はじめに
こんにちは、JHO編集部です。現代では、スマートフォンや音楽プレーヤーを通じて、誰でも気軽に音楽や動画を楽しめるようになりました。特にヘッドホンやイヤホンは、外出先でも自宅でも高音質で音声を楽しむうえで欠かせないツールとして広く普及しています。しかし、その利便性の裏には、長時間かつ過度な音量で使用した場合の聴覚リスクが潜んでいることをご存じでしょうか。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
たとえば、電車に乗りながら音楽を聴いているうちに、つい周囲の雑音をかき消そうと音量を上げてしまう。または、カフェや図書館で作業をするときに集中しやすいからと、ノイズキャンセリング機能付きイヤホンで外界の音を完全に遮断する。こうした使い方はとても便利ですが、その一方で耳に過度な負担をかけている可能性があります。耳の奥深くにある「毛細胞」と呼ばれる聴覚受容の要となる細胞は、強い音や長時間の音刺激によって容易に傷つき、しかも基本的に再生することはできません。そのため、一度ダメージが蓄積すれば聴力の回復は難しく、将来にわたる聴覚障害のリスクを高めることになります。
本記事では、こうした「ヘッドホンやイヤホンの使い方」が引き起こし得る聴力への影響やリスク、そして具体的な対策・ガイドラインを中心に、幅広い視点から詳しく解説していきます。私たちは医療専門家ではありませんが、Hello Bacsiの医学相談委員会が提供する専門的知見や、国際的な研究機関・公的機関が公表している信頼性の高い資料をもとに情報を整理し、皆様の日常生活に役立つ形でお届けします。個々人の耳や健康状態によっては最適解が異なる場合もあるため、必要に応じて耳鼻咽喉科医やオーディオロジストなど専門家の意見を仰ぐことが望ましいでしょう。
本記事の目標は、聴覚を守りながら、快適に音楽や音声を楽しむためのヒントを提供することです。「音量がどの程度なら安全なのか」「どのぐらいの使用時間でリスクが高まるのか」「ノイズキャンセリング機能を使う際の注意点は何か」「もし聴力低下を感じたらどうすればいいのか」など、気になりやすいポイントについて詳しく触れます。ぜひ最後までお読みいただき、毎日の生活に取り入れられる対策を実践してみてください。
なお、本記事はあくまで一般的な健康情報をまとめたものであり、医療行為や治療を代替するものではありません。実際に耳の不調や難聴、耳鳴りなどの症状がある場合は、速やかに専門医へご相談ください。
専門家への相談
本記事の内容は、Hello Bacsiの医学相談委員会が取りまとめた医学的見解をはじめ、公的機関や国際的な研究論文の知見などを総合的に参照しています。Hello Bacsiは健康や医療に関する多様な情報を専門家チームが監修する組織であり、エビデンスに基づく正確な情報を提供しています。したがって、読者の皆様にとって参考となる内容をできるだけ分かりやすくまとめることを心がけていますが、各個人の健康状態や生活環境によって最適な対策は異なります。
- 日常的にヘッドホンを長時間使用し、大音量で音楽を聴く機会が多い
- すでに耳鳴りや難聴の兆候がある
- 人との会話が聞こえづらい
- 以前よりもテレビの音量を上げないと聞き取れない
もしこうした不安や症状がある場合は、自己判断で終わらせず、必ず医療専門家や耳鼻咽喉科医に相談しましょう。本記事で紹介する情報はあくまで「一般的なガイドライン」として考えていただき、具体的な診断や治療方針については専門家の指示に従うことが大切です。
ヘッドホンやイヤホンの長時間使用がもたらすリスク
内耳の毛細胞へのダメージ
耳の内部には、音の波を脳に伝えるための重要な役割を果たす「有毛細胞(毛細胞)」が存在します。これらの細胞は、音の振動を電気信号に変換し、聴神経を通じて脳へ届けます。小さく繊細な構造をしており、音量が大きすぎたり、一定の音量が長時間続いたりすると、これらの細胞が損傷を受けやすくなります。問題なのは、これらの細胞がいったん破壊されると、ほとんどの場合で再生や修復が困難であることです。だからこそ、音の曝露量を制御することが極めて重要になります。
