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JHO 病気ペディア

肺がん

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
肺がん検診は何歳から? 記事へ 肺がんの最新治療を知りたい 記事へ

✦ 結論から言うと

肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化する病気で、大きく「非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなど)」と「小細胞肺がん」に分かれ、この2つは増殖の速さも治療方針もまったく異なる[1]。喫煙者に多い病気だが、非喫煙者にも起こる。早期(I期・II期)は手術による治癒を目指せる一方、ステージ4では手術ではなく薬物療法を中心とした全身治療が主体になる[4]。せき・血痰・胸の痛み・息切れが2週間以上続く、あるいは体重減少を伴う場合は、自己判断せず呼吸器内科を受診することが勧められている[1]。この記事では、種類の違い・原因・症状・検診の最新動向・病期分類・治療・生存率・緩和ケア・生活と食事・医療費までを、公的機関の情報にもとづいて整理している。

主な原因 喫煙(能動喫煙)と受動喫煙。非喫煙者にも発症する[2]
主な症状 咳・痰・血痰・胸の痛み・息切れ・動悸・発熱。早期は無症状のことが多い[1]
大きな分類 非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん)と小細胞肺がんの2系統[1]
受診の目安 咳・血痰・胸痛・息切れが2週間以上続く、体重減少を伴う場合は呼吸器内科へ[1]

肺がんとは?種類と、症状が出る仕組み

肺がんとは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものである[1]。がん細胞は気管支の内側や肺の奥(肺胞)で増え続け、周囲の正常な組織を壊しながら大きくなる。腫瘍が気管支の内側にできて気道をふさぐようになると、空気の通り道が狭くなり、咳・血痰・息切れといった症状が出やすくなる。

肺がんの組織型は大きく2つの系統に分かれる。1つは「非小細胞肺がん」で、肺がんの中で最も多いのは腺がんであり、扁平上皮がんは咳や血痰などの症状があらわれやすいという特徴がある[2]。もう1つは「小細胞肺がん」で、増殖が速く、転移しやすいという特徴を持つ[2]。この2つは細胞の性質も治療の考え方もまったく異なるため、診断のときにどちらのタイプかをはっきりさせることが、その後の治療方針を決めるうえでの最初の分かれ道になる。


出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」「肺がんについて」(ganjoho.jp)[1][2]

非小細胞肺がんと小細胞肺がん:治療方針が根本的に違う理由

肺がんを考えるうえで最初に押さえておきたいのが、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの違いである。両者は同じ「肺がん」という名前で呼ばれていても、増殖のスピード・転移のしやすさ・薬物療法の選び方が大きく異なり、guideline上も別々の治療体系として整理されている[4][5]。

非小細胞肺がんと小細胞肺がんの違い
項目 非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がんなど) 小細胞肺がん
肺がんに占める割合の傾向 肺がんの中で最も多いのは腺がん[2] 増殖が速く、転移しやすい[2]
早期(限局した状態)の治療の中心 手術(I期・II期)。一部のIII期も手術で治癒を目指すことがある[4] 限局型のI期・IIA期・N0で手術可能な場合は手術後に細胞障害性抗がん薬を使用[5]
手術が難しい場合 放射線治療が選択肢になる[4] 細胞障害性抗がん薬と放射線治療を併用する化学放射線療法[5]
進行した状態の治療の中心 遺伝子検査の結果に応じた分子標的薬、または免疫療法・化学療法[4] 主に細胞障害性抗がん薬。全身状態(PS)が良ければ免疫チェックポイント阻害薬を併用することもある[5]

見分けるカギ:気管支鏡検査や針生検で採った組織を顕微鏡で調べる病理診断によって、非小細胞肺がんか小細胞肺がんかが確定する。この結果が出るまでは治療方針を決めることができない[3]。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 非小細胞肺がん 治療」「肺がん 小細胞肺がん 治療」(ganjoho.jp)[4][5]

原因・危険因子:喫煙者と非喫煙者で分けて考える

肺がんの発生要因としてganjoho.jpが明確に挙げているのは、喫煙や受動喫煙(周囲に流れるたばこの煙を吸うこと)である[2]。喫煙は肺がんの最大の危険因子であり、喫煙年数・本数が多いほどリスクは高まると広く知られている。禁煙は何歳から始めても、その時点からリスクを下げる方向に働くとされる。喫煙が呼吸器全体に与える影響やCOPDとの関係、禁煙治療の選択肢については、喫煙が肺と呼吸器に与える影響についての記事で詳しく解説している。

受動喫煙について。自分がたばこを吸わなくても、周囲の煙を吸い込む受動喫煙は、非喫煙者の肺がんリスクを高める要因としてganjoho.jpに明記されている[2]。家庭内や職場での分煙・禁煙は、本人の意思だけでなく周囲の対策としても重要になる。

