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皮膚がん

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

皮膚がんは早期に見つけて適切に治療すれば多くの場合治せるがんで、日本での5年相対生存率は皮膚がん全体で94.6%(2009〜2011年診断例)と、がんの中でも予後の良いグループに入ります[1]。ただし3つの主なタイプのうち悪性黒色腫(メラノーマ)だけは進行すると生存率が大きく下がるため、ほくろやシミの「形・色・大きさの変化」に早く気づくことが命を守る鍵になります[2]。危険かどうかは自己判断せず、少しでも気になる変化があれば皮膚科を受診してください。この記事では、国立がん研究センター がん情報サービスや日本皮膚科学会のガイドラインなど、公的機関・専門学会が公表している情報をもとに、3つの主な型の違い、検査・診断の流れ、病期別の治療、そして最も気になる生存率のデータまでを、数字の出どころを明記しながら順番に解説します。

主な種類 基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫(メラノーマ)の3つが代表的[3]
主な原因 紫外線(日光)への長期的な曝露が主な危険因子[2]
受診の目安 ほくろ・シミが大きくなる、形や色が変化する、6mmを超える場合はABCDEルールを確認し皮膚科へ[2]

皮膚がんとは?原因と3つの型が生まれる仕組み

皮膚がんとは、皮膚にできる悪性の腫瘍の総称です。もっとも頻度の高い代表的なタイプとして、「基底細胞がん」「有棘細胞がん」「悪性黒色腫(メラノーマ)」の3つが挙げられます[3]。このほかにも乳房外パジェット病、メルケル細胞がん、皮膚付属器がん(汗腺がん・脂腺がんなど)、皮膚血管肉腫、隆起性皮膚線維肉腫といった、頻度は低いものの重要なタイプがあります[3]。なお皮膚に生じる悪性リンパ腫(皮膚リンパ腫)は、悪性リンパ腫という別のカテゴリーに分類され、通常の皮膚がんとは区別されます[3]。この記事では、頻度が高く多くの人が不安に思う機会の多い「基底細胞がん」「有棘細胞がん」「悪性黒色腫(メラノーマ)」の3型を中心に解説します。

皮膚の表面(表皮)は層構造になっており、どの層のどの細胞ががん化するかによってタイプが決まります。表皮の一番下にある基底層の細胞から発生するのが基底細胞がん、基底層より表面側の有棘層の細胞から発生するのが有棘細胞がん、そしてメラニン色素をつくるメラノサイト(基底層に存在する色素細胞)が悪性化したものが悪性黒色腫(メラノーマ)です[4][6]。メラノーマはほくろの細胞(母斑細胞)から生じることもあります[2]。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚がんの分類」(2024年9月19日更新)[3]/「基底細胞がん」「有棘細胞がん」「メラノーマ(悪性黒色腫)」(2023年6月7日更新)[4][6]

表皮の基底層にある基底細胞は、皮膚の一番表面にある角質層に向かって次々と新しい細胞を生み出し続ける「幹細胞」のような役割を担っています。基底細胞が分裂して押し上げられ、有棘層・顆粒層を経て角質層に至る過程で形やはたらきを変えていく(分化する)ことで、外界から体を守るバリアとしての皮膚が保たれています。基底細胞がんは、この一番奥にある基底細胞ががん化するため増殖の場が限られやすく、有棘細胞がんは分化の途中段階にある有棘層の細胞ががん化するため、基底細胞がんとは異なる性質(進行のしやすさ)を示すと考えられています。一方でメラノサイトは表皮を作る細胞そのものではなく、基底層に点在してメラニン色素を作り紫外線から皮膚を守る「見張り役」の細胞であり、由来が異なる分、がん化したときの性質(転移のしやすさ)も他の2型とは大きく異なります。

この3つの型は、発生する細胞の場所が違うだけでなく、「がんとしての性質」もはっきり異なります。基底細胞がんは増殖の速度が比較的ゆっくりで、他の臓器への転移がまれとされ、多くの場合は局所の切除で治療が完結します[4]。有棘細胞がんは基底細胞がんに比べて進行のしかたに幅があり、放置すると周囲組織への浸潤やリンパ節への転移が起こることがあります[6]。悪性黒色腫(メラノーマ)は3型の中でもっとも転移しやすい性質を持ち、早期発見が生存率に直結する型として特に注意が呼びかけられています[2]。「皮膚がん」とひとくくりに聞いて過度に不安になる必要はありませんが、どの型なのかを正しく診断してもらうことが、その後の見通しを知るうえで最初の一歩になります。

