肝硬変
最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)
✦ 結論から言うと
同ガイドラインでは、肝硬変は、肝炎ウイルスやアルコール、脂肪肝などによる慢性的な炎症が長期間続いた結果、肝臓全体が線維化し硬くなった状態です[1]。同ガイドラインでは、自覚症状がほとんどない「代償性」の段階と、黄疸・腹水・肝性脳症などが現れる「非代償性」の段階に分かれ、一般に Child-Pugh スコア7点以上(Child-Pugh分類B以上)が非代償性の目安とされています[1]。原因治療や合併症管理により進行を抑えられる一方、吐血・下血、意識障害、急激なお腹の張りなどが出た場合はただちに救急受診が必要な状態です。
| 主な原因 | C型肝炎48.2%・アルコール性19.9%・B型肝炎11.5%・NASH(非アルコール性脂肪肝炎)6.3%など[1] |
|---|---|
| 主な症状 | 代償性はほぼ無症状/非代償性は黄疸・腹水・浮腫・出血傾向・肝性脳症[1] |
| 受診の目安 | 吐血・下血、意識障害・羽ばたき振戦、急激な腹部膨満、黄疸の急な悪化 → 直ちに救急受診 |
肝硬変とは?原因と症状が出る仕組み
肝硬変とは、肝細胞の壊死・脱落と再生が繰り返される過程で線維化と肝類洞の毛細血管化が進み、肝臓全体に再生結節が形成され、その結節を線維性の壁が取り囲んだ状態を指します。同ガイドラインでは、肝疾患の終末像にあたります[1]。
肝実質細胞が減少し、線維化と構造の改築によって血流障害が生じると、門脈から本来通らないはずの血管(門脈-大循環シャント)へ血液が流れ込むようになります。同ガイドラインでは、この結果、門脈圧亢進・腹水・肝性脳症・肺障害・心障害・腎障害・血清ナトリウム低下などが引き起こされ、さらに肝細胞がんが発生しやすい状態になります[1]。
門脈圧亢進が起こると、食道・胃・直腸などに側副血行路として静脈瘤ができます。同ガイドラインでは、この静脈瘤は破裂すると出血の危険があり、致死的な結果につながることがあります[1]。同ガイドラインでは、また門脈圧亢進は脾臓が腫れる原因にもなり、血球が減少しやすくなります[1]。
同ガイドラインでは、腸内細菌が作るアンモニアなどの毒性物質は本来、門脈を通って肝臓で処理されますが、門脈-大循環シャントの形成により肝臓で代謝されないまま血液脳関門を通過し、脳の働きを妨げて肝性脳症を引き起こします[1]。
国立がん研究センターによると、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、慢性的な炎症やがんがあっても初期はほとんど自覚症状がありません[2]。国立がん研究センターによると、そのため、健康診断で肝機能の異常や肝炎ウイルス感染を指摘された段階で、消化器内科などを受診することが重要です[2]。
出典:日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2022年3月改訂)[1]/国立がん研究センター がん情報サービス[2]
原因:ウイルス性肝炎・アルコール・脂肪肝(MASH)
同ガイドラインでは、わが国における2018年の肝硬変成因別調査では、C型肝炎48.2%、アルコール性19.9%、B型肝炎11.5%、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)6.3%、胆汁うっ滞型3.4%、自己免疫性2.7%、原因不明6.6%などとなっており、C型肝炎が最多です[1]。同ガイドラインでは、ただし2008年の調査ではC型肝炎60.9%、アルコール性13.6%、NASH2.1%であり、C型肝炎による肝硬変の割合が減少する一方、アルコール性やNASH(近年は「代謝異常関連脂肪肝疾患:MASLD/MASH」とも呼ばれる)の割合が増加する傾向にあります[1]。
| 原因 | 割合(2018年) | 備考 |
|---|---|---|
| C型肝炎 | 48.2% | 依然として最多だが減少傾向[1] |
| アルコール性 | 19.9% | 2008年調査(13.6%)より増加[1] |
| B型肝炎 | 11.5% | B型+C型重複は0.7%[1] |
| NASH(脂肪肝炎) | 6.3% | 2008年調査(2.1%)より増加傾向[1] |
| 原因不明 | 6.6% |
