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子宮内膜炎の原因と症状|急性・慢性の違いとガイドライン

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日本産婦人科医会の研修資料をもとにJHO編集部が作成

子宮内膜炎(しきゅうないまくえん)は、子宮の内側を覆う「子宮内膜」に炎症が起こる病気で、大きく急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎に分かれます。急性は出産・流産後や子宮内の処置後に細菌が入り込んで起こることが多く、38℃以上の発熱・下腹部痛・悪臭のあるおりものが目安になります[1]。慢性は自覚症状に乏しく、不妊治療がうまくいかない場合の検査で偶然見つかることが多いタイプです[2]。日本産婦人科医会の研修資料が示すとおり、発熱・強い下腹部痛・悪臭帯下がある場合は産婦人科の早期受診が必要で、放置すると骨盤内の他臓器へ炎症が広がるリスクがあります[1]。

要点まとめ

  • ✓ この病気は「急性」と「慢性」で原因・症状・調べ方が大きく異なります
  • ✓ 急性は出産後・流産後・子宮内処置後の細菌感染が主な原因です[1]
  • ✓ 慢性は自覚症状がほとんどなく、不妊・着床不全の検査で見つかることが多いタイプです[2]
  • ✓ 慢性子宮内膜炎と不妊・着床不全との関係は、まだ結論が出ていない研究領域です[3]
  • ✓ 日本産婦人科医会の基準では、38℃以上の発熱・強い下腹部痛・悪臭のあるおりものが早期受診の目安です[1]

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

編集方針・科学的根拠

本記事はJHO編集部がAIツールの支援を受け、日本産婦人科医会(JAOG)の研修資料および海外の査読付き医学論文(PubMed収載)と照合して作成しました。特定の一人の臨床医による個別の確認・保証というかたちでの制作体制は取っておらず、すべての数値・記述は出典元の原文と突き合わせて確認しています。更新日:2026年8月10日。誤りや古い情報にお気づきの際は、記事下部の問い合わせ先までお知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。

この記事の限界について

子宮内膜炎、とりわけ慢性子宮内膜炎は、診断基準や治療方針について国際的にもまだ研究者の間で意見が一致していない領域です[2][3]。本記事は現時点(2026年8月)で確認できた公的資料・査読論文をもとにまとめたものであり、今後の研究の進展によって内容が更新される可能性があります。個々の症状・検査結果の解釈は、必ず担当の産婦人科医にご相談ください。

子宮内膜炎とは何か

この病気は、子宮の内側を覆う粘膜組織「子宮内膜」に細菌感染や炎症細胞の浸潤が起こる状態の総称です。婦人科領域では、卵管・卵巣・骨盤腹膜まで炎症が及ぶ場合を含めて「骨盤内感染症(PID:pelvic inflammatory disease)」と呼び、この炎症はその一部、あるいは入り口にあたる病態として扱われます[1]。PIDを発症すると、その後に不妊症や異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクが上がることが知られており、速やかな抗菌薬治療が必要とされています[1]。

急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎の違い
項目 急性子宮内膜炎 慢性子宮内膜炎
主な発症状況 出産後・流産後・人工妊娠中絶後・子宮内処置(内膜掻爬、IUD挿入など)後 目立った誘因なく持続、または急性期を経ずに発症
主な症状 発熱、下腹部痛、悪臭を伴うおりもの・出血 無症状〜軽い不正出血、下腹部の違和感(自覚しにくい)
診断の入口 問診・内診・血液検査(白血球・CRP上昇)・超音波検査[1] 子宮鏡検査、子宮内膜組織のCD138(形質細胞マーカー)免疫染色[2]
臨床上の主な懸念 骨盤内炎症性疾患(PID)への進展、不妊・異所性妊娠リスク上昇[1] 不妊治療における着床不全との関連が研究段階[3]

