陰嚢の腫れ・痛み
最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)
✦ 結論から言うと
陰嚢(いんのう)が腫れる・痛む原因は一つではなく、精巣捻転(せいそうねんてん)・精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)・陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)・精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)・鼠径(そけい)ヘルニア・精巣腫瘍(せいそうしゅよう)など少なくとも6つの病気が考えられます[1]。日本泌尿器科学会は、これらの病気のうち急激に発症するものを「急性陰嚢症」と呼び、なかでも精巣捻転は精索(せいさく)がねじれて血流が止まり、6〜12時間以内に治療しないと精巣が壊死(えし)する緊急疾患だとしています[1]。突然の激しい陰嚢の痛みが出た場合は、様子を見ず、すぐに救急外来(泌尿器科・小児科)を受診してください。
| 主な原因 | 精巣捻転・精巣上体炎・陰嚢水腫・精索静脈瘤・鼠径ヘルニア・精巣腫瘍など[1] |
|---|---|
| 最も危険な原因 | 精巣捻転(発症から6〜12時間以内の治療が必須)[1] |
| 受診の目安 | 突然の激しい痛み・急な腫れは今すぐ救急外来へ。痛みのないしこりも放置せず泌尿器科を受診[1] |
陰嚢が腫れる・痛む仕組みとは?まず知っておきたい全体像
陰嚢は左右の精巣(睾丸)と精巣上体(副睾丸)、それらにつながる精索(血管や精管を含む構造物)を包んでいる袋です。この中のどの部分に何が起きるかによって、症状の出方も緊急度もまったく異なります。日本泌尿器科学会は、陰嚢内が痛む病気として、精巣捻転、精巣上体炎(別称:副睾丸炎)、精巣垂(せいそうすい)や精巣上体垂の捻転、精巣炎を挙げ、これらは比較的急速に発症するため「急性陰嚢症」と呼ばれるとしています[1]。また、そけいヘルニアを陰嚢の症状と誤ってとらえる場合もあると注意を促しています[1]。
一方で、痛みを伴わずにゆっくり腫れる場合は、陰嚢水腫や精索静脈瘤、精巣腫瘍の可能性が高くなります。「痛いかどうか」「急に腫れたか、じわじわ大きくなったか」「発熱を伴うか」の3点が、原因を見分ける最初の手がかりになります。下の図は、代表的な急性陰嚢症である精巣捻転で何が起きているかを、正常な状態と比較したものです。
出典:日本泌尿器科学会「陰嚢内が痛い」(urol.or.jp)[1]
①精巣捻転:様子見厳禁、6〜12時間が勝負の緊急疾患
精巣捻転は、精巣がそれにつながる精索を軸としてねじれ、血管が締め付けられて血流が途絶し、精巣が壊死する病気です[1]。日本泌尿器科学会によると、思春期前後の青少年に多く、寝ているときに発症することが多いのが特徴で、激しい陰嚢部痛で始まり、次第に陰嚢内容が腫れてくるとされています[1]。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、症状をうまく伝えられない年少児では「おなかが痛い」という訴えのために見落とされることがあると同学会は注意を呼びかけています[1]。
ここが最重要ポイントです。日本泌尿器科学会は「6~12時間以内に血液の流れを回復しないと精巣は壊死(えし)しますので、発症早期の診断治療が重要で医師や患者がこの疾患を念頭におくことが重要です」と明記しています[1]。つまり、「少し様子を見てから病院に行こう」という判断そのものが、精巣を失うリスクに直結します。夜間・休日であっても、突然の激しい陰嚢の痛みが起きたら、迷わず救急外来(泌尿器科、対応がなければ救急科・小児科)を受診してください。
