍学会は「画像検査で腫瘍の大きさが4〜6cm以上の場合や充実性部分を認めた場合、手術を検討します」としている[2]

出典:公益社団法人日本婦人科腫瘍学会「卵巣腫瘍」[2]

経過観察を行う間隔(何ヵ月ごとに超音波検査を受けるか)は、嚢腫の種類・大きさ・症状によって異なり、施設や担当医の判断によって幅があります。今回参照した資料には、経過観察の統一された間隔についての具体的な記載は見当たりませんでした。指示された受診間隔は自己判断で延ばさず、必ず守ってください。

検査の流れ:何をどの順番で行うか

卵巣嚢腫が疑われたときの検査は、決まった順番で段階的に進みます。まず問診・身体検査で月経の状況や症状を確認し、次に経腟超音波検査(プローブを腟に挿入して卵巣を観察する検査)で嚢腫の大きさ・内部の性状(液体だけか、組織が詰まっているか)を評価します[1]。超音波検査だけでは判断が難しい場合や、より詳しく内部構造を確認したい場合はMRI検査に進み、あわせて血液中の腫瘍マーカー(CA125など)を測定します[1]。日本婦人科腫瘍学会は、経腟超音波検査に加えてCT・MRI検査で総合的に評価すると説明しており、術前の画像検査だけで良性・境界悪性・悪性を完全に区別することは難しい場合もあるとしています[2]。

これらの検査で悪性が強く疑われる、あるいは大きさなどから手術が必要と判断された場合、最終的な確定診断は手術で摘出した組織を顕微鏡で調べる病理組織検査によって行われます[1]。つまり超音波・MRI・腫瘍マーカーはあくまで手術前の「見通しを立てるための検査」であり、それだけで確定診断とはならないという点を理解しておくことが、検査結果を聞くときの不安を減らす助けになります。

経腟超音波検査は、細い棒状のプローブを腟内に挿入して卵巣・子宮を観察する検査で、検査自体は数分程度で終わります。妊娠経験がない方や、精神的な負担がある方には、お腹の上からプローブを当てる経腹超音波検査で代用することもできます。検査で痛みを強く感じる場合や不安がある場合は、遠慮せずその場で医師や看護師に伝えて構いません。

卵巣がん(悪性)との見分け方

卵巣嚢腫のほとんどは良性ですが、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、進行してから発見されることが多いがんです[6]。国立がん研究センターは、服のウエストがきつくなる・下腹部にしこりが触れる・食欲がなくなったといった症状をきっかけに受診し発見される場合があるとし、がんが大きくなるとぼうこうや直腸を圧迫して頻尿や便秘が起きたり、足がむくんだりすることもあると説明しています[6]。良性の卵巣嚢腫でも大きくなれば同様の圧迫症状(頻尿・便秘・下肢の浮腫)が起こり得るため[2]、症状だけで良性・悪性を自己判断することはできません。

項目 良性の卵巣嚢腫(多くのケース) 卵巣がんの疑いが高まるサイン
超音波所見 内部が液体だけの嚢胞性 充実性の部分(組織が詰まった部分)を含む[1]
増大の速さ ゆっくり、または不変 短期間で急速に増大[2]
年齢 20〜30歳代に多い(チョコレート嚢胞など)[1] 閉経後の新たな腫瘤は悪性を疑う目線がより高く持たれる[4]
確定方法 経過観察で縮小・不変を確認 手術による組織の病理検査で確定[1]

見分けるカギ:術前の画像検査だけで良性・境界悪性・悪性を区別することは専門家にとっても難しい場合があるとされ[2]、確定診断は手術で摘出した組織を調べる病理検査によって行われます[1]。

経過と治療:時期別のケア

診断された直後は、多くの場合すぐに手術とはならず、大きさや充実性部分の有無をもとに経過観察か手術検討かの方針が立てられます[2]。経過観察となった場合の再検査の間隔は、嚢腫の種類・大きさ・症状によって担当医が個別に判断するため、指示された受診スケジュールを自己判断で延ばさないことが大切です。経過観察を続けても嚢腫が大きくなる、あるいは充実性部分が新たに見つかる場合は、手術の要否をあらためて検討します[2]。

手術が必要と判断された場合、良性が強く疑われるときは、お腹に小さな穴を数ヵ所開けて器具を挿入する腹腔鏡下手術で腫瘍部分のみを摘出する方法が中心になります[1]。妊娠を望む方には嚢腫の部分だけを摘出し正常な卵巣組織を残す術式(嚢腫摘出術)が選択肢となり、片方の卵巣を摘出しても妊娠は可能とされています[2]。一方、画像検査や術中の所見から悪性(がん)が強く疑われる、あるいは手術中に悪性と判明した場合は、開腹手術に切り替え、両側の卵巣・卵管・子宮・大網(腸の前を覆う脂肪組織)を切除し、必要に応じてリンパ節や腸管の切除まで行う、より広い範囲の手術になります[1]。悪性と確定した場合の抗がん剤治療では、タキサン製剤とプラチナ製剤を組み合わせる治療が標準的で、進行したがんではPARP阻害剤や血管新生阻害剤による維持療法が勧められることがあります[1]。手術の実際の流れや腹腔鏡下手術の費用・リスクの目安は関連記事で詳しく解説しています。

