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肝臓がん(肝細胞がん)

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
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✦ 結論から言うと

肝臓がんの90%以上は肝細胞ががん化した「肝細胞がん」であり、B型・C型肝炎ウイルス、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる慢性的な肝臓の炎症や肝硬変が関わっているとされています[1]。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ初期にはほぼ症状が出ないため、肝炎ウイルス感染や肝硬変がある人は3〜6カ月ごとの超音波検査と腫瘍マーカー検査によるサーベイランス(定期検査)が勧められています[2]。治療は肝予備能(Child-Pugh分類)とがんの病期の両方から選ばれ、肝臓内にとどまる場合は手術・ラジオ波焼灼療法・肝動脈化学塞栓療法(TACE)、遠隔転移がある場合は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法が中心になります[3]。

主な原因 B型・C型肝炎ウイルス感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎(脂肪肝の炎症)による慢性的な肝臓の炎症や肝硬変[1]
主な症状 初期はほぼ無症状。進行すると黄疸・むくみ・かゆみ・だるさ・腹部のしこりや圧迫感[3]
受診の目安 健診で肝機能の異常や肝炎ウイルス感染を指摘されたら、まず内科・消化器内科を受診[1]

肝臓がん(肝細胞がん)とは?原発性と転移性の違い

肝臓がんとは、肝臓にできるがんの総称です。このうち肝臓の主な細胞である肝細胞ががん化したものを「肝細胞がん」と呼び、肝臓の中を通る胆管ががん化したもの(肝内胆管がん、胆管細胞がん)とは治療法が異なるため区別されています。国立がん研究センター がん情報サービスでは、「日本で発生する肝臓がんの90%以上は肝細胞がんであるため、一般的には「肝臓がん」とは「肝細胞がん」のことを意味します」と説明しています[1]。

もう一つ知っておきたいのが「転移性肝がん」です。同センターは、「肝臓以外の臓器にできたがんが、肝臓に転移したものを転移性肝がんといいます」「転移性肝がんは肝細胞がんとは区別し、原発巣(最初にがんができた臓器)に準じた治療を行います」と説明しています[1]。つまり、大腸がんや胃がんなどが肝臓へ転移した場合は「肝臓のがん」という見た目は同じでも、治療方針は元のがん(原発巣)に基づいて決められ、この記事で扱う「肝細胞がん」の治療とは別物になります。この違いを取り違えると、検索や情報収集の方向が変わってしまうため、最初に区別しておくことが重要です。

肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しているとされています。国立がん研究センターは、「脂肪肝炎とは、脂肪が過剰にたまった肝臓(脂肪肝)が炎症を起こしている状態です」「肝硬変とは、肝炎ウイルスや脂肪肝などによる炎症が長期間にわたって続いた結果、肝臓が硬くなった状態をいいます」と定義しています[1]。つまり肝細胞がんは、ある日突然どこかに現れるがんというより、「炎症が長く続いた肝臓」という土壌の上にできることが多いがんだと言えます。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」[1]

肝細胞がんが起こる仕組みと進み方

肝細胞がんは、多くの場合、慢性肝炎から肝硬変へと進む過程、あるいは非アルコール性脂肪肝炎(脂肪肝の炎症)が続く過程で発生します。ウイルスやアルコール、脂肪の蓄積によって肝細胞の破壊と再生が繰り返されるうちに、遺伝子の変化が積み重なり、がん化した細胞が増えていくと考えられています。国立がん研究センターは、「肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しているとされています」と述べています[1]。

肝臓は再生能力が高く予備能も大きいため、炎症やがんがあっても初期には自覚症状がほとんど出ません。国立がん研究センターは、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期には自覚症状がほとんどないため、医療機関での定期的な検診や、ほかの病気の検査のときなどに、異常を指摘されることも少なくありません、と説明しています[1]。だからこそ、肝炎ウイルスに感染している人や肝硬変がある人にとっては、症状が出るのを待つのではなく、定期的な超音波検査によるサーベイランス(後述)が命を守る鍵になります。

出典:日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン2021年版」を用いた国立がん研究センター がん情報サービスの解説をもとにJHO編集部が作図[3]

再発についても知っておく価値があります。国立がん研究センターは、「肝細胞がんは、多くの場合、肝臓内で再発します」「肝切除による治療後に初めて再発した場合は、90%以上が肝臓内での再発だといわれています」と説明しています[3]。これは、がん細胞が肝臓内の血流に乗って別の場所に転移したり、切除後に残った肝臓から新しい肝細胞がんが発生したりするためと考えられています[3]。肺やリンパ節、副腎、脳、骨などへの転移が起こることもあります[1]。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」[1]「治療」[3]

原因・リスク要因:B型・C型肝炎、肝硬変、アルコール、脂肪肝(MASLD/NASH)

