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てんかん

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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発作時の危険な行動は? 今週67人が確認 記事へ 意識があっても病院へ行く? 記事へ 意識はあるけどてんかん? 記事へ 子供に遺伝する確率は? 記事へ

✦ 結論から言うと

てんかんは、脳の神経細胞が過剰に電気的な興奮を起こすことで、意識障害・けいれん・体の一部の動きの異常などの「発作」を繰り返す病気で、日本には約60万〜100万人の患者がいると推計されています[1]。厚生労働省によれば、乳幼児から高齢者までどの年齢でも発症し、特に子どもと高齢者で発症率が高いとされています[1]。日本てんかん協会によれば、発作が5分以上続く、または意識が戻らないうちに発作を繰り返す場合は「てんかん重積状態」のおそれがあり、様子を見ずに救急要請が必要です[2]。

原因 生まれつきの脳の要因(特発性・素因性)と、脳卒中・頭部外傷・脳腫瘍・中枢神経感染症・自己免疫性脳炎・認知症など後天的な脳の病気(構造的な原因)の大きく2つに分けられます[1]
主な症状 意識がなくなり全身が硬直したのちガクガクとけいれんする発作から、数秒間ぼーっとするだけで周囲が気づかない発作まで、脳のどこで異常な電気活動が起きるかによって症状は大きく異なります[1]
受診の目安 発作が5分以上続く、意識が回復しないまま発作を繰り返す場合はすぐに救急要請。初めての発作、けがを伴う発作、発作の様子が変わった場合も速やかに医療機関を受診してください[2]

てんかんとは?脳の神経細胞の過剰な電気活動が発作を起こす仕組み

てんかんは、脳の神経細胞(ニューロン)が過剰かつ同期して電気的な興奮を起こすことによって、意識障害やけいれん、体の一部の動きの異常などの「てんかん発作」を反復性に起こす病気です。厚生労働省は、てんかんのある人は1000人あたり5〜8人、日本全体で60万〜100万人に上ると推計しており、乳幼児から高齢者のいずれの年齢層でも発症し、特に小児と高齢者で発症率が高くなるが30〜40代で発症することもあるとしています[1]。国立精神・神経医療研究センターの報告書も、てんかんは全人口の0.4〜0.9%、我が国には約100万人という非常に多数の患者がいるコモンな(ありふれた)疾患であるとしています[7]。誰にでも起こりうる身近な病気であるという理解が、まず最初の一歩になります。

脳は無数の神経細胞が電気信号をやり取りすることで、体を動かしたり、物事を考えたり、感じたりしています。てんかんでは、この電気信号の一部が本来のリズムを外れて過剰に、かつ同期して発生してしまうことで、発作という形の症状が現れます。どの部位の神経細胞が異常な興奮を起こすかによって、現れる症状はまったく異なります。厚生労働省は「てんかん発作」には様々な種類があり、異常な電気活動を起こしている脳の部位に対応した様々な症状が出現するとし、ほとんどの場合は数秒〜数分間で発作が終わるが、時には数時間以上続くてんかん重積状態も起こるとしています[1]。

症状の現れ方として、厚生労働省は例えば「全般性強直間代発作」では多くの場合、意識がなくなり、全身が硬くなった後(強直相)、全身をガクガクとさせる(間代相)とし、症状が軽い場合には一方の腕や顔の一部だけが数秒間固くなるだけの人もいるとしています。また厚生労働省は、突然反応がなくなり数秒間だけ宙を見つめるタイプの発作では、転倒したりけいれんしたりすることもなく、他者からは気づかれないこともあるとしています[1]。厚生労働省によれば、発作の前に決まって何らかの臭いや感覚を覚えるなど、発作が起こることが事前にわかる人もおり、こうした前触れの症状は「前兆」と呼ばれるとされています[1]。発作のタイプ別の詳しい見分け方は「てんかんの症状完全ガイド:発作タイプ別の見分け方」でも解説しています。

発作は、体の動きの異常(運動症状)だけでなく、感覚・情動・自律神経など体の様々な機能に現れることがあります。たとえば、手足がつっぱる・けいれんするといった運動症状のほか、体の一部にしびれやチクチクした感覚が生じる感覚症状、突然の恐怖感や既視感(デジャブ)といった精神症状、動悸や吐き気、顔面紅潮などの自律神経症状が現れることもあります。同じ「てんかん」という診断名でも、症状の現れ方は人によって大きく異なるため、自分の発作の特徴を具体的に医師に伝えることが、適切な発作型の診断につながります。

出典:厚生労働省「てんかん対策について」[1]/公益社団法人 日本てんかん協会「発作の介助と観察」[2]/国立精神・神経医療研究センター てんかん診療全国拠点機関事業 報告書[7]

発作の種類:焦点起始発作・全般起始発作・起始不明発作(ILAE国際分類)

てんかん発作は、国際抗てんかん連盟(ILAE)が2017年に発表した操作的分類にもとづき、大きく「焦点起始発作」「全般起始発作」「起始不明発作」の3つに分けられます。日本てんかん学会が公表しているILAE分類の日本語版では、発作は焦点起始発作、全般起始発作、起始不明発作に分類され、発作型の選択にあたっては最も早期に出現した顕著な症状によって分類すべきとされています[3]。この分類を理解しておくと、自分や家族の発作がどのタイプに近いかを医師に伝えやすくなります。