「騒音性難聴」のメカニズム
大きな音を長時間聞き続けることで生じる「騒音性難聴」は、主として内耳の有毛細胞の損傷によって引き起こされます。最初は一時的に聴力が低下する「一過性難聴」が起きることが多く、その段階で音源から離れたり耳を休めたりすると、ある程度の回復が期待できる場合もあります。しかし、何度も繰り返しているうちに不可逆的な損傷へと進展し、恒久的な難聴に移行してしまうことが懸念されます。
たとえば、大音量のライブコンサートやクラブに行った後に「耳鳴り」を感じたことがある方は多いでしょう。これは短期的にせよ耳に大きなダメージが加わったサインであり、こうした経験を繰り返すうちに慢性的な聴覚低下を招きかねません。ヘッドホンやイヤホンを日常的に使う習慣がある人は、ライブコンサートなどの明らかに大音量環境とは異なるから大丈夫だと考えがちですが、実は時間の長さや音の近さ、耳への密着度などが関係し、同程度にリスクが高くなる場合があります。
生活の質(QOL)への影響
聴力の低下は、コミュニケーション能力や社会生活へ大きく影響します。特に日本は会話の微妙なニュアンスや声のトーンによって感情をくみ取る文化的背景が強いため、小さな聴力の変化でも人間関係に不便やストレスをもたらす可能性があります。さらに、近年の研究では、高齢期における聴力喪失は認知症やうつ症状と深く関連している可能性が示唆されています。たとえばJAMA Neurologyに掲載された研究(“Hearing Loss and Incident Dementia”)では、軽度~重度の聴力喪失がある場合、認知症のリスクが明確に上昇するとのデータが報告されました。聴力が悪化することで社会的つながりが薄れ、脳への刺激が減ることが原因の一端と考えられています。
適正音量の目安と「60-60ルール」
音量は最大の60%以下
ヘッドホンやイヤホンの安全な使用法として、しばしば推奨されるのが「60-60ルール」です。これは、
- 音量を最大の60%以下に設定する
- 1回の使用時間は60分以内に抑える
という2点を基本としたガイドラインです。たとえば、スマートフォンの音量表示が0~10のスライダーの場合、6を超えないようにするなど、自分なりの目安を定めてください。また、60分聴いたら、少なくとも数十分は耳を休ませるといった“オンオフ”を心がけることが重要です。
周囲の音量に合わせて上げすぎない
外出先では、電車やバス、街のざわめきなど、周囲の雑音に影響されて音量を大きくしがちです。駅のホームや道路わきなど騒音が大きい場所では、「なかなか音が聞こえないから」とついボリュームを上げてしまう方も多いでしょう。しかし、このときの音量は耳にとっては既に過剰である可能性があります。もし会話できないほどの大音量でなければ音楽を楽しめないと感じるようであれば、それは聴力へのリスクを大きく高めているサインかもしれません。
ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンやイヤホンは、外部の騒音をある程度抑制してくれるため、必要以上に音量を上げなくても快適に音を聞くことができます。一方で、騒音を完全にシャットアウトしすぎると交通事故などの危険に気づきにくくなる場合もあるため、使用環境や状況に応じて使い分けることが大切です。
音量レベルとデシベル(dB)の関係
70dBを超える環境の注意点
騒音の指標としてよく使われるのが「デシベル(dB)」です。人の会話がおよそ60dB前後、街中の車の往来が激しい場所で70~80dB、ロックコンサートでは100dBを超える場合もあります。一般に、70dBを超える音を長時間聞き続けると耳への負担が大きいとされ、騒音性難聴のリスクが高まるといわれています。
ヘッドホンやイヤホンを使用する際に、どの程度のdBに相当するかは機器や再生する音源にもよりますが、スマートフォンの音量が中~高めの設定であれば70dBを超えている可能性が十分にあると考えられます。アプリや音量計などを活用し、どれくらいのデシベルで聴いているかを定期的にチェックしてみるのもよい方法です。
