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JHO 病気ペディア

食道がん

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
手術後の食事の進め方 記事へ 抗がん剤の副作用が怖い 記事へ ステージ別の生存率は? 記事へ 5年生存率はどのくらい? 記事へ

✦ 結論から言うと

食道がんは、早期(0期・Ⅰ期)で見つかり内視鏡的切除や手術を受けられれば治癒が期待できるがんです[1]。国立がん研究センターの院内がん登録の集計では、Ⅰ期の5年ネット・サバイバル(がん以外の死因を除いた生存率)は78.4%である一方、Ⅳ期では8.7%まで下がります[7]。つかえ感や体重減少などの症状は進行してから出ることが多いため、症状がなくても喫煙・飲酒歴のある方は内視鏡検査について医師に相談することが、生命を左右する早期発見につながります[1]。

食道がんには扁平上皮がん(約90%弱)と腺がん(約7%程度)の2つの組織型があり、危険因子や進行度分類の一部が異なります[1]。危険因子の中心は喫煙と飲酒で、特に両方の習慣が重なると危険性はより高まるとされています[5]。治療は0期の内視鏡的切除から、手術、化学放射線療法、ⅣB期の薬物療法まで病期に応じて選択され、どの病期でも緩和ケア・支持療法を併用できます[4]。

主な原因 喫煙と飲酒(特に扁平上皮がんで両方の習慣がある人はより危険性が高まる)、熱い飲食物[5]
主な症状 初期はほぼ無症状。進行すると飲食時のつかえ感・体重減少・胸や背中の痛み・咳・嗄声(声のかすれ)[1]
受診の目安 つかえ感・体重減少・胸背部痛が続く場合はできるだけ早く消化器内科(がん専門医のいる医療機関)で内視鏡検査を[1]

食道がんとは?原因と2つのタイプ・危険因子

食道は、咽頭(のど)と胃の間をつなぐ管状の臓器です。咽頭付近を頸部食道、胸の付近を胸部食道、胃と食道がつながる上下2cmの部分を食道胃接合部領域と呼びます。食道の壁は、内側から粘膜(粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板)、粘膜下層、固有筋層、外膜の順に層をなしており、周囲には気管、心臓、大動脈や肺などの臓器や背骨に囲まれています[1]。食道がんは、この食道の内面をおおっている粘膜の表面からできます。食道のどこにでもできる可能性がありますが、約半数が食道の中央付近からできます。また、食道内にいくつも同時にできることもあります[1]。


組織型による2つのタイプ

日本の食道がんの組織型分類(がんの種類による分類)では、扁平上皮がんというタイプが90%弱を占め、腺がんというタイプは7%程度です。まれに、この2つ以外の組織型であることもあります[1]。特に扁平上皮がんは、喫煙と飲酒との強い関連があることが分かっています[5]。一方、腺がんは胃酸などの逆流が長く続く逆流性食道炎や、それに伴う食道粘膜の変化(バレット食道)が背景にあるタイプとして知られていますが、この点について今回参照した国立がん研究センターの資料には詳しい発生率の記載が見当たりませんでした。

危険因子——飲酒と喫煙の「重なり」が危険性を高める

食道がんが発生する主な要因は、喫煙と飲酒です[5]。飲酒により体内にはアセトアルデヒドが生じます。アセトアルデヒドは発がん性の物質で、アセトアルデヒドの分解に関わる酵素の活性が生まれつき弱い人(お酒を飲むと顔が赤くなる体質の人など)は、食道がんが発生する危険性が高まることが報告されています。また、喫煙と飲酒、両方の習慣がある人は、より危険性が高まることが指摘されています[5]。つまり、飲酒単独・喫煙単独よりも、両方が重なることで危険性が相乗的に高まると考えられます。さらに、熱いものを飲んだり食べたりすることが、食道がんができる危険性を高めるという報告も多くあります[5]。