非喫煙者の肺がんについて。肺がんは喫煙者だけの病気ではない。たばこを一度も吸ったことがない人にも肺がんは発生し、特に非喫煙の女性における腺がんは臨床上しばしば経験される。非喫煙者の肺がんでは、受動喫煙のほか、後述するアスベスト・大気汚染・遺伝的な要因が関与しうると考えられているが、個々の患者でどの要因が直接の原因になったかを特定することは通常できない。ganjoho.jpが原因として明記しているのは喫煙・受動喫煙であり[2]、アスベストや大気汚染との量的な関係の詳細については、今回参照した資料には具体的な記載が見当たらなかった。非喫煙者ががんと診断されたときに感じやすい戸惑いや、非喫煙者特有の原因の考え方については、非喫煙者の肺がんについての記事で個別に取り上げている。

アスベスト(石綿)。アスベストは建材や断熱材に使われてきた繊維状の鉱物で、長期間にわたって吸い込み続けることが呼吸器の病気のリスクと関連づけられている。アスベストを扱う職業に長く従事していた人は、健診の際に職業歴を医師に伝えることが勧められる。

大気汚染。微小粒子状物質(PM2.5)などの大気汚染物質を長期間吸い込み続けることも、呼吸器への影響が指摘されている要因の一つである。個人でできる対策としては、大気汚染が強い日の屋外での長時間の運動を避ける、換気と空気清浄を組み合わせるといった一般的な工夫が挙げられるが、これらの対策がどの程度肺がんリスクを下げるかについて、今回参照した資料には具体的な数値は見当たらなかった。

職業性の曝露について。アスベストに限らず、特定の化学物質やちり・粉じんを長年吸い込む職業に従事してきた場合、健診・人間ドックの問診で職業歴を正確に伝えることは、医師がリスクを評価するうえで役立つ。過去に石綿を扱う作業に従事していたことがある人は、退職後であっても健康管理手帳の制度の対象になることがあるため、詳しくは労働基準監督署や産業保健総合支援センターに確認するとよい。

遺伝的な要因。肺がんの中には特定の遺伝子変化(EGFR・ALK・ROS1など)が関わるタイプがあり、これは治療薬の選択に直結する重要な情報である[4]。ただし、これは「生まれつき遺伝子変化を受け継いでいる」という意味の遺伝ではなく、がん細胞の中で後天的に起きた変化を指すことが多い。家族性の肺がんそのものについて、今回参照した資料には詳しい記載が見当たらなかった。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がんについて」(ganjoho.jp)[2]

症状:初期は無症状が多い、見逃したくないサイン

肺がんは早期には症状が見られないことも多く、進行して初めて症状が出ることもある[1]。これは肺がんが健診・検診での早期発見を重視する理由でもある。

症状が出る場合、主な症状としては、咳や痰、血痰(痰に血が混じる)、胸の痛み、動いたときの息苦しさや動悸、発熱などがあげられる[1]。これらの症状は肺がん特有のものではなく、風邪や気管支炎でも起こりうるため、「症状があるからすぐ肺がん」と決めつける必要はない。一方で、いつもの風邪と違って2週間以上長引く咳、血の混じった痰、体重減少を伴う症状は、自己判断で様子を見続けず医療機関を受診する目安になる。

喫煙者の症状の見え方。長年の喫煙歴がある人では、もともと「たばこのせいの咳」と自己判断してしまい、受診が遅れる傾向が指摘されている。慢性的な咳・痰であっても、性質が変わった(血が混じる、量が増えた、持続期間が長くなった)と感じたら受診の対象になる。

非喫煙者の症状の見え方。非喫煙者は「自分は肺がんになるはずがない」という思い込みから、症状があっても受診が遅れやすいと指摘されることがある。喫煙歴の有無にかかわらず、咳・血痰・胸痛・息切れが続く場合は受診の対象になる点は共通している[1]。

進行した場合に出やすい症状。がんが肺の外に広がったり、離れた臓器に転移したりすると、転移した場所に応じた症状が出ることがある。骨に転移すると骨の痛み、脳に転移すると頭痛や手足の動かしにくさ、声を出す神経の近くにがんが広がると声のかすれ(嗄声)といった症状が知られている。こうした症状は肺そのものの症状ではないため、「肺と関係なさそう」と自己判断して受診が遅れる原因になりやすい点には注意したい。ただし、これらの症状があるからといって必ず肺がんの転移というわけではなく、他の原因で起こることも多いため、症状が続く場合は医療機関で原因を調べることが基本になる。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」(ganjoho.jp)[1]

検診の目安となる検査方法と基準

肺がんの検査には複数の方法があり、目的に応じて使い分けられる。胸部X線検査は、いわゆるレントゲン検査で、肺全体にX線を照射して撮影する[3]。CT検査は今のところ最も多く使われている方法で、病変の大きさ・位置・転移の有無を調べる[3]。気管支鏡検査は、直径3〜6mmほどの細くしなやかな内視鏡を気管支に挿入し、細胞や組織を採取する検査である[3]。経皮的針生検は、超音波(エコー)やX線、CTで位置を確認しながら、体の外から針を刺して組織を採取する[3]。胸腔鏡検査は、内視鏡を肋骨の間から胸腔内に挿入して組織を採取する検査である[3]。

