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JHO 病気ペディア

白内障

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

白内障は目の中の水晶体というレンズが白く濁ることで見え方が悪くなる病気で、日本眼科学会は主な原因を加齢としています[1]。日本眼科学会によると60歳代で約7割、70歳代で約9割、80歳代ではほとんどの人に何らかの水晶体の濁りが見られるとされ、誰もがなりうる目の変化です[1]。日本眼科学会の説明によれば、現時点で白内障そのものを治す目薬や飲み薬は存在せず、視力を回復させる方法は濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを入れる手術のみです[1]。

主な原因 加齢が最多。糖尿病・アトピー性皮膚炎・外傷・ステロイド薬・先天性(風疹感染など)も原因になる[1][6]
主な症状 かすみ、まぶしさ(羞明)、視力低下、ものが二重に見える(複視)
治療の中心 点眼薬・内服薬は進行を遅らせる目的のみで、根治は手術(超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入)だけ[1]
受診の目安 かすみ・まぶしさで日常生活(運転・読書・段差の見えにくさ)に支障が出てきたら眼科を受診

白内障とは?水晶体が濁って光を通しにくくなる仕組み

目の中には、カメラのレンズにあたる「水晶体」という透明な組織があります。日本眼科学会は白内障を「目の中にある水晶体というレンズが混濁することで視機能が低下する病気」と説明しています[1]。健康な水晶体は透明で、外から入った光をそのまま通し、網膜にピントの合った像を結びます。e-ヘルスネット(厚生労働省)によれば、水晶体を構成するタンパク質が変性すると、水晶体の一部または全体が黄白色や白色に濁り、光が乱反射するようになります[6]。これがまぶしさやかすみの正体です。

濁りが軽いうちは自覚症状がほとんどないこともありますが、進行すると水晶体全体が白く濁り、瞳孔の奥が白っぽく見えることもあります。水晶体は加齢とともに少しずつ硬く、黄色みを帯びていくのが自然な変化であり、白内障はその延長線上にある目の老化現象のひとつだと理解しておくと、必要以上に不安にならずに済みます。ただし「年のせいだから仕方ない」と放置してよいわけではなく、進行すれば日常生活の質を大きく下げるため、経過を定期的に確認することが大切です。

水晶体の濁り方にはタイプがある

水晶体の濁りは、濁る場所によっていくつかのタイプに分けて説明されることがあります。水晶体の外側(皮質)から濁りが広がる「皮質白内障」、中心部(核)が硬く黄色〜茶褐色に濁る「核白内障」、水晶体の後ろ側の膜(後嚢)に接する部分から濁る「後嚢下白内障」などです。濁る場所によって自覚しやすい症状の出方が異なり、たとえば核白内障では近視が急に進んだように感じることがあり、後嚢下白内障では比較的早い段階からまぶしさや近くの字の見えにくさを感じやすいといわれています。どのタイプに該当するかは、細隙灯顕微鏡検査で眼科医が水晶体を直接観察することで判断されます。

「見え方の変化」は白内障以外の病気でも起こる

かすみや視力低下は白内障以外にも、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症といった目の病気でも起こりえます。自己判断で「白内障だろう」と決めつけず、見え方の変化を感じたら眼科で検査を受け、原因を正確に特定してもらうことが重要です。特に急激な視野の欠け、急な視力低下、目の痛みを伴う場合は、白内障以外の緊急性の高い病気が隠れている可能性もあるため、早めの受診が勧められます。

白内障の原因:加齢性が大半、糖尿病性・先天性は別に考える

白内障の原因は大きく分けて「加齢性」と「加齢以外の原因によるもの」に分かれます。両者は発症の仕組みも進み方も異なるため、混同せずに区別して理解する必要があります。

「原因が違えば、経過観察の仕方や受診の間隔も変わってくる」という点は、白内障を理解するうえで見落とされがちなポイントです。加齢性であれば数年単位でゆっくり進行することを前提に定期受診の間隔を決められますが、糖尿病性や外傷性など進行が早い可能性があるタイプでは、より短い間隔での経過観察が必要になることがあります。以下、それぞれのタイプについて詳しく見ていきます。

① 加齢性白内障(もっとも多いタイプ)

日本眼科学会によれば、白内障の主な原因は加齢であり、60歳代で約7割、70歳代で約9割、80歳代ではほとんどの人が罹患しているとされています[1]。加齢に伴い水晶体を構成するタンパク質が徐々に変性することで濁りが生じ、数年から十数年かけてゆっくり進行するのが特徴です。日本眼科学会はこのほかの危険因子として、喫煙、紫外線曝露、放射線曝露、強度近視なども挙げています[1]。厚生労働省のe-ヘルスネットも、喫煙・紫外線・活性酸素・アルコールを白内障発症のリスクを高める危険因子として挙げ、特に喫煙は米国公衆衛生総監報告でも白内障を引き起こすと判定されていると紹介しています[6]。

② 糖尿病性白内障(若年でも進行が早い)

糖尿病は加齢性白内障とは別に、水晶体の代謝異常を通じて白内障を進行させる原因になります。日本眼科学会は糖尿病を白内障の危険因子のひとつとして明記しており[1]、e-ヘルスネットも糖尿病などの合併症が原因となる場合があると説明しています[6]。糖尿病がある場合は血糖コントロールが不十分だと加齢性のケースよりも若い年齢で、かつ短期間で進行することがあるため、糖尿病がある方は白内障の症状の有無にかかわらず定期的な眼科受診が勧められます。糖尿病を白内障の危険因子として挙げる日本眼科学会の解説を踏まえ、糖尿病そのものについては当サイトの糖尿病特集で詳しく解説しています[1]。