肝細胞がんの発生に関わる要因として、国立がん研究センターは「B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染」「アルコール性肝障害」「非アルコール性脂肪肝炎」「肝臓の慢性的な炎症や肝硬変」を挙げています[1]。同センターの予防・検診ページでも、「主な要因は、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスの持続感染です」としたうえで、「アルコール摂取、喫煙、肥満、脂肪肝、糖尿病があることです」と述べています[5]。つまり、危険因子は大きく分けて「ウイルス性」「アルコール性」「代謝・生活習慣性(脂肪肝)」の3系統があり、いずれも共通して「慢性的な肝臓の炎症」を経由してがんにつながっていきます。

ウイルス性の背景肝疾患:B型・C型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染は、いずれも肝細胞がんの代表的な危険因子です[1]。国立がん研究センターは予防策として、「B型肝炎ウイルスは、ワクチンで感染を予防することができます」と明記しています[5]。C型肝炎については、感染がわかった場合は抗ウイルス療法による治療が勧められるとされています[5]。

アルコール性肝障害

長期間の過度な飲酒による「アルコール性肝障害」も、慢性的な肝臓の炎症を経て肝硬変・肝細胞がんへとつながる危険因子として挙げられています[1]。予防・検診ページでも生活習慣の項目として「飲酒を控える」ことが勧められています[5]。

脂肪肝の炎症(非アルコール性脂肪肝炎/MASLD・NASH)

近年、ウイルス性肝炎の治療が進歩した一方で注目されているのが、お酒を飲まない人にも起こる脂肪肝からの発症です。国立がん研究センターは、「脂肪肝炎とは、脂肪が過剰にたまった肝臓(脂肪肝)が炎症を起こしている状態です」と説明しており[1]、この「非アルコール性脂肪肝炎」が肝硬変・肝細胞がんの発生要因の一つに位置づけられています[1]。予防・検診ページが挙げる危険因子の「肥満」「脂肪肝」「糖尿病」は、いずれもこの脂肪肝からの発症経路と関わりが深い項目です[5]。「編集部注」近年は国際的に「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」という呼び方も使われるようになっていますが、この呼称そのものについては今回参照した国立がん研究センターのページには記載が見当たりませんでした。

共通のゴール地点:肝硬変

ウイルス・アルコール・脂肪肝、どの経路であっても行き着きやすいのが肝硬変です。国立がん研究センターは、「肝硬変とは、肝炎ウイルスや脂肪肝などによる炎症が長期間にわたって続いた結果、肝臓が硬くなった状態をいいます」と定義しています[1]。肝硬変になると肝細胞がんが発生するリスクが上がるため、原因を問わず肝硬変と診断された人は、後述するサーベイランス(定期検査)の対象になります[2]。

肝細胞がんの主な危険因子(系統別)
系統 具体的な要因 行き着きやすい状態
ウイルス性 B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスの持続感染[1] 慢性肝炎・肝硬変
アルコール性 長期の過度な飲酒によるアルコール性肝障害[1] 肝硬変
代謝・生活習慣性 肥満・脂肪肝・糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎[1][5] 脂肪肝炎・肝硬変
その他の生活習慣 喫煙[5] (危険因子として明記、経路は資料に記載なし)

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」[1]/「予防・検診」[5]

症状:初期はほぼ無症状、進行時に出るサイン

肝細胞がんの症状を考えるうえで最も大切なのは、「早期にはほとんど症状が出ない」という事実です。国立がん研究センターは、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期には自覚症状がほとんどないと明記しています[1]。

肝細胞がんの人は、B型肝炎やC型肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変などの慢性肝疾患を伴っていることが多く、こうした背景疾患による肝機能低下自体が症状を引き起こすことがあります。同センターは、「慢性肝疾患により肝機能が低下すると、黄疸(皮膚や目が黄色くなる)、むくみ、かゆみ、だるさや倦怠感などの症状があらわれることがあります」と説明しています[1]。これらは肝細胞がんそのものというより、土台にある肝疾患(肝硬変など)の症状であることが少なくありません。

がんが進行した場合には、腫瘍そのものによる症状も出てきます。「肝細胞がんが進行した場合は、腹部にしこりや圧迫感、痛みがあらわれることがあります」とされています[1]。さらに進んだ段階では、緩和ケア・支持療法のページで、「黄疸、腹水、むくみ、かゆみ、だるさや倦怠感などのさまざまな症状があらわれることや、食道静脈瘤が悪化することがあります」とも説明されています[3]。

肝細胞がんで見られる症状(背景の慢性肝疾患による症状/進行がんによる症状)
時期 主な症状 出典
初期 ほぼ無症状(「沈黙の臓器」) [1]
背景の慢性肝疾患による症状 黄疸、むくみ、かゆみ、だるさ・倦怠感 [1]
がん進行時 腹部のしこり・圧迫感・痛み [1]
さらに進行した場合 腹水、食道静脈瘤の悪化 [3]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」[1]「治療」8.緩和ケア/支持療法[3]

国立がん研究センターは、「健康診断などで肝機能の異常や肝炎ウイルスの感染などを指摘されたときには、まずは内科や消化器内科、または身近な医療機関を受診するようにしましょう」と勧めています[1]。症状が出るのを待つのではなく、健診の異常値をきっかけに動くことが重要だとわかります。