各型の特徴・初期症状の見分け方(ABCDEルール)

3つの型は見た目も進み方も異なります。基底細胞がんは顔にできることが多く、わずかに盛り上がった直径1〜2mm程度の黒い点として現れ、複数の黒い点が徐々にくっつきながら円形や楕円形に広がり、進行すると潰瘍化することがあります[4]。転移はまれとされています[4]。有棘細胞がんは、顔や頭皮など日光の当たる部分にできやすく、通常の肌色か紅色に変化し、皮膚表面がかさついて硬くなり、まだらに盛り上がったりしこりができたりします。進行すると潰瘍やただれが生じ、悪臭を伴うこともあります[6]。悪性黒色腫(メラノーマ)は褐色から黒色のシミや腫瘤として皮膚に現れ、「形が左右非対称」「輪郭がギザギザ」「色むらがある」「6mm以上の大きさ」「大きくなる、色・形・かたさなどが変化する」といった特徴を持ちます[2]。これは国際的に広く使われている「ABCDEルール」(Asymmetry非対称・Border境界不整・Color色むら・Diameter直径6mm超・Evolving変化)に対応します[2]。

型ごとの特徴・好発部位
型 主な特徴 好発部位 転移のしやすさ
基底細胞がん 黒い点が徐々に拡大・癒合、進行で潰瘍化[4] 顔に多い[4] まれ[4]
有棘細胞がん 紅色調でかさつき・硬結、進行で潰瘍・悪臭[6] 顔・頭皮など日光の当たる部分[6] 基底細胞がんより高い(本記事内での相対的な傾向)
悪性黒色腫(メラノーマ) ABCDEルールに当てはまる色素斑[2] 日本では紫外線に直接当たらない部位(足底など)に生じることが多い[2] 3型の中で最も転移しやすい

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「基底細胞がん」[4]/「有棘細胞がん」[6]/「メラノーマ(悪性黒色腫)」[2]

基底細胞がんは黒っぽい色調のことが多い一方、有棘細胞がんは赤みを帯びた色調で表面がかさついているのが特徴的です[4][6]。この色の違いは自己チェックの手がかりの一つになりますが、必ずしも典型的な見た目とは限らないため、「黒いから危険・赤いから安心」と単純に判断せず、変化や違和感があれば受診することが大切です。

「ただのほくろ」と「悪性黒色腫の初期」を自分の目だけで正確に見分けるのは、専門家でも簡単ではありません。特に、もともと大きめのほくろがある人や、生まれつきの色素性母斑がある人は、どこまでが「もとからの個性」でどこからが「変化」なのかを自分で判断しにくいことがあります。迷ったときは、写真を撮って数週間〜数か月後の変化を比較する、もしくは早めに皮膚科でダーモスコピー検査を受けて記録を残しておくと、その後の変化を追いやすくなります。

検査・診断:ダーモスコピーと生検

皮膚がんが疑われる場合、まず行われるのがダーモスコピー検査です。これは拡大鏡(ダーモスコープ)を用いて患部の照明を工夫しながら10〜20倍に拡大して観察する検査で、基底細胞がんとメラノーマのいずれの診断でも中心的な役割を果たします[4][2]。肉眼だけでは判断が難しい色素パターンや血管の形をダーモスコープで観察することで、良性のほくろと悪性の病変を見分ける精度が高まります。検査自体は患部に器具を軽く当てて拡大観察するだけで、痛みを伴うものではありません。

ダーモスコピー検査だけで診断が確定しない場合には、病変の一部または全体を切除して顕微鏡で調べる皮膚生検が行われることがあります[2]。生検は局所麻酔をしたうえで小さく切除する処置で、外来で行われることが多い検査です。特に悪性黒色腫が強く疑われる場合には、病変全体をまとめて切除する「全切除生検」が選択されることがあります。これは、腫瘍の一部だけを切り取る方法だと、がん細胞が周囲に広がるリスクがあるとされているためです。

