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JHO 病気ペディア

女性ホルモンじょせいほるもん / Female Hormones

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

女性ホルモンとは、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の総称で、この2つが約1か月周期で増減を繰り返すことで月経・妊娠・出産が成り立っています[1]。思春期に分泌が始まり、性成熟期にピークを迎え、閉経前後の更年期に大きく揺らぎながら低下していくため、同じ「女性ホルモンの乱れ」でも年代によって現れる症状も対処法もまったく異なります[3]。月経前のイライラが3〜10日で自然に消えるならPMS(月経前症候群)の範囲内ですが[2]、40歳を過ぎてほてりや動悸が日常生活に支障をきたす場合は更年期障害を疑い、婦人科への相談が目安になります[3]。

正体 卵巣から分泌される「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類のステロイドホルモン[1]
主な変動 月経周期(約25〜38日)での上下動、思春期・妊娠・産後・更年期での大きなライフステージ変化[4]
バランスが乱れたときの代表症状 月経前のイライラ・むくみ(PMS)、ほてり・発汗・気分の落ち込み(更年期障害)[2][3]
受診の目安 症状が日常生活に支障をきたす、または月経周期が3か月以上乱れる場合は婦人科へ[3]

女性ホルモンとは?エストロゲンとプロゲステロンが働く仕組み

女性ホルモンは、脳の視床下部・下垂体と卵巣・子宮が連携して分泌が調節されており、日本産婦人科医会はこの仕組みを「視床下部−下垂体−卵巣−子宮が協調して働くことにより、正常月経周期が成立する」と説明しています[1]。具体的には、脳の下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)が卵巣内の卵胞の発育を促し、育った卵胞からエストロゲンが分泌されます。月経周期の5〜6日目ごろには1個の主席卵胞だけが発育を続け、残りの卵胞は退縮していくことが日本産婦人科医会の資料で示されています[1]。

エストロゲンは、子宮内膜を厚くする・肌や骨の健康を保つ・血管をしなやかに保つなど全身に作用する「代表的な女性ホルモン」です。排卵が起こると、卵胞が黄体に変化してプロゲステロンを多く分泌するようになり、プロゲステロンは子宮内膜をさらに整えて受精卵が着床しやすい状態を維持します。受精卵が着床しなければプロゲステロンの分泌が減少し、厚くなった子宮内膜がはがれ落ちることで月経が始まります[1]。

月経周期28日間のエストロゲン・プロゲステロン変動モデル。日本産婦人科医会「月経周期と女性ホルモンのメカニズム」[1]/日本産科婦人科学会「月経前症候群」[2]をもとにJHO編集部が作図。

日本産婦人科医会の基準では、月経中のホルモン値の目安として、LH(黄体形成ホルモン)が1.5〜7mIU/ml、FSH(卵胞刺激ホルモン)が3.5〜10mIU/mlとされ、「排卵期以外では一般にFSHがLHよりも高値を示す」ことが正常なパターンとされています[1]。血液検査でホルモン値に触れる機会があった際は、この基準値を目安に主治医と相談すると理解が深まります。

女性ホルモンの変動は、ストレスなど他の要因とも絡み合って心身の不調につながります。日本産科婦人科学会は、月経前症候群について「脳内のホルモンや神経伝達物質は、女性ホルモン以外にも、ストレスなど様々な要因の影響を受けています」とし、「このように月経前症候群はいくつもの要因が重なり合って発症すると考えられています」と説明しています[2]。こころの症状が特に重く日常生活も困難な場合は、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)と診断されることもあるとされ、単なる「気分屋」で片づけず医療の対象として相談してよい状態です[2]。

出典:日本産婦人科医会「7.月経周期と女性ホルモンのメカニズム」[1]