肺がん検診・検査の基準となる数値
検査/項目 基準・内容 備考
低線量CT検査(重喫煙者向け) 実施を推奨(推奨グレードA) 2025年度版ガイドラインで対策型検診・任意型検診として実施を推奨[7]
胸部X線+喀痰細胞診併用法(重喫煙者向け) 実施しないことを推奨 2025年度版ガイドラインで対策型検診・任意型検診として実施しないことを推奨[7]
喀痰細胞診(単独) 厚生労働省は2026年度からの廃止方針案 対象病変の肺門部扁平上皮がんが大幅に減少しているため[8]
気管支鏡検査に使う内視鏡の太さ 直径3〜6mm 細胞・組織の採取に用いる[3]

出典:国立がん研究センター「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版」(canscreen.ncc.go.jp)[7]/厚生労働省「肺がん検診について」がん検診のあり方に関する検討会資料[8]/国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 検査」(ganjoho.jp)[3]

病期を確定するための検査としては、上記に加えてPET-CT検査(がん細胞が糖を多く取り込む性質を利用して全身の転移の有無を調べる検査)や、脳への転移の有無を調べる頭部MRI検査が行われることがある。これらは診断のための検査というより、すでに肺がんと診断された後に「がんがどこまで広がっているか」を確認し、治療方針(手術可能か、放射線治療の範囲、薬物療法の必要性)を決めるための検査という位置づけが強い。

検診のあり方は近年変化している。厚生労働省は肺がん検診について、重喫煙者への低線量CTの実施に向けて2026年度から希望市町村でモデル事業を実施する一方、効果が低いことを踏まえて喀痰細胞診検査を2026年度から廃止する方針案を示している[8]。喀痰細胞診の対象病変である肺門部扁平上皮がんが大幅に減少しており、喀痰がある人はすでに有症状者であるため、検診ではなく速やかな医療機関受診を勧める必要がある、というのが方針転換の理由として挙げられている[8]。長年「肺がん検診=胸部X線+喀痰細胞診」というイメージを持っていた人にとっては、この転換は知っておく価値がある変化である。

診断・病期分類:TNM分類とステージI〜IV

検査で肺がんが疑われると、気管支鏡検査や針生検で採取した組織を顕微鏡で調べる病理診断によって、がんかどうか、非小細胞肺がんか小細胞肺がんかが確定する[3]。そのうえで、がんの大きさや広がり方(T:がんの大きさ・広がり、N:リンパ節への転移、M:離れた臓器への転移)を組み合わせて評価するTNM分類にもとづき、I期からIV期までの病期(ステージ)が決められる。病期は治療方針を決める最も重要な情報であり、日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインに沿って判定される[13]。

おおまかな考え方として、I期・II期はがんが肺の中にとどまっている早期の状態、III期はリンパ節への転移が進んだ局所進行の状態、IV期は離れた臓器(脳・骨・肝臓・反対側の肺など)への転移がある状態を指す。ただし同じI期・III期でも細かい分類(IA・IB、IIIA・IIIB など)によって治療方針が変わるため、正確な病期は担当医から個別に説明を受ける必要がある。

TNM分類は国際的にも共通して使われている枠組みで、T(Tumor:がん自体の大きさ・広がり)、N(Node:近くのリンパ節への転移の有無)、M(Metastasis:離れた臓器への転移の有無)の3つの要素をそれぞれ評価し、その組み合わせによって最終的な病期(ステージ)が決まる。同じI期でも、Tの大きさによってIA・IBのように細分類されるのはこのためである。病期分類は一度決まったら終わりではない。治療の効果を見るための再検査や、再発の有無を確認する経過観察のたびに、画像検査の結果と照らし合わせて評価される。特にIII期は「手術で治癒を目指せるIII期」と「手術ではなく化学放射線療法が中心になるIII期」に分かれることがあり、この境目の判断は専門的で、担当医・放射線治療医・呼吸器外科医などが合同でカンファレンスを行って方針を決めることも多い。TNM分類・病期の詳しい定義や、ステージごとの治療選択の考え方は、肺がんのステージ(病期)分類の記事でさらに詳しく整理している。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 検査」(ganjoho.jp)[3]/日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2024年版」[13]

経過と治療:早期(手術可)とステージ4(全身療法)で何が違うか

肺がんの治療は、非小細胞肺がんか小細胞肺がんかに加えて、病期(ステージ)によって大きく変わる。ここでは診断が確定してから治療方針が決まるまでの流れを、早期とステージ4に分けて整理する。

非小細胞肺がん・早期(I期・II期、一部のIII期)。治療は手術が中心で、術後に再発を防ぐ目的で化学療法(細胞障害性抗がん薬)が行われることがある[4]。患者の体調や他の病気の有無により手術が難しい場合は、放射線治療が選択される[4]。治療法を選ぶ際には、年齢、他の病気の有無、呼吸機能を含めた体全体の状態、治療に体が耐えられるかどうかが考慮される[4]。

