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JHO 病気ペディア

胃がん

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
市販薬で様子見してOK? 今週40人が確認 記事へ 経過観察で大丈夫? 記事へ 5年生存率はどのくらい? 記事へ ピロリ菌除菌で防げる? 記事へ

✦ 結論から言うと

胃がんは、早期に発見して内視鏡治療や手術を受ければ治る可能性が高いがんです[1]。実際、国のデータでは、がんが胃の壁の浅いところ(ステージⅠ)にとどまっている段階で見つかった場合の5年生存率は9割を超えています[7]。一方で、早期はほとんど症状がなく、進行してから症状が出ることも多いため、体重減少・黒い便(黒色便)・治らない胃の痛み・原因不明の貧血があるときは、検診を待たずにすぐ消化器内科を受診することが大切です[1]。

主な原因 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染、喫煙、食塩・高塩分食品のとりすぎ[5]
主な症状 早期は無症状のことが多い。進行すると胃の痛み・不快感、胸やけ、吐き気、食欲不振、体重減少、黒色便(血便)、貧血など[1]
受診の目安 体重減少・黒色便・治らない胃痛・貧血がある場合はすぐに消化器内科・胃がん専門医を受診。症状がなくても50歳を超えたら2年に1回の胃がん検診を[5]

胃がんとは?原因とリスクが高まる仕組み

胃は、みぞおちのあたりにある袋状の臓器で、食道からつながる入り口を噴門(ふんもん)、十二指腸へつながる出口を幽門(ゆうもん)といいます。胃の壁は、内側から順に、粘膜・粘膜下組織・固有筋層・漿膜(しょうまく)下組織・漿膜の層に分かれています[1]。胃がんは、この一番内側の粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことで発生します。がんが大きくなるにつれて、粘膜下組織、固有筋層、漿膜へと徐々に外側へ深く進んでいきます[1]。

がんの深さが粘膜および粘膜下組織にとどまるものを「早期胃がん」、粘膜下組織を越えて広がるものを「進行胃がん」といいます[3]。がんがさらに深く進んで漿膜を越えると、近くにある大腸や膵臓、横隔膜、肝臓などに直接広がる「浸潤」が起こったり、おなかの中にがん細胞が散らばる「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」が起こったりすることがあります。また、リンパ液や血液の流れに乗ってがん細胞が離れた臓器に移動する「転移」が起こることもあります[1]。

なお、胃がんの中には、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていくタイプがあり、「スキルス胃がん」とも呼ばれます。粘膜に目立った変化があらわれにくいため、検査を受けていても進行していない段階で発見するのが難しいことが多く、発見時には腹膜に転移していることもある、治りにくいタイプのがんです[1]。組織型としては、胃がんのほとんどは腺がんで、分化型(進行が比較的緩やかな傾向)と未分化型(進行が速い傾向で、まとまりを作らず胃の壁にしみ込むように広がるものが多い)に大きく分けられます。スキルス胃がんは未分化型が多いですが、未分化型のすべてがスキルス胃がんというわけではありません[1]。

リスクを高める3つの要因

要因 胃がんとの関係 対策の考え方
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染 胃に炎症や潰瘍を起こし、胃がんになる可能性を高めると報告されている[1]。除菌によって発生リスクが確実に低下することが分かっている[5] 検査で感染が分かれば除菌治療を検討。ただし除菌後も胃がんになる可能性はゼロにならないため、除菌後も定期的な胃内視鏡検査が必要[5]
喫煙 胃がんの発生要因の一つ[5] 禁煙する。禁煙は治療効果にも関わるため、診断後も早期の禁煙が勧められる[3]
食塩・高塩分食品のとりすぎ 胃がんが発生する危険性を高めることが報告されている[5] 塩分・高塩分食品を控える。野菜や果物の摂取は予防に効果的である可能性が報告されている[5]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 予防・検診」(2026年01月13日更新/胃癌治療ガイドライン医師用 2025年3月改訂【第7版】に基づく)[5]