焦点起始発作(旧称:部分発作)は、脳の片方の半球に限られたネットワークの中で発作が起始するタイプです。日本てんかん学会のILAE分類日本語版は、焦点発作の場合、意識状態の特定は任意であるとした上で、「意識保持」とはたとえ動けない状態であっても発作中に自己と周囲の状況を自覚していることを意味するとし、焦点意識保持発作は旧用語の単純部分発作に相当し、焦点意識減損発作は旧用語の複雑部分発作に相当し発作中のいずれかの時点で意識障害が認められた場合には焦点意識減損発作とするとしています[3]。片方の腕や顔の一部だけが数秒間固くなるような軽い発作から、意識がぼんやりして自動症(無意識に口をもぐもぐさせる、手をまさぐるなど)を伴う発作まで幅があります。日本てんかん学会のILAE分類日本語版によれば、脳の片側から始まった興奮が両側に広がると「焦点起始両側強直間代発作」(旧称:二次性全般化発作)となり、全身のけいれんに至ることもあります[3]。

全般起始発作は、発作の最初から両側の大脳半球のネットワークが巻き込まれるタイプです。厚生労働省が例示する「全般性強直間代発作」(意識がなくなり全身が硬直したのち全身がガクガクとけいれんする発作)はこの代表例です[1]。このほか、数秒間ぼーっとして反応がなくなる「欠神発作」、体の力が抜けて崩れ落ちる「脱力発作」、体の一部がピクッとする「ミオクロニー発作」なども全般発作に含まれます。

起始不明発作は、日本てんかん学会のILAE分類日本語版によれば、発作の始まり方についての情報が不十分であったり、目撃状況などから焦点起始か全般起始かを判断できない場合に用いられる分類です[3]。夜間や一人でいるときの発作など、発作の最初の様子を誰も見ていない場合にこの分類が使われることがあります。

焦点起始発作の中でも、体の一部がつっぱったり、けいれんしたりする運動症状が主体となるタイプは「焦点運動発作」と呼ばれます。焦点運動発作は、脳のどの部分から異常な電気活動が始まるかによって、現れる体の部位や症状の広がり方が変わるのが特徴です。焦点運動発作の症状や原因、治療の選択肢について詳しくは「焦点運動発作(部分運動性てんかん)完全ガイド」も参考にしてください。

日本てんかん学会のILAE分類日本語版によれば、ILAE2017年分類では旧分類からの主な変更点として、「部分(発作)」という用語が「焦点(発作)」に変更されたこと、意識(awareness)が焦点発作の分類要素として採用されたこと、「二次性全般化(発作)」という用語が廃止され「焦点起始両側強直間代発作」に変更されたことなどが挙げられています[3]。古い資料や書籍では「部分発作」「単純部分発作」「複雑部分発作」「二次性全般化発作」といった旧用語が使われていることがありますが、現在の国際基準では上記の新しい用語に置き換えられています。

ILAE2017年発作型操作的分類(日本てんかん学会 日本語版)の主な区分
起始の種類 特徴 代表的な発作型
焦点起始発作 脳の片方の半球に限られたネットワークで発作が始まる。意識保持/意識減損に分けられる[3] 焦点意識保持発作(旧:単純部分発作)/焦点意識減損発作(旧:複雑部分発作)/焦点起始両側強直間代発作[3]
全般起始発作 発作の最初から両側の大脳半球のネットワークが巻き込まれる[3] 全般性強直間代発作・欠神発作・ミオクロニー発作・脱力発作[1]
起始不明発作 発作の始まり方についての情報が不十分、または他のカテゴリーに分類できない場合[3] 情報不十分のため分類不能とされる発作を含む[3]

出典:日本てんかん学会「ILAEてんかん発作型の操作的分類:ILAE分類・用語委員会の公式声明(日本語版)」[3]/厚生労働省「てんかん対策について」[1]

てんかんの原因:特発性(素因性)と症候性(構造的)の違い、年齢による特徴

てんかんの原因は、大きく分けて生まれつきの脳の要因による「特発性(素因性)てんかん」と、脳の病気やけがなど後天的な原因による「症候性(構造的)てんかん」の2つに整理できます。厚生労働省は、てんかんの原因について「脳が発生する過程で生じた構造の異常、代謝異常症、遺伝子の異常などの生下時からの原因だけではなく、頭部外傷、中枢神経感染症、自己免疫性脳炎、脳卒中、認知症等のさまざまな脳の疾患が原因となります」としています[1]。

特発性(素因性)てんかんは、明らかな脳の構造異常や病変がなく、遺伝的な要因(素因)が関与していると考えられるタイプです。日本てんかん学会のILAE分類関連資料では、特発性全般てんかん(IGE)は全般てんかんの中でもよく認識された高頻度なサブグループであり、小児欠神てんかん・若年ミオクロニーてんかん・全般強直間代発作のみを示すてんかんなどが含まれるとされています[3]。また日本てんかん学会の資料によれば、自然終息性焦点てんかんという、成長とともに自然に発作が消失していくタイプの焦点てんかんも小児期に見られるとされています[3]。

症候性(構造的)てんかんは、厚生労働省によれば、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)、頭部外傷、脳腫瘍、中枢神経感染症(脳炎・髄膜炎など)、自己免疫性脳炎、認知症などの脳の病気が原因となって起こるタイプです[1]。特に高齢者では、脳卒中の後遺症としててんかんを発症するケースが知られています。