③ 先天性白内障(生まれつき)

日本眼科学会は「生まれつき白内障がある先天性白内障もあります」と説明しています[1]。e-ヘルスネットは、母親の体内での風疹感染など先天的な要因が原因になる場合があると紹介しています[6]。先天性白内障は乳幼児期の視力発達(視覚の感受性期)に影響するため、加齢性のように様子を見る対応はできず、専門の小児眼科での早期の評価と、必要に応じた早期手術の検討が行われます。乳幼児健診で目の異常を指摘された場合や、瞳の中央が白っぽく見える、物を目で追わない、片目を隠すと嫌がるといった様子に気づいた場合は、早めに小児眼科・眼科を受診することが勧められます。保護者だけで様子を見続けず、専門的な評価につなげることが将来の視力の発達にとって重要です。

④ そのほかの原因(アトピー性皮膚炎・外傷・ステロイド薬など)

日本眼科学会は上記のほか、アトピー性皮膚炎、外傷、ステロイド、向精神薬なども白内障の原因になりうるとしています[1]。アトピー性皮膚炎に伴う白内障は、顔をかく・叩くといった物理的な刺激やアトピー自体の炎症が関与すると考えられており、比較的若い年代で発症することがあります。外傷性白内障は目を強く打つ、鋭利なものが刺さるなどの直接的な衝撃によって水晶体が濁るケースです。ステロイド薬(内服・点眼とも)の長期使用も水晶体の混濁を招くことが知られており、他の病気の治療でステロイドを長期に使う方は、眼科で白内障の有無を定期的に確認することが望ましいとされています。

白内障の主な原因タイプの違い
タイプ 主な発症年代 進み方 特徴
加齢性白内障 60歳代以降が中心 数年〜十数年かけて緩やか 白内障全体の大半を占める最多タイプ[1]
糖尿病性白内障 糖尿病を持つ人は若年でも 血糖コントロール不良だと加齢性より早い 糖尿病の合併症として発症[1]
先天性白内障 出生時・乳幼児期 視覚の発達期に関わるため早期対応が必要 母体の風疹感染などが一因[6]
その他(アトピー・外傷・ステロイド) 年齢を問わない 原因により様々 基礎疾患・外的要因が引き金[1]

出典:日本眼科学会「白内障」病気解説[1]/e-ヘルスネット(厚生労働省)「白内障」[6]

白内障の症状:かすみ・まぶしさ・視力低下・二重視の進み方

白内障の症状は、水晶体の濁りが軽いうちはほとんど自覚できないことが多く、進行するにつれて次のような症状が段階的に強くなっていきます。日本眼科学会は「進行すると視力低下、複視(だぶって見える)、羞明(まぶしさが強くなる)などが生じます」としています[1]。

  • 初期:かすみを感じることがある程度で、自覚症状がほとんどない場合も多い。健診や他の目の病気の検査で偶然見つかることもある。
  • 中期:物がかすんで見える、明るい場所や車のライトがまぶしく感じる(羞明)、片目でものが二重・三重に見える(単眼複視)といった症状が出てくる。眼鏡の度数が合わなくなったように感じることもある。
  • 進行期:視力低下が明らかになり、新聞や薬の説明書の文字が読みにくい、人の顔の判別がしづらい、段差や車の接近に気づきにくいなど、日常生活・車の運転に支障が出てくる。
  • 成熟期:水晶体全体が白く濁り、瞳の奥が白っぽく見える状態になる。日本眼科学会が示すとおり、ここまで進行すると手術以外に視力を戻す方法はない[1]。

白内障は基本的に片目ずつ、あるいは左右で進行速度が異なることが多いため、「片方の目だけかすむ」「左右で見え方の差が大きい」と感じたら、その時点で眼科受診を検討してください。

症状は「気づきにくく、じわじわ進む」のが特徴

白内障の症状の多くは急激ではなく、数ヶ月から数年かけてゆっくり進むため、本人が変化に気づきにくいという特徴があります。特に片目だけ進行している場合、もう片方の目が視力を補ってしまい、両目で見ている限りは違和感に気づかないことも珍しくありません。片目ずつ交互に見え方を確認する、あるいは家族や周囲の人が「新聞を読む距離が近くなった」「テレビの音量ではなく画面に近づくようになった」といった変化に気づいてあげることが、早期発見のきっかけになることもあります。

まぶしさ(羞明)が強く出やすい場面

白内障によるまぶしさは、特に次のような場面で強く自覚されやすいとされています:夜間の対向車のヘッドライト、逆光の屋外、蛍光灯やLED照明の直視、雪道や水面の反射光などです。まぶしさのために夜間の運転を避けるようになった、屋外での作業がつらくなったという声もよく聞かれます。サングラスやつばの広い帽子で光を遮ることは一時的な対処にはなりますが、根本的な解決にはならず、症状が生活に影響するレベルまで進んでいる場合は眼科での相談が必要です。

