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JHO 病気ペディア

瘢痕

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

皮膚の傷が治る過程でできる「瘢痕(はんこん)」には、時間とともに白く平らに落ち着く一般的な傷あとと、赤く盛り上がって痛みやかゆみを伴う「肥厚性瘢痕」、さらに傷の範囲を超えて広がり続ける「ケロイド」、関節の動きを制限してしまう「瘢痕拘縮」など、性質のまったく異なるいくつかのタイプがあります[1]。肥厚性瘢痕とケロイドは見た目が似ていても治療方針が異なるため自己判断は禁物で、盛り上がりが半年以上大きくなり続ける・傷の外側にまで広がる・強いかゆみや痛みが続く場合は、形成外科または皮膚科への受診が目安になります。

主な原因 手術・外傷・熱傷・にきび・ピアスなどによる皮膚の創傷治癒[1]
できやすい部位 胸骨部・肩・耳たぶ・下顎など皮膚の張力が強い部位(ケロイドの場合)
主な症状 赤み・盛り上がり・かゆみ・痛み・つっぱり感
受診の目安 盛り上がりが半年以上拡大し続ける/傷の範囲を超えて広がる/強いかゆみ・痛みが続く

瘢痕(はんこん)とは?傷が治る過程でできる仕組み

皮膚に傷ができると、体は「止血→炎症→増殖(肉芽形成)→リモデリング(成熟)」という順序で修復を進めます。この一連の過程は創傷治癒と呼ばれ、形成外科領域の診療ガイドラインでも急性創傷の管理と瘢痕・ケロイドの診療が一体のテーマとして扱われています[1]。増殖期にはコラーゲンなどの線維成分が傷を埋めるように作られ、リモデリング期にかけてその量とバランスが整理されていくことで、傷あとは徐々に平らでやわらかい状態に落ち着いていきます。

ところが、この線維成分(主にコラーゲン)が作られる量と分解される量のバランスが崩れ、コラーゲンの産生が過剰になったり分解が追いつかなかったりすると、傷あとが盛り上がったまま硬くなる「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」に進みやすくなります。傷にかかる皮膚の張力(引っ張られる力)が強い部位ほど、この過剰な修復反応が起こりやすいと考えられています。

創傷治癒の各段階でどのようなことが起きているかを簡単に整理すると、まず受傷直後の炎症期には血が止まり、傷口に炎症細胞が集まって感染を防ぐ働きが始まります。次の増殖期には、線維芽細胞という細胞がコラーゲンを産生し、傷を埋めるように新しい組織(肉芽組織)を作っていきます。この時期の傷あとはまだ赤みや軽い盛り上がりがあり、これが「未成熟瘢痕」と呼ばれる状態です。最後のリモデリング期には、増殖期に作られたコラーゲンの配列が整理され、余分な血管も減っていくことで、赤みが引き、平らでやわらかい「成熟瘢痕」へと落ち着いていきます。この一連の流れが乱れ、増殖期の状態が長引いてしまうことが、肥厚性瘢痕・ケロイドの背景にあると考えられています。

瘢痕の分類:未成熟瘢痕・成熟瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮の違い

「瘢痕」は一つの病名ではなく、状態によっていくつかに分類されます。この分類を混同すると治療の方向性を誤りやすいため、まず整理しておきます[1]。

瘢痕の主な分類
分類 状態の特徴 範囲・経過
未成熟瘢痕 受傷・手術後まもない時期の赤みや軽度の盛り上がりが残る傷あと 数か月かけて徐々に落ち着いていく途中の状態
成熟瘢痕 赤みが引き、平坦でやわらかくなった最終的な傷あと 傷の範囲内にとどまる/拡大しない
肥厚性瘢痕 傷あとが赤く盛り上がり、硬さやかゆみを伴う 傷の範囲内にとどまり、数か月〜数年で自然に軽快することがある
ケロイド 肥厚性瘢痕と似た盛り上がりに加え、強いかゆみ・痛みを伴うことが多い 傷の範囲を超えて周囲の正常皮膚にまで拡大し、自然軽快しにくい
瘢痕拘縮 瘢痕が関節や可動部にかかり、皮膚が突っ張って動きが制限される 熱傷や広範囲の外傷後、関節近くにできた瘢痕で起こりやすい