第1部:急性子宮内膜炎——出産後・処置後に起こりやすいタイプ

よくある原因

急性のタイプは、腟や子宮頸管にいる常在菌が何らかのきっかけで子宮内腔へ侵入し、子宮内膜に感染を起こすことで発症します。代表的なきっかけは次のとおりです。

  • 経腟分娩・帝王切開後(産褥期の子宮内感染)
  • 流産後・人工妊娠中絶後の処置
  • 子宮内膜組織診、子宮鏡検査、子宮卵管造影検査(HSG)などの子宮内処置
  • IUD(子宮内避妊器具)の挿入
  • 性感染症(クラミジア・淋菌など)からの上行性感染

日本産婦人科医会の研修資料では、PID(骨盤内感染症)の起因菌として腟・頸管の常在菌に加え、性行為感染症の原因菌であるクラミジア・トラコマティスや淋菌、さらに近年はマイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)が注目されており、PID全体の約15%を占めると報告されています[1]。海外の子宮内膜バイオプシーを用いた研究でも、Enterococcus faecalis・大腸菌(E. coli)・黄色ブドウ球菌・Mycoplasma hominis・Ureaplasma urealyticumなど複数の菌が慢性・急性いずれの内膜炎からも検出されることが報告されています[4]。

よくある症状

急性子宮内膜炎の典型的な症状は、38℃以上の発熱、下腹部の圧痛、悪臭を伴うおりもの、不正出血です。日本産婦人科医会が示すPIDの診断基準では、「下腹痛・下腹部圧痛」「子宮・付属器およびその周辺の圧痛」を必須項目とし、「38℃以上の発熱」「白血球増加」「CRP上昇」を付加的な基準としています[1]。また、産褥期の子宮内感染では、発熱に加えて悪露(産後の分泌物)の悪臭化や量の増加が目安になることがあります。

判断フレーム(急性子宮内膜炎が疑われるとき)

  • もし出産・流産・人工妊娠中絶・子宮内処置から数日〜2週間以内に発熱と下腹部痛が出たなら→ 子宮内感染を念頭に産婦人科(分娩施設で出産した場合はその施設)へ早めに連絡
  • もしおりものの悪臭が急に強くなった、量が急に増えたなら→ 自己判断で様子を見ず受診を検討
  • もし38℃以上の発熱に加えて強い下腹部痛・悪寒があるなら→ 敗血症など全身への波及を否定するため速やかな受診が必要

第2部:危険な場合——放置するとどうなるか

急性子宮内膜炎を放置、あるいは治療が不十分なまま経過すると、炎症が卵管・卵巣・骨盤腹膜へ波及し、骨盤内感染症(PID)へと進展する可能性があります。PIDを一度発症すると、その後の不妊症や卵管性の異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクが上昇することが、日本産婦人科医会の研修資料でも指摘されています[1]。そのため「様子を見ているうちに熱は下がったから大丈夫」と自己判断せず、症状が出た時点で医療機関に相談することが重要です。

まれに、分娩や流産後の子宮内感染が、絨毛膜羊膜炎の段階を超えて子宮内腔へ波及した「子宮内感染症」に進行する場合があります。産科の臨床では、胎児への影響(FIRS:胎児炎症反応症候群)につながりうる病態として、絨毛膜羊膜炎とは区別して扱われることがあると報告されています。これは主に妊娠中・分娩前後に関わる病態であり、本記事の主眼である「産後・術後に発症する子宮内膜炎」とは経過が異なりますが、「発熱を軽視しない」という点は共通しています。

第3部:背景疾患・特殊な状況

閉経後高齢者の子宮留膿症(しきゅうりゅうのうしょう)

閉経後の女性、特に寝たきりなど身体機能が低下した高齢者では、子宮頸管が萎縮して閉鎖し、子宮の中に膿がたまる「子宮留膿症(子宮留膿腫)」が生じることがあります。日本産婦人科医会の解説記事では、症状として膿性のおりもの、閉経後出血、下腹部痛、そして子宮内腔の圧が高まったときに膿が腟内へ排出される「Simpson徴候」が紹介されており、治療としては頸管拡張によるドレナージ(排膿)と抗菌薬投与が基本とされています[6]。この記事では、治療せずに放置すると子宮穿孔(子宮に穴が開く状態)や汎発性腹膜炎に至るケースが報告されている一方、その後の経過が産婦人科医の間であまり知られていない実情も指摘されています[6]。高齢者では発熱以外の症状がはっきりしないことも多く、おむつの汚れなどをきっかけに気づかれることがあります。