世界保健機関(WHO)も、がん全体の死亡の4分の1近くがたばこの使用、飲酒、高い体格指数(BMI)、野菜・果物摂取不足、運動不足に関連すると位置づけており[9]、喫煙・飲酒が消化管のがんの主要な危険因子であるという点は、日本のがん情報サービスの説明と方向性が一致しています。ただし個々の数値(たばこ・飲酒の相対危険度など)については、今回参照したWHOの資料に食道がん固有の記載は見当たりませんでした。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がんについて」(2023年3月29日更新)[1]/「食道がん 発生要因・予防・検診」(2025年3月25日更新)[5]/WHO「Cancer」Fact sheet[9]

食道のどこにできるか——頸部食道・胸部食道・食道胃接合部の違い

食道は、咽頭付近を頸部食道、胸の付近を胸部食道、胃と食道がつながる上下2cmの部分を食道胃接合部領域と呼びます。食道は体の中心部にあり、気管、心臓、大動脈や肺などの臓器や背骨に囲まれています[1]。食道がんは食道のどこにでもできる可能性がありますが、約半数が食道の中央付近(胸部食道)からできます[1]。周囲を心臓・大動脈・気管・肺・背骨などの重要な臓器に囲まれているため、がんが食道の壁を越えて広がると、これらの臓器への浸潤や、周囲の神経(声帯を動かす反回神経など)への影響が出やすいことが、食道がんの症状や手術の難しさにつながっています[1]。なお、食道胃接合部にできた腺がんは、食道の扁平上皮がんとは進行度分類が異なり、胃がんの病期分類に従って判断されます[4]。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がんについて」(2023年3月29日更新)[1]/「食道がん 治療」(2023年3月29日更新)[4]

症状——初期はほぼ無症状、進行するとつかえ感や体重減少が出る

食道がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどです。がんが進行するにつれて、飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み、咳、嗄声(声のかすれ)などの症状が出ます[1]。がんが大きくなるにつれて食道の内側が狭くなると、飲食物がつかえやすくなり、次第に軟らかい食べ物しか通らなくなります。がんがさらに大きくなると、食道をふさいで水も通らなくなり、唾液も飲み込めずに戻すようになります。飲食物がつかえると食事の量が減り、体重が減少します[1]。がんが進行して食道の壁を越え、周囲にある肺・背骨・大動脈などに浸潤すると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。気管や気管支を圧迫・浸潤すると咳が出ることがあり、声帯を調節している神経に浸潤すると声がかすれることがあります[1]。

症状の現れ方と受診の目安
症状 意味すること 受診の目安
無症状 初期の食道がんはほぼ自覚症状がない 症状を待たず、危険因子がある方は内視鏡検診を
胸のつかえ感・嚥下困難 がんが大きくなり食道の内側が狭くなってきているサイン できるだけ早く消化器内科で内視鏡検査を
体重減少 飲食物がつかえて食事量が減っていることが多い 数か月で明らかな体重減少があれば早期に受診
胸部・背部の痛み がんが食道の壁を越えて周囲臓器に浸潤したサインのことがある 進行のサインとして速やかに受診
咳・嗄声(声のかすれ) 気管・気管支や声帯の神経への浸潤で起こることがある 長引く場合は消化器内科・耳鼻咽喉科を受診

なお、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状は、肺や心臓、のどの病気でも起こります。このような症状がある場合には、肺や心臓、のどだけでなく、食道の検査も受けることが大切です[1]。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がんについて」(2023年3月29日更新)[1]

検査・診断——内視鏡検査から病期(ステージ)の決め方まで

食道がんを確定するための検査には、上部消化管内視鏡検査と上部消化管造影検査の2種類があります。上部消化管内視鏡検査は、上部消化管造影検査で見つけにくい無症状、あるいは初期の食道がんを発見することもできる検査です[3]。内視鏡検査では食道の粘膜の色や凹凸などを直接観察し、異常な部分の組織を採取して顕微鏡でがん細胞の有無を確認する生検(病理検査)を行い、がんの位置・広がり・数・深さも確認します。診断しやすくするために、特殊な色素を粘膜に散布したり、特殊な波長の光を使ったり、画像を拡大して観察したりすることもあります[3]。上部消化管造影検査は、バリウムなどの造影剤を飲んで食道を通過する様子をX線で撮影し、がんの場所・大きさ・食道内腔の狭さなど全体を確認する検査です[3]。