出典:日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会「形成外科診療ガイドライン2 急性創傷/瘢痕ケロイド」(金原出版, 2015年)の章立て(1章 ケロイド/2章 肥厚性瘢痕/3章 瘢痕拘縮)に基づきJHO編集部が整理[1]。なお本ガイドラインには、より新しい改訂版(ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン改訂版)が発行されていることがMindsガイドラインライブラリ上でも案内されています。最新の詳細な推奨内容については、改訂版の発行元・発行年をあわせてご確認ください。

ケロイド・肥厚性瘢痕との見分け方

ケロイドと肥厚性瘢痕は、どちらも「傷あとが赤く盛り上がる」という共通点があるため、見た目だけでは区別がつきにくいことがあります。上記ガイドラインでも、治療を始める前にまず両者を鑑別診断することの重要性が診療の入り口として位置づけられています[1]。

項目 ケロイド 肥厚性瘢痕
盛り上がりの範囲 元の傷の輪郭を超えて周囲の皮膚に広がる 元の傷の輪郭の内側にとどまる
時間経過 自然に軽快しにくく、年単位で拡大することがある 数か月〜1〜2年程度で自然に平坦化することがある
できやすい部位 胸骨部・肩・耳たぶ・下顎などに多い 関節部・広範囲熱傷部など皮膚の緊張が強い部位に多い
自覚症状 強いかゆみ・痛みを伴うことが多い かゆみを伴うこともあるが比較的軽いことが多い

見分けるカギ:盛り上がりが「元の傷の輪郭の内側」にとどまっているか、「輪郭を超えて」正常皮膚まで広がっているかが、ケロイドと肥厚性瘢痕を区別する目安の一つです。ただし自己判断は難しく、確定診断は形成外科・皮膚科での視診(必要に応じて生検)によります[1]。

診療の現場では、瘢痕の状態を客観的に評価するために、Vancouver Scar Scale(VSS)や Patient and Observer Scar Assessment Scale(POSAS)といった評価スケールが使われることがあります。これらは色調・厚み・血流の状態・やわらかさなどを点数化するもので、治療の前後でどの程度改善したかを比較する目的でも使われます。ガイドラインでも、これらの評価スケールを用いることの有用性や、超音波診断で瘢痕の厚みを測定することの有用性が、臨床課題として検討されています[1]。自分自身の傷あとがどちらのタイプに近いか気になる場合は、経過(拡大しているか・止まっているか)と、範囲(元の傷を超えているか)の2点をメモしておくと、受診時に医師へ伝えやすくなります。

瘢痕・ケロイドの治療:保存的治療からレーザー・手術まで

日本の診療ガイドラインでは、ケロイド・肥厚性瘢痕それぞれについて、放射線治療・トラニラスト内服・ステロイド(局所注射/軟膏/貼付剤)・レーザー治療・シリコーンジェルシート・圧迫固定療法という複数の治療選択肢が、それぞれ有効性を検討すべき臨床課題(クリニカルクエスチョン)として整理されています[1]。どの方法が適するかは瘢痕の種類・部位・経過年数によって異なるため、単独の治療法だけで判断せず、複数の方法を組み合わせて経過をみるのが一般的な考え方です。海外の専門家パネルによる更新版の治療アルゴリズムでも、複数の治療法を組み合わせる集学的アプローチが、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療で最大限の効果を得るために有用とされています[3]。

保存的治療(圧迫・固定・シリコーンジェルシート)

傷あとが完成する前の段階から、テープや圧迫による固定、シリコーンジェルシートの貼付は、比較的負担が少なく行える方法として、ガイドラインの中でも予防・治療の両面で有効性が検討されています[1]。特にシリコーンジェルシートは、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療だけでなく、手術後の瘢痕を目立たなくするための予防目的でも用いられる方法として位置づけられています。

ステロイド治療(局所注射・貼付剤)