診断の目安となる数値・基準:正常な周期とホルモン値

「自分の周期は正常なのか」を確かめる最初の手がかりは、周期日数と持続日数です。下表は日本産婦人科医会が示す目安をまとめたものです[4]。

正常な月経(生理)の目安
項目 正常範囲 備考
月経周期 25〜38日(変動6日以内) 周期が毎回大きくばらつく場合は要注意[4]
持続日数 3〜7日 2日以内・8日以上は月経異常の可能性[4]
経血量 20〜140g ナプキンが1時間ももたない、レバー状の塊が多いなどは過多月経のサイン[4]
初経(初潮)年齢 だいたい10歳〜14歳ごろ 体重・BMIが影響し体格の良い子ほど早い傾向。満15歳になっても初経がなければ専門医への受診が勧められる[6]
閉経年齢 平均50歳前後(早い人で40代前半、遅い人で50代後半) 1年以上月経が止まったことを確認して閉経と診断[3]
閉経後の判断基準(子宮摘出後など月経で判断できない場合) FSH 40mIU/mL以上かつE2(エストラジオール)20pg/mL以下 通常の閉経判断は月経が1年以上ないことで行い、この数値は補助的な基準[8]

出典:日本産婦人科医会「正常な生理(月経)の目安を教えてください!」[4]/日本産婦人科医会「初めての生理(初経)はいつごろに始まりますか?」[6]/日本産科婦人科学会「更年期障害」[3]/日本産婦人科医会「更年期障害の検査・診断」[8]

日本産婦人科医会の研修資料は、更年期の内分泌の特徴を「それまで厳密に制御されていた視床下部−下垂体−卵巣系の大きな『ゆらぎ』」と表現し、「エストラジオール(E2)の血中濃度は閉経の約2年後まで大きく変動する」としています。そのうえで、子宮摘出後のように月経の有無で閉経を判断できない場合には「血中E2値20pg/mL以下かつFSH値40mIU/mL以上で閉経後と判断する」という基準を示しています[8]。つまりこの数値は万能の「更年期チェック値」ではなく、月経で判断できないケースを補うための基準である点に注意が必要です。

月経周期に関わるホルモン検査では、他の下垂体ホルモンの基準値も参考にされます。日本産婦人科医会の研修資料によると、月経中の基準値の目安はLH(黄体形成ホルモン)1.5〜7mIU/ml、FSH(卵胞刺激ホルモン)3.5〜10mIU/ml、プロラクチン(PRL)15ng/ml未満とされ、「月経中の基礎値でLH/FSH>1なら多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を疑う」「FSH>40mIU/mlなら卵巣性無月経を疑う」とされています[1]。血液検査の結果票にこれらの略語が並んでいるのを見たら、この目安と照らし合わせて主治医に質問すると理解が深まります。

PMS(月経前症候群)と更年期障害の見分け方

「月経前がつらい」のか「更年期に入った」のかは、現れる時期と年代で見分けるのが基本です。日本産科婦人科学会は月経前症候群を「月経の前に現れるこころとからだの不調」と定義し、「さまざまな症状が月経前に3〜10日間くらい続きますが、月経が始まると自然に軽快・消失します」と説明しています[2]。同学会によると、日本人女性の70〜80%が月経前に何らかの不調を自覚しており、5%は日常生活に困難を感じるほど重い月経前症候群を経験しています[2]。

PMS・更年期障害・月経不順のちがい
項目 PMS(月経前症候群) 更年期障害 単なる月経不順
現れる時期 月経の3〜10日前、月経が始まると軽快[2] 閉経前後10年間(40代後半〜50代が中心)[3] 周期はいつでも乱れうる
典型的な年代 思春期〜性成熟期に多い[2] 閉経前後5年ずつ、計10年間[3] 思春期・産後・更年期いずれでも起こりうる
月経の有無 月経が来ている(周期は保たれている) 周期が短縮→不規則化→やがて消失[3] 周期の乱れそのものが主症状
主な症状 情緒不安定、乳房の張り、腹部膨満感[2] ほてり・のぼせ・発汗、動悸、気分の落ち込み[3] 症状というより周期日数の乱れ

見分けるカギ:「月経が来ると症状が消えるか」が最初の分かれ道です。月経開始とともに軽快すればPMS、月経の有無に関わらずほてりや発汗が続く、あるいは月経周期そのものが短くなったり乱れたりしている場合は更年期のサインである可能性があります[3]。