治療方針を決めるためには、がんの進行度を診断する必要があります。がんの深さや周辺臓器への広がり、リンパ節や肺・肝臓などへの転移の有無を調べるため、確定診断のための検査に加えて、超音波内視鏡検査、CT検査、MRI検査、超音波(エコー)検査、PET検査などが行われます[3]。超音波内視鏡検査は、内視鏡の先端についた超音波装置を用いて、がんが「どのくらい深く広がっているか」「周りの臓器まで広がっていないか」「食道の外側にあるリンパ節に転移していないか」をより詳細に調べる検査です[3]。PET検査は、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を注射し、活発に増殖するがん細胞への取り込みの分布を撮影することで転移の有無を調べる検査です[3]。

病期(ステージ)はTNM分類の組み合わせで決まる

ステージ(病期)は、食道がんでは早期から進行するにつれて0期〜ⅣA、ⅣB期まであります。ステージは、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決まります[4]。

TNM分類の3つのカテゴリー(日本食道学会による分類)
カテゴリー 意味
Tカテゴリー 原発腫瘍(がんが初めに発生した部位)の広がり(深達度)——粘膜にとどまるか、粘膜下層・固有筋層・食道の外まで及ぶか
Nカテゴリー 領域リンパ節(食道の近くにあるリンパ節)に転移したがんの個数
Mカテゴリー 遠隔転移(がんができた場所から離れた臓器やリンパ節への転移)の有無

進行度分類には、治療方針を決めるときに使う「臨床的進行度分類」と、切除した病変を病理診断し実際のがんの広がりを評価した「病理学的進行度分類」があります。また、食道がんは扁平上皮がんと腺がんでは進行度分類が異なり、食道胃接合部の腺がんの場合は胃がんの病期分類に従って進行度を判断します[4]。この進行度分類には、日本食道学会による分類と、国際的な分類(UICCによる分類)があり、国際的な分類が使われることもあります[4]。

血液検査(腫瘍マーカー)の位置づけ

腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過・治療効果をみる目的で行われる血液検査です。食道がんの扁平上皮がんではSCC(扁平上皮がん関連抗原)とCEA(がん胎児性抗原)、腺がんではCEAを測定します。ただし、腫瘍マーカーの値の変化だけでは、がんの有無や進行の程度は確定できません。がんがあっても値が高くならないこともあるため、画像検査など他の検査結果とあわせて医師が総合的に判断します[3]。「腫瘍マーカーの数値が正常だったから食道がんではない」と自己判断することは危険です。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 検査」(2023年3月29日更新)[3]/「食道がん 治療」(2023年3月29日更新)[4]/日本食道学会編『臨床・病理 食道癌取扱い規約 第12版』(2022年,金原出版)[2]

ステージ別の標準治療——内視鏡的切除から化学放射線療法まで

食道がんの治療には、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法、化学放射線療法などがあります。また、診断されたときから、がんに伴う心と体のつらさなどを和らげるための緩和ケア・支持療法を受けることができます[4]。治療は、がんのステージに応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医(消化器内科・食道外科などのがん専門医)と話し合って決めていきます[4]。

病期の目安と主な治療法
病期の目安 主な治療法
0期(粘膜にとどまる早期がん) 内視鏡的切除(内視鏡的粘膜切除術EMR/内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)で食道を温存する治療が標準治療として推奨される。対象はリンパ節転移のない0期で、食道の全周に及んでいないか、全周でも長さ5cm以下のがん[4]
手術可能な進行がん 手術(食道切除・リンパ節郭清など)。体力的に手術が難しい場合や本人が希望しない場合は、根治を目指す根治的化学放射線療法を行う[4]
内視鏡的切除が難しい0期〜ⅣA期 化学療法と放射線照射を同時に行う化学放射線療法(放射線治療単独より効果的とされる)を中心とした集学的治療[4]
ⅣB期(遠隔転移あり) 薬物療法(化学療法)を中心に検討。症状緩和の目的で化学放射線療法が行われることもある[4]

