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JHO 病気ペディア

脂肪肝

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
食事で数値は改善する? 記事へ 果糖の摂りすぎは危険? 記事へ 肝臓の脂肪を減らす薬は? 記事へ 中等度はもう手遅れ? 記事へ

✦ 結論から言うと

日本消化器病学会・日本肝臓学会のガイドラインによれば、脂肪肝とは、肝臓を構成する肝細胞の5%以上に中性脂肪がたまった状態を指す[1]。同ガイドラインによれば、原因は大きく、お酒の飲み過ぎによる「アルコール性脂肪肝」と、お酒以外の要因による「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、新名称MASLD)」の2種類に分かれ、後者はやせ型の人にも起こりうる[1]。日本消化器病学会の発表によれば、多くは自覚症状がないまま経過するが、一部は炎症を伴う脂肪肝炎(NASH/新名称MASH)を経て、肝硬変・肝がんへ進むことがあるため、早期発見が重要とされている[3]。

原因 アルコールの多量摂取(男性エタノール換算30g/日以上、女性20g/日以上が目安)[1]、または肥満・糖尿病(インスリン抵抗性)・脂質異常症などの代謝異常[1]
主な症状 ほとんどの場合、自覚症状はない。かなり進行するまで症状が出にくい[3]
受診の目安 健康診断でALT値の異常や腹部超音波検査での脂肪肝所見を指摘されたとき[3]

「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓と、脂肪肝が気づかれにくい理由

脂肪肝の話に入る前に、肝臓という臓器の特徴を押さえておくと理解しやすい。日本肝臓学会の市民向け資料「肝臓病の理解のために」は、肝臓について、生命の維持に必要な様々な物質を作り、不要になったり有害であったりする物質を解毒・排泄するなど、多彩な働きをする「化学工場」であると説明している[9]。同資料では、1kg以上ある大きな臓器であるため、病気でその働きが損なわれても症状が現れにくく、「沈黙の臓器」と呼ばれていることも紹介されている[9]。あわせて日本肝臓学会の同資料は、肝臓は一部を摘出しても元の大きさに戻る「再生能力」が強いことも特徴として挙げている[9]。

この「症状が出にくい」という性質こそが、脂肪肝が見逃されやすい最大の理由である。肝臓は多少の負担がかかってもすぐには不調を訴えない臓器であるため、脂肪肝の段階はもちろん、その先の慢性肝炎や、線維化が進んだ段階になっても、自覚症状がないまま経過することが少なくない。日本肝臓学会の同資料は、肝硬変が進んでも肝臓の働きがまだ保たれている時期を「代償性肝硬変」と呼ぶ一方、肝臓の働きが低下した「非代償性肝硬変」になると、疲れやすさ・倦怠感・足のむくみ・お腹が張る腹水・こむら返りといった症状が現れてくると説明している[9]。つまり、症状が出た時点ではすでに病気がかなり進行している場合があるということであり、症状に頼らない定期的な検査による早期発見の重要性がここにある。

脂肪肝とは?なぜ肝臓に脂肪がたまるのか

日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同で作成した「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」では、肝臓の脂肪沈着は組織学的に5%以上を有意とし、これを脂肪肝と定義している[1]。摂取したエネルギーが消費エネルギーを上回ると、余ったエネルギーが中性脂肪として体内に蓄積され、その一部が肝臓にも貯蔵される。厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、この状態が続くと、肝細胞の中に脂肪の粒が増えていく[2]。

脂肪肝の原因は大きく2つに分かれる。ひとつはアルコールの多量摂取によるもので「アルコール性脂肪肝」と呼ばれ、もうひとつは肥満・糖尿病(インスリン抵抗性)・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病を背景に起こる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」である。厚生労働省のe-ヘルスネットも、原因の多くはアルコールの多量摂取(アルコール性脂肪肝)または不規則な生活習慣を背景とした肥満(非アルコール性脂肪肝)だが、一部は遺伝的な原因などでも発症し、肥満でないのに脂肪肝になる場合もあると説明している[2]。

アルコール性かどうかの目安について、同ガイドラインは「飲酒の上限はエタノール換算男性30g/日、女性20g/日が基準である」と明記している[1]。逆に言えば、この量に満たない飲酒量でも脂肪肝になっている場合は、アルコールだけが原因ではなく、代謝異常が関わっている可能性が高い。

出典:日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」[1]/JHO編集部が作図

種類の見分け方:アルコール性と非アルコール性、単純性とNASH、肥満型と非肥満型

脂肪肝は一つの病名ではなく、原因と進行度によっていくつかの種類に分かれる。まず原因による分類として、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)がある。日本肝臓学会の市民向け資料は、お酒の飲み過ぎは脂肪肝にとどまらず肝炎や肝硬変になることがよく知られているが、お酒をあまり飲んでいない非アルコール性の脂肪肝の人でも同じように肝臓の病気が進行してしまうことがあると注意を促している[6]。

