コンテンツへスキップ
お問い合わせ
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ホーム › 病気ライブラリ › 健康 › 低血圧
JHO 病気ペディア

低血圧

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

スポンサーリンク
この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
朝起きられないのは低血圧? 今週49人が確認 記事へ 立ちくらみや倦怠感がある 記事へ 低血圧が招く病気は? 記事へ 塩分を増やしても大丈夫? 記事へ

✦ 結論から言うと

低血圧は一般に収縮期血圧が100mmHg未満の状態を目安として呼ばれますが、高血圧のような明確な国際診断基準は定まっていません[1]。多くは体質によるもので危険はありませんが、立ち上がった時や食事の後にめまい・失神が起こるタイプ、そして貧血や内分泌の病気・薬の副作用が背後に隠れている「二次性低血圧」は見逃さないことが重要です[2]。この記事では、低血圧を「起立性」「食後」「本態性」「二次性」という4つのタイプに分けて、それぞれの原因・症状・対処法・受診の目安を整理し、生姜や砂糖水といった民間療法についても科学的根拠の有無を中立的に確認していきます。

目安となる数値 収縮期血圧100mmHg未満が一般的な目安(国際的に統一された基準はなし)[1]
主な症状 めまい・立ちくらみ・倦怠感・朝が弱い・動悸・失神
タイプ 本態性・二次性(症候性)・起立性・食後 の4つに分かれ、それぞれ原因と対処が異なる
受診の目安 失神した・繰り返す転倒がある・急に症状が強くなった場合はすぐ受診[2]

低血圧とは?定義とめまい・倦怠感が起こる仕組み

血圧は心臓が血液を送り出す力(収縮期血圧=上の血圧)と、血管が収縮している時の圧力(拡張期血圧=下の血圧)の2つで表されます。高血圧については日本高血圧学会が「診察室血圧140/90mmHg以上」という明確な基準を定めており(詳しくは高血圧に関する記事で解説しています)、低血圧については、これに相当するような国際的に統一された診断基準は今のところ存在しません[1]。一般的な目安として、収縮期血圧が100mmHg未満の状態を「低血圧」と呼ぶことが多いものの、この数値を下回っても症状がなければ治療の対象にはならないのが実情です[3]。血圧の正常な範囲や、そもそも血圧とは何かという基礎知識については、当サイトの血圧に関する解説記事も参考にしてください。

「上が100を切ったら病気なのか」「上が90でも症状がなければ問題ないのか」という疑問を持つ人は多いですが、これは血圧という数値だけでは判断できません。実際、収縮期血圧が80〜90mmHg台でも、長年その血圧で健康に暮らしている人は少なくありません。反対に、普段120mmHg前後で安定している人が急に90mmHg台まで下がり、めまいや冷や汗を伴えば、それは体にとって「急激な変化」であり注意が必要です。低血圧を考えるときは、絶対値だけでなく「その人にとっての普段の血圧からどれだけ変化したか」「症状を伴っているか」という視点が欠かせません。実際の数値と症状の関係について具体的に知りたい場合は、「血圧100/60mmHgは高い?低い?」の記事で具体例を確認できます。

めまいや立ちくらみが起こる仕組みは、血圧が下がることで脳への血流が一時的に不足するためです。脳は体重の2%程度の重さしかないにもかかわらず、心臓が送り出す血液の約15〜20%を消費するとされる、体の中でもとりわけ多くの血流を必要とする臓器です。そのため、わずかな血圧低下でも脳への血流が敏感に影響を受け、ふらつきや目の前が暗くなる感覚(眼前暗黒感)、思考がぼんやりする感覚が生じます。体質的に血圧が低い人(本態性低血圧)は、やせ型で顔色が白く、疲れやすく、冬に冷えを感じやすい、いわゆる無力性体質の人が多いとされ、成人の3〜7%程度にみられるという報告があります[3]。

また、低血圧は年齢層によっても現れ方が異なります。若い世代、特に思春期から20代の女性に多くみられる低血圧症は、朝起きられない、立ちくらみがする、集中力が続かないといった訴えとして日常生活に影響することがあります。こうした若年層の低血圧については、「若者の低血圧症」の記事で詳しく取り上げています。一方、高齢者では起立性低血圧・食後低血圧の頻度が明らかに高くなり、転倒による骨折という別の危険が加わってくるため、年代によって注意すべきポイントが変わることを押さえておく必要があります。

出典:日本医事新報社「低血圧」解説記事[3](本図はJHO編集部が上記情報をもとに作図)

低血圧の4つのタイプ ― 起立性・食後・本態性・二次性はまったく別物

「低血圧」とひとくくりに語られがちですが、実際には原因もリスクも対処法もまったく異なる4つのタイプに分かれます。同じ「立ちくらみ」でも、原因が違えば有効な対策も変わるため、まず自分がどのタイプに近いかを知ることが出発点になります。