経過観察中の生活の注意点:経過観察の対象とされている間も、日常生活そのものを大きく制限する必要はないとされていますが、突然の激しい下腹痛(茎捻転・破裂のサイン)を放置しないこと、指示された間隔で必ず超音波検査を受け続けることが重要です[2]。自己判断で受診をやめてしまうと、嚢腫が大きくなっていることに気づけないまま茎捻転・破裂を起こすリスクが残ります。

妊娠と卵巣嚢腫

妊娠中の超音波検査で卵巣嚢腫が偶然見つかることがあります。妊娠を望む方の卵巣嚢腫では、腫瘍のみを摘出して正常卵巣部分を残す術式が選択肢となり、片方の卵巣を摘出しても妊娠は可能とされています[2]。すでに妊娠が成立している場合も、多くは経過観察のみで出産まで大きな問題なく経過しますが、大きさや種類によっては妊娠経過中に茎捻転を起こすリスクや、分娩の方法(経腟分娩か帝王切開か)に影響する可能性があるため、産婦人科医が超音波検査の結果をもとに個別に方針を判断します。妊娠中は服用できる薬や検査方法にも制限があるため、卵巣嚢腫が指摘された場合は自己判断をせず、必ず担当の産婦人科医に経過を確認してください。妊娠を計画している段階で卵巣嚢腫を指摘されている方は、妊娠前の時点で嚢腫の種類・大きさ・経過観察の要否について確認し、必要であれば妊娠前に治療方針を相談しておくと、妊娠が成立してからの判断がスムーズになります。

受診の目安:今すぐ受診か、自宅で様子見か

公益社団法人日本婦人科腫瘍学会は、卵巣腫瘍と子宮・骨盤との付け根がねじれる「茎捻転」や、腫瘍の被膜が破れる「破裂」が起こると激しい下腹痛が出現し、緊急手術を要することもあると説明しています[2]。以下は受診の目安の一例です。

状態 目安 行動
🔴 突然の激しい下腹痛+嘔気・発熱・立ちくらみ 茎捻転・破裂の疑い 直ちに婦人科(救急外来)を受診[2]
🟡 下腹部の張り・頻尿・便秘が続く 大きくなっている可能性 早めに婦人科を予約して超音波検査[2]
🟢 健診で偶然指摘された・無症状 多くは経過観察の対象 担当医から指示された間隔で定期受診[2]

受診する診療科は産婦人科(婦人科)です。健康保険が適用される検査・手術であれば、自己負担は原則3割です。見逃せない初期症状のサインはこちらの記事で具体的に解説しています。

受診の際に伝えるとよいこと:痛みが「いつ」「どこで」「何をしているときに」始まったか、痛みの強さ(我慢できる程度か、動けないほどか)、発熱・嘔気・不正出血の有無、直近の月経がいつだったかをメモしておくと、限られた診察時間の中で医師に正確に状況が伝わりやすくなります。突然の激しい痛みで動けない場合は、無理に来院しようとせず、救急車を呼ぶことも選択肢に入れてください。

日本と米国のガイドライン比較

卵巣嚢腫の「手術に踏み切る大きさ」の考え方は、日本と米国で近いようで異なります。日本婦人科腫瘍学会は、画像検査で腫瘍の大きさが4〜6cm以上の場合や充実性部分を認めた場合に手術を検討するとしています[2]。一方、米国産科婦人科学会(ACOG)のガイドラインをまとめた米国家庭医学会(AAFP)の解説によれば、閉経前の骨盤内腫瘤は「通常は良性」とされ、単純性嚢胞を除く多くの骨盤内腫瘤は手術が必要になるとされる一方、単純性嚢胞そのものは経過観察の対象になり得るという考え方が示されています[4]。

項目 日本(学会紹介の運用) 米国(ACOG)
手術を積極的に検討する大きさ 4〜6cm以上・充実性部分あり[2] 単純性嚢胞を除く多くの骨盤内腫瘤は手術の対象[4]
経過観察でよいとされる大きさ 4cm未満は経過観察が中心[2] 単純性嚢胞は10cm以下なら良性であることが多く経過観察を検討できる[4]

