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JHO 病気ペディア

陰部のかゆみ・トラブル

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

陰部(外陰部・陰茎周辺)のかゆみや違和感は、多くの人が経験するありふれた悩みで、原因は女性と男性で異なり、カンジダなどの真菌感染症、細菌性腟症、接触皮膚炎、閉経後のホルモン変化などさまざまです[4]。多くは自宅でのセルフケアや市販薬で改善しますが、症状が長引く・繰り返す・水疱や潰瘍・出血を伴う場合は、性感染症の可能性も含めて医療機関を受診することが重要です[4]。恥ずかしいという理由で受診をためらう人は少なくありませんが、婦人科・皮膚科・泌尿器科は日常的にこうした相談を受けており、自己判断で市販薬を使い続けるより早めの受診が回り道を防ぎます。

主な原因 女性:カンジダ外陰腟炎・細菌性腟症・接触皮膚炎・萎縮性腟炎(閉経関連)など[4]/男性:股部白癬(いんきんたむし)・カンジダ性亀頭包皮炎・接触皮膚炎など[3][9]
主な症状 かゆみ・発赤・灼熱感・おりものの変化(女性)・発疹(男性)。多くは病気ではなく個人差の範囲であることも多い[4]
受診の目安 症状が数日以上続く・重度・繰り返す、水疱や潰瘍・出血を伴う、発熱や骨盤痛を伴う場合はすぐ受診[4]

図:陰部のかゆみ・トラブルについて、女性の主な原因・男性の主な原因・受診の目安の3点をまとめた図です[4][3]。

陰部のかゆみ・違和感はよくある悩み。恥ずかしがらず受診を

腟や外陰部(陰唇)のかゆみと分泌物(おりもの)は「よくみられる問題」で、腟にかゆみや分泌物がみられる女性では皮膚刺激症状、灼熱感、性交時の痛みも生じることがあるとされています[4]。多くの女性はときに短期間、腟や外陰部にかゆみを感じますが、それらは治療しなくても治まるともされています[4]。かゆみが「問題」とみなされるのは、長引く場合や重度の場合、繰り返し起こっている場合、おりものを伴っている場合とされています[4]。

男性でも同様に、陰茎や陰嚢まわりの皮膚はさまざまな異常の影響を受けやすく、他の部位も侵す全身性の皮膚疾患(乾癬・扁平苔癬・脂漏性皮膚炎など)が陰茎に現れることもあれば、陰茎のみを侵す病気や性感染症による発疹もあるとされています[9]。デリケートゾーンは相談しにくい部位ですが、婦人科・皮膚科・泌尿器科の医師にとっては日常的に扱う症状であり、恥ずかしさから受診を先延ばしにするより、早めに専門家に相談する方が、原因をはっきりさせて不要な不安や市販薬の乱用を避けることにつながります。本ページは医師の診察に代わるものではなく、当サイトに医師による監修者はいません。参考にした資料は本文中と巻末の参考文献に明記しています。

このページでは、女性と男性で原因やしくみが異なる点をふまえたうえで、①正常な外陰部の多様性、②女性の原因、③男性の原因、④見分け方、⑤セルフケア、⑥受診の目安、⑦よくある誤解、という流れで、デリケートゾーンのかゆみについて知っておきたいことをまとめています。

正常な外陰部の多様性:形や色は人それぞれで、病気ではありません

陰部のかゆみについて調べていると、外陰部の見た目そのものへの不安にたどり着く人も少なくありません。しかし、外陰部(女性の小陰唇・大陰唇など)の形・大きさ・色には生まれつき大きな個人差があり、左右で非対称であることや、色が周囲の皮膚より濃いこと自体は、多くの場合、病気のサインではありません。かゆみや痛み、においの変化、急激な変化といった「症状」を伴わない見た目の違いだけを理由に自己判断で心配しすぎる必要はなく、詳しい解説は姉妹記事「正常な外陰部とは?形・色・大きさの多様性を科学データで徹底解説」で扱っています。

男性についても、陰茎の血管から生じる「真珠様陰茎小丘疹」は、ドーム状または髪の毛に似た小さくて通常は皮膚色の腫瘍が陰茎体上に現れる無害でよくみられる腫瘍で、男性の10%に生じるとされ、治療は必要ないとされています[9]。かゆみや痛みなどの症状がなく、単に「見慣れない見た目」というだけであれば、多くは正常な多様性の範囲であり、心配になったときは自己判断でなく医師に確認してもらうのが確実です。

