ぐっすり眠れる食材と眠りを妨げる食材
睡眠ケア

ぐっすり眠れる食材と眠りを妨げる食材

はじめに

眠りにくい夜が続くと、体の疲労感や集中力の低下、免疫力の弱体化など、幅広い健康上の不調につながる可能性があります。日本でも、不眠症や睡眠不足は非常に一般的な問題であり、とくに都市部に住む人々の忙しい生活リズムやストレスが大きな要因として挙げられます。実際、多くの方が十分な睡眠を確保できず、日中の活動に影響を及ぼしているのが現状です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

睡眠の質を向上させる方法として、生活習慣の見直しや睡眠環境の整備などがよく言及されますが、その中でも食生活に注目が集まっています。日々口にする食品が私たちの体内リズムやホルモンバランスに影響を与えることは多くの研究で示唆されており、夜にどのような食品を選ぶかで睡眠の質が大きく左右される可能性があります。本記事では、眠りを助ける食品睡眠を妨げる可能性のある食品について、専門的な知見をもとに詳しくご紹介します。

特に、「夜にどのような食材を摂取するとリラックスして眠りにつきやすいのか」「逆に避けたほうがよい食べ物は何か」について具体的に見ていきましょう。食事は毎日の生活の基盤であり、良質な睡眠を得るうえで重要なカギとなります。まずは、眠りを助ける食品に焦点を当て、その栄養学的背景や役立て方を詳しく解説します。

専門家への相談

ここで取り上げる情報は、国内外の健康・栄養学に関する文献や従来の研究をもとにまとめたものです。しかし、個々の体質や生活習慣、基礎疾患の有無などによって、最適な食事法や睡眠改善策は異なります。そのため、特定の症状や悩みがある場合は、医師や管理栄養士、薬剤師といった専門家に相談することが推奨されます。医療機関や専門家のアドバイスと併用することで、より効果的かつ安全な睡眠改善が期待できるでしょう。

眠りを助ける食品

なぜ特定の食品が眠りを促し、質のよい眠りをサポートするのか。その答えは主に、食品に含まれるメラトニントリプトファン、あるいはマグネシウムカルシウムといった栄養素の働きにあります。これらの成分は、睡眠ホルモンの分泌や神経のリラックスに寄与するため、意識して摂取することで眠りの質を高める可能性があるのです。以下に、夜のリラックスをサポートする食品とその具体的な取り入れ方を詳しく解説します。