検査・診断の流れ

白内障の診断は、眼科で行う一般的な検査の組み合わせによって行われます。代表的な検査には次のようなものがあります。

  • 視力検査:矯正視力(眼鏡・コンタクトレンズで補正した状態の視力)を測定し、日常生活にどの程度影響しているかを確認します。
  • 細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査):専用の顕微鏡で水晶体を直接観察し、濁りの位置・程度・タイプ(皮質白内障、核白内障、後嚢下白内障など)を確認します。
  • 眼底検査:白内障以外に緑内障や糖尿病網膜症など、視力低下の原因になる他の目の病気がないかを確認します。瞳孔を広げる目薬(散瞳薬)を使うことがあり、検査後数時間はまぶしさやピント調節のしにくさが残ります。
  • 眼圧検査:緑内障の有無や手術の適否を確認するために測定します。
  • 眼軸長・角膜形状の測定(手術を検討する場合):手術で挿入する眼内レンズの度数を決めるために、眼球の長さ(眼軸長)や角膜のカーブを精密に測定します。日本眼科学会の運用指針によれば、多焦点眼内レンズを検討する場合は、角膜形状解析検査や対比感度検査が追加されることもあります[4]。

これらの検査によって、白内障の進行度だけでなく、緑内障や網膜の病気など見え方の低下に関わる他の要因がないかを総合的に確認したうえで、治療方針(経過観察か手術か)が検討されます。

検査でわかること・術前検査が特に重要な理由

白内障の検査は「白内障があるかどうか」を確認するだけでなく、「今の見えにくさの原因が本当に白内障なのか」「手術でどこまで改善が見込めるか」「手術に適したタイミングかどうか」を総合的に判断するために行われます。特に手術を検討する段階での術前検査は、挿入する眼内レンズの度数を決める重要な工程であり、眼軸長や角膜のカーブの測定に誤差があると、術後に想定と異なる見え方(狙った度数からのズレ)になることがあります。そのため多くの施設では複数の測定機器を使って数値を照合し、精度を高める工夫がされています。

検査にかかる時間と受診時の持ち物

初診時の一般的な検査には視力検査・眼圧検査・細隙灯検査・眼底検査が含まれ、散瞳薬を使う場合は瞳孔が開いた状態が数時間続くため、検査当日の車の運転は避け、公共交通機関や付き添いでの受診が勧められます。お薬手帳や、糖尿病・高血圧などの持病がある場合はその情報、普段使用している眼鏡やコンタクトレンズを持参すると、より正確な診断・説明につながります。

治療:白内障を治す目薬は存在せず、根治は手術のみ

白内障の治療を考えるうえで、最初に理解しておくべき最も重要な点があります。日本眼科学会は「濁った水晶体をもとに戻すことはできません。そのため手術治療が主な治療となります」と明確に述べています[1]。つまり、いったん濁った水晶体を透明な状態に戻す点眼薬や飲み薬は、現時点の医学では存在しません。

点眼薬・内服薬でできること・できないこと

白内障用として処方される点眼薬や内服薬は、あくまで水晶体の濁りが「進行するスピードを遅らせる」ことを目的としたものであり、根治的な治療ではありません[1]。初期の白内障で自覚症状が軽く、日常生活への影響が少ない段階では、経過観察をしながらこうした薬を併用することがありますが、「これを使えば手術をしなくてよくなる」「濁りが消える」という薬ではない点は、正しく理解しておく必要があります。「目薬で治る」という宣伝文句を目にした場合は、根拠を確認するようにしてください。白内障を「治す」とうたう目薬の実態と限界については、白内障を「治す」目薬は存在するのか?国内承認薬の限界と世界最新研究の全貌で詳しく解説しています。

手術療法:超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入

視力低下が日常生活に支障をきたす程度まで進行した場合、根治的な治療法は手術のみです。現在日本で標準的に行われている術式は、日本眼科学会の解説によると「2mm前後の切開創から超音波を発生する吸引器具を眼の中に挿入し、眼の中に水を灌流しながら混濁した水晶体の中身を吸引」する超音波乳化吸引術(フェイコエマルシフィケーション、通称フェイコ)です[2]。濁った水晶体の中身を取り除いたあと、その代わりとなる人工の眼内レンズ(IOL:Intraocular Lens)を挿入します。日本眼科学会は「一般的に手術の効果は良好」としています[1]。

この手術は局所麻酔(点眼麻酔・局所注射麻酔)で行われることが多く、多くの施設で日帰り手術として実施されていますが、施設や患者さんの状態によっては入院を伴う場合もあります。手術方法や麻酔方法の詳細は施設ごとに異なるため、実際の手術を受ける眼科で個別に説明を受けてください。手術の流れをさらに詳しく知りたい方は、白内障手術のすべて:費用・レンズ選び・保険適用から運転免許更新までもご参照ください。

「フェイコ」という言葉の意味

「フェイコ」は英語のPhacoemulsification(フェイコエマルシフィケーション)の略で、超音波の力で水晶体を乳化(細かく砕いて乳状にする)しながら吸引する手術手技を指します。日本眼科学会の解説では、かつては水晶体を丸ごと大きく切開して取り出す手術(嚢外摘出術)が主流でしたが、フェイコの普及により切開創が2mm前後まで小さくなり、縫合が不要になる、回復が早まるといった利点が広がったとされています[2]。現在、日本の白内障手術の大部分はこのフェイコと眼内レンズ挿入を組み合わせた方法で行われています。

「手術は怖い」というイメージへの向き合い方

白内障手術は日本の眼科手術の中でも特に多く行われており、技術・機器ともに標準化が進んでいる手術のひとつです。とはいえ「目にメスを入れる」ことへの不安を感じるのは自然なことです。担当医から、なぜ手術が必要なのか、どのような手順で行われるのか、リスクは何か、手術をしない場合はどうなるのかを、事前にしっかり説明してもらい、疑問点は遠慮なく質問することが、不安を減らす第一歩になります。セカンドオピニオンを希望する場合は、その旨を担当医に伝えれば紹介状を用意してもらえるのが一般的です。