年齢による原因の違いも重要です。乳幼児期には先天性の脳形成異常や周産期の脳障害、遺伝子異常が原因となることが多く、学童期から青年期には特発性(素因性)てんかんが目立つ一方、成人以降、特に高齢になるほど脳卒中や脳腫瘍、認知症など後天的な脳の病気を原因とする症候性てんかんの割合が増えていく傾向があります。厚生労働省は、てんかんは乳幼児から高齢者のいずれの年齢層でも発症し、特に小児と高齢者で発症率が高くなるとしています[1]。高齢者のてんかんは、意識がぼんやりする発作が認知症の症状と似ていることがあり、鑑別が必要になる場合があります。

てんかんについては、今回参照した資料には遺伝形式の詳細(どの程度の確率で子どもに遺伝するかなど)についての記載が見当たりませんでした。遺伝的な要因が関与するタイプであっても、必ず子どもに遺伝するとは限らず、個々の状況によって大きく異なります。遺伝や妊娠・出産に関する具体的な相談は、てんかん専門医への受診が推奨されます。原因と遺伝についてさらに詳しく知りたい方は「てんかんの原因と遺伝の真実:専門家による包括的解説」もあわせてご覧ください。

原因の分類は、診断・治療方針の決定だけでなく、発作の予後(今後の見通し)を考えるうえでも重要です。特発性(素因性)てんかんの多くは、適切な薬物治療により発作がコントロールされやすく、成長とともに発作が消失するタイプもあることが知られています。一方、症候性(構造的)てんかんは、原因となっている脳の病変の種類や範囲によって、薬物治療への反応や予後が大きく異なります。厚生労働省が挙げる原因(脳の構造異常・代謝異常症・遺伝子異常・頭部外傷・中枢神経感染症・自己免疫性脳炎・脳卒中・認知症等)[1]のうち、どれが自分(または家族)の原因にあたるのかを、MRIなどの検査結果とあわせて主治医から説明を受けておくことが、今後の見通しを理解するうえで役立ちます。

小児発症と高齢発症の違い:見分け方と注意点

てんかんは子どもと高齢者で発症率が高いとされていますが[1]、両者では原因や現れ方、注意すべき点が異なります。ここでは年齢層による特徴の違いを整理します。

小児発症のてんかんは、先天的な脳の要因や特発性(素因性)のてんかん症候群が比較的多く見られます。数秒間ぼーっとして反応がなくなる欠神発作のように、周囲が「ぼんやりしているだけ」と見過ごしてしまいやすい発作もあり、学校生活の中で気づかれることもあります。成長とともに自然に発作が消失していく自然終息性のてんかん症候群が知られている一方、発達や学習面への影響が懸念されるタイプもあり、早期の専門医受診が重要とされています。

高齢発症のてんかんは、脳卒中や脳腫瘍、認知症などの脳の病気を原因とする症候性(構造的)てんかんの割合が高くなる傾向があります。高齢者の発作は、けいれんを伴わず意識がぼんやりするタイプが多いことがあり、物忘れや認知症の症状と似ているために、てんかんであることに気づかれにくい場合があります。厚生労働省の情報では、突然反応がなくなり数秒間だけ宙を見つめるタイプの発作は、転倒やけいれんを伴わず他者から気づかれないこともあるとされています[1]。原因不明の意識障害や物忘れの悪化がみられる高齢者では、てんかんの可能性も念頭に置いた診察が必要になることがあります。

小児発症てんかんと高齢発症てんかんの主な違い(傾向)
項目 小児発症 高齢発症
主な原因の傾向 先天性の脳形成異常、周産期の脳障害、遺伝子異常、特発性(素因性)[1] 脳卒中、脳腫瘍、認知症など後天的な脳の病気(症候性・構造的)[1]
気づかれにくい理由 欠神発作など、ぼーっとするだけで周囲が見過ごしやすい[1] 意識がぼんやりする発作が物忘れ・認知症の症状と似ている
特に留意される点 発達・学習への影響、成長に伴う自然終息の可能性[3] 脳卒中など原疾患の管理、認知症との鑑別

出典:厚生労働省「てんかん対策について」[1]/日本てんかん学会「ILAEてんかん発作型の操作的分類(日本語版)」[3]

見分けるカギ:発症年齢に加えて、脳卒中や頭部外傷などの既往があるかどうかが、特発性(素因性)か症候性(構造的)かを見分ける重要な手がかりになります。

診断:問診・脳波検査(EEG)・画像検査(MRI)の役割

てんかんの診断は、発作の目撃状況についての詳しい問診を土台に、脳波検査や画像検査を組み合わせて行われます。日本てんかん学会のILAE分類関連資料は、発作型診断の次のステップとして「てんかん病型」診断があり、焦点てんかん、全般てんかん、全般焦点合併てんかん、病型不明てんかんのいずれかに分類されるとしています[3]。

問診では、発作が起きたときの状況(何をしていたか、どのような症状が現れたか、どのくらい続いたか、発作後の様子はどうだったか)を、できるだけ本人と目撃者の双方から詳しく確認します。前兆の有無、発作の頻度、誘因になりそうな要素(睡眠不足、飲酒、光の点滅など)も重要な手がかりになります。可能であれば、発作の様子をスマートフォンなどで動画に記録しておくと、診断の助けになることがあります。