  • バナナ
    バナナはマグネシウムカリウムが豊富で、筋肉をリラックスさせ、神経を落ち着かせる働きがあります。また、ビタミンB6が体内のトリプトファンをセロトニンに変換する過程をサポートし、自然なリラックス感を促すと考えられています。特に、夕方にウォーキングや軽い運動をした後にバナナを1本食べる習慣をつけると、疲労回復とリラクゼーションが同時に得られやすくなり、心地よい眠りへとつながります。
  • ターキー
    アメリカのサンクスギビングデーでは「ターキーを食べると眠くなる」という話が知られていますが、これはターキーに含まれるトリプトファンがセロトニンやメラトニンに変化して、リラックスを誘導するためといわれています。日常の食事では鶏肉などでも代用できますが、夜に少量だけ摂取することで睡眠の質が高まる可能性があります。例として、夕食に鶏肉のシンプルなグリルを取り入れるだけでも、消化の負担を最小限にしつつリラックス効果をサポートできます。
  • チェリー
    チェリーには天然のメラトニンが多く含まれており、睡眠リズムを整える働きが期待できます。日常的にチェリーを摂取すると、入眠がスムーズになったり、夜中の覚醒が減少したりする可能性があると指摘されています。特に、夜寝る前にチェリージュースをコップ一杯分飲む方法は、忙しい人でも続けやすく、メラトニンの補給手段として有用です。
  • プルーン
    ビタミンB6カルシウムマグネシウムが豊富なプルーンは、メラトニンの生成を助ける成分をまんべんなく含んでいます。寝る前に数個のプルーンを食べることで、自然なリラックス効果が得られ、深い眠りをサポートします。さらに、ヨーグルトなどの発酵食品と組み合わせると消化が良くなり、相乗的に吸収率が高まります。
  • イチジク
    カリウムマグネシウムカルシウムを豊富に含むイチジクは、血行を改善し、筋肉の緊張を和らげることでリラックスをもたらす可能性があります。夕食後のデザートとしてイチジクを取り入れると、甘みとともに心の落ち着きを得やすくなり、スムーズな眠りに移行しやすくなります。
  • チーズスティック
    小腹が空いたときの夜食として、チーズスティックは手軽かつ栄養バランスにも優れています。特に全粒粉のクラッカーと組み合わせると、たんぱく質と炭水化物がほどよく摂取でき、血糖値の急激な変動を抑えられるため、自然な眠気を誘いやすくなります。
  • ダークチョコレート
    ダークチョコレートにはセロトニンが多く含まれており、ストレス軽減や精神的なリラックスに役立つと考えられています。ただし、少量ながらカフェインも含むため、過度の摂取は逆効果になることがあります。夜に楽しむ場合は、小さな一片にとどめておくことがポイントです。
  • ハーブティー
    カモミールティージンジャーティーなどのハーブティーは神経を落ち着かせ、リラックスを促すことで良質な睡眠につなげてくれます。特にカモミールは古くから睡眠のサポートに用いられてきた歴史があり、ぬるめのお湯で抽出してゆっくり飲むと、体が温まり、その後の体温低下で自然に眠りへと誘われます。
  • アーモンド
    アーモンドにはトリプトファンとマグネシウムが含まれており、筋肉の緊張緩和や心拍数の安定に寄与します。就寝30分ほど前に一握りのアーモンドを食べるだけでも、心身の緊張がほどけやすくなるといわれています。加えて不飽和脂肪酸が豊富なため、日常的に摂取することで心臓血管の健康にも貢献すると考えられています。
  • ナッツバター
    アーモンドバターピーナッツバターなどは、全粒粉パンや全粒粉クラッカーに塗ることで、炭水化物と良質なたんぱく質・脂質を同時に摂取できます。夜食として少量取り入れると、血糖値の急激な上下を防ぎ、深夜の空腹を抑えて安定した睡眠を得やすくなります。
  • スイカやカンタロープメロン
    これらの果物は水分が非常に豊富で、夏の暑い夜に摂取すると体内の水分バランスを保ちやすく、睡眠の質をサポートするといわれています。特に就寝前の軽いデザート代わりに適しており、喉の渇きや寝苦しさを緩和するのに役立ちます。
  • サツマイモトースト
    カリウムマグネシウムを含むサツマイモをトースト状にして食べるアレンジは、夜食としても人気が高まっています。消化に適度な時間がかかり、エネルギーを持続的に供給するため、夜中の空腹感による目覚めを減らす効果が期待されます。ピーナッツバターを薄く塗れば、たんぱく質や脂質も補えて満足感が得やすくなるでしょう。
  • 全粒粉製品やオートミール
    インシュリンの生産を促し、またメラトニンを多く含むことで、自然な眠気を誘発すると考えられています。オートミールを温めたミルクと混ぜ、ハチミツや果物を少量加えると、程よい甘さと体温の上昇が相まってリラックスをサポートします。
  • ピスタチオ
    ビタミンB6マグネシウムプロテインが豊富で、質の高い睡眠をうながす栄養バランスが整っています。しかしカロリーが高いため、一度に大量に食べるのは避けましょう。寝る前に数粒食べるだけでも十分な栄養補給ができ、身体と神経を落ち着かせる効果が期待されます。

これらの食品はいずれも、生体リズムや神経系に良い影響を与える成分を含んでいます。食生活に少し工夫を取り入れることで、日常の眠りの質を底上げし、深く安定した睡眠を実感することができるでしょう。実際、最近の研究でも、特定の栄養素を多く含む食品を継続的に摂取することが睡眠の質向上に寄与する可能性が報告されています。たとえば2022年にNutrients誌に掲載された研究(Cao, Wu, Yan, 2022, doi:10.3390/nu14051023)では、中国の成人を対象にした横断分析で、野菜や果物を含むバランスのよい食事を継続するほど睡眠の質が向上する傾向がみられたと述べられています。このように、栄養バランスを意識した食習慣が睡眠にも大きく影響する可能性があるのです。

睡眠を妨げる食品

一方で、睡眠を妨害するリスクが指摘される食品も存在します。夜遅くに摂取すると、消化器系や自律神経に負担がかかり、深い眠りを維持しにくくなることがあります。下記に挙げる食品は、特に就寝前には控えたほうが良いとされています。