内視鏡的切除で切除したがんを含む組織は病理検査で詳細に調べます。がん細胞が粘膜下層に広がっている、リンパ管や静脈に侵入しているなど、がんが残っている可能性やリンパ節転移の可能性が高いと判断された場合は、内視鏡的切除後に化学放射線療法や手術を行う場合があります[4]。また、がんが食道の3/4周以上に及んでいるときは、内視鏡的切除後に狭窄予防のための治療(ステロイドの注射・内服など)が行われます[4]。根治的化学放射線療法のあとにがんが残っていたり再発したりした場合には、救済治療として手術や内視鏡治療(内視鏡的切除、光線力学療法など)を行うことがありますが、救済治療としての手術は合併症の発生頻度や術後の死亡率が高くなるとされています[4]。

体力的に手術が難しいと判断された場合でも、治療の選択肢がなくなるわけではありません。根治的化学放射線療法という、根治を目指せる別の道が用意されています[4]。

手術に伴う主な合併症

食道がんの手術に伴う合併症には、縫合不全(つなぎ目のほころび)、肺炎、嗄声(声のかすれ)、肝・腎・心臓などの臓器の障害などがあります。これらの合併症が死につながる確率は2〜3%とされ、特に高齢者や別の臓器に障害をもっている人で起きやすくなります[4]。縫合不全が起こった場合はつなぎ目から食物や消化液が漏れて炎症が起こり、手術後の食事開始が遅れることがあります。手術で声帯を調節する神経(反回神経)に触れることで嗄声が起こることがありますが、多くの場合3〜6カ月程度で回復します[4]。食道が著しく狭くなり食物が通らなくなった場合には、胃や腸を使って新しい食物の通り道をつくるバイパス手術や、食道ステント(金属でできた筒状の器具)の挿入が行われることもあります[4]。

放射線治療——根治照射と緩和照射

放射線治療には、がんを治すことを目的にした根治照射と、がんによる症状を抑えるための緩和照射の2つがあります。手術と同様にがんのある部分に対して行う治療で、食道や胃、喉頭(声帯)の機能を温存できることが特徴です。高エネルギーのX線などをがんに直接あて、通常は連日照射(週5日、6週間など)を行います[4]。がんの広がりが照射できる範囲にとどまっている場合は根治照射でがんの消失(治癒)を目指します。がんが広範囲に広がり手術や根治照射ができない場合は、痛みや食道の狭窄によるつかえなどの症状をやわらげる目的で緩和照射が行われ、根治照射よりも短い期間で行われることが多いとされています[4]。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 治療」(2023年3月29日更新)[4]

ステージ別5年生存率——国立がん研究センターの院内がん登録データ

がんの治療成績を示す指標の1つに生存率があります。生存率とは、がんと診断されてから一定の期間を経過した時点で生存している割合をパーセンテージ(%)で示すもので、診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます[6]。生存率には大きく2つの示し方があります。「実測生存率」は死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率、「相対生存率」はがん以外の死因を除いてがんのみによる死亡を計算した生存率です[6]。近年は相対生存率に代わり、純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算する「ネット・サバイバル」という国際的にも広く採用されている方法が使われています[7]。

以下は、国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センターが公表している院内がん登録生存率集計結果閲覧システムのデータで、2014〜2015年に食道がんと診断された患者を対象とした病期別の5年生存率です[7]。

食道がんの病期別5年生存率(2014〜2015年診断、院内がん登録)
病期(ステージ) 対象数 5年ネット・サバイバル(95%信頼区間) 5年実測生存率
Ⅰ期 11,222例 78.4%(77.5〜79.3%) 70.6%
Ⅱ期 2,813例 48.9%(47.0〜50.8%) 44.7%
Ⅲ期 5,119例 27.4%(26.3〜28.4%) 25.3%
Ⅳ期 1,864例 8.7%(7.9〜9.6%) 8.1%
全体(病期不明等含む) 21,294例 47.8%(47.2〜48.5%) 43.4%

