【科学的根拠に基づく】男性のピアス完全ガイド:目的から全リスク、日本の法律、保険適用まで徹底解説
男性の健康

【科学的根拠に基づく】男性のピアス完全ガイド:目的から全リスク、日本の法律、保険適用まで徹底解説

ピアスは、自己表現の強力な手段であり、美的感覚、独自性の追求、さらには性的表現の一環として、多くの男性にとって重要な意味を持っています1。JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会は、ピアスを装着するという皆様の意思を尊重します。その上で、皆様が十分な情報を得て、ご自身の身体について最善の決定を下せるよう、医学的に正確かつ公平な情報を提供することを使命としています。この記事は、単にピアスの種類やリスクを羅列するものではありません。ピアスの動機から、考えうる全ての医学的リスク、そして最も重要な点として、日本国内における法的な位置づけと医療制度(公的医療保険)との関連性までを、国内外の科学的根拠に基づき、包括的に解説する究極のガイドです。安全への第一歩は、正しい知識から始まります。日本では、ピアス施術は法律上「医行為」と定義されており2、この事実を理解することが、ご自身の身を守る上で不可欠です。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下に示すリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性のみが含まれています。

  • 日本の法制度(医師法): 本記事における「ピアス施術は医行為である」という指針は、日本の医師法第17条の解釈に基づいています2。これは、日本国内での安全な施術に関する議論の法的基盤です。
  • 日本の公的医療保険制度: ピアスによる感染症やケロイドなどの合併症治療が、原則として健康保険の適用対象となるという記述は、複数の皮膚科・形成外科クリニックの公開情報に基づいています678
  • 国際的な査読付き医学論文 (British Journal of Medical Practitioners, PubMed等): 性器ピアスに伴う尿道瘻や尿道狭窄、フルニエ壊疽といった重篤な合併症に関する記述は、国際的な医学雑誌に掲載された症例報告や研究論文を根拠としています1101120
  • 主要な医療機関の見解 (Mayo Clinic等): 感染症の予防策や一般的なアフターケアに関する推奨事項は、国際的に認知されたメイヨー・クリニックのような権威ある医療機関の情報に基づいています13
  • 日本国内の研究 (徳島大学): 日本におけるニッケルアレルギーとピアスの関連性についての分析は、徳島大学の研究報告を引用しており14、国内の状況に即した情報を提供しています。
  • 専門家団体の基準 (Association of Professional Piercers): 衛生管理の国際的な基準に関する記述は、プロのピアッサー協会(APP)が発行するプロシージャマニュアルを参考にしており15、読者が医療機関の質を判断する上での客観的な指標を提供します。

要点まとめ

  • 日本では、ピアスホールを開ける行為は法律上「医行為」と定められており、安全かつ合法的な施術は医療機関でのみ受けられます2
  • ピアスが原因で発生した感染症やケロイドなどの合併症の治療には、原則として公的医療保険が適用されます8
  • 全てのピアスには感染症やアレルギー、瘢痕のリスクが伴いますが、特に耳の軟骨部は感染リスクが高いとされています16
  • 男性の性器ピアスは、排尿障害、尿道瘻(にょうどうろう)、尿道狭窄、勃起不全といった、泌尿器・生殖器の永続的な機能障害を引き起こす重篤なリスクを伴います111
  • 施術を受ける際は、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)による器具滅菌など、国際的な衛生基準を満たした医療機関を選択することが極めて重要です1315

第1章:「なぜ」を理解する – 男性のピアス装着の動機

ピアスに関する医学的リスクを詳述する前に、まずその装着の動機を理解することは、非常に重要です。研究によると、男性がピアス、特に性器ピアスを装着する動機は多岐にわたります。英国の医学雑誌『British Journal of Medical Practitioners』に掲載された研究では、主な動機として、自身およびパートナーの性的満足度の向上が挙げられています1。また、他者との差別化を図りたいという美的感覚や、独自のアイデンティティを確立したいという欲求も、強力な動機となり得ます1。特に思春期においては、ピアスが通過儀礼や自己肯定の一形態として機能することもあります21