生活習慣でできること:PMS・更年期に共通するセルフケア

PMSも更年期障害も、治療の入り口はまず生活習慣の見直しです。日本産科婦人科学会はPMSへの対応として「自分のリズムを知り、気分転換やリラックスする時間をつくったり、心地良いと思えるセルフケアを探してみることをお勧めします」とし、「まず症状日誌を記録し、いまの状態を理解することで、症状に対処しやすくなります」と述べています[2]。栄養面では、玄米や全粒粉パンなど食物繊維の多い複合炭水化物、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6を積極的にとることが勧められる一方、精製された糖(単純炭水化物)やアルコールの摂取、喫煙は控えたほうがよいとされています[2]。更年期障害についても、日本産科婦人科学会はまず問診を行ったうえで「次に、生活習慣の改善(食事や運動、睡眠時間の確保など)や心理療法を試みます」とし、それでも症状が改善しない場合に薬物療法へ進むという順序を示しています[3]。

もし月経前に決まってイライラや腹部の張りが出るなら、そのときは症状日誌をつけて「いつ・何が・どの程度」つらいかを記録し、精製糖やアルコールを控えめにしてカルシウム・マグネシウムを含む食品を意識してとる、というのが最初の一歩です[2]。もし月経前のイライラが仕事や家庭に支障をきたすほど重いなら、そのときは低用量ピルによる排卵抑制やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による治療を婦人科で相談する段階です[2]。日本産科婦人科学会によると、低用量ピルはPMSの主な原因である排卵後のホルモン変動を抑える目的で使われ、「服用をやめれば排卵は速やかに回復します」。また「脳でセロトニンという神経伝達物質が減少すると、気持ちが不安定になり、こころの症状が出やすい」とされており、SSRIはこのセロトニンを増やすことでこころの症状を軽くする薬です[2]。

更年期障害で薬物療法が必要な場合、日本産科婦人科学会は治療を大きく3つに分けて説明しています[3]。

更年期障害の薬物療法(3つの選択肢)
治療法 向いている症状 ポイント
①ホルモン補充療法(HRT) ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗など血管運動神経症状に特に有効[3] エストロゲンに黄体ホルモンを併用するのが基本(子宮摘出後はエストロゲン単独も可)。飲み薬・貼り薬・塗り薬・腟錠など複数の剤形がある[3][9]
②漢方薬 体力・体質(証)に応じて選択 当帰芍薬散(体力が弱く貧血・冷え症傾向)、加味逍遥散(体力が弱く不安・不眠を伴う)、桂枝茯苓丸(体力中等度でのぼせ・下腹部の抵抗や圧痛)[3]
③向精神薬 気分の落ち込み・意欲低下・イライラ・不眠など精神症状が辛い場合 SSRI・SNRIは副作用が少なく、ほてりや発汗にも一定の効果があるとされる[3]

以前はHRTによる乳がんリスクが強く懸念された時期がありましたが、日本産科婦人科学会は「今では、HRTによる乳がんのリスクは、飲酒など生活習慣による乳がんのリスクと、同程度かそれ以下であることが分かっています」と説明しています[3]。ただしリスクの感じ方には個人差があるため、婦人科医と相談しながら治療法を選ぶことが大切です。

経過とケア:ライフステージ別に見る女性ホルモンの変化

思春期(8〜9歳ごろ〜17〜18歳ごろ) 日本産婦人科医会は思春期を「第2次性徴出現から初経を経て月経周期がほぼ順調になるまでの期間」と定義し、「年齢的には8〜9歳頃から17〜18歳頃までの間で、乳房発育に始まり、陰毛発生、身長増加、初経発来で完成する」としています[5]。初経(初潮)はだいたい10歳から14歳ごろに迎えるのが一般的で、体重やBMIが関わり体格の良い子ほど早く迎える傾向があるとされ、満15歳になっても初経がない場合は専門医への受診が勧められています[6]。この時期はエストロゲンの分泌が急激に高まる一方、脳とのフィードバック機構が未成熟なため月経周期が不安定になりやすい時期でもあります。日本産婦人科医会の研修資料では、身長の伸びについても第2次性徴開始の1〜2年後、女児では平均11歳前後で最大成長速度に達し、平均8cm/年伸びるという「成長のスパート」が起こるとされています[5]。第2次性徴の現れる時期には個人差がありますが、日本産科婦人科学会の定義では乳房発育が7歳未満、陰毛発生が9歳未満、初経が10歳未満で見られた場合は「早発思春期」として扱われるとされており、極端に早い・遅いと感じる場合の目安になります[5]。