診断の流れ:サーベイランス・腫瘍マーカー・画像検査・生検

肝細胞がんの診断は、「症状が出てから見つける」のではなく、「危険因子がある人を定期的に調べて早期に見つける」サーベイランス(定期検査)が土台になっています。国立がん研究センターは、「B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人は、3〜6カ月ごとの定期的な超音波(エコー)検査や腫瘍マーカー検査を受けることが勧められています」と明記しています[2]。

①超音波(エコー)検査

体の表面から超音波をあて、臓器で反射した超音波の様子を画像化して観察する検査です。「がんの大きさや個数、がんと血管の位置、がんの広がり、肝臓の形や状態、腹水の有無を調べます」とされています[2]。被ばくがなく繰り返し受けやすいため、サーベイランスの中心的な検査になっています。ただし「がんの場所によっては、検査が難しいことや、皮下脂肪が厚い場合は、十分な検査ができないことがあります」という限界も明記されています[2]。

②腫瘍マーカー検査(AFP・PIVKA-Ⅱ・AFP-L3分画)

肝細胞がんでは、血液中の「AFP(アルファ・フェトプロテイン)やPIVKA-Ⅱ(ピブカ・ツー)、AFP-L3分画(AFPレクチン分画)を測定します」とされています[2]。国立がん研究センターは、「腫瘍が小さい場合は、2種類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています」と説明しており[2]、1種類の値だけで判断しないことがポイントです。また、「がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査など、その他の検査の結果も併せて、医師が総合的に判断します」「肝炎や肝硬変、肝細胞がん以外のがんがある場合にも値が高くなることがある」とも注意喚起されています[2]。「編集部注」AFP・PIVKA-Ⅱそれぞれの具体的なカットオフ値(基準値)については、今回参照した国立がん研究センターの一般向けページには数値の記載が見当たりませんでした。数値は担当医療機関の説明を確認してください。

③CT検査・MRI検査

超音波検査でしこりが見つかった場合や腫瘍マーカーの値が上昇した場合には、「CT検査かMRI検査による画像検査を受けます」[2]。CT検査はX線を使い体の断面を画像化する検査、MRI検査は強力な磁力と電波を使う検査で「X線を使わないため、放射線被ばくがありません」とされています[2]。造影剤を使ったCT・MRIで、「がんの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べる」ことができます[2]。

④生検(病理検査)

「CT検査やMRI検査などの画像検査で悪性か良性かの区別が難しい場合には、病変の一部を採って詳しく調べる生検が行われることがあります」とされています[2]。肝細胞がんは典型的な血流パターンが画像検査で確認できれば生検なしで診断されることも多い一方、判断が難しいケースでは組織を直接確認する生検が選択肢になります。

⑤その他の検査

治療方針を検討する際には血液検査で肝機能を確認するほか、肝硬変によって食道静脈瘤や胃静脈瘤ができていないか、出血の危険性はどの程度かを調べるための内視鏡検査を受けることもあるとされています[2]。

肝細胞がんの主な検査
検査 目的・特徴 出典
超音波(エコー)検査 3〜6カ月ごとのサーベイランスの中心。大きさ・個数・血管との位置関係・腹水の有無を確認 [2]
腫瘍マーカー(AFP・PIVKA-Ⅱ・AFP-L3分画) サーベイランスと診断補助。小さい腫瘍では2種類以上の測定が推奨 [2]
CT検査 X線で断面を画像化。がんの分布・転移・広がりを確認 [2]
MRI検査 磁力と電波で断面を画像化。放射線被ばくなし [2]
生検 画像で良悪性の判断が難しい場合に病変を採取して調べる [2]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 検査」[2]

病期(ステージ)とChild-Pugh分類:治療選択を決める2つのものさし

肝細胞がんの治療方針は、他の多くのがんと違い、「がんの進行度(ステージ)」だけでは決まりません。国立がん研究センターは、「治療は、肝予備能(肝機能がどのくらい保たれているか)や、肝臓以外の臓器に転移があるか、脈管(門脈、静脈、胆管)への広がり、がんの個数、がんの大きさなどのがんの状態に基づいて検討します」と説明しています[3]。つまり「がんの広がり」と「肝臓そのものの体力(肝予備能)」という2つのものさしを組み合わせて治療が決まる、というのが肝細胞がん特有の考え方です。

肝予備能:肝障害度とChild-Pugh分類

「肝予備能は、肝障害度やChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類で確認します」とされ、「肝障害度は、肝機能の状態によって、A、B、Cの3段階に分かれます」「肝硬変の程度を把握するために、Child-Pugh分類を用いることもあります」「どちらの分類方法でも、AからCへと進むにつれて、肝障害の程度は強まります」と説明されています[3]。これらの分類は「日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版」に基づいています[3]。

