本記事の科学的根拠
この記事は、引用元として明記された最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、それらが提示される医学的指導にどのように関連しているかを示したものです。
- 総務省、内閣府、文部科学省: 日本国内のスマートフォン普及率、利用時間、世代別の実態に関する統計データは、これらの政府機関が公表した公式報告書に基づいています7810。これにより、問題の規模と社会的背景を正確に把握しています。
- PubMed掲載の系統的レビューおよびメタアナリシス: スマートフォン過剰使用と、うつ病、不安、睡眠障害との関連性に関する記述は、複数の査読済み学術論文のデータを統合・分析した研究に基づいています11215。これにより、提示される健康リスクの科学的信頼性を担保しています。
- 久里浜医療センター: 日本におけるインターネット・ゲーム依存治療の第一人者である同センターの治療プログラムや専門家の見解は、専門的な治療法や家族向けの具体的な対応策に関する記述の根幹をなしています385461。これにより、日本の臨床現場に即した実用的な情報を提供しています。
- 認知行動療法(CBT)およびマインドフルネスに基づく介入(MBI)に関する研究: 記事で紹介する具体的な9つの克服戦略は、これらの確立された心理療法の原則に基づいています1726。各戦略がなぜ有効なのか、その心理学的メカニズムを解説することで、単なる「コツ」ではない、根拠に基づいた自己管理法を提示しています。
要点まとめ
- 日本の成人(20~50代)の74.3%が自身を「スマホ依存だと思う」と認識しており、特に若年層でその傾向が顕著です14。
- 科学的には「問題のあるスマートフォン使用(Problematic Smartphone Use – PSU)」と呼ばれ、うつ病のリスクを3.82倍、不安のリスクを4.81倍に高めるという強固な関連性が報告されています112。
- スマホ画面のブルーライトは睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑制し、寝つきの悪さや睡眠の質の低下を引き起こす主要な原因です1921。
- 「通知をオフにする」「利用時間を記録する」などの具体的な行動は、認知行動療法(CBT)に基づいた効果的な自己管理戦略です26。
- 自力での改善が困難な場合、久里浜医療センターのような専門医療機関での診断・治療が可能です61。依存症は意志の弱さではなく、専門的な支援を必要とする状態です。
あなたは「スマホ依存」? 問題の理解と解決策への第一歩
まず、現在地を正確に把握することが重要です。一般的に「スマホ依存」と呼ばれる状態は、医学・心理学の分野では「問題のあるスマートフォン使用(Problematic Smartphone Use、以下PSU)」や「ノモフォビア(Nomophobia、スマートフォンがないことへの恐怖)」といった専門用語で議論されています13。専門家が「依存症」という言葉を慎重に使うのは、これが単なる個人の意志の弱さの問題ではなく、精神医学的な診断基準や背景にある心理状態を考慮する必要がある複雑な問題だからです2。しかし、その呼称に関わらず、スマートフォンの使いすぎが日常生活に支障をきたしているなら、それは対処すべき重要な健康問題です。
日本の現状を見てみましょう。総務省の調査によれば、2023年時点でスマートフォンの世帯保有率は90%を超えています78。また、Job総研が2024年に行った調査では、20代から50代の働く成人の実に74.3%が「自分はスマホ依存だと思う」と回答しており、特に20代では80.4%にものぼります1314。これは、多くの人が自覚症状を持ちながらも、具体的な対策を取れずにいる現状を示唆しています。
セルフチェックリスト:あなたのスマホ利用は健全ですか?
以下の質問に「はい」がいくつ当てはまるか、正直に確認してみてください。これは正式な診断ではありませんが、ご自身の利用パターンを客観的に見つめる良い機会となります48。
- スマートフォンが手元にないと、強い不安や恐怖を感じる。
- 使用時間を減らそうと何度も試みたが、失敗に終わった。
- スマートフォンを使用していると、あっという間に時間が経ってしまう。
- 仕事や学業、大切な人間関係よりもスマートフォンを優先してしまうことがある。
- 手持ち無沙汰になると、無意識にスマートフォンを手に取って画面を確認してしまう。
- 夜、布団に入ってからも長時間スマートフォンを使い、寝不足気味だと感じる。
- 他人と一緒にいる時でさえ、頻繁にスマートフォンをチェックしてしまう。
- スマートフォンを使いすぎていることで、家族や友人から指摘されたことがある。
もしこれらの質問の多くに「はい」と答えたなら、あなたのスマートフォン利用は、生活の質を低下させる危険な領域に入っている可能性があります。しかし、悲観する必要はありません。問題を認識することが、解決への最も重要な第一歩です。
第一段階:科学的理解 なぜ私たちは画面から目が離せないのか?