悪性が確定した場合には、リンパ節や他の臓器への広がりを調べるために画像検査(CT・MRI・PET検査など)や、最初に転移しやすいリンパ節を調べるセンチネルリンパ節生検が追加されることがあります。病期(ステージ)は、腫瘍の厚み(メラノーマでは「腫瘍浸潤の深さ」が特に重視されます)や大きさ、リンパ節・遠隔臓器への転移の有無によって、Ⅰ期からⅣ期まで総合的に判定されます。病期が早いほど治療の選択肢が広く、体への負担も小さくなる傾向があるため、診断を先延ばしにしないことが将来の負担を減らすことにつながります。

国際的には、腫瘍の大きさ・広がり(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)を組み合わせて評価する「TNM分類」という共通の枠組みが用いられ、これをもとにⅠ期からⅣ期までの病期が決められます。専門的な言葉ですが、検査結果の説明を受ける際に「T」「N」「M」という言葉が出てきたら、それぞれ腫瘍そのものの状態・リンパ節への広がり・他の臓器への広がりを指していると理解しておくと、説明が理解しやすくなります。

受診の目安については、今回参照した資料には各型に共通する具体的な「何日以内に受診すべきか」という数値基準の記載は見当たりませんでしたが、メラノーマについてはABCDEルールに複数当てはまる場合や急速な変化がある場合、速やかな受診が推奨されます[2]。「様子を見て大きくなったら受診しよう」という判断は、特にメラノーマでは病期の進行につながりかねないため避けてください。

初めて皮膚科を受診する際は、いつ頃から気になっていたか、変化に気づいた時期、痛みやかゆみの有無、家族に皮膚がんと診断された人がいるかどうかなどを聞かれることが一般的です。可能であれば、変化に気づいた時点からの写真を定期的に撮っておくと、大きさや色の変化を客観的に伝える助けになります。診察では患部だけでなく、全身の皮膚をあわせて確認されることもあります。

病期別の治療:手術・放射線治療・薬物療法(免疫療法)

皮膚がんの治療は、型・病期・部位によって組み合わせが変わります。基底細胞がん・有棘細胞がんは早期であれば手術による切除が基本で、転移がまれな基底細胞がんでは切除のみで治療が完結することが多いとされています[4]。有棘細胞がんでは、病変辺縁より0.5〜2cm程度離して切除するのが一般的で、皮膚欠損が大きい場合には植皮や局所皮弁による再建術が検討され、所属リンパ節への転移の有無を調べるためにセンチネルリンパ節生検が組み合わされることがあります[10]。手術が難しい部位や高齢の患者では、手術に比べ根治率はやや劣るものの比較的高い効果が示されている放射線治療が選択肢となり、抗がん剤と放射線治療を同時に行うことで治療効果が高まることも報告されています[10]。手術が不可能な進行例や遠隔転移をきたした例には、化学療法が適用されます[10]。

悪性黒色腫(メラノーマ)は、早期(腫瘍が薄く転移のない段階)であれば手術による切除が中心となりますが、根治切除後であっても再発リスクが高いと判断された場合には、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬(BRAF遺伝子変異陽性例が対象)による術後補助療法が検討されます[9]。進行してリンパ節転移や遠隔転移がある場合には、免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬による薬物療法が治療の中心となり、これらを組み合わせる併用療法や、一方が効かなくなった場合に他方へ切り替える逐次投与も検討されます[9]。日本皮膚科学会と日本皮膚悪性腫瘍学会が策定した「皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン2025」(2025年2月20日更新版)に、型・病期ごとの標準治療の詳細がまとめられています[9]。

病期・状況別の主な治療の考え方
状況 主な治療
早期(転移なし・腫瘍が薄い) 手術による切除が中心
リンパ節転移あり 手術+薬物療法(免疫療法・分子標的薬)を組み合わせて検討
遠隔転移あり(進行期) 薬物療法(免疫チェックポイント阻害薬など)を中心に、症状緩和のための放射線治療も検討

出典:日本皮膚科学会・日本皮膚悪性腫瘍学会「皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン2025」(2025年2月20日更新版)[9]/国立がん研究センター希少がんセンター「有棘細胞がん」[10]