慢性子宮内膜炎——不妊治療の検査で見つかることが多いタイプ

慢性子宮内膜炎(CE:chronic endometritis)は、子宮内膜に形質細胞(プラズマ細胞)が持続的に浸潤している状態で、発熱や強い下腹部痛といった急性期のような自覚症状はほとんどありません。診断は主に子宮鏡検査での所見や、内膜組織をCD138(シンデカン1)という形質細胞マーカーで免疫染色して確認する方法が用いられますが、診断のしきい値(陽性とみなす細胞数の基準)は研究者・施設によって統一されていないのが実情です[2]。

慢性子宮内膜炎は、体外受精を繰り返しても着床しない「反復着床不全(RIF)」との関連が注目されてきましたが、2025〜2026年に発表された複数のレビュー論文では、この関連についてまだ結論が出ていないことが強調されています。あるレビューは、真のRIF(正常な染色体数の胚を移植しても繰り返し着床しない状態)は体外受精を受ける患者の2〜5%にとどまるとしたうえで、「RIFの女性における慢性子宮内膜炎の頻度は、対照群と比べて必ずしも高くないとする比較研究もある」と述べ、慢性子宮内膜炎がRIFに与える影響は、これまで考えられていたよりも小さい可能性を指摘しています[3]。同じレビューは、診断基準が定まらないまま、原因菌が確認されないまま抗菌薬が経験的に処方されている実情に触れ、過剰診断・過剰治療、そして薬剤耐性菌増加への懸念も挙げています[3]。

つまり、「慢性子宮内膜炎=不妊の原因」と単純に結び付けるのは、現時点の医学的根拠としてはやや先走った理解であり、診断された場合も、担当医と検査結果・治療の必要性についてよく相談することが勧められます。

原因菌——実際に検出された菌の内訳

この病気の原因菌は「これ1種類」と決まっているわけではなく、複数の菌が単独あるいは混合で関わることが一般的です。AJOG Global Reports誌に掲載された、異常出血・体外受精の失敗・反復着床不全・反復流産のあった女性500人の子宮内膜組織をリアルタイムPCR法で調べたインドの研究では、少なくとも1種類の対象病原体が検出された割合はPCR法で318例(63.6%)、従来の培養法では115例(23%)と、PCR法のほうが高い検出率を示したと報告されています[4]。検出された主な菌の内訳は次のとおりです。

PCR法で検出された主な原因菌(対象500例中の検出割合)
菌名 検出割合
エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis) 19%
黄色ブドウ球菌(S. aureus) 9%
大腸菌(E. coli) 6.8%
マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium) 6.2%
非結核性抗酸菌(nontuberculous Mycobacterium) 5.2%
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis) 5%
ストレプトコッカス・アガラクティエ(S. agalactiae) 4.2%
ウレアプラズマ・ウレアリチクム(Ureaplasma urealyticum) 4%
クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis) 2.4%
結核菌(Mycobacterium tuberculosis) 1.2%
淋菌(Neisseria gonorrhoeae) 0.6%

この研究はインドの患者集団を対象にしたものであり、日本人女性における菌の内訳がそのまま同じ割合になるとは限りません。ただし、「腟・腸管由来の常在菌(エンテロコッカス・大腸菌・ブドウ球菌など)が、性感染症の原因菌(クラミジア・淋菌)よりも高い頻度で検出される」という全体的な傾向は、日本産婦人科医会がPIDの起因菌として腟・頸管の常在菌と性感染症由来の菌の両方を挙げていることとも整合的です[1][4]。