次に、NAFLDの中でも進行度による分類がある。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、NAFLDを「非アルコール性脂肪肝(NAFL、以前の単純性脂肪肝)」と、進行性で肝硬変や肝がんの発症母地にもなる「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に分類すると定めている[1]。同ガイドラインはさらに、NASHは病理診断による脂肪変性・炎症・肝細胞傷害(風船様変性)が特徴であり、NAFLとNASHには相互移行があって、NAFLの一部は進行速度が遅いものの線維化が進行することもあると述べている[1]。つまり「単純性だから安全、NASHだから危険」と単純に切り分けられるわけではなく、単純性脂肪肝であっても定期的な経過観察が必要になる。

もう一つ重要な分類が、肥満型と非肥満型(やせ型)である。同ガイドラインは、一般的にBMI25未満に合併するNAFLDを非肥満NAFLDと定義しており、本邦の検診受診者を対象とした調査では、非肥満者におけるNAFLDの有病率は2002年の報告で11.2%、2014年の報告で15%であったと報告している[1]。「太っていないから脂肪肝にはならない」という思い込みは誤りであり、やせ型の人でも代謝異常やインスリン抵抗性があれば脂肪肝は起こりうる。

脂肪肝の分類の全体像
分類の軸 タイプA タイプB
原因による分類 アルコール性脂肪肝(エタノール換算 男性30g/日以上・女性20g/日以上)[1] 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/新名称MASLD)[1]
進行度による分類 単純性脂肪肝(NAFL):脂肪沈着のみで炎症は目立たない[1] 脂肪肝炎(NASH/新名称MASH):脂肪変性+炎症+肝細胞傷害を伴い、線維化が進みうる[1]
体格による分類 肥満型NAFLD(BMI25以上に合併)[1] 非肥満型(やせ型)NAFLD(BMI25未満に合併、有病率11.2〜15%と報告)[1]

出典:日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」[1]

名称の新旧:NAFLD・NASHはMASLD・MASHへ変更された

脂肪肝の病名は、近年国際的に見直しが進んでいる。欧州肝臓学会(EASL)は米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)と合同で、脂肪性肝疾患の病名と分類法を変更することを2023年6月24日に発表した[4]。日本消化器病学会と日本肝臓学会もこの変更に賛同し、その旨を同年9月29日に両学会のホームページで発表している[3]。

その後、日本語での新たな病名について両学会の委員会が合同で検討を続け、2024年8月22日に正式な日本語病名が決定・承認された[3]。これらの日本語病名は両学会の案として日本医学会に提出され、医学用語管理委員会でも承認されている[3]。

脂肪性肝疾患の名称変更(新旧対照)
旧名称(英語) 新名称(英語) 新しい日本語病名
(総称なし) Steatotic Liver Disease(SLD) 脂肪性肝疾患[3]
NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患) Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease(MASLD) 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患[3]
NASH(非アルコール性脂肪肝炎) Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis(MASH) 代謝機能障害関連脂肪肝炎[3]
ALD(アルコール性肝疾患) Alcohol Associated(Related)Liver Disease(ALD) アルコール関連肝疾患[3]
(区分なし) MetALD 代謝機能障害アルコール関連肝疾患[3]

出典:日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」2024年8月22日[3]

なお、日本消化器病学会は、MASLD・MetALD・ALDの診断に用いる心血管イベントのリスク因子基準やアルコール摂取量の基準について、わが国のメタボリック症候群・アルコール性肝障害の基準とは異なる部分があり、その整合性については両学会の委員会で検討が続いていると述べている[3]。つまり呼び方は変わったが、日本国内での具体的な運用(診断基準の当てはめ方)は、今後さらに調整される可能性がある段階にある。本記事では、読者の混乱を避けるため、これまで広く使われてきたNAFLD・NASHという表記を主に用い、新名称のMASLD・MASHを併記する。

診断の目安となる数値・基準

脂肪肝そのものは、血液検査でのALT値の異常や、腹部超音波検査(腹部エコー)で脂肪の沈着を示す所見が確認されれば診断できる。一方、NASH(脂肪肝炎)であるかどうかは、肝臓の組織を直接調べる肝生検をしないと確実には診断できないと、日本消化器病学会・日本肝臓学会の患者向けガイドは説明している[6]。そこで肝生検を必要とする人を絞り込むために、血液検査だけで計算できる「線維化スコア」が広く用いられている。