出典:日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2022年3月改訂)、2018年肝硬変成因別調査[1]
国立がん研究センターによると、肝細胞がんの発生にも、B型・C型肝炎ウイルス感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる慢性的な炎症や肝硬変が関わっているとされています[2]。
ウイルス性肝炎(B型・C型)
厚生労働省「知って、肝炎プロジェクト」によると、肝炎には原因によりウイルス性(A型・B型・C型・D型・E型など)、薬物性、アルコール性、自己免疫性などの種類があり、このうちウイルス性肝炎は肝炎ウイルスへの感染によって起こります[3]。同ガイドラインでは、B型・C型肝炎ウイルスは持続感染すると慢性肝炎となり、長期間にわたって肝細胞が壊され続けることで線維化が進み、肝硬変に至ることがあります[1]。厚生労働省「知って、肝炎プロジェクト」によると、健康診断や献血で肝炎ウイルスへの感染を指摘された場合は、症状がなくても消化器内科・肝臓内科で精査を受けることが、肝硬変への進行を防ぐ第一歩になります[3]。
アルコール性肝硬変:治療の基本は禁酒
アルコール性肝硬変の治療の基本は禁酒です。同ガイドラインでは、禁酒が継続できれば予後は改善されますが、断酒ができず難渋する例が多いのも実情です[1]。同ガイドラインでは、断酒補助剤(ジスルフィラム・アカンプロサート・ナルトレキソン)は断酒率を上げる効果が知られていますが、アルコール性肝硬変患者を対象とした治験は行われておらず、ジスルフィラムは重篤な肝障害のある患者には禁忌、ナルトレキソンも肝毒性のため使用が勧められていません[1]。同ガイドラインでは、日本人のアルコール依存症患者を対象とした試験では、アカンプロサート投与24週間後の断酒率はプラセボ群36.0%に対し投与群47.2%で、有効性は示されたものの半数に届かない結果でした[1]。同ガイドラインでは、近年は、すぐに断酒できない場合に飲酒量を減らすことから始める「ハームリダクション」という考え方も提唱されていますが、肝硬変患者への有用性は今後の検討課題とされています[1]。
症状:代償性は無症状、非代償性は黄疸・腹水・浮腫
同ガイドラインでは、肝硬変は、肝機能がよく保たれ臨床症状がほとんどない「代償性肝硬変」と、肝性脳症・黄疸・腹水・浮腫・出血傾向など肝不全に起因する症状が現れる「非代償性肝硬変」に分類されます[1]。一般に、Child-Pugh分類B以上(Child-Pughスコア7点以上)、または過去に非代償性の既往・治療歴がある場合に非代償性肝硬変とされますが、ガイドライン上の明確な統一基準は示されていません[1]。
| 項目 | 代償性肝硬変 | 非代償性肝硬変 |
|---|---|---|
| 自覚症状 | ほとんどなし | 黄疸・腹水・浮腫・出血傾向・肝性脳症など[1] |
| Child-Pugh分類の目安 | A(多くの場合) | B以上(スコア7点以上)が目安[1] |
| 栄養管理の蛋白質量 | 1.2g/kg(実体重)/日が目安[1] | 栄養障害があれば1.0〜1.5g/kg/日(BCAA製剤含む)[1] |
見分けるカギ:黄疸・腹水・浮腫・出血しやすさ・意識のもうろう感(肝性脳症)のいずれかが出現した時点で、非代償性への移行を疑い受診が必要です。
見逃されやすい症状:筋痙攣(こむら返り)
同ガイドラインでは、肝硬変患者では筋痙攣(こむら返り)がよくみられ、睡眠障害など生活の質を低下させる原因になります[1]。同ガイドラインでは、原因としては脱水、電解質異常、耐糖能異常、アミノ酸代謝異常などが挙げられます[1]。同ガイドラインでは、肝硬変が進行すると必須アミノ酸のメチオニンが利用されにくくなり、タウリンやカルニチンの生成が低下することで筋痙攣が起こりやすくなるとされています[1]。同ガイドラインでは、本邦の全国調査(671例)では、肝硬変患者の51.8%が3ヵ月以内に筋痙攣を経験しており、Child-Pugh分類BまたはCの患者では利尿薬の使用が筋痙攣の頻度と関連するため注意が必要です[1]。同ガイドラインでは、国内では病態に応じて芍薬甘草湯、カルニチン製剤、BCAA製剤、亜鉛製剤などが用いられていますが、いずれも自己判断ではなく医師の処方のもとで使用するものです[1]。
血小板減少:あざができやすい・出血しやすい