非小細胞肺がん・ステージ4(全身に転移がある状態)。手術による治癒を目指す治療から、薬物療法を中心とした全身療法へと考え方が変わる。EGFR・ALK・ROS1・BRAF・MET・RET・NTRK・KRAS・HER2といった遺伝子の異常を調べる遺伝子検査が行われ、異常が見つかった遺伝子に応じた分子標的薬による治療が検討される[4]。該当する遺伝子変化がない場合は、免疫チェックポイント阻害薬や化学療法が治療の中心になる。分子標的薬・免疫療法とも、効果や副作用には個人差があり、薬機法・景品表示法の観点からも「必ず効く」という表現は避けるべきで、効果は担当医の説明のもとで個別に判断される。

小細胞肺がん・限局型(がんが片側の胸の中にとどまっている状態)。I期またはIIA期・N0で手術が可能な場合は、手術後に細胞障害性抗がん薬を使用する[5]。手術が難しい場合は、細胞障害性抗がん薬と放射線治療を併用する化学放射線療法が行われる[5]。I期・IIA期以外の進行した限局型では、全身状態(PS)が0〜2であれば細胞障害性抗がん薬を使用し同時に放射線治療を行い、PS3であれば薬物療法が治療の中心になる[5]。初回治療でがんが画像検査で見えなくなった場合、再発を防ぐ目的で脳全体に放射線を照射する予防的全脳照射が行われることがある[5]。

小細胞肺がん・進展型(がんが片側の胸を超えて広がっている状態)。主に細胞障害性抗がん薬で治療し、全身状態(PS)が0または1の場合は免疫チェックポイント阻害薬を併用することもある[5]。小細胞肺がんは増殖が速く転移しやすいという性質があるため[2]、非小細胞肺がんに比べて診断時点ですでに進展型であるケースが多いとされる。

⚠ ここで挙げた期間・進行の目安は、いずれも「診断された時点からの病期」を基準にしている。喫煙開始からの年数や症状が出てからの経過日数とは異なる軸であることに注意が必要である。

手術の種類について。非小細胞肺がんの手術には、がんのある肺葉をまるごと切除する肺葉切除、より小さい範囲を切除する区域切除・楔状切除など複数の術式がある。どの範囲を切除するかは、がんの大きさ・位置と、術後に残る肺でどれだけ呼吸機能を保てるかのバランスで判断される。近年は胸腔鏡(内視鏡)を使い、胸を大きく切り開かずに手術を行う胸腔鏡下手術が広く行われるようになっているが、がんの広がり方によっては従来通り胸を開く開胸手術が選択されることもある。どちらの方法が適するかは、担当医・呼吸器外科医が個々の状態に応じて判断する。

放射線治療の使い分けについて。手術が難しい早期の非小細胞肺がんでは、狭い範囲に高い線量を集中して照射する定位放射線治療(体幹部定位放射線治療)が選択肢になることがある。III期のように広がりのある病変では、より広い範囲に分けて照射する通常分割照射が、化学療法と組み合わせて(化学放射線療法として)行われることが多い。放射線治療の副作用としては、照射した範囲の皮膚炎や、まれに肺炎(放射線肺臓炎)が起こることがあり、治療後も咳や息切れの変化には注意が必要である。

薬物療法の副作用への向き合い方。細胞障害性抗がん薬・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬は、それぞれ起こりやすい副作用の種類が異なる。細胞障害性抗がん薬では吐き気・脱毛・白血球減少、分子標的薬では皮膚症状や下痢、免疫チェックポイント阻害薬では免疫が過剰に働くことによる特有の副作用(間質性肺炎・大腸炎・甲状腺機能異常など)が知られている。どの副作用がどの程度出るかは薬剤・個人によって差が大きいため、治療開始前に担当医から具体的な説明を受け、気になる症状が出たときにすぐ相談できる体制を確認しておくことが重要である。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 非小細胞肺がん 治療」「肺がん 小細胞肺がん 治療」(ganjoho.jp)[4][5]

受診の目安:今すぐ呼吸器内科か、しばらく様子を見てよいか

すべての咳や痰がすぐに肺がんの心配につながるわけではない。以下は、ganjoho.jpが示す症状の情報[1]をもとに整理した、受診を考えるうえでの目安である。個々の状況の医学的判断は医師が行うものであり、以下は「受診するかどうか迷ったときの整理」として活用してほしい。

🔴 早めに呼吸器内科を受診したい状態:血痰(痰に血が混じる)が出た/2週間以上続く咳や痰がある/これまでと質の違う咳(血が混じる、量が増えた)が続く/体重が急に減ってきた/息切れ・動悸が強くなってきた[1]。

🟡 経過を見つつ、続くようなら受診したい状態:軽い咳や痰が1〜2週間程度続いている/胸に軽い痛みを感じることがある。市販薬で様子を見ても改善しない場合は受診の対象になる。

🟢 通常は緊急性が低いが、健診・検診は継続したい状態:自覚症状がない。肺がんは早期には症状が見られないことも多いため[1]、症状がないことは「がんがない」ことの証明にはならない。年齢や喫煙歴に応じた定期的な検診の継続が重要である。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」(ganjoho.jp)[1]

生存率・予後:ステージによってどれだけ変わるか

国立がん研究センターのがん統計によると、肺の5年相対生存率(2009〜2011年診断例)は、全体で34.9%、男性29.5%、女性46.8%となっている[9]。この数値は非小細胞肺がん・小細胞肺がんを合わせた肺がん全体の平均値であり、実際の生存率は病期(ステージ)によって大きく異なる。一般に、早期(I期)で発見・治療された場合の生存率は、進行した状態(IV期)で発見された場合よりも大幅に高いことが知られており、これが早期発見・早期治療が重視される理由である。

