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耳鼻咽喉科疾患 26分で読める 9回

突発性難聴とは?原因・症状・治療と受診までの日数の目安

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突発性難聴は、片耳(まれに両耳)の聞こえが原因不明のまま突然悪くなる病気で、発症から7日以内に治療を始めたかどうかが、聴力の戻りやすさに関係すると報告されています[1]。

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「そのうち治るだろう」と様子を見ている時間そのものが、治療の選択肢を狭めることにつながります。聞こえの異常に気づいたその日のうちに耳鼻咽喉科を受診することが勧められます。日本聴覚医学会の手引きによれば、治療の中心はステロイド薬などの薬物治療で、約3人に1人は聴力がほぼ元に戻り、約3人に1人は部分的に戻り、約3人に1人は改善がみられず難聴が残るとされています[1]。

要点

  • 日本聴覚医学会によると、突発性難聴は原因不明のまま片耳の聞こえが突然(多くは即座か、数日かけて)悪くなる病気[1]
  • 発症7日以内の治療開始が聴力予後の良い一因になると報告されており[1]、2週間を過ぎると治療効果は限定的になるとされる[1]
  • 治療の中心はステロイド薬などの薬物治療だが、有効性が科学的に確立した治療法は現時点でない[1]
  • 「約1/3が治癒、1/3が部分回復、1/3は難聴が残る」という報告があり、全員が治るとは言い切れない[1]
  • 聞こえにくさに加えて手足の動かしにくさなど耳以外の神経症状があるときは、脳卒中など耳以外の原因を疑い、様子を見ずに医療機関を受診する[1]

この記事は、JHO編集部がAIツールの支援を受けながら、日本聴覚医学会や難病情報センターなど公的機関・学会の資料と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断や治療方針の代わりにはなりません。数値や制度は今後のガイドライン改定や自治体の制度変更により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。

今すぐ確認したいポイント

  • 🔴 日本聴覚医学会の手引きが示す基準に照らすと、突然、片耳(まれに両耳)が聞こえにくくなった+耳以外の症状(手足の動かしにくさ、ろれつが回らない、顔の片側が下がる、物が二重に見えるなど)がある → 救急要請(119)も選択肢に入れ、できるだけ早く医療機関へ[1]
  • 🟡 日本聴覚医学会やMSDマニュアルの記載に沿うと、突然、片耳が聞こえにくくなった、耳が詰まった感じがする、耳鳴りが急に強くなった → 様子を見ずに、その日のうちか翌日には耳鼻咽喉科を受診[1][2]
  • 🟢 日本聴覚医学会の手引きの整理に沿うと、数日〜数週間かけて少しずつ聞こえにくくなってきたケースは突発性難聴とは経過が異なりますが、放置せず耳鼻咽喉科で相談を[1]

発症7日以内に治療を始めたかどうかで、聴力の戻りやすさに関係があると報告されています[1]。「そのうち治るだろう」と様子を見ている時間が、そのまま治療の選択肢を狭めることになります。

受診の目安 — 何日以内に耳鼻咽喉科へ行くべきか

結論から言うと、「今日、聞こえにくくなった」と気づいたら、その日のうちか遅くとも翌日には耳鼻咽喉科を受診するのが、日本聴覚医学会の手引きが示す考え方に沿った対応です。「1週間くらい様子を見てから」ではなく、「気づいたらすぐ」が基本です。

同学会の手引きは、突発性難聴について「早期に治療を開始したほうが聴力予後が良好であることより、早期治療を行うことを推奨する」としています(推奨グレードA)[1]。平成26〜28年度の全国疫学調査では、発症7日以内に治療を開始した群で聴力の戻りが有意に良かったと報告されており[1]、米国のAAO-HNSガイドラインについても、同手引きは「治療開始は発症後2週間以内が望ましく、4〜6週では治療効果は限定的である」と紹介しています[1]。