NAFLD/NASH診療ガイドライン2020によれば、代表的なスコアがFIB-4indexで、年齢・AST・ALT・血小板数から計算する[1]。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、FIB-4indexのカットオフ値を低閾値1.30未満、中間域1.30〜2.67、高閾値2.67以上と設定しており、わが国の報告では1.30未満の場合、高度線維化を否定できる可能性(陰性的中率)は99%であるとしている[1]。同ガイドラインは、FIB-4indexとNAFLD fibrosis score(NFS)について、日常臨床で測定可能な因子を組み合わせており線維化進行例の診断能も高いとして、その使用を強い推奨(推奨の強さ:強、エビデンスレベルA)としている[1]。

FIB-4indexによる肝線維化リスクの目安
FIB-4indexの値 目安となるリスク 対応の目安
1.30未満 低リスク(高度線維化の陰性的中率99%と報告)[1] 血液検査などで1〜2年ごとに経過観察[1]
1.30〜2.67 中間域 専門医療機関での線維化評価(エラストグラフィなど)を検討[1]
2.67以上 高リスク 肝生検またはエラストグラフィを推奨[1]

出典:日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」[1]/FIB-4index計算式は日本肝臓学会のページでも公開されている[7]

FIB-4indexは無料の計算サイトで算出できるが、日本肝臓学会は年齢の因子が計算式に含まれるため、年齢によって診断率が変わりうる点にも注意を促している[1]。数値だけで自己判断せず、健康診断や診療の場で医師とともに確認することが基本になる。

症状・検査:なぜ気づきにくいのか

脂肪肝の最大の特徴は、ほとんどの場合、自覚症状がないことである。日本消化器病学会・日本肝臓学会の患者向けガイドは、「脂肪肝では自覚症状は何もない人がほとんどです。なかにはだるさを訴える人もいますが、肝臓に特有の症状というわけではありません」と同ガイドは述べ、NAFLD・NASHはかなり病気が進行しない限りほとんど症状がないため、自覚症状だけで進行程度を把握することはできないとしている[6]。

そのため、脂肪肝の発見は多くの場合、健康診断がきっかけになる。同ガイドは、健康診断やかかりつけ医から肝障害(血液検査でALT値が基準値異常)や腹部超音波検査の結果として「脂肪肝(もしくは疑い)があります」と言われた場合には、NAFLDの進行程度の評価の中でもっとも重要な肝臓の硬さ(線維化)を、簡便な方法で評価してもらうことを勧めている[6]。血液検査ではALT・AST・γ-GTPなどが、画像検査では腹部超音波検査(腹部エコー)が基本の検査となる。

厚生労働省のe-ヘルスネットも、脂肪肝は「肝臓に過剰な脂肪が蓄積された状態。要因として多量飲酒や肥満があり、放置すると肝炎や肝硬変などを引き起こす」とe-ヘルスネットは定義したうえで、アルコール性・非アルコール性いずれの脂肪肝炎も、進行すると肝硬変や肝臓がんに至ると注意を促している[8]。「症状がない=心配ない」ではなく、「症状がないからこそ検査で見つけるしかない」という点が、脂肪肝という病気の特徴である。

アルコール性脂肪肝・非アルコール性脂肪肝との見分け方

脂肪肝という診断名が同じでも、原因がアルコールなのか代謝異常なのかによって、その後の対応は変わってくる。日本肝臓学会の市民向け資料は、アルコール性肝障害は一般的に飲酒量が多いほど、飲酒期間も長いほど進行しやすいとしつつも、若年者の肝硬変や、女性の中には比較的少ない飲酒量で短期間に肝硬変になる人がいるなど、個人差や性差が大きい病気であると説明している[8]。同サイトによれば、はじめに起こるのはアルコール性脂肪肝で、飲みすぎれば多くの人に発生し、一部の人はアルコール性肝炎になり、まれに重症化して死亡することもあるとされる[8]。

項目 アルコール性脂肪肝 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
主な原因 エタノール換算で男性30g/日以上、女性20g/日以上の飲酒を続けること[1] 肥満・糖尿病(インスリン抵抗性)・脂質異常症・高血圧などの代謝異常[1]
体格との関係 飲酒量が原因のため、肥満を伴うとは限らない 肥満型が多いが、非肥満(やせ型)でも起こる(有病率11.2〜15%)[1]
進行した場合 アルコール性肝炎を経て肝硬変に進行しうる[8] NASH(MASH)を経て肝硬変・肝がんに進行しうる[1]
対応の基本 禁酒・節酒が最優先[8] 食事療法・運動療法による減量が基本[3]

見分けるカギ:飲酒量の申告に加えて、体格(肥満の有無)だけで判断しないことが重要である。同ガイドラインが示すとおり非アルコール性でもやせ型で起こりうるため、飲酒量が基準以下であっても油断せず、血液検査・画像検査での確認が欠かせない[1]。

進行リスク:放置すると肝硬変・肝がんに至ることがある

「脂肪肝は放置してよい」という理解は誤りである。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、NASH(現在の呼称ではMASH)を「進行性で肝硬変や肝がんの発症母地にもなる」病態と位置づけている[1]。また、同ガイドラインはNAFL(単純性脂肪肝)についても「進行速度は遅いが線維化が進行することもある」と述べており、NASHでなければ安全というわけではない[1]。