この表が示す最大のポイントは、Ⅰ期とⅣ期では5年ネット・サバイバルに約70ポイントもの差があるということです[7]。がん情報サービスは、生存率について「データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての人に当てはまる値ではありません」と注意を促しています[6]。実際の見通しは、年齢や体の状態、がんの組織型、治療への反応など個別の要因によって変わるため、必ず担当医と相談してください。なお、この表には内視鏡的切除の主な対象となる0期のデータは含まれておらず、0期・Ⅰ期の早期発見・早期治療がその後の生存率を大きく左右すると考えられます[1]。

出典:国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム「食道がん(食道癌)2014-2015年5年生存率」[7]/がん情報サービス「食道がん 患者数(がん統計)」(2023年7月5日更新)[6]

予防と検診——禁煙・節酒と内視鏡検診が鍵

日本人を対象とした研究では、がん全般の予防には禁煙すること、飲酒をひかえること、バランスのよい食事をとること、活発に身体を動かすこと、適正な体形を維持すること、感染を予防することが有効であることが分かっています[5]。食道がんを予防するためには禁煙し、飲酒をひかえましょう。特に大量飲酒をしている人は、飲酒をひかえることで食道がんの発生予防が期待できるとされています。また、野菜や果物を積極的に食べることで、食道がんができにくくなるという報告もあります[5]。

食道がんには国の指針で定めるがん検診が「ない」

ここは誤解が多い点なので正確に書きます。日本では厚生労働省の指針でがん検診の方法が定められていますが、食道がんについては、現在この指針として定められているがん検診はありません[5]。胃がん検診で行われる上部消化管造影検査は食道ではなく胃を重点に検査するものです。飲食時の胸の違和感や食べ物がつかえるなどの症状があれば、検査前にその旨を伝え、食道も確認してもらうことが大切です[5]。

つまり、食道がんは「症状が出てから医療機関を受診する」ことが早期発見の中心的な入口になります。食道がんは初期には自覚症状がないことがほとんどのため[1]、喫煙・飲酒の習慣がある方(特に両方の習慣があり、飲酒で顔が赤くなりやすい体質の方[5])は、症状がなくても内視鏡検査について医師に相談する価値があります。ただしこれは国の指針に基づく検診ではなく、個人のリスクに応じた任意の受診である点にご留意ください。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 発生要因・予防・検診」(2025年3月25日更新)[5]

治療後の療養・緩和ケア——重複がんの経過観察と生活の工夫

食道がんの根治切除後は、定期的に通院して検査(経過観察)を受けます。経過観察の目的は、(1)再発の早期発見・早期治療、(2)体の状態やクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の評価と改善、(3)食道の中に複数の病変が発生する多発がんや、胃がん・頭頸部がんなどの重複がんの早期発見・早期治療の3つです[8]。再発の早期発見を目的とした検査では、問診やCT検査、上部消化管内視鏡検査などが行われます。多発がん・重複がんの早期発見のためには、咽頭から治療後に残った食道と胃にかけて、上部内視鏡検査による定期的かつ慎重な観察が必要とされています[8]。同時または別の時期に複数の臓器に発生したがんを重複がんといい、食道がんでは約20%に重複がんが発生するといわれています。多いのは、胃がん、頭頸部がん(咽頭がん、喉頭がんなど)、大腸がん、肺がんなどです[1]。

薬物療法(化学療法)は、副作用を予防・緩和する支持療法が進歩したため、通院で行うことも増えています。通院での薬物療法は仕事・家事・育児・介護など今までの日常生活を続けながら治療を受けられる一方、体調が悪くても無理をしてしまいやすいという面もあります。治療により万全の体調ではないことを忘れず、予想される副作用やその時期・対処法を医師や看護師、薬剤師に事前に確認し、通院時には疑問点や不安点を相談しながら治療を進めることが大切です[8]。

食道がんの手術によって食物の通り道が変わると、食事量が減り体重が減少しやすくなります。また、胃酸や消化液の逆流による逆流性食道炎や、飲食物が小腸に速く流れ込むことで動悸・発汗・めまいなどが起こるダンピング症候群が起こりやすくなります[8]。逆流性食道炎に対しては、横になると消化液が逆流しやすくなるため食事は就寝前2〜4時間までにとる、脂肪の多い食事は控えるなどの生活面での工夫が必要です[8]。