診断はドップラー超音波検査で精巣への血流が低下していることを確認する方法が用いられます[1]。同学会は、精巣上体炎や精巣垂・精巣上体垂捻転との鑑別が必要だが、診断が確実でない場合は緊急手術が勧められるとしています[1]。治療は、ねじれた精索を戻して血流を回復させたうえで精巣を陰嚢内に固定する緊急手術です。時間が経過してすでに精巣が壊死している場合は精巣を摘出し、健康な側の精巣も今後ねじれないよう同時に固定することが多いとされています[1]。
なお、精巣や精巣上体にある2〜3mmの小さな突起がねじれる「精巣垂捻転」「精巣上体垂捻転」も似た痛みを起こしますが、こちらは精巣捻転とは違って手術の必要はありません[1]。ただし自己判断での鑑別は極めて困難なため、痛みが出た時点で医療機関を受診し、ドップラー超音波検査で見分けてもらう必要があります。
②精巣上体炎(副睾丸炎):発熱を伴う痛みと腫れ
精巣上体炎(副睾丸炎)は、精巣の横にある精巣上体(副睾丸)に炎症が起こって腫れる病気です[1]。日本泌尿器科学会は「精巣が腫れている」と訴える患者も多いが、実際には精巣の横に硬いしこりが触れると説明しています[1]。ドップラー超音波検査では、正常な精巣の横で血液の流れが増加した精巣上体の腫大が確認されます[1]。
成人では、尿道や前立腺の細菌感染が精管を伝わって精巣上体まで及んだときに発症するとされ、痛みと発熱を伴い急激に発症することが多いのが特徴です[1]。同学会はまた、症状に乏しく精巣上体に痛みのないしこりを触れる場合は結核性のこともあると注意を促しています[1]。治療は、抗菌薬の投与を感染が完全に治るまで行うとされています[1]。
小児でも精巣上体炎になることがあり、上に述べた精巣捻転との区別が非常に重要だが、ドップラー超音波検査が役に立つとされています[1]。小児の場合、成人のような尿路感染が認められない原因不明のものが多く、アレルギー性紫斑病という内科疾患や先天性疾患が原因になっている場合もあると説明されています[1]。
また、日本泌尿器科学会は「陰嚢内の痛みのないシコリは精巣の癌であることがありますので、放置せず泌尿器科に受診することが必要」とも述べており、痛みの有無にかかわらずしこりに気づいたら受診が必要です[1]。
なお、思春期以降の流行性耳下腺炎(いわゆる「おたふく風邪」)に伴って精巣が腫れる「精巣炎」もあります。日本泌尿器科学会によると、思春期以降の流行性耳下腺炎の約20%に合併し、耳下腺炎発症の3〜5日目に痛みを伴って精巣が腫れてくるとされ、精子形成障害を起こすことがあるとされています[1]。
③陰嚢水腫(精巣水瘤):痛みのない水ぶくれ
陰嚢水腫(陰のう水瘤とも呼ばれる)は、陰嚢内や精索内に液体がたまった状態です。日本小児泌尿器科学会は、陰嚢部に見られるものを精巣水瘤(陰嚢水腫)、そけい部に見られるものを精索水瘤(精索水腫)と呼ぶと説明しています[3]。精巣は腹腔内から下降する際に腹膜と一緒に降りてくるため、腹腔内と精巣周囲は「腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)」という細い道でつながっており、これが2歳までに閉鎖しないと、そけいヘルニアや水瘤などさまざまな病態を引き起こすとされています[3]。
同学会によると、この突起が大きく開いたままだとそけいヘルニアに、小さく開いていれば「交通性」の水瘤に、完全に閉鎖していれば「非交通性」の水瘤になり、小児の水瘤のほとんどは交通性だとされています[3]。見分け方として、腹膜鞘状突起が開いている場合は朝が最も小さく夕方から夜にかけて最も大きくなり、触っても大きくても痛くはなく、押しても大きさは変わらないのが特徴です。一方、泣いたり嘔吐したりして腹圧がかかったときに大きさが変わる場合はそけいヘルニアが疑われると同学会は説明しています[3]。硬く緊満している場合や皮膚に発赤がある場合は、精索捻転・精巣上体炎・精巣腫瘍などを疑う必要があるとも述べられています[3]。