関連する良性の病気との違い

細菌の一種であるヘリコバクター・ピロリに感染していると、胃に炎症が起きたり潰瘍ができたりすることがあり、胃がんになる可能性が高くなると報告されています[1]。がん以外の良性の胃の病気には、胃潰瘍や慢性胃炎があります。胃潰瘍は胃の痛み、慢性胃炎では胃の不快感や胸やけなど、胃がんと似たような症状が起こることがあるため、症状だけで胃がんかどうかを見分けることはできません[1]。胃炎や胃潰瘍で内視鏡検査を受けた際に、偶然胃がんが見つかることもあります[1]。

症状:早期はほとんど無症状、進行すると体重減少・黒色便も

胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状が出ない場合があります[1]。代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などですが、これらは胃炎や胃潰瘍でも起こる症状のため、胃炎や胃潰瘍で内視鏡検査を受けたときに偶然がんが見つかることもあります[1]。がんから出血することで貧血が起こったり、黒い便(血便)が出たりすることもあります[1]。食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合は、進行胃がんの可能性もあります[1]。

⚠ すぐに消化器内科・胃がん専門医を受診すべき目安

次のような症状があるときは、検診の予定を待たず、なるべく早く内科・消化器内科を受診してください[1]。

  • 体重が急に、または理由なく減ってきた
  • 便が黒い(黒色便・タール便)、または血便が出た
  • 胃の痛みや不快感が続いて治らない
  • 原因がはっきりしない貧血、めまい、動悸がある
  • 食べ物がつかえる感じがある

これらは胃がんに特有の症状ではありませんが、胃炎や胃潰瘍などとの見分けは検査をしないと分かりません。自己判断で様子を見続けず、内視鏡検査を受けられる医療機関を早めに受診することが、早期発見につながります[1]。

貧血は、胃がんからの出血がゆっくり続くことで、自分では出血に気づかないまま進むことがあります。健康診断の血液検査で貧血を指摘されたときに、原因を調べる過程で胃がんが見つかることもあるため、「貧血くらいで」と軽く考えず、原因がはっきりしない貧血は医療機関で相談することが勧められます[1]。症状の有無にかかわらず、50歳を超えたら症状がなくても2年に1回の胃がん検診を受けることが、無症状の早期胃がんを見つける主な方法です[5]。

検診・診断の目安となる検査とステージ(TNM分類)

胃がんが疑われた場合は、まず「がんかどうかを確定するための検査」を受けます。がんであることが確定した場合には、治療方針を決めるために「がんの進行度(進み具合)を診断する検査」を受けます[2]。

検査 目的 備考
内視鏡検査 胃の内部を直接見て、がんが疑われる病変の場所・範囲・深さを調べる 疑わしい部分をつまんで取る「生検」を同時に行うことが多い[2]
X線検査(バリウム検査) バリウムを飲んで胃の形や粘膜の状態をX線写真で確認する 胃がん検診の検査方法の一つ[2]
生検・病理検査 採取した組織を顕微鏡で調べ、がんの有無と種類を診断する 薬が効きやすいかを調べるバイオマーカー検査を追加することもある[2]
CT検査・MRI検査 遠隔の臓器・リンパ節への転移や周囲臓器への浸潤を調べる 治療方針を決めるための進行度診断に使う[2]
PET検査 通常のCTでは判断しにくい転移・再発の有無を調べる 必要な場合に行う[2]
審査腹腔鏡 腹膜播種が疑われる進行例で、おなかの中を直接観察する 正確なステージ診断のために行うことがある[2]
腫瘍マーカー(CEA・CA19-9など) 手術後の再発や薬物療法の効果判定の参考にする 数値だけではがんの有無を診断できない[2]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 検査」(2026年01月13日更新)[2]

ステージ(病期)の決め方

胃がんのステージはⅠ期からⅣ期まであり、次の3種類のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決まります[3]。

カテゴリー 調べる内容
T(原発巣) がんが胃の壁のどこまで深く進んでいるか(深達度)[3]
N(領域リンパ節) 原発巣の近くのリンパ節に転移があるか[3]
M(遠隔転移) がんができた場所から離れた臓器やリンパ節への転移があるか[3]

治療方針を決めるためのステージには、画像診断や生検などの結果から推定する「臨床分類」と、手術で切除した病変を実際に調べた「病理分類」の2種類があり、術後にステージが変わることもあります[3]。臨床分類は治療方針を決めるときに使う分類で、画像診断・生検・審査腹腔鏡などの結果からがんの広がりを推定します。病理分類は、手術で切除した病変を病理診断し、実際のがんの広がりを評価した分類で、術後補助化学療法が必要かどうかなど手術後の治療方針を判断する際に使われます。この2つは手術前の推定と手術後の実際の結果であるため、一致しないこともあります[3]。