片目ずつ手術する理由

両目とも白内障がある場合でも、一般的にはまず片目を手術し、経過を確認したうえでもう片方の目を手術するという流れがとられることが多くあります(同日に両目を手術する施設もあります)。片目ずつ行うことで、術後の見え方の変化や合併症の有無を確認しながら進められるという考え方に基づくものです。手術の間隔やスケジュールは、目の状態や施設の方針によって異なるため、担当医と相談して決めてください。

眼内レンズ(IOL)の種類:単焦点と多焦点、保険適用の違い

白内障手術で挿入する眼内レンズには、大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」があります。両者はピントが合う範囲や費用の仕組みが異なるため、区別して理解する必要があります。

単焦点眼内レンズ

単焦点眼内レンズは、遠く・中間・近くのいずれか1つの距離にピントが合うように設計されたレンズです。もっとも標準的に使われているタイプで、通常の保険診療(3割・2割・1割などの自己負担)で手術を受けることができます。遠くにピントを合わせた場合は近くを見るとき、近くにピントを合わせた場合は遠くを見るときに、老眼鏡や近視用眼鏡など別途眼鏡での矯正が必要になるのが一般的です。

多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズは、遠くと近く(または遠く・中間・近くの複数距離)の両方にピントが合うように設計された眼内レンズです[3]。うまく適応すれば眼鏡に頼る場面を減らせる可能性がありますが、光の性質上、単焦点レンズに比べて夜間の光のにじみ(グレア・ハロー)を感じやすい、コントラスト感度がやや低下する場合があるなど、単焦点にはない特有の見え方の特徴があります。そのため、すべての人に向いているわけではなく、眼の状態(角膜乱視の程度、網膜や視神経の状態など)によって適応が判断されます。

日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)は多焦点眼内レンズの情報提供サイトを設け、レンズの仕組みや適応・非適応、選定療養の費用について専門的な解説を行っています[3]。多焦点眼内レンズには、2つの距離にピントを合わせる2焦点タイプ、3つの距離に対応する3焦点タイプ、連続的に焦点範囲を広げる焦点深度拡張型(EDOF)タイプなど複数の設計があり、機種によって得意な距離や見え方の特性が異なります。どの機種が自分の生活スタイルに合うかは、担当医との十分な相談のもとで検討する必要があります。レンズ選びの詳細は白内障手術と眼内レンズのすべて:最新治療法からあなたに最適なレンズの選び方までで解説しています。

保険適用の違い:多焦点眼内レンズは「選定療養」

厚生労働省保険局医療課長通知(保医発0327第5号、令和2年3月27日改正)は、白内障に罹患している患者に対する水晶体再建に使用する、眼鏡装用率の軽減効果を有する多焦点眼内レンズの支給について「患者の要望に従い、患者の自己の選択に係るものとして」選定療養の対象とすると定めています[5]。選定療養とは、手術自体(手術・検査・診察)は通常どおり保険が適用され、多焦点眼内レンズを選んだことで発生する追加費用(レンズの差額分など)のみを患者が自己負担する仕組みです。厚生労働省の通知によれば、この制度は令和2年(2020年)4月1日から適用されています[5]。日本眼科学会も「多焦点眼内レンズに係る選定療養の運用について(第2版)」(2022年5月11日)で、実施医療機関が満たすべき施設要件や、患者への説明・同意取得の手続きを定めています[4]。

単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの違い
項目 単焦点眼内レンズ 多焦点眼内レンズ
ピントが合う距離 基本的に1点(遠方 or 近方など) 遠方と近方(機種により中間も)の複数[3]
保険の扱い 通常の保険診療 手術・検査は保険、レンズ差額は選定療養として自己負担[5]
術後の眼鏡 他の距離を見るときは眼鏡が必要になりやすい 眼鏡に頼る場面を減らせる可能性がある[3]
夜間の見え方 比較的少ない 光のにじみ(グレア・ハロー)を感じやすい場合がある
適応の判断 幅広い症例に対応 角膜乱視・網膜の状態などにより適応外となる場合がある

出典:厚生労働省保険局医療課長通知 保医発0327第5号(令和2年3月27日)[5]/日本眼科学会「多焦点眼内レンズに係る選定療養の運用について(第2版)」(2022年5月11日)[4]

見分けるカギ:「保険診療だけで完結するか、追加のレンズ代を自費で払うか」が単焦点と多焦点を分ける最大の違いです。厚生労働省の通知が求めるとおり、多焦点を検討する場合は、必ず選定療養の説明と同意書の内容を確認し、費用の内訳(レンズ差額・検査費・説明手数料)を事前に把握してください[5]。

乱視矯正用レンズ(トーリックレンズ)という選択肢も

角膜に強い乱視がある方には、単焦点・多焦点いずれのタイプにも、乱視を同時に矯正する「トーリック眼内レンズ」という選択肢があります。乱視の程度によっては、通常の眼内レンズのままだと術後も乱視用の眼鏡が必要になる場合がありますが、トーリックレンズを使うことで裸眼視力がより改善する可能性があります。どのレンズが適しているかは角膜形状の測定結果によって判断されるため、術前検査の結果をもとに担当医と相談してください。

多焦点眼内レンズが向かないケース

多焦点眼内レンズは、緑内障や網膜の病気(加齢黄斑変性など)がある場合、瞳孔の大きさに大きな左右差がある場合、非常に強い乱視がある場合などでは、効果が十分に得られなかったり、見え方の質が低下したりする可能性があるため、適応外と判断されることがあります。「多焦点にすれば眼鏡が全くいらなくなる」というわけではなく、術後も軽い眼鏡(老眼鏡など)を併用する方もいます。過度な期待をせず、担当医から具体的な見え方のシミュレーションや制約について説明を受けたうえで選択することが大切です。