治療については、そけいヘルニアを合併していれば自然治癒の可能性はなく早期の手術が必要ですが、緊満していない交通性の水瘤に緊急性はなく、非交通性の水瘤は1〜2歳までにほとんどが自然に消失するとされています[3]。なお同学会は、「成人の精巣水瘤の処置の方法(穿刺吸引や硬化療法)は禁忌とされている」と明記しており、大人が自己判断で穿刺を求めるべきではないことがわかります[3]。水瘤と不妊症の直接的な因果関係はないとされていますが、水瘤が緊満している場合は精巣の変形が起こるとの報告もあり、将来の精巣機能への悪影響を心配して手術が勧められることもあるとされています[3]。
④精索静脈瘤:男性不妊の原因の約3割を占める
精索静脈瘤は、陰嚢内のつる状静脈叢がうっ滞・拡張して静脈瘤を形成した状態です。日本泌尿器科学会・日本生殖医学会後援の「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」は、精索静脈瘤について「男性不妊症の原因の約30%を占める疾患である」と位置づけており、うっ滞する静脈血に伴う陰嚢内の温度上昇や精巣内の低酸素状態などが精巣に悪影響を及ぼすと考えられているとしています[4]。多くは無症状ですが、長時間の立位やおなかに力を入れたときに、足の付け根から陰嚢にかけての不快感や痛み、腫瘤を自覚することがあります。
診断は立位の状態での視診・触診で行い、同ガイドラインは重症度を3段階のグレードで示しています。「grade1:立位腹圧負荷にて触診で診断できる」「grade2:立位腹圧負荷なしにて触診で診断できる」「grade3:立位腹圧負荷なしにて視診で診断できる」というものです[4]。補助的な診断として、陰嚢超音波検査(カラードプラ超音波検査)で静脈の拡張度合いを確認する方法も用いられます[4]。
治療については、同ガイドラインは「男性不妊症診療における精索静脈瘤の外科的治療は、静脈瘤を触知し(grade2以上)、精液所見が不良な症例」が対象になるとしており、精索静脈瘤を治療することで精液所見が改善し、一般不妊症治療における妊娠率が向上すると報告されているとしています[4]。術式は高位結紮術・低位結紮術に大別され、腹腔鏡手術は高位結紮術に分類されるとされています[4]。無症候性(自覚症状のない)精索静脈瘤への手術については、現時点では実施する根拠に乏しいとの立場も紹介されており、痛みも不妊の心配もない軽い精索静脈瘤を必ずしも手術する必要はない、というのが専門家の一般的な考え方です[4]。
⑤鼠径ヘルニア:陰嚢の症状と間違えやすい「脱腸」
鼠径ヘルニアは、腹腔内の臓器(多くは腸)が、閉じきっていない腹膜鞘状突起などのすき間から飛び出してしまう状態で、俗に「脱腸」とも呼ばれます。日本泌尿器科学会は、そけいヘルニアを陰嚢の症状と誤ってとらえる場合があると注意を呼びかけています[1]。日本小児泌尿器科学会も、精索・陰嚢水腫と鼠径ヘルニアは水がたまった状態か内臓が飛び出した状態かという点でよく似ているが異なる病態だとしています[3]。
見分け方として重要なのは、泣いたり、嘔吐したり、おなかに力を入れたときに大きさが変わるかどうかです。大きさが変わる場合は鼠径ヘルニアが疑われます[3]。日本小児泌尿器科学会は、鼠径ヘルニアを合併していれば自然治癒の可能性はなく、早期の手術が必要になるとしており、水瘤のように様子を見るという対応は取りません[3]。また、1歳未満の年少児では、泣いているときにヘルニアの「嵌頓(かんとん)」(飛び出した腸などが締め付けられて戻らなくなる状態)を起こす可能性があるため、外来での経過観察が重要だとされています[3]。嵌頓を起こすと腸への血流が悪くなるおそれがあるため、ふくらみが硬く戻らない、強く痛がる、吐く、といった様子があれば緊急受診が必要です。