受診・治療開始の目安をまとめると、次のとおりです。

  • 発症7日以内:治療開始のタイミングとして、聴力の戻りが最も良いとされる期間[1]
  • 発症2週間以内:ステロイド全身投与が推奨される期間の目安[1]。鼓室内投与によるサルベージ治療は発症20日以内が推奨されています[1]
  • 発症2週間〜2か月:日本聴覚医学会の手引きは、発症2週間以上が経過しても2か月以内であれば何らかの治療が試みられる場合が多いとしたうえで[1]、発症後何日までであれば治療効果が期待できるのかについては明確なエビデンスはないとしています[1]

「まだ様子を見よう」と迷っている間にも日数は進みます。この目安はあくまで報告にもとづく傾向であり、実際の見込みは難聴の重さやめまいの有無などで一人ひとり異なりますが、迷ったときほど様子を見ずに耳鼻咽喉科に相談することが勧められます。

今の血圧・脈拍を確かめる

数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

身長と体重からBMIも調べる

これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

突発性難聴とは?内耳で何が起きているか

日本聴覚医学会の手引きでは、突発性難聴は診断基準のなかで「突然に発症した原因不明な高度難聴」と定義されています[1]。難聴の程度の目安としては、隣り合う3つの周波数で30dB以上の難聴が72時間以内に生じたものとされています[1]。文字どおり即座に、あるいは朝起きて気づくような聞こえの悪化が多いものの、数日かけて悪化する例もあるとされています[1]。

日本聴覚医学会の手引きによると、症状は片方の耳に起こることが大部分で、両耳が同時に悪くなる例は極めてまれとされ、疫学調査でも両側性の症例は全体の1%だったと報告されています[1]。両耳が同時に悪くなった場合は、この病気よりも先に、自己免疫や感染、腫瘍、薬物、外傷など他の原因を考えることが強く推奨されています[1]。難聴の発生と前後して耳鳴りが起こることや、めまい・吐き気を伴うこともありますが、同学会はめまいの発作を繰り返すことはないとしています[1]。好発年齢は50〜60代とされ、性差については男性がやや多いとされるものの大きな差は認められないとされています[1]。MSDマニュアルによれば、毎年およそ5,000人〜1万人に1人が突発性難聴を発症するとされています[2]。

全国的な受療者数についても、厚生労働省の研究班による疫学調査が繰り返し行われてきました。2001年の全国疫学調査では、年間の全国受療者数は推定35,000人(人口10万人あたり27.5人)と推定されました[1]。その後、2012年に岩手県・愛知県・愛媛県の3県を対象に行われた調査では、人口10万人あたり60.9人と、より高い数値が報告されています[1]。調査の対象地域や方法が異なるため、単純に比較はできません。

図:JHO編集部が作成

日本聴覚医学会の手引きによれば、内耳で正確に何が起きているのかについては、まだはっきりと分かっていません[1]。手引きでは、内耳の血のめぐりが悪くなる「循環障害説」と、ウイルスが内耳に感染することによる「ウイルス感染説」が有力と考えられていますが[1]、突発性難聴が通常は再発しないという特徴をうまく説明できない面もあり、現時点で確定的な結論は出ていません[1]。MSDマニュアルも、ウイルス感染症(特に単純ヘルペスウイルスによる感染症)、体内の免疫系が誤って内耳や内耳の神経を攻撃する自己免疫反応、内耳の細い血管の閉塞などが原因として考えられるとしつつ、ほとんどの患者では原因が分からないとしています[2]。

突発性難聴の原因 — 原因不明のことが多いが、はっきりしている場合も

MSDマニュアルによると、突発性難聴と診断される場合の多くは、原因を突き止めることができません[2]。同マニュアルは、突発性難聴の原因を大きく3つに分けて説明しています[2]。

MSDマニュアルによれば、1つ目は原因不明のケースです。可能性のある原因として、ウイルス感染症(特に単純ヘルペスウイルスによる感染症)、体内の免疫系が誤って内耳や内耳の神経を攻撃する自己免疫反応、内耳の細い血管や神経の血管が詰まることなどが挙げられていますが、患者によって原因は異なるだろうとされています[2]。