アルコール性脂肪肝についても同様の進行がありうる。厚生労働省のe-ヘルスネットは、アルコールの飲みすぎにより肝臓病が起こり、はじめは脂肪肝で、飲み続けるとアルコール性肝炎になり、さらに飲み続けると肝硬変という最終段階に入ると説明している[8]。また、e-ヘルスネットの関連記事では、アルコール性と非アルコール性の脂肪肝炎は組織像が類似しており、両者とも進行すると肝硬変や肝臓がんに至ると述べられている[8]。

ここで重要なのは、脂肪肝の多くは自覚症状がないまま、この進行が起こりうるという点である。だからこそ、患者向けガイドが勧めるとおり、健康診断でのALT異常や脂肪肝の指摘を「よくあること」として放置せず、線維化スコア(FIB-4indexなど)による評価につなげることが、肝硬変・肝がんへの進行を防ぐ最初の一歩になる[6]。

また、NAFLD/NASHは肝臓のがん(肝細胞癌)だけでなく、肝臓以外のがんとの関連も報告されている。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、NAFLD/NASHでは大腸がんの発生頻度、および女性における乳がんの発生頻度が増加すると述べている[1]。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020が引用する、韓国で約8,721人を約7.5年間経過観察した研究では、男性の大腸がんのハザード比2.01、女性の乳がんのハザード比1.92と発生頻度の増加が報告されており、この研究では肝臓の線維化マーカーが増加するほど、がんの発生リスクも増加する傾向が示されたとされている[1]。これは、脂肪肝の管理が肝臓だけでなく、大腸がん検診・乳がん検診など、他の健康診断を併せて受ける動機にもなりうることを意味している。

治療の基本:食事・運動・7%の減量、そして薬物療法の位置づけ

脂肪肝、特にNAFLD・NASHの治療の基本は、食事療法と運動療法による減量である。日本消化器病学会・日本肝臓学会の患者向けガイドは、NASHの患者で肥満がある場合には、体重の7%を目標に減量し、徐々に標準体重を目指すことが勧められるとしたうえで、「例;体重90kgの場合、まずマイナス6kgを目標にしましょう」という具体例を示している[6]。急激な減量を目指すのではなく、段階的な目標設定が推奨されている点が特徴である。

NAFLD/NASH診療ガイドライン2020のアルゴリズムでも、肥満を伴う症例に対しては、まず食事・運動療法による減量を行い、その効果が不十分な場合に、基礎疾患(2型糖尿病・脂質異常症・高血圧など)に応じた薬物療法や、高度肥満例での外科療法が検討される流れが示されている[1]。つまり薬物療法は、生活習慣の改善を土台としたうえで検討される選択肢であり、いきなり薬に頼る治療ではない。

薬物療法については、近年MASH(NASH)を対象とした治療薬の研究・開発が進んでいる段階にあるが、本記事では特定の薬剤の効果を強調することは避ける。どの薬が有効かは病態や合併症によって異なり、専門の医療機関での評価が前提になる。ガイドラインが示すのは、あくまで「生活習慣の改善が基本、薬物療法はその上に積み上げる選択肢」という位置づけである[1]。

体重・体格ごとの考え方

体重(BMI25以上)が基準を超えている場合は、まず食事量の見直しと、無理のない範囲での運動習慣づけから始めるのが基本である。逆にBMI18.5未満のやせている場合は、過度なダイエットを控えるよう、患者向けガイドは注意を促している[6]。同ガイドはあわせて、1日3食をきちんととり、バランスのよい食事を心がけること、食べ過ぎに注意し、果糖を含む飲料の摂りすぎに気をつけることを挙げている[6]。患者向けガイドによれば、腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)が基準を超えている場合も、メタボリックシンドロームとの関連から注意が必要とされる[6]。

日本肝臓学会の市民向け資料「肝臓病の理解のために」は、脂肪肝を含む肝疾患における生活習慣改善の目安として、標準体重を目標とした食事療法・運動療法を挙げている。事務職では標準体重×25〜30kcal、重労働では標準体重×35kcalを目安に食事量を設定し、脂肪の摂取を減らすよう努めることが勧められている[9]。同資料では、運動療法として速足で歩くなどの有酸素運動を少なくとも1日20分程度行う必要があるとされている[9]。特別なジムや器具を要する運動ではなく、日常生活の中で継続できる有酸素運動が基本になる。