同ガイドラインでは、肝硬変では門脈圧亢進により脾臓が腫れる(脾腫)ことがあり、これが血球減少、特に血小板減少の原因となります[1]。血小板が減少すると、あざができやすい、歯茎から出血しやすいといった症状が出ることがあります。同ガイドラインでは、内視鏡的静脈瘤結紮術やラジオ波焼灼療法など観血的な処置を予定している場合、血小板数が5万/μL未満などの基準に該当すると、トロンボポエチン受容体作動薬(血小板を増やす薬)の使用が検討されることがあります[1]。同ガイドラインでは、国内の臨床試験では、この薬剤により血小板輸血を回避できた症例が79.2%(コントロール群12.5%)と報告されていますが、門脈血栓症などの副作用の可能性もあるため、専門医による慎重な判断のもとで使用されます[1]。
サルコペニア(筋肉量の減少)
同ガイドラインでは、サルコペニア(筋肉量・筋力の低下)は肝硬変の予後不良因子として知られています[1]。同ガイドラインでは、8週間から14週間の運動療法でサルコペニアが改善したとする複数のランダム化比較試験が報告されていますが、これらの試験にはChild-Pugh Cの患者は含まれておらず、現時点ではChild-Pugh Cの患者への運動介入は勧められていません[1]。同ガイドラインでは、また、高齢の肝硬変患者では運動に伴う転倒リスク、静脈瘤のある患者では運動による静脈瘤破裂のリスクが高まる可能性があるため、運動を始める前に必ず主治医に相談し、病態評価を受けてください[1]。同ガイドラインでは、栄養面では、BCAA製剤の投与がサルコペニアを合併した肝硬変患者の生命予後改善と関連したとの報告もあります[1]。
慢性肝炎・脂肪肝との違い:どこからが肝硬変か
同ガイドラインでは、肝硬変は「肝臓全体に再生結節が形成され、その結節を線維性隔壁が取り囲む病変」と定義される、肝疾患の終末像です[1]。同ガイドラインでは、慢性ウイルス性肝炎・アルコール性肝疾患・自己免疫性肝疾患・脂肪肝炎(NASH)などにより肝細胞が慢性的・持続的に傷害され続けることで進行しますが、劇症肝炎などで肝細胞に広範な壊死が生じた後、結節性の再生が起こって肝硬変に進展する経過をたどる場合もあります[1]。
| 段階 | 肝臓の状態 | 自覚症状 |
|---|---|---|
| 脂肪肝・脂肪肝炎(NASH) | 脂肪が過剰にたまり炎症を起こしている状態[2] | ほぼなし |
| 慢性肝炎 | ウイルスなどにより肝細胞の壊死・再生が慢性的に繰り返される[1] | ほぼなし |
| 代償性肝硬変 | 線維化が進み再生結節が形成されるが、肝機能はまだ保たれている[1] | ほとんどなし |
| 非代償性肝硬変 | 肝機能が低下し血流障害・門脈圧亢進が顕著になる[1] | 黄疸・腹水・肝性脳症など |
見分けるカギ:脂肪肝・慢性肝炎の段階では血液検査値が正常に近くても、画像検査で線維化が進んでいることがあります。国立がん研究センターによると、自覚症状の有無だけで安心せず、原因となるウイルスや生活習慣がある人は定期検査を継続することが重要です[2]。
診断:血液検査・画像検査・Child-Pugh分類
同ガイドラインでは、肝硬変の診断・重症度評価では、血液検査による肝機能・線維化マーカー、超音波やCTなどの画像検査に加えて、肝臓関連の予後指標としてChild-Pughスコアや肝静脈圧較差(HVPG)などが用いられます[1]。肝移植の緊急度評価などにはMELDスコアも国際的に使われており、海外データでは、ある研究でMELDスコア18点以上、別の研究では12点以上から肝移植による生存改善効果が現れるとする報告があります[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価項目 | 血清アルブミン値・血清ビリルビン値・腹水の有無・肝性脳症の程度・プロトロンビン時間の5項目を点数化[1] |
| 分類 | 合計点数によりA(軽度)〜C(重度)に分類 |
| 非代償性の目安 | 一般にB以上(スコア7点以上)で非代償性とされることが多い[1] |
| Child-Pugh C(重症)での1年生存率 | 脳死肝移植登録された成人1,014名の解析で、スコア10点で75.1%、11点で60.5%、12点以上ではさらに低下[1] |
出典:日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2022年3月改訂)[1]