脳波検査(EEG)は、頭皮に電極を装着して脳の電気活動を記録する検査で、てんかんに特徴的な異常波(棘波・鋭波など)を捉えることで、発作型やてんかん病型の推定に役立ちます。画像検査(MRI)は、脳の構造的な異常(脳の萎縮、腫瘍、血管の異常、過去の脳卒中の痕跡など)の有無を確認するために行われ、症候性(構造的)てんかんの原因を特定する上で重要な検査です。

脳波検査は1回だけで異常が見つからないこともあり、その場合は睡眠時脳波検査(睡眠不足の状態で検査を行う)や長時間ビデオ脳波モニタリング検査(発作の瞬間を脳波と映像の両方で記録する検査)が行われることがあります。特に、発作の型が焦点起始か全般起始かを見極めたり、てんかん以外の病気(失神、心因性非てんかん発作など)との鑑別が必要な場合には、長時間ビデオ脳波モニタリングが有用とされています。血液検査は、抗てんかん薬の血中濃度の確認や、代謝異常など他の原因を除外する目的で行われることがあります。

診断の目安となる具体的な数値基準(脳波所見の判定基準など)について、今回参照した資料には専門的な数値の詳細記載が見当たりませんでした。脳波・MRIの判定は専門的な知識を要するため、てんかん専門医または脳神経内科・小児神経科での評価が推奨されます。なお、てんかんに似た症状を示すが原因が異なる病気(起立性低血圧による失神、不整脈による意識消失、心因性非てんかん発作など)も存在するため、自己判断で「てんかんだろう」と決めつけず、必ず医療機関で正式な診断を受けることが重要です。

治療:抗てんかん薬が第一選択、難治性には手術・迷走神経刺激・食事療法

てんかんの治療は、まず抗てんかん薬による薬物療法から始めるのが基本です。厚生労働省は、抗てんかん薬は「てんかん」の原因を取り除くことはできないが「てんかん発作」を起こりにくくするとし、発作の種類やその他の状況(年齢、性、副作用など)により使用する抗てんかん薬は異なるとしています[1]。抗てんかん薬には多くの種類があり、発作型やてんかん病型、年齢、合併症、副作用の出やすさなどを踏まえて、医師が個別に選択します。

厚生労働省は、抗てんかん薬を内服することで大部分の人は発作が抑制され、さらに一部の人では数年後に薬をやめることができるようになるとしています[1]。厚生労働省によれば、抗てんかん薬を内服しても発作が十分に抑えられない場合には、脳外科手術により発作が抑制されることがあり、食事療法や迷走神経刺激術といった他の治療により発作が軽減する人もいるとされています[1]。どの治療法が適しているかは、発作の種類や頻度、原因、年齢、生活状況などによって大きく異なるため、専門医との相談が欠かせません。

⚠ 自己判断での断薬は絶対にしないでください。抗てんかん薬は発作を抑える働きをしており、症状が落ち着いているように見えても、自己判断で急に服薬をやめると発作が再発したり、場合によっては重積状態に至る危険があります。薬の減量・中止は、必ず主治医の判断のもとで、時間をかけて計画的に行う必要があります。体調や副作用に不安がある場合も、自己判断で服薬を中断せず、まず主治医に相談してください。

厚生労働省の情報を踏まえると、難治性てんかん(薬物療法だけでは発作が十分に抑えられないタイプ)に対しては、脳外科手術(発作の原因となっている脳の部位を特定して切除するなど)、迷走神経刺激療法(機器を用いて神経を刺激し発作を軽減させる方法)、食事療法(ケトン食療法など)といった選択肢が、専門的なてんかんセンターなどで検討されることがあります[1]。これらの治療の適応があるかどうかは、詳しい検査と専門医の評価が必要です。

個々の抗てんかん薬の商品名や具体的な効果の程度については、今回参照した資料の範囲では中立的な記載にとどまっており、特定の薬剤の効果を強調する記載は意図的に避けています。薬の選択・変更は必ず主治医と相談してください。

服薬を続けるうえでの工夫として、決まった時間に服用する習慣をつける、お薬カレンダーやスマートフォンのアラームを活用する、飲み忘れた場合の対応をあらかじめ主治医に確認しておく、といった方法が一般的に勧められています。副作用(眠気、ふらつき、皮疹など)が気になる場合も、自己判断で量を減らしたり中止したりせず、次の診察を待たずに早めに主治医または薬剤師に相談することが大切です。抗てんかん薬は種類によって他の薬(風邪薬、抗生物質、経口避妊薬など)との相互作用があることも知られているため、他の医療機関を受診する際や新しく薬を追加する際には、てんかんの治療中であることと、服用中の抗てんかん薬の名前を必ず伝えるようにしてください。

⚠⚠ 発作時の応急処置:やるべきこと・してはいけないこと・救急要請の目安

てんかん発作に遭遇したとき、周囲の人の対応がその人の安全を大きく左右します。公益社団法人日本てんかん協会は、てんかんのある人が周りにいたら「気を落ち着かせ、冷静になりましょう」「騒ぎ立てないようにしましょう」とし、「すぐに救急車を呼ぶ必要はありません」としています[2]。多くの発作は自然に治まるため、まずは落ち着いて対応することが大切です。