肥厚性瘢痕・ケロイドに対するステロイドの局所投与(注射・軟膏・貼付剤)は、盛り上がりやかゆみを抑える目的で広く行われている治療法の一つです[1]。海外の推奨アルゴリズムでも、ケロイドに対してより早期から積極的な治療介入を行う方向性が示されており、5-フルオロウラシルなど日本国内では保険診療で一般的とは言えない薬剤の早期併用が提案されています[3]。この点は日本と海外で実施環境が異なる部分であり、後述の「日本と海外のガイドライン比較」の章で改めて整理します。

レーザー治療

色素レーザーやフラクショナルレーザーによる治療は、瘢痕の赤み(毛細血管拡張)や外観の改善を目的として、日本のガイドラインでも臨床課題の一つとして取り上げられています[1]。海外の更新版アルゴリズムでも、パルス色素レーザーやフラクショナルレーザーが瘢痕管理の選択肢として支持を広げていると報告されています[3]。

手術(外科的治療)

瘢痕拘縮のように関節の動きが制限されている場合や、保存的治療で改善しにくい場合には、Z形成術・皮弁術・植皮術・組織拡張法(ティッシュエキスパンダー)といった外科的治療が検討されます[1]。手術のみでケロイドを切除すると再発率が高いことが知られているため、術後にステロイド注射や放射線治療、圧迫療法を組み合わせる集学的な治療計画が一般的です。ガイドラインでも、線状の瘢痕拘縮に対するZ形成術の有効性、広範囲の瘢痕拘縮に対する皮弁術・植皮術・組織拡張法それぞれの有効性が、別々の臨床課題として検討されています[1]。

放射線治療・その他の補助療法

ケロイドに対しては、手術による切除後の再発予防を目的として放射線治療を組み合わせる方法も、ガイドラインの臨床課題の一つとして検討されています[1]。放射線治療は単独で行われることは少なく、手術と組み合わせた術後照射という形で用いられるのが一般的な位置づけです。また、内服薬としてはトラニラストが日本国内で用いられており、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑えることで、かゆみや炎症の軽減を目的として処方されることがあります[1]。

傷跡ができやすい人・体質とリスク要因

同じような傷でも、肥厚性瘢痕やケロイドになりやすい人とそうでない人がいます。ガイドラインの診断の章では、自覚症状(かゆみ・痛みなど)が診断の手がかりになりうるかどうか、生検のみで確定診断が可能かどうか、血液検査や画像検査が診断に役立つかどうかが、それぞれ臨床課題として検討されています[1]。一般に、次のような要因があると肥厚性瘢痕・ケロイドのリスクが上がると考えられています。

  • 傷が皮膚の張力が強い部位(胸骨部・肩・耳たぶ・下顎など)にある
  • 過去にケロイドや肥厚性瘢痕ができたことがある、または家族にできやすい人がいる
  • 傷の治癒が化膿や感染などで長引いた
  • 思春期など、体の成長・代謝が活発な時期に傷を負った

これらはあくまで傾向であり、該当しない人にも肥厚性瘢痕・ケロイドができることはあります。心配な場合は自己判断で様子を見続けず、早めに形成外科・皮膚科に相談することが大切です。

また、傷の治り方には遺伝的な要因が関わっている可能性も指摘されていますが、どの遺伝子がどの程度関与するかについては、今回参照したガイドラインには詳細な記載は見当たりませんでした。家族にケロイドができやすい人がいる場合は、その情報を診察時に伝えておくと、治療方針を決めるうえでの参考になります。日焼けや摩擦など、日常生活で繰り返し傷に刺激が加わることも、瘢痕が目立ちやすくなる一因になりえます。

にきび跡・手術跡・美容目的の瘢痕治療で知っておきたいこと

にきび(ざ瘡)の跡や、美容目的の手術後にできる瘢痕についても、基本的な考え方は他の傷あとと共通しています。ただし、にきび跡には赤み・色素沈着のようなタイプと、クレーター状にへこむ萎縮性瘢痕のタイプがあり、後者は今回の分類(未成熟瘢痕・成熟瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮)とは異なる仕組みで生じるため、治療法も異なります。にきび跡の治療を検討する場合は、盛り上がるタイプなのか、へこむタイプなのかを医療機関で確認したうえで、適した治療法を相談することが勧められます。