飲酒量の目安についても、同資料は具体的な換算を示している。純アルコール量は「飲酒量(mL)×濃度(%)×アルコールの比重(0.8g/dL)÷100」で計算でき、20〜30gまでであれば通常は肝障害をきたさないとされ、これは日本酒1合、ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯、ワイングラス2杯にほぼ相当するとしている[9]。ふだん何気なく飲んでいる量が、この目安のどのあたりにあるかを一度確認しておくと、節酒の具体的な目標が立てやすくなる。

純アルコール20〜30gの目安となる酒量
お酒の種類 目安量
日本酒 1合程度[9]
ビール(中瓶) 1本程度[9]
ウイスキー(ダブル) 1杯程度[9]
ワイン グラス2杯程度[9]

出典:日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」[9]

経過観察の頻度と、治療の場を移すタイミング

脂肪肝は一度診断されたら終わりではなく、継続的な経過観察が前提になる。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020が示すフォローアップの考え方では、FIB-4indexが低リスク(1.30未満)の場合は血液検査などで1〜2年ごとに確認し、中間域(1.30〜2.67)の場合は専門医療機関での線維化評価(肝生検またはエラストグラフィ)を考慮し、高リスク(2.67以上)の場合は肝生検またはエラストグラフィを推奨するという段階的な対応が示されている[1]。

また、NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では、代謝性の危険因子(肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧など)を有する場合、血小板数・FIB-4indexを2〜3年ごとに確認することが提示の一部として挙げられている[1]。これは、脂肪肝そのものが軽症に見えても、代謝異常を併せ持つ人は将来的なリスクが変わりうるため、定期的な見直しが必要という考え方に基づく。かかりつけ医での経過観察を続けるか、肝臓専門医のいる医療機関に紹介してもらうかの判断は、これらのスコアと代謝性の危険因子の有無によって変わってくる。

民間療法・お茶・ハーブティーの科学的根拠

お茶やハーブティーなどの民間療法について、脂肪肝そのものを改善・治療する効果を裏づける確立した科学的根拠は、今回参照した日本肝臓学会・日本消化器病学会などの公的資料には見当たりませんでした。以下は「害がない範囲で日常に取り入れる」という観点での整理であり、治療の代わりになるものではありません。

脂肪肝に関する情報を探していると、特定のお茶やハーブティー、サプリメントが「肝臓によい」とうたわれているのを目にすることがある。しかし、これらの民間療法について、本記事が根拠として参照した日本消化器病学会・日本肝臓学会のガイドラインおよび患者向けガイドには、特定のお茶やハーブティーが脂肪肝を改善させるという記載は見当たらなかった[1]。

医薬品医療機器等法(薬機法)および景品表示法の観点から、医薬品として承認されていない食品やお茶について、症状を治す・数値を良くするといった断定的な表現を用いることは適切ではない。仮に特定の成分について基礎研究や小規模な研究での報告があったとしても、それがヒトでの十分な臨床的根拠を意味するとは限らず、ガイドラインが推奨する治療法として位置づけられているわけでもない。

脂肪肝の治療として、日本のガイドラインが根拠とともに示しているのは、あくまで食事療法・運動療法による7%程度の減量と、必要に応じた薬物療法・専門的な経過観察である[1]。お茶やハーブティーを楽しむこと自体を否定するものではないが、それらを脂肪肝の「治療」や「改善」の主な手段として位置づけることは、現時点で参照した資料からは支持されない。脂肪肝の管理は、あくまで医療機関での評価と、食事・運動という基本に沿って行うことが重要である。

受診の目安:どんなときに医療機関を受診すべきか

脂肪肝は自覚症状に乏しいため、「症状が出てから受診する」という考え方では手遅れになりかねない。受診を検討すべき主な場面は次の通りである。

すぐに医療機関(消化器内科・肝臓内科)を受診:患者向けガイドが示す目安として、健康診断で「要精密検査」「肝機能異常」「脂肪肝の疑い」と指摘された場合[6]。すでに肝硬変や肝がんを疑う異常(画像検査での所見など)を指摘された場合。

早めに受診を検討:同ガイドが示す目安として、健康診断でALT値の異常や腹部超音波検査での脂肪肝所見を指摘されたが、まだ精密検査を受けていない場合[6]。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の基準で、飲酒量がエタノール換算で男性30g/日、女性20g/日を継続的に超えている場合[1]。

生活改善のうえ経過観察:健康診断で肥満・脂質異常症・血糖値の異常を指摘され、脂肪肝の可能性が疑われるが、まだ確定診断を受けていない場合。患者向けガイドの考え方に沿い、まずは食事・運動の見直しと、次回健康診断での再評価を計画する[6]。

NAFLD/NASH診療ガイドライン2020が示す一次スクリーニングの考え方でも、腹部超音波検査で脂肪肝の所見がある場合には、FIB-4indexやNFSを含むスコアリングで線維化を評価し、進行が疑われる場合には専門医療機関を紹介することが提示されている[1]。かかりつけ医で完結させず、必要に応じて肝臓専門医のいる医療機関につなげてもらうことが、進行を防ぐうえで重要になる。