やるべきことについて、てんかんinfoは、発作が起こったらやるべきこととして「危険な場所(道路、階段など)で倒れた場合は安全な場所に移動させる」「横にして、周囲の危険物を除き、けいれんによって体を打撲しないようにする」「呼吸しやすいように服のボタンを外し、ベルトをゆるめる」「時計があれば発作が起こった時刻を確認し、てんかんの様子を観察する」を挙げています[6]。

⛔してはいけないことについて、日本てんかん協会は、体をゆする、大声をかける、叩く、押さえつけるといった対応をしても「発作が早く終わることはありません」と注意を促しています[2]。特に重要な注意点として、「口を無理にこじ開けて指や箸、スプーン、ハンカチなどを入れてはいけません」とし、その理由を「気がついた時には、すでに口の中をかんでしまっていることが多く、役立ちません。日本てんかん協会は、かえって口の中を傷つけたり、歯を折ったり嘔吐を誘発します」と説明しています[2]。また日本てんかん協会は、「発作が終わった直後の意識が曇っている間に、水や薬を飲ませてはいけません」とし、窒息や嘔吐の原因になるとしています[2]。

プールでの発作について、てんかんinfoは、けいれんが起きた場合はまず体を支えて水面から顔を出すようにし、けいれん中は水の中で体を支え、無理にプールから引き上げようとしないようにするとしています。てんかんinfoは、けいれんが収まったら、できれば意識を回復した後にゆっくり水から引き上げるか、自分で上がってもらうようにし、すでに溺れている状態であれば直ちにプールから引き上げて救急車を呼ぶこととしています[6]。てんかんinfoは、食事中の発作について飲み込む力の弱い人以外はのどに詰まる事故はほとんど起こらないため、けいれん中に無理に口の中から食べ物を出そうとしなくてもよいが、テーブルへの転倒による食器の転倒・やけどには注意が必要としています[6]。

⚠救急要請の目安(てんかん重積状態):日本てんかん協会は、以下のような場合は医師による処置が必要であり救急車で近くの病院を受診してくださいとしています——「けいれんのあるなしに関わらず、意識の曇る発作が短い間隔で繰り返す」「発作と発作の間で意識が回復していない状態のまま繰り返す」「1回のけいれん発作が5分以上続き止まらない」場合です[2]。てんかんinfoも、全身にけいれんが起きた場合でも普通は1分〜数分で発作は収まり、その後10〜20分以内に意識が回復することが多いためそのまま様子を見ていてよいが、けいれんが長時間にわたって止まらないときや意識が戻らないうちに再びけいれんが起きる場合はすぐに治療を受けなければならないため病院に連れて行くこととしています[6]。この「発作が5分以上続く」「意識が回復しないまま発作を繰り返す」状態は、てんかん重積状態と呼ばれる緊急事態であり、様子を見ずに救急要請(119番)が必要です。

てんかん発作時の対応:やるべきこと・してはいけないこと・救急要請の目安
場面 対応 理由・根拠
倒れた場所が危険 安全な場所へ移動させる けがの防止[6]
発作中の体位 横向きにし、周囲の危険物を除く 打撲・窒息の防止[6]
発作中の口 物を入れない・押さえつけない 歯の損傷・窒息・嘔吐誘発の防止[2]
発作直後の意識朦朧時 水や薬を飲ませない 窒息・誤嚥の防止[2]
発作の長さ 時刻を確認し記録する 重積状態の判断に必要[6]
5分以上続く/意識戻らず繰り返す すぐに救急要請(119番) てんかん重積状態のおそれ[2]

出典:公益社団法人 日本てんかん協会「発作の介助と観察」[2]/てんかんinfo「発作時の対処法」[6]

⚠⚠ 運転免許・道路交通法:てんかんがあっても運転できる条件

てんかんのある人の自動車運転免許については、道路交通法にもとづく明確な基準があります。警察庁が公表している「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」では、「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの」として、政令で定めるものの一つに「てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除きます。)」が挙げられています[4]。つまり、てんかんそのものがあるというだけで一律に免許が取れない・更新できないわけではなく、発作の再発可能性や、発作の内容(意識障害・運動障害を伴うかどうか)、発作が起こる状況(睡眠中に限られるか)によって扱いが定められています。

免許取得・更新にあたっての具体的な要件について、てんかんinfoは、2014年6月1日から改正道路交通法の運用が始まり、てんかんがある人の場合、運転免許の取得には医師の許可が必要となり、免許の更新時にも同様に毎回医師の診断書が必要となるとしています。てんかんinfoは、睡眠中のみの発作や運転に支障を及ぼすおそれのない発作など例外的な場合を除いて、2年以内に発作を発現したことが一度でもあると道交法上運転はできなくなるとしています[5]。

てんかんinfoはさらに、運転時に必要な注意として、てんかんのある人の運転免許取得には一定の条件が決められているとした上で、「てんかんのある人は、大型免許と第2種免許の取得は控えてください」「運転を主たる職業とする仕事も、お勧めできません」とし、「5年以上発作がコントロールされていて、抗てんかん薬の服薬も終えている場合に運転適性があると判断されます(『日本てんかん学会』)」としています[5]。てんかんinfoは、免許の取得・更新をする際には症状を申告することが求められ、正しく申告すること、体調不良や抗てんかん薬を飲み忘れた時などには運転を控えること、運転に支障が生じる状態になった時には運転適性相談窓口(運転免許センターなど)に相談することを呼びかけています[5]。