ステージ(病期):2つの分類法がある

「がんの進行の程度は、「ステージ(病期)」として分類します」「Ⅰ期(ステージ1)・Ⅱ期(ステージ2)・Ⅲ期(ステージ3)・Ⅳ期(ステージ4)と進むにつれて、より進行したがんであることを示しています」とされています[3]。肝細胞がんのステージは、がんの個数・大きさ・肝臓内にとどまっているか・肝臓以外への転移があるかによって決まります[3]。

国立がん研究センターは、日本のステージ分類と国際的なステージ分類の2種類がある点を明確に注意喚起しています。「ステージの分類は、日本の「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会編)」と、国際的に使われている「TNM悪性腫瘍の分類(UICC)」の2種類があり、医師はこれらを用いて説明をしています」「分類法によって、同じステージでもがんの状態が異なることもあるため、注意が必要です」とされています[3]。日本のステージ分類は「日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年」、国際分類は「James D.Brierleyほか編.TNM悪性腫瘍の分類 第8版.2017年」に基づいています[3]。これは、日本の医療機関に通う患者さんが海外の情報(BCLC分類やAJCC/UICC TNM分類ベースの英語論文など)を目にしたとき、同じ「ステージⅡ」でも日本と国際基準で意味が異なりうることを知っておく価値がある、という数少ない「日本と国際基準を並べて注意喚起している」ポイントです。

肝予備能・肝細胞がんの状態と治療選択の枠組み
肝予備能 がんの広がり 治療の方向性
Child-Pugh A・B 肝臓内にとどまる 肝切除、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が中心
Child-Pugh A・B 遠隔転移あり 薬物療法(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)を選択
Child-Pugh C (肝硬変が高度) 肝移植を選択することもある

出典:日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン2021年版」(2021年,金原出版,P76)を用いた国立がん研究センター がん情報サービスの解説[3]

「編集部注」Child-Pugh分類・肝障害度それぞれの点数配分(アルブミン値・ビリルビン値・腹水・脳症などの具体的な採点基準)や、日本のステージⅠ〜Ⅳそれぞれの腫瘍個数・大きさの正確な区切り値については、今回参照した国立がん研究センターの一般向けページ本文には表の画像・数値としての記載が見当たりませんでした。正確な点数配分は、担当医療機関または日本肝臓学会「肝癌診療ガイドライン2021年版」の該当表でご確認ください。

肝細胞がんとほかの肝臓の病気の見分け方

「肝臓に何か影がある」と言われたとき、それが必ずしも肝細胞がんとは限りません。国立がん研究センターの情報をもとに整理すると、少なくとも次の2点を区別する必要があります。

肝臓にできる主な腫瘍・病気の見分け方
項目 肝細胞がん(原発性) 転移性肝がん
できかた 肝臓の細胞(肝細胞)そのものががん化[1] 肝臓以外の臓器のがんが肝臓に転移[1]
背景疾患 B型・C型肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変を伴うことが多い[1] 原発巣(元のがん)の種類による
治療方針 肝予備能とがんの広がりで決める(本記事で解説)[3] 原発巣に準じた治療を行う[1]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」[1]「治療」[3]

見分けるカギ:肝臓以外にがんの既往(大腸がん・胃がんなど)があるかどうか、そして画像検査での血流パターンが、肝細胞がんと転移性肝がんを区別する手がかりになります。同じ肝臓の腫瘍を「原発性」か「転移性」かで見分けることは治療方針を大きく左右するため、担当医は既往歴の確認と画像検査を組み合わせて判断します[1]。また、同じ肝臓にできても「肝内胆管がん(胆管細胞がん)」は肝細胞がんとは別のがんとして扱われ、治療法も異なります[1]。

病期別治療①:手術(肝切除・肝移植)

「手術を行うかどうかは、Child-Pugh分類がAまたはBで肝障害度に基づく肝機能の評価がよい場合、切除後に肝臓の量をどれだけ残せるかによって判断します」とされています[3]。

肝切除

「がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療法です」「多くの場合、がんが肝臓にとどまっており、3個以下の場合に行います」。国立がん研究センターは、「がんの大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような巨大なものであっても、切除が可能な場合もあります」「がんが脈管(門脈、静脈、胆管)へ広がっている場合でも、肝切除を行うことがあります」と説明しています[3]。ただし、「腹水がある場合は、肝切除後に肝不全(肝臓が機能しなくなること)になる危険性が高いため、通常は肝切除以外の治療を行います」とされています[3]。がんの場所や個数によっては、腹腔鏡下手術が選べる場合もありますが、「特に肝臓の広い範囲を切除する場合において完全に確立した方法ではなく、安全性も十分とはいえません」「開腹手術と内視鏡手術の経験を十分にもつチームがある施設で行われるべきとされています」との注意も明記されています[3]。

合併症としては、「肝臓の切除面から胆汁が漏れる胆汁漏、出血、肝不全などが起こることがあります」とされ、「肝不全は重大な合併症で、肝臓がまったく機能しない状態のことです」と説明されています[3]。

肝移植

「肝臓をすべて取り出して、ドナー(臓器提供者)からの肝臓を移植する治療法で、日本では、主に近親者から肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」が行われています」「近年は、脳死後のドナーから肝臓を提供してもらう「脳死肝移植」も行われています」とされています[3]。