性成熟期(20代〜30代) エストロゲンとプロゲステロンが規則的に増減し、月経周期が最も安定する時期です。月経周期25〜38日、持続3〜7日という前章の基準値は主にこの年代を想定した目安です[4]。

妊娠・出産・産後 妊娠が成立すると胎盤から蛋白ホルモン(hCG:ヒト絨毛性ゴナドトロピン、hPL:ヒト胎盤性ラクトゲン)とステロイドホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)が産生されます。東京北医療センター産婦人科の解説によれば、hCGは「妊娠4週頃には母体尿中に現れるため、初期の妊娠判定に用いられ」、「約15週くらいよりプロゲステロンの産生場所が胎盤に移り」、その後hCGは減少していきます[7]。妊娠中のエストロゲンは子宮の血流を増やして妊娠を維持し、妊娠末期には子宮頸管を柔らかくして分娩に備える働きをします。また妊娠中は母乳分泌を抑える方向に働きますが、出産後にエストロゲンが減ることでその抑制が外れ、母乳の分泌が始まります[7]。プロゲステロンはエストロゲンと似た作用に加え、妊娠中の排卵を抑える働きも担います[7]。産後の気分の落ち込みが長引く場合、その原因を自己判断で決めつけず、医療機関に相談することが勧められます。

更年期(閉経前後5年ずつ、計10年間) 卵巣の機能が低下し始めるとまず月経周期が短くなり、さらに機能が低下すると周期が長くなって、最終的に閉経を迎えます。日本産科婦人科学会は「40歳を過ぎて月経周期が不順になり始めたら、更年期にさしかかっているのかもしれません」と述べています[3]。この時期はエストロゲンが大きく揺らぎながら低下するため、症状が出たり治まったりを繰り返しやすいのが特徴です。更年期障害の原因はエストロゲンの消退だけではありません。日本産婦人科医会の研修資料は「更年期障害の主たる成因は卵巣機能低下によるエストロゲンの消退が最も重要な要素であるが、さらに更年期に生じやすい対人関係や家族の問題などの社会・環境的要因、生来の性格や生育歴などの心理・性格的要因も複雑に絡み合って、多様な症状を発現している」と説明しており、ホルモンだけでなく生活背景も含めて診てもらうことが治療の近道になります[8]。

老年期(閉経後) エストロゲンの分泌がほぼ消失し、骨密度の低下(骨粗鬆症)や脂質代謝の変化による生活習慣病リスクの上昇に注意が必要な時期に入ります。日本産科婦人科学会は「更年期を過ぎると、心臓・血管の病気や骨粗鬆症が増えてきますが、HRTはこれらの病気の予防にも有効といわれています」と述べており、更年期の急性症状が落ち着いた後の健康管理としてもホルモン補充療法が選択肢に挙がることがあります[3]。定期的な婦人科・内科の健診でホルモン低下後の体の変化を継続的に確認することも大切です。同学会は「日本人女性の平均寿命は現在87歳ですから、更年期はまさに人生の折り返し地点です」とも述べており、更年期以降も長く続く毎日をどう過ごすかという視点で体と向き合うことが勧められています[3]。

受診の目安:今すぐ婦人科か、自宅で様子を見てよいか

下記は日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の解説を踏まえた一般的な目安であり、症状の感じ方には個人差があります[2][3]。

🔴 早めに婦人科を受診:月経が3か月以上止まっている(妊娠の可能性がない場合)、経血量が急に増えて日常生活に支障が出る、更年期症状(ほてり・動悸・気分の落ち込みなど)が「日常生活に支障をきたす」レベルまで強い、産後に気分の落ち込みが長く続き自分でつらいと感じる[3]