効果的な対策を講じるためには、まずスマホが私たちの脳や身体にどのように作用しているのかを科学的に理解することが不可欠です。
心理的メカニズム:ドーパミン、FOMO、そして「SNS疲れ」
私たちがスマートフォン、特にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に強く惹きつけられる背景には、脳の報酬系が深く関わっています。通知が来るたび、新しい「いいね!」やコメントを受け取るたびに、脳内では快感物質であるドーパミンが少量放出されます25。この即時的な快感が強力な強化因子となり、「もっと見たい」「もっと反応が欲しい」という欲求を生み出し、無意識のうちにアプリを何度も開かせる行動のループを形成します。
さらに、「FOMO(Fear of Missing Out)」、すなわち「何かを見逃すことへの恐怖」も強力な動機付けとなります。重要な情報や友人たちの動向から取り残されることへの不安が、私たちを常にオンライン状態に留まらせようとします。
しかし、この常時接続の状態は、日本特有の心理現象である「SNS疲れ」も引き起こします27。これは、常に誰かと繋がっていなければならないというプレッシャー、メッセージに即座に返信しなければならないという義務感、他人の華やかな投稿と自分を比較することによる劣等感や嫉妬、そしてネガティブなニュースや論争に疲弊することなど、複合的なストレスによって生じる状態です。
生物学的メカニズム:ブルーライトと睡眠・身体への影響
PSUによる最も直接的で深刻な身体的影響の一つが睡眠障害です。スマートフォンの画面が発するブルーライト(青色光)は、特に夜間に浴びると、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの生成を強力に抑制します1922。メラトニンの分泌が妨げられると、寝つきが悪くなるだけでなく、体の概日リズム(サーカディアンリズム)が乱れ、睡眠の質そのものが低下します。その結果、日中の眠気、集中力の低下、そして長期的な健康問題へと繋がる可能性があります21。兵庫県は、この問題に対処するため、就寝1時間前にはスマートフォンなどの画面を見ないようにという具体的なガイドラインを提示しています24。
その他の身体的問題として、長時間不自然な姿勢で画面を覗き込むことによる首や肩の痛み(いわゆる「テキストネック」)、指や手首の腱鞘炎、そして近距離で画面を凝視し続けることによる近視の進行なども報告されています24。
精神的健康との複雑な関係
PSUと精神的な健康問題との関連は、数多くの研究で一貫して示されています。これは単なる相関関係ではなく、相互に影響を及ぼし合う「双方向の関係」である可能性が高いと考えられています17。
- うつ病(Depression): PSUとの関連が最も強く、一貫して報告されています。あるメタアナリシス(複数の研究を統合・分析する手法)では、スマートフォン依存の人はそうでない人に比べてうつ病になる危険性が3.82倍も高いことが示されました(オッズ比[OR] = 3.82)12。
- 不安(Anxiety): 同様に、不安との関連も非常に強力です。同じメタアナリシスでは、スマートフォン依存による不安のリスクが4.81倍に増加する(OR = 4.81)と結論づけています12。
- ストレス(Stress): PSUのレベルが高いほど、知覚されるストレスレベルも高くなることが示されています1。
この関係性は、一方ではスマホの使いすぎが睡眠不足や現実世界での社会的孤立、オンラインでの他者との比較によるストレスを引き起こし、うつや不安の引き金となる可能性を示唆します。他方では、もともと孤独感や社会的不安、抑うつ気分を抱えている人が、その苦痛から逃れるための対処メカニズムとしてスマートフォンにのめり込み、結果として悪循環に陥るという側面もあります17。どちらのケースであれ、PSUが精神的健康にとって重大な危険因子であることは間違いありません。