肝移植を検討する際に使われる基準として、国立がん研究センターは次の2つを挙げています。「肝細胞がんに対する肝移植は、ミラノ基準、または5-5-500基準を満たす場合に行うことがあります」[3]。

肝移植の適応基準
基準 条件
ミラノ基準 (a)脈管への広がり・肝臓以外への転移がない、(b)がんが1つなら5cm以下、(c)がんが複数なら3個以下で3cm以内
5-5-500基準 (a)遠隔転移や脈管への広がりがなく、かつがんが5cm以内、(b)がんの数が5個以内、(c)AFP 500ng/mL以下

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 治療」2.手術(外科治療)[3]

また、「肝硬変の程度がChild-Pugh分類Cでは肝移植が勧められています」とされ[3]、肝機能そのものが大きく低下している場合は、切除よりも移植が選ばれやすい傾向がわかります。

病期別治療②:穿刺局所療法(ラジオ波焼灼療法)

「腹部の皮膚の上から針をがんに直接刺し、局所的に治療を行う方法で、手術に比べて体への負担が少ないことが特徴です」とされ、「Child-Pugh分類のAまたはBのうち、がんの大きさが3cm以下、かつ、3個以下の場合に行われます」と対象が明確に定義されています[3]。

「肝細胞がんの穿刺局所療法として推奨されているのは、ラジオ波焼灼療法(RFA)です」「ほかの穿刺局所療法としては、経皮的エタノール注入(PEI)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)があります」とされています[3]。ラジオ波焼灼療法は、「特殊な針をがんに直接刺し、通電して針の先端部分に高熱を発生させることで、局所的にがんを焼灼して(焼いて)死滅させる治療法です」「焼灼時間は10〜30分程度です」と説明されています[3]。治療の際は局所麻酔を行い、痛みを和らげるために鎮痛剤や点滴での麻酔を使うこともあるとされています[3]。

合併症としては、「発熱、腹痛、出血、腸管損傷、肝機能障害などの合併症が起こることがあります」「針を刺した場所に痛みややけどが起こることもあります」とされ、「治療後は、数時間程度の安静が必要です」と説明されています[3]。

病期別治療③:肝動脈化学塞栓療法(TACE)・肝動脈塞栓療法(TAE)

「X線を使って体の中を透かして見ながら、鼠径部(足の付け根)や肘、手首の動脈から肝動脈まで入れたカテーテルを、標的となるがんの近くまで進めて行う治療」で、「肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動脈塞栓療法(TAE)があります」とされています[3]。対象は「Child-Pugh分類のAまたはBのうち、大きさが3cmを超えた1〜3個のがん、もしくは、大きさに関わらず4個以上のがんがあり、手術が難しくかつ穿刺局所療法の対象とならない場合」と明確に定義されています[3]。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)は、「細胞障害性抗がん薬と肝細胞がんに取り込まれやすい造影剤を混ぜて注入した後、肝動脈を詰まらせる塞栓物質を注入する治療法」で、「肝動脈を詰まらせることで、がんへの血流を減らし、細胞障害性抗がん薬によりがん細胞の増殖を抑えます」と説明されています[3]。肝動脈塞栓療法(TAE)は「塞栓物質のみを注入する治療法」です[3]。

治療の切り替えの目安についても、国立がん研究センターは具体的に示しています。「①肝動脈化学塞栓療法(TACE)を2回行っても治療の効果が不十分か、肝臓内に新たにがんができたとき、②脈管にがんが広がったときや遠隔転移が起こったとき、③腫瘍マーカーが持続的に上昇するときのいずれかの場合には、治療法の変更を勧められることもあります」とされています[3]。つまりTACEは「効かなくなったら漫然と繰り返す治療」ではなく、この3条件で薬物療法などへの切り替えが検討される治療だと分かります。

副作用としては、「発熱、吐き気、腹痛、食欲不振、肝機能障害、胸痛などの副作用が起こることがあります」「治療後は、数時間から半日程度の安静が必要です」とされています[3]。また、がんが4個以上ある場合などには、細胞障害性抗がん薬を直接注入する「肝動注化学療法(TAI)」が行われることもあるとされています[3]。

病期別治療④:薬物療法(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)と放射線治療

「肝細胞がんの全身薬物療法では、分子標的薬による治療(分子標的治療)や免疫チェックポイント阻害薬による治療が標準治療です」とされています[3]。対象は、「肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などが行えない進行性の肝細胞がんで、体の状態を表す指標の1つであるパフォーマンスステータスと肝臓の機能がともに良好なChild-Pugh分類Aの場合」とされています[3]。つまり薬物療法は「ほかの局所治療が使えなくなったとき」の選択肢であり、かつ肝機能がある程度保たれていることが前提になります。