手術による切除では、がん細胞を取り残さないよう、病変そのものだけでなく周囲の正常に見える皮膚も含めて切除するのが一般的です。切除する範囲は型・病期・部位によって異なり、顔など目立つ部位では、切除後に皮膚を移動させたり皮膚移植を行ったりする再建手術が組み合わされることもあります。

進行したメラノーマに対する薬物療法では、近年、免疫チェックポイント阻害薬(体が本来持っている免疫の力を使ってがん細胞を攻撃する薬)や、特定の遺伝子変異を持つがん細胞を狙い撃ちする分子標的薬が広く使われるようになっています。これらの薬は、以前の抗がん剤治療に比べて治療成績の向上が報告されている一方、免疫関連の副作用(皮膚症状、下痢、肝機能障害、ホルモン分泌の異常など)が生じることがあるため、専門の医療機関で経過を慎重に観察しながら治療が進められます。どの薬を使うか、どの順番で治療を行うかは、病期・全身状態・遺伝子検査の結果などをふまえて個別に判断されます。

⚠ どの型・病期であっても、自己判断で治療を中断したり、民間療法だけに頼って標準治療を避けたりすることは危険です。治療方針は皮膚悪性腫瘍を専門とする医師とよく相談のうえ決めてください。進行した場合でも、つらい症状を和らげる緩和ケア(痛みのコントロール、生活の質を保つためのケア)は、終末期に限らず治療の初期段階から並行して受けられるものです。緩和ケアを受けることは「治療をあきらめること」ではなく、治療そのものを続けやすくするための支えです。

また、悪性黒色腫の手術では、リンパ節への転移を早期に見つける目的でセンチネルリンパ節生検が行われることがあります。これは、腫瘍から最初にリンパが流れ込む「見張り役」のリンパ節を1〜数個取り出して調べる検査で、ここに転移がなければ、それより先のリンパ節にも転移がない可能性が高いと判断する手がかりになります。

治療後は、再発や新しい病変の有無を確認するために、定期的な通院・経過観察が必要になります。通院の間隔や期間は型・病期によって異なり、リスクが高いと判断された場合ほど、より頻回で長期間のフォローアップが行われる傾向があります。経過観察中に新しいほくろの変化や、手術した部位の周辺に新たなしこりを感じた場合は、次の予約を待たずに早めに相談することが勧められます。基底細胞がん・有棘細胞がんは他の部位に新しい皮膚がんができることもあるため、治療が終わった後もセルフチェックを続けることが大切です。

⚠ 生存率:型・病期でどれだけ違うか

国立がん研究センターの全国がん登録データによると、皮膚がん全体(基底細胞がん・有棘細胞がんなどを含む)の5年相対生存率は94.6%(男性94.4%・女性94.6%、2009〜2011年診断例)と報告されています[1]。皮膚がんは罹患数に比べて死亡数が少なく、2023年の全国推計罹患数27,353例(男性14,364例・女性12,989例)に対し、2024年の死亡数は1,894人(男性974人・女性920人)となっています[1]。

ただし、この94.6%という数字は基底細胞がんなど生存率の高いタイプを多く含む「皮膚がん全体」の値である点に注意が必要です。悪性黒色腫(メラノーマ)は日本での年間診断数が約1,800例と皮膚がんの中では少数派ですが[2]、病期が進むと生存率が大きく下がることが知られています。全国がんセンター協議会(全がん協)加盟施設が実施していた生存率共同調査(1997年以降の診断例が対象、2021年11月データ更新をもって調査終了)では、悪性黒色腫の病期別5年生存率としてⅠ期86.2%、Ⅱ期79.6%、Ⅲ期53.1%、Ⅳ期11.0%という数値が公表されています[7]。この数値は国立がん研究センター がん情報サービスが直接公表しているものではなく、全がん協という別の調査主体によるものである点を明記します。

悪性黒色腫(メラノーマ)の病期別5年生存率
病期 5年生存率 備考
Ⅰ期 86.2% 早期・転移なし[7]
Ⅱ期 79.6% 腫瘍が厚くなった段階[7]
Ⅲ期 53.1% リンパ節転移あり[7]
Ⅳ期 11.0% 遠隔転移あり[7]

出典:全国がんセンター協議会(全がん協)生存率共同調査(1997年以降診断例、2021年11月データ更新終了)[7]/皮膚がん全体の統計は国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚」がん統計(2009〜2011年5年相対生存率)[1]