腫瘍マーカーだけでは診断できない理由

腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助、診断後の経過観察、治療の効果判定などを目的に行う検査です。腫瘍マーカーは主にがん細胞によって作られるタンパク質などの物質で、体の中にあるがんの量を反映する指標として使われますが、腫瘍マーカーの値だけではがんかどうかを診断することはできません。がんの進行や転移などの経過も、腫瘍マーカーの値の変化だけでは判断できないため、画像検査や病理検査など他の検査結果とあわせて、医師が総合的に判断します[2]。胃がんでは、手術後の再発や薬物療法の効果判定の参考として、CEAやCA19-9などが使われることがあります[2]。

ステージ別の標準治療:内視鏡的切除・手術・薬物療法・免疫療法

治療は、がんのステージ(進行度)や性質、体の状態などを総合的に検討し、本人の希望や生活環境も踏まえて、担当医と話し合って決めます[3]。遠隔転移がなく、がんの深さが粘膜までにとどまる場合は内視鏡治療が中心、粘膜下組織に達している場合は手術を検討、遠隔転移がある場合は薬物療法などを検討する、というのが大きな流れです[3]。

治療法 主な対象 内容
内視鏡的切除(EMR/ESD) 粘膜にとどまり、リンパ節転移の可能性が極めて低い早期がん 内視鏡的粘膜切除術(EMR、がんが2cm以下で潰瘍のないことが条件)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD、より大きい場合や潰瘍があっても行えることがある)。体への負担が少なく、胃を残せる[3]
手術(外科治療) 遠隔転移がなく内視鏡治療が難しい場合 開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術。胃の切除とあわせてリンパ節郭清(多くはD2)、消化管の再建を行う[3]
術後補助化学療法 手術後の病理分類でステージⅡまたはⅢの場合 目に見えない微小ながんによる再発を防ぐ目的。内服のみで1年間、または他剤併用で6カ月〜1年間が推奨される[3]
薬物療法(化学療法・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬) 手術でがんを取りきることが難しい進行・再発胃がん HER2・PD-L1(CPS)・CLDN18・MSI検査の結果に基づき、一次〜四次化学療法まで薬剤を選択する[3]
免疫療法 手術が難しい進行・再発胃がん 2025年12月時点で効果が証明されているのは免疫チェックポイント阻害薬を使う方法のみ。上記の薬物療法の一部として行われる[3]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 治療」(2026年01月13日更新/日本胃癌学会編.胃癌治療ガイドライン医師用 2025年3月改訂【第7版】.2025年,金原出版.より作成)[3][8]

内視鏡治療でがんが確実に取りきれ、リンパ節転移の可能性が極めて低い場合(根治度A・B)は経過観察となりますが、深さが粘膜下組織まで達しているなどでリンパ節転移の可能性がある場合(根治度C2)は、後日、追加で手術が必要になります[3]。内視鏡治療は体への負担が少なく、がんの切除後も胃が残るため食生活への影響が少ない一方、治療後に出血や胃に穴が開く「穿孔」が起こることがあります。出血や穿孔が起こると、吐き気・嘔吐、吐血や下血、腹痛などの症状が出るため、発熱やめまいなど体調の変化を感じたときは医師や看護師にすぐ伝えることが必要です[3]。手術後には、縫合不全、膵液漏、腹腔内膿瘍などの合併症が起こることがあり、痛みや発熱があらわれた場合は速やかに医療者へ伝えることが大切です[3]。胃を切除した後は、ダンピング症候群や貧血、骨粗しょう症などが起こりやすくなるため、食事の量や食べ方を工夫する必要があります(療養の章で詳しく説明します)[4]。

薬物療法だけで胃がんを完治させることは難しいですが、がんの進行を抑えたり、症状を和らげたりする効果があることが分かっています[3]。副作用の程度や種類には個人差があり、症状によって治療を延期したり薬の量を調整したりすることもあるため、気になる症状は我慢せず担当医・薬剤師・看護師に伝えることが勧められています[3]。