第二段階:自己支援 科学的根拠に基づく9つの克服戦略
問題を理解した次のステップは、具体的な行動を起こすことです。ここでは、単なる「生活のヒント」ではなく、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy – CBT)やマインドフルネスに基づく介入(Mindfulness-Based Interventions – MBI)といった、科学的に効果が実証されている心理学の原則に基づいた9つの戦略を紹介します。
戦略1:通知をオフにする【CBT:刺激コントロール】
SNS、ゲーム、ニュースアプリなど、緊急性の低いアプリケーションからのプッシュ通知をすべてオフに設定しましょう。これはCBTにおける「刺激コントロール」と呼ばれる基本的なテクニックです26。音やバナー表示といった外部からの刺激を意図的に遮断することで、脳が自動的に反応してしまう「刺激→反応」の連鎖を断ち切ります。受動的に反応させられるのではなく、自らが主体となって1日数回、決まった時間にアプリを確認する習慣をつけることで、注意力の主導権を取り戻すことができます37。
臨床ケースより:Aさん(16歳、女子高校生)
Aさんは、学業成績の低下とイライラを理由に母親に連れられて来院しました。1日に8時間以上をSNSに費やし、通知が確認できないと極度の不安を感じていました。カウンセリングを通じて、SNS上で完璧な自分を演じることへの強いプレッシャーと、友人への嫉妬心に苦しんでいることが明らかになりました。治療計画では、CBTの手法を用いて他者と比較する思考パターンに挑戦し、MBIを通じてオンラインでない時の不安に対処する方法を学びました52。
戦略2:物理的な距離を置く【CBT:刺激コントロール】
自宅内に「スマホフリーゾーン(例:寝室)」や「スマホフリータイム(例:食事中)」を明確に設定します。これは刺激コントロールのより強力な形です。特に睡眠の質を確保するため、就寝時はスマートフォンをベッドサイドではなく、リビングなど別の部屋で充電する習慣をつけましょう54。この物理的な距離が、無意識に手を伸ばしてしまう習慣的な行動との間に「考えるための時間」を生み出し、衝動的な使用を抑制するのに役立ちます。
戦略3:依存性の高いアプリを削除または隠す【CBT:刺激コントロール】
特定のアプリに時間を浪費していると自覚している場合、思い切ってそのアプリを1週間削除してみることを検討してください。これは最も直接的な刺激コントロールの方法です56。完全に削除することに抵抗がある場合は、アプリをホーム画面から移動させ、探しにくいフォルダの奥深くに配置するだけでも効果があります。目的は、無意識のタップ一回で起動できる手軽さをなくし、アプリの使用を「意図的な行動」にすることです。
戦略4:利用時間を客観的に記録・監視する【CBT:自己監視】
iOSの「スクリーンタイム」やAndroidの「Digital Wellbeing」といった標準機能を利用して、自分がどのアプリにどれだけの時間を費やしているかを正確に把握しましょう。「今日はSNSに5時間も使ってしまった」という客観的なデータに直面することは、CBTにおける「自己監視(セルフモニタリング)」と呼ばれる、行動変容の第一歩です49。これにより、漠然とした罪悪感が具体的な問題認識へと変わります。
戦略5:新しい趣味や楽しみを見つける【CBT:行動活性化】
スマートフォンに代わる、現実世界での楽しみを見つけ、積極的にスケジュールに組み込みましょう。これは「行動活性化」と呼ばれるCBTの重要な技法で、特に無気力感や抑うつ気分の改善に効果的です26。かつて好きだったこと、試してみたかったこと(散歩、読書、楽器演奏、スポーツなど)をリストアップし、次の週の予定に「重要なアポイントメント」として書き込んでください。目的は、空虚な時間を現実のポジティブな体験で満たし、仮想的な満足への依存度を低下させることです。