⑥精巣腫瘍(精巣がん):痛みのないしこりを見逃さない
陰嚢の腫れの中で、命に関わりうる最も重要な鑑別が精巣腫瘍(精巣がん)です。国立がん研究センターによると、精巣がんにかかる割合は10万人に1人程度とされ比較的まれながんですが、20〜30歳代の男性がかかる固形がん(白血病などの血液腫瘍を除くがん)としては最も多く、若年者に多いという特徴があるとされています[2]。停留精巣(精巣が陰嚢内に下りていない状態)がある人は、ない人に比べて精巣がんになるリスクが2〜10倍高くなるとも報告されています[2]。
同センターは、精巣がんの症状について「初期症状はほとんどなく、精巣に無痛性のしこりができたり、精巣が腫れたりして、発見されることがほとんど」と説明しています[2]。痛みや発熱などの自覚症状に乏しいとされる一方で、下腹部の重圧感や鈍痛が30〜40%、急性の精巣痛が10%程度でみられることもあるとされています[2]。さらに、精巣がんは進行が早く比較的早い時期に転移するため、腹痛・腰痛・呼吸困難・首のリンパ節の腫れといった転移による症状で気づく場合もあるとされています[2]。
このように、精巣腫瘍は「痛くないから大丈夫」と自己判断してしまいやすい病気です。国立がん研究センターは、こうした症状はかなり進行してからでないと現れないため、青年・壮年期の男性は入浴時に自分で精巣を触ってしこりがないか確認する自己検診をすすめています[2]。また日本泌尿器科学会も「陰嚢内の痛みのないシコリは精巣の癌であることがありますので、放置せず泌尿器科に受診することが必要」としており、痛みがないことは受診を先延ばしにする理由にはなりません[1]。現時点で精巣がんの原因は解明されていませんが、家族に精巣がんになった人がいる場合はリスクが4〜8倍、片側が精巣がんになった人が反対側も発症するリスクは20倍以上との報告もあるとされています[2]。
病院に着くまでの間、自宅でできること・してはいけないこと
「今すぐ救急外来へ」と言われても、実際には移動時間がかかります。ここでは、病院に向かう前後にやってよいことと、避けるべきことを整理します。まず大前提として、精巣捻転が疑われる激しい痛みに対して、自己判断で市販の鎮痛薬を使って痛みを抑え、受診を先延ばしにすることは避けてください。痛みが一時的に和らいでも、精巣の血流が止まっている状態そのものは改善しません。今回参照した資料には、自宅での応急処置として推奨される具体的な体位や冷却・温めの方法についての記載は見当たりませんでした。日本泌尿器科学会が示しているのは「診断が確実でない場合は緊急手術が勧められる」という受診・治療の原則であり、自己対応で経過をみてよいという趣旨の記載ではありません[1]。
一方、精巣上体炎のように細菌感染が原因とわかっている場合は、治療の一環として陰嚢を冷やしたり、安静にしたりする対応がとられることがあります。ただし、これは医師の診断のあとに行う対症療法であり、痛みの原因がまだわからない段階で自己判断により冷却・湿布・マッサージなどを行うことは推奨されません。特に、陰嚢を強くもんだり圧迫したりする行為は、精巣捻転であった場合に状態を悪化させるおそれがあるため避けてください。
受診の際は、次の情報を医師に伝えられるよう、できる範囲でメモしておくと診断がスムーズになります。①痛みや腫れに気づいた時刻、②痛みが起きたときの状況(寝ていた、運動していた、ぶつけたなど)、③発熱の有無と体温、④吐き気・嘔吐の有無、⑤過去に同じような痛みがあったか、⑥おたふく風邪や性感染症の既往、⑦子どもの場合はおむつ替えや入浴時に陰嚢の変化に気づいた時期です。特に①の時刻は、精巣捻転かどうかを判断し、6〜12時間という時間の目安に照らして手術の緊急性を判断するうえで重要な情報になります[1]。