興味深いことに、同研究では、性器ピアスを持つ男性が特殊な集団であるという固定観念を覆すデータも示されています。調査対象となった男性の多くは高学歴で、安定したパートナーシップを持ち、健康状態も良好であったと報告されており、ピアスが多様な背景を持つ人々によって選択されていることが示唆されています1。JAPANESEHEALTH.ORGは、これらの動機を非批判的に理解し、皆様がご自身の価値観に基づいて最良の選択をするための一助となることを目指しています。

第2章:最も重要な事実 – 日本における「医行為」としてのピアス

本記事で最も強調したい、そして皆様の安全に直結する核心的な事実が、日本国内におけるピアスの法的な位置づけです。この章では、意見ではなく、日本の法律と医療制度に基づいた揺るぎない事実を解説します。

2.1. 法的定義:医師法との関連

日本の法律において、針などを用いて皮膚に穴を開ける、いわゆる「ピアスホールを開ける行為」は「医行為」に該当します2。これは厚生労働省からの通知によっても長年にわたり示されてきた公式見解です。その法的根拠は医師法第17条にあり、この条文は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています2。ここでいう「医業」とは、反復継続の意思をもって(つまり、商売として)医行為を行うことを指します。

これが具体的に何を意味するかというと、医師免許を持たない者が商業目的でピアス施術サービスを提供すること、例えばピアススタジオやアクセサリーショップなどがそれに該当しますが、これらは厳密には医師法に抵触する可能性があるということです5。友人同士や自分自身で穴を開ける行為は、それが「業」として行われない限り、個人の医師法違反には問われません。しかし、後述するように、衛生管理や緊急時対応の観点から、極めて高い健康上の危険性を伴う行為であることを理解しなければなりません4

2.2. 実践的な帰結:なぜ医療機関を選ばなければならないのか

ピアスが医行為であるという法的な定義は、皆様が施術場所を選ぶ際の最も重要な指針となります。安全性を確保するためには、医療機関を選択することが絶対的な前提条件となります。その理由は以下の通りです。

  • 合併症への即時対応: 医療機関では、万が一、施術中に過度の出血やアレルギー反応などの予期せぬ事態が発生した場合でも、医師がその場で迅速かつ適切な医学的処置を行うことができます3
  • 衛生管理の徹底: 医療機関は、感染症を防ぐための厳格な衛生基準を遵守しています。使用される器具はオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)などを用いて完全に滅菌されており、血液を介した感染症のリスクを最小限に抑えます25
  • 痛みを管理する麻酔の使用: 痛みを強く感じる部位への施術において、医療機関では局所麻酔を合法的に使用することができ、患者の苦痛を大幅に軽減することが可能です23。非医療機関では麻酔薬の使用は法律で認められていません。

非医療機関での施術は、滅菌が不十分な器具の使い回しによるB型肝炎、C型肝炎、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)といった深刻な血液媒介感染症の危険性や、トラブル発生時に適切な医学的処置を受けられないという、計り知れない危険性を内包しています25

2.3. 経済的なセーフティネット:合併症治療への健康保険適用

多くの方が懸念されるのが、万が一トラブルが起きた際の治療費でしょう。ここで非常に重要な情報があります。ピアス施術そのものは、美容目的と見なされるため公的医療保険の適用外(自費診療)です9。しかし、その施術が原因で医学的な問題(合併症)が発生した場合、その治療には原則として公的医療保険が適用されます

これは、読者の皆様にとって強力な経済的セーフティネットとなります。具体的な適用例を以下の表にまとめました。

表:ピアストラブルに対する健康保険の適用
トラブル・合併症 治療例 健康保険の適用 典拠
感染・炎症・化膿 抗生物質の処方、排膿処置、洗浄処置 適用 8
ケロイド・肥厚性瘢痕 ステロイド剤の局所注射、内服薬、外科的切除術 適用 7
ピアスの埋没 局所麻酔下での皮膚切開およびピアス除去 適用 7
耳垂裂(じすいれつ) ピアスによって耳たぶが裂けた状態を修復する外科手術 適用 6
金属アレルギー アレルギー検査、ステロイド外用薬の処方 適用 7

この章で示したように、ピアスに関する意思決定は「どのデザインにするか」という審美的な選択に留まりません。「どこで、どのように開けるか」という医学的・法的な選択こそが、皆様の健康と安全を左右するのです。そして、日本には、その選択を支える公的な制度が存在することを、ぜひ覚えておいてください。