子宮内膜症との違い・関連

「子宮内膜症(endometriosis)」は、子宮内膜に似た組織が子宮の外(卵巣・腹膜など)にできる別の病気で、この炎症の病気とは名前が似ていますが異なります。ただし近年の研究では、不妊治療を受ける女性において、子宮内膜症のある人ほど慢性の炎症が同時に見つかりやすい傾向が報告されており、両者は炎症・免疫の乱れ・着床のしやすさへの影響といった機序を共有している可能性があるとされています[7]。この分野もまだ研究が進行中で、確定的な結論には至っていません。この病気があっても妊娠は可能かについても、別記事で詳しく解説しています。

関連する子宮の病気

この病気に似た名前や、同じ子宮内膜という組織にできる病気には、いくつかの種類があります。混同しないよう、代表的なものを整理します。

🔧 何科を受診すべきか・自分の状況を整理するチェック表

症状別・受診の緊急度の目安
状況 目安 受診先
出産・流産・処置後に38℃以上の発熱+下腹部痛 🔴 早めの受診(当日〜翌日) 産婦人科(出産した施設があればまず連絡)
おりものの悪臭・量の急な変化のみ、発熱なし 🟡 数日以内の受診を検討 産婦人科
不妊治療中で、検査により慢性子宮内膜炎を指摘された 🟡 担当医と治療方針を相談 不妊治療を行う産婦人科・生殖医療施設
閉経後で、微熱が続く・おりものが多いと家族や介護者が気づいた 🟡 早めの受診 産婦人科(訪問診療の相談も可)
強い下腹部痛+高熱+悪寒・意識がぼんやりする 🔴🔴 至急受診(救急要請も検討) 産婦人科・救急外来

🚦 受診の目安

  • 🟢 軽度:発熱なし、おりものにわずかな変化のみ→ 数日以内に産婦人科を受診
  • 🟡 要注意:37.5〜38℃未満の微熱が続く、下腹部の違和感が続く→ 早めに産婦人科を受診
  • 🔴 すぐ受診:38℃以上の発熱、強い下腹部痛、悪臭の強いおりもの、出産・流産・処置後である→ 当日中に産婦人科・出産施設へ連絡

何科:産婦人科(分娩・処置を受けた施設がある場合はまずそこへ連絡するのが原則です)。費用の目安:保険診療(3割負担)の範囲内で、初診・血液検査・超音波検査・抗菌薬治療が行われるのが一般的です。入院を要する場合は高額療養費制度の対象になることがあります。

紛らわしい病気との違い

下腹部痛やおりものの異常は、この病気以外の要因でも起こります。自己判断せず受診が必要な理由の一つは、この見分けが専門的な検査なしには難しいためです。

子宮内膜炎と間違えやすい病気
病気 本記事のテーマとの違い
子宮頸管炎 炎症の主座が子宮の入り口(頸管)にとどまる。子宮内膜炎より軽症のことが多いが、放置すると内膜・卵管へ波及しうる
卵管炎・卵管卵巣膿瘍 炎症が卵管・卵巣まで広がった状態。PID(骨盤内感染症)としてより重症の部類に含まれる[1]
子宮内膜症 炎症ではなく、子宮内膜に似た組織が子宮の外にできる別の病気(前述)
虫垂炎 下腹部痛の原因として鑑別が必要。右下腹部の痛みが特徴的だが、婦人科疾患との区別に画像検査を要することがある

帝王切開後の子宮内感染について

産後の子宮内感染(子宮内膜炎を含む産褥期の感染)は、経腟分娩と比べて帝王切開後のほうが起こりやすいことが、産科領域では広く知られています。これは、手術操作によって子宮内腔が外部と接する時間があること、手術自体による組織への侵襲が関係すると考えられています。帝王切開後に発熱が続く場合、創部感染だけでなく子宮内感染の可能性も念頭に置いた診察が行われます。産後の発熱は「授乳による生理的な体温上昇」との区別が難しいこともあるため、38℃以上の発熱が半日以上続く、あるいは悪寒を伴う場合は、自己判断せず出産した施設に連絡することが基本です。