ダンピング症候群——起こる時期と対策
種類 起こる時期・仕組み 主な症状 対策
早期ダンピング症候群 食後すぐ。未消化の食べ物が急に小腸に入ることで起こる 動悸・発汗・めまい・脱力感 食事回数を増やし1回量を減らす、ゆっくりよくかんで食べる
後期ダンピング症候群 食後2〜3時間。糖質の急速な吸収でインスリンが大量分泌し血糖が下がり過ぎる めまい・脱力感・発汗・震え 症状を感じたらすぐ糖分(アメなど)を摂る。甘いジュース・流動食を控える

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 療養」(2023年3月29日更新)[8]

治療後の食事の工夫

内視鏡的切除・手術・放射線治療のあとは、治療を受けた部分の食道が狭くなり食事がつかえることがあります。手術や放射線治療では飲み込みの力が落ちて誤嚥を起こしやすくなるため、食べ方や食事内容を工夫し、嚥下リハビリテーションも活用します[8]。基本的には好きなものを少しずつ小さく刻み、無理をせず医師の指示に従ってゆっくりよくかんで食べます。なるべく軟らかく煮たものやのどごしの良いもの(プリンなど)を選び、パサパサした食べ物(のりなど)は避けることが勧められます。水分は最も誤嚥しやすいため、とろみをつける、吸い飲みを使うなどの工夫が有効です[8]。食欲がないときは無理に食べる必要はなく、好きで食べやすいものを選んでかまいません。全く食べられない場合でも水分はとるようにし、とれないときは点滴で栄養を補うこともあります。治療後3カ月程度でゆっくり元の食事量に戻すことを目指すとよいとされています[8]。体重が戻らないことなどに不安があるときは、遠慮せず医師・看護師・栄養士に相談してください。

診断されたときから、がんに伴う心と体のつらさなどを和らげるための緩和ケア・支持療法を受けることができます[4]。緩和ケアは終末期だけのものではなく、治療と並行して痛みや不安をやわらげるためのケアです。つらさを我慢する必要はなく、担当医や看護師、緩和ケアチームに早めに相談することが大切です。自己判断で治療薬の量を減らしたり通院・治療を中断したりせず、必ず担当医に相談してください。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 療養」(2023年3月29日更新)[8]/「食道がんについて」(2023年3月29日更新)[1]/「食道がん 治療」(2023年3月29日更新)[4]

医療費の目安

食道がんの治療は、内視鏡的切除・手術・化学放射線療法・薬物療法のいずれも公的医療保険の対象で、自己負担は原則3割(高齢者は所得に応じて1〜2割)です。長期の入院や高額な薬物療法が続く場合は、高額療養費制度により自己負担の上限が設けられています。目安となる金額は下の表のとおりです。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

よくある質問(FAQ)