4つのタイプは互いに重なり合うこともあります。たとえば高齢の糖尿病患者では、自律神経障害を背景とした起立性低血圧と食後低血圧を両方あわせ持つことも珍しくありません[4]。また、もともと本態性低血圧の体質がある人が、風邪で下痢や嘔吐が続いて脱水になると、一時的に二次性低血圧に近い状態になることもあります。「自分は本態性だから安心」「これは食後だから様子見でいい」と決めつけず、症状が普段と違う・強い・繰り返す場合は、タイプの見極めも含めて医療機関で相談することが大切です。

低血圧の4タイプ比較
タイプ きっかけ・原因 多い人 とくに注意すべき点
起立性低血圧 臥位・座位から立位への体位変換[4] 高齢者、降圧薬服用者[4] 失神による転倒・骨折
食後低血圧 食後1時間前後の血圧低下[5] 高齢者に多くみられる[5] 食後のふらつき・転倒
本態性低血圧 原因となる病気が見つからない体質性[3] やせ型の女性(男女比おおよそ1:2)[3] 多くは無害だが倦怠感でQOL低下
二次性(症候性)低血圧 貧血・内分泌疾患・心疾患・脱水・薬剤など明らかな原因がある[3] 原疾患を持つ人全般 見逃すと原疾患が進行する危険

出典:日本医事新報社[3]/昭和医会誌 起立性低血圧レビュー[4]/食後低血圧に関する報告[5]

見分けるカギ:「いつ」症状が出るかで大まかに見分けられます。立ち上がった直後なら起立性、食後1時間前後なら食後、きっかけが思い当たらず体質的に続くなら本態性、そして急に強い症状が出た・他の病気の治療中であれば二次性を疑い、自己判断せず受診することが大切です。

起立性低血圧 ― 立ち上がった時に血圧が急低下する仕組み

起立性低血圧は、臥位または座位から立位への体位変換にともない、起立3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、あるいは拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合に診断されます[4]。人が立ち上がると、重力の影響で約500〜800mlの血液が胸腔内から下肢や腹部へ移動し、心臓へ戻る血液量が約30%減少します。健康な人ではこの変化を血圧受容器の反射がすばやく補正しますが、この反射の働きが弱っていたり、循環している血液量そのものが少なかったりすると、血圧の低下を抑えきれず、めまい・立ちくらみ・失神が起こります[4]。

疫学的には、高齢者の医療機関受診者の5〜30%にみられるとされ、特に降圧薬を服用している人では50〜65%に起立性低血圧が認められたという報告もあります[4]。薬を服用していない健康な高齢者でも、1分間の起立試験で10.7%に起立性低血圧が確認されたとする報告があり、加齢そのものが危険因子であることがうかがえます[4]。また、起立性低血圧による失神は、神経が過剰に反応して起こる血管迷走神経性失神に次いで多い原因とされ、欧州心臓病学会の失神診断・治療ガイドラインでは、失神全体の約15%を占めると報告されています[4]。これらの数字から、起立性低血圧は決してまれな現象ではなく、加齢とともに誰にでも起こりうる身近な問題であることがわかります。

原因は大きく「神経原性」(自律神経の障害によるもの)と「非神経原性」(薬剤性、脱水、出血、心疾患など)に分けられます。神経原性のものはさらに、パーキンソン病に伴う自律神経障害のような「特発性自律神経障害」と、糖尿病やアミロイドーシス、膠原病など全身性の病気に伴う「二次性自律神経障害」に分類されます[4]。特に高齢者では、降圧薬・利尿薬・抗うつ薬・前立腺治療薬(α遮断薬)などが起立性低血圧を引き起こしやすいことが知られており、複数の薬を併用している場合はその組み合わせが影響することもあります[4]。

起立性低血圧が疑われる場合、医療機関では「起立試験(シェロング試験)」が行われます。これは、臥位で数分間安静にしたあとの血圧・脈拍を測定し、立位に変わってから1分後・3分後などのタイミングで再度測定して、その変化を比較する検査です。ある研究では、立位1分以内の血圧測定で88%の症例が診断可能であり、3分間観察することでほぼ全例の起立性低血圧を検出できたと報告されています[4]。診断のためには、心エコー検査やホルター心電図(24時間心電図)を組み合わせて、心臓の病気や自律神経機能の異常がないかを確認することも重要とされています[4]。

この起立試験は head-up tilt(ティルト試験、傾斜台を使って受動的に立位に近い姿勢を作る検査)を用いて行われることもあります[4]。診断に際しては、食事摂取や降圧薬の内服が血圧に影響することもあるため、検査前にどのくらい時間が経過しているかを確認しておくことも重要とされています[4]。また、起立試験で必ずしも失神や失神の前触れとなる症状が伴うわけではなく、めまい・ふらつき・失神といった症状は、その時々の脳の血流不足の程度によって現れ方が変わるとされています[4]。