同マニュアルによれば、2つ目は、原因となる出来事がはっきりしているケースです。頭部外傷(頭蓋骨の骨折や、骨折を伴わない重い脳しんとうなど)、ダイビングや(頻度は低いものの)ウェイトリフティング中にいきむことなどで起こる急激な気圧の変化、内耳に損傷を与える副作用のある薬剤(聴器毒性のある薬剤。アミノグリコシド系の抗菌薬、シスプラチンなどの抗がん剤、アスピリン、利尿薬など)が原因になることがあり[2]、同マニュアルは、細菌性髄膜炎やライム病、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、単純ヘルペスウイルスの脳感染症といった感染症も原因になることがあるとしています[2]。

同マニュアルによれば、3つ目は、通常は別の症状が先に現れる病気が、まれに突発性難聴というかたちで最初の症状として現れるケースです。同マニュアルは、聴神経の腫瘍である前庭神経鞘腫、多発性硬化症、メニエール病、脳の平衡感覚を担う部分(小脳)に向かう血管が詰まることによる脳卒中、HIV感染者で梅毒の感染症が再活性化した場合などを挙げています[2]。実際、同じような症状で受診した患者さんの2.7〜10.2%では、聴神経の腫瘍が見つかったという報告もあり[1]、はじめから「よくあるパターンだろう」と決めつけずに検査を受ける可能性が残されている点は、覚えておく価値があります。

日本聴覚医学会の手引きは、「循環障害説」を裏づけるデータとして、台湾で実施された大規模なコホート研究を紹介しています。入院治療を受けた突発性難聴の患者1,423例を5年間追跡した研究では、対照群に比べて有意に高い12.7%が、その後脳卒中を発症したと報告されています[1]。また、平成26〜28年度の国内疫学調査でも、突発性難聴群は対照群と比べて糖尿病のある人や喫煙者の割合が有意に高かったとされ、循環障害との関連を示唆するデータと考えられています[1]。ただし、この病気が通常は再発しないという事実をこの説だけで説明するのは難しく、現時点で確定的な結論には至っていません[1]。

突発性難聴の症状・初期症状・前兆

もっとも代表的な症状は、片方の耳が突然聞こえにくくなることです。日本聴覚医学会の手引きによると、朝起きて気づくような、文字どおり即座の難聴が多いとされていますが[1]、耳の詰まった感じ(耳閉感)や耳鳴りが、聞こえにくさと前後して現れることもあります[1]。はっきりと自覚できる「前兆」が事前にあるわけではなく、多くの場合は前触れなく起こる点が、この病気の特徴の一つです[1]。

同学会の手引きによれば、難聴に伴って、めまいや吐き気・嘔吐がみられることもあります[1]。1987年の全国疫学調査では、めまいを伴う例は全体の約3分の1にみられ、めまいのない軽度・中等度の難聴のほうが、めまいのある例より聴力の戻りがよいことが明らかになったと報告されています[1]。

注意したいのは、耳以外の症状です。日本聴覚医学会の診断基準では、突発性難聴は「第8脳神経以外に顕著な神経症状を伴うことはない」とされています[1]。つまり、聞こえにくさと同時に、手足に力が入りにくい、ろれつが回らない、顔の片側が下がる、物が二重に見えるといった症状がある場合は、突発性難聴だけでは説明のつかない組み合わせであり、脳卒中など耳以外の原因を考える必要があります。めまいと難聴が同時に起きたとき、それが耳の病気によるものか、脳の病気によるものかの見分け方は、こちらの記事でも詳しく取り上げています。

突発性難聴の診断基準 — どのくらいの難聴を「突発性」というか

突発性難聴かどうかは、医師が問診と聴力検査などをもとに、日本聴覚医学会の診断基準に照らして判断します[1]。この基準は1973年に厚生省の研究班が最初に作成し、2015年に厚生労働省の研究班によって改定されたものです[1]。