手術の流れ・術後ケア・起こりうる合併症

白内障手術は日本の眼科で最も多く行われている手術のひとつです。標準的な流れは次のとおりです(施設により細部は異なります)。

  • 術前:視力検査、眼軸長・角膜形状の測定、眼内レンズの度数・種類の選定、既往症や服用中の薬(特に血液をさらさらにする薬)の確認を行う。
  • 手術当日:日本眼科学会の解説にあるとおり、点眼麻酔などで痛みを抑えたうえで、2mm前後の小さな切開創から超音波で水晶体の中身を砕いて吸引し、代わりに眼内レンズを挿入する[2]。多くの場合、片目あたり10〜20分程度で終わる。
  • 術直後:眼帯や保護用のシールドで目を保護し、当日〜翌日は激しい運動や目をこすることを避ける。日本眼科学会は術後に「青みがかって見える感覚を自覚される場合がある」としており、これは多くの場合、時間の経過とともに軽減するとされています[2]。
  • 術後の通院・点眼:感染予防・炎症を抑える点眼薬を医師の指示どおりに使用し、指定された間隔で通院して経過を確認する。
  • 視力の安定:見え方は数日〜数週間かけて落ち着いていくのが一般的とされ、運転免許の更新など視力基準が関わる予定がある場合は、余裕をもったスケジュールで手術を検討することが望ましいとされています。

起こりうる合併症

白内障手術は安全性の高い手術として広く行われていますが、他の手術と同様にリスクがゼロではありません。代表的な合併症には、眼内炎(感染)、後発白内障(水晶体を包んでいた袋=水晶体嚢の後ろ側が術後に濁る現象で、レーザー治療で対応可能なことが多い)、眼圧上昇、網膜剥離などがあります。頻度や具体的な対応は個々の目の状態や手術方法によって異なるため、術前の説明の際に担当医から詳しく確認してください。日本眼科学会の解説に加え、当サイトの白内障手術後の完全回復ガイド:術後ケア、生活上の注意点、合併症、眼内レンズ選択のすべてもあわせてご確認ください[1]。

術後、すぐに眼科へ連絡すべきサイン

術後の回復過程で、次のような症状が出た場合は経過観察で様子を見るのではなく、速やかに手術を受けた眼科へ連絡することが勧められています:急激な視力低下、強い目の痛み、目の充血が急に悪化する、見える範囲が欠ける(視野欠損)、飛蚊症の急な増加や光が飛んで見える(光視症)などです。これらは眼内炎や網膜剥離など、早期対応が結果を大きく左右する合併症のサインである可能性があります。「様子を見よう」と自己判断せず、指示された緊急連絡先にすぐ連絡してください。

後発白内障とレーザー治療(YAGレーザー後嚢切開術)

白内障手術後、数ヶ月〜数年経ってから、手術で挿入した眼内レンズを支えている水晶体嚢の後ろ側の膜が濁り、再びかすみを感じることがあります。これは「後発白内障」と呼ばれる現象で、手術した水晶体自体が再び濁ったわけではありません。多くの場合、外来でレーザー(YAGレーザー)を使って濁った膜に小さな穴を開ける処置(後嚢切開術)で改善が見込め、この処置は痛みも少なく、日帰りで数分程度で終わることが一般的とされています。見え方が再び悪くなったと感じたら、自己判断せず眼科を受診してください。

白内障を悪化させないためにできること:危険因子と生活習慣

白内障の発症・進行を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、進行に関わるとされる危険因子への対策は、目の健康全般にとっても有益と考えられています。厚生労働省のe-ヘルスネットは、白内障発症のリスクを高める危険因子として、喫煙、紫外線、活性酸素、アルコールを挙げ、特に喫煙は米国公衆衛生総監報告でも白内障を引き起こすと判定されていると紹介しています[6]。

喫煙対策

e-ヘルスネット(厚生労働省)によれば、喫煙は白内障の危険因子として複数の文献で指摘されており、禁煙は白内障だけでなく、加齢黄斑変性など他の目の病気や全身の健康にとってもメリットがあるとされています[6]。禁煙を検討している場合は、内科・禁煙外来などで相談することもひとつの方法です。

紫外線対策

紫外線曝露は日本眼科学会・e-ヘルスネットの双方が白内障の危険因子として挙げている要素です[1][6]。屋外で過ごす時間が長い方は、UVカット機能のあるサングラスやつばの広い帽子で目を紫外線から守ることが、日常でできる対策のひとつとして考えられています。農作業や屋外スポーツ、レジャーなどで長時間強い日差しを浴びる機会が多い方は、特に意識してこうした対策を取り入れることが勧められます。

糖尿病・生活習慣病の管理

糖尿病は加齢性とは別に白内障を進行させる要因になるため[1]、糖尿病がある方は血糖コントロールを良好に保つことが、白内障の進行を遅らせるうえでも重要と考えられます。糖尿病の食事療法・薬物療法については、かかりつけの内科・糖尿病内科と相談しながら管理を続けてください。日本眼科学会が挙げる危険因子を踏まえ、糖尿病そのものの詳しい解説は、当サイトの糖尿病特集もあわせてご覧ください[1]。