女性の陰部のかゆみ:主な原因と仕組み

異常なおりものは腟炎が原因であるのが通常で、これは感染症または炎症(化学物質による刺激など)の結果として生じるとされています[4]。腟の中では通常さまざまな種類の細菌が存在して腟内の酸性度を正常に保っており、そのうち主なものの1つが乳酸桿菌で、腟内の酸性度が低下すると正常な細菌が減少し、有害な細菌が増加するとされています[4]。有害な細菌の増殖は、抗菌薬の使用、腟内に経血または精液がある状態、腟洗浄、妊娠、糖尿病、取り忘れたタンポンなどの異物によって起こりやすくなるとされています[4]。

女性の陰部のかゆみ・おりものの主な原因(微生物によるもの・非感染性のもの)
原因 特徴 備考
細菌性腟症 黄緑色または灰色で生臭さを伴うサラサラして泡立ったおりもの。ときに腟や外陰部の刺激感[4] 微生物による腟炎の中で最も一般的な種類の一つ[4]
カンジダ外陰腟炎(真菌感染症) 外陰部や腟の刺激感、かゆみ、発赤、腫れ。ネバネバした白い凝乳状のおりもの。性交後や月経前に症状が強まることがある[4] 糖尿病または最近の抗菌薬の使用歴があると生じやすい[4]
トリコモナス症 生臭さを伴う黄緑色の泡立ったおりもの(しばしば大量)。外陰部や腟の刺激感、発赤、腫れ。性交時や排尿時の痛み[4] 原虫による感染症で、通常は性行為を通じて感染する[4]
接触皮膚炎(化学物質による刺激) 外陰部や腟の刺激感、かゆみ、発赤、腫れ[4] 石けん・洗濯用洗剤・女性用衛生スプレー・腟洗浄器・合成繊維の下着などが原因になりうる[4]
閉経後の萎縮性変化(閉経関連泌尿生殖器症候群) 白色または淡黄色の少量のおりもの、腟の乾燥や性交時の痛み、ときにかゆみ・発赤・灼熱痛・軽い出血[4] エストロゲンの低下により腟の組織が薄くなり、pHが変化することが背景にある[4]

出典:MSDマニュアル家庭版「腟のかゆみとおりもの(外陰部のかゆみ)」[4]

周閉経期から閉経後の女性では、エストロゲンの低下に伴い腟および外陰部の乾燥・痒み・灼熱感・性交痛などの不快症状の訴えが多くなり、局所の所見としては外陰腟萎縮(vulvovaginal atrophy:VVA)、全身的な症状症候群としては閉経関連泌尿生殖器症候群(genitourinary syndrome of menopause:GSM)という概念で捉えられていると、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編(CQ421)は説明しています[1]。同ガイドラインは、これらの症状を訴える女性への初期対応として、感染・炎症、腫瘍性病変、骨盤臓器脱がないかを確認することを推奨しており(推奨度A)、皮膚腫瘍・硬化性苔癬・小陰唇癒着症などを疑う場合には皮膚科へ紹介するとしています[1]。

また、乾癬・慢性単純性苔癬・扁平苔癬・硬化性苔癬などの皮膚疾患が性器のかゆみの原因となることがあり、硬化性苔癬では外陰部の腟口周囲に白い斑が複数できることがあるとされ、治療しないでいると病変部に瘢痕ができ外陰がんのリスクが高くなるとされています[4]。性器ヘルペスはときに腟のかゆみ、ピリピリ感、または灼熱感を引き起こすこともあります[4]。「かゆみだから真菌感染症(カンジダ)だろう」と決めつけず、おりものの色やにおい、痛みの有無などをあわせて確認することが大切です。

男性の陰部のかゆみ:主な原因と仕組み

男性の陰部(陰茎・陰嚢周辺)のかゆみで代表的な原因の一つが股部白癬(いんきんたむし)です。股部白癬は鼠径部の皮膚糸状菌感染症で、一般的にはTrichophyton rubrumまたはT. mentagrophytesによって引き起こされるとされ、主な危険因子は湿潤環境(暖かい気候・湿った衣服・密着した衣服・肥満のため皮膚の間擦部が持続的に密着している状態)に関わるものだとされています[3]。男性は陰嚢と大腿部が密着しやすいため、女性よりも罹患しやすいとされ、典型的には「そう痒を伴う環状病変が鼠径溝から連続的に大腿上内側へ拡大していく」とされています[3]。夏季に急性増悪が多くなる点も特徴です[3]。