第3章:普遍的リスク – 全てのピアスに共通する医学的合併症

ピアスは、体のどの部位に行うかに関わらず、共通の医学的リスクを伴います。ここでは、国際的な医療機関の見解や研究報告に基づき、主要な合併症を体系的に解説します。

3.1. 感染症:局所から生命を脅かすものまで

局所感染: 最も一般的な合併症です13。症状には、穿孔部位周辺の発赤、持続的な痛み、腫れ、黄色や緑色がかった膿の排出などがあります。主な原因菌は黄色ブドウ球菌などです26

軟骨感染症(軟骨膜炎): 耳の軟骨部(アウターコンク、ヘリックスなど)へのピアスは特に注意が必要です。軟骨は血流が乏しいため、一度感染すると治癒が遅れ、抗生物質が届きにくく、重症化しやすい特徴があります。治療が遅れると、軟骨が変形してしまう可能性もあります16

全身性感染症: 稀ではありますが、生命を脅かす可能性のある重篤な状態です。汚染された器具を使用した場合、B型肝炎、C型肝炎、破傷風、さらにはHIVといった血液媒介性の疾患に感染する危険性があります13。また、穿孔部位の細菌が血流に乗って全身に広がり、心臓の内膜に感染する心内膜炎や、脳に膿瘍を形成する脳膿瘍といった致死的な合併症を引き起こした例も医学的に報告されています12

3.2. アレルギー反応:ニッケル問題

ピアスの材質によっては、アレルギー性接触皮膚炎、いわゆる「金属アレルギー」を引き起こすことがあります27。症状は、かゆみ、発赤、湿疹、ただれなどです。最も一般的な原因物質はニッケルであり、安価な合金に含まれていることが多いです13。ここで特筆すべきは、徳島大学の研究により、日本国内でのピアス人気の高まりと金属アレルギー患者の増加との間に統計的な関連性が示唆されている点です14。これは、ピアスがアレルギー発症の引き金となりうることを、国内のデータが裏付けていることを意味します。アレルギー反応を避けるためには、サージカルステンレス(医療用ステンレス)、チタン、ニオブ、または14金以上のゴールドといった、アレルギーを引き起こしにくい素材でできたピアスを選択することが強く推奨されます16

3.3. 瘢痕形成異常:永続的な傷跡

皮膚の傷が治癒する過程で、異常に盛り上がった傷跡(瘢痕)が残ることがあります。

  • 肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん): 赤く盛り上がった傷跡で、元の傷の範囲内に留まります。
  • ケロイド: 傷の範囲を越えて、周囲の正常な皮膚にまで赤く硬い盛り上がりが広がっていく特徴があります。かゆみや痛みを伴うこともあります。

英国皮膚科医協会(BAD)によると、耳たぶや胸、肩などはケロイドの好発部位であり、過去にケロイドができたことがある、あるいは家族にケロイド体質の人がいる場合は、ピアスを開けること自体を慎重に検討すべきであると勧告しています30

3.4. 物理的損傷とその他の問題

  • 裂傷・外傷: ピアスが衣服やタオルなどに引っかかり、皮膚が引き裂かれてしまう事故は少なくありません。特に耳たぶが完全に裂けてしまう「耳垂裂」は、外科的な修復手術が必要となります13
  • 移動・排除: 身体がピアスを異物と認識し、徐々に体外へ押し出そうとする現象です。特に、皮膚の表面をつまんで開けるサーフェイスピアッシングで起こりやすいとされています28
  • 埋没: ピアスのキャッチ(留め具)などが皮膚の下に完全に埋もれてしまう状態です。自然に排出されることは稀で、多くの場合、局所麻酔下での切開による除去が必要となります31

第4章:専門的分析 – 男性性器ピアスの種類と重篤なリスク

性器ピアスは、他の部位へのピアスとは質的に異なる、より深刻で専門的なリスクを伴います。ここでは、代表的なピアスの種類を解説するとともに、泌尿器科領域の医学論文で報告されている重篤な合併症について、客観的かつ冷静に分析します。

4.1. 代表的なピアスの種類と特徴

男性の性器ピアスには様々な種類が存在します。以下の表は、代表的なピアスの穿孔部位、平均的な治癒期間、そして特有のリスクや特徴をまとめたものです。これは複数の情報源からのデータを統合し、読者の皆様が全体像を把握しやすくするために作成されました119