項目 基準 備考
主症状 ①突然発症 ②高度感音難聴 ③原因不明 3つすべてを満たすことが診断の条件[1]
難聴の程度 隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じる 即座または起床時に気づくことが多いが、数日かけて悪化する例もある[1]
経過 難聴の改善・悪化を繰り返さない 繰り返す場合はメニエール病など別の病気を疑う[1]
随伴症状 耳鳴り・めまい・吐き気を伴うことがある めまい発作を繰り返すことはない[1]
除外すべき所見 第8脳神経以外の顕著な神経症状がない ある場合は脳卒中など他の原因を疑う[1]

出典:日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き2018年版」(厚生労働省「難治性聴覚障害に関する調査研究班」2015年改定の診断基準を掲載)[1]

この基準を満たすかどうかを確かめるには、急性低音障害型感音難聴や外リンパ瘻、メニエール病、ムンプス(おたふくかぜ)による難聴、聴神経腫瘍など、似た症状を起こす他の病気を除外する必要があります[1]。実際、同じような症状で受診した患者さんのうち2.7〜10.2%では、聴神経の腫瘍が見つかったという報告があり[1]、MRI検査が診断の過程で行われることが多いのは、こうした見逃してはいけない病気を除外するためでもあります[1]。

病気 突発性難聴との見分け方のポイント
メニエール病 難聴・めまいなどの発作を繰り返すことが診断の決め手になる[1]。突発性難聴はめまい発作を繰り返さない
急性低音障害型感音難聴 低い音域を中心とした難聴で、めまいを伴わないことが多く、70〜80%の症例で治癒するなど予後は一般に良好[1]
外リンパ瘻 ダイビングや強くいきんだことなどがきっかけとなり、難聴やめまいが変動・反復することがある[1]

出典:日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き2018年版」[1]。実際にどの病気にあたるかは、問診や検査の結果をふまえて医師が総合的に判断します。

受診すると、まず発症した時期や状況、めまいの有無、過去に難聴やめまいを繰り返したことがないかなどの問診が行われます[1]。そのうえで、聞こえの程度を調べる純音聴力検査に加えて、めまいの自覚がなくても平衡機能検査が行われることがあります。同学会の手引きによれば、突発性難聴の約40%にめまいを伴うといわれており[1]、めまいの有無は重症度や予後を推測する材料になるとされているためです[1]。めまいを伴った例では、聴力とは別に、長期的にふらつきが残ることがあるとも報告されています[1]。

日本聴覚医学会の手引きは、聴神経腫瘍に伴う難聴との鑑別のためにMRI検査を行うことを推奨しています(推奨グレードB)[1]。聴神経腫瘍の患者さんの10〜20%に突発性の難聴症状がみられたという報告や、急性感音難聴でMRI検査に異常がみられた割合が7〜13.8%だったという報告もあります[1]。一方で、通常のCT検査は、放射線被ばくや造影剤による副作用などの不利益に比べて得られる情報が少ないとして、ルーチンでは行うべきではないとされています[1]。同学会の手引きによれば、ペースメーカーを装着している場合や重い閉所恐怖症などでMRI検査が難しいときには、CT検査による評価が有用な場合があるとされています[1]。

突発性難聴の治療 — ステロイド薬と「治る」の実際

治療の中心は、急性期のステロイド薬による治療です[1]。日本聴覚医学会の手引きは、突発性難聴に対するステロイド全身投与の有効性について「現時点でエビデンスは確立していない」としながらも、多くの文献で無治療群より良好な聴力改善が報告されていることや、他に確立した治療法がないことから、「実質的には標準治療となっている」と説明しています[1]。ステロイド薬に加えて、血管を広げる薬やビタミン製剤などが併用されることもあります[1]。初期の治療で十分な改善がみられない場合には、鼓室(中耳)にステロイドを直接注入する治療が追加で検討されることもあります[1]。薬の量や組み合わせ、続ける期間は、体重や年齢、糖尿病などの持病の有無に応じて、医師が患者ごとに判断します。ステロイド薬は長く使うほど骨への影響が気になるという方は、ステロイドと骨折リスクについて解説した記事もあわせてご覧ください。