股部白癬では「陰嚢が侵されることは通常なく、侵されても軽度」であり、これに対しカンジダ性間擦疹または慢性単純性苔癬ではしばしば陰嚢に炎症が生じるとされ、この違いが鑑別の手がかりの一つになるとされています[3]。もう一つの代表的な原因が陰茎カンジダ症で、糖尿病の男性、包皮切除を受けていない男性、セックスパートナーの女性が腟カンジダ症にかかっている男性によくみられる感染症とされ、感染により発疹が生じても症状が出ないことがある一方、亀頭、ときには陰嚢に生じた発疹は通常は赤く、ヒリヒリしてかゆみ、ほてりが生じ、ときには痛みを伴うとされています[6]。

男性の陰部のかゆみの主な原因
原因 特徴 備考
股部白癬(いんきんたむし) そう痒を伴う環状病変が鼠径溝から大腿上内側へ拡大。陰嚢は通常侵されない[3] 肥満患者・男性に多い。夏季に増悪しやすい[3]
陰茎カンジダ症(カンジダ性亀頭包皮炎) 亀頭・陰嚢の発赤、ヒリヒリ感、かゆみ、ほてり。無症状のこともある[6] 糖尿病・非包皮切除・パートナーの腟カンジダ症と関連[6]
陰茎の接触皮膚炎 通常は赤色でかゆみを伴う斑点。ときに皮膚が破れたり体液が漏れる[9] 多くはラテックス製コンドームへのアレルギーが原因[9]

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「股部白癬(いんきんたむし)」[3]/MSDマニュアル家庭版「カンジダ症」[6]/「陰茎を侵す皮膚の異常」[9]

股部白癬の鑑別診断としては、接触皮膚炎・乾癬・紅色陰癬・カンジダ症・間擦疹・慢性単純性苔癬が挙げられており[3]、外観だけで診断できない場合はKOH直接鏡検(顕微鏡で真菌を確認する検査)が診断の助けになるとされています[3]。「かゆい発疹=水虫の一種だろう」と自己判断して市販の水虫薬を使い続けると、実際はカンジダや接触皮膚炎で、かえって悪化することもあるため、判断に迷うときは受診が近道です。

性感染症の可能性:偏見なく中立に知っておく

陰部のかゆみや違和感の一部は、性感染症(STI)が関係していることがあります。性感染症は特別な人だけがかかるものではなく、性的な接触がある人であれば誰にでも起こりうる、ありふれた感染症の一種です。厚生労働省は、性器クラミジア感染症・性器ヘルペスウイルス感染症・尖圭コンジローマ・淋菌感染症・梅毒の5疾患について、感染症発生動向調査事業年報のデータをもとに、性別・年齢(5歳階級)別の報告数の年次推移を公表しています[5]。これらは感染症法に基づき、指定された性感染症定点医療機関から毎月報告される仕組みで継続的に把握されています[8]。

性器ヘルペスウイルス感染症(HSV)は、単純ヘルペスウイルスに感染している相手との性交によって感染が起こり、無症候性排出(症状がないまま排出されるウイルス)を介した感染もあるとされています[8]。初感染では発熱・強い痛み・多発する潰瘍が2〜4週間続くことがある一方、再発時は軽症で1週間以内に治まることが多く、感染者の約70〜80%は無症状のままウイルスを排出しているとされています[8]。診断はウイルス分離または蛍光抗体法による直接抗原検出に基づいて確定し、治療にはアシクロビルなどの抗ウイルス薬が用いられ、副作用は少ないとされています[8]。予防についてはワクチンはまだ開発されておらず、コンドームの使用が推奨されるものの、広範囲に病変がある場合は効果が限定的だとされています[8]。

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、主にHPV-6型・HPV-11型(ときにHPV-16型)の感染により性器・肛門周辺にいぼ状の病変ができる病気で、性行為またはこれに類する行為により皮膚や粘膜の微小な傷から感染するのが主な経路とされ、まれに手指などを介した間接的な接触や、分娩時の母子感染もあるとされています[2]。病変は顆粒状で房状に増殖し、カリフラワー状または平坦な形をとることがあり、一部または多数生じ、かゆみや痛みを伴うこともありますが、多くの人は気づかないこともあるとされています[2]。良性の病変ですが、まれに悪性化することがあるとされ、新生児に感染すると呼吸困難を引き起こすことがあるとされています[2]。予防としてはHPV4価ワクチンの接種が主要な有効策とされ、コンドームの使用はリスクを減らすものの完全には排除できないとされています[2]。