美容医療の分野では、レーザー治療・注射・手術など保険適用外(自費診療)の選択肢も多く提供されています。自費診療は治療内容や医療機関によって費用や技術に幅があるため、契約前にリスク・費用・アフターケアの説明を十分に受け、複数の医療機関で相談してから決めることも一つの方法です。トラブルを避けるためにも、治療前に想定される仕上がりや副作用について、口頭だけでなく書面での説明を受けておくと安心です。

予防:傷あとを目立たなくするためのケアと生活習慣

瘢痕が肥厚性瘢痕やケロイドに進むかどうかは体質による部分もありますが、受傷・手術直後からのケアで進行のリスクを下げられる場合があります。ガイドラインでは、真皮縫合を含めた減張縫合(傷にかかる張力を減らす縫合法)や、抜糸後のテーピングが、最終的な瘢痕の幅を狭くするかどうかが検討課題として扱われています[1]。

  • 傷が塞がった直後から医師の指示に従いテープ固定・シリコーンジェルシートを継続する
  • 紫外線に当たると赤み・色素沈着が長引きやすいため、傷あとを日焼けから保護する
  • かさぶたを無理に剥がさず、自然に取れるまで待つ
  • 強いかゆみ・痛み・盛り上がりの拡大がみられたら自己判断でケアを続けず早めに受診する

美容面の悩みとして、露出部位(顔・首・腕など)の瘢痕を目立たなくしたいというニーズも多くみられます。ガイドラインでは、瘢痕の評価に Vancouver Scar Scale(VSS)や Patient and Observer Scar Assessment Scale(POSAS)といった評価スケールを用いること、フラクショナルレーザーで外観が改善するかどうか、色素レーザーで毛細血管拡張が改善するかどうかが、それぞれ臨床課題として検討されています[1]。美容目的の治療は保険適用外となることが多いため、費用面は事前に医療機関へ確認することをおすすめします。

受診の目安:今すぐ相談すべきか、自宅で様子見でよいか

瘢痕の多くは時間の経過とともに自然に落ち着いていきますが、次のような場合は自己判断でケアを続けず、形成外科または皮膚科への受診を検討する目安になります[1]。

状態 目安
🔴 早めに受診 盛り上がりが半年以上たっても拡大し続けている/傷の輪郭を超えて広がっている/強いかゆみや痛みで日常生活に支障がある
🟡 経過を相談 赤みや軽い盛り上がりが数か月続いている/関節付近の瘢痕で動かしにくさを感じ始めた
🟢 基本は様子見 徐々に赤みが引き、平坦になってきている/かゆみや痛みがない

関節部の瘢痕で動きの制限(瘢痕拘縮)が疑われる場合は、放置すると可動域がさらに狭くなることがあるため、早めに形成外科を受診することが勧められます。受診科は主に形成外科、部位によっては皮膚科が窓口になります。

受診の際は、いつからその傷ができたか(受傷日・手術日)、盛り上がりが大きくなり始めた時期、かゆみ・痛みの強さ、これまで試したケア(テープ・軟膏など)を整理して伝えると、診察がスムーズになります。写真を定期的に撮っておき、拡大しているかどうかを比較できるようにしておくのも一つの方法です。同じ条件(明るさ・距離・角度)で撮影しておくと、次回受診時に医師が経過を比較しやすくなります。

子どもの傷あと・熱傷後の瘢痕で特に注意したいこと

子どもは皮膚の新陳代謝が活発なため、大人よりも肥厚性瘢痕ができやすいとされる一方、成長とともに徐々に目立たなくなっていくこともあります。特に注意が必要なのは、広範囲の熱傷(やけど)後や、関節をまたぐ位置の傷です。関節部に瘢痕拘縮が起こると、成長期の骨や関節の発達にも影響しうるため、経過観察と早期のリハビリテーション、必要に応じた手術のタイミングの見極めが重要になります[1]。

子どもの場合、本人がかゆみや突っ張り感をうまく言葉で伝えられないこともあります。保護者が定期的に患部の状態(範囲・色・硬さ・動かしにくさ)を確認し、気になる変化があれば自己判断で様子を見続けず、形成外科・皮膚科に相談することが勧められます。