同ガイドラインでは、肝性脳症の程度は、Child-Pugh分類の中でも点数化され、軽度(I〜II度)は2点、昏睡(III度以上)は3点として評価に組み込まれます[1]。
治療:原因治療・合併症管理・肝移植
肝硬変の治療は、①原因そのものへの治療(抗ウイルス治療・禁酒・生活習慣改善など)、②腹水・肝性脳症・静脈瘤などの合併症管理、③重症例での肝移植の3本柱で考えられます。
原因治療
同ガイドラインでは、C型肝硬変では、予後不良の場合を除き、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療が推奨されています[1]。同ガイドラインでは、2014年以降のDAA登場により、代償性C型肝硬変でも慢性肝炎と同様に安全かつ高い治療効果でウイルス排除が可能になりました[1]。同ガイドラインでは、ただし、NS5Bポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルは高度腎機能障害(eGFR30未満)や透析例には本邦において禁忌であり、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬も非代償性肝硬変などの重度肝障害では禁忌となるため、肝機能・腎機能・併用薬を考慮した薬剤選択が必要です[1]。同ガイドラインでは、2019年以降は、Child-Pughスコア13点以上を除くC型非代償性肝硬変にもDAA治療(ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠)が可能になっていますが、専門医による慎重な判断が前提です[1]。
合併症管理
同ガイドラインでは、腹水には、塩分摂取制限とスピロノラクトンを第一選択薬とする利尿薬治療が基本戦略です[1]。同ガイドラインでは、既存の利尿薬で効果不十分な場合、腎機能が保たれた早期の段階でバソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンの投与を開始することが推奨されています[1]。同ガイドラインでは、フロセミドなどのループ利尿薬による強制的な利尿は、交感神経系やレニン・アンジオテンシン系を活性化させ、糸球体濾過率を低下させて腎障害や電解質異常を引き起こすことがあり、腎不全を合併した肝硬変患者では死亡リスクが約7倍に増加するとの報告もあるため、利尿薬は少量にとどめ腎機能保護に努めることが重要とされています[1]。
利尿薬でも改善しない難治性腹水に対しては、腹水穿刺排液とアルブミン静注のほか、腹水濾過濃縮再静注法(CART)という選択肢もあります。同ガイドラインでは、これは穿刺した腹水を濾過・濃縮して体内に点滴で戻す方法で、腹水中の蛋白を再利用できる利点があります[1]。同ガイドラインでは、ただし、高度の肝性脳症や顕性黄疸、血性腹水を伴う場合には向かないとされています[1]。
同ガイドラインでは、肝性脳症には分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤が有用とされ、複数のメタアナリシス(827名を含む解析)でBCAAが肝性脳症を有意に改善したと報告されています[1]。同ガイドラインでは、⛔ これらの薬剤の増量や中止は必ず主治医の指示のもとで行うべきで、自己判断による利尿薬の中止・増量は電解質異常や腎障害を招く危険があります[1]。
肝移植
同ガイドラインでは、肝移植は非代償性肝硬変の予後を改善します[1]。海外のコホート研究では、12,966例を解析した報告でMELDスコア18点以上、38,899例を解析した別の報告で12点以上から肝移植による生存改善効果が現れるとされています[1]。同ガイドラインでは、本邦における2019年までの肝移植症例登録では、脳死肝移植135例・生体肝移植1,930例が登録され、レシピエントの1年・5年生存率は脳死肝移植で89.2%・82.9%、生体肝移植で85.4%・79.0%と報告されています[1]。
出典:日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2022年3月改訂)[1]
⚠ 合併症と危険なサイン:食道静脈瘤破裂・肝性脳症・腹水
以下の症状が出た場合は、様子を見ず直ちに救急受診(119番)が必要です。
| 合併症 | 危険なサイン | 対応 |
|---|---|---|