症状の現れ方にも特徴があります。起立性低血圧による症状は、夜間のトイレ後、朝の起床時、食後、運動後に悪化しやすいことが指摘されており、こうしたタイミングで急に立ち上がることを避けるだけでも、症状の予防につながる場合があります[4]。また高齢者では、日中に横になっている時間が長いこと自体が起立性低血圧を悪化させる要因になるため、日中はできるだけ座位・立位を保ち、軽い歩行訓練を行うことが勧められています[4]。めまいの原因を広く知りたい場合は、めまい・立ちくらみに関する記事も参考にしてください。

食後低血圧 ― 食事の後に血圧が下がるタイプ

食後低血圧は、食事のあとに血圧が下がることで起こります。食後は消化のために胃腸へ血液が集まる一方、これを補う血圧調整がうまく働かないと、脳への血流が一時的に不足してふらつきや眠気、転倒につながります。食後低血圧は高齢者に多くみられ、特に食後1時間前後で血圧が最も下がりやすいとされています[5]。糖尿病や自律神経の病気がある人、高齢の施設入所者では頻度が高いことが報告されています[5]。

対策としては、一度に大量の食事を摂らず分けて食べる、食後すぐに立ち上がらない、食前後の水分をこまめに摂るといった生活上の工夫が中心になります。食後にどのくらい血圧が下がっているか把握するには、食前と食後1時間の血圧を自分で測定して比べる方法が実際的です。血圧手帳やスマートフォンのアプリに、食前・食後30分・食後1時間・食後2時間といった形で記録しておくと、自分の血圧がどのタイミングで下がりやすいかが見えてきて、食後のどの時間帯に特に注意すべきかが分かりやすくなります。

食後低血圧は、糖尿病やパーキンソン病など自律神経の働きに影響する病気を持つ人、施設に入所している高齢者で頻度が高いことが報告されています[5]。これは、食事の消化・吸収にともなって腸に集まる血液量を補うための循環調整が、加齢や基礎疾患によってうまく働きにくくなるためと考えられています。対策として、炭水化物中心の食事を一度に大量に摂ると血糖値・血圧の変動が大きくなりやすいとされるため、食事の内容や量、食べる速さを見直すことも一つの工夫になります。ただし、食事内容の大きな変更が必要な場合は、自己判断ではなく医師や管理栄養士に相談することが望ましいです。

本態性低血圧・二次性低血圧 ― 「原因不明」と「原因あり」の違い

本態性低血圧は、これといった原因となる病気が見当たらないのに血圧が低い状態で、自覚症状がある場合にこう呼ばれます。やせ型で顔色が白く神経質、冷え性で疲れやすいといった体質を持つ人に多く、成人の3〜7%程度にみられるとされます[3]。多くの場合は生命に関わる危険はなく、生活の工夫で症状と付き合っていくことになります。

一方、二次性(症候性)低血圧は、貧血、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、心不全や不整脈などの心疾患、大量出血、重度の脱水、消化器疾患による栄養不良、がんの進行期、あるいは降圧薬・向精神薬などの薬剤の影響といった、明らかな原因があって血圧が下がっている状態です[3]。このタイプで最も大切なのは、低血圧そのものを治療の対象にするのではなく、背景にある病気を見つけて治療することです。急にだるさが強くなった、体重が減ってきた、動悸や息切れが伴う、便に血が混じるといった症状を伴う場合は、単なる体質性の低血圧と自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。

特に見逃しやすいのが「貧血」です。貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンが不足した状態で、血圧そのものとは異なる指標ですが、めまい・立ちくらみ・動悸・息切れといった自覚症状が低血圧と非常によく似ているため、混同されがちです。顔色が悪い、まぶたの裏(結膜)が白っぽい、爪がスプーン状に反っている、階段を上るだけで動悸がするといった症状がある場合は、低血圧ではなく貧血が背景にある可能性を考え、血液検査を受けることが勧められます。貧血について詳しくは貧血に関する記事で解説しています。

二次性低血圧のもう一つの重要な原因は薬剤です。降圧薬はもちろん、利尿薬、抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)、抗精神病薬、前立腺肥大症治療薬(α遮断薬)、パーキンソン病治療薬などは、血圧を下げる作用を持つことが知られています[4]。複数の医療機関から薬を処方されている場合、それぞれの薬の血圧への影響が重なって、思いがけず強い低血圧症状が出ることもあります。新しい薬を飲み始めてからめまいや立ちくらみが増えたと感じたら、自己判断で中止するのではなく、お薬手帳を持って処方医または薬剤師に相談してください。