🟡 数周期様子を見つつ相談を検討:月経周期が25〜38日の範囲を外れる状態が2〜3か月続く[4]、月経前のイライラや体の張りが仕事や家庭生活に軽い支障を与える[2]

🟢 経過観察でよいことが多い:月経前3〜10日の軽いイライラや張りが月経開始とともに自然に軽快する、思春期に月経周期がまだ安定していない(初経後1〜2年は不規則になりやすい)[2]

更年期の症状で悩んでいる場合は婦人科が基本の受診先ですが、採血だけで評価できる範囲であれば内科でも対応できることがあります。動悸や発汗など症状が多岐にわたる場合は、産婦人科に加えて内科・心療内科が連携して診ることもあります。

日本と米国のガイドライン比較:ホルモン補充療法(HRT)の考え方

更年期障害の治療法のひとつがホルモン補充療法(HRT)ですが、「いつ始めるべきか」の考え方は日本と米国で強調点が異なります。この違いは対立ではなく、リスク評価の視点の違いとして理解すると役立ちます。

日本産婦人科医会と米国 The Menopause Society(旧NAMS)のHRTに関する考え方
項目 日本(日本産婦人科医会) 米国(The Menopause Society/旧NAMS、2022年)
基本方針 更年期障害に対してHRTは有効な治療法のひとつ。エストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせて投与するのが通常[9] 血管運動神経症状(ほてり等)に対する治療の中で最も効果的とし、骨量減少・骨折の予防効果も明記[10]
開始時期の考え方 更年期障害の症状に応じて婦人科医が個別に判断(明確な年齢区分の記載は確認できず)[9] 60歳未満、または閉経から10年以内に開始する場合は利益がリスクを上回りやすいと明記[10]
60歳以降・閉経10年超の場合 個別のリスク評価を前提に慎重に判断[9] 冠動脈疾患・脳卒中・静脈血栓塞栓症・認知症の絶対リスクが高まるため、利益とリスクの比率がより不利になると明記[10]

※ 上記の日本側の内容は日本産婦人科医会の資料をもとにしており、「60歳未満・閉経10年以内」のような数値基準を明記した日本発の一次資料は今回確認できませんでした。米国側は The Menopause Society(旧The North American Menopause Society, NAMS)が2022年に公表した position statement の一次資料に基づいています[10]。米国側がより明確な年齢・年数の区切りを示している点が、今回確認できた最大の違いです。この違いを知っておくと、担当医からHRTを提案されたときに「なぜこのタイミングなのか」を質問する手がかりになります。また同ステートメントは、投与量を減らす、あるいは貼り薬など皮膚から吸収させる経皮投与のタイプを選ぶことで、静脈血栓塞栓症や脳卒中のリスクを抑えられる可能性があるという考え方も示しています[10]。日本産婦人科医会も、HRTには飲み薬・貼り薬・塗り薬・腟錠など複数の剤形があり、どれを選ぶかは体質やリスクに応じて主治医と相談するものだとしています[3]ので、剤形の違いは日米に共通する重要な論点といえます。

医療費の目安

更年期障害の診療は保険診療(3割負担など)で受けられるのが基本です。ホルモン補充療法そのものの薬剤費・診察費は数千円程度で収まることが多い一方、長期の治療や他の病気が絡む場合には家計の負担が大きくなることもあります。医療費が高額になりそうな場合に使える公的な上限制度の概要は以下の通りです。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

更年期障害・婦人科系の治療は原則としてこの高額療養費制度の対象になる保険診療ですが、実際の自己負担額は医療機関や検査内容によって異なります。事前に医療機関の窓口でおおよその費用を確認しておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