大切なのは、「かゆみがあるからといって、必ずしも性感染症とは限らない」ということと同時に、「かゆみの原因を性感染症の可能性から最初に除外せず、思い込みで判断しない」ということです。性感染症は誰でもかかりうる病気であり、感染した人に落ち度があるという考え方は誤りです。症状に気づいたら一人で抱え込まず、婦人科・皮膚科・泌尿器科、または性感染症の専門外来を受診してください。パートナーがいる場合は、パートナーも一緒に検査・治療を受けることが再感染の予防につながります。保健所では匿名・無料で一部の性感染症検査を受けられる自治体もあるため、費用や受診のハードルが気になる場合は、お住まいの自治体の窓口に問い合わせてみるのも一つの方法です。

見分け方:かゆみ+おりもの/におい/できものから考える

陰部のかゆみは原因によって、伴う症状の組み合わせが異なる傾向があります。自己判断は禁物ですが、受診の際に症状を整理して伝えるための目安として参考にしてください。

症状の組み合わせから考える、主な原因の手がかり(自己診断のためではなく、受診時の説明の目安)
組み合わせ 考えられる原因の例 備考
かゆみ+白く凝乳状のおりもの(女性) カンジダ外陰腟炎[4] 性交後や月経前に強まることがある[4]
かゆみ+生臭いにおい+灰色〜黄緑色のおりもの(女性) 細菌性腟症・トリコモナス症[4] におい・色の異常は受診の目安になる[4]
かゆみ+環状に広がる発疹(男性、鼠径部) 股部白癬(いんきんたむし)[3] 陰嚢は通常侵されにくい[3]
かゆみ+水疱・潰瘍・強い痛み 性器ヘルペスの可能性[8] 初感染は発熱を伴うことがある[8]
かゆみを伴う・伴わないできもの(いぼ状) 尖圭コンジローマの可能性[2] 気づかないことも珍しくない[2]
かゆみのみ、おりもの・発疹の変化なし 接触皮膚炎、または正常な多様性の範囲[4][7] 新しい石けん・下着・生理用品の使用歴を確認

見分けるカギ:色・におい・水疱や潰瘍の有無・全身症状(発熱など)の有無を自分でメモしたうえで医師に伝えることが、正確な診断への近道です。「かゆい=カンジダ」と決めつけず、専門家に材料を渡して判断してもらう意識が遠回りに見えて実は近道です。いつから症状があるか、月経周期や性交とのタイミング、市販薬を使ったかどうか、パートナーに症状がないかといった情報も、診察時に伝えると原因の特定に役立ちます。

セルフケア:清潔・こすらない・通気を意識する

外陰部や腟の刺激感を回避するのに役立つ一般的な対策として、合成繊維ではなく綿の下着を着用すること、入浴後に衣服を着る前に外陰部と鼠径部を完全に乾燥させること、衣服・タンポン・ナプキンが長時間濡れている場合は交換すること、無香料の石けん・洗濯用洗剤・トイレットペーパーを使用すること、女性用衛生用品や腟洗浄器は使用しないことが挙げられています[4]。腟洗浄は外陰部や腟に刺激感を引き起こしたり、骨盤内炎症性疾患のリスクを高めたりすることがあるともされています[4]。

アイスパックで性器周辺を冷やす、温坐浴を行うといった方法でヒリヒリする痛みとかゆみが軽減することもあるとされ、坐浴は座った状態で陰部だけをぬるま湯につける方法で、浴槽や大きなたらいを使って行えるとされています[4]。ただし組織の損傷を避けるため、患部に対して過剰な冷却や加温をしないよう注意が必要だとされています[4]。処方薬によって刺激感が生じている場合は、その薬剤の使用をやめる前に主治医に相談するべきだとされています[4]。

男性の場合も、湿潤環境を避けることが股部白癬の予防・悪化防止の基本になります。股部白癬の主な危険因子は暖かい気候・湿った衣服・密着した衣服・肥満のため皮膚の間擦部が持続的に密着している状態とされており[3]、入浴後によく乾かす、通気性のよい下着を選ぶ、汗をかいたら早めに着替えるといった習慣が役立ちます。爪水虫や足白癬がある人では股部白癬が再発しやすいともされているため[3]、足の水虫を放置しないことも間接的な予防につながります。市販の抗真菌薬を自己判断で使い続けて改善しない場合は、股部白癬ではなく接触皮膚炎やカンジダ症など別の原因である可能性があるため、皮膚科を受診してください。