食道がんは治りますか?早期発見なら治りますか?
早期(0期・Ⅰ期)で見つかり内視鏡的切除や手術を受けられれば治癒が期待できます。国立がん研究センターの院内がん登録データでは、Ⅰ期の5年ネット・サバイバルは78.4%です[7]。一方でⅣ期では8.7%まで下がるため[7]、早期発見が治療成績を大きく左右します。
食道がんの初期症状はどのようなものですか?
初期にはほぼ自覚症状がありません。進行すると、飲食時のつかえ感、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどが出ます[1]。症状が出てからでは進行していることも多いため、症状を待たずに内視鏡検診を受けることが重要です。
お酒を飲むと顔が赤くなる人は食道がんのリスクが高いのですか?
飲酒により体内で発がん性物質アセトアルデヒドが生じますが、その分解に関わる酵素の働きが生まれつき弱い人(飲酒で顔が赤くなりやすい体質の人)は、食道がんが発生する危険性が高まることが報告されています[5]。喫煙も重なるとさらに危険性が高まるとされています[5]。
熱い飲み物や食べ物は本当に食道がんのリスクになりますか?
はい。熱いものを飲んだり食べたりすることが食道がんができる危険性を高めるという報告が多くあります[5]。熱すぎる飲食物は少し冷ましてから摂ることをおすすめします。
どのような検査で食道がんが見つかりますか?
上部消化管内視鏡検査と上部消化管造影検査で確定診断を行います。内視鏡検査は無症状・初期の食道がんを発見できることもある検査です[3]。進行度の診断には超音波内視鏡検査、CT、MRI、PET検査などが追加で行われます[3]。
ステージ4(Ⅳ期)でも治療法はありますか?
あります。ⅣB期(遠隔転移あり)では薬物療法(化学療法)を中心に、症状緩和の目的で化学放射線療法を組み合わせることがあります[4]。また診断時から緩和ケア・支持療法を受けることができ、つらさをやわらげながら治療を続けることができます[4]。
手術後の食事で気をつけることはありますか?
食物の通り道が変わることで食事量が減りやすく、逆流性食道炎やダンピング症候群(動悸・発汗・めまいなど)が起こりやすくなります[8]。就寝前2〜4時間は食事を控える、脂肪の多い食事を控えるなどの工夫が有効です[8]。
食道がんの治療後、定期検査は何のために受けるのですか?
再発の早期発見に加え、食道がんでは約20%に発生するとされる重複がん(胃がん、頭頸部がん、大腸がん、肺がんなど)の早期発見のためです[1]。自己判断で通院を中断せず、指示された間隔での経過観察を続けてください。
食道がんを予防する方法はありますか?
禁煙し、飲酒(特に大量飲酒)をひかえることが最も重要です。熱い飲食物を控え、野菜や果物を積極的に摂ることも予防につながるとされています[5]。症状がなくても、喫煙・飲酒歴のある方は内視鏡検査について医師に相談する価値があります。
食道がんが心配なとき、何科を受診すればよいですか?
消化器内科を受診してください。上部消化管内視鏡検査による確定診断が中心となります[3]。診断がついたあとは、消化器内科・食道外科・放射線治療科・腫瘍内科など複数の診療科が連携し、がん専門医のチームで治療方針を検討します[4]。
手術後に声がかすれるのはなぜですか?治りますか?
手術で発声を調節する神経(反回神経)に触れることで、術後に嗄声(声のかすれ)が起こることがあります。多くの場合、3〜6カ月程度で回復するとされています[4]。嗄声があるときは、飲み込む際にむせないよう顎を引いて飲み込むなどの工夫も有効です。

不安なときの相談先

診断や治療について不安があるとき、セカンドオピニオンを考えたいとき、医療費の心配があるときは、一人で抱え込まず相談してください。全国のがん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」が設置されており、その病院にかかっていない方や診断がまだついていない方でも、無料で相談できます[1]。担当のがん専門医(消化器内科・食道外科など)に率直に疑問を伝えることも、納得して治療を選ぶための大切な一歩です。

食道がんに関する記事一覧

扁平上皮がんと腺がんの日本国内での正確な発生比率の年次推移や、腺がんとバレット食道・逆流性食道炎との関連の詳しい統計については、今回参照した国立がん研究センターの資料には詳細な記載が見当たりませんでした。より詳しい最新の数値は、日本食道学会の食道癌診療ガイドラインの改訂版もあわせてご確認ください。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がんについて」(2023年3月29日更新) ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/about.html
  2. 日本食道学会編『臨床・病理 食道癌取扱い規約 第12版』(2022年,金原出版)※国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 治療」に引用 ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 検査」(2023年3月29日更新) ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/diagnosis.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 治療」(2023年3月29日更新) ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 発生要因・予防・検診」(2025年3月25日更新) ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/prevention_screening.html
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 患者数(がん統計)」(2023年7月5日更新) ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/patients.html
  7. 国立がん研究センターがん対策研究所 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム「食道がん(食道癌)全体 2014-2015年診断 5年生存率」 hbcr-survival.ganjoho.jp
  8. 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 療養」(2023年3月29日更新) ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/follow_up.html
  9. World Health Organization「Cancer」Fact sheet(2026年7月8日更新) who.int/news-room/fact-sheets/detail/cancer