戦略6:マインドフルネスを実践する【MBI】
スマートフォンを手に取りたいという強い衝動を感じたとき、すぐに行動に移さず、一度立ち止まってみましょう。そして、ゆっくりと3回深呼吸をします。その衝動を、判断せずにただ観察します。それは、やがて強まり、そして静かに引いていく「波」のようなものであることに気づくでしょう。これがマインドフルネスの中核的な実践です17。研究によれば、この「衝動と行動の間にスペースを作る」練習は、自己制御能力を高め、衝動的な行動を減らすのに非常に効果的であることが示されています1841。
戦略7:利用の「目的」を明確にする【CBT:目標設定】
目的もなくなんとなくスマートフォンを手に取るのではなく、ロックを解除する前に「何のために使うのか」を自問自答する習慣をつけましょう。「仕事のメールを10分間チェックする」「Aさんからのメッセージに返信する」など、明確な目的を定めます。そして、その目的が達成されたら、すぐにアプリを閉じるか、画面をロックします。このテクニックは、受動的で習慣的な使用から、能動的で目的志向型の使用へと転換させるのに役立ちます49。
戦略8:睡眠衛生を徹底的に改善する【睡眠衛生と概日リズム調整】
就寝前の少なくとも1時間は、スマートフォンを含む全ての画面デバイスの使用を断つことを固く決意しましょう。前述の通り、ブルーライトは睡眠ホルモンであるメラトニンを抑制します21。その代わりとして、紙の本を読む、穏やかな音楽を聴く、瞑想するなど、リラックスできる活動を取り入れましょう。寝室を「睡眠と休息のためだけの神聖な場所」と位置づけ、テクノロジーを持ち込まない環境を作ることが重要です。
戦略9:現実世界での社会的つながりを強化する【社会的支援とCBT】
週に一度は、友人や家族と直接会う計画を立てましょう。現実世界での対面での交流は、オンラインコミュニケーションでは決して代替できない精神的な健康上の利益をもたらします26。有意義な社会的つながりは、孤独感を軽減し、PSUの根本的な要因の一つに対処するのに役立ちます。
第三段階:ガイド付き介入 いつ専門家の助けを求めるべきか?
自己支援の努力だけでは改善が難しい場合もあります。その場合は、次のステップに進むことを躊躇しないでください。
デジタルデトックスの功罪
一定期間、意図的にデジタルデバイスから離れる「デジタルデトックス」は、メディアでも頻繁に取り上げられます。これは自身の利用習慣への気づきを促し、短期的なストレス軽減に繋がる可能性があります3033。しかし、その効果は一貫しておらず、孤独感や退屈感を増大させるという報告もあります32。「自分の状態をリセットするための短期的な試み」と捉え、永続的な解決策ではないと理解することが重要です。
支援アプリの活用
利用時間の追跡やアプリの利用を物理的に制限する支援アプリも有効な選択肢です。日本のアプリストアで評価の高い「ActionDash」「Blockin」「Detox」などのアプリは、自己管理をサポートする強力なツールとなり得ます505158。
第四段階:専門家による援助 日本国内の相談先と治療法
以下の兆候が見られる場合は、専門家の助けを求めるべき時かもしれません。これは意志の弱さではなく、専門的な治療を必要とする医学的な状態である可能性を示唆しています。
専門家への相談を検討すべき警告サイン
- 自己管理の試みが何度も失敗に終わる46。
- 学業成績の著しい低下、留年、退学、あるいは仕事での重大なミスや解雇など、社会的機能に深刻な影響が出ている59。
- 抑うつ気分(何をしても楽しめない、絶望感)、強い不安、イライラが続くなど、明らかな精神症状が見られる60。
- スマートフォンの使用時間をめぐって家族と頻繁に衝突したり、使用時間について嘘をついたりする46。
日本のどこで助けを求められるか?