「一次治療(がんの診断後に初めて行う薬物治療)では、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬を用います」「自己免疫性疾患などのために、免疫チェックポイント阻害薬が使えない場合には、分子標的薬を用います」とされています[3]。「免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です」「分子標的薬は、がん細胞に特徴的な分子を目印にしてがんを攻撃する薬で、がん以外への影響を抑えることができるのが特徴です」と、それぞれの仕組みが説明されています[3]。「一次治療の効果がみられない場合や、副作用のために治療を続けることが難しい場合には、別の種類の分子標的薬を二次治療として用いることがあります」ともされています[3]。「編集部注」個々の薬剤の一般名(レンバチニブ・ソラフェニブ・アテゾリズマブ等)については、今回参照した国立がん研究センターの一般向けページ本文には固有の商品名・一般名としての記載が見当たりませんでした。使用する薬剤名は担当医療機関で確認してください。

免疫療法については、「2023年6月現在、肝細胞がんの治療に効果があると証明されている方法は、免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです」「その他の免疫療法で、肝細胞がんに対して効果が証明されたものはありません」と明記されています[3]。免疫療法をうたう自由診療などを検討する際に、この一文は判断材料になります。

放射線治療については、「肝細胞がんの放射線治療は、まだ標準治療としては確立していません」とされつつ、「手術や穿刺局所療法が難しい場合や、脈管内に広がったがんに対する治療として、X線による放射線治療が行われることがあります」「がんが大きく手術が不可能な場合は、重粒子線や陽子線による放射線治療が受けられる場合もありますが、治療ができる施設は限られています」とされています[3]。「骨に転移したときの痛みの緩和を目的とした治療や、脳への転移に対する治療としては、行うことが勧められています」とも説明されています[3]。

病期・肝予備能別の主な治療(まとめ)
肝予備能・がんの状態 主な治療
Child-Pugh A・B、肝臓内にとどまる、3個以下 肝切除
Child-Pugh A・B、3cm以下・3個以下 ラジオ波焼灼療法(RFA)
Child-Pugh A・B、3cm超の1〜3個または4個以上 肝動脈化学塞栓療法(TACE)・肝動脈塞栓療法(TAE)
Child-Pugh A、局所治療が行えない進行例 分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法
Child-Pugh C、またはミラノ基準・5-5-500基準を満たす 肝移植
全病期共通 緩和ケア/支持療法(診断時から開始)

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 治療」[3]

緩和ケア・支持療法、再発した場合の治療

「緩和ケア/支持療法は、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげたり、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くしたりするために行われる予防、治療およびケアのことです」とされ、「決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まります」と明記されています[3]。進行した場合の腹部症状や黄疸、腹水、かゆみ、だるさ、食道静脈瘤の悪化などについても、「本人にしか分からないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう」とされています[3]。

再発についても、国立がん研究センターは具体的な数字を示しています。「肝切除による治療後に初めて再発した場合は、90%以上が肝臓内での再発だといわれています」[3]。再発した場合の治療は、「肝臓以外の臓器に転移していない場合には、残っている肝臓の量や肝機能を考慮して、治療を検討します」「基本的には、初回の治療方針と同じで、手術で切除するか、切除が難しい場合は、ラジオ波焼灼療法や塞栓療法、薬物療法を行います」とされ、「肝移植後に再発した場合は、可能であれば手術で切除するか、切除が難しい場合は、薬物療法を行うことがあります」と説明されています[3]。

受診の目安:健診異常や肝炎ウイルス指摘があったら

🟢 肝炎ウイルスの既往なし・健診で異常なし:特別な追加受診は不要。今後も定期的な健診を継続する[5]。

🟡 健診で肝機能の異常や肝炎ウイルスの感染を指摘された:「まずは内科や消化器内科、または身近な医療機関を受診するようにしましょう」[1]。

🔴 B型・C型肝炎や肝硬変(ウイルス性・非ウイルス性を問わず)と診断されている:「3〜6カ月ごとの定期的な超音波(エコー)検査や腫瘍マーカー検査を受けることが勧められています」[2]。自己判断で検査間隔を延ばさないことが重要です。

肝細胞がんは初期にはほぼ症状がないため、「症状が出たら受診する」という発想では手遅れになりやすい病気です。危険因子(B型・C型肝炎、肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎など)がある人ほど、症状の有無にかかわらず定期検査を継続することが、そのまま「早期発見の目安」になります[2]。

予防と検診:肝炎ウイルス対策とサーベイランス

肝細胞がんの発生要因について、国立がん研究センターは、「主な要因は、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスの持続感染です」「アルコール摂取、喫煙、肥満、脂肪肝、糖尿病があることです」とまとめています[5]。

予防のポイントとして、まずウイルス感染対策が挙げられています。「B型肝炎ウイルスは、ワクチンで感染を予防することができます」とされ[5]、肝炎ウイルス感染の早期発見のために、地域の保健所や医療機関での検査受診が推奨されています[5]。感染が判明した場合は、抗ウイルス療法による治療が勧められるとされています[5]。