熱傷後の瘢痕については、受傷直後の急性期の傷の管理(感染予防・湿潤環境の維持など)が、その後の瘢痕の質にも影響すると考えられています。急性創傷の管理と瘢痕・ケロイドの診療が同じガイドラインの中で一体的に扱われているのは、この受傷直後のケアがその後の瘢痕形成を左右するという考え方が背景にあるためです[1]。熱傷の範囲が広い場合や、顔・手・関節など機能面・美容面で影響が大きい部位の場合は、できるだけ早い段階で熱傷治療に慣れた医療機関を受診することが望まれます。

日本と海外のガイドライン比較

日本では日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会が合同で作成した診療ガイドラインが治療方針の土台になっています[1]。海外では2002年に国際的な専門家パネルが招集され、その後複数回にわたり内容が更新されている「国際臨床推奨(International clinical recommendations on scar management)」が広く参照されています[4][3]。

項目 日本(形成外科診療ガイドライン, 2015年) 海外(国際臨床推奨, 更新版2014年)
基本方針 ステロイド・レーザー・シリコーンジェルシート・圧迫・手術など複数の治療法を臨床課題ごとに検証[1] 複数の治療法を組み合わせる集学的アプローチを重視[3]
ケロイドへの初期対応 ステロイド局所注射・トラニラスト内服・シリコーンジェルシートなどが臨床課題として検討される[1] より早期からの積極的な介入を提案し、5-フルオロウラシルの早期併用にも言及[3]
新しい薬剤 国内の保険診療で広く使われている薬剤を中心に検討[1] ブレオマイシン・オニオンエキス・イミキモド・マイトマイシンCなど新規薬剤の臨床報告が増えていると言及[3]

ここが違う:海外の国際臨床推奨では5-フルオロウラシルなどの薬剤の早期併用や新規薬剤(ブレオマイシン・オニオンエキス・イミキモド・マイトマイシンCなど)への言及がありますが、これらは日本国内の標準的な保険診療で広く使われているとは限りません。この差は薬剤の承認状況や保険適用範囲の違いによるものであり、どちらが優れているかを単純比較できるものではない点に注意が必要です。

※本項の海外側の内容は、日本語のガイドライン本文を経由せず、該当する英語文献の抄録(アブストラクト)を編集部が直接確認した範囲の情報です[3][4]。

治療にかかる医療費の目安

瘢痕・ケロイドの治療のうち、ステロイド局所注射やトラニラスト内服など医学的必要性が認められる治療は保険診療の対象になりますが、美容目的のレーザー治療や一部のシリコーンジェルシートは保険適用外(自費診療)となることがあります。同じシリコーンジェルシートでも、手術後の瘢痕予防目的で医師が処方する場合と、市販品を自分で購入する場合とでは費用の位置づけが異なります。治療が長期化し医療費の負担が大きくなった場合に使える公的制度の目安は次のとおりです。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

なお、ケロイド・肥厚性瘢痕の治療は数か月〜数年にわたって通院を続けるケースも少なくありません。保険診療分については高額療養費制度の対象になり得るため、治療が長引きそうな場合は早い段階で医療機関の窓口やお住まいの自治体の窓口に相談しておくと安心です。領収書や診療明細は月ごとに保管しておくと、制度を利用する際の手続きがスムーズになります。

よくある質問(FAQ)