日本には、インターネット依存症の治療を専門とする信頼できる医療機関が存在します。
- 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター: 日本におけるインターネット・ゲーム依存治療のパイオニアであり、国内で最も包括的な治療プログラムを提供しています3861。治療は、臨床心理士による初回面接から始まり、医師による診断、そして個人カウンセリング、集団療法、治療キャンプ(SDiC)、さらには入院治療まで、個々の状態に合わせた多様な選択肢が用意されています52。専門家の指導のもと、生活リズムの再構築や現実世界でのコミュニケーションスキルを学びます。
- その他の専門医療機関: 久里浜医療センターの他、東京医科歯科大学(TMDU)46や東京都立松沢病院63など、大学病院や精神科専門病院でも専門外来が設けられています。お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談することも可能です。
専門医療機関では、CBTや家族療法、社会生活への復帰を支援するデイケアプログラムなど、より専門的な治療を受けることができます52。
特別セクション:GIGAスクール時代を乗り切る デジタル教育と健康のバランス
「GIGAスクール構想」により、多くの子どもたちが学習目的でタブレットやPCを使用するようになりました。これにより、多くの保護者が「学校では使用が推奨される一方で、専門家はその危険性を警告する」というジレンマに直面しています65。この課題に対し、久里浜医療センターは以下のような具体的なアドバイスを提供しています54。
- 明確なルール作り: 家庭内で「いつ」「どこで」「何時間まで」使うかという明確なルールを親子で話し合って決めます。
- フィルタリングの活用: 有害なサイトやアプリへのアクセスを制限するフィルタリングツールやペアレンタルコントロール機能を活用します。
- 共有スペースでの使用: 子ども部屋ではなく、リビングなど家族の目が届く共有スペースでの使用を促します。
- 家族全員で取り組む: 最も重要なのは、子どもだけにルールを強いるのではなく、保護者自身も模範を示し、家族全員でルールを守る姿勢を見せることです。
結論
スマートフォン依存、すなわちPSUは、個人の意志の力だけで解決するのが難しい、現代社会の複雑な健康問題です。その背景には、脳の報酬系や睡眠サイクルに影響を与える強力な心理的・生物学的メカニズムが存在します。しかし、本記事で解説したように、そのメカニズムを理解し、認知行動療法やマインドフルネスといった科学的根拠に基づく戦略を実践することで、状況を大きく改善することが可能です。重要なのは、スマートフォンを完全に排除することではなく、受動的で依存的な関係から、主体的で、目的意識を持った、健全な関係へと移行することです。もし自力でのコントロールが困難だと感じたなら、決して一人で抱え込まず、久里浜医療センターのような専門機関に助けを求めることを躊躇しないでください。それは弱さの証ではなく、自身の健康に対して責任ある一歩を踏み出す、賢明な選択なのです。
よくある質問
「スマホ依存」は正式な病名ですか?
スマホの使いすぎで最も深刻な健康上の危険性は何ですか?
通知をオフにしましたが、効果がありません。次に何をすべきですか?
通知オフは「刺激コントロール」の第一歩ですが、それだけでは不十分な場合も多いです。次のステップとして、より構造的な認知行動療法(CBT)のアプローチを試すことをお勧めします。例えば、本記事で紹介した「利用時間を客観的に記録する(自己監視)」、「新しい趣味をスケジュールに入れる(行動活性化)」、「利用目的を明確にする(目標設定)」などを組み合わせて実践してみてください26。それでも改善が見られない場合は、衝動的な使用の背景に、対処すべき別の心理的問題(孤独感、ストレス、不安など)が隠れている可能性があります。その際は、専門の医療機関やカウンセラーに相談することを強く推奨します。
日本国内で専門的な治療はどこで受けられますか?
GIGAスクールで子供のスマホ・タブレット使用が必須です。どう対処すればよいですか?
これは多くの保護者が抱える現代的な悩みです。重要なのは「禁止」ではなく「管理」です。久里浜医療センターなどが推奨する方法として、まず「夜9時以降は使わない」「自分の部屋には持ち込まず、リビングで使う」といった、時間と場所に関する明確なルールを親子で話し合って決めることが挙げられます54。また、フィルタリングやペアレンタルコントロール機能を活用し、有害なコンテンツから子供を守ることも重要です。そして何より、保護者自身がスマートフォンとの健全な付き合い方を見せ、家族全員でルールに取り組む姿勢が、子供の行動に最も良い影響を与えます。
参考文献
- Elhai JD, Dvorak RD, Levine JC, Hall BJ. Problematic smartphone use: A conceptual overview and systematic review of relations with anxiety and depression psychopathology. J Affect Disord. 2017;207:251-259. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27736736/
- De-Sola J, Talledo H, Rodríguez de Fonseca F, Rubio G. The impact of problematic smartphone use on children’s and adolescents’ quality of life: A systematic review. J Pers Med. 2021;11(7):643. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8246779/
- Dasgupta P, Bhattacherjee S, Dasgupta S, et al. Study Of Nomophobia Among Smartphone Users in Urban Health Training Centre. Healthcare Bulletin. 2017;3(2):1-5. Available from: https://healthcare-bulletin.co.uk/article/study-of-nomophobia-among-smartphone-users-in-urban-health-training-centre-2759/
- Yildirim C, Correia AP. Nomophobia: An Individual’s Growing Fear of Being without a Smartphone—A Systematic Literature Review. Information. 2021;12(4):131. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7013598/
- León-Mejía A, Gutiérrez-Ortega M, Serrano-Guzmán M, et al. The Emerging Phenomenon of Nomophobia in Young Adults: A Systematic Review Study. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(20):10773. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8519611/