日本のガイドラインと国際的な議論との関係

脂肪肝の呼び方や診断の枠組みは、国際的な議論を踏まえて日本国内でも見直しが進められている。2023年6月24日、欧州肝臓学会(EASL)・米国肝臓病学会(AASLD)・ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)が合同で、NAFLD・NASHという呼び方から、MASLD・MASHという新しい呼び方への変更を国際的に発表した[4]。この背景には、「非アルコール性」「脂肪」という表現が、患者にとってスティグマ(負のレッテル)になりうるという国際的な懸念があった。

日本消化器病学会・日本肝臓学会は、この国際的な変更にいち早く賛同を表明した(2023年9月29日)が、日本語の病名を正式に決定するまでには、約1年近くの検討期間を要している(正式決定は2024年8月22日)[3]。この間、日本消化器病学会は、MASLD等の診断に用いる心血管リスク因子基準やアルコール摂取量の基準が、日本国内のメタボリックシンドロームやアルコール性肝障害の基準とは異なる部分があることを明らかにし、その整合性について両学会で検討を続けていると発表している[3]。

ここが、国際的な議論をそのまま輸入するだけでは分からない部分である。国際的な新名称・新基準が発表されても、それを日本人の体格やアルコール代謝の特性に合わせてどう当てはめるかは、日本の学会が独自に検討している段階にある。したがって、海外の情報サイトでMASLD・MASHの基準を読んでも、それがそのまま日本の健康診断や診療の現場での基準と一致するとは限らない点に注意が必要である。

脂肪肝は肝臓だけの問題ではない:脳・心血管疾患との関係

脂肪肝、特にNAFLD/NASHは、肝臓の病気にとどまらず、脳・心血管疾患のリスクとも関連する全身の病態として位置づけられている。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020には「脳・心血管疾患系リスクの絞り込みフローチャート」が示されており、NAFLDと診断された人について、脳・心血管病の既往や心電図異常の有無、血小板数・FIB-4indexなどを確認し、代謝性の危険因子(肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧など)を有する場合は、これらを2〜3年ごとに確認していく流れが提示されている[1]。

同ガイドラインは、心血管病のリスク評価には日本循環器学会・日本動脈硬化学会のガイドラインを参考にすることや、頸動脈エコーなどでの評価を考慮することにも触れている[1]。つまり、脂肪肝の診断を受けた場合、肝臓の数値(ALT・AST・FIB-4indexなど)だけでなく、血圧・血糖値・脂質(コレステロール・中性脂肪)といった、脳卒中や心筋梗塞のリスクに関わる項目も合わせて確認しておくことが、ガイドラインの考え方に沿った対応になる。

専門医療機関への紹介:肝疾患診療連携拠点病院という選択肢

脂肪肝の線維化評価や治療方針の判断に迷う場合、かかりつけ医だけで抱え込まず、肝臓の専門的な診療を行う医療機関に紹介してもらうという選択肢がある。日本には、都道府県ごとに「肝疾患診療連携拠点病院」が指定されており、国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 肝炎情報センターが、これらの拠点病院と連携した情報提供や、肝疾患相談・支援センターの案内を行っている[10]。

健康診断で脂肪肝を指摘されたあと、「どの科を受診すればよいか分からない」「かかりつけ医に相談しづらい」といった場合は、こうした拠点病院や、各都道府県の肝疾患相談・支援センターに問い合わせるという方法もある。かかりつけ医からの紹介状があれば、より専門的な評価(エラストグラフィなど)へスムーズにつながりやすい。

脂肪肝と糖尿病の関係

脂肪肝は、糖尿病と密接な関係がある。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020のアルゴリズムでも、肥満を伴うNAFLD/NASH患者の治療において、2型糖尿病(インスリン抵抗性)の有無が、薬物療法の選択に関わる重要な因子として位置づけられている[1]。インスリン抵抗性があると、脂肪が肝臓に蓄積しやすくなる一方で、脂肪肝そのものがインスリン抵抗性を悪化させるという、相互に影響し合う関係にあるとされる。

糖尿病の詳しい基準や治療については、当サイトの糖尿病に関するまとめ記事でも解説している。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の考え方に沿えば、脂肪肝の診断を受けた場合、血糖値やHbA1cについても合わせて確認しておくことが勧められる[1]。

→ 糖尿病に関するまとめ記事はこちら

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

脂肪肝そのものの外来診療(血液検査・腹部超音波検査など)は、通常の保険診療の範囲内で行われる。線維化が進行し、精密検査(エラストグラフィ・肝生検など)や入院を要する場合は、費用がさらにかかることがあり、高額療養費制度の対象になりうる。具体的な自己負担額は年齢・所得区分・医療機関によって異なるため、上記の制度概要とあわせて、受診先の医療機関や加入している健康保険組合に確認することを勧める。