接触皮膚炎は、特定の物質に直接触れることで皮膚に炎症が起きる病気で、発疹はかゆいことがあり、特定の部位に限定され、しばしば境界がはっきりしているとされています[7]。原因は、有害物質が皮膚を直接傷つける「刺激性」と、皮膚がその物質に感作(かんさ)されて起こる「アレルギー性」の2種類に分けられ、強力な石けんや洗剤、体液(尿や唾液など)による持続的な湿り気は刺激性の、金属・保存剤・ゴム(ラテックスを含む)・香料はアレルギー性の代表的な原因とされています[7]。デリケートゾーンでは、新しい石けん・生理用品・下着の素材・コンドームの成分などが原因になりうるため、かゆみが出始めたタイミングで何を新しく使い始めたかを振り返ることが、原因物質の特定に役立ちます。

受診の目安:この症状が出たら自己判断で様子見をしない

長く続いている多量のおりものや、色が白色でも透明でもないおりもの、ほかに不快な症状を伴うおりものがみられる場合は、医師の診察を受けるべきだとされています[4]。異常なおりものがみられる女性で特に注意すべき徴候として、発熱、骨盤痛、血性のおりもの(特に閉経後)、おりものに便が混じっていること、外陰部の腫瘤や病変を伴った外陰部のかゆみが挙げられています[4]。特に警戒すべき徴候が多くみられる場合は翌日までに医師の診察を受けるべきで、かゆみやおりものが数日以上続くか重度の場合、または感染症を示唆する他の症状(痛みや発熱など)が現れた場合も医師の診察を受けるべきだとされています[4]。

受診の目安:3段階の見分け方
状態 具体例 行動
赤:今すぐ・翌日までに受診 発熱・骨盤痛を伴う、血性のおりもの(特に閉経後)、おりものに便が混じる、水疱や潰瘍・強い痛みを伴う[4] 様子見をせず、早めに婦人科・皮膚科・泌尿器科または救急を受診
黄:数日以内に受診 かゆみやおりものが数日以上続く、重度、繰り返す、市販薬を使っても改善しない[4] 数日以内に婦人科・皮膚科・泌尿器科を受診
緑:セルフケアで様子見も可 軽い一時的なかゆみのみで、上記の赤・黄に該当する症状がなく、以前に医師の診断を受けたことのある同じ症状の再発[4] 清潔・通気などのセルフケアを行いながら数日様子を見る。改善しなければ受診

女性が腟の真菌感染症の症状を認識していて、過去の経験(医師により真菌感染症が確認された場合)から自分の病気が真菌感染症であると確信をもっており、かつほかに症状がみられない場合には、入手可能なら市販の腟用治療薬を使用することができるとされています[4]。ただし、おりものが持続し治療後も症状が再発する場合には、医師の診察を受ける必要があるとされています[4]。閉経後の女性では、おりものがみられた場合は速やかに医師の診察を受ける必要があり、とりわけおりものに血が混じっている場合や、おりものが茶色やピンク色をしている場合は特にそうすべきだとされています[4]。閉経後にみられる性器出血は、前がん状態やがんの警戒すべき徴候である可能性があるため、無視してはいけないとされています[4]。

男性についても、股部白癬が難治性・炎症性・広範囲に及ぶ場合は、外用薬だけでなく内服の抗真菌薬が必要になることがあるとされており[3]、市販薬を2週間程度使用しても改善しない場合は自己判断を続けず皮膚科や泌尿器科を受診してください。水疱・潰瘍・強い痛み・発熱を伴う場合は、性感染症を含めた精査が必要になることがあるため、早めの受診が大切です。

よくある誤解:「カンジダだと思ったら別の病気だった」

デリケートゾーンのかゆみをめぐる誤解として多いのが、「かゆみ=カンジダ」という思い込みです。実際には、かゆみを引き起こす原因は女性だけでも細菌性腟症・トリコモナス症・接触皮膚炎・閉経後の萎縮性変化・皮膚疾患(乾癬、慢性単純性苔癬、扁平苔癬、硬化性苔癬など)と多岐にわたり[4]、市販のカンジダ用治療薬を自己判断で使い続けても改善しない、あるいは悪化することがあります。過去に医師からカンジダと診断された経験がある人が、同じ症状の再発として市販薬を使うことは選択肢の一つとされていますが[4]、症状が持続したり再発を繰り返したりする場合は、別の原因が隠れていないか医師に確認してもらう必要があります[4]。