- 樋口進. スマートフォン依存の現状と対策を考える:教育,医療,産業の観点から. 心理学評論. 2017;60(2):209-227. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1390853266468995072
- 庄司昌彦. 情報通信白書とスマホ世帯普及率のお話. note. 2023. Available from: https://note.com/mshouji/n/n23b91ddd7d30
- 総務省. 令和5年通信利用動向調査の結果. 2024. Available from: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/240607_1.pdf
- 豊中市立図書館. ICTサービスの利用動向. Available from: https://www.lib.toyonaka.osaka.jp/5bf3042ae76583bbe6a675b455597c07.pdf
- こども家庭庁. 内閣府「令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査結果(速報)」公表. 2023. Available from: https://school-security.jp/news/2023/03/r4_internetresearch/
- 国民生活センター. コロナ禍で広がるネット依存、ゲーム依存. 国民生活. 2023;126:12-13. Available from: https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202301_04.pdf
- Lee Y, Lee D, Kim Y. Association of smartphone and internet addiction with mental health during the COVID-19 pandemic: A systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2024;350:110-120. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39797615/
- パーソルキャリア株式会社. Job総研による『2022年 スマホ依存の実態調査』を実施 8割がスマホ依存に該当 コロナの孤独に使用時間1.5時間増. PR TIMES. 2022. Available from: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000116.000013597.html
- Web担当者Forum. スマホなしでは生きられない? 現代人の75%が「スマホ依存症」. 2024. Available from: https://webtan.impress.co.jp/n/2024/12/09/48270
- Sohn SY, Krasnoff L, Rees P, et al. Prevalence of problematic smartphone usage and associated mental health outcomes amongst children and young people: a systematic review, meta-analysis and GRADE of the evidence. Lancet Child Adolesc Health. 2021;5(12):873-882. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31779637/
- Ching SM, Yee A, Ramachandran V, et al. Prevalence of smartphone addiction among Asian medical students: A meta-analysis of multinational observational studies. PLoS One. 2022;17(4):e0266293. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35422151/
- Wang Z, Xin Y, Li D, et al. Mindfulness-based cognitive program as a potential intervention for managing smartphone addiction and resilience in adolescents: a pilot evaluation. J Child Adolesc Subst Abuse. 2025. Available from: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/21642850.2025.2508833?src=exp-la
- Wang X, Liu Z, He D. Intervention Effect of Mindfulness-Based Mental Health Education Therapy on Adolescents Mobile Phone Addiction and Cognitive Tendency. Behav Sci (Basel). 2024;14(3):186. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10903318/
- 綾木良国. 就寝前2時間のブルーライトカット眼鏡の着用で 睡眠の質が改善される!. 2016. Available from: http://blue-light-biz.check-xserver.jp/wp4/wp-content/uploads/2016/01/ayaki_bluelight.pdf
- 梶村尚史, 三角康平. 就寝前の青色光曚露が睡眠と代謝に及ぼす影響. CORE. 2017. Available from: https://core.ac.uk/download/pdf/56660608.pdf
- Philips. The effect of light on our sleep / wake cycle. Available from: https://images.philips.com/is/content/PhilipsConsumer/PDFDownloads/Japan/ODLI20170630_001-UPD-ja_JP-Dailysleep-wakecycles.pdf
- 戸井正幸. ブルーライトとメラトニン. 日本生理学雑誌. 2014;76(3):102-103. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1521980706035181184
- KAKEN. 19K12753 研究成果報告書. Available from: https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19K12753/19K12753seika.pdf