表:代表的な男性性器ピアスの種類とリスク
ピアス名 穿孔部位 平均的な治癒期間 主なリスク・特徴 典拠
プリンス・アルバート 尿道口から亀頭下部(陰茎小帯の脇)へ貫通 4~8週間 最も一般的。排尿時に尿が飛び散り、座って排尿する必要が生じることが多い。尿道への影響。 1
フレナム 陰茎小帯(亀頭の裏側の筋) 2~6週間 比較的治癒が早い。複数連ねる「フレナムラダー」も人気。 1
アパドラビア 亀頭を縦に(上から下へ)貫通。通常、尿道を通る。 4~9ヶ月以上 出血量が多くなる可能性がある。治癒期間が非常に長い。性的刺激が強いとされる。 1
アンパラン 亀頭を水平に(左右に)貫通。通常、尿道を通る。 4~9ヶ月以上 アパドラビアと同様、出血リスクと長い治癒期間が伴う。 19
ハファダ 陰嚢の皮膚 2~4ヶ月 比較的危険性は低いとされるが、皮膚の移動(マイグレーション)が起こりやすい。 19
ギーシュ 会陰部(陰嚢と肛門の間) 6~9ヶ月 座る際に圧迫され、不快感や排除の原因となりやすい。 19

4.2. 構造的合併症:永久的な機能障害のリスク

性器ピアスのリスクは、単なる皮膚トラブルに留まりません。泌尿器や生殖器の構造そのものに、不可逆的なダメージを与える可能性があります。

  • 出血: 特に陰茎亀頭や陰茎海綿体を貫通するアパドラビアやアンパランといったピアスは、血管が豊富な組織を傷つけるため、施術時の出血量が多くなる可能性があります1
  • 排尿に関する問題: これは非常に一般的かつ重大な合併症です。
    • 尿線の変化: プリンス・アルバートを装着した多くの男性が、尿の出口が二つになることで尿線が分かれ、立って排尿することが困難になると報告しています1
    • 尿道瘻(にょうどうろう): ピアスホールが原因で、本来の尿道と体表との間に異常な交通路(瘻孔)が形成されてしまう状態です。海外の症例報告では、ペニスピアスが後天的な尿道下裂(尿道が陰茎の途中に開口する先天異常に似た状態)を引き起こしたケースが報告されています10。ピアスによる瘢痕組織が尿道の脆弱性を生み、瘻孔形成の一因となると指摘されています11
    • 尿道狭窄(にょうどうきょうさく): ピアスによる慢性的な刺激や感染が治癒する過程で形成された瘢痕組織が、尿道を狭めてしまう状態です。これにより、尿の勢いが弱まる、排尿に時間がかかる、残尿感といった症状が現れ、重症化すると尿が全く出なくなる「尿閉」に至ることもあります11
  • その他の重篤なリスク: 包皮がピアスに引っかかり元に戻らなくなる嵌頓包茎(かんとんほうけい)1、異常な勃起が持続する持続勃起症(プリアピズム)1、そして神経や血管の損傷による勃起不全(ED)につながる可能性も医学的に指摘されています11

4.3. 感染性合併症:皮膚表面を越えて

性器周辺は、湿度が高く、細菌が繁殖しやすい環境です。そのため、局所感染が重症化しやすい傾向にあります。症例報告レベルでは、会陰部の進行性壊死性筋膜炎である「フルニエ壊疽」という、極めて致死率の高い感染症や、前立腺炎、精巣上体炎といった、より深部への感染拡大も報告されています120
また、性感染症(STI)のリスクについても考慮が必要です。治癒過程にあるピアスホールは、皮膚のバリア機能が破綻した開放創であり、論理的には性行為によるウイルスや細菌の侵入・伝播のリスクを高める可能性があります18

4.4. 機能およびパートナー関連の合併症

  • 性機能への影響: 神経の損傷により、性的な感覚が変化(低下または過敏)する可能性があります2820。また、射精障害(遅漏など)との関連も示唆されています18
  • パートナーへのリスク: 性交時にピアスがコンドームを破損させたり、パートナーの口腔内、膣、直腸の粘膜を傷つけたりする危険性が報告されています11