治療のタイミングについて、日本聴覚医学会の手引きは「早期に治療を開始したほうが聴力予後が良好であることより、早期治療を行うことを推奨する」としており(推奨グレードA)[1]、発症7日以内に治療を開始すると、聴力の戻りが有意に良いという報告を紹介しています[1]。一方で、発症24時間以内に治療を始めた群と7日以内に始めた群とでは、治療成績に有意差はなかったという報告もあります[1]。ステロイド全身投与は発症2週間以内に、鼓室内投与によるサルベージ治療は発症20日以内に行うことが推奨されています[1]。

ステロイド以外の治療法についても報告があります。プロスタグランジンE1製剤(PGE1)を全身投与のステロイド剤に併用することは、明確なエビデンスはないものの、重症例の初期治療の選択肢の一つとして提案されています[1]。高気圧酸素療法(HBOT)は、発症2週間以内に行えば聴力を有意に改善するとの報告がある一方、その臨床的な意義ははっきりしないとされ、症状が固定したあとの聴力や耳鳴りに対する効果はないとされています[1]。星状神経節への注射で血流を増やすことをねらった星状神経節ブロックは、有効性を支持する報告がある一方で、気胸や血管内注射、声のかすれなどの合併症も報告されており、治療効果を裏づけるエビデンスは確立していません[1]。また、突発性難聴の原因がウイルス感染であるという説にもとづき抗ウイルス薬が使われることもありますが、日本聴覚医学会の手引きは「有効性を支持するエビデンスはなく、使用しないことを強く推奨する」としています[1]。

「治る」のかという問いに正面から答えるなら、日本聴覚医学会の手引きは、有効性が確立した治療法がないのが現状としたうえで、「約1/3の症例では治癒、1/3の症例では聴力の部分回復、1/3の症例では改善が認められず難聴が残存する」としています[1]。一方でMSDマニュアルは、原因が不明な場合、患者の約半数が正常な聴力を取り戻し、残りの患者は部分的に聴力が戻るとし、改善がみられるとすれば通常は10〜14日以内に改善するとしています[2]。回復の見込みを示す数字は資料によって幅があり、実際にどの程度戻りそうかは、難聴の重さやめまいの有無、治療開始までの期間などによって一人ひとり異なるため、担当医に確認するのが確実です。

重症度分類と「治った」の判定基準

治療方針を考えるうえで、初診時の聴力レベルによって重症度が分けられています[1]。

重症度 初診時聴力レベル
Grade 1 40dB未満
Grade 2 40dB以上、60dB未満
Grade 3 60dB以上、90dB未満
Grade 4 90dB以上

出典:日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き2018年版」。この分類は発症後2週間までの症例に適用され、初診時にめまいがある場合はa、ない場合はbを付けて区分する(例:Grade 3a、Grade 4b)[1]。

「治った」という言葉の中身も、実は基準で定義されています。日本聴覚医学会の判定基準では、聴力の回復を次の4段階で判定しています[1]。

判定 基準
治癒(全治) 5周波数の聴力レベルが20dB以内に戻った、または健側と同程度まで改善したとき
著明回復 5周波数の平均が30dB以上改善したとき
回復(軽度回復) 5周波数の平均が10〜30dB改善したとき
不変(悪化を含む) 5周波数の平均が10dB未満の改善のとき

出典:日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き2018年版」[1]

先ほど触れた「約1/3が治癒」という数字も、この基準にもとづいた分類です[1]。「治った」と判定されても、聞こえ方の感覚が完全に元どおりだと感じるかどうかには個人差があることも、知っておくとよいでしょう。

聴力が固定したあとに難聴が残った場合、心理的・身体的な負担を伴うことも報告されています。一側性難聴の患者を対象にした調査では、86%が何らかのハンディキャップ(生活のしづらさ)を感じていたとされており[1]、聴力そのものへの治療だけでなく、カウンセリングや補聴器のフィッティングなど、複数の側面からのリハビリテーションが必要だとされています[1]。

薬物治療で聴力が戻らなかった場合 — 補聴器という選択肢

治療をしても、聴力が十分に戻らない可能性があります[1]。日本聴覚医学会の手引きは、薬物治療で難聴が改善しない場合、補聴器が有効な治療手段の一つになるとしています[1]。