女性ホルモンのバランスが乱れるとどんな症状が出ますか?
年代によって異なります。月経前なら情緒不安定・乳房の張り・腹部膨満感などのPMS症状[2]、更年期ならほてり・のぼせ・発汗・動悸・気分の落ち込みなどの更年期症状が代表的です[3]。
エストロゲンとプロゲステロンの違いは何ですか?
エストロゲンは卵胞期に増えて子宮内膜を厚くし、骨や血管の健康維持にも関わる女性ホルモンです。プロゲステロンは排卵後の黄体期に増え、子宮内膜を維持して妊娠を助ける役割を担います[1]。
月経周期は何日が正常ですか?
日本産婦人科医会の目安では25〜38日で、周期ごとの変動が6日以内であれば正常範囲とされています。持続日数は3〜7日が目安です[4]。
PMS(月経前症候群)はどのくらいの人が経験しますか?
日本産科婦人科学会によると、日本人女性の70〜80%が月経前に何らかの不調を自覚しており、5%は日常生活に支障が出るほど重い症状を経験しています[2]。
更年期はいつからいつまでですか?
日本産科婦人科学会の定義では、閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間が「更年期」です。日本人女性の閉経の平均年齢は50歳前後とされています[3]。
更年期障害の症状が強いとき、何科を受診すればよいですか?
まずは婦人科の受診が基本です。症状が動悸や採血中心の評価で済む場合は内科でも対応できることがあり、精神的な症状が強い場合は心療内科と連携することもあります[3]。
ホルモン補充療法(HRT)は誰でも受けられますか?
HRTは更年期障害の有効な治療法のひとつですが、既往症などによっては使えない場合があります。医師による問診や検査のうえで、個々の状態に応じて適応が判断されます[9]。米国のガイドラインでは、閉経から10年以内・60歳未満で始める場合に利益がリスクを上回りやすいとされています[10]。
産後、女性ホルモンはどう変化しますか?
妊娠中に増えていたエストロゲンとプロゲステロンは、出産で胎盤が娩出されると急速に減少します。出産後にエストロゲンが減ることで母乳分泌の抑制が外れ、授乳が始まります[7]。ホルモンバランスが完全に元へ戻るまでの詳しい期間については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。
10代でも女性ホルモンの不調は起こりますか?
起こります。思春期は視床下部−下垂体−卵巣系がまだ確立の途上にあるため月経周期が安定しにくく、月経前症候群も思春期の女性に多いと言われています[2][5]。満15歳になっても初経が来ない場合は、専門医への受診が勧められています[6]。

女性ホルモンに関する記事一覧

この記事は、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・厚生労働省事業サイトなど公的性格の強い情報源をもとに、女性ホルモンの基本的な仕組みからライフステージごとの変化、PMSと更年期障害の見分け方、治療の選択肢までを一つにまとめました。エストロゲン・プロゲステロンという2つのホルモンが「増えすぎ」でも「減りすぎ」でもなく、ちょうどよいリズムで増減を繰り返すことが体調の土台になっている、という点が全体を通じて共通しています。とはいえ、妊娠中・授乳中の細かいホルモン値の正常範囲や、個々の漢方薬・ホルモン剤をどう使い分けるかといった、より専門的で個別性の高い判断については、今回参照した公的資料の範囲では詳細な記載が見当たりませんでした。数値や症状の感じ方には個人差があるため、気になる症状がある場合は自己判断で様子を見続けず、婦人科の担当医に直接ご確認ください。

参考文献

  1. 日本産婦人科医会「7.月経周期と女性ホルモンのメカニズム」jaog.or.jp
  2. 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」jsog.or.jp
  3. 日本産科婦人科学会「更年期障害」jsog.or.jp
  4. 日本産婦人科医会「正常な生理(月経)の目安を教えてください!」jaog.or.jp
  5. 日本産婦人科医会「思春期とは」jaog.or.jp
  6. 日本産婦人科医会「初めての生理(初経)はいつごろに始まりますか?」jaog.or.jp
  7. 東京北医療センター産婦人科「妊娠・出産による変化 その2 〜ホルモンバランス〜」tokyokita-jadecom.jp
  8. 日本産婦人科医会「(1)更年期障害の検査・診断」jaog.or.jp
  9. 日本産婦人科医会「(2)更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)」jaog.or.jp
  10. The Menopause Society(旧North American Menopause Society)「The 2022 Hormone Therapy Position Statement」menopause.org