また、「改正道路交通法」「自動車運転死傷処罰法」によって、免許の取得・更新時の質問票に虚偽回答をして事故を起こすと罰則が科せられることがある、病気の症状等を理由に免許が取り消しになった場合は取り消しから3年未満に運転適性の状況が回復すれば試験免除で免許の再取得が可能になった、運転することができない状態であるのに運転をし続ける人を医師が公安委員会に届け出ることができる、運転をしてはいけない状態であることを承知しながら運転し死傷事故を起こした場合の刑罰が重くなった、といった変更点があるとされています[5]。

日本神経学会も、てんかんをもつ方の運転免許の取得・更新に関しては「より適切な運用が求められて」いるとして会員に注意喚起を行っており、日本てんかん学会の見解や、日本神経学会が作成した「てんかん治療ガイドライン」のクリニカル・クエスチョンにおいて自動車運転免許についての運転免許の許可条件が明記されているとしています[8]。

てんかんと運転免許:警察庁が定める基本の考え方
項目 内容
免許拒否・取消しの対象となる病気の定義 「てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除きます。)」[4]
免許取得・更新に必要な手続き 医師の許可(取得時)・毎回の医師の診断書(更新時)が必要(2014年6月1日改正道交法の運用開始)[5]
発作の期間による扱い 睡眠中のみの発作・運転に支障のおそれのない発作等の例外を除き、2年以内の発作発現が一度でもあると運転不可[5]
控えるべき免許種別 大型免許・第2種免許の取得は控える/運転を主たる職業とする仕事も推奨されない[5]
虚偽申告・無申告運転の罰則 質問票への虚偽回答で事故を起こすと罰則の対象になりうる(改正道路交通法・自動車運転死傷処罰法)[5]

出典:警察庁「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」[4]/てんかんinfo「てんかんのある人は車の運転をしてはいけないのですか?」[5]/日本神経学会「てんかんをもつ方の運転について」[8]

⚠ 具体的な診断書の様式や、個別ケースでの発作の評価(何をもって「発作が再発するおそれがない」と判断するか等)は、必ず主治医および運転免許申請窓口(運転免許センター等の運転適性相談窓口)で確認してください。自己判断で運転を再開することは絶対に避けてください。

就労・学校生活での配慮

てんかんがあっても、発作がコントロールされていれば、多くの人が通常の就労・就学生活を送っています。てんかんinfoは、てんかんのある人は大型免許・第2種免許の取得や、運転を主たる職業とする仕事は勧められないとしていますが[5]、これは運転に関連する職業に限った注意点であり、それ以外の仕事や学業に一律の制限があるわけではありません。

学校生活においては、プールや体育の授業、宿泊行事など、発作が起きた場合に事故につながりやすい場面について、あらかじめ学校側と情報を共有し、発作が起きたときの対応(やるべきこと・してはいけないこと・救急要請の目安)を周囲の教職員に伝えておくことが、安全確保の面で重要になります。てんかんinfoによれば、プールでの発作対応については、けいれんが起きた場合はまず体を支えて水面から顔を出すようにし、無理にプールから引き上げようとしないことが基本とされています[6]。

就労・学校生活での具体的な合理的配慮の内容や、障害者雇用・特別支援に関する制度の詳細については、今回参照した資料には網羅的な記載が見当たりませんでした。個別の状況については、産業医・学校医、またはてんかん専門医への相談が推奨されます。厚生労働省は、てんかんのある方が地域で適切な支援が受けられるよう、てんかん診療の地域連携・ネットワークを構築する「てんかん地域診療連携体制整備事業」を平成27年度から実施しているとしています[1]。

就職や転職の際に、てんかんがあることをどこまで伝えるべきか迷う人も少なくありません。一般的な事務職など運転を伴わない業務であれば、法律上一律の就労制限があるわけではありませんが、高所作業や重機の操作、単独での長時間の運転を伴う業務など、発作が起きた場合に重大な事故につながりやすい職種については、業務内容と発作のコントロール状況を踏まえて、産業医や主治医と相談しながら判断することが望まれます。学校生活では、体育の授業、プール、家庭科の調理実習、修学旅行などの行事について、事前に学校側と情報を共有し、発作時の対応(本記事の「発作時の応急処置」の章を参照)を教職員に周知しておくことが、安心して学校生活を送るための土台になります。

妊娠・出産と抗てんかん薬

てんかんのある女性が妊娠・出産を考える場合、抗てんかん薬の種類や量が胎児に影響する可能性があるため、妊娠前からの計画的な管理が重要とされています。抗てんかん薬を自己判断で中止すると発作が再発するリスクがあるため、妊娠を希望する場合も含め、薬の継続・変更については必ず主治医(産婦人科医とてんかん専門医の連携)と相談しながら進める必要があります。

妊娠・出産と抗てんかん薬に関する具体的なリスクの数値や推奨される薬剤選択の詳細については、今回参照した資料には専門的な記載が見当たりませんでした。妊娠を希望する、または妊娠が判明した場合は、自己判断で薬を中止・変更せず、速やかにてんかん専門医および産婦人科医に相談することが重要です。