日本では、耳鼻咽喉科での診察のうえで補聴器の適応を補聴器相談医が判断し、装用する耳(片側か両側か)を決めたあと、認定補聴器技能者が器種の選定や調整を行い、フィッティング後も補聴器相談医による評価と微調整を重ねていく、という流れが基本とされています[1]。この病気は片耳だけに起こることが多いため、どちらの耳にどう補聴器を装用するかも、聞こえのよい方の耳の状態を含めて個別に判断されます[1]。補聴器を使っても十分な効果が得られないほどの高度な難聴が残る場合には、人工内耳が選択肢になることもあります[1]。

突発性難聴で入院は必要か、そして避けたほうがよいこと

入院が必要かどうかについて、日本聴覚医学会の手引きは「外来治療、入院治療を比較したRCT(ランダム化比較試験)はなく、エビデンスは確立していない」としたうえで、治療の選択肢の一つとして提案しています(推奨グレードC1)[1]。過去の調査でも、入院治療と外来治療で治療成績に有意差は認められませんでしたが[1]、重症例や糖尿病などの持病がある例、めまいを伴う例では、入院治療が選ばれる傾向があったとも報告されています[1]。つまり、入院するかどうかは「必ずこうすべき」という一律の決まりがあるわけではなく、難聴の重さや持病、めまいの有無などをふまえて、医師と相談しながら決めることになります。

すぐに受診が必要なサイン

  • 片方(まれに両方)の耳が、数時間〜数日のうちに急に聞こえにくくなった[1]
  • 耳の聞こえにくさと同時に、手足が動かしにくい・ろれつが回らない・顔の片側が下がる・物が二重に見えるなど、耳以外の神経の症状がある — この病気では通常みられない組み合わせで[1]、脳卒中の可能性を考えて救急受診を検討
  • 難聴に加えて、繰り返すめまい発作がある — この病気は通常めまい発作を繰り返さないため[1]、メニエール病など別の病気の可能性がある

そのうえで、次のようなことは避けたほうがよいと考えられます。

  • 受診を先延ばしにすること。「そのうち治るだろう」と様子を見ている間にも、発症からの日数は進みます。発症7日以内の治療開始が聴力予後の良い一因になると報告されており[1]、治療開始が2週間、さらに1か月以上遅れると、改善が見込みにくくなるとされています[1]。
  • 自己判断で「耳垢のせい」「ストレスのせい」と決めつけて放置すること。MSDマニュアルは、突発性難聴はそれ自体が警戒すべき徴候であり、難聴のある人はすべて直ちに医師の診察を受ける必要があるとしています[2]。まれに、聴神経の腫瘍など、耳以外の病気が最初の症状として難聴のかたちで現れることもあります[2]。
  • 処方されたステロイド薬などを自己判断で減らしたり、途中でやめたりすること。薬の量や続ける期間は、持病や体の状態に応じて医師が判断しています。合わないと感じたときも、自己判断で中止せず医師に相談することが大切です。
  • 耳以外の神経症状があるのに「めまいだけだから」と自宅で様子を見続けること。診断基準は、この病気が第8脳神経以外に目立った神経症状を伴わないことを前提としており[1]、それ以外の症状があるときは、耳鼻咽喉科だけでなく救急受診も選択肢になります。

なお、めまいや耳鳴りが続いていて治療の選択肢を知りたい場合は、耳鳴りのガイドラインと費用を解説した記事や、朝の耳鳴りについて解説した記事もあわせてご覧ください。

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突発性難聴は「指定難病」の医療費助成を受けられるのか

そもそも「指定難病」とは、原因不明で治療法が確立していない病気のうち、国が病気ごとに診断基準と重症度分類を定め、その基準を満たした患者の医療費を助成する制度です[4]。「原因不明で治りにくい病気」であれば自動的に対象になるわけではなく、病気ごとに国の指定を受けているかどうかを個別に確認する必要があります。