病期別・組織型別(非小細胞肺がん/小細胞肺がん)の詳細な5年生存率は、国立がん研究センターが公開している院内がん登録生存率集計結果閲覧システムで、施設単位・条件別に確認することができる[10]。生存率の示し方には「実測生存率」「相対生存率」「純生存率(ネット・サバイバル)」があり、それぞれ計算方法が異なるため、複数の情報源の数値を単純に比較する際は、どの計算方法によるものかを確認する必要がある[10]。

肺がんの罹患数・死亡数についても押さえておきたい。国立がん研究センターのがん統計によれば、肺がんは2023年の全国がん登録において罹患数が男女計で2位、男性・女性でそれぞれ3位、2024年の人口動態統計がん死亡データでは死亡数が男女計・男性で1位、女性で2位となっている[11]。罹患数の順位に比べて死亡数の順位が高いことは、肺がんが発見された時点ですでに進行しているケースが多いこと、また治療の難しさを反映していると考えられる。

「個々の患者の生存率・予後については、病期・組織型・遺伝子変化の有無・全身状態など多くの要因が影響するため、この統計上の数値がそのまま個人にあてはまるとは限らない。具体的な見通しは、担当医から検査結果にもとづいた説明を受けることが必要である。」

治療方針を決める際、多くの医療機関では呼吸器外科・呼吸器内科・放射線治療医・病理医などが集まって話し合うキャンサーボード(多職種カンファレンス)を経て、個々の患者に合った治療方針が決められる。1人の医師だけの判断ではなく複数の専門医の視点を通すことで、手術・放射線・薬物療法のどれを、どの順番で組み合わせるかがより慎重に検討される仕組みになっている。

「生存率」という数字だけを見ると不安になりやすいが、これは過去に診断された患者集団の統計であり、医療(手術手技・薬物療法)は年々進歩しているため、現在治療を受けている患者の実際の見通しは、統計の数値より良い方向に動いている可能性がある点も理解しておきたい。初期の肺がんでどれくらいの生存が見込めるか、生存率を高めるためにどのような治療の選択肢があるかについては、初期肺がんの生存率についての記事で個別に整理している。

出典:国立がん研究センター がん統計「肺」(ganjoho.jp/reg_stat)[9]/国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率集計」(ganjoho.jp)[10]/国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」(ganjoho.jp)[11]

緩和ケア・終末期のケア:治療と並行して受けられるもの

緩和ケアは、「終末期になってから始めるもの」という誤解を持たれることがあるが、実際には診断された早い段階から、痛みや息苦しさなどのつらい症状をやわらげる目的で、積極的な治療と並行して受けることができる。肺がんは息切れ・咳・痛みといった身体症状に加えて、不安や気持ちのつらさを伴いやすい病気であり、緩和ケアチームは身体面・精神面の両方をサポートする役割を担う。

進行が進み、積極的な抗がん治療の効果が見込みにくくなった段階(終末期)では、症状を和らげることを中心とした緩和ケアに比重が移っていく。息切れに対する酸素投与や薬物療法、痛みに対する医療用麻薬の適切な使用など、つらさを軽減するための医療的な手段は複数存在する。どの段階でどのようなケアを選ぶかは、患者本人・家族・医療チームが話し合いながら決めていくものであり、「治療をやめる=あきらめる」という単純な図式ではないことは、患者・家族双方が知っておく価値がある。

家族にとっては、本人の意思(どこで最期の時間を過ごしたいか、どこまで積極的な治療を望むかなど)を、体調が悪化する前の元気なうちに話し合っておくこと(アドバンス・ケア・プランニング)が、後々の意思決定の負担を減らすことにつながる場合がある。話し合いの内容に正解はなく、本人の考えが変わることも自然なことなので、一度決めた方針に縛られすぎず、状況に応じて医療チームと相談しながら見直していく姿勢が助けになる。

「緩和ケアの具体的な開始時期や制度上の位置づけについて、今回参照したTier0/1資料には詳細な記載までは確認できなかった。緩和ケア病棟や在宅緩和ケアの利用を検討する際は、担当医やがん相談支援センターに相談することが勧められる。」

終末期の在宅療養では、家族がどこまで介護を担えるか、訪問診療・訪問看護をどう組み合わせるかといった具体的な生活の設計が課題になりやすい。穏やかな日々を送るための具体的な工夫やケアの選択肢については、末期肺がん患者の緩和ケアについての記事で詳しく取り上げている。

生活・食事で意識したいこと

肺がんの治療中は、手術・放射線・薬物療法のいずれにおいても、体力を維持することが治療を計画どおりに進めるうえで重要になる。食欲不振や味覚の変化が出やすい治療もあるため、無理に「バランスの良い食事」にこだわりすぎず、食べられるものを少量ずつ食べることが優先される場面もある。たんぱく質を意識的に摂ることは、体重減少や筋力低下を防ぐうえで基本的な考え方として広く知られている。