日常生活での注意点

てんかんのある人の日常生活では、発作の誘因になりやすい要素(睡眠不足、過度の飲酒、疲労の蓄積など)をできるだけ避け、抗てんかん薬を医師の指示通りに規則正しく服用することが基本になります。入浴・プール・自転車・高所での作業など、発作が起きた場合に事故につながりやすい場面では、一人で行わない、周囲に発作について伝えておくといった工夫が安全確保に役立ちます。

入浴中の発作は、意識を失って溺れる危険があるため、特に注意が必要な場面の一つです。プールでの発作対応と同様に、家族に発作の可能性を伝えておく、シャワー浴を基本にする、湯量を控えめにするなど、個々の状況に応じた工夫が検討されます。旅行や外出時には、お薬手帳や病状を記したカードを携帯しておくと、万一発作が起きた際に周囲の人や医療者が適切に対応しやすくなります。

睡眠不足は発作の誘因として特によく知られている要素の一つです。夜更かしや不規則な生活リズムが続くと発作が起こりやすくなることがあるため、規則正しい睡眠時間を確保することが日常生活での基本的な自己管理として重要です。テレビゲームやスマートフォンの画面の点滅、特定の光の点滅刺激で発作が誘発されるタイプ(光感受性発作)もあるとされており、該当する場合は画面との距離や明るさ、使用時間について主治医から具体的な助言を受けることが望まれます。

個々の生活場面(飲酒の可否の具体的な目安、運動の制限範囲など)についての詳細な数値基準は、今回参照した資料には網羅的な記載が見当たりませんでした。生活上の具体的な制限については、発作の型や頻度、コントロール状況によって個人差が大きいため、主治医に相談しながら決めることが推奨されます。自己判断で「これくらいなら大丈夫」と制限を緩めたり、逆に必要以上に生活を制限したりせず、定期受診の際に日常生活の疑問点をまとめて相談する習慣をつけることが、無理のない自己管理につながります。

日本と海外のてんかん分類・ガイドラインの違い

てんかんの発作分類は、国際抗てんかん連盟(ILAE)が国際基準を定めており、日本てんかん学会がその日本語版を公表・普及させる形で、日本国内でも国際基準にもとづいた診療が行われています。日本てんかん学会は、ILAEてんかん発作型と分類の日本語版を発表しており[3]、この点では日本と海外(ILAE基準)の間で用語・分類の枠組みに大きな差はありません。

一方で、運転免許の可否など法制度に関する基準は国によって大きく異なります。日本では警察庁が定める基準にもとづき、発作の再発可能性や発作の内容(意識障害・運動障害の有無)、発作が睡眠中に限られるかどうかによって、免許の可否が個別に判断される仕組みになっています[4]。海外の運転免許基準との詳細な比較については、今回参照した資料には網羅的な記載が見当たりませんでした。海外在住・渡航予定でてんかんがある方の運転免許については、当該国・地域の関係機関へ個別に確認することが必要です。

てんかん専門医制度・相談先

てんかんの診断・治療には専門的な知識が必要となるため、日本てんかん学会はてんかんの適切な診断と治療を行うのに必要な臨床経験を有する医師を養成する「てんかん専門医制度」を設けています[1]。また、厚生労働省は平成27年度から「てんかん地域診療連携体制整備事業」を実施しており、てんかん診療の地域連携・ネットワークを構築し、全国で均一なてんかん診療を行える体制を整備する取り組みを進めています。厚生労働省によれば、この事業では診療連携体制の構築のほか、地域住民への啓発活動、てんかんのある方やその家族への相談支援体制の構築、医療従事者への情報提供や研修の充実なども含まれています[1]。

関連する主な団体として、日本てんかん学会(医療専門家を中心とした学術団体)、公益社団法人日本てんかん協会(てんかんに関する正しい知識の普及啓発、当事者・家族への相談支援などを行う団体)、全国てんかんセンター協議会(JEPICA、てんかんセンター間の連携促進を図る団体)などがあります[1]。国立精神・神経医療研究センターは、てんかん診療全国拠点機関として全国的な連携体制の中核を担っています[7]。

よくある質問(FAQ)