結論から言うと、突発性難聴そのものは、全国共通の指定難病の医療費助成制度の対象疾病ではありません。難病情報センターが公開している資料によると、国の指定難病制度の前身にあたる「特定疾患治療研究事業」で、現在も対象とされているのはスモン、劇症肝炎(難治性肝炎のうち)、重症急性膵炎、プリオン病の4疾患のみで[3]、この一覧に突発性難聴は含まれていません。

一方で、一部の都道府県や市区町村では、国の指定難病とは別の枠組みで、突発性難聴の患者を独自に助成する制度を設けている場合があります。例えば香川県が示している認定基準では、日本聴覚医学会の診断基準を満たしたうえで「聴力レベルが70dB以上(高度難聴)であるもの」といった条件が示されています[5](※この基準は香川県の一例であり、対象となる条件や助成の内容は自治体によって異なります)。

このように、医療費の助成が使えるかどうかは住んでいる地域によって大きく変わるため、確実な情報は、お住まいの都道府県・市区町村の窓口、または難病情報センターの医療費助成制度のページ[4]で直接確認することをお勧めします。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

治療のタイミングについて、日本と米国のガイドラインの見方

項目 日本(日本聴覚医学会 2018年手引き) 米国(AAO-HNS、日本聴覚医学会の手引きが紹介する内容)
治療開始の目安 発症7日以内の治療開始が予後良好因子と報告されており、推奨グレードAで早期治療を推奨[1] 治療開始は発症後2週間以内が望ましいとされる[1]
治療効果が乏しくなる時期 ステロイド全身投与は発症2週間以内、鼓室内投与によるサルベージ治療は発症20日以内が推奨[1] 発症後4〜6週では治療効果は限定的であると明記[1]

この米国側の記載は、日本聴覚医学会の手引きが自国のガイドラインを補足する目的でAAO-HNSガイドラインの内容を紹介しているものであり[1]、JHO編集部がAAO-HNSの原文そのものを確認したものではありません(※日本側資料が引用した内容であり、米国側一次資料そのものは確認できていません)。

受診のときに使えるメモ(コピーして書き込んでください)

  • いつ、どちらの耳が聞こえにくくなったか(日時・急に/数日かけて)
  • 今の聞こえにくさの程度、耳鳴り、めまい・吐き気の有無
  • 耳以外の症状の有無(手足の動かしにくさ、ろれつ、顔の動きなど)
  • 過去にも同じような難聴やめまいを繰り返したことがあるか
  • 現在服用中の薬、持病(糖尿病など)の有無
  • 医師に聞きたいこと(例:入院と通院どちらが向いているか、聴力が戻る見込みはどのくらいか、医療費の助成が使えるか)

突発性難聴の病態(内耳で正確に何が起きているか)については、循環障害説やウイルス感染説が有力視されているものの、今回参照した資料の範囲では確定的な結論には至っていません[1]。また、医療費助成が実際に使えるかどうかは、お住まいの都道府県・市区町村の制度によって条件が異なり、今回参照した資料だけでは、すべての自治体の最新の条件を確認しきれていません。正確な条件は、お住まいの自治体の窓口で直接ご確認ください。