受診の目安:今すぐ救急要請すべきか、自宅で様子見してよいか

低血圧の多くは無害ですが、次のようなサインがある場合は放置せず医療機関を受診してください[2][4]。

受診の目安(信号別)
状態 目安 対応
🔴 今すぐ救急要請 意識を失った(失神)、転倒して頭を打った、胸の痛みや強い動悸を伴う 救急要請(119番)
🟡 早めに受診 立ちくらみを繰り返す、急にだるさが強くなった、原因不明の体重減少がある 数日以内に内科・循環器内科を受診
🟢 自宅で様子見可 もともと血圧が低めで自覚症状がなく、生活に支障がない 生活習慣の見直しで経過観察

出典:昭和医会誌 起立性低血圧レビュー[4]/日本医事新報社[2]

特に高齢者では、起立性低血圧や食後低血圧による失神・転倒が骨折につながるリスクが高く、「たかが立ちくらみ」と軽視せず、繰り返す場合は早めに相談することが勧められます[4]。また、二次性低血圧の背後には貧血・内分泌疾患・心疾患など見逃してはいけない病気が隠れていることがあるため、急激な変化や随伴症状がある場合は自己判断で済ませないことが重要です。

受診の際は、循環器内科・内科が窓口になることが一般的ですが、動悸や息切れが強い場合は循環器内科、自律神経の異常が疑われる場合は神経内科、貧血が疑われる場合は血液内科や婦人科(月経に伴う貧血など)が関わることもあります。どの科を受診すればよいか迷う場合は、まずかかりつけの内科医に相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらう流れが一般的です。受診時には、いつ・どんな状況で・どのくらいの時間症状が続いたかをできるだけ具体的にメモして持参すると、診察がスムーズになります。

日常生活での対処法 ― 水分・塩分・起き方の工夫

低血圧の対処は、重症でない限り、まず生活習慣の見直しが基本になります。日本循環器学会の「失神の診断・治療ガイドライン」でも、起立性低血圧に対してまず推奨される対応(クラスI)は、急激な起立を避けること、脱水・過食・飲酒といった誘因を避けること、そして原因となりうる薬剤(降圧薬など)を医師と相談のうえ見直すことです[4]。

日常生活でできる対処法
工夫 具体的な内容
水分摂取 循環血液量を保つため、こまめな水分補給を心がける[4]
塩分摂取 医師の指導のもと、必要に応じて塩分をやや多めに摂る(腎臓病・心不全がある場合は要相談)[4]
起き上がり方 急に立ち上がらず、座った状態を挟んでからゆっくり立つ
弾性ストッキング 下肢に血液が滞留するのを防ぐ目的で使用されることがある[4]
睡眠時の工夫 上半身をやや高くして眠ると症状の軽減に役立つ場合がある[4]

出典:昭和医会誌 起立性低血圧レビュー(日本循環器学会「失神の診断・治療ガイドライン」の記載を引用)[4]

これらの生活上の対処で改善しない場合、医師の判断のもとで薬物療法が検討されることがあります。フルドロコルチゾン(鉱質コルチコイド、循環血漿量を増やす目的で用いられる)や、α1刺激薬であるミドドリンといった薬剤が使われることがありますが、これらは医師の処方が必要な薬であり、自己判断で使うものではありません[4]。低血圧の薬物治療は、症状によるQOL(生活の質)の低下を防ぐことが目的であり、数値そのものを正常化させることが目的ではない点も押さえておきたいポイントです[4]。

また、体位変換に関する具体的な工夫として、以下のような「失神を避けるための動作」が知られています。立ちくらみの前兆(目の前が暗くなる、耳鳴りがする、冷や汗が出るなど)を感じたら、無理に立ち続けず、その場でしゃがむ、脚を組んで力を入れる、両手を組んで引っ張り合うといった動作(フィジカル・カウンタープレッシャー法)で、一時的に血圧の低下を軽減できる場合があるとされています[4]。これは薬を使わずにできる対処法として、特に若年者や、まだ薬物療法の対象になっていない軽症の人にとって知っておく価値のある方法です。

入浴も見落とされがちな注意点です。熱いお湯に長く浸かると血管が拡張し、血圧が下がりやすくなります。特に高齢者や起立性低血圧のある人は、湯温をぬるめにする、長湯を避ける、浴槽から急に立ち上がらないといった工夫が転倒予防につながります。同様に、夏場の脱水や、飲酒後の入浴も血圧を下げやすい組み合わせであるため注意が必要です。浴室は転倒した際に頭を打ちやすい場所でもあるため、滑り止めマットの設置や、湯船から出る際に手すりを使うといった環境面の対策もあわせて検討してください。

民間療法(生姜・砂糖水など)は本当に効くのか ― 科学的根拠を冷静に確認する

「低血圧には生姜がいい」「砂糖水を飲むと血圧が上がる」といった民間療法は、インターネット上でよく見かけますが、これらが低血圧の症状を医学的に改善するという確立した科学的根拠は、今回参照した厚生労働省・学会等の一次資料の中には見当たりませんでした。生姜には血行を促進する作用があるとされることがありますが、これは主に「体を温める」という体感に関する言及であり、血圧を医学的に上昇させる効果を示した信頼できる臨床データを確認することはできませんでした。生姜の効果や飲み方について詳しく知りたい場合は、「低血圧に生姜水は効果的?」の記事も参考にしてください。