- 兵庫県. 子どもの健康に配慮した適切なスマートフォン等の利用に関するガイドライン. Available from: https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk17/re-guidelines.html
- MDPI Blog. Having a Digital Detox is Essential for our Health – Here’s Why. 2025. Available from: https://blog.mdpi.com/2025/04/17/digital-detox-essential-for-health/
- タウンワークマガジン. 【精神科医に聞く】スマホ依存をやめたい…ダラダラ見続ける生活から抜け出す方法. 2022. Available from: https://townwork.net/magazine/life/133457/
- 南山大学. 「SNS疲れ」につながるネガティブ経験の実態. Available from: https://rci.nanzan-u.ac.jp/ninkan/publish/item/16_03_01.pdf
- 京都女子大学. 能動的・受動的 SNS 疲れと無気力感の関連について. Available from: http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/3697/1/0080_019_026.pdf
- 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント. Z世代のスマホに関する意識調査. PR TIMES. 2023. Available from: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000033586.html
- Vanden Abeele M, Halfmann A, Lee EWJ. Digital Detox as a Means to Enhance Eudaimonic Well-Being. Front Hum Dyn. 2025. Available from: https://www.frontiersin.org/journals/human-dynamics/articles/10.3389/fhumd.2025.1572587/abstract
- Cureus. A Comprehensive Review on Digital Detox: A Newer Health and Wellness Trend in the Current Era. 2024. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11109987/
- ResearchGate. (PDF) Digital detox: An effective solution in the smartphone era? A systematic literature review. 2021. Available from: https://www.researchgate.net/publication/353280416_Digital_detox_An_effective_solution_in_the_smartphone_era_A_systematic_literature_review
- Osman N, Screen M, Charchar A, et al. Impacts of digital social media detox for mental health: A systematic review and meta-analysis. Psychiatry Res. 2024;341:115654. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39280291/
- Osman N, Screen M, Charchar A, et al. Impacts of digital social media detox for mental health: A systematic review and meta-analysis. Psychiatry Res. 2024;341:115654. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11392003/
- News-Medical.Net. Is a Digital Detox the Answer to Technostress?. 2022. Available from: https://www.news-medical.net/health/Is-Digital-Detox-the-Answer-to-Technostress.aspx
- Zurich Open Repository and Archive. Digital detox: An effective solution in the smartphone era? A systematic literature review. 2021. Available from: https://www.zora.uzh.ch/id/eprint/216712/
- 愛知大学. スマートフォンの利用時間の減少に 有効なゲーミフィケーションの手法と アプリケーションの. 2022. Available from: https://halo.aichi-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/03/4d2b29326c808ddbe62b8216944f5dff.pdf
- 中山秀樹. 久里浜医療センターでのインターネット依存症治療. 精神神経学雑誌. 2019;121(7):562-569. Available from: https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1210070562.pdf
- Nursing Plaza. インターネット依存から抜け出すためには、専門の医療機関で適切…. 2024. Available from: https://nursing-plaza.com/interview/2404/
- Frontiers. Effectiveness of brief online mindfulness-based intervention on different types of mobile phone addiction: mechanisms of influence of trait mindfulness. 2025. Available from: https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2025.1400327/full
- Frontiers. www.frontiersin.org. Available from: https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2025.1400327/full#:~:text=Additionally%2C%20in%20relation%20to%20MSVA,types%20of%20mobile%20phone%20addiction.