禁煙について。治療中・治療後も喫煙を続けている場合、禁煙は治療の効果や体力の回復に良い影響を与える方向に働くと考えられている。診断をきっかけに禁煙を検討する患者は多く、禁煙外来の利用も選択肢の一つになる。

呼吸のケア。手術後は呼吸機能に変化が出ることがあり、リハビリテーション(呼吸リハビリ)を通じて日常生活での息切れを軽減していく取り組みが行われることがある。具体的な運動内容や強度は、手術の範囲や体力に応じて医療チームが個別に判断するものであり、自己判断での無理な運動は避けたい。呼吸リハビリは手術前から始められることもあり、術前の体力づくりが術後の回復を助けると考えられている。

心のケアについて。肺がんという診断そのものが大きな心理的負担になることは珍しくない。不安・不眠・気分の落ち込みが続く場合は、我慢せずに担当医や、がん患者向けの心理的サポートを行う専門職(精神腫瘍医・臨床心理士など)に相談することも選択肢である。多くのがん診療連携拠点病院には、患者本人だけでなく家族も利用できる相談窓口(がん相談支援センター)が設置されている。

「食事・生活の細かい指導内容は個々の治療内容や体調によって大きく異なるため、この記事は一般的な考え方の整理にとどまる。具体的な食事指導は、担当医・管理栄養士に確認することが望ましい。」

治療中に意識したい栄養の基本的な考え方や、食欲がないときでも取り入れやすい具体的な食品の工夫については、肺がんと食事についての記事で個別に整理している。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

肺がんの治療は、手術・放射線治療・薬物療法(特に分子標的薬や免疫療法)のいずれも高額になりやすい。公的医療保険の対象となる医療費については、ひと月に医療機関や薬局の窓口で支払った額が一定の金額を超えた場合に、その超えた金額が支給される高額療養費制度があり、自己負担の上限額は年齢や所得に応じて定められている[12]。複数の医療機関を受診した場合の世帯合算、直近12か月間で3回以上高額療養費制度を利用した場合の多数回該当など、自己負担額をさらに軽減する仕組みも用意されている[12]。医療費が高額になることがあらかじめわかっている場合は、限度額適用認定証をあらかじめ取得しておくことで、窓口での支払額自体を自己負担の上限額までに抑えることができる[12]。

治療と仕事の両立について。肺がんの治療は手術後の回復期間や、外来での薬物療法など、働きながら治療を続ける患者も多い。会社員であれば、療養のために仕事を休んだ際に一定の要件のもとで支給される傷病手当金(加入している健康保険組合・協会けんぽの制度)を利用できる場合がある。また、治療によって身体機能に一定の障害が残った場合には、身体障害者手帳の交付を受けられることがあり、税制上の優遇や福祉サービスの対象になることがある。これらの制度は医師よりも、病院内のがん相談支援センターやソーシャルワーカー、勤務先の人事・総務窓口の方が詳しいことが多く、治療と生活の両立について迷ったときの相談先として知っておく価値がある。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「医療費の負担を軽くする公的制度」(ganjoho.jp)[12]

いつ受診すべきか:迷ったときの考え方

肺がんは早期には症状が見られないことも多いという特徴があるため[1]、「症状がないから大丈夫」という自己判断は、早期発見の機会を逃すことにつながりうる。喫煙歴が長い人、40歳を過ぎた人は、症状の有無にかかわらず定期的な検診を受けることが検診体制の基本的な考え方に沿っている。一方で、血痰・2週間以上続く咳・体重減少といった症状がある場合は、次の検診を待たずに呼吸器内科を受診することが勧められる。非喫煙者であっても、これらの症状がある場合は同様である[1]。

日本の検診ガイドラインの見直し:低線量CTと喀痰細胞診をめぐる変化

項目 従来の方針 2025年度版ガイドライン以降の方針
重喫煙者への検査 胸部X線+喀痰細胞診の併用[8] 低線量CTを対策型検診・任意型検診として実施を推奨(推奨グレードA)[7]
喀痰細胞診(重喫煙者向け併用法) 推奨されていた時期がある 対策型検診・任意型検診として実施しないことを推奨[7]
喀痰細胞診(単独検査としての位置づけ) 検診項目として実施 厚生労働省が2026年度からの廃止方針案を示している[8]

この見直しが行われた背景として、厚生労働省の資料は、喀痰細胞診の対象病変である肺門部扁平上皮がんが大幅に減少していること、喀痰がある人はすでに有症状者であるため検診ではなく速やかな医療機関受診を勧める必要があることを挙げている[8]。一方で、低線量CTは重喫煙者を対象とした導入がまず検討されており、非喫煙者を含むすべての人に一律に推奨されているわけではない点には注意が必要である[7]。実際にどの検診を選ぶべきかは、居住する自治体の検診案内や、かかりつけ医への相談で確認することが確実である。ガイドラインは科学的根拠が積み重なるたびに更新されるものであり、数年前に「常識」とされていた検診方法が、新しい研究結果を踏まえて見直されることは珍しくない。「昔からそう言われているから」という理由だけで検診方法を選ぶのではなく、最新のガイドラインに沿った案内を確認する習慣が、無駄な被ばくや、逆に必要な検査を受け損なうことを防ぐことにつながる。