検査と診断の流れ

急性子宮内膜炎が疑われる場合は、問診(症状の経過、出産・処置歴)、内診、血液検査(白血球数・CRP)、経腟超音波検査が基本になります。日本産婦人科医会のPID診断基準では、必須項目の「下腹痛・圧痛」に加え、発熱・白血球増加・CRP上昇を補助的な指標とし、必要に応じて経腟超音波・MRIでの膿瘍像の確認、ダグラス窩穿刺による膿の吸引などの特異的な検査を行うとされています[1]。

慢性子宮内膜炎が疑われる場合(主に不妊治療の一環として)は、子宮鏡検査で内膜の微小な発赤・浮腫・ポリープ様変化などを確認し、確定診断には子宮内膜組織を採取してCD138免疫染色で形質細胞の有無を調べる病理検査が用いられます[2]。前述のとおり、この診断法には統一された陽性判定基準がまだ確立していないという限界があります[2]。

治療

急性子宮内膜炎・PIDの治療の基本は抗菌薬による薬物治療です。日本産婦人科医会の研修資料では、クラミジアやマイコプラズマ・ジェニタリウムが疑われる場合にはアジスロマイシン、ミノサイクリン、ニューキノロン系、クラリスロマイシンなどを用い、クラミジアと混合感染しやすい淋菌感染症もカバーする目的でセフトリアキソン(商品名ロセフィンなど)の静脈注射を併用することがよく行われると説明されています[1]。実際にどの薬剤をどの期間使うかは、重症度・妊娠の有無・原因菌の推定によって医師が個別に判断するため、本記事では具体的な用量は記載しません。自己判断での市販薬・海外通販の抗菌薬使用は、耐性菌のリスクを高めるため避けてください。

子宮留膿症(高齢者の子宮内膿貯留)では、頸管拡張によるドレナージ(カテーテル留置による排膿)と抗菌薬投与が基本方針として紹介されています。膿瘍の性質上、ドレナージが治療の中心であり、抗菌薬単独での経過観察は症状が落ち着くまで2週間以上かかることもあると報告されています[6]。

慢性子宮内膜炎については、原因菌が確認された場合に抗菌薬治療が行われることがありますが、前述のとおり原因菌が特定されないまま経験的に処方されるケースも多く、その有効性を示す根拠は限定的で一貫していないと指摘されています[3]。抗菌薬治療後にCD138陽性所見が改善しても、それが必ず妊娠率の向上につながるとは限らないとする報告もあり、治療方針は担当医とよく相談して決めることが大切です[2]。

日常生活での注意点

  • もし産後・術後で経過観察中であるなら→ 悪露の量・におい・体温を毎日簡単に記録しておくと、受診時に医師へ経過を正確に伝えられます
  • もし抗菌薬を処方されたなら→ 症状が良くなっても医師の指示された期間は服用を続け、自己判断で中断しないでください(不十分な治療は再燃や耐性菌のリスクを高めます)
  • もし不妊治療中に慢性子宮内膜炎を指摘されたなら→ 治療の必要性・タイミングについて、次の胚移植の予定と合わせて担当医とスケジュールを相談してください
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🌍 最新研究より

慢性子宮内膜炎の診断・治療をめぐっては、国際的にも意見が分かれています。2025〜2026年に発表された複数の系統的レビュー・ナラティブレビューは、(1)CD138免疫染色の陽性判定基準が施設間で統一されていないこと、(2)反復着床不全の女性における慢性子宮内膜炎の頻度が、対照群と比べて必ずしも高いとはいえないとする比較研究があること、(3)原因菌が未確認のまま抗菌薬が経験的に処方される実態と、それに伴う過剰治療・薬剤耐性のリスクを、共通の課題として指摘しています[2][3]。「検査で慢性子宮内膜炎と言われた=即座に治療が必要」と単純化せず、担当医と個別の状況に応じて相談することが、現時点での国際的な研究動向とも一致する対応といえます。