| 食道・胃静脈瘤の破裂 | 吐血・下血。門脈圧亢進により食道・胃・直腸に生じた静脈瘤は出血すると致死的な結果をもたらすことがあります[1] | 🔴 直ちに救急受診(119番) |
| 肝性脳症 | 意識障害、羽ばたき振戦(手を伸ばしたときの震え)、言動の変化。腸内細菌由来のアンモニアなどが血液脳関門を通過して脳機能を障害することで起こります[1] | 🔴 直ちに救急受診(119番) |
| 腹水 | 急激な腹部膨満、体重の急増。門脈圧亢進と血清アルブミン低下により生じます[1] | 🔴 急激な悪化は救急・🟡 徐々の増加はかかりつけの肝臓専門医へ |
| 黄疸の急な悪化 | 白目や皮膚の黄染が急に強くなる | 🔴 直ちに救急受診(119番) |
| 肝細胞がん | 肝硬変は肝細胞がん発生の危険性が高い状態です[1]。しこり・圧迫感・急な体重減少などは定期検診で確認[2] | 🟡 定期的な画像検査を肝臓専門医と継続 |
出典:日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2022年3月改訂)[1]/国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)」[2]
⛔ 腹水や肝性脳症の治療薬(利尿薬・BCAA製剤など)を自己判断で中止したり量を変えたりすることは危険です。同ガイドラインでは、脱水や電解質異常、腎機能悪化につながるおそれがあるため、必ず肝臓専門医の指示に従ってください[1]。肝硬変の管理は肝臓専門医(消化器内科・肝臓内科)による定期的なフォローアップが基本です。
肝性脳症の重症度:犬山分類とミニマル肝性脳症
同ガイドラインでは、肝性脳症は、非特異的な神経学的・精神的異常から昏睡まで幅広い症状を示す合併症です[1]。同ガイドラインでは、国内では以前から「犬山分類」という昏睡度分類(I度〜V度)が使われており、意識障害がごく軽い段階から深い昏睡まで段階的に評価します[1]。同ガイドラインでは、実は、明らかな意識障害が出る前の「ミニマル肝性脳症(MHE)」「不顕性肝性脳症(CHE)」という段階もあり、慢性肝疾患患者の約50%、国内の肝硬変患者の約30%がこの基準を満たすとの報告があります[1]。同ガイドラインでは、この段階では動作性の認知能力が低下しやすく、車の運転などに影響する可能性が指摘されているため、家族が「なんとなく反応が鈍い」と感じたら受診の目安にしてください[1]。
同ガイドラインでは、💰 身体障害者手帳との関係:わが国の身体障害者手帳制度における肝機能障害の認定では、犬山分類を用いたChild-Pugh分類の肝性脳症項目で、軽度(I〜II度)は2点、昏睡(III度以上)は3点として評価される仕組みが対象になっています[1]。認定の可否や等級は個々の状態により異なるため、詳細は自治体窓口・主治医にご確認ください。
特発性細菌性腹膜炎(SBP)の予防
腹水を伴う重症肝硬変、上部消化管出血を伴う肝硬変、特発性細菌性腹膜炎(SBP)の既往がある肝硬変では、感染症併発のリスクが高いため、国内外のガイドラインで予防的抗菌薬投与が提案されています[1]。同ガイドラインでは、ノルフロキサシンやシプロフロキサシンはプラセボと比較してSBPの発症を有意に抑制したと報告されていますが、日本国内では予防的抗菌薬投与は保険適用外です[1]。同ガイドラインでは、耐性菌の出現リスクもあるため、腹水が消失するなど臨床経過が改善した場合は抗菌薬投与を中止することが望ましいとされています[1]。これも自己判断ではなく、必ず専門医の管理のもとで行う治療です。
食事・日常生活の注意点(塩分・蛋白質)
同ガイドラインでは、腹水がある場合は塩分摂取を減らすことが治療戦略の基本の一つとされています[1]。同ガイドラインでは、エネルギー摂取量は耐糖能異常がなければ体重1kgあたり25〜35kcal/日が目安です[1]。
同ガイドラインでは、蛋白質摂取量については、蛋白不耐症(摂取により肝性脳症が悪化しやすい状態)がなければ体重1kgあたり1.0〜1.5g/日(BCAA製剤を含む)が基本とされ、栄養障害のない代償性肝硬変では実体重1kgあたり1.2g/日が目安です[1]。同ガイドラインでは、栄養障害やサルコペニアがある場合は分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤を含めた栄養療法が検討されます[1]。同ガイドラインでは、なお、肝性脳症の急性期に蛋白質を極端に制限することは、かえって窒素平衡を負に傾け蛋白の分解を促進するため推奨されていません[1]。