検診の種類が変わると、自己負担額(公費助成の対象になるかどうか)も変わることがある。低線量CTを含めた肺がん検診の費用の目安や公的助成の仕組みについては、肺がん検診の費用・公的助成についての記事で個別に整理している。

出典:国立がん研究センター「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版」(canscreen.ncc.go.jp)[7]/厚生労働省「肺がん検診について」(mhlw.go.jp)[8]

肺がんと間質性肺炎など、症状が似ている他の呼吸器疾患との違い

咳や息切れという症状は肺がんに特有のものではない。慢性的な咳・息切れが続く病気として、肺そのものが硬くなっていく間質性肺炎も知られており、両者は症状の一部が重なるため、自己判断で区別することは難しい。間質性肺炎は肺がんとは異なる病気で、原因・進行の仕方・治療方針も別物であるため、症状の性質(乾いた咳が中心か、血が混じるか、体重減少を伴うかなど)や画像検査の所見をもとに、医療機関で鑑別してもらう必要がある。間質性肺炎そのものについては、間質性肺炎のページで詳しく解説している。

見分けるカギ:どちらも息切れ・咳が主な症状になりうるが、血痰の有無、体重減少の有無、喫煙歴、画像検査(CT)での病変の形の違いなどを組み合わせて、医療機関が鑑別診断を行う。自己判断で「間質性肺炎だから大丈夫」「肺がんではないはず」と決めつけず、症状が続く場合は呼吸器内科を受診することが基本になる。

よくある質問(FAQ)