世界保健機関(WHO)の関連機関である国際がん研究機関(IARC)も、紫外線を皮膚がん(特に悪性黒色腫)の確立した原因の一つとして分類しており、国・地域による日照量や皮膚のタイプの違いが、世界的な発生率の差につながっていると指摘しています[8]。オーストラリアや北欧など日照量が多く色白の人が多い地域では、日本と比べてメラノーマの発生率が高いことが知られています。一方で、罹患率が低いからといって日本人がメラノーマに無関係というわけではなく、前述のとおり日本人特有の発生部位(足底など)があるため、「海外の話だから自分には関係ない」と考えず、セルフチェックを続けることが大切です。

この数字が示す最も大切なことは、「Ⅰ期で見つければ86.2%、Ⅳ期まで進むと11.0%」という差です。つまり早期発見・早期受診そのものが、生存率を大きく左右する最大の武器になります。数字に一喜一憂して絶望する必要はありません。医療は日々進歩しており、進行期であっても免疫チェックポイント阻害薬などの登場により治療成績は改善が報告されています。全がん協の生存率共同調査そのものも1997年以降の診断例を対象としており、直近の治療成績はこれよりも向上している可能性がある点も念頭に置いてください[7]。

また、5年生存率という数字は「診断から5年後に生存している人の割合」を表す統計であり、ある個人の将来を保証したり断定したりするものではありません。年齢、基礎疾患の有無、腫瘍の場所、治療への反応には個人差があります。数字はあくまで全体の傾向を知るための目安として捉え、自分自身の見通しについては、担当医と直接話し合うことが最も確実です。「相対生存率」という言葉についても補足すると、これは同じ年齢・性別の一般集団と比べて、がんと診断された人がどれだけ生存しているかを示す指標であり、交通事故など他の原因で亡くなる人の影響をできるだけ除いた、がんそのものの影響をより正確に反映する統計方法です。

予防:紫外線対策とセルフチェック

皮膚がんの発生には紫外線への曝露が主な危険因子の一つとして関わっており、基底細胞がん・有棘細胞がんでは紫外線や電離放射線が関連要因とされています[4][6]。有棘細胞がんは特に、顔や頭皮など日光に当たりやすい部分に発生しやすいことから、紫外線との関連が指摘されています[6]。メラノーマについては、遺伝的な背景と環境要因の両方が関わっており、色白の人では紫外線の影響が大きいとされる一方、日本では紫外線に直接当たらない部位(足の裏など)に発生することが多いという特徴があります[2]。この違いは、欧米で報告されているメラノーマの発生パターンと日本人で報告されているパターンが必ずしも同じではないことを示しており、「日焼けする部位だけ気をつければよい」という考え方では見落としが生じる可能性があります。

紫外線以外にも、慢性的な傷や熱傷(やけど)の跡、長期間治らない潰瘍、放射線治療を受けた部位などは、有棘細胞がんが発生しやすい下地になることがあるとされています[6]。また、免疫の働きが低下している状態(臓器移植後の免疫抑制薬使用中など)にある人も、皮膚がん全般のリスクが高まることが知られています。年齢を重ねるほど紫外線の蓄積曝露量が増えるため、高齢になるほど基底細胞がん・有棘細胞がんのリスクは高まる傾向があります。もともと多くのほくろがある人、家族に皮膚がん(特にメラノーマ)と診断された人がいる場合も、リスクがやや高いグループとして知られています。

これらの危険因子は「当てはまったら必ず皮膚がんになる」というものではなく、あくまで一般集団と比べたときのリスクの傾向を示すものです。逆に、当てはまる危険因子が少ないからといって、皮膚がんが起こらないと保証されるわけでもありません。危険因子の有無にかかわらず、月に一度程度のセルフチェックを続けることが、どの立場の人にとっても共通して有効な備えになります。

日常でできる対策としては、日焼け止めの使用、日陰の利用、長袖・帽子・サングラスなどによる直射日光の回避が基本になります。また、月に一度程度、全身の皮膚(足の裏や爪、頭皮など見落としやすい部位も含む)をセルフチェックし、ABCDEルールに当てはまる変化がないか確認する習慣も、早期発見につながります[2]。セルフチェックは、明るい場所で全身鏡を使い、家族に背中や頭皮など自分では見えにくい部位を確認してもらうとより確実です。新しくできたほくろやシミだけでなく、以前からあるものが変化していないかにも注目してください。