男性でも同様に、鼠径部のかゆい発疹を「水虫(股部白癬)」と決めつけて市販の抗真菌薬を使い続けるケースがありますが、股部白癬の鑑別診断には接触皮膚炎・乾癬・紅色陰癬・カンジダ症・間擦疹・慢性単純性苔癬が含まれており[3]、外観だけでは判別が難しいことがあります。もう一つの誤解は「性感染症は特別な人がかかるもの」という思い込みです。性器ヘルペスは感染者の約70〜80%が無症状のままウイルスを排出しているとされ[8]、尖圭コンジローマも多くの人が気づかないことがあるとされているため[2]、症状の有無だけで感染していないと判断することはできません。心当たりがある場合は、症状がなくても検査を検討することが望ましいとされています。

受診する科と、診察で聞かれること

女性は婦人科、男性は泌尿器科または皮膚科を受診するのが基本です。医師はまず症状について問診をしますが、特に感染症の症状の有無と病歴について質問し、おりものがみられる場合は見た目や匂い、月経や性交と関連したタイミング、ほかの症状(かゆみ、出血、発熱など)の有無を確認するとされています[4]。陰部を刺激する可能性のある衛生用品の使用歴や、抗菌薬の頻繁な使用・糖尿病といったリスクを高める状況、性感染症への曝露の可能性についても質問されるとされています[4]。

身体診察に続いて、原因が明らかでない限り、綿棒を用いて腟または子宮頸部からおりもののサンプルを採取し、顕微鏡検査で真菌感染症・細菌性腟症・トリコモナス腟炎を引き起こす微生物がないか調べるとされ、通常は淋菌感染症とクラミジア感染症の検査もあわせて行われるとされています[4]。男性の股部白癬が疑われる場合は、臨床的評価とKOH直接鏡検(皮膚の一部を顕微鏡で調べる検査)で診断されるとされています[3]。恥ずかしさから検査を避けたい気持ちは自然ですが、正確な検査を受けることが、遠回りに見えて実は最短で症状を解消する道です。診察の予約時に「デリケートゾーンのかゆみで相談したい」と伝えれば、多くの医療機関はスムーズに案内してくれます。オンライン診療に対応しているクリニックもあるため、対面受診に抵抗がある場合は選択肢の一つとして検討してもよいでしょう。

経過と治療:時期別のケア

陰部のかゆみは原因によって経過や治療にかかる期間が大きく異なります。ここでは「治療を始めてからの経過」を軸に、代表的な原因ごとの目安を整理します(症状に気づいてからの期間ではなく、治療開始からの経過である点に注意してください)。

治療開始からの経過の目安(原因ごと・個人差があります)
原因 治療開始直後 数日〜1週間 その後の注意点
カンジダ外陰腟炎 フルコナゾール150mgの経口単回投与、または外用の抗真菌薬を開始[10] 多くはかゆみ・おりものの改善がみられる 再発を繰り返す場合は長期抑制療法(フルコナゾールを週1回〜月1回、6カ月間など)が検討されることがある[10]
股部白癬(いんきんたむし) 抗真菌薬の外用(テルビナフィン、クロトリマゾールなど)を1日2回開始[3] 10〜14日間の外用が通常は効果的とされる[3] 難治性・炎症性・広範な場合は内服の抗真菌薬を3〜6週間行うこともある[3]
接触皮膚炎 原因物質(石けん・下着・コンドームなど)の使用を中止[4][9] 刺激を避けることで数日で改善に向かうことが多い 症状が続く場合はコルチコステロイド外用薬が処方されることがある[9]
性器ヘルペス初感染 アシクロビルなどの抗ウイルス薬の内服を開始[8] 発熱・強い痛み・多発する潰瘍が2〜4週間続くことがある[8] 再発時は軽症で1週間以内に治まることが多い[8]

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「カンジダ腟炎」[10]/「股部白癬(いんきんたむし)」[3]/MSDマニュアル家庭版「陰茎を侵す皮膚の異常」[9]/国立健康危機管理研究機構「性器ヘルペスウイルス感染症(詳細版)」[8]

ここで示した日数はあくまで一般的な目安であり、治療への反応には個人差があります。「治療を始めたのに数日で治らない」と自己判断で薬をやめたり、別の市販薬に切り替えたりするのではなく、指定された期間はきちんと使い切り、それでも改善しない場合に医師へ相談することが大切です。特にカンジダ外陰腟炎は、症状が軽くなった段階で治療を中断すると再発しやすくなるとされているため、処方された期間・回数を守ることが再発予防につながります[4]。