  • オレンジジュース
    酸味が強いオレンジジュースは、胃酸逆流を引き起こしやすく、不快感によってスムーズな入眠を妨げる可能性があります。特に胃が敏感な方は、夜間のオレンジジュースは避けて、朝や昼のタイミングで飲むほうが望ましいです。
  • ミント
    ミントは爽やかなイメージがありますが、刺激作用によって神経を覚醒させる場合があります。ミント入りのガムやキャンディは就寝前に避けるほうが安全です。ミントティーも同様で、リフレッシュには優れていますが、遅い時間には交感神経を刺激することがあるため、良質な睡眠を損なう恐れがあります。
  • スパイシーフード
    カレーや辛味調味料を多用した料理は消化に時間がかかり、さらに胃酸逆流のリスクが高まります。スパイシーな成分が胃腸を刺激して、体温や心拍を上げるため、眠りに入りづらくなることがあります。夜遅くの食事には穏やかな味付けを心がけるとよいでしょう。
  • トマトベースのソース
    トマトには酸が含まれるため、夜間にトマトソースを使用したパスタやシチューなどを多量に摂取すると胃酸逆流を招くケースが報告されています。軽めのクリームソースや出汁を活用し、胃に優しい食材を選ぶ工夫が必要です。
  • カフェイン含有飲料
    コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、神経を興奮させ、入眠を難しくします。カフェインが体外へ排出されるには時間がかかるため、午後以降の摂取を控えるとともに、夜はハーブティーやノンカフェイン飲料に切り替えるのがおすすめです。
  • 高脂肪食
    チキンの皮やバーガー、加工肉など脂質の多い食品は、消化に大きな負担がかかります。夜遅くに摂ると、胃腸が休まる時間が確保できず、眠りの質を低下させる恐れがあります。夕食や夜食では、できるだけ低脂肪の食材(鶏むね肉、白身魚など)を選ぶと快適な睡眠を得やすくなるでしょう。

これらの食品は総じて胃酸逆流や刺激作用、交感神経を高める性質をもつと考えられており、夜間の摂取によってリラックス状態を損ないかねません。就寝前の数時間はこうした食品を避けることで、深い眠りを維持する助けとなります。2022年のBMC Geriatrics誌の研究(Song et al., 2022, doi:10.1186/s12877-022-03018-w)によると、脂質やスパイシーな食品の過剰摂取が睡眠構造に悪影響を及ぼす傾向がみられ、特に高齢者においては睡眠の質の低下が健康全般に大きな負担をもたらす可能性が指摘されています。若年層でも同様の報告が増えており、夜間の食事選びには世代を問わず配慮が必要といえるでしょう。

結論と提言

質の高い睡眠を得るためには、どのような食品を選ぶかが大きなウエイトを占めます。ここまで紹介したように、バナナやターキー、チェリーなどトリプトファンやメラトニンを含む食品は睡眠をサポートする可能性があり、プルーンやイチジクのようにミネラルが豊富な果物もまた心身のリラックスに寄与します。一方で、オレンジジュースやスパイシーフード、カフェイン含有飲料のように、胃酸逆流や神経刺激を促す食品は、深い眠りを妨げる要因となり得るため、特に夜間の摂取は控えるべきです。

日々の食生活において、これらのポイントを意識して食品を組み合わせるだけで、睡眠環境を大きく改善できる可能性があります。たとえば夕方に軽い運動を行い、リラックスを促す食品を少量取り入れ、刺激が強い食品は避ける、といったシンプルな習慣の積み重ねが良質な睡眠につながります。睡眠は心身の回復に欠かせない重要な時間であり、その質が高まることで日中のパフォーマンスや健康維持にも良い影響が及びます。ぜひ本記事の情報を日常に取り入れてみてください。

なお、個人差や体質、生活リズムによって効果の現れ方は異なります。慢性的な不眠や特定の病気がある方、サプリメントや薬を服用している方は、必ず専門家の意見を仰ぐようにしましょう。食品選びから睡眠改善につなげたいという方は、無理なく続けられる形で少しずつ実践するのがおすすめです。


  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスの代替を意図するものではありません。具体的な症状や対処法については、医師や管理栄養士など専門家にご相談ください。

参考文献

  • 17 Sneaky Foods That Make You Sleepy – アクセス日: 2019年6月25日
  • The 9 Best Foods to Eat Before Bed – アクセス日: 2019年6月25日
  • Which foods can help you sleep? – アクセス日: 2019年6月25日
  • Cao Y, Wu G, Yan L (2022) “Dietary Patterns and Sleep Quality among Chinese Adults: A Cross-Sectional Analysis,” Nutrients, 14(5):1023. doi:10.3390/nu14051023
  • Song J, Chen Y, Li X, et al. (2022) “Relationship between dietary patterns and sleep among middle-aged and older Chinese adults: a cross-sectional analysis,” BMC Geriatrics, 22(1):410. doi:10.1186/s12877-022-03018-w
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