症状・可能性のある病気・緊急度の早見表
| 症状の出方 | 考えられる主な病気 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 突然の激しい痛み+腫れ(睡眠中に多い) | 精巣捻転[1] | 🔴 今すぐ救急外来へ(6〜12時間以内) |
| 痛み+発熱を伴い、数日かけて悪化 | 精巣上体炎[1] | 🟡 当日〜翌日中に泌尿器科受診 |
| 耳下腺の腫れ(おたふく風邪)から3〜5日後に精巣が腫れる | 精巣炎[1] | 🟡 早めに小児科・泌尿器科受診 |
| 痛みなく、じわじわ大きくなる・柔らかい | 陰嚢水腫(精巣水瘤)[3] | 🟢 様子を見つつ泌尿器科・小児科で相談 |
| 立位で不快感、太い血管のような腫れ(不妊検査で発見も) | 精索静脈瘤[4] | 🟢 症状が続く・不妊が心配なら泌尿器科受診 |
| 泣く・力むと大きさが変わる、硬く戻らない場合は激痛 | 鼠径ヘルニア[3] | 🟡(嵌頓時は🔴)早期に外科・泌尿器科受診 |
| 痛みのない硬いしこり、片側だけ精巣が大きい | 精巣腫瘍(精巣がん)[2] | 🟡 痛みがなくても速やかに泌尿器科受診 |
出典:日本泌尿器科学会「陰嚢内が痛い」[1]/国立がん研究センター「精巣がんの原因・症状について」[2]/日本小児泌尿器科学会「精巣水瘤と精索水瘤」[3]/男性不妊症診療ガイドライン2024年版[4]
似た病気の見分け方:精巣捻転と精巣上体炎はここが違う
救急外来で最も鑑別が急がれるのは、緊急手術が必要な精巣捻転と、抗菌薬で治療する精巣上体炎の区別です。日本泌尿器科学会は、両者ともドップラー超音波検査で鑑別できるとしつつ、症状の出方にも違いがあると説明しています[1]。
| 項目 | 精巣捻転 | 精巣上体炎 | 陰嚢水腫 |
|---|---|---|---|
| 発症の速さ | 突然、急激[1] | 急激〜数日[1] | ゆっくり[3] |
| 発熱 | 伴わないことが多い | 伴うことが多い[1] | 伴わない |
| 好発年齢 | 思春期前後[1] | 性活動期の成人・小児 | 乳幼児・思春期以降[3] |
| 触った硬さ | 精巣全体が腫れて硬い | 精巣の横に硬いしこり[1] | 弾力があり、押しても大きさは変わらない[3] |
| ドップラー超音波の血流 | 低下・途絶[1] | 精巣上体の血流が増加[1] | 精巣の血流は正常 |
見分けるカギ:自宅でこれらを正確に見分けることはできません。突然の激しい痛みであれば精巣捻転を最優先に疑い、様子を見ずに救急外来を受診することが最も安全な行動です[1]。
受診の目安:今すぐ救急外来か、様子見でよいか
ここまでの内容を、実際の行動に落とし込みます。まず、次のいずれかに当てはまる場合は、様子を見ずに今すぐ救急外来(泌尿器科がなければ救急科・小児科でも受診可)を受診してください。
- 突然、片側の陰嚢に激しい痛みが起きた(特に睡眠中や起床時)[1]
- 陰嚢の痛みに吐き気・嘔吐を伴う[1]
- 子どもが「おなかが痛い」と訴えているが、陰嚢を痛がる様子もある(精巣捻転の見落としに注意)[1]
- 鼠径部・陰嚢のふくらみが硬く戻らず、強い痛みや嘔吐を伴う(ヘルニア嵌頓の疑い)[3]
一方、次のような場合は、緊急性は高くないものの、日を置かず泌尿器科(小児は小児泌尿器科)を受診してください。
受診先は、成人であれば泌尿器科、乳幼児〜学童は小児泌尿器科または小児科が窓口になります。夜間・休日で専門科の外来がない場合は、まず救急外来(内科・外科系当直)を受診し、精巣捻転の可能性を伝えたうえで、必要に応じて泌尿器科のある病院に転送してもらう流れになります。健康保険が適用される診療であれば、自己負担は通常3割です。
日本と海外の考え方の違い:無症候性の精索静脈瘤は手術すべき?