結論として、耳や鼻のピアスが主に審美的な問題(瘢痕)や比較的管理しやすい局所感染をリスクの中心とするのに対し、性器ピアスは排尿機能、性機能といった人間の根源的な生命活動に、永続的かつ回復困難な機能障害をもたらす危険性を伴います。これは単なる程度の差ではなく、リスクの「種類」が根本的に異なるということを、医学的根拠をもってご理解いただく必要があります。

第5章:究極の安全ガイド – 施術者選びからアフターケアまで

これまでの章で解説したリスクを理解した上で、なおピアスを希望する方のために、安全を確保するための具体的な行動指針をステップ・バイ・ステップで示します。これは、皆様が知識を実践に移すための、最も重要なガイドです。

5.1. ステップ1:日本における施術者の選択

第2章の結論を、ここで再度強調します。日本国内において、安全かつ合法的に、専門的な水準でピアス施術を受けるための唯一の選択肢は、医師免許を持つ医師が在籍する、認可された医療機関(皮膚科、形成外科、美容外科など)です。これは議論の余地のない、皆様の健康を守るための絶対的な原則です。

5.2. ステップ2:医療の質を確認する(国際基準をベンチマークに)

医療機関であればどこでも同じというわけではありません。患者として、情報に基づいた選択をする権利があります。国際的な専門家団体である「Association of Professional Piercers (APP)」が定める衛生基準15は、皆様が医療機関の質を見分けるための優れたチェックリストとなります。カウンセリングの際などに、以下の点を確認することをお勧めします。

  • □ 衛生管理の基本: 施術者は、各工程で適切に手指を洗浄し、処置ごとに新しい使い捨ての医療用手袋を着用していますか13
  • □ 器具の滅菌: 施術に使用する全ての器具(鉗子など)は、個別に滅菌パックされており、施術の直前に開封されていますか? 院内にオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)が設置され、適切に稼働しているかを確認しましょう。ピアスガン(穿孔用の銃のような器具)は、構造上、内部まで完全に滅菌することが不可能であり、組織へのダメージも大きいため、医療機関では通常使用されません13
  • □ 針の単回使用: 穿孔に使用する針は、新品で、滅菌済みのものを単回使用し、施術後は直ちに医療用廃棄物容器に廃棄されていますか13
  • □ ジュエリーの品質: ファーストピアスとして装着するジュエリーは、滅菌済みの状態で提供され、チタンやサージカルステンレスといった、アレルギー反応のリスクが極めて低い高品質な素材ですか13

5.3. ステップ3:徹底したアフターケア

ピアスの治癒過程は、施術そのものと同じくらい重要です。メイヨー・クリニックなどの権威ある医療機関が推奨するアフターケアを遵守してください13

  1. 洗浄: 1日に1~2回、医療機関から指示された方法(多くは創傷洗浄用の滅菌済み生理食塩水か、低刺激性の石鹸と流水)で優しく洗浄します。消毒液(過酸化水素水やアルコールなど)は、治癒に必要な正常な細胞まで傷つけてしまうため、絶対に使用しないでください。
  2. 接触の制限: ピアスホールに触れる前には、必ず石鹸で手指を徹底的に洗浄してください。洗浄時以外に、不必要にジュエリーを動かしたり、回したり、交換したりしないでください。
  3. 清潔な環境の維持: 治癒期間中は、プール、温泉、ジャグジー、海、川、湖など、不特定多数の人が利用する水域に入ることは避けてください。細菌感染の温床となります。
  4. 忍耐: 治癒が完全に完了するまで、ファーストピアスを外さないでください。治癒期間は部位によって異なり、数週間から数ヶ月、性器ピアスでは1年以上かかる場合もあります1。見た目が治っているように見えても、内部の組織はまだ脆弱です。

5.4. ステップ4:危険信号を知る – 直ちに医師の診察を受けるべき時

以下の症状が一つでも現れた場合は、自己判断せず、直ちに施術を受けた医療機関または最寄りの皮膚科・形成外科を受診してください。

  • 穿孔部位から周囲に広がる著しい発赤、熱感、または赤い筋が出現した。
  • 黄色や緑色がかった、あるいは悪臭を放つ濃厚な分泌物(膿)が続く。
  • 原因不明の発熱、悪寒、全身の倦怠感など、全身の不調を感じる。
  • 過度の、または止まらない出血や、我慢できないほどの強い痛みが続く。