手術:胃の切除範囲とリンパ節郭清

手術では、がんと胃の一部または全部を取り除きます。同時に胃の周囲のリンパ節を取り除く「リンパ節郭清」や、食べ物の通り道をつくり直す「消化管再建」も行われます[3]。切除する胃の範囲はがんのある部位と進行度によって決まり、代表的な方法として胃全摘術、胃亜全摘術、幽門側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門側胃切除術があります[3]。リンパ節郭清では、胃のすぐそばと少し離れたリンパ節をあわせて切除する「D2リンパ節郭清」が標準的に行われます。早期がんでリンパ節転移の可能性が低い場合は、郭清の範囲を狭くした「D1リンパ節郭清」または「D1+リンパ節郭清」が行われます[3]。手術には、おなかを20cmほど切開する開腹手術と、小さな穴から専用の器具を入れて行う腹腔鏡下手術やロボット支援手術があり、後者が推奨されるかどうかはがんの進行度などによって異なります。実施できる施設は限られているため、可能かどうかは担当医に相談が必要です[3]。入院期間は手術前1〜2日程度、手術後7〜14日程度が一般的です[3]。

薬物療法で調べるバイオマーカー

一次化学療法を始める前には、複数のバイオマーカー検査を行い、その結果に基づいて薬剤を選ぶことが勧められています[3]。

検査 調べる内容
HER2検査 がん細胞の増殖を促すタンパク質HER2がどの程度あるかを調べる。胃がんの人の約15〜20%にHER2が過剰に現れているとされる[3]
PD-L1検査 PD-L1というタンパク質があるがん細胞の割合をCPS(Combined Positive Score)で示す[3]
CLDN18検査 CLDN18というタンパク質が現れているがん細胞の割合を調べる[3]
MSI検査 遺伝子の傷を修復する機能が働きにくい「MSI-High」の状態かどうかを調べる。胃がんの人の約5%がMSI-Highとされる[3]

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 治療」(2026年01月13日更新)[3]

再発した場合の治療

再発とは、治療によって見かけ上なくなったことが確認されたがんが、再びあらわれることです。原発巣のあった場所やその近くに再びあらわれる場合だけでなく、別の臓器で「転移」として見つかる場合も含めて再発といいます。胃がんの転移には、主に肝臓や肺などに転移する血行性転移、リンパ行性転移、腹膜播種があります。再発した場合の治療は、再発した部位、体の状態、前回の治療法とその効果などによって決まり、薬物療法(化学療法)による治療が一般的です[3]。

リハビリテーション

リハビリテーションは、がんや治療の体への影響からの回復力を高め、今ある体の能力を維持・向上させるために行われ、緩和ケアの一環として心身のつらさを和らげる目的でも行われます。治療中や治療後は体を動かす機会が減り身体機能が低下しやすいため、医師の指示のもとで筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動を無理のない範囲で行うことが勧められています。胃がんの手術後は体重が減少しやすく、それだけで立ちくらみなどが起きやすくなるため、具体的な方法は医師や看護師に確認するとよいでしょう[3]。

ステージ別5年生存率:数字の見方と実際のデータ

生存率とは、診断からある一定の期間が経過した時点で生存している割合のことで、がんの治療成績を示す指標の一つです。がんの診断から5年後の数値である「5年生存率」がよく参考にされます[6]。生存率には、死因に関係なくすべての死亡を計算に含める「実測生存率」、がん以外の死因の影響をできるだけ除くように補正した「相対生存率」、より正確にがん以外の死因を除いて計算する国際標準の「純生存率(ネット・サバイバル)」があります[6]。

以下は、国立がん研究センター がん対策研究所がん登録センターが公表している院内がん登録から算出した胃がんの5年生存率です。対象は2014〜2015年に、がん診療連携拠点病院等・小児がん拠点・都道府県推薦病院など全国447施設で診断・登録された胃がん126,675例(診断時の平均年齢71.3歳)で、2023年3月に公表されたデータです[7]。

胃がんの病期(ステージ)別5年生存率(院内がん登録2014-2015年、2023年3月公表)
指標 全症例 手術ありの症例 手術なしの症例 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期
ネット・サバイバル(純生存率) 70.2% 85.6% 9.1% 92.8% 67.2% 41.3% 6.3%
実測生存率 62.3% 76.0% 7.6% 82.0% 60.2% 37.4% 5.8%