てんかん発作を目撃したら、まず何をすればいいですか?
まず落ち着いて、周囲の危険物を取り除き、体を横向きにして安全を確保します。日本てんかん協会は「すぐに救急車を呼ぶ必要はありません」としており[2]、多くの発作は自然に治まります。日本てんかん協会の情報にもとづけば、発作が始まった時刻を確認し、5分以上続く場合や意識が戻らないまま繰り返す場合は救急要請してください[2]。
発作中に口に物を入れてもいいですか?
絶対にしないでください。日本てんかん協会は「口を無理にこじ開けて指や箸、スプーン、ハンカチなどを入れてはいけません」とし、口の中を傷つけたり、歯を折ったり嘔吐を誘発すると説明しています[2]。舌をかむことを心配する必要はほとんどありません。
発作中に体を押さえつけてもいいですか?
押さえつけないでください。日本てんかん協会は、体をゆする、大声をかける、叩く、押さえつけるといった対応をしても「発作が早く終わることはありません」としています[2]。周囲の危険物を除いて、けがを防ぐことに専念してください。
救急車を呼ぶべき目安は何ですか?
日本てんかん協会は、「1回のけいれん発作が5分以上続き止まらない」「意識の曇る発作が短い間隔で繰り返す」「発作と発作の間で意識が回復していない状態のまま繰り返す」場合は、医師による処置が必要で救急車を呼ぶべきとしています[2]。これらはてんかん重積状態のおそれを示すサインです。
てんかんはどのくらいの人がかかる病気ですか?
厚生労働省は、てんかんのある人は1000人あたり5〜8人、日本全体で60万〜100万人と推計しています[1]。国立精神・神経医療研究センターの報告書も、全人口の0.4〜0.9%、約100万人という多数の患者がいるコモンな疾患としています[7]。
てんかんは遺伝しますか?
特発性(素因性)てんかんには遺伝的な要因が関与していると考えられていますが[3]、必ず子どもに遺伝するとは限らず、個々の状況によって大きく異なります。遺伝についての詳しい確率などは、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。専門医への相談が推奨されます。
抗てんかん薬は一生飲み続けなければいけませんか?
厚生労働省は、抗てんかん薬を内服することで大部分の人は発作が抑制され、さらに一部の人では数年後には薬をやめることができるようになるとしています[1]。ただし、自己判断で断薬すると発作再発のおそれがあるため、減量・中止は必ず主治医の判断のもとで行ってください。
てんかんの薬を飲んでも発作が止まらない場合はどうすればいいですか?
厚生労働省は、抗てんかん薬を内服しても発作が十分に抑えられない場合には、脳外科手術により発作が抑制されることがあり、食事療法や迷走神経刺激術といった他の治療により発作が軽減する人もいるとしています[1]。専門的なてんかんセンターでの評価が推奨されます。
てんかんがあると運転免許は取れませんか?
一律に取れないわけではありません。警察庁は、「発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するもの」を免許拒否等の対象から除外しています[4]。具体的な条件は医師の診断書にもとづき個別に判断されます。
運転免許の更新にはどんな手続きが必要ですか?
てんかんinfoによると、2014年6月1日の改正道路交通法の運用開始以降、てんかんのある人は運転免許の取得に医師の許可が必要で、更新の際にも毎回医師の診断書が必要になるとされています[5]。
発作が5分以上続いたら、それ以上待たずに救急車を呼んでいいですか?
はい。日本てんかん協会は「1回のけいれん発作が5分以上続き止まらない」場合は医師による処置が必要で救急車で近くの病院を受診してくださいとしています[2]。迷わず119番へ連絡してください。
子どものてんかんと高齢者のてんかんは違う病気ですか?
同じ「てんかん」という病名ですが、原因の傾向が異なります。厚生労働省の情報を踏まえると、小児では先天性の脳の要因や特発性(素因性)てんかんが多く、高齢者では脳卒中や脳腫瘍、認知症など後天的な脳の病気を原因とする症候性(構造的)てんかんの割合が高くなる傾向があります[1]。
プールや入浴中に発作が起きたらどうすればいいですか?
てんかんinfoは、プールでの発作についてまず体を支えて水面から顔を出すようにし、けいれん中は無理にプールから引き上げようとしないこととしています。てんかんinfoは、すでに溺れている状態であれば直ちにプールから引き上げて救急車を呼んでくださいとしています[6]。

医療費の目安:自立支援医療(精神通院医療)制度

てんかんの通院治療は長期にわたることが多く、医療費の負担が気になる方も少なくありません。厚生労働省は、「精神通院医療は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む。)を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある者に対し、その通院医療に係る自立支援医療費の支給を行うもの」としており、てんかんはこの自立支援医療(精神通院医療)制度の対象疾患に明記されています[9]。

厚生労働省によれば、対象となる医療の範囲は「精神障害及び当該精神障害に起因して生じた病態に対して病院又は診療所に入院しないで行われる医療(通院医療)」とされており[9]、外来診察や外来での投薬などが対象になります。厚生労働省が示す対象疾病の一覧では「てんかん(G40)」が明記されており、統合失調症・気分障害などとともに「高額治療継続者(いわゆる『重度かつ継続』)の対象疾患」に含まれるとされています[9]。「重度かつ継続」に該当すると、月額の自己負担上限額が下がる仕組みになっています。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

出典:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」[9]

自己負担額の具体的な上限額や、申請に必要な書類・手続きの詳細については、お住まいの都道府県・指定都市の窓口、または通院先の医療機関にご確認ください。制度の利用には、指定自立支援医療機関での通院と、市区町村への申請手続きが必要です。

てんかんに関する記事一覧

妊娠中の抗てんかん薬の個別の安全性評価、および海外の運転免許基準との詳細な比較については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。

参考文献

  1. 厚生労働省「てんかん対策について」mhlw.go.jp/てんかん対策について
  2. 公益社団法人 日本てんかん協会「発作の介助と観察」jea-net.jp/epilepsy/spasm
  3. 日本てんかん学会「ILAEてんかん発作型の操作的分類:ILAE分類・用語委員会の公式声明(日本語版)」jes-jp.org/ILAE_case2017_ja.pdf
  4. 警察庁「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」npa.go.jp/license_renewal/list2
  5. てんかんinfo「てんかんのある人は車の運転をしてはいけないのですか?」tenkan.info/faq/faq05-01
  6. てんかんinfo「発作時の対処法」tenkan.info/care
  7. 国立精神・神経医療研究センター てんかん診療全国拠点機関事業「令和2年度 全国てんかん対策連絡協議会報告書」epilepsy-center.ncnp.go.jp/report_r2_greet.pdf
  8. 日本神経学会「てんかんをもつ方の運転について」neurology-jp.org/news_20110516_01
  9. 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin