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JHO 病気ペディア

多血症

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

健診の血液検査で「赤血球(RBC)」「ヘモグロビン(Hb)」「ヘマトクリット(Ht)」のいずれかが基準値を超えていた——多くの方はこの結果を見て初めて「多血症」という言葉を知ります。まず疑うべきは3つのタイプ——骨髄自体が異常増殖する「真性多血症」、喫煙や睡眠時無呼吸などが引き金になる「二次性多血症」、脱水やストレスで血液が濃縮しただけの「相対的多血症」——のどれに当たるかです[2]。Ht値がおおむね男性49%以上・女性48%以上[5]でJAK2遺伝子変異が陽性なら真性多血症の可能性が高く、血栓症(脳梗塞・心筋梗塞)のリスク管理が治療の中心になります[1]。

主な原因 JAK2遺伝子変異(真性)/喫煙・睡眠時無呼吸・高地生活(二次性)/脱水・利尿薬・ストレス(相対的)[2]
主な症状 顔面紅潮、皮膚のかゆみ(入浴後に悪化)、頭痛、めまい、手足の灼熱感・しびれ、脾腫による腹部膨満感。無症状で健診発見も多い[2]
受診の目安 Ht値が男性49%・女性48%を超えている[5]、または片側の手足の急なしびれ・視野障害・胸痛がある場合はすぐに医療機関へ[1]

多血症とは? 赤血球が増えすぎる3つの仕組み

多血症(赤血球増加症)とは、血液中の赤血球・ヘモグロビン・ヘマトクリットのいずれかが基準値を超えて増加した状態の総称です。「赤血球が多い=すべて同じ病気」ではなく、仕組みの違いで大きく3タイプに分かれます[4]。

①真性多血症(真性赤血球増加症)は、骨髄の造血幹細胞そのものに後天的な遺伝子変異(多くはJAK2 V617F、一部はJAK2エクソン12変異)が起こり、エリスロポエチン(EPO、腎臓が出す造血ホルモン)の指令なしに赤血球が作られ続ける病気です。J-STAGE掲載の総説では「真性多血症の約8割にJak2の遺伝子変異が生じている」と報告されています[4]。慢性骨髄増殖性腫瘍(MPN)の一種に分類され、白血球や血小板も同時に増えることが多いのが特徴です。

②二次性多血症(二次性赤血球増加症)は、骨髄自体は正常で、体が「酸素が足りない」と誤認してEPOを多く出すために赤血球が増えるタイプです。喫煙は最も頻度の高い原因とされています[6]。タバコの煙に含まれる一酸化炭素はヘモグロビンと強く結合し、酸素の運搬を妨げるため、体が酸素不足と判断して赤血球を増産すると考えられています[3]。ほかに睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、チアノーゼ性心疾患、腎細胞がん・肝細胞がんなどのEPO産生腫瘍が原因になります[3]。二次性多血症の原因は大きく「低酸素が引き金になるもの」と「腫瘍などが直接EPOを過剰に作るもの」の2系統に分けて理解すると整理しやすくなります。前者には喫煙、睡眠時無呼吸症候群、COPDなどの慢性呼吸器疾患、チアノーゼ性心疾患、高地居住などが含まれ、いずれも体内の酸素濃度が慢性的に低い状態が続くことで、腎臓が「酸素不足」と判断してEPOの分泌を増やします[3]。後者には腎細胞がん、肝細胞がん、髄膜腫、子宮筋腫、多発性嚢胞腎などがあり、腫瘍や病変そのものがEPOやEPO様物質を異常に分泌することで赤血球が増えます。まれに、筋肉増強を目的としたエリスロポエチン製剤や男性ホルモン製剤の不適切な使用が二次性多血症の原因になることもあります[3]。

③相対的多血症(見かけ上の多血症)は、赤血球の絶対数は増えておらず、脱水・ストレスなどで血漿(血液の水分)だけが減り、相対的に血液が濃縮して見える状態です[6]。ストレスが関与するタイプは「ゲイスベック症候群」と呼ばれることもあり、利尿薬の使用や大量飲酒も血漿量を減らす要因になり得ます[3]。水分補給や原因の是正で改善することが多く、真性多血症のような血栓治療は基本的に不要です。

この3タイプの見分けが重要なのは、対応がまったく異なるためです。真性多血症は骨髄の病気そのものへの継続的な医学管理が必要な一方、二次性・相対的多血症は「原因を取り除く」ことが治療の中心になります。健診結果の数値だけを見て自己判断せず、まずは血液検査の項目(赤血球数・Hb・Ht・白血球数・血小板数)をそろえて医師に相談することが、遠回りのようで最も確実な近道です[4]。

なぜ赤血球が増えると体に負担がかかるのか

赤血球は血液の中で酸素を運ぶ役割を担っていますが、増えすぎると血液そのものの粘り気(血液粘度)が上がります。血液がドロドロになると、細い血管の中を流れにくくなり、脳や心臓、手足の末梢血管で血流が滞りやすくなります。これが血栓(血の塊)を作りやすくする最大の理由です[2]。

特に真性多血症では、赤血球だけでなく白血球・血小板も同時に増えていることが多く、血小板の機能異常も加わって、脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症といった重大な血管イベントのリスクが健康な人より明らかに高くなります[1]。一方で、赤血球が極端に増えすぎると、逆に出血しやすくなる「後天性フォンヴィレブランド症候群」を合併することもあり、「血が濃い=血栓だけに注意すればよい」という単純な話ではない点にも注意が必要です[2]。

もう一つ理解しておきたいのが、赤血球を作る司令塔であるエリスロポエチン(EPO)の働きです。健康な人では、腎臓が血液中の酸素濃度を常に監視し、酸素が足りなくなるとEPOを分泌して骨髄に「赤血球をもっと作れ」と指令を出します。高地に住む人の赤血球が多いのは、酸素の薄い環境に適応するための正常な反応です[3]。これに対し真性多血症では、骨髄側のJAK2遺伝子変異によって、EPOからの指令がなくても勝手に赤血球が作られ続けてしまいます。そのため血液検査でEPO値を測ると、通常は「体が指令を出す必要がない」ため低値になるのが特徴です[5]。逆に二次性多血症では、肺や心臓の病気で本当に酸素が足りていたり、腫瘍が異常にEPOを作り出していたりするため、EPO値は高くなる傾向があります[3]。この「EPOが低いか高いか」という一点が、血液内科医が両者を鑑別する際の重要な手がかりになっています。

日常生活で気をつけたいこと(NG行動と工夫)

多血症のタイプによらず、日常生活での注意点には共通する部分があります。以下は一般的な生活上の工夫であり、治療の代わりにはなりません[2][6]。

もし喫煙している場合は、できるだけ早く禁煙外来などを利用して禁煙してください。喫煙は二次性多血症の最大の原因であると同時に、真性多血症の血栓リスクをさらに押し上げます。

もし夏場や入浴後、飲酒後で発汗・脱水が起きやすい場合は、意識してこまめに水分をとってください。脱水は見かけ上のHt値をさらに上げ、血栓リスクの評価を難しくします。

もしいびきが大きい、日中の強い眠気があると指摘された場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査を検討してください。二次性多血症の重要な原因の一つです[3]。

もし長時間の座位(デスクワークや飛行機移動など)が続く場合は、1〜2時間おきに足を動かす、着圧ソックスを使うなど、深部静脈血栓症の予防を意識してください。

なお、こうした生活上の工夫は血栓リスクを下げる助けにはなりますが、真性多血症と診断された場合の瀉血や薬物治療の代わりにはなりません。生活改善だけで自己判断による通院中断をしないようにしてください[1]。食事面では特別な制限が明確に定められているわけではありませんが、鉄分の多い食品の極端な摂り過ぎは赤血球産生を後押しする可能性があるため、バランスの良い食事を心がけるとよいでしょう[2]。

出典:J-STAGE日本内科学会雑誌95巻10号「多血症の診断と治療」/済生会「多血症とは」[4][6]

診断の目安となる数値・基準

国際的にはWHO分類第5版の診断基準が用いられ、日本の診療でもこの基準値が参照されています[5]。

検査項目 基準値(この値を超えると多血症を疑う) 備考
ヘモグロビン(Hb) 男性 16.5g/dL超・女性 16.0g/dL超 2016年WHO改訂で2008年基準(男性18.5・女性16.5g/dL超)から引き下げられた[5]
ヘマトクリット(Ht) 男性 49%超・女性 48%超 Hbと並ぶ主要基準。健診結果ではHtが記載されることが多い[5]
JAK2遺伝子変異 V617F変異またはエクソン12変異が陽性 真性多血症の主要診断基準の一つ。陽性率は約95%[2]
血清エリスロポエチン(EPO)値 基準値より低値 真性多血症ではEPOが抑制される。JAK2陰性例の補助診断に用いる副基準[5]
骨髄生検所見 3系統(赤血球・顆粒球・巨核球)の過形成 2016年WHO改訂で副基準から主要基準に格上げされた[5]

出典:Kim SY et al.「The 2016 WHO diagnostic criteria for polycythemia vera」(2020, PMC7326849)[5]/MSDマニュアル プロフェッショナル版「真性多血症」[2]

WHO診断基準では、上記の主要基準3項目すべて(またはHb/Ht+骨髄所見+副基準)を満たすことで真性多血症と確定します。2016年の改訂により、以前は基準を満たさず「分類不能」とされていたHb値がやや低めの「隠れ真性多血症(masked PV)」も診断できるようになりました[5]。この改訂の影響は小さくありません。2008年基準(男性Hb18.5g/dL超・女性16.5g/dL超)ではHb値が基準未満のため見逃されていた患者が、2016年基準(男性16.5g/dL超・女性16.0g/dL超)とJAK2検査・骨髄所見の組み合わせによって拾い上げられるようになり、見逃し(偽陰性)が大幅に減少したと報告されています[5]。健診でHb値・Ht値が「基準値のすぐ上」程度であっても、自己判断で様子を見ず、一度は血液内科で相談する価値がある理由はここにあります。

真性多血症・二次性多血症・相対的多血症の見分け方

項目 真性多血症 二次性多血症 相対的多血症
赤血球の絶対数 増加[2] 増加[3] 正常(見かけ上のみ増加)[6]
JAK2遺伝子変異 陽性(約95%)[2] 陰性 陰性
血清EPO値 低値〜正常低め[5] 高値(酸素不足やEPO産生腫瘍への反応)[3] 正常
白血球・血小板 同時に増加することが多い[4] 通常は正常 正常
脾腫(脾臓の腫れ) 約3割以上でみられる[2] 通常なし なし
主な対応 瀉血・薬物療法で継続管理[1] 原因疾患・生活習慣の是正 水分補給・原因是正

見分けるカギ:JAK2遺伝子変異の有無と血清EPO値のパターンが最大の分かれ目です。JAK2陽性かつEPO低値なら真性多血症、JAK2陰性でEPO高値なら二次性、JAK2陰性でEPOも正常なら相対的多血症を疑う——というのが臨床上の基本的な考え方です[2][3]。ただし最終判断は血液内科医による総合評価が必要です。

見逃しやすい症状のセルフチェック

多血症は健診の血液検査で偶然見つかることが多い一方、体のサインが先に出ていることもあります。以下のうち複数に心当たりがある場合は、次の健診を待たずに医療機関で血液検査を受けることを検討してください[2][6]。

□顔・首・手のひらが以前より赤みを帯びている □お風呂上がりや温かいシャワーを浴びた後に皮膚のかゆみが強く出る(温水皮膚掻痒症) □頭が重い・締め付けられるような頭痛が続く □立ちくらみやふらつきが増えた □手足の指先がジンジンする、熱っぽい(赤肢症) □お腹の左上(脾臓のあたり)が張る感じがある □普段より疲れやすい、集中力が続かない。

これらの症状は多血症以外の病気でも起こり得るため、症状だけで自己診断することはできません。あくまで「次の受診を先延ばしにしない」ための目安としてご活用ください[2]。逆に、真性多血症であっても健診で偶然発見されるまで無症状のことも珍しくないため、「症状がない=異常なし」とも言い切れません。定期的な健診での数値確認が、症状の有無にかかわらず最も確実な発見方法です[2]。

血栓症リスクと経過・治療:段階別のケア

真性多血症で治療の主目的とされているのは、脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症といった血栓性合併症の予防です[1]。日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」(2023年版、Web版は第3.1版・2024年更新)では、年齢60歳以上・血栓症の既往のいずれかがあれば「高リスク群」、どちらもなければ「低リスク群」に分類するとされています[1]。

低リスク群の治療は、瀉血(静脈から血液を抜き取り赤血球量を減らす処置)と低用量アスピリン(1日81〜100mg程度)が基本です[1][2]。日本のガイドラインでは瀉血の目標値をHt45%未満(男女とも)としており[1]、この値を維持できれば血栓症リスクを大きく下げられるとされています[2]。

高リスク群では瀉血・アスピリンに加えて、赤血球や血小板を減らす「細胞減少療法」を行います。第一選択薬はヒドロキシウレア(商品名ハイドレア)で、効果不十分・不耐容の場合はJAK阻害薬(ルキソリチニブ)やペグインターフェロンが選択肢になります[1][2]。

長期経過では、一部の患者で骨髄の線維化が進む「骨髄線維化への移行(PV後骨髄線維症)」がみられ、頻度はおおむね10〜15%と報告されています。また急性白血病への移行は自然経過でも1.0〜2.5%程度とされます[2]。適切な治療と定期的な血液検査を継続すれば、生命予後は比較的良好で、中央生存期間は14年を超えるとの報告があります[2]。二次性多血症・相対的多血症は、原因疾患(睡眠時無呼吸など)や生活習慣(禁煙・水分補給)を是正することで多くの場合改善します[3][6]。

通院を続ける中で行われる検査は、血算(赤血球数・Hb・Ht・白血球数・血小板数)に加え、症状や経過に応じてJAK2変異の再確認、脾臓の大きさを見る超音波検査、必要に応じた骨髄検査などです。瀉血の間隔や薬の量は、これらの結果を見ながら少しずつ調整されるため、「毎回同じ治療」ではなく状態に合わせて変化していくのが通常の経過です[1]。自己判断で通院間隔を延ばしたり、瀉血や内服を中断したりすると、Ht値が再上昇して血栓リスクが上がるため、体調が良くても指示された受診間隔は守ることが重要です[1]。

受診の目安:今すぐ救急か、外来でよいか

以下は一般的な目安であり、個別の判断は必ず医療機関で受けてください[1][2]。

🔴 すぐに救急受診:片側の手足の急なしびれ・脱力・ろれつが回らない(脳梗塞の疑い)、突然の胸痛・息苦しさ(心筋梗塞・肺塞栓の疑い)、片足の急な腫れと痛み(深部静脈血栓症の疑い)。

🟡 早めに血液内科・内科を受診:健診でHt値が男性49%・女性48%を超えていた、顔が慢性的に赤い、入浴後に皮膚のかゆみが続く、原因不明の頭痛やめまいが続く。

🟢 まず生活習慣の見直しと経過観察:Ht値の軽度上昇のみで、喫煙・脱水・多量飲酒などの明らかな要因がある場合は、禁煙・水分補給を行った上で再検査。

受診科は基本的に「血液内科」です。かかりつけの内科でHt値の異常を指摘された場合は、血液内科への紹介状を依頼するとスムーズです[7]。地域によっては血液内科が近くにない場合もありますが、その際はまず総合内科・内科で相談し、必要に応じて専門施設への紹介を受ける形でも問題ありません。

国立長寿医療研究センターは、多血症について「赤血球の増加による過粘稠が血栓症を誘発し、脳梗塞、心筋梗塞や下肢静脈血栓症などが最初の症状となることもあります」と説明しています(過粘稠=血液が濃く粘り気を帯びること)[7]。つまり、自覚症状がまったくないまま、いきなり脳梗塞などの重い血管イベントとして発覚するケースがあるということです。同センターのリスク分類でも年齢60歳以上または血栓症の既往がある患者は高リスクとされ、より積極的な治療が必要とされています[7]。健診でHt値の異常を指摘された際に「症状がないから大丈夫」と自己判断しないことが、重大な合併症を防ぐ第一歩です。

日本とWHO国際基準のガイドライン比較

項目 日本(日本血液学会 2023年版) WHO分類第5版・国際基準(2016年改訂反映)
診断のベース WHO基準を採用し、国内の治療実態に合わせたCQ(クリニカルクエスチョン)形式で解説[1] Hb/Ht値+骨髄所見+JAK2変異の3主要基準[5]
血栓リスク分類 年齢60歳以上・血栓症既往の2因子で高/低リスクを分類[1] 国際的にも同様の2因子モデルが広く使われている[2]
瀉血の目標Ht値 45%未満(男女共通)[1] 男性45%未満・女性42%未満とする文献もあり、性差を分ける立場もある[2]

※日本のガイドラインはWHO国際基準を土台にしていますが、瀉血の目標Ht値は「男女とも45%未満」とする国内の実務基準と、「男性45%未満・女性42%未満」と性差を明記する海外文献とで、表記の粒度に違いがあります[1][2]。どちらも「Ht値をできるだけ下げて血栓症を防ぐ」という方向性は一致しており、実際の目標値は主治医の判断によります。

この「日本の実務基準と海外文献の粒度の違い」は、単なる表記のブレではありません。日本のガイドラインが男女共通の目安値を示すのは、国内の診療現場での運用しやすさを重視しているためと考えられますが、海外の研究では女性のほうが元々のHb/Ht基準値が低いことを踏まえ、目標値にも性差を反映させる立場があります。どちらが医学的に優れているかについて、今回参照した資料の範囲では明確な優劣を判断できる記載は見当たりませんでした。今後のガイドライン改訂で統一が進む可能性がある領域として、今後も情報を更新していきます[1][2]。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

ヒドロキシウレアやJAK阻害薬などの分子標的薬を継続する場合、月々の医療費が高額になることがあります。その際は高額療養費制度で自己負担額に上限を設けられます[1]。

瀉血や血液検査そのものは高額療養費制度の対象になるほどの費用にならないことが多い一方、分子標的薬による細胞減少療法が長期にわたる場合は、月々の自己負担が上限額に達するケースがあります。会社員・公務員の方は加入している健康保険組合や協会けんぽへ、自営業や年金受給者の方はお住まいの市区町村の国民健康保険窓口へ、事前に「限度額適用認定証」の申請について確認しておくと、窓口での支払い時から自己負担を上限内に抑えられます[1]。難病医療費助成の対象になるかどうかは疾患や重症度によって異なるため、主治医・医療ソーシャルワーカーに相談することもおすすめします。

よくある質問(FAQ)