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率最新集計値」(対象:院内がん登録2014-2015年5年生存率、集計対象施設数447施設、集計対象942,717例中の胃がん126,675例、生存状況把握割合98.1%、2023年3月公表)[7]

この数字の読み方:ステージⅠ期で見つかった場合のネット・サバイバルは92.8%と高く、早期発見が生存率に直結することを示しています。一方、Ⅳ期(遠隔転移がある段階)は6.3%と大きく下がります[7]。ただし、この数字は2014〜2015年に診断された患者のデータから算出されたものであり、その後の治療法の進歩(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の普及など)は反映されていません。がん情報サービス自身も「近年の状況やこれから治療を受ける人には当てはまらない可能性があります」と明記しています[6]。また、これは特定の医療機関(がん診療連携拠点病院等)に登録された患者の集団データであり、個々の患者の予後は、がんの組織型・部位・全身状態・治療への反応など多くの要因によって変わります。生存率の数字だけで一喜一憂せず、自分自身の状態については担当医に確認することが大切です。

世界的に見ると、胃がんは2024年時点で新規診断数980,286例(全がん種中5位)、死亡数641,554例(全がん種中5位)と、世界でも罹患数・死亡数ともに上位に入るがんです[9]。日本国内での胃がんの位置づけについては、今回参照した資料の範囲では国際比較の数値までは確認できませんでした。

他のがんとの生存率の比較(同じ調査データ内)

同じ院内がん登録2014-2015年5年生存率の調査では、大腸がん(結腸がん・直腸がん)のネット・サバイバルは全症例70.9%、Ⅰ期92.3%、Ⅱ期85.5%、Ⅲ期75.5%、Ⅳ期18.3%となっています[7]。胃がんとⅠ期の生存率(92.8%)はほぼ同水準ですが、Ⅲ期・Ⅳ期になると胃がん(Ⅲ期41.3%・Ⅳ期6.3%)は大腸がん(Ⅲ期75.5%・Ⅳ期18.3%)よりも生存率が低い傾向がみられます[7]。これは、がんの種類によって進行後の治療の効きやすさが異なるためであり、「進行胃がんだから絶望的」という単純な話ではなく、ステージごとに標準治療を積み重ねることが重要であることを示しています。

予防:ピロリ菌の除菌、定期検診、生活習慣の見直し

胃がんの発生要因には、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染と喫煙があり、食塩・高塩分食品の摂取も発生の危険性を高めることが報告されています[5]。胃がんの場合、ピロリ菌の除菌によって発生リスクが確実に低下することが明らかになっています。ただし、除菌をしても胃がんになる可能性はゼロにはならないため、除菌後も定期的な胃内視鏡検査を受けることが大切です[5]。

日本人を対象とした研究では、がん全般の予防に、禁煙、節酒、バランスのよい食事、活発な身体活動、適正体重の維持、感染予防が有効であることが分かっています。野菜や果物の摂取は胃がんの予防に効果的である可能性があると報告されています[5]。

胃がん検診の目安

厚生労働省の指針(「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」令和7年一部改正)により、胃がん検診の対象者は男女ともに50歳以上、検診間隔は2年に1回と定められています。検診内容は問診と胃部X線検査(バリウム検査)または胃内視鏡検査(胃カメラ)で、「要精密検査」となった場合は必ず精密検査(胃内視鏡検査)を受けることが勧められています。なお、当分の間、胃部X線検査は40歳以上を対象に1年に1回実施してもよいとされています[5]。市区町村の多くは、がん検診費用の多くを公費で負担しており、一部自己負担で受けられます[5]。がん検診は症状のない人を対象にした検査であり、気になる症状があるときは検診を待たずに医療機関を受診することが重要です[5]。厚生労働省の指針では、死亡率の減少効果が確実で、偶発症・過剰診断・偽陰性/偽陽性といった不利益が少ないがん検診だけが推奨されています[5]。胃がん検診の結果が「要精密検査」と判定された場合、それはがんが確定したという意味ではなく、精密検査(胃内視鏡検査)を受けて初めてがんかどうかが分かります。要精密検査を放置してしまうと検診を受けた意味がなくなってしまうため、必ず精密検査を受けることが大切です[5]。