両者で異なる点:米国側の資料は「単純性嚢胞(内部が液体だけの嚢胞)」を他の骨盤内腫瘤と区別して扱っており、単純性嚢胞であれば経過観察の対象になり得るとする一方、それ以外の多くの腫瘤は手術が必要になるという考え方です[4]。日本側で紹介されている6cmという目安は種類を限定しない一般的な運用として広まっているもので[2]、単純に「日本の方が厳しい」「米国の方が慎重」と単純化できるものではありません。実際の判断は、種類・症状・年齢を総合して主治医と相談することになります。

この「単純性か、それ以外か」という切り分けは、日本の診療の現場でも実質的に行われています。超音波検査で内部が液体だけの嚢胞性であれば良性の可能性が高いと判断され経過観察になりやすく、充実性の部分(組織が詰まった部分)を含む場合は悪性・境界悪性の可能性が疑われて手術の検討が早まる、という考え方は日本産科婦人科学会の解説とも一致しています[1]。つまり日米で使われる用語や数値の示し方は異なっていても、「内部の性状を見て方針を決める」という根っこの考え方は共通しているといえます。

もう一つ、日本と米国に共通しているのが「年齢によって警戒レベルを変える」という考え方です。AAFPが紹介するACOGガイドラインでは、閉経前の骨盤内腫瘤は「通常は良性(usually benign)」とされる一方、閉経後の女性については「悪性を疑う目線をはるかに高く持つべき(a much higher index of suspicion for malignancy)」と明記され、経腟超音波検査に加えてCA125(腫瘍マーカー)の測定を評価に含めるべきとされています[4]。これは、卵巣嚢腫の多くが20〜30歳代に多く見られる一方、超音波検査で充実性部分が見つかった場合は悪性・境界悪性の可能性が疑われるという日本側の考え方[1]とも、年齢や所見に応じて警戒レベルを変えるという方向性が一致しています。

CA125についてはさらに、閉経前と閉経後で数値の意味づけが変わる点も報告されています。CA125は特に非粘液性の上皮性がんで有用性が高いとされる一方、がんのステージI(早期)では上昇するのは患者の約50%にとどまるとも報告されており[4]、「CA125が正常範囲内だから早期がんの心配はない」とは言い切れない点にも注意が必要です。AAFPの解説によれば、CA125の陽性的中率(検査で陽性と出た人が実際に悪性である割合)は閉経後の女性で98%と高い一方、閉経前の女性では49%にとどまるとされ[4]、閉経前の女性でCA125がやや高めでも、それだけで悪性と決めつけることはできません。日本側でも腫瘍マーカーは確定診断ではなく「診断の補助」と位置づけられており[2]、この点は日米で共通した慎重な姿勢といえます。

用語のミニ辞典:説明の中でよく出てくる言葉

このページや診察室でよく使われる言葉を、意味の近い英語表記とあわせて簡単に整理しました。

用語 英語表記 意味
機能性嚢胞 functional cyst 排卵の周期に伴って一時的にできる嚢胞
境界悪性 borderline tumor 良性と悪性(がん)の中間にあたる腫瘍[1]
嚢腫摘出術 cystectomy 正常な卵巣組織を残し、嚢腫の部分だけを取り除く手術[2]
腹腔鏡下手術 laparoscopic surgery お腹に小さな穴を数ヵ所開けて器具を挿入して行う、開腹よりも体への負担が小さい手術方法[1]
腫瘍マーカー(CA125) tumor marker 血液検査で調べる値の一つ。診断の補助として使われ、これだけで良性・悪性は確定できない[2]
茎捻転 ovarian torsion 卵巣腫瘍と骨盤との付け根がねじれる状態。突然の激しい下腹痛を伴い、緊急手術が必要になることがある[2]
充実性部分 solid component 嚢腫の中で液体ではなく組織が詰まっている部分。超音波検査でこれが見つかると悪性・境界悪性の可能性が疑われる[1]

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16


よくある質問(FAQ)