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まとめ:脂肪肝と向き合う3つのポイント

ここまでの内容を、3つのポイントに整理する。第一に、NAFLD/NASH診療ガイドライン2020によれば、脂肪肝は肝細胞の5%以上に中性脂肪がたまった状態であり、原因はアルコールの多量摂取(男性30g/日、女性20g/日が目安)と、肥満・糖尿病などの代謝異常の大きく2つに分かれ、後者はやせ型でも起こりうる[1]。第二に、同ガイドラインが示すとおり、単純性脂肪肝(NAFL)であってもNASH(MASH)であっても、進行速度に差はあれ肝硬変・肝がんへ進みうるため、「脂肪肝だから安心」とは言えない[1]。第三に、患者向けガイドが示す治療の基本は食事療法・運動療法による体重の7%程度の減量であり、お茶やハーブティーなどの民間療法に、それを裏づけるだけの根拠は確認できなかった[6]。

日本消化器病学会・日本肝臓学会の患者向けガイドによれば、脂肪肝は国内に1,000万人以上いると考えられているありふれた状態でありながら、自覚症状に乏しいために見過ごされやすい[6]。健康診断でのALT異常や脂肪肝の指摘を放置せず、FIB-4indexなどのスコアで線維化の程度を確認し、必要に応じて肝臓専門医のいる医療機関につなげてもらうことが、早期発見・早期対応の具体的な一歩になる。

よくある質問(FAQ)

脂肪肝は自然に治りますか?
患者向けガイドによれば、脂肪肝の主な治療は食事療法・運動療法による減量であり、体重の7%程度の減量が目標として示されている[6]。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020が示すように、生活習慣の見直しによって検査数値が良くなる例は報告されているが、「何もせず自然に治る」とは限らず、原因(飲酒・代謝異常)を放置すれば進行しうる[1]。定期的な検査での確認が前提になる。
脂肪肝と診断されたら、お酒はやめるべきですか?
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の基準で、飲酒量がエタノール換算で男性30g/日、女性20g/日を超えている場合は、アルコール性の要因が関わっている可能性があり、節酒・禁酒が優先される[1]。e-ヘルスネットの解説によれば、基準量以下であっても、非アルコール性の要因(肥満・代謝異常)が背景にある場合は、飲酒量だけでなく食事・運動の見直しが必要になる[8]。
やせているのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020によれば、一般的にBMI25未満に合併するNAFLDは「非肥満NAFLD」と定義され、国内の検診データでは有病率11.2〜15%程度と報告されている[1]。肥満でなくても、インスリン抵抗性や脂質代謝の異常、遺伝的な要因などが背景にある場合があり、体格だけで安心はできない[2]。
NAFLDとNASHは何が違いますか?
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020によれば、NAFLDは非アルコール性の脂肪性肝疾患全体を指す総称で、その中に、脂肪の沈着のみで炎症が目立たない単純性脂肪肝(NAFL)と、脂肪変性に加えて炎症・肝細胞傷害を伴い、線維化が進みうる脂肪肝炎(NASH)が含まれる[1]。同ガイドラインによれば、NASHのほうが肝硬変・肝がんへ進行するリスクが高いとされる[1]。
NAFLD・NASHという呼び方は古いのですか?
2023年6月に欧米の学会が国際的に名称変更を発表し、日本の学会も賛同、2024年8月に日本語での正式名称(MASLD=代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、MASH=代謝機能障害関連脂肪肝炎)が決定された[3]。ただし国内の診断基準との整合性は現在も検討が続いており、NAFLD・NASHという呼び方も引き続き広く使われている[3]。
健康診断でALTが高いと言われました。すぐ精密検査が必要ですか?
患者向けガイドによれば、ALT値の異常や腹部超音波検査での脂肪肝所見を指摘された場合、NAFLDの進行程度の評価でもっとも重要な肝臓の線維化を、簡便な方法(FIB-4indexなど)で評価してもらうことが勧められている[6]。すぐに肝生検が必要になるとは限らないが、まず線維化スコアでの評価につなげることが大切である。
FIB-4indexはどこで計算できますか?
FIB-4indexは、年齢・AST・ALT・血小板数から計算するスコアで、無料の計算サイトが日本肝臓学会のページからも案内されている[7]。ただし数値の解釈(低リスク・中間域・高リスクのどれに当たるか、その後どうするか)は自己判断せず、医師と相談することが基本になる[1]。
脂肪肝を放置すると、どうなりますか?
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では、NASH(MASH)は「進行性で肝硬変や肝がんの発症母地にもなる」と位置づけられており、単純性脂肪肝(NAFL)であっても、進行速度は遅いものの線維化が進むことがあるとされている[1]。患者向けガイドが強調するとおり、多くの場合、自覚症状がないまま進行しうるため、「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、定期的な検査での確認が重要である[6]。
脂肪肝に効果があるお茶やサプリメントはありますか?
本記事が参照した日本の学会のガイドライン・患者向けガイドには、特定のお茶やハーブティー、サプリメントが脂肪肝の状態を良くするという記載は見当たらなかった[1]。医薬品として承認されていない食品について、症状を治す・数値を良くすると断定することは、薬機法・景品表示法の観点からも適切ではない。ガイドラインが根拠とともに示す治療の基本は、食事療法・運動療法による減量である[1]。
脂肪肝の人はどれくらいいるのですか?
日本消化器病学会・日本肝臓学会の患者向けガイドは、NAFLDの有病率は国内で9〜30%と報告されており、患者数は全国で1,000万人以上いると考えられていると述べている[6]。同ガイドによれば、肥満やメタボリックシンドロームの患者の増加に伴い、患者数は増えているとされる[6]。
妊娠中や持病がある場合、この記事の内容はそのまま当てはまりますか?
本記事は一般的な情報であり、妊娠中の方、持病(腎臓病・心疾患など)がある方、すでに肝硬変の診断を受けている方については、基準の当てはめ方や治療方針が異なる場合がある。個別の状況については、事前に主治医に確認してほしい[1]。
脂肪肝と糖尿病は関係がありますか?
関係がある。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020のアルゴリズムでも、2型糖尿病(インスリン抵抗性)の有無は、NAFLD/NASHの治療方針を左右する重要な因子として位置づけられている[1]。脂肪肝の診断を受けた場合は、血糖値やHbA1cもあわせて確認することが勧められる。
脂肪肝は他のがんとも関係がありますか?
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、NAFLD/NASHでは大腸がんおよび女性の乳がんの発生頻度が増加すると報告している[1]。ガイドラインが引用する研究では線維化マーカーが上がるほどリスクが上がる傾向も示されており、脂肪肝の管理は肝がんだけでなく、大腸がん・乳がんの検診を定期的に受けることとあわせて考えることが勧められる[1]。
肝硬変まで進んでしまったら、もう治療法はないのですか?
日本肝臓学会の市民向け資料によれば、肝臓の働きがまだ保たれている「代償性肝硬変」の段階と、働きが低下した「非代償性肝硬変」の段階とでは、対応が異なる[9]。同資料によれば、非代償性肝硬変でみられる浮腫・腹水には利尿薬、意識障害(肝性脳症)の予防・治療には便通の改善薬や腸内細菌を調節する薬、栄養状態の改善にはアミノ酸製剤による栄養療法などが用いられるとされている[9]。進行した段階でも打つ手がなくなるわけではなく、専門医療機関での継続的な管理が重要になる。
子どもや若い世代でも脂肪肝になりますか?
本記事が参照した資料には、小児・若年層に特化した有病率や基準についての詳細な記載は見当たらなかった。年齢を問わず、肥満・偏った食生活・運動不足といった生活習慣が関わる可能性はあるため、成長期の子どもについては小児科・小児専門の医療機関に相談することが望ましい。