早期の医療介入が、重篤な合併症を防ぐ鍵となります。

結論

この記事を通じて、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が最もお伝えしたかったことは、ピアスを装着するという決定は、単なるファッションの選択ではなく、ご自身の身体に対する重大な医学的な意思決定である、ということです。美的欲求や自己表現の自由は尊重されるべきですが、それは正確な情報に基づく安全の確保という土台の上で初めて成り立つものです。本稿で詳述したように、ピアスには普遍的なリスクと、部位特有の深刻なリスクが存在します。特に男性の性器ピアスは、排尿や性機能といった根源的な身体機能に、永続的な影響を及ぼす可能性があります。

幸いなことに、日本には、皆様が安全を確保するための明確な道筋があります。それは、ピアスを「医行為」と正しく認識し、施術の場所として、衛生管理と緊急時対応能力を備えた医療機関を選択することです。そして、万が一合併症が発生した際には、公的医療保険というセーフティネットが存在することも、大きな安心材料となるでしょう。この記事の目的は、ピアスを禁止することではありません。むしろ、皆様が十分な情報に基づいた同意(インフォームド・コンセント)を形成し、知識という武器を持って、ご自身の身体と健康を主体的に守ることを後押しすることにあります。安全への最短経路は、医療専門家をパートナーとし、希望するピアスの特有のリスクを正確に理解し、適切なアフターケアを徹底することに尽きます。

よくある質問

ピアスの痛みはどのくらいですか?

痛みの感じ方には個人差が大きく、また穿孔する部位によっても全く異なります。一般的に、皮膚が薄く神経が少ない耳たぶなどは痛みが少ないとされますが、軟骨部や性器周辺は特に敏感な部位です。医療機関での施術の大きな利点の一つは、必要に応じて局所麻酔(注射またはクリーム)を使用できることであり、これにより施術中の痛みを大幅に、あるいはほぼ完全に取り除くことが可能です23

性器ピアスを開けた後、性行為はいつから可能ですか?

感染、裂傷、治癒の遅延といったリスクを防ぐため、ピアスホールが完全に治癒するまで性行為(オーラルセックスを含む全ての性的接触)は避ける必要があります。治癒期間はピアスの種類や個人の治癒能力によって大きく異なり、数週間から数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあります18。「治ったように見える」段階でも内部はまだ脆弱であるため、自己判断せず、施術を受けた医師の指示に従うことが極めて重要です。

ピアスを開けると献血はできなくなりますか?

はい、一定期間献血ができなくなります。日本赤十字社の基準では、医療機関または使い捨て器具を使用するピアススタジオで穴を開けた場合、最低6ヶ月間は献血ができません。これは、B型肝炎などのウイルス感染の潜伏期間を考慮した安全措置です。ただし、性器ピアスのように粘膜を貫通する場合、安全上の理由から献血が永久にできなくなる可能性があります。詳細は献血会場の問診医にご確認ください18

ピアスをしたままMRI検査や手術は受けられますか?

いいえ、原則として全ての金属製ジュエリーは外す必要があります。MRI検査では、強力な磁場によって金属が発熱して熱傷(やけど)を引き起こしたり、画像が乱れたり、ピアスが体内から引き抜かれたりする危険性があります。手術の際には、電気メスを使用した場合にピアスが通電路となり、重度の熱傷を引き起こす原因となるため、必ず外さなければなりません11。治癒していないピアスホールがある場合は、必ず事前に医師や検査技師に申し出てください。

ピアスが感染したようですが、病院に行くのが怖いです。どうすればいいですか?

恐怖や恥ずかしさを感じるお気持ちは理解できますが、直ちに医師の診察を受けることがご自身の健康を守るために絶対的に必要です。自己判断で市販薬を使用したり、ジュエリーを外したりすることは、症状を悪化させる危険性があります。特に、膿が出ている状態でジュエリーを外すと、ピアスホールの表面だけが閉じてしまい、感染が皮膚の内部に閉じ込められて膿瘍(のうよう)を形成し、より大掛かりな治療が必要になることがあります。皮膚科や形成外科での早期治療は非常に効果的であり、前述の通り、その治療費には健康保険が適用される可能性が高いです8。勇気を出して専門家にご相談ください。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医療アドバイスを構成するものではありません。健康上の懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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