多血症は献血で治りますか?
真性多血症の治療で行う「瀉血」は献血と似た処置ですが、目的も頻度も献血とは異なり、Ht値を見ながら医師の管理下で定期的に行うものです。自己判断で献血を治療代わりにするのは推奨されません。まずは血液内科を受診してください[1]。
健診でヘマトクリットが高いだけでも精密検査が必要ですか?
男性49%・女性48%を明確に超えている場合や、繰り返しの検査でも高値が続く場合は、血液内科での精密検査(JAK2遺伝子検査・EPO測定など)が勧められます[5]。軽度の上昇のみで脱水や喫煙など明らかな要因がある場合は、まず生活習慣の見直しと再検査から始めることもあります。
真性多血症は遺伝しますか?
真性多血症のJAK2遺伝子変異は、多くの場合生まれつきではなく後天的に骨髄の細胞に生じる体細胞変異です。家族内での発症はまれとされていますが、詳しい遺伝的背景については血液内科で相談してください[4]。
喫煙をやめれば二次性多血症は治りますか?
喫煙は二次性多血症の最も頻度の高い原因の一つで、一酸化炭素がヘモグロビンと結合し酸素不足状態を作り出すことで赤血球が増えます。禁煙により数週間から数ヶ月かけて数値が改善することが期待できますが、他の原因(睡眠時無呼吸など)が隠れていないか確認するため、一度は医療機関での評価をおすすめします[6]。
多血症の人は水分補給に注意が必要ですか?
はい。脱水は血液をさらに濃縮させ、Ht値を見かけ上さらに引き上げてしまいます。特に夏場や入浴後、飲酒後はこまめな水分補給を心がけてください。ただし心不全など水分制限が必要な持病がある場合は主治医の指示に従ってください[6]。
真性多血症と診断されたら、どのくらいの頻度で通院しますか?
病状や治療内容によって異なりますが、Ht値や血球数のモニタリングのため、多くは数週間〜数ヶ月ごとの定期受診と血液検査が必要です。瀉血の頻度も血液内科医がHt値を見ながら調整します[1]。
多血症があると手術やワクチン接種は問題ありませんか?
血栓リスクが高い状態での手術は、血栓症・出血双方のリスクが上がる可能性があるため、手術前にはHt値のコントロール状況を主治医・執刀医で共有することが重要です。ワクチン接種自体を一律に避ける必要はありませんが、個別の体調や治療薬との兼ね合いは主治医に確認してください[2]。
相対的多血症と真性多血症はどうやって見分けますか?
相対的多血症は赤血球の絶対数は増えておらず血漿量の減少による見かけ上の濃縮であるのに対し、真性多血症は赤血球そのものが実際に増えています。血液内科では血漿量・循環赤血球量の評価やJAK2遺伝子検査、EPO値測定を組み合わせて鑑別します[6]。
多血症で妊娠・出産は可能ですか?
真性多血症を含むMPN(骨髄増殖性腫瘍)でも、血栓リスク管理を行いながら妊娠・出産に至る例は報告されています。ただし妊娠中は血栓症リスクがさらに高まるため、血液内科と産科の連携した管理が必須です。妊娠を希望する場合は事前に血液内科へ相談してください[2]。
飛行機での長時間移動は避けたほうがよいですか?
多血症、特に真性多血症では血栓リスクがもともと高いため、長時間のフライトはさらに注意が必要です。禁止されるわけではありませんが、機内でこまめに足を動かす、着圧ソックスを使う、水分をしっかりとるといった対策に加え、Ht値のコントロール状況によっては主治医に事前相談することをおすすめします[1]。
お酒はどのくらいなら飲んでも大丈夫ですか?
アルコールには利尿作用があり、脱水を通じて見かけ上のHt値を上げる可能性があります。量の目安は個人の状態によって異なるため一律には言えませんが、多量飲酒を避け、飲酒時こそ水分をしっかり補うことが大切です。治療薬との飲み合わせについても主治医・薬剤師に必ず確認してください[6]。
低リスク群と高リスク群で、なぜ治療内容がそんなに変わるのですか?
日本血液学会のガイドラインでは、年齢60歳以上・血栓症の既往のいずれかがあれば高リスク群に分類されます[1]。低リスク群は瀉血と低用量アスピリンだけで血栓予防効果が十分に見込めるとされる一方、高リスク群はそれだけでは血栓リスクを下げきれないと考えられているため、ヒドロキシウレアなどの細胞減少療法を上乗せします[1]。「年齢や既往歴だけで薬が増えるのは納得できない」と感じる方もいますが、これは臨床試験のデータに基づいて血栓症の発生率を最小化するための科学的な線引きです。

多血症に関する記事一覧

治療薬の細かな使い分けや、個々の合併症への対応、稀少な原因疾患ごとの詳しい管理方針など、今回参照した資料だけでは判断しきれない点については、必ず血液内科の専門医にご相談ください。本ページは今後も新しいガイドライン改訂に合わせて更新していきます。

参考文献

  1. 日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)」 jshem.or.jp/gui-hemali
  2. MSDマニュアル プロフェッショナル版「真性多血症」 msdmanuals.com/真性多血症
  3. MSDマニュアル プロフェッショナル版「二次性赤血球増多症」 msdmanuals.com/二次性赤血球増多症
  4. 日本内科学会雑誌95巻10号「VI. 多血症の診断と治療」(J-STAGE) jstage.jst.go.jp/naika/95/10
  5. Kim SY, et al. “The 2016 WHO diagnostic criteria for polycythemia vera” — PMC(米国国立生物工学情報センター) pmc.ncbi.nlm.nih.gov/PMC7326849
  6. 済生会「多血症(たけつしょう)とは」 saiseikai.or.jp/medical/disease/polycythemia
  7. 国立長寿医療研究センター「多血症について」 ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/101