精索静脈瘤の扱いについては、国内外のガイドラインで強調点にわずかな違いがあります。日本の男性不妊症診療ガイドライン2024年版が引用する欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインは「精索静脈瘤の管理は依然として主に身体診察に基づいて行われる」としている一方、同ガイドラインは米国泌尿器科学会(AUA)のガイドラインも紹介しており、身体診察に加えて陰嚢超音波検査を併用する泌尿器科医が多いという調査結果(約70%)も示されています[4]。
| 項目 | 日本(男性不妊症診療ガイドライン2024年版が示す立場) | 国際的な議論(同ガイドライン中でEAU/AUAとして紹介) |
|---|---|---|
| 診断法 | 立位での視診・触診+補助的に超音波検査[4] | 身体診察を基本としつつ超音波の併用が広がっている(EAU/AUA紹介)[4] |
| 手術の対象 | grade2以上を触知し、精液所見が不良な症例[4] | 無症候性の精索静脈瘤への手術は現時点で実施する根拠に乏しいとの立場が紹介されている[4] |
※上記の海外側の内容は、日本の男性不妊症診療ガイドライン2024年版がEAU・AUAのガイドラインを引用・紹介している範囲での記載であり、EAU・AUAの一次資料そのものを本記事で直接確認したものではありません。両者の一次資料に基づく比較は今後の課題とし、現時点では「症状のない軽い精索静脈瘤を、検査で見つかったからといってすぐ手術する必要はない」という点で、国内外の考え方は大きくは対立していないと言えます[4]。
医療費の目安
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
よくある質問(FAQ)
陰嚢が片方だけ腫れているのですが、様子を見ても大丈夫ですか?
子どもが「お腹が痛い」と言うのですが、陰嚢の病気の可能性はありますか?
精巣捻転の痛みが治まってきたので、病院に行かなくても大丈夫でしょうか?
陰嚢のしこりに痛みがない場合でも受診したほうがいいですか?
赤ちゃんの陰嚢が片方だけ大きいのですが、様子を見てもいいですか?
精索静脈瘤と診断されましたが、必ず手術が必要ですか?
成人ですが陰嚢水腫の水を抜いてもらうことはできますか?
おたふく風邪にかかった後、陰嚢が腫れてきました。何が起きていますか?
精巣捻転は片方が治療できても、もう片方が心配です。再発しますか?
陰嚢の腫れで何科を受診すればいいですか?
陰嚢の腫れ・痛みの原因については、精巣垂捻転や精巣炎など今回取り上げた6疾患以外の細かい病態の頻度データについては、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。気になる症状がある場合は、自己判断せず泌尿器科・小児泌尿器科の診察を受けてください。
陰嚢の病気に関する記事一覧
記事一覧 4件
基礎知識・原因 2
症状・見分け方 1
治療・薬 1
参考文献
- 日本泌尿器科学会「陰嚢内が痛い」(The Japanese Urological Association) urol.or.jp/public/symptom/12.html
- 国立がん研究センター「精巣がんの原因・症状について」(最終更新日:2025年04月01日) ncc.go.jp/jp/information/knowledge/Testicular/001
- 日本小児泌尿器科学会「精巣水瘤と精索水瘤」(小児泌尿器科の主な疾患) jspu.jp/ippan_019.html
- 日本泌尿器科学会編・日本生殖医学会後援「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」 urol.or.jp(PDF)52_male_infertility.pdf