よくある質問

突発性難聴とは、どんな病気ですか?
片方(まれに両方)の耳の聞こえが、原因不明のまま突然悪くなる病気です。日本聴覚医学会の診断基準では、突然発症・高度感音難聴・原因不明という3つの主症状をすべて満たすものと定義されています[1]。似た症状を起こす他の病気(メニエール病や聴神経腫瘍など)を除外したうえで診断されます[1]。
突発性難聴に前兆はありますか?
はっきりと自覚できる前兆が事前にあるわけではなく、多くは前触れなく起こります[1]。耳の詰まった感じや耳鳴りが、聞こえにくさと前後して現れることはあります[1]。
どのくらいの期間、様子を見ると治療の効果が出にくくなりますか?
発症7日以内の治療開始が聴力予後の良い一因になると報告されています[1]。ステロイド全身投与は発症2週間以内、鼓室内投与によるサルベージ治療は発症20日以内が推奨されており[1]、それより経過するほど改善は見込みにくくなるとされています[1]。
突発性難聴は治りますか?
全員が治るとは言えません。日本聴覚医学会の手引きでは、約1/3が治癒、1/3が部分回復、1/3は改善がみられず難聴が残るとされています[1]。MSDマニュアルでは、原因不明の場合、約半数が正常な聴力に戻り、残りは部分的に戻るとされ、改善する場合は通常10〜14日以内とされています[2]。数字は資料によって幅があるため、実際の見込みは担当医に確認してください。
治療にはどんな薬を使いますか?ステロイド以外の選択肢はありますか?
中心となるのはステロイド薬による全身投与です[1]。血管を広げる薬やビタミン製剤が併用されることもあり、初期治療で改善が乏しい場合は鼓室内へのステロイド投与が追加で検討されることもあります[1]。薬の量や組み合わせは、体の状態に応じて医師が個別に判断します。
入院と通院、どちらを選べばいいですか?
どちらが優れているかを示す明確なエビデンスは、現時点では確立していないとされています[1]。重症例や糖尿病などの持病がある例、めまいを伴う例では入院治療が選ばれる傾向があると報告されており[1]、最終的には医師と相談して決めることになります。
何科を受診すればいいですか?
耳鼻咽喉科(耳鼻科)を受診します。突然の難聴は、できるだけ早く耳鼻咽喉科で診てもらうことが大切です。
突発性難聴は再発しますか?
診断基準では、突発性難聴は難聴の改善・悪化を繰り返さないとされています[1]。難聴やめまいを繰り返す場合は、この病気ではなく、メニエール病など別の病気の可能性があるとされています[1]。
片耳だけでなく両耳が同時に悪くなることはありますか?
一側性(片耳)の場合が多いですが、両側性に同時罹患する例もあるとされています[1]。ただし、両側が同時に発症する突発性難聴は極めてまれで、疫学調査でも両側性の症例は全体の1%だったと報告されています[1]。日本聴覚医学会の手引きは、両側同時発症の場合、自己免疫や感染、腫瘍、薬物、外傷、炎症など、突発性難聴以外の原因をまず検討することを強く推奨しています(推奨グレードA)[1]。
突発性難聴の原因はストレスですか?
ストレスだけが原因と言い切れる根拠は、今回参照した資料の中にはありません。日本聴覚医学会の手引きは、内耳の血のめぐりが悪くなる「循環障害説」とウイルス感染説が有力と考えられているとしつつ、確定的な結論には至っていないとしています[1]。睡眠不足や心身のストレスは、急性感音難聴全般の誘因として問診で確認される項目の一つに挙げられています[1]。
薬物治療で聴力が戻らなかった場合はどうすればよいですか?
補聴器が治療の選択肢の一つになります。日本聴覚医学会の手引きは、薬物治療で難聴が改善しない場合、補聴器が有効な治療手段の一つになるとしており[1]、耳鼻咽喉科での診察のうえ補聴器相談医が適応を判断する流れが基本とされています[1]。
突発性難聴の医療費助成は受けられますか?
突発性難聴そのものは、国の指定難病の医療費助成制度の対象ではありません[3]。ただし、一部の自治体が独自の助成制度を設けている場合があります。条件は地域によって異なるため、お住まいの自治体の窓口や難病情報センターのページ[4]で直接ご確認ください。

参考文献

  1. 日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き2018年版」2018年 急性感音難聴診療の手引き2018年版(PDF)
  2. MSDマニュアル家庭版「突発性難聴」最終更新2025年4月 突発性難聴 – MSDマニュアル家庭版
  3. 難病情報センター「特定疾患治療研究事業の対象疾病」 特定疾患治療研究事業の対象疾病
  4. 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」 指定難病患者への医療費助成制度のご案内
  5. 香川県「突発性難聴(指定難病医療費助成の認定基準)」 突発性難聴の認定基準(PDF)

更新日:2026年7月26日。この記事の内容について、誤りや古い情報にお気づきの際はお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。

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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。

Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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