生活習慣については、「禁煙、飲酒を控える、バランスの良い食事、身体活動、適正体形の維持」が挙げられています[5]。

検診については、意外に知られていない事実があります。国立がん研究センターは、「肝細胞がんについては、現在、国が推奨するがん検診はありません」と明記しています[5]。つまり、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんのような住民検診の対象には入っていません。その代わりに位置づけられているのが、危険因子がある人を対象にした前述のサーベイランスです。「ウイルス感染による肝硬変や慢性肝炎がある人は、「3〜6カ月間隔での腹部超音波検査などの定期的な検査を受けましょう」」とされています[5]。この違い——「一般向けの住民検診はないが、危険因子がある人には別枠で定期検査が推奨されている」——を理解しておくことが、肝細胞がんの予防・早期発見の実践的な出発点になります。

肝臓がんにかかる人はどれくらいいるのか:統計で見る規模

国立がん研究センターがん対策研究所が公表している最新の累積罹患・累積死亡リスクのデータ(2023年・2024年データに基づく)によると、肝臓がん(肝内胆管を含む)の生涯罹患リスクは「男性2.5%(39人に1人)、女性1.2%(83人に1人)」、生涯死亡リスクは「男性1.7%(60人に1人)、女性0.8%(131人に1人)」とされています[7]。がん全体の生涯罹患リスク(男性61.1%、女性50.1%)と比べると数値としては小さく見えますが、これは「肝臓がんが軽いがん」という意味ではなく、危険因子(肝炎ウイルス感染、肝硬変など)を持つ人に発症が集中しやすいがんだという特徴の裏返しでもあります[5]。

死亡数の順位についても、国立がん研究センターの統計サイトでは、肝臓(肝内胆管を含む)は男女計・男性ともに死亡数の上位(5位前後)に位置づけられています[7]。

生存率について:正確な数値は「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」で確認を

生存率は治療成績を表す重要な指標ですが、国立がん研究センターの説明では、「生存率とは、がんと診断されてからある一定の期間経過した時点で生存している割合のことで、通常はパーセンテージ(%)で示します」「がんの治療成績を表す指標としては、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます」とされています[6]。また、生存率には「実測生存率」(死因を問わずすべての死亡を計算に含める)と「相対生存率」(がん以外の死因を除いてがんのみによる死亡を計算する)の2種類があるとされています[6]。

「編集部注」肝細胞がんの病期別・治療法別の具体的な5年生存率の数値については、国立がん研究センターが「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 肝細胞がん5年生存率」という専用の集計システムで公表する方式をとっており、今回参照した一般向けページ本文には静的な数値としての記載が見当たりませんでした[6]。生存率は施設・病期・年次によって変動するため、本ページで具体的な数字を断定的に示すことは避け、最新かつ正確な値は同システムで直接確認することを強く推奨します。これは数字を軽視しているのではなく、「不確かな数字を示すより、一次情報への案内を優先する」という編集方針によるものです。

出典:国立がん研究センター がん対策研究所「累積罹患・死亡リスク(2023・2024年データ)」[7]/「肝臓がん(肝細胞がん) 患者数(がん統計)」[6]

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

肝細胞がんの治療(肝切除、ラジオ波焼灼療法、TACE、薬物療法、肝移植など)は公的医療保険の対象であり、上記の高額療養費制度の対象にもなります。特に長期にわたる薬物療法や複数回のTACEを受ける場合は、月々の自己負担額が高額療養費制度の上限で頭打ちになる仕組みを理解しておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