卵巣嚢腫は自然に消えることがありますか?
排卵の周期に伴って一時的にできる嚢胞は自然に消えることがあるとされていますが、今回参照した資料には、どのくらいの期間でどの程度の割合が自然に消えるかという具体的な統計は見当たりませんでした。診断直後にすぐ手術とはならず、経過観察の中で大きさの変化を確認していくのが基本的な流れです[2]。皮様嚢腫やチョコレート嚢胞のように組織や液体の性質がはっきりしているタイプは、自然に消えることを期待するより、大きさや症状に応じて手術を検討することになりやすい傾向があります。
卵巣嚢腫があると妊娠しにくくなりますか?
小さな嚢腫で症状がなければ、そのこと自体が妊娠を妨げるとは限りません。手術が必要になった場合でも、妊娠を望む方には嚢腫だけを摘出して正常な卵巣組織を残す術式が選択肢となり、片方の卵巣を摘出しても妊娠は可能とされています[2]。どちらの卵巣をどの程度残せるかは嚢腫の種類・大きさ・広がり方によって異なるため、妊娠を希望している旨を早めに担当医へ伝え、術式について相談することが大切です。
茎捻転はどんな痛みですか?
卵巣腫瘍と骨盤との付け根がねじれることで起こり、突然の激しい下腹痛が特徴です。被膜が破れる破裂とあわせて、緊急手術が必要になることがあります[2]。これまで無症状だった人でも、体を急に動かした直後などに前触れなく起こることがあるため、「これまで平気だったから今回も大丈夫」とは考えず、このような痛みが急に起きた場合はためらわず婦人科(救急外来)を受診してください。
健診で「卵巣嚢腫の疑い」と言われました。すぐ手術が必要ですか?
多くの場合、すぐに手術にはなりません。悪性を疑う所見がなく、大きさが4cm未満であれば経過観察が中心になります[2]。4〜6cm以上や充実性部分がある場合は、手術の検討が始まります[2]。経過観察の具体的な間隔は担当医の指示に従ってください。
チョコレート嚢胞は放置すると危険ですか?
チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)は約1%が悪性化するとされており[1]、放置してよいという意味ではありません。ホルモン治療などで経過を観察しつつ、大きさや症状の変化に応じて手術を検討するのが一般的な流れです[1]。
卵巣嚢腫と卵巣がんはどう違うのですか?
卵巣腫瘍全体の約90%は良性で、約10%が悪性(がん)です[2]。超音波検査で内部が液体だけであれば良性のことが多く、組織が詰まった充実性の部分があると悪性や境界悪性の可能性が疑われますが[1]、確定には手術による病理検査が必要です[1]。
腫瘍マーカー(CA125)の数値が高ければがんということですか?
腫瘍マーカーはあくまで「診断の補助」であり、それだけで良性・悪性を確定することはできません[2]。子宮内膜症など良性の病気でも数値が上がることがあるため、超音波・MRIなど他の検査とあわせて総合的に判断されます[1]。
卵巣嚢腫の手術は必ず開腹になりますか?
現在は多くの良性の卵巣嚢腫で、お腹に小さな穴を数ヵ所開けて行う腹腔鏡下手術が選択されています。茎捻転で緊急対応が必要な場合など状況によっては開腹手術になることもあります[2]。具体的な手術方法や入院期間の目安はこちらの記事で解説しています。
妊娠中に卵巣嚢腫が見つかりました。赤ちゃんに影響しますか?
妊娠中に見つかる卵巣嚢腫の多くは、経過観察のみで出産まで問題なく経過します。ただし大きさや種類によっては茎捻転のリスクや分娩への影響を考慮し、産婦人科医が個別に方針を判断します。自己判断せず、必ず担当医に相談してください。
20〜30歳代で見つかることが多いのはなぜですか?
代表的なタイプであるチョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)は20〜30歳代に多く見られるとされています[1]。この年代は月経周期に伴う排卵が活発で一時的な嚢胞もできやすい時期であり、健診や婦人科受診の機会を通じて偶然発見されることが多いためとも考えられます。閉経後に新しく見つかった腫瘤については、悪性を疑う目線がより高く持たれる点が異なります[4]。

卵巣嚢腫に関する記事一覧

今回参照した資料には、卵巣嚢腫の種類別の悪性化率をすべて網羅した最新の統計や、妊娠中の卵巣嚢腫に特化した国内ガイドラインの詳細な記載、および日本婦人科腫瘍学会による良性卵巣嚢腫そのものを対象にした手術基準の公式ガイドライン文書は見当たりませんでした。本ページで紹介した「4〜6cm以上」という目安は、学会による患者向け解説をもとにしたものであり、すべての施設で統一された基準ではない可能性がある点にご留意ください。判断に迷う場合は、自己判断せず産婦人科で相談してください。症状・診断・治療の流れをまとめて読みたい方は女性のための健康ガイド:卵巣嚢腫の症状、診断、治療のすべて、妊娠への影響まで含めて詳しく知りたい方は卵巣嚢腫のすべて:症状・原因から手術・費用・妊娠への影響までもあわせてご覧ください。

参考文献

  1. 公益社団法人日本産科婦人科学会「卵巣の腫瘍とがん」 jsog.or.jp/citizen/5715
  2. 公益社団法人日本婦人科腫瘍学会「卵巣腫瘍」 jsgo.or.jp/public/ransou.html
  3. American Academy of Family Physicians「ACOG Releases Guidelines on Management of Adnexal Masses」 aafp.org/pubs/afp/issues/2008/0501/p1320.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」 ganjoho.jp/public/cancer/ovary/index.html