予防できること

  • 出産・流産・人工妊娠中絶・子宮内処置の後は、医療機関から指示されたシャワー浴・入浴の再開時期や性行為再開の目安を守る
  • 性感染症(クラミジア・淋菌など)の早期発見・早期治療のため、パートナーがいる場合は定期的な検査を検討する
  • IUD(子宮内避妊器具)を使用している場合、おりものの変化や下腹部痛があれば自己判断せず産婦人科に相談する
  • 産後は体温や悪露の変化に注意し、体調がいつもと違うと感じたら早めに連絡する
  • 子宮内膜組織診・子宮鏡検査・HSG(子宮卵管造影検査)などを受けた後、指示された期間は湯船に浸かる入浴や性行為を控える
  • 閉経後、長期間婦人科を受診していない場合は、定期的な検診の機会に子宮の状態を確認しておく

これらの処置後の感染は頻度としては高くありませんが、「処置を受けた」という事実自体が、発熱時に医師へ伝えるべき重要な情報になります。受診の際は、いつ・どんな処置や出産を受けたかを具体的に伝えるようにしてください。

ただし、これらは発症リスクを下げる一般的な生活上の注意であり、完全に予防できることを保証するものではありません。

💰 入院・治療にかかる費用の目安(高額療養費制度)

日本産婦人科医会の資料が示す治療の枠組みに沿えば、外来治療(血液検査・超音波検査・抗菌薬の内服や注射)は、通常の保険診療(3割負担)の範囲で受けられます。一方、PID(骨盤内感染症)が重症化して点滴による抗菌薬治療や入院が必要になった場合、医療費が高額になることがあります。日本には、1か月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる「高額療養費制度」があります。年齢・所得に応じた自己負担限度額の目安は以下のとおりです。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

制度の詳細な申請方法は、加入している健康保険組合または市区町村の窓口、あるいは入院先の医療機関の医療相談窓口(医療ソーシャルワーカー)に確認してください。

用語ミニ辞典

本記事で使われる専門用語(英語表記つき)
用語 読み方・意味
子宮内膜炎(endometritis) 子宮内膜に炎症・感染が起こる病気
骨盤内感染症(PID:pelvic inflammatory disease) 子宮・卵管・卵巣・骨盤腹膜などに及ぶ細菌感染症の総称
形質細胞(plasma cell) 慢性炎症で増える免疫細胞の一種。CD138という目印(マーカー)で顕微鏡下に確認する
反復着床不全(RIF:recurrent implantation failure) 正常な染色体数の胚を移植しても、繰り返し着床しない状態
子宮留膿症(pyometra) 子宮頸管が閉鎖し、子宮内に膿がたまった状態。主に閉経後に起こる

よくある質問

これはうつる病気ですか?

日本産婦人科医会の資料によれば、子宮内膜炎そのものが人から人へ感染するわけではありません。ただし、原因菌がクラミジアや淋菌など性感染症の病原体である場合、その病原体自体はパートナーへ感染しうるため、パートナーの検査・治療が必要になることがあります[1]。

子宮内膜炎になると必ず不妊になりますか?

いいえ、必ずしもそうとは限りません。日本産婦人科医会の研修資料によれば、急性子宮内膜炎・PIDは放置すると不妊リスクが上昇するとされていますが[1]、適切に治療すれば多くの場合は改善します。Reproduction & Fertility誌のレビューによれば、慢性子宮内膜炎と不妊・着床不全との関係については、現時点でまだ結論が出ていない研究領域です[3]。

症状がないのに慢性子宮内膜炎と診断されました。治療は必要ですか?

Reproduction & Fertility誌のレビューによれば、診断基準そのものが研究者・施設間で統一されておらず[2]、原因菌が確認されないまま治療するかどうかについても専門家の間で見解が分かれています[3]。次の妊活・治療計画も踏まえて、担当医とよく相談してください。

産後の悪露がにおう場合、必ず子宮内膜炎ですか?

産後の悪露は経過とともににおいが変化することがありますが、急に強い悪臭に変わった場合や発熱を伴う場合は子宮内感染の可能性があるため、自己判断せず出産した施設や産婦人科に連絡することが勧められます。

閉経後で婦人科を長年受診していません。子宮留膿症のリスクはありますか?