同ガイドラインでは、就寝前の軽食(LES:Late Evening Snack)として、1日の総摂取カロリーのうち約200kcalを分割し、夜間の飢餓状態を改善する栄養療法も有用とされています[1]。同ガイドラインでは、複数のメタアナリシスで血清アルブミン値の有意な上昇が報告されており、生活の質の改善や有痛性の筋痙攣の改善、難治性腹水患者の予後改善なども報告されています[1]。同ガイドラインでは、ただし、食後2時間の血糖値が200mg/dL以上など耐糖能異常がある場合はLESによりかえって血糖コントロールが悪化する可能性が報告されており、開始にあたっては耐糖能の評価が必要です[1]。具体的な塩分制限量や蛋白質量、LESの内容は、原因疾患や肝機能の程度によって個人差が大きいため、必ず肝臓専門医・管理栄養士の指導のもとで調整してください。
日本と国際的な指標との比較
| 項目 | 日本(日本肝臓学会 2022年改訂) | 国際的な位置づけ |
|---|---|---|
| 重症度評価 | Child-Pughスコア・肝静脈圧較差(HVPG)を重視[1] | 肝移植の優先順位判断には国際的にMELDスコアが広く使われ、スコア12点以上または18点以上(研究により異なる)から移植の生存改善効果が明確になるとする海外コホート研究がある[1] |
| C型非代償性肝硬変への抗ウイルス薬 | 2019年にソホスブビル/ベルパタスビル配合錠が国内承認。Child-Pughスコア13点以上は国内試験で除外され、エビデンスなし[1] | 海外でも同配合錠のChild-Pugh B対象の第III相試験(ASTRAL-4)が実施されている[1] |
この2点は、同じ「肝硬変」でも国・データによって評価指標の重み付けが異なることを示しています。同ガイドラインでは、日本の診療では現時点でChild-Pugh分類が中心的に使われていますが、肝移植の国際的な優先順位づけではMELDスコアも参照されます[1]。
同ガイドラインでは、また、血小板減少症に対するトロンボポエチン受容体作動薬についても、アバトロンボパグは米国では待機的な観血的手技を予定している肝硬変患者の血小板減少症に承認されている一方、本邦では未承認という違いがあります(本邦ではルストロンボパグが承認・使用されています)[1]。薬剤の承認状況は国によって異なるため、海外の情報をそのまま自己判断の根拠にせず、必ず日本の専門医に相談してください。
医療費の目安
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
よくある質問(FAQ)
肝硬変は治りますか?
代償性肝硬変と非代償性肝硬変はどう違いますか?
肝硬変になると肝臓がんになりやすいですか?
お酒はどのくらいなら飲んでいいですか?
塩分やたんぱく質はどのくらい制限すればいいですか?
むくみやお腹の張りがあるとき、利尿薬を自己判断で増やしてもいいですか?
肝性脳症の羽ばたき振戦とはどんな症状ですか?
肝移植はどのくらいの段階で検討されますか?
健康診断で「肝機能異常」と言われましたが、肝硬変ですか?
肝硬変で足がつりやすい(こむら返り)のはなぜですか?
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治療・薬 5
本記事は日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2022年3月改訂)および国立がん研究センター がん情報サービスなど公的情報源を参照して作成していますが、Child-Pugh分類の点数配分の詳細な計算式や、静脈瘤の内視鏡的治療の具体的な手技については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。詳細は肝臓専門医にご確認ください。
参考文献
- 日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン」追補(2020年11月刊行、2022年3月18日最終更新) jsh.or.jp(PDF)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)」 ganjoho.jp
- 厚生労働省「知って、肝炎プロジェクト」肝炎対策国民運動事業 kanen.mhlw.go.jp