定期的な眼科受診が最大の対策

危険因子への対策と並んで重要なのが、症状がなくても定期的に眼科で目の状態を確認することです。白内障は自覚症状が出るころにはある程度進行していることも多く、定期受診によって早期に濁りの進行度を把握しておくことで、日常生活に支障が出るタイミングで適切に手術を検討できるようになります。特に50歳を過ぎたら、症状の有無にかかわらず年に一度程度の眼科健診を受けることが勧められることがあります。

サプリメント・健康食品との付き合い方

ルテインやビタミンなどを含むサプリメントが「白内障予防に良い」として販売されていることがありますが、日本眼科学会の解説では白内障の治療は手術が中心とされており[1]、特定のサプリメントが白内障の発症・進行を防ぐと明記した記載は今回参照した資料には見当たりませんでした。サプリメントを試すこと自体を否定するものではありませんが、「サプリメントを飲んでいるから手術をしなくても大丈夫」という考え方は誤りであり、症状が進行している場合は自己判断で先延ばしにせず眼科を受診してください。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

上記のとおり、白内障手術(単焦点眼内レンズ)は通常の保険診療の対象です。厚生労働省の通知によれば、多焦点眼内レンズを選んだ場合は、手術・検査部分は保険が適用され、レンズの差額費用・検査費用・患者説明手数料に相当する部分のみが選定療養として自己負担となります[5]。金額は医療機関ごとに院内掲示されている基準に従うため、個別の金額は受診予定の眼科に直接確認してください。制度の詳細は白内障手術の費用はいくら?保険適用・選定療養・高額療養費制度まで専門家が徹底解説で解説しています。

運転免許・生活復帰:いつから運転してよいか

白内障や他の目の病気があっても、警視庁の基準によれば、普通自動車免許の更新に必要な視力基準(両眼で0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上)を満たしていれば、免許の更新自体は可能です[7]。警視庁の基準では、片方の目の視力が0.3に達しない場合でも、もう片方の視力が0.7以上あり、視野が150度以上あれば基準を満たすとされています[7](大型免許・第二種免許は基準が異なります)。

白内障手術を受けた場合、視力が安定するまでには個人差がありますが数日〜数週間程度かかることが一般的とされています。免許更新の予定がある方は、更新期限の直前に手術を組むのではなく、余裕をもったスケジュールで眼科に相談することをお勧めします。手術後いつから運転を再開してよいかは、視力の回復具合や術後の見え方(まぶしさ、ピントの安定度)によって個人差があるため、担当医の診察で視力を確認したうえで判断してもらってください。

運転以外の日常生活(読書、家事、階段の昇り降りなど)についても、術後しばらくは目をこすらない、水泳やサウナなど目に負担がかかる行動を控えるなど、担当医の指示に従うことが回復を早めるポイントです。

術後、生活のどの場面から再開できるか(一般的な目安)

術後の生活再開の具体的なペースは施設・個人差が大きいため、必ず担当医の指示を優先してください。一般的な傾向として案内されることが多いのは、洗顔・洗髪は数日程度目に水が入らないよう注意する、化粧(特に目の周り)は術後しばらく控える、激しい運動やコンタクトスポーツは数週間程度控える、旅行や遠出は術後の診察で問題がないと確認できてから、といった内容です。仕事への復帰時期もデスクワーク中心か体を動かす仕事かで大きく異なるため、職種や生活スタイルを担当医に伝えたうえで具体的な目安を相談してください。

見えにくさが残っている間の生活の工夫

手術前や、片目だけ手術が終わった段階など、見えにくさが残っている期間は、家の中の段差に目立つ色のテープを貼る、廊下や階段の照明を明るくする、床に物を置かない、よく使う物の置き場所を固定するといった工夫が、転倒などの事故予防に役立つとされています。新聞や書類を読む際は照明を手元に近づける、コントラストのはっきりした太字の文房具を使うなども、日常のストレスを減らす一助になります。

受診・手術のタイミング:いつ眼科に行くべきか

白内障は多くの場合ゆっくり進行するため、「絶対に今すぐ手術しなければならない」という明確な一線があるわけではありません。ただし、次のような状態になったら、眼科受診・手術のタイミングを具体的に相談することが勧められます。

  • かすみやまぶしさで、車の運転(特に夜間・対向車のライト)に不安を感じるようになった
  • 新聞や薬の説明書の文字、スマートフォンの画面が見えづらく、生活の不便が増えてきた
  • 片方の目だけ極端に見えにくい、左右で見え方の差が大きいと感じる
  • 眼鏡を新調しても以前ほどはっきり見えるようにならない
  • 健診や他の目の病気の検査で白内障の進行を指摘された

手術のタイミングに「早すぎる」「遅すぎる」という絶対的な基準はなく、日常生活にどの程度不便を感じているかが判断の中心になります。ただし、白内障が非常に進行してから手術を行うと、水晶体が硬くなり手術の難易度が上がる場合があるとも言われているため、症状を自覚したら放置せず、早めに眼科で相談し、経過観察か手術かを一緒に検討してもらうことが大切です。

「まだ早い」と自分で判断しないほうがよい理由

白内障の手術は本人の希望が尊重される治療であり、無理に急かされるものではありません。一方で、「見えにくいけれど、まだ我慢できるから」と自己判断で受診・手術を先延ばしにし続けると、生活の質の低下だけでなく、見えにくさによる転倒や交通事故のリスク、外出機会の減少による生活の不活発化につながることもあります。「困り具合」は本人にしか分からないからこそ、定期的に眼科を受診して現状の見え方と選択肢を確認し、そのうえで「今はまだ様子を見る」「そろそろ手術を検討する」を自分で決められる状態にしておくことが重要です。