肝臓がんと肝細胞がんは同じものですか?
ほぼ同じ意味で使われます。国立がん研究センターは「日本で発生する肝臓がんの90%以上は肝細胞がんであるため、一般的には「肝臓がん」とは「肝細胞がん」のことを意味します」と説明しています[1]。ただし厳密には、肝臓にできるがんの総称が「肝臓がん」で、そのうち肝細胞ががん化したものが「肝細胞がん」、胆管ががん化したものは「肝内胆管がん」として区別されます[1]。
転移性肝がんと肝細胞がんはどう違いますか?
転移性肝がんは「肝臓以外の臓器にできたがんが、肝臓に転移したもの」で、肝細胞がんとは区別され、「原発巣(最初にがんができた臓器)に準じた治療を行います」[1]。一方、肝細胞がんは肝臓の細胞そのものががん化したものです[1]。
肝臓がんの初期症状にはどんなものがありますか?
初期にはほとんど症状がありません。「肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期には自覚症状がほとんどない」とされています[1]。慢性肝疾患があると黄疸・むくみ・かゆみ・だるさが出ることがあり、がんが進行すると腹部のしこりや圧迫感、痛みが出ることがあります[1]。
お酒を飲まないのに肝臓がんになることはありますか?
あります。B型・C型肝炎ウイルスの感染や、非アルコール性脂肪肝炎(お酒を飲まない人にも起こる脂肪肝の炎症)も肝細胞がんの発生に影響する要因として挙げられています[1]。飲酒歴の有無だけで安心はできません。
健診でどれくらいの頻度で検査を受ければよいですか?
B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎・肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人は、「3〜6カ月ごとの定期的な超音波(エコー)検査や腫瘍マーカー検査を受けることが勧められています」[2]。危険因子がない一般の人に対する国の推奨がん検診は、現時点ではありません[5]。
AFPやPIVKA-Ⅱとは何を調べる検査ですか?
肝細胞がんで測定される腫瘍マーカーです。「AFP(アルファ・フェトプロテイン)やPIVKA-Ⅱ(ピブカ・ツー)、AFP-L3分画」が用いられ、「腫瘍が小さい場合は、2種類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています」[2]。ただし数値だけでは診断が確定できないため、画像検査と合わせて総合的に判断されます[2]。
肝臓がんの治療はどうやって決まりますか?
がんの広がり(個数・大きさ・転移の有無)と、肝臓そのものの体力(肝予備能・Child-Pugh分類)の2つを組み合わせて決めます[3]。肝臓内にとどまる場合は手術・ラジオ波焼灼療法・TACEが中心、遠隔転移がある場合は薬物療法、肝機能が大きく低下している場合は肝移植が検討されます[3]。
ラジオ波焼灼療法(RFA)はどんな治療ですか?
腹部の皮膚の上から特殊な針をがんに直接刺し、高熱でがんを焼いて死滅させる治療法です。「Child-Pugh分類のAまたはBのうち、がんの大きさが3cm以下、かつ、3個以下の場合に行われます」「焼灼時間は10〜30分程度」とされています[3]。
TACE(肝動脈化学塞栓療法)は何回まで受けられますか?
回数の上限そのものは明記されていませんが、「肝動脈化学塞栓療法(TACE)を2回行っても治療の効果が不十分か、肝臓内に新たにがんができたとき」などは、治療法の変更(薬物療法などへの切り替え)を勧められることがあるとされています[3]。
肝臓がんの薬物療法にはどんな薬がありますか?
一次治療では免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬が用いられます[3]。「自己免疫性疾患などのために、免疫チェックポイント阻害薬が使えない場合には、分子標的薬を用います」とされ、効果がみられない場合や副作用が強い場合は「別の種類の分子標的薬を二次治療として用いることがあります」[3]。個々の薬剤名は担当医療機関でご確認ください。
肝移植はどんな人が対象になりますか?
「肝硬変の程度がChild-Pugh分類Cでは肝移植が勧められています」[3]。適応は「ミラノ基準」(がんが1つなら5cm以下、複数なら3個以下で3cm以内、脈管への広がり・遠隔転移がない)または「5-5-500基準」(がんが5cm以内、5個以内、AFP 500ng/mL以下)を満たす場合とされています[3]。
肝臓がんは治療後に再発しやすいですか?
「肝切除による治療後に初めて再発した場合は、90%以上が肝臓内での再発だといわれています」とされています[3]。これは肝臓内の血流に乗った転移や、残った肝臓からの新たな発生が理由と考えられています[3]。再発した場合も、初回と同様に肝予備能とがんの広がりに応じて手術・局所療法・薬物療法が検討されます[3]。
肝臓がんの5年生存率はどれくらいですか?
生存率は病期・治療法・施設によって大きく異なるため、国立がん研究センターは病期別の最新データを「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」という専用システムで公表しています[6]。今回参照した一般向けページ本文には確定的な数値の記載が見当たらなかったため、本ページでは断定的な数字を示さず、同システムでの確認をおすすめしています。

肝細胞がんの病期分類・肝予備能の点数配分・薬剤ごとの詳細な適応条件・最新の病期別生存率については、今回参照した国立がん研究センターの一般向けページの範囲では確認できない部分があります。より詳細な情報が必要な場合は、日本肝臓学会「肝癌診療ガイドライン2021年版」や、担当医療機関に直接ご確認ください。

肝臓がん(肝細胞がん)に関する記事一覧

肝臓がん(肝細胞がん)の原因・症状・診断・病期別治療については、今回参照した国立がん研究センター がん情報サービスの資料をもとに整理しました。個々の薬剤名・点数配分・最新の生存率など、今回のページ範囲で確認できなかった項目については、上記の各所で「記載が見当たりませんでした」と明記しています。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」2023年10月06日更新 ganjoho.jp/public/cancer/liver/about.html ↩
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 検査」2022年06月23日更新 ganjoho.jp/public/cancer/liver/diagnosis.html ↩
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 治療」(日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン2021年版」、日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版」に基づく)2023年07月21日更新 ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ↩
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 予防・検診」 ganjoho.jp/public/cancer/liver/prevention_screening.html ↩
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 患者数(がん統計)」 ganjoho.jp/public/cancer/liver/patients.html ↩
  6. 国立がん研究センター がん対策研究所「がん統計(累積罹患リスク・累積死亡リスク、2023・2024年データ)」 ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html ↩

肝臓がん(肝細胞がん)、および原発性肝がんと転移性肝がんの区別、B型・C型肝炎ウイルス・アルコール性肝障害・非アルコール性脂肪肝炎などの背景疾患、Child-Pugh分類に基づく病期別治療については、上記の資料に記載がない詳細(個々の薬剤の適応条件、病期分類の正確な区切り値、最新の病期別生存率など)については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。