- Consensus. Mindfulness-based cognitive-behavioral interventions for smartphone addiction in university students. Available from: https://consensus.app/results/?q=Mindfulness-based%20cognitive-behavioral%20interventions%20for%20smartphone%20addiction%20in%20university%20students
- Gao J, Jia C, Liu Z, et al. A pilot study of a group mindfulness-based cognitive-behavioral intervention for smartphone addiction among university students. PLoS One. 2019;14(2):e0211915. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6376383/
- ダイヤモンド・オンライン. スマホ依存の脱却法を精神科医が伝授、「ほどほど使用or禁止」効果的なのは?. 2022. Available from: https://diamond.jp/articles/-/307255
- 国分寺イーストクリニック. スマホ・ネット依存が心に及ぼす影響(デジタルデトックス). Available from: https://www.kokubunji-east-clinic.com/blog/smartphone-internet-addiction/
- 東京科学大学精神科. ネット依存外来. Available from: https://www.tmd.ac.jp/med/psyc/hosp/hosp_subspe/hospital_subspecial_netdepend/hospital_subspecial_netdepend.html
- 大石クリニック. 大石クリニック|依存症治療の専門医療機関|外来と家族相談、回復施設. Available from: https://www.ohishi-clinic.or.jp/
- 医療法人十全会 聖明病院. スマートフォン依存症チェック. Available from: https://seimei-hp.or.jp/addiction/screening/check06/
- NTTドコモ. スマホ依存症に注意!依存症の恐ろしさや治し方と対策 – comotto. Available from: https://comotto.docomo.ne.jp/column/00000656-2/
- Google Play. スマホ依存対策タイマー: スマホ依存症から脱却 Detox. Available from: https://play.google.com/store/apps/details?id=forinnovation.phoneaddiction&hl=ja
- Google Play. スマホ依存対策 スクリーンタイム (ActionDash). Available from: https://play.google.com/store/apps/details?id=com.actiondash.playstore&hl=ja
- 久里浜医療センター. インターネット依存治療部門 (TIAR). Available from: https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/internet/treatment.html
- 淀屋橋心理療法センター. ゲーム依存症・ネット依存症【カウンセリングによる】治療と回復事例&アドバイス. Available from: https://www.yodoyabashift.com/column/20615/
- 久里浜医療センター. 相談対応 マニュアル. Available from: https://kurihama.hosp.go.jp/research/pdf/tool_book_gaming.pdf
- 医療法人社団ベスリ会. 薬に頼らないスマホ依存・ゲーム依存の脳疲労治療 TMS治療. Available from: https://tms-clinic.jp/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E4%BE%9D%E5%AD%98%E3%80%9C%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%9B%E3%83%BBpc%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E4%BE%9D%E5%AD%98/
- ダイヤモンド・オンライン. 【グーグル元社員が考案】一瞬で「スマホ依存」をやめられる方法【書籍オンライン編集部セレクション】. 2023. Available from: https://diamond.jp/articles/-/337143
- マイベスト. スマホ依存対策アプリのおすすめ人気ランキング【2025年】. Available from: https://my-best.com/6402
- App Store. Blockinスマホ依存対策スクリーンタイム制限・勉強・集中. Available from: https://apps.apple.com/jp/app/blockin%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%9B%E4%BE%9D%E5%AD%98%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E5%88%B6%E9%99%90-%E5%8B%89%E5%BC%B7-%E9%9B%86%E4%B8%AD/id1659162950
- 戸田中央医科グループ. スマートフォン依存傾向の変化と学校適応. CiNii Research. 2021. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1050858364030863488
- 品川メンタルクリニック. スマホ依存症とは? うつとの関係や対処法. Available from: https://www.shinagawa-mental.com/column/psychosomatic/smartphone/
- 久里浜医療センター. インターネット依存治療部門:受診案内. Available from: https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/internet_info.html
- かながわ依存症ポータルサイト. 独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター. Available from: https://kanagawa-izonportal.jp/facilities/%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E7%97%85%E9%99%A2%E6%A9%9F%E6%A7%8B%E4%B9%85%E9%87%8C%E6%B5%9C%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC
- 東京都立松沢病院. スマートフォン依存・インターネット依存・ゲーム依存. Available from: https://www.tmhp.jp/matsuzawa/section/seishinka/important/sumahoizon.html
- 東邦大学医療センター大森病院 メンタルへルスセンター. スマホ依存について. Available from: https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/mentalhealth/mental/smartphone_dependence/index.html
- JBサービス. GIGAスクール構想における課題とは?端末の故障や管理方法はどうするべきか. Available from: https://www.jbsvc.co.jp/useful/security/giga-school-device.html
- Spaceship Earth. GIGAスクール構想とは?現状や問題点、具体的な活用事例も. Available from: https://spaceshipearth.jp/giga-school/
- 文部科学省. デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理 (案). 2024. Available from: https://www.mext.go.jp/content/20240930-mxt_jogai01-000037424_02.pdf
- 近藤昭彦. スマホ依存症とは. CiNii Research. 2021. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1523388080810667008
- 淀屋橋心理療法センター. 「ゲーム依存症」講演会報告-カウンセリング・治療の現場から. 2020. Available from: https://www.yodoyabashift.com/column/21996/