診断・検査の流れ

診断の方法は、KOH法を用いたウェットマウント顕微鏡検査(水酸化カリウムを使って皮膚や分泌物のサンプルを処理し、真菌の有無を顕微鏡で確認する検査)で感度が向上するとされ、あわせて腟pH測定(カンジダ腟炎では通常4.5未満)や内診所見が用いられるとされています[10]。カンジダ外陰腟炎の治療では、第一選択としてフルコナゾール150mgの経口単回投与が挙げられ、外用薬(クロトリマゾール、ミコナゾールなど)も有効とされています[10]。再発を頻繁に繰り返す患者には、長期抑制療法として、フルコナゾールを週1回から月1回、6カ月間投与することが必要な場合があるとされています[10]。

股部白癬では、抗真菌薬クリーム・ローション・ゲルの外用が基本の治療で、選択肢としてテルビナフィン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、シクロピロクス、ナフチフィンなどが挙げられています[3]。難治性、炎症性、または感染が広範な患者では、イトラコナゾール200mgを1日1回、またはテルビナフィン250mgを1日1回、経口で3〜6週間投与する治療が必要になる場合もあるとされています[3]。いずれの薬剤も自己判断での長期使用や中断を避け、医師・薬剤師の指示に従って使用してください。

リスクを高めやすい生活習慣・要因

女性でカンジダ外陰腟炎などの真菌感染症のリスクを高める要因としては、糖尿病、広域抗菌薬またはコルチコステロイドの使用、妊娠、通気性の悪い下着、免疫低下状態が挙げられています[4]。抗菌薬の使用は腟内の正常な細菌を減少させることがあり、腟内に経血または精液がある状態や腟洗浄は腟内の酸性度を低下させ、取り忘れたタンポンなどの異物は暖かく湿った環境を作り細菌が増殖しやすくなるとされています[4]。

男性では、股部白癬の主な危険因子が湿潤環境(暖かい気候、湿った衣服、密着した衣服、肥満のため皮膚の間擦部が持続的に密着している状態)に関わるものとされ[3]、陰茎カンジダ症は糖尿病の男性、包皮切除を受けていない男性、パートナーが腟カンジダ症にかかっている男性によくみられるとされています[6]。共通するのは「蒸れ・湿気・摩擦」と「免疫の低下(糖尿病、体調不良、抗菌薬の使用など)」が原因菌の増殖を助けやすくするという点で、通気性のよい下着を選ぶ、汗をかいたら着替える、体調管理を心がけるといった日々の習慣が、男女を問わずリスクを下げる土台になります。これらはすぐに変えられるものではありませんが、少しずつ見直すことが再発防止につながります。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

よくある質問(FAQ)