同様に、砂糖水についても、一時的に糖分を摂ることで気分がしゃきっとしたと感じる人がいる可能性はあるものの、これも低血圧そのものへの治療効果を裏付ける根拠ではありません。低血糖による立ちくらみと、低血圧による立ちくらみは似た症状として感じられることがあり、砂糖水を飲んで一時的に楽になったと感じた場合、それが血圧の改善によるものなのか、血糖値の変化によるものなのかを、体感だけで区別することは困難です。砂糖入りのお茶に関する情報は「低血圧に砂糖入りお茶は効果的?」の記事にまとめています。

「なぜ効果が証明しにくいのか」という点も補足しておきます。低血圧の症状は、体調・睡眠・気温・その日の緊張状態など多くの要因によって日々変動するため、「ある飲み物を飲んだ日にたまたま調子が良かった」という体験だけでは、その飲み物の効果を証明したことにはなりません。医学的に「効果がある」と言うためには、同じ条件の人を対象に、飲んだ場合と飲まなかった場合を比較する臨床試験が必要ですが、生姜や砂糖水についてそうした信頼できる試験結果は、今回の調査では確認できませんでした。

薬機法・景品表示法の観点からも、根拠が確立していない食品・飲料について「効く」「改善する」と断定的に表現することは適切ではありません。本記事では、生姜や砂糖水を「試しても害が少なそうな水分・栄養補給の一形態」として中立的に紹介するにとどめ、医学的な効果を保証するものではないことを明記します。糖分の摂りすぎは体重増加や血糖値への影響も考えられるため、「良さそうだから」と習慣的に大量に摂ることにも注意が必要です。低血圧の症状が続く、あるいは強い場合は、民間療法に頼るのではなく、医療機関で原因を確認することを優先してください。

民間療法全般に共通して言えるのは、「害が少なそうだから試す」ことと「効果が証明されているから治療として使う」ことはまったく別の話だという点です。この違いを理解しておくと、「試してみたけど効果を感じなかった」ときに落胆しすぎたり、逆に「効いた気がする」ときに過信して受診が遅れたりすることを防げます。本記事で紹介した生姜・砂糖水以外にも、さまざまな健康食品やサプリメントが低血圧に効くとうたわれることがありますが、個別の商品の効果については、公的機関や学会による評価が確立していないものがほとんどです。気になる商品がある場合は、パッケージの表示だけで判断せず、かかりつけ医に相談することをおすすめします。

日本と海外のガイドラインで一致している点・異なる点

「日本の情報と海外の情報で言っていることが違う」と感じて不安になる読者もいるかもしれませんが、これはガイドライン同士が矛盾しているという意味ではなく、それぞれの学会が異なる時期・異なる集団のデータをもとに推奨の強さ(エビデンスレベル)を独自に評価しているためです。ここでは、実際にどこが同じでどこが違うのかを、レビュー論文の記載に基づいて具体的に比較します。

起立性低血圧の診断基準(起立3分以内に収縮期血圧20mmHg以上、または拡張期血圧10mmHg以上の低下、あるいは収縮期血圧絶対値90mmHg未満)は、日本循環器学会のガイドラインと欧州心臓病学会(ESC)の失神診断・治療ガイドラインとで、基本的な考え方が共通しています[4]。一方で、生活指導の中の「塩分摂取」の推奨クラス分けには違いがあり、日本循環器学会のガイドラインではクラスIIa相当として扱われる記載がある一方、ESCガイドライン2009年版では十分な水分・塩分摂取をクラスI(強い推奨)として位置づけているとの報告があります[4]。

起立性低血圧:生活指導の推奨度の違い(レビュー文献の記載に基づく)
項目 日本循環器学会ガイドライン ESC(欧州心臓病学会)ガイドライン2009
塩分・水分摂取 クラスIIa相当[4] クラスI[4]
上半身を高くした睡眠 クラスIIa相当[4] クラスIIb[4]

この違いは、どちらが正しい・間違っているというものではなく、ガイドラインが作られた時期や対象集団の違いを反映していると考えられます。海外の情報を参考にする際は、日本の医療機関では日本循環器学会・日本自律神経学会など国内学会の基準がベースになる点を念頭に置いてください。インターネットで海外の医療情報サイトを調べると、日本の一般的な説明よりも踏み込んだ薬物療法の推奨が書かれていることがありますが、薬の承認状況や保険適用は国によって異なるため、海外の記載をそのまま日本での治療方針として当てはめることはできません。