肺がんは早期発見できますか?症状が出る前に見つかりますか?
肺がんは早期には症状が見られないことも多く、進行して初めて症状が出ることもある[1]。そのため症状が出る前の段階では、検診(胸部X線・低線量CTなど)による発見が中心になる。40歳を過ぎたら定期的な検診を受けることが基本的な考え方である。
タバコを吸わないのに肺がんになることはありますか?
ある。肺がんは喫煙者だけの病気ではなく、非喫煙者にも発症する。ganjoho.jpが原因として明記しているのは喫煙・受動喫煙だが[2]、非喫煙者の肺がん、特に非喫煙の女性の腺がんは臨床上しばしば経験される。受動喫煙・アスベスト・大気汚染などが関与する可能性が考えられているが、個々の原因を特定することは通常できない。
肺がん検診はいつから受ければいいですか?
年齢や喫煙歴に応じた検診の開始時期は自治体・検診機関ごとの案内で確認するのが確実である。重喫煙者については低線量CTの実施が2025年度版ガイドラインで推奨グレードAとされている[7]。詳しい年齢基準は今回参照した資料からは断定できないため、かかりつけ医または自治体の検診案内に確認してほしい。
低線量CT検査とはどんな検査ですか?被ばくは大丈夫ですか?
低線量CTは通常のCTよりも放射線量を抑えて撮影する検査で、2025年度版ガイドラインで重喫煙者への実施が推奨グレードAとされている[7]。被ばく量についての具体的な数値は今回参照した資料には記載が見当たらなかった。個別の被ばく線量については、検査を受ける医療機関に確認することが確実である。
喀痰細胞診はもう受けられなくなるのですか?
厚生労働省は喀痰細胞診検査について、効果が低いことを踏まえて2026年度から廃止する方針案を示している[8]。対象病変である肺門部扁平上皮がんが大幅に減少していることが理由の一つとされる[8]。方針は今後変更される可能性もあるため、最新の実施状況は自治体の検診案内で確認してほしい。
非小細胞肺がんと小細胞肺がんは何が違うのですか?
非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がんなど)と小細胞肺がんは、増殖の速さも治療方針もまったく異なる[1]。小細胞肺がんは増殖が速く転移しやすいという特徴があり[2]、主に薬物療法(細胞障害性抗がん薬)が治療の中心になる場合が多い[5]。非小細胞肺がんは早期であれば手術が中心になる[4]。
ステージ4と言われても治療法はありますか?
ある。ステージ4の非小細胞肺がんでは、EGFR・ALK・ROS1などの遺伝子検査の結果に応じた分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、化学療法などの薬物療法が治療の中心になる[4]。小細胞肺がんの進展型でも、細胞障害性抗がん薬に加えて免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療が行われることがある[5]。どの治療が適するかは全身状態や遺伝子検査の結果によって個別に判断される。
手術できる肺がんとできない肺がんの違いは何ですか?
非小細胞肺がんではI期・II期、一部のIII期が手術の対象になる[4]。手術が可能かどうかは、がんの広がり方(病期)に加えて、年齢、他の病気の有無、呼吸機能を含めた体全体の状態、治療に体が耐えられるかどうかによって判断される[4]。手術が難しい場合は放射線治療が選択肢になる[4]。
分子標的薬とはどんな薬ですか?誰でも使えますか?
分子標的薬は、EGFR・ALK・ROS1・BRAF・MET・RET・NTRK・KRAS・HER2といった特定の遺伝子の異常を標的にする薬で、遺伝子検査でその異常が確認された患者に対して検討される[4]。該当する遺伝子変化がない患者には使用されないため、「誰でも使える薬」ではない。効果や副作用には個人差があり、薬機法の観点から効果を断定的に説明することは避けるべきで、担当医の説明のもとで判断される。
免疫療法は肺がんに効きますか?
免疫チェックポイント阻害薬は、非小細胞肺がんのステージ4治療の選択肢の一つとして使われる[4]。小細胞肺がんの進展型でも、全身状態(PS)が0または1の場合に細胞障害性抗がん薬と併用することがある[5]。効果には個人差があり、すべての患者に同じように効果が出るわけではないため、「効くかどうか」は個別に担当医と相談する必要がある。
肺がんの5年生存率はどれくらいですか?
国立がん研究センターのがん統計によると、肺の5年相対生存率(2009〜2011年診断例)は全体で34.9%(男性29.5%、女性46.8%)である[9]。これは肺がん全体の平均値で、実際の生存率は病期によって大きく異なり、早期発見であるほど良好な傾向がある。病期別の詳細な数値は院内がん登録生存率集計結果閲覧システムで確認できる[10]。
血痰が出たらすぐ肺がんを疑うべきですか?
血痰は肺がんの症状の一つとしてganjoho.jpに挙げられている[1]が、気管支炎など他の病気でも血痰が出ることがあるため、血痰=肺がんと断定はできない。ただし血痰が出た場合は、自己判断で様子を見続けず、呼吸器内科を受診して原因を調べることが勧められる。
高額療養費制度はどのくらい医療費を減らしてくれますか?
高額療養費制度は、ひと月に医療機関や薬局の窓口で支払った額が年齢・所得に応じて定められた自己負担の上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度である[12]。具体的な上限額は所得区分によって異なるため、加入している公的医療保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)の窓口で個別に確認する必要がある。
家族に肺がんの人がいると自分もなりやすいですか?
肺がんの中には特定の遺伝子変化が関わるタイプがあるが[4]、これは主にがん細胞の中で後天的に起きた変化であり、親から子へ受け継がれる遺伝とは区別して考えられている。家族性の肺がんのリスクについて、今回参照したTier0/1資料には具体的な記載が見当たらなかった。家族歴が気になる場合は、遺伝カウンセリングを行っている医療機関に相談することも選択肢になる。
肺がん検診の結果で「要精密検査」と言われました。すぐ肺がんということですか?
「要精密検査」は「がんが確定した」という意味ではなく、「検診の画像だけでは判断できない影が見つかったので、詳しい検査で確認しましょう」という意味である。実際に精密検査を受けた結果、肺がんではない良性の影であることも少なくない。不安な場合も、検査を先延ばしにせず、指示された精密検査(CT・気管支鏡検査など[3])を受けて結論をはっきりさせることが勧められる。
肺がんの手術は胸を大きく切り開くのですか?
がんの広がり方によって異なる。近年は胸腔鏡(内視鏡)を使い、小さな切開で行う胸腔鏡下手術が広く行われているが、がんの位置や大きさによっては従来通り胸を開く開胸手術が選択されることもある。どちらの方法が適するかは、病期や体の状態をもとに呼吸器外科医が判断する。
セカンドオピニオンを取ってもいいのでしょうか?
肺がんは治療の選択肢が多く(手術・放射線・薬物療法の組み合わせ、遺伝子変化に応じた分子標的薬など)、専門的な判断を要する場面が多いため、セカンドオピニオン(別の医療機関の医師に意見を求めること)を希望する患者は少なくない。担当医に率直に伝えて紹介状を用意してもらうのが一般的な流れであり、これは担当医との信頼関係を損なう行為ではない。

肺がんに関する記事一覧

アスベスト・大気汚染・家族性のリスクについて、量的な関係(どれくらいの曝露でどれくらいリスクが上がるか)や、緩和ケアの制度上の細かい位置づけについては、今回参照した資料には詳しい記載が見当たりませんでした。より詳しい情報が必要な場合は、担当医またはがん相談支援センターに相談することをお勧めします。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がんについて」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 検査」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/cancer/lung/diagnosis.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 非小細胞肺がん 治療」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_nsclc.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 小細胞肺がん 治療」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_sclc.html
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん検診について」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/lung.html
  7. 国立がん研究センター「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版」2025年4月25日(2025年9月12日修正版) canscreen.ncc.go.jp/guideline/lung_guideline2025.pdf
  8. 厚生労働省 健康・生活衛生局がん・疾病対策課「肺がん検診について」第45回がん検診のあり方に関する検討会資料 2026年 mhlw.go.jp/content/10901000/001577510.pdf
  9. 国立がん研究センター がん統計「肺」2026年閲覧 ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html
  10. 国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率集計」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/index.html
  11. 国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」2026年閲覧 ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
  12. 国立がん研究センター がん情報サービス「医療費の負担を軽くする公的制度」2026年閲覧 ganjoho.jp/public/institution/backup/public_insurance.html
  13. 日本肺癌学会編「肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2024年版」金原出版 2024年