紫外線対策は、晴れた日だけでなく曇りの日や冬の時期にも意識することが望ましいとされています。紫外線は雲を通過して地表に届くため、屋外での活動が多い人は季節を問わず日焼け止めや帽子などの対策を続けることが基本になります。また、屋外での作業や外出が長時間にわたる場合は、途中で日陰に入って休憩を取る、長袖の衣服で肌の露出を減らすといった工夫も有効です。日焼け止めの具体的な選び方(SPFやPA値の目安)や、対策ごとの効果の程度を数値で比較したデータについては、今回参照した資料には詳しい記載が見当たりませんでした。

すでに皮膚がんの治療歴がある人は、再発や新たな病変の早期発見のために、担当医の指示に沿った定期的な通院・経過観察を続けることも重要な予防(二次予防)の一つです。

よくある誤解として、「日焼けした経験がない人は皮膚がんにならない」「若いうちは関係ない」といった思い込みがあります。しかし前述のとおり、日本人のメラノーマは紫外線が直接当たりにくい足の裏などにも発生することがあり[2]、日焼けの経験の有無だけでは安心材料になりません。また、皮膚がんは高齢者に多い病気ですが、悪性黒色腫は比較的若い世代でも発生することがあるため、「まだ若いから大丈夫」と決めつけず、年齢を問わずセルフチェックの習慣を持つことが勧められます。もう一つの誤解として「痛くなければ心配ない」というものがありますが、初期の皮膚がんの多くは痛みやかゆみを伴わないため、痛みの有無を基準に受診を先延ばしにするのは危険です。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

よくある質問(FAQ)