また、起立性低血圧の診断基準そのもの(起立3分以内の収縮期血圧20mmHg以上低下など)については、日本と欧米の基準に大きな差はなく、国際的にほぼ共通した考え方が使われています[4]。差が生まれやすいのは、診断基準そのものよりも、その後の生活指導・薬物療法をどの段階でどの程度積極的に行うかという「治療の強さ」の部分です。この点は今後のガイドライン改訂によって変わる可能性もあるため、本記事の内容も定期的な見直しが必要になります。

低血圧と間違えやすい状態との見分け方

低血圧に似た症状を起こす状態は他にもあります。自分の症状がどれに近いか整理する際の参考にしてください。ただし、この比較はあくまで一般的な傾向であり、実際の診断には医療機関での問診・検査が必要です。

項目 起立性低血圧 血管迷走神経性失神 貧血
きっかけ 立ち上がった直後[4] 長時間の立位、痛み、強い緊張・恐怖などの誘因[4] 特定のきっかけがなく持続的
血圧の変化 立位直後から低下[4] 立位開始から少し遅れて低下することが多い[4] 血圧自体は正常なことも多い
随伴症状 立ちくらみ、失神 冷や汗、あくび、気分不快の前兆を伴うことがある 顔色不良、動悸、息切れ、爪や粘膜の蒼白

見分けるカギ:立ち上がって「すぐ」なのか「少し経ってから」なのかという時間経過と、顔色や爪の色といった貧血特有のサインの有無が、見分ける手がかりになります。ただし自己判断は難しく、繰り返す場合は医療機関での起立試験や血液検査が確実です。

血管迷走神経性失神(いわゆる「脳貧血」と俗に呼ばれることもある反射性の失神)は、名前に「貧血」という言葉が入っていますが、血液検査上の貧血とは別の病態です。長時間の立位、強い痛み、採血や注射への恐怖、満員電車のような暑く混雑した環境などがきっかけとなり、迷走神経の働きが過剰になることで血圧と脈拍がともに低下し、失神に至ります。起立性低血圧が「立った瞬間から」血圧が下がるのに対し、血管迷走神経性失神は「しばらく我慢した後に」急激に血圧・脈拍が落ちるという経過の違いがあり、この点が問診で重視されます。いずれのタイプも、繰り返す失神や、前兆なく突然意識を失う場合は、心臓の病気(不整脈など)が隠れていないかを確認するための検査が必要になることがあります。

自宅でできるセルフチェックと血圧の測り方

低血圧の症状があるかどうかを自分で把握するには、家庭用血圧計を使ったセルフチェックが役立ちます。測定のポイントは、できるだけ毎日同じ時間帯(起床後・就寝前など)に、椅子に座って1〜2分安静にしたあと測定することです。1回だけでなく、数日〜数週間続けて記録することで、自分の血圧の「普段の範囲」が見えてきます。

セルフチェックの記録項目
タイミング 記録する内容 気づきのポイント
起床時(臥位) 横になったままの血圧・脈拍 起立性低血圧の基準値になる
起立直後・1分後・3分後 立ち上がってからの血圧の変化 20mmHg以上の低下があれば起立性低血圧を疑う目安[4]
食前・食後1時間 食事前後の血圧の変化 20mmHg以上の低下があれば食後低血圧を疑う目安[5]
症状が出た時 その時の血圧・状況(食後か、立った直後かなど)・持続時間 受診時に医師へ伝える重要な情報になる

出典:昭和医会誌 起立性低血圧レビュー[4]/食後低血圧に関する報告[5]

記録した血圧の変化のパターンを持って受診すると、医師が原因を絞り込みやすくなります。特に、症状が出た「時刻」「食事との関係」「体位の変化との関係」「服用している薬」の4点は、伝え忘れがちですが診断にとても役立つ情報です。お薬手帳と一緒に血圧の記録を持参することをおすすめします。

家庭用血圧計を選ぶ際は、上腕式のものが医療機関での測定値との誤差が少ないとされ、手首式よりも推奨されることが多いです。測定するたびに数値が大きくばらつく場合は、カフの巻き方や測定姿勢(腕の高さが心臓と同じ位置にあるか)を確認してみてください。また、1回だけの測定値に一喜一憂せず、数日〜数週間の傾向として捉えることが、体質による低血圧なのか、何か別の変化が起きているのかを見極めるうえで役立ちます。

低血圧になりやすい人・生活習慣上のリスク要因

「なぜ自分だけ低血圧なのか」と疑問に思う人も多いですが、体質的な要素(遺伝的になりやすさ、やせ型の体格など)に加えて、日々の生活習慣が症状の出やすさに影響していることが少なくありません。低血圧そのものは体質による部分が大きいものの、症状を悪化させたり、二次性低血圧のリスクを高めたりする生活習慣上の要因もいくつか知られています。過度なダイエットによる栄養不足は、貧血や循環血液量の低下を招き、低血圧症状を悪化させることがあります。また、長時間同じ姿勢で座り続けることは下肢の血流を滞らせ、急に立ち上がった際の血圧低下を強めることにつながります。