手術を迷っている間にできること

手術を受けるかどうか迷っている間も、定期的な眼科受診で進行度を確認し続けることが基本です。並行して、明るい照明への切り替え、拡大鏡やルーペの活用、まぶしさを抑える遮光眼鏡の使用といった対症的な工夫で、当面の生活の不便を軽減できる場合があります。日本眼科学会が明確にしているとおり、これらはあくまで症状を和らげる工夫であり、白内障そのものを治すものではない点は、治療の章で述べたとおりです[1]。

よくある質問(FAQ)

白内障は目薬で治りますか?
現時点の医学では、白内障を治す(濁った水晶体を透明に戻す)目薬は存在しません。日本眼科学会は「濁った水晶体をもとに戻すことはできません」と明記しており、点眼薬・内服薬は進行を遅らせる目的で使われるものであり、根治的な治療ではありません[1]。視力を回復させるには手術が必要です。
白内障は放置するとどうなりますか?
日本眼科学会の解説によれば、加齢性白内障はゆっくり進行することが多いですが、放置すると視力低下・まぶしさ・二重視などが進み、日常生活や車の運転に支障が出るようになります[1]。非常に進行すると水晶体が硬くなり、手術がより難しくなる場合もあるとされているため、症状を自覚したら早めに眼科で相談することが勧められます。
白内障手術はどのくらいの時間で終わりますか?
日本眼科学会の解説を踏まえると、術式や施設によって差はありますが、超音波乳化吸引術(フェイコ)は片目あたり10〜20分程度で終わることが多いとされています[2]。多くの施設で局所麻酔での日帰り手術として行われていますが、入院で行う施設もあります。
単焦点と多焦点、どちらを選べばよいですか?
単焦点眼内レンズは通常の保険診療で受けられ、1つの距離にピントが合います。多焦点眼内レンズは複数の距離にピントを合わせられる可能性がありますが、厚生労働省の通知により手術・検査は保険適用でもレンズの差額分は選定療養として自己負担になり[5]、夜間の光のにじみを感じやすいなどの特徴もあります。どちらが向いているかは眼の状態によって異なるため、担当医とよく相談してください。
多焦点眼内レンズの費用はいくらですか?
厚生労働省の通知によれば、多焦点眼内レンズを選んだ場合、手術・検査部分は保険が適用され、レンズの差額費用・検査費用・患者説明手数料に相当する部分のみが選定療養として自己負担となります[5]。具体的な金額は医療機関ごとに院内掲示されており、施設によって異なるため、受診予定の眼科に直接確認してください。
糖尿病があると白内障になりやすいですか?
はい。日本眼科学会は糖尿病を白内障の危険因子のひとつとして挙げており[1]、糖尿病がある方は加齢性のケースより若い年齢で、かつ血糖コントロールが不十分だと短期間で進行することがあります。糖尿病がある方は自覚症状の有無にかかわらず定期的な眼科受診が勧められます。
白内障手術後、すぐに運転してもいいですか?
視力が安定するまでには個人差があり、数日〜数週間かかることが一般的とされています。警視庁が定める運転免許の更新に必要な視力基準(普通免許は両眼0.7以上・一眼0.3以上)[7]を満たしているか、担当医の診察で視力を確認したうえで運転を再開するかどうか判断してください。
白内障手術は日帰りでできますか?
多くの施設で局所麻酔による日帰り手術として行われていますが、目の状態や施設の方針によっては入院での手術となる場合もあります。手術方法や入院の要否は、実際に手術を受ける眼科で個別に確認してください。
白内障手術後にまた見えにくくなることはありますか?
手術で挿入した眼内レンズ自体が再び濁ることはありませんが、水晶体を包んでいた袋(水晶体嚢)の後ろ側が術後に濁る「後発白内障」が起こることがあります。これはレーザー治療で対応できることが多いとされています。見え方の変化を感じたら担当医に相談してください。
先天性白内障とはどう違いますか?
先天性白内障は生まれつき水晶体に濁りがある状態で、日本眼科学会も「生まれつき白内障がある先天性白内障もあります」と説明しています[1]。乳幼児期の視力発達に関わるため、加齢性のように様子見をするのではなく、専門の小児眼科での早期評価が必要になります。
白内障の手術をすると近視や乱視は治りますか?
眼内レンズの度数を調整することで、近視・遠視・乱視の程度をある程度矯正できる場合があります。乱視矯正用の眼内レンズ(トーリックレンズ)など特殊なレンズを使う選択肢もあるため、術前に希望を担当医に伝え、どのレンズが適しているか相談してください。
白内障はどのくらいの年齢からなりますか?
加齢性白内障は60歳代から増え始め、日本眼科学会によると60歳代で約7割、70歳代で約9割、80歳代ではほとんどの人に何らかの水晶体の濁りが見られるとされています[1]。ただし糖尿病・外傷・ステロイド薬・アトピー性皮膚炎などが原因の場合は、40〜50歳代など、より若い年齢で発症することもあります。
白内障を予防する方法はありますか?
白内障の発症を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、e-ヘルスネットは喫煙・紫外線・活性酸素・アルコールを発症リスクを高める危険因子として挙げています[6]。禁煙や紫外線対策(サングラスの着用など)は、白内障に限らず目の健康全般によいと考えられています。糖尿病がある方は血糖コントロールを良好に保つことも重要です。
白内障手術は両目同時に受けられますか?
施設によっては両目同時の手術に対応している場合もありますが、一般的にはまず片目を手術し、経過を確認したうえでもう片方の目を手術するという流れがとられることが多くあります。片目ずつ行うことで、術後の見え方や合併症の有無を確認しながら進められるという考え方に基づくものです。手術の間隔やスケジュールは、目の状態や施設の方針によって異なるため、担当医と相談してください。
白内障手術後、後発白内障になったらまた手術が必要ですか?
後発白内障は、手術で挿入した眼内レンズ自体が濁るのではなく、水晶体嚢の後ろ側の膜が術後に濁る現象です。多くの場合、外来でのレーザー治療(YAGレーザー後嚢切開術)で対応でき、入院や大がかりな再手術は基本的に必要ないとされています。見え方が再び悪くなったと感じたら、自己判断せず眼科を受診してください。