妊娠中の方、腎臓病・心疾患などの持病がある方、すでに肝硬変やその他の肝疾患の診断を受けている方については、本記事で示した基準や対応の目安がそのまま当てはまらない場合がある。個別の診断・治療方針は、事前に主治医・専門医療機関に確認してほしい[1]。

本記事で扱いきれなかった、脂肪肝と他の癌との関連の詳細や、薬物療法各剤の臨床試験データの細部については、今回参照した資料には記載が見当たらなかった、あるいは専門的な検討が今も続いている段階であり、断定的な記載を避けた。

参考文献

  1. 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」2020年 jsge.or.jp/nafldnash2020_2_re.pdf ↩
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝」(用語辞典) kennet.mhlw.go.jp/脂肪肝
  3. 日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」2024年8月22日 jsge.or.jp/20240820-3 ↩
  4. 日本消化器病学会「再掲 NAFLDの名称と分類法の変更について」2023年11月21日 jsge.or.jp/20231121 ↩
  5. 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」PDF版 2020年 jsge.or.jp/nafldnash2020.pdf
  6. 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASHガイド2023(患者さんとご家族のための編)」2023年 jsge.or.jp/nafld_2023.pdf ↩
  7. 日本肝臓学会「FIB-4 index計算サイトのご案内(EAファーマ提供)」 jsh.or.jp/eapharma
  8. 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝」関連記事一覧(アルコール性肝炎と非アルコール性脂肪性肝炎/アルコールと肝臓病) kennet.mhlw.go.jp/fatty-liver
  9. 日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」市民向け資料 jsh.or.jp/understanding_liver_disease.pdf
  10. 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「肝疾患診療連携拠点病院」 kanen.jihs.go.jp(肝炎情報センター)