睡眠不足や不規則な生活リズムも、自律神経のバランスを乱し、血圧調整機能を低下させる要因として指摘されています。特に、夜更かしが続いたあとの起床時に強いふらつきを感じる人は、睡眠習慣の見直しが症状改善の第一歩になることがあります。さらに、暑い環境での長時間の活動や、発熱時、下痢・嘔吐などで体液を失った状態も、一時的に血圧を下げやすくする要因です。夏場の脱水対策や、体調不良時の水分補給は、低血圧症状の予防という観点からも重要です。

運動習慣も血圧調整に関わります。ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、下肢の筋肉を使う運動は、血液を心臓へ戻すポンプの働き(筋ポンプ作用)を助け、立位での血圧低下を軽減する効果が期待できるとされています。一方で、運動不足の状態が続くと、下肢の筋力低下によって静脈からの血液の戻りが悪くなり、起立性低血圧の症状が悪化しやすくなります。ただし、症状が強い時期に無理な運動を始めるとかえって転倒のリスクが高まるため、体調に応じて座位でできる運動から少しずつ始めるなど、無理のない範囲で進めることが大切です。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16


よくある質問(FAQ)

低血圧の基準値はいくつですか?
明確な国際基準はありませんが、一般には収縮期血圧(上の血圧)が100mmHg未満を目安とすることが多いです[1]。ただし数値だけでなく、めまいや倦怠感などの症状があるかどうかが受診判断の重要なポイントになります。高血圧のように「〇〇mmHg以上なら要治療」という明確な線引きがない点が、低血圧という状態を分かりにくくしている大きな理由です。
低血圧は病気ですか?治療しなくて大丈夫ですか?
原因不明の本態性低血圧の多くは体質によるもので、症状が軽ければ治療の対象になりません[3]。一方、貧血や内分泌疾患などが背景にある二次性低血圧は、原因疾患の治療が必要です。まずは低血圧を「病気」と決めつけず、症状の強さと、背景に別の病気が隠れていないかを確認することが最初のステップになります。
朝が弱い・起きられないのは低血圧のせいですか?
低血圧の症状の一つとして「朝が弱い」という訴えはよく見られます。ただし、睡眠不足や自律神経の乱れなど他の要因も関わるため、症状が強い場合は医療機関で相談することをおすすめします。
起立性低血圧はどうやって診断しますか?
臥位または座位から立位に変わったあと、3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下するか、収縮期血圧が90mmHg未満になるかを血圧計で確認する「起立試験」で診断します[4]。
食後に眠くなる・ふらつくのは低血圧ですか?
食後1時間前後に血圧が下がる「食後低血圧」の可能性があります。高齢者に多くみられ、食事量を分ける、食後すぐに立ち上がらないなどの工夫が有効な場合があります[5]。
低血圧に効く食べ物・飲み物はありますか?
生姜や砂糖水などが民間療法として語られることがありますが、低血圧を医学的に改善するという確立した科学的根拠は、参照した資料の中には見当たりませんでした。効果を断定せず、水分・栄養補給の一環として捉えるのが適切です。
低血圧でめまいがする時、その場でどうすればいいですか?
無理に立ち続けず、可能であればしゃがむか横になり、頭を心臓より低くすると症状が和らぎやすいとされます[4]。転倒しやすい場所(階段、浴室)では特に注意してください。
低血圧と高血圧、どちらが危険ですか?
単純比較はできません。高血圧は長期的に脳卒中や心疾患のリスクを高めることが明確な基準とともに示されていますが、低血圧は多くの場合無害です。ただし、低血圧でも失神による転倒や、背景にある二次性の病気は危険因子になり得ます[2]。
子どもの立ちくらみも低血圧ですか?
思春期の子どもに多い立ちくらみ・失神は「起立性調節障害」と呼ばれ、成人の起立性低血圧とは診断基準や対応が異なる場合があります。気になる場合は小児科での相談が勧められます。
降圧薬を飲んでいますが、低血圧の症状が出たらどうすればいいですか?
自己判断で薬を中止せず、必ず処方医に相談してください。降圧薬は起立性低血圧の原因になりやすいことが報告されており、量の調整や薬の変更で改善することがあります[4]。
低血圧の人は塩分を多く摂ったほうがいいですか?
起立性低血圧の生活指導の一つとして塩分摂取が挙げられることがありますが[4]、腎臓病・心不全・すでに高血圧の治療を受けている場合は塩分制限が優先されることがあるため、自己判断せず医師に相談してください。
妊娠中に血圧が低いのは問題ありませんか?
妊娠中は血管が拡張し血圧が下がりやすい時期があります。強いめまいや失神を伴う場合は、貧血など他の原因が隠れていないか産科・内科での確認が勧められます。
低血圧はサプリメントで改善できますか?
特定のサプリメントが低血圧を医学的に改善するという確立した根拠は、参照した資料の中には見当たりませんでした。バランスの取れた食事と十分な水分・塩分摂取が基本になります。サプリメントに頼る前に、まずは食事量が十分か、水分・塩分が不足していないかを見直すことが優先されます。鉄分不足による貧血が隠れている場合は、サプリメントより先に血液検査で確認することが確実です。
低血圧で立ちくらみがしたとき、周りの人はどう対応すればいいですか?
本人を無理に立たせようとせず、可能であれば横に寝かせ、脚を心臓より高く上げると血流が戻りやすくなります[4]。意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い、けいれんを伴う場合は、ためらわず救急要請をしてください。
低血圧の人が避けたほうがいい行動はありますか?
急な起立、長時間の起立、暑い場所での長時間の活動、飲酒後すぐの入浴などは血圧を下げやすく、症状を誘発しやすい行動として知られています[4]。特に混雑した電車内や、朝の身支度中に急いで動くタイミングでの発症が多いとされます。時間に余裕を持って行動し、動作の合間に一呼吸置く習慣をつけることが、症状の予防につながります。