緩和ケア・療養:治療中から続くサポート

緩和ケア/支持療法は、がんに伴う体と心のつらさ、社会的なつらさを和らげ、がんそのものによる症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするために行われる予防・治療・ケアです。がんと診断された時から、治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます[4]。標準治療をやめて緩和ケアだけに切り替える、という二者択一ではなく、標準治療と並行して受けられるものです。

胃がんが進行した場合は、消化管が狭くなることによる吐き気・嘔吐、腹水による張りや痛み、だるさなどの症状があらわれることがあります。胃の出口がふさがっている場合には、食事ができるようにバイパス手術やステント留置が検討されることもあります[4]。こうした症状や、本人にしか分からないつらさについても、遠慮せずに早めに医療者やがん相談支援センターに相談することが大切です。緩和ケアは、がん診療連携拠点病院で外来・入院いずれでも受けられ、地域の病院と連携して自宅でも継続できます[4]。がん相談支援センターは、そのがん診療連携拠点病院に通院・入院していない人でも、どなたでも無料で相談できる窓口です。治療費のこと、痛みやつらさ、仕事との両立、家族への伝え方など、幅広い相談に対応しています[3]。がんやがんの治療によって外見(頭髪・皮膚・爪など)が変化することがあり、その苦痛を軽減する支援として「アピアランス(外見)ケア」もあわせて相談できます[3]。

治療前に相談しておきたいこと

がんの治療が、性別にかかわらず妊孕性(にんようせい、子どもをつくる力)に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性を温存できるかどうかを治療開始前に担当医に相談することが勧められています[3]。また、喫煙を続けることは治療の効果を下げる原因になると考えられているため、喫煙している場合は治療が始まる前に早めの禁煙が勧められます。手術までに禁煙できていない場合、手術が延期されることもあります[3]。治療中や治療終了後の性交渉ががんの進行やパートナーに悪い影響を与えることはなく、控える必要はありませんが、薬物療法中やそのあとは、腟分泌物や精液に薬の成分が含まれることがあるため、パートナーへの影響を避けるためコンドームを使用し、治療中・治療終了後の一定期間は避妊することが勧められています[4]。

治療後の経過観察

内視鏡治療のあとは、病理診断の結果に応じて年1〜2回の内視鏡検査を基本に経過観察します。手術のあとは、少なくとも術後5年間は定期的な通院・検査が必要です。薬物療法のあとは、はじめは1週間ごと、安定してくれば2〜3週間ごとに通院し、進行・再発胃がんへの薬物療法では2〜3カ月に一度、術後補助化学療法では半年ごとにCT検査などでがんの状態を確認します[4]。

胃を切除した後の食事の工夫

胃を切除したあとは、小胃・無胃症状、ダンピング症候群、逆流性食道炎、貧血、骨粗しょう症などが起こりやすくなります。「少量ずつ」「何回かに分けて」「よくかんで」「ゆっくり」食べることを基本に、新しい胃腸の状態に慣れていくことが大切です。新しい状態に慣れるまでには数カ月〜1年ほどかかることもあり、自分に合った食事のしかたは栄養士などの医療者に相談することが勧められています[4]。胃全摘後は胃酸分泌の低下による鉄欠乏性貧血や、内因子分泌の低下によるビタミンB12欠乏(数年後にあらわれることが多い)が起こりやすいため、定期的な血液検査と、必要に応じた鉄剤・ビタミン剤の補充が行われます[4]。

よくある質問(FAQ)