ケロイドと肥厚性瘢痕はどう違いますか?
最も大きな違いは盛り上がりの範囲です。ケロイドは元の傷の輪郭を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がり、自然に軽快しにくい傾向があります。肥厚性瘢痕は傷の輪郭の内側にとどまり、数か月〜1〜2年程度で自然に平坦化することがあります[1]。
ケロイドは自然に治りますか?
肥厚性瘢痕に比べて自然に軽快しにくい傾向があるとされています。強いかゆみ・痛み・拡大がみられる場合は、自己判断で様子を見続けず、形成外科への相談が目安になります[1]。
瘢痕・ケロイドの治療は保険が使えますか?
ステロイド局所注射やトラニラスト内服など医学的に必要と判断される治療は保険診療の対象になります。一方で美容目的のレーザー治療などは保険適用外となることがあるため、受診時に医療機関へ確認することをおすすめします。
シリコーンジェルシートはどれくらいの期間貼ればよいですか?
貼付する期間は瘢痕の状態や部位によって異なり、ガイドラインでも治療・予防それぞれの場面での有効性が臨床課題として検討されています[1]。自己判断で期間を決めず、担当医の指示に従うことが基本です。
手術で瘢痕・ケロイドを切除すれば再発しませんか?
手術のみでケロイドを切除すると再発しやすいことが知られており、術後にステロイド注射・放射線治療・圧迫療法などを組み合わせることが一般的です[1]。
瘢痕拘縮とはどのような状態ですか?
瘢痕が関節など体の動く部分にかかり、皮膚が突っ張ることで関節の動きが制限された状態です。熱傷や広範囲の外傷後に起こりやすく、Z形成術などの外科的治療が検討されます[1]。
日焼けは瘢痕に影響しますか?
傷あとが紫外線にさらされると赤みや色素沈着が長引きやすいため、治療中・治癒過程では日焼け対策が勧められます。
子どもの傷あとも大人と同じように治療できますか?
基本的な治療の考え方は共通していますが、成長期の体質や部位によって適した方法が異なる場合があります。子どもの瘢痕・ケロイドについては、必ず形成外科・皮膚科など専門の医療機関に相談してください。自己判断でのケアだけに頼らないことが大切です。
海外で使われている5-フルオロウラシルなどの薬剤は日本でも受けられますか?
薬剤の承認状況や保険適用範囲は国によって異なります。海外の国際臨床推奨では言及されている薬剤でも、日本国内の標準的な保険診療で広く使われているとは限らないため、国内で受けられる治療については医療機関に直接確認することをおすすめします[3]。
ピアスの穴あけでできた耳たぶのケロイドはどう治療しますか?
耳たぶは皮膚の張力の影響を受けやすくケロイドができやすい部位の一つです。ステロイド局所注射や圧迫療法、症例によっては切除と術後の圧迫・放射線治療を組み合わせる方法が検討されます[1]。自己判断でピアスを外したり傷を触ったりせず、早めに形成外科へ相談することが勧められます。
妊娠中や授乳中でも瘢痕の治療を受けられますか?
薬剤や治療法によっては妊娠中・授乳中に制限があるものがあります。自己判断で治療を始めたり中断したりせず、必ず担当医に妊娠・授乳の状況を伝えたうえで治療方針を相談してください。
帝王切開の傷あともケロイドになりますか?
下腹部は比較的皮膚の張力の影響を受けにくい部位とされますが、体質によっては帝王切開の傷あとが肥厚性瘢痕やケロイドになることもあります。産後の経過観察の際に傷の状態が気になる場合は、産婦人科または形成外科に相談してください。
瘢痕・ケロイドの治療はどのくらいの期間かかりますか?
ステロイド局所注射などは数週間おきに数か月〜1年以上続けることが多く、手術を伴う場合はさらに術後の圧迫・放射線治療の期間が加わります。治療期間は瘢痕の種類・大きさ・部位によって個人差が大きいため、担当医と相談しながら見通しを立てることが大切です。

ケロイドの体質的ななりやすさや、個々の症例でどの治療の組み合わせが最も効果的かについては、今回参照した資料には一律の結論についての記載は見当たりませんでした。部位・体質・経過年数を踏まえた個別の判断が必要とされています。

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参考文献

  1. 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会「形成外科診療ガイドライン2 急性創傷/瘢痕ケロイド」金原出版, 2015年(Mindsガイドラインライブラリ掲載) minds.jcqhc.or.jp/summary/c00288
  2. 日本形成外科学会 公式サイト jsprs.or.jp
  3. Gold MH, et al. “Updated international clinical recommendations on scar management: part 2–algorithms for scar prevention and treatment.” Dermatol Surg. 2014 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25068544
  4. Mustoe TA, et al. “International clinical recommendations on scar management.” Plast Reconstr Surg. 2002 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12142678