妊娠中・子ども・高齢者 ― 特別な配慮が必要な場面

低血圧への向き合い方は、年齢やライフステージによっても変わってきます。ここでは特に相談が多い3つの場面について、それぞれの特徴を整理します。

妊娠中の低血圧
妊娠中は、胎盤やホルモンの影響で血管が拡張しやすく、特に妊娠初期〜中期にかけて血圧が下がりやすい時期があります。軽いめまいや立ちくらみは珍しくありませんが、強い症状や失神を伴う場合は、貧血(妊娠中は特に鉄欠乏性貧血が起こりやすい)や、まれに他の産科合併症が関わっている可能性もあるため、自己判断せず妊婦健診の際に相談することが勧められます。仰向けに寝た姿勢が長く続くと、大きくなった子宮が血管を圧迫して血圧が下がりやすくなることもあるため、妊娠後期は横向きで休むよう指導されることもあります。気になる症状があれば、我慢せず妊婦健診の担当医に相談してください。

子どもの立ちくらみ
小学校高学年から高校生の年代でみられる立ちくらみ・失神は、「起立性調節障害(OD)」と呼ばれることがあり、朝起きられない、午前中に調子が悪く午後から回復するといった特徴的なパターンを示すことがあります。これは成人の起立性低血圧と関連する部分はあるものの、診断基準や治療方針が異なる小児特有の病態として扱われるため、気になる場合は自己判断せず小児科での相談が基本になります。「怠けている」「気合が足りない」と誤解されやすい症状でもあるため、保護者や周囲の大人が身体的な要因の可能性を理解しておくことも大切です。

高齢者の低血圧
高齢者では、起立性低血圧・食後低血圧のいずれも頻度が高く、しかも転倒による骨折という重大な結果につながりやすい点が最大の特徴です[4]。さらに高齢者では、もともと高血圧の治療を受けている人も多く、「臥位では血圧が高いのに、立つと大きく下がる」という一見矛盾した状態(臥位高血圧と起立性低血圧の合併)がみられることもあります。この場合、降圧薬の飲む時間や量の調整が必要になることがあるため、家庭での血圧記録を持って、定期的に主治医と相談することが特に重要です。

介護をする家族にとっても、高齢者の低血圧は見過ごせないテーマです。トイレへの移動時や、入浴の前後、朝の起き上がり時など、日常生活の中で転倒のリスクが高まる場面を具体的に把握し、手すりの設置や、ゆっくり体を起こす声かけといった環境面の工夫を行うことが、失神や転倒による骨折を防ぐうえで役立ちます。本人が「大丈夫」と言っても、実際には立ちくらみを我慢していることもあるため、家族が定期的に血圧を確認し、変化に気づける体制を整えておくことが望ましいでしょう。

低血圧に関する記事一覧

記事一覧 15件

基礎知識・原因 2

食事・生活 2

治療・薬 1

合併症・リスク 6

その他 4

民間療法(生姜・砂糖水以外にも語られるもの)の細かな作用機序や、地域・人種による低血圧の頻度差、遅発性の起立性低血圧に関する日本国内での大規模な疫学データについては、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。今後、日本自律神経学会など国内学会の最新の診療ガイドラインが確認でき次第、本記事の内容も更新していきます。

参考文献

  1. 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」関連情報および血圧の基準に関する一般的な解説 jpnsh.jp
  2. 日本医事新報社「低血圧」電子コンテンツ jmedj.co.jp
  3. 日本医事新報社「本態性低血圧[私の治療]」 jmedj.co.jp
  4. 河野律子ほか「起立性低血圧」昭和医会誌 第71巻第6号(2011)523-529頁、日本循環器学会「失神の診断・治療ガイドライン」および欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインの引用を含む jstage.jst.go.jp
  5. 食後低血圧に関する報告(老年者高血圧例における食後低血圧の検討ほか) jstage.jst.go.jp