陰部のかゆみが1週間治りません。カンジダでしょうか?
かゆみが長引く・重度・繰り返す場合は受診の目安に該当します[4]。カンジダ以外にも細菌性腟症やトリコモナス症、接触皮膚炎、皮膚疾患などが原因のことがあり[4]、市販薬を使っても改善しない場合は自己判断を続けず婦人科・皮膚科を受診してください。
市販のカンジダ治療薬を使ってもかゆみが治まりません。どうすればいいですか?
おりものが持続し、治療後も症状が再発する場合には医師の診察を受ける必要があるとされています[4]。カンジダではなく細菌性腟症や皮膚疾患が原因である可能性もあるため、自己判断で市販薬を使い続けず受診してください。
男性の陰部のかゆみは何科を受診すればいいですか?
泌尿器科または皮膚科が基本です。股部白癬(いんきんたむし)が疑われる場合は臨床的評価とKOH直接鏡検で診断されるとされています[3]。かゆみが強い、発疹が広がる、市販薬で改善しない場合は早めに受診してください。
デリケートゾーンの形や色が左右非対称です。異常でしょうか?
外陰部の形・大きさ・色には生まれつき個人差があり、左右非対称であることや色の濃さ自体は多くの場合病気のサインではありません。かゆみ・痛み・においの変化・急激な変化を伴わない見た目の違いだけであれば、詳しい解説は姉妹記事「正常な外陰部とは?」をご覧ください。
おりものに血が混じっています。様子を見てもいいですか?
血性のおりものは特に閉経後は警戒すべき徴候の一つとされ、翌日までに医師の診察を受けるべきとされています[4]。閉経後の性器出血は前がん状態やがんのサインである可能性もあるため、様子見をせず早めに受診してください[4]。
かゆみと一緒に水ぶくれ(水疱)ができました。性感染症ですか?
性器ヘルペスの可能性があります。初感染では発熱・強い痛み・多発する潰瘍が2〜4週間続くことがあるとされています[8]。水疱・潰瘍を見つけたら自己判断せず、早めに婦人科・皮膚科・性感染症の専門外来を受診してください。
いぼのようなできものがあります。かゆみはありません。
尖圭コンジローマの可能性があります。かゆみや痛みを伴うこともありますが、多くの人は気づかないこともあるとされています[2]。かゆみがなくても、いぼ状のできものに気づいたら受診して確認することをおすすめします。
パートナーが性感染症だと言われました。自分も検査すべきですか?
はい。パートナーが性感染症と診断された場合、症状がなくても検査を受けることが望ましいとされています。性器ヘルペスは感染者の約70〜80%が無症状のままウイルスを排出しているとされており[8]、症状の有無だけでは感染していないと判断できません。
デリケートゾーンを清潔にするために腟洗浄をした方がいいですか?
腟洗浄器の使用は推奨されていません。腟洗浄は外陰部や腟に刺激感を引き起こしたり、骨盤内炎症性疾患のリスクを高めたりすることがあるとされています[4]。綿の下着の着用や、入浴後にしっかり乾かすといった一般的な対策の方が推奨されています[4]。
閉経後、腟が乾燥してかゆみがあります。年齢のせいだから仕方ないですか?
仕方ないわけではなく、治療の選択肢があります。日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会のガイドラインは、局所または全身的なエストロゲン療法や、保湿剤・潤滑ゼリーの使用を挙げています[1]。放置せず婦人科に相談してください。
股部白癬(いんきんたむし)は他の人にうつりますか?
皮膚糸状菌感染症のため、直接接触やタオルの共用などを介して感染が広がる可能性があります。爪水虫や足白癬のある人では再発がよくみられるとされ[3]、足の水虫を放置しないことも間接的な予防につながります。
妊娠中ですが陰部にかゆみがあります。市販薬を使ってもいいですか?
妊娠中は使用できる薬剤に制限がある場合があるため、自己判断で市販薬を使わず、必ず産婦人科に相談してください。妊娠は腟内の酸性度の変化などを通じてカンジダ症のリスクを高める要因の一つとされています[4]。
子どもの陰部のかゆみも同じ原因ですか?
小児における腟のかゆみとおりものは、成人とは原因の傾向が異なるとされています。本ページは成人(妊娠可能年齢〜閉経後の女性、成人男性)を対象としており、子どもの症状については小児科医に相談してください。

日本と海外のガイドライン比較

項目 日本(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 2023) 米国(MSDマニュアル)
閉経後の腟・外陰部不快症状への初期対応 感染・炎症、腫瘍性病変、骨盤臓器脱の確認を推奨度Aで明記。皮膚腫瘍・硬化性苔癬などは皮膚科へ紹介[1] 原因(感染症・化学的刺激・皮膚疾患・萎縮性変化など)を幅広く鑑別する診断アプローチを解説[4]
閉経後症状の治療 局所または全身的エストロゲン投与、保湿剤・潤滑ゼリーを推奨度Bで明記[1] 低用量エストロゲンの腟内投与などが選択肢として説明されている[4]

両者とも「感染症や腫瘍性病変を除外したうえでホルモン療法を検討する」という基本的な流れは共通していますが、日本産科婦人科学会のガイドラインは推奨度(A・Bなど)を明記した診療手順としてまとめられている点が特徴で、実際にどの検査・治療を受けるかは個々の状態によって医師が判断します[1]。

陰部のかゆみ・トラブルに関する記事一覧

妊娠中・持病がある方の陰部のかゆみへの対応については、今回参照した資料には詳細な記載が見当たりませんでした。自己判断で市販薬を使わず、必ず産婦人科または主治医に相談してください。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023(案)」CQ421 2022 jaog.or.jp
  2. 東京都感染症情報センター「尖圭コンジローマ」 idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp
  3. MSDマニュアル プロフェッショナル版「股部白癬(いんきんたむし)」 msdmanuals.com
  4. MSDマニュアル家庭版「腟のかゆみとおりもの(外陰部のかゆみ)」 msdmanuals.com
  5. 厚生労働省「性感染症報告数」 mhlw.go.jp
  6. MSDマニュアル家庭版「カンジダ症」 msdmanuals.com
  7. MSDマニュアル家庭版「接触皮膚炎」 msdmanuals.com
  8. 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「性器ヘルペスウイルス感染症(詳細版)」 id-info.jihs.go.jp
  9. MSDマニュアル家庭版「陰茎を侵す皮膚の異常」 msdmanuals.com
  10. MSDマニュアル プロフェッショナル版「カンジダ腟炎」 msdmanuals.com