胃がんは治りますか?
ステージによります。国のデータでは、がんが胃の壁の浅い部分にとどまるⅠ期で見つかった場合の5年生存率(ネット・サバイバル)は92.8%と高い一方、遠隔転移のあるⅣ期では6.3%まで下がります[7]。早期に見つけて内視鏡治療や手術を受けることが、治る可能性を大きく左右します。
胃がんの初期症状はありますか?
早期の段階ではほとんど自覚症状がなく、進行しても症状が出ないことがあります[1]。胃の痛みや不快感、胸やけ、吐き気などが出ることがありますが、これらは胃炎や胃潰瘍でも起こる症状です。体重減少や黒色便がある場合は、進行胃がんの可能性もあるため早めの受診が勧められます[1]。
ピロリ菌に感染していると必ず胃がんになりますか?
いいえ。ピロリ菌感染は胃がんになる可能性を高める要因ですが、感染している人がすべて胃がんになるわけではありません[1]。除菌によって発生リスクは確実に下がりますが、ゼロにはならないため、除菌後も定期的な胃内視鏡検査が勧められます[5]。
胃がん検診は何歳から、どのくらいの頻度で受ければよいですか?
厚生労働省の指針では、男女ともに50歳以上、2年に1回が対象・間隔とされています。検査は胃部X線検査(バリウム検査)または胃内視鏡検査です。なお当分の間、胃部X線検査は40歳以上を対象に1年に1回実施してもよいとされています[5]。
早期胃がんと進行胃がんはどう違いますか?
がんの深さ(深達度)で分けます。粘膜・粘膜下組織にとどまるものが「早期胃がん」、粘膜下組織を越えて固有筋層・漿膜まで広がるものが「進行胃がん」です[3]。早期であれば内視鏡治療だけで済むことが多く、体への負担が少なくて済みます[3]。
内視鏡治療だけで治る胃がんはどんなものですか?
がんが粘膜にとどまり、リンパ節転移の可能性がごく低く、一度に切除できると考えられる早期がんが対象です。内視鏡的粘膜切除術(EMR、2cm以下で潰瘍なし)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD、より大きい場合や潰瘍があっても可)が行われます[3]。切除後の病理診断でリンパ節転移の可能性がある場合は、追加で手術が必要になることもあります[3]。
手術後にはどんな後遺症がありますか?
胃を切除した範囲によって、ダンピング症候群(動悸・発汗・めまいなど)、貧血、骨粗しょう症、逆流性食道炎、小胃・無胃症状などが起こることがあります[4]。「少量ずつ」「よくかんで」「ゆっくり」食べることや、必要に応じた鉄剤・ビタミン剤の補充で対応します[4]。
手術ができない進行・再発胃がんでも治療法はありますか?
はい。細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を単独または組み合わせた薬物療法があります。HER2・PD-L1・CLDN18・MSIなどのバイオマーカー検査の結果に基づいて薬剤を選択します[3]。薬物療法だけで完治は難しいものの、がんの進行を抑えたり症状を和らげたりする効果が分かっています[3]。
ピロリ菌の除菌以外に、胃がんを予防する方法はありますか?
禁煙、塩分・高塩分食品を控えること、野菜や果物を含むバランスのよい食事、節酒、適正体重の維持などが、日本人を対象とした研究で胃がんを含むがん全般の予防に有効とされています[5]。50歳を超えたら2年に1回の胃がん検診を受けることも重要です[5]。
民間療法やサプリメントで胃がんを治せますか?
胃がんに対する標準治療(内視鏡治療・手術・薬物療法など)の代わりに、民間療法だけで治療することは推奨されていません。今回参照した資料には、民間療法が標準治療に代わる効果を示すデータは見当たりませんでした。治療の選択や併用については、必ず担当医に相談してください。

胃がんの医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16


胃がんの薬物療法における薬剤選択の最新の細かい組み合わせ(例えば四次化学療法以降の個別の薬剤の順番)については、今回参照した資料には全ての組み合わせのパターンまでは記載が見当たりませんでした。担当医と相談しながら、体の状態や検査結果に応じて決めていくことになります。

胃がんに関する記事一覧

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がんについて」2026年02月05日更新 ganjoho.jp/public/cancer/stomach/about.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 検査」2026年01月13日更新 ganjoho.jp/public/cancer/stomach/diagnosis.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 治療」2026年01月13日更新 ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 療養」2026年01月13日更新 ganjoho.jp/public/cancer/stomach/follow_up.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 予防・検診」2026年01月13日更新 ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 患者数(がん統計)」2026年01月13日更新 ganjoho.jp/public/cancer/stomach/patients.html
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率最新集計値」(院内がん登録2014-2015年5年生存率、2023年3月公表) ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/latest.html
  8. 日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン医師用 2025年3月改訂【第7版】」金原出版、2025年
  9. WHO国際がん研究機関(IARC)「GLOBOCAN 2024 Stomach Cancer Fact Sheet」 gco.iarc.who.int(GLOBOCAN 2024)