まとめ:白内障は「治す目薬」ではなく「手術」で向き合う病気

ここまで見てきたとおり、白内障は加齢を主な原因として誰にでも起こりうる目の変化であり、日本眼科学会によれば60歳代で約7割、70歳代で約9割、80歳代ではほとんどの人に何らかの水晶体の濁りが見られるとされる、非常にありふれた状態です[1]。一方で、糖尿病・アトピー性皮膚炎・外傷・ステロイド薬・先天性など、加齢以外の原因で発症するケースもあり、それぞれ発症年代や進み方が異なるため、自分(あるいは家族)の白内障がどのタイプに近いのかを、自己判断ではなく眼科での検査を通じて把握することが出発点になります。

日本眼科学会が明確に述べているとおり、治療面でもっとも重要な事実は、濁った水晶体を透明に戻す目薬や飲み薬は現時点で存在せず、点眼薬・内服薬はあくまで進行を遅らせる目的にとどまり、視力を取り戻す唯一の方法は超音波乳化吸引術(フェイコ)による水晶体の除去と眼内レンズの挿入という手術であるという点です[1]。この事実を正しく知っておくことで、「目薬で治る」といった根拠のない情報に惑わされず、適切なタイミングで手術という選択肢を検討できるようになります。とはいえ「すぐに手術しなければ危険」というわけでもありません。白内障の進行速度には個人差があり、多くの場合は数年単位でゆっくり進むため、症状が軽いうちは経過観察という選択肢も十分にあります。大切なのは、経過観察と手術のどちらを選ぶにしても、その判断を「なんとなく」ではなく、眼科での定期的な検査結果に基づいて行うことです。

また、白内障の診断・経過観察のプロセスでは、視力検査だけでなく細隙灯顕微鏡検査や眼底検査を通じて、緑内障や網膜の病気など見え方の低下に関わる他の要因が隠れていないかも確認されます。「見えにくさ=白内障」と決めつけず、専門的な検査で原因を正確に切り分けてもらうことが、適切な治療方針につながります。

手術を検討する段階では、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズという2つの選択肢があり、厚生労働省の通知が定めるとおり前者は通常の保険診療、後者は手術・検査は保険適用のうえでレンズ差額分のみを選定療養として自己負担する仕組みになっている点も、費用面で誤解が生じやすいポイントです[5]。どちらが適しているかは、乱視の程度や網膜の状態、日常生活で重視したい見え方(車の運転が多いか、近くの作業が多いかなど)によって変わるため、担当医との相談のなかで自分に合ったレンズを選ぶことが大切です。

白内障は「いつかは向き合う」病気であり、症状が軽いうちから正しい知識を持っておくことで、実際に見えにくさを感じ始めたときに落ち着いて選択肢を検討できます。かすみ・まぶしさ・視力低下・二重視といった症状に心当たりがある方は、この記事を参考にしつつ、まずはお近くの眼科で検査を受けることから始めてください。より詳しい総合解説は白内障のすべて:症状・原因から最新治療、費用・保険適用、手術後の生活まで徹底解説もあわせてご覧ください。

最後に、白内障をめぐる情報の中には、根拠の乏しい「〇〇だけで治る」といった宣伝や、不安をあおって高額な商品・治療を勧める情報も見られます。判断に迷ったときは、日本眼科学会や厚生労働省など公的な機関が示している情報を基準に考え、実際の治療方針については必ず眼科専門医に相談してください[1][5]。個々の目の状態は一人ひとり異なるため、この記事はあくまで一般的な知識の整理であり、最終的な診断・治療方針の決定は担当医との対話を通じて行われるべきものです。

白内障に関する記事一覧

白内障の手術方法や眼内レンズの選択については、患者さん一人ひとりの目の状態(乱視の程度、網膜や視神経の状態、生活スタイル)によって最適解が異なり、今回参照した資料だけでは判断しきれない個別の事情については記載が見当たりませんでした。実際の判断は担当医との相談のうえで行ってください。

参考文献

  1. 公益財団法人日本眼科学会「白内障|日本眼科学会による病気の解説」 nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=48
  2. 公益財団法人日本眼科学会「白内障手術|日本眼科学会による病気の解説」 nichigan.or.jp/public/disease/treatment/item01.html
  3. 日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)多焦点眼内レンズ情報サイト「多焦点眼内レンズとは」 jscrs-multifocal.org/contents/about.html
  4. 公益財団法人日本眼科学会「多焦点眼内レンズに係る選定療養の運用について(第2版)」(2022年5月11日) nichigan.or.jp/member/news/detail.html?itemid=516&dispmid=917
  5. 厚生労働省保険局医療課長「保医発0327第5号」(令和2年3月27日、多焦点眼内レンズに係る選定療養) mhlw.go.jp/content/12400000/000613520.pdf
  6. 厚生労働省 e-ヘルスネット「白内障」 e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-039.html
  7. 警視庁「適性試験(視力等)の合格基準」 keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/annai/other/tekisei03.html