皮膚がんは怖い病気ですか、治りますか?
タイプによって大きく異なります。皮膚がん全体の5年相対生存率は94.6%(2009〜2011年診断例)[1]と高めですが、これは頻度の高い基底細胞がんなどを多く含む数字です。悪性黒色腫(メラノーマ)はⅠ期なら86.2%ですが、Ⅳ期になると11.0%まで下がるため[7]、早期発見が何より重要です。「皮膚がん=即座に命に関わる」と一律に恐れる必要はありませんが、「皮膚がんだから軽い」と油断してよいわけでもなく、型を正しく診断してもらうことが最初の一歩になります。
ほくろが大きくなってきました。皮膚がんの可能性はありますか?
ほくろの「形が左右非対称」「輪郭がギザギザ」「色むらがある」「直径6mm以上」「大きさ・形・色が変化している」のいずれかに当てはまる場合は、悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性を否定できません[2]。自己判断せず、皮膚科(可能であれば皮膚悪性腫瘍の専門医)を受診してください。
基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫の違いは何ですか?
どの細胞からがんが発生するかが異なります。基底細胞がんは表皮の基底層の細胞から、有棘細胞がんは有棘層の細胞から、悪性黒色腫はメラニン色素をつくるメラノサイトから発生します[4][6][2]。転移のしやすさも異なり、基底細胞がんは転移がまれとされる一方[4]、悪性黒色腫は3つの中で最も転移しやすい型です。
皮膚がんの検査は痛いですか、どんな検査をしますか?
まず行われるのはダーモスコピー検査で、拡大鏡を使って患部を10〜20倍に拡大観察する検査であり、痛みを伴うものではありません[4]。それで診断が確定しない場合、病変の一部または全体を切除して調べる皮膚生検が行われることがあります[2]。
悪性黒色腫(メラノーマ)は日本人にも多いのですか?
国立がん研究センターによると、日本全国で1年間にメラノーマと診断されるのは約1,800例とされ[2]、皮膚がん全体(年間約2万7千例[1])の中では少数派です。ただし進行した場合の生存率への影響が大きいため、注意が必要な型とされています。
紫外線に当たらなければ皮膚がんにならないのですか?
紫外線は基底細胞がん・有棘細胞がんの関連要因とされていますが[4][6]、悪性黒色腫は遺伝的な背景と環境要因の両方が関わっており、日本では紫外線に直接当たらない足の裏などにも発生することが多いとされています[2]。紫外線対策だけで完全に予防できるわけではありません。
皮膚がんが進行するとどんな症状が出ますか?
基底細胞がんでは黒い点が拡大・癒合し進行すると潰瘍化することがあり[4]、有棘細胞がんでは潰瘍やただれが生じ悪臭を伴うこともあります[6]。悪性黒色腫では病変の急速な拡大や出血、周囲のリンパ節の腫れ・しこりなどが進行のサインになり得ますが、進行の仕方には個人差があり、必ずしもこれらの症状が全員に順番通り現れるわけではありません。少しでも普段と違うと感じたら、症状の種類にかかわらず早めに相談してください。
皮膚がんの治療は必ず手術になりますか?
早期であれば手術による切除が中心です。進行してリンパ節転移や遠隔転移がある悪性黒色腫では、手術に加えて免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬などの薬物療法が中心となり[9]、有棘細胞がんでは手術が難しい場合に放射線治療や化学療法が選択肢になります[10]。治療の詳細は型・病期や体の状態によって個別に判断されます。
足の裏や爪にできたシミも皮膚科で診てもらうべきですか?
はい。日本では悪性黒色腫が紫外線の直接当たらない足の裏などに発生することが多いとされており[2]、見落とされやすい部位です。足の裏や爪の色素斑が広がる・変化するなど気になる場合は、皮膚科を受診してください。爪にできる場合は、爪の一部に縦方向の黒い線ができ、それが広がってくるといった形で気づかれることがあります。
皮膚科と美容皮膚科、どちらを受診すればよいですか?
皮膚がんが疑われる場合は、保険診療を行う一般の皮膚科(できれば皮膚悪性腫瘍の診療経験がある医療機関)の受診が基本です。美容目的のクリニックでは、悪性腫瘍の診断・治療の体制が十分でない場合があるため、「ほくろが変化してきた」「大きくなってきた」といった症状での受診先としては、まず一般皮膚科を検討してください。
切除した後、傷はどのくらい残りますか?
切除する範囲は病変の大きさ・型・部位によって異なり、周囲の正常な皮膚も含めて切除するため、傷の大きさや跡の残り方には個人差があります。顔など目立つ部位では、切除後に皮膚を移動させたり皮膚移植を行ったりする再建手術が組み合わされることもあります。傷跡の具体的な程度については、担当医と手術前によく相談することをおすすめします。

各型の初期症状や治療の使い分けをさらに詳しく知りたい方は、下記の関連記事もあわせてご覧ください。基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫のそれぞれについて、より踏み込んだ内容をまとめています。皮膚がんは「皮膚にできるがん」という共通点はあっても、型によって性質も治療も大きく異なる病気の集まりです。この記事で全体像をつかんだうえで、気になる変化があれば、迷わず皮膚科を受診する第一歩を踏み出してください。早期に見つかれば、多くの場合、治療の負担も見通しの明るさも大きく変わります。

皮膚がんに関する記事一覧

治療費や公的な医療費助成制度の細かい適用条件など、個々の状況によって異なる点については、今回参照した資料には詳しい記載が見当たりませんでした。加入している健康保険や自治体の窓口、担当医療機関の相談窓口でご確認ください。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚:がん統計」 ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/13_skin.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「メラノーマ(悪性黒色腫)」(2023年6月7日更新) ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚がんの分類」(2024年9月19日更新) ganjoho.jp/public/cancer/class_skin/index.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「基底細胞がん」 ganjoho.jp/public/cancer/basal/index.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「有棘細胞がん」 ganjoho.jp/public/cancer/squamous/index.html
  6. 全国がんセンター協議会(全がん協)「全がん協生存率」共同調査(1997年以降診断例、2021年11月データ更新をもって調査終了) zengankyo.jp/seizonritsu
  7. WHO国際がん研究機関(IARC)紫外線(UV)の発がん性分類に関する資料 iarc.who.int
  8. 公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本皮膚悪性腫瘍学会「皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン2025」(2025年2月20日更新版) dermatol.or.jp(メラノーマ診療ガイドライン2025 PDF)
  9. 国立がん研究センター希少がんセンター「有棘細胞がん」 ncc.go.jp/jp/rcc/about/0001/index.html