閉経後は子宮頸管が萎縮しやすく、特に寝たきりなど身体機能が低下している場合に子宮留膿症が起こることがあります[6]。おりものの変化や原因不明の微熱が続く場合は、婦人科での経腟超音波検査を検討してください。

子宮内膜炎と子宮内膜症は同じ病気ですか?

名前は似ていますが別の病気です。子宮内膜炎(endometritis)は炎症・感染が主体の病気、子宮内膜症(endometriosis)は子宮内膜に似た組織が子宮の外にできる病気です。ただし、Diagnostics誌のレビューによれば両者が同時に見つかりやすいという報告もあります[7]。

抗菌薬治療中に症状が良くなったら、途中でやめてもいいですか?

自己判断での中断は避けてください。症状が改善しても炎症が完全に治まっていない場合があり、不十分な治療は再燃や薬剤耐性のリスクを高めます。医師から指示された期間は服用を続けることが基本です。

不妊治療中の慢性子宮内膜炎の検査は、保険適用されますか?

検査・治療の保険適用の可否は、実施する検査の種類や医療機関、個々の状況によって異なります。詳細は受診先の医療機関に確認してください。

下腹部痛がつらいとき、受診前に市販の鎮痛薬を飲んでもいいですか?

発熱や強い痛みを一時的に和らげる目的で、用法・用量を守って市販の解熱鎮痛薬を使うこと自体は多くの場合問題ありませんが、痛みや発熱を薬で抑えて受診を先延ばしにすることは避けてください。特に出産・流産・処置後の発熱は、症状が一時的に軽くなっても感染そのものが治まったとは限りません。

この病気は再発しますか?

日本産婦人科医会の資料が示すとおり、原因菌が完全に排除されないまま治療を中断した場合や、繰り返し子宮内処置を受ける場合などは、再発のリスクがあります。処方された抗菌薬は自己判断で中断せず、指示された期間服用することが再発予防の基本です。

結論

子宮内膜炎は、急性(出産・流産・処置後の感染が中心)と慢性(自覚症状に乏しく、不妊治療の検査で見つかりやすい)で、原因・症状・調べ方が大きく異なります。日本産婦人科医会の基準では、急性期は38℃以上の発熱・強い下腹部痛・悪臭のあるおりものが受診の目安であり[1]、放置すると骨盤内感染症(PID)への進展や不妊リスクの上昇につながる可能性があります[1]。慢性子宮内膜炎については、診断基準や不妊との関連について国際的にもまだ結論が出ていない段階であり[2][3]、担当医との相談を通じて、検査結果を過度に不安視せず、必要な治療を見極めることが大切です。

🖨️ この記事を印刷して受診時にお持ちいただくと、症状の経過や気になる点を医師に伝える際の参考になります。

参考文献

  1. 日本産婦人科医会研修ノート No.106「思春期のケア」(3)骨盤内感染症(PID)の総論. jaog.or.jp(骨盤内感染症の総論) ↩
  2. Ilic J, Issa J, Varinot J, et al. Chronic endometritis diagnosis and fertility outcomes: an old unresolved question. Reproduction & Fertility. 2025. PMID: 41032339. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov ↩
  3. Yakovlev P, Supranovich D, Yakovleva L, et al. Chronic endometritis and recurrent implantation failure: a narrative review of clinical relevance and diagnostic challenges. Reproduction & Fertility. 2026. PMID: 42171438. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov ↩
  4. Nandagopal M, Rajan N R, Padhiar C, et al. Revolutionizing chronic endometritis diagnosis: real-time polymerase chain reaction unveils microbial pathogens in Indian women with abnormal bleeding and reproductive challenges. AJOG Global Reports. 2024. PMID: 39188580. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  5. 日本産婦人科医会 産婦人科ゼミナール「Dr石谷の女性医学四方山話」11.こんな時どうする?〜寝たきり高齢者の子宮留膿症. jaog.or.jp ↩
  6. Bai S, Zhou Z, Zhan H. Endometriosis and Chronic Endometritis: Shared Mechanisms, Diagnostic Challenges, and Clinical Implications in Infertility. Diagnostics (Basel). 2026. PMID: 42279519. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov ↩
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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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