過度な低音・重低音サウンドの影響
音楽を楽しむうえで重低音が響くサウンドは魅力的です。しかし、低音域の振動は耳への負荷が高いため、大音量で聴き続けると耳内部での振動エネルギーが蓄積し、より強い疲労感やダメージを生じさせる可能性があります。低音特化のヘッドホンなどを好む方は、特に音量管理に注意を払う必要があります。
ノイズキャンセリング機能のメリットと注意点
メリット:不要な外部音をカット
ノイズキャンセリング機能は、ヘッドホンやイヤホンの内蔵マイクが外部の騒音を拾い、それと逆位相の音波を発生させることで騒音を打ち消す仕組みを利用しています。これにより、周囲がうるさい場所でも低音量で音楽や音声をクリアに楽しめるメリットがあります。とりわけ電車や飛行機、オフィスなど比較的騒音が大きい環境下では、耳を守りながら快適に音を聞くことができます。
注意点:安全性の確保
一方で、周囲の音がほぼ遮断されるため、歩行中や自転車、車の運転中に使用するのは非常に危険です。緊急車両のサイレンやクラクション、人の呼びかけなど、重要な警告音を聞き逃し、事故につながる可能性があります。また、人とのコミュニケーションが必要な場所(職場や家庭内など)では周囲の会話が聞き取りにくくなり、誤解やトラブルを招く原因になるかもしれません。
したがって、ノイズキャンセリング機能は「静かな環境で音に集中したいとき」や「公共交通機関など移動時に、ある程度周囲が安全であることが分かっている場面」で活用し、それ以外の場面では周囲の音がある程度聞こえるように設定を調整するなど、TPOを考えた使い方が求められます。
耳を休ませることの重要性
聴覚疲労とリカバリー
一日中イヤホンをしたままで作業している人や、休日に何時間もヘッドホンで映画や音楽を楽しむ人は、定期的に「耳を休ませる時間」を設けることが重要です。耳は常に音を処理し続けると「聴覚疲労」を起こしやすくなり、回復が追いつかないほどの疲労が蓄積すれば、前述したように恒久的な聴力損傷につながる恐れがあります。
たとえば、1時間聴いたら10分から15分はヘッドホンやイヤホンを外すなど、小まめにインターバルを挟むだけでも耳にとっては大きな休息となります。日常的に大音量で聞く機会が多い方ほど、耳をリセットする時間を意識的につくりましょう。
睡眠時の使用について
最近では、睡眠導入のために音楽を流しながらイヤホンを装着して寝る人も増えているようです。しかし、寝ている間は無意識の状態となるため、耳に負担がかかっていても気づきにくいリスクがあります。さらに、イヤホンによる耳への圧迫が外耳道や耳周辺を傷める原因にもなり得ます。睡眠時にはできる限り音源を外部スピーカーなどへ切り替え、イヤホンを外した状態で音量を小さく流すなど、安全かつ耳に負担をかけにくい方法を選択することをおすすめします。
ヘッドホンの種類と特徴
オーバーイヤー型
耳を完全に覆う大きなパッドが特徴のオーバーイヤー型は、装着感が高く、外部の雑音を物理的に遮断しやすいため、比較的小さい音量でもクリアに音楽を聴き取りやすい利点があります。一方で、持ち運びがかさばるため、日常の外出には不向きと感じる方もいるかもしれません。しかし、耳への圧迫感が軽減されやすく、耳道内に直接音を送り込むイヤホン型よりも聴覚リスクが低いといわれることもあります。
オンイヤー型
耳に当てるタイプで、オーバーイヤー型ほど外部音を遮断しないのが特徴です。密閉度が低いため、周囲の音が若干聞こえやすい反面、騒がしい場所では音漏れを防ぐために音量を上げがちになる傾向があります。外で使用する機会が多い場合は、しっかりと音量を調整しながら使いましょう。
カナル型イヤホン
耳の穴に直接差し込む形状で、近年主流となっているタイプです。耳道内の密閉感が高いため、低音の再現力に優れているほか、外部の音もある程度カットできます。ただし、密閉度の高さゆえに大音量で聞くと耳への衝撃も大きく、耳鳴りや聴覚疲労を招きやすい欠点があります。イヤーチップの素材やサイズを適切に選び、密着度を調整しつつ適切な音量管理を行うことが望まれます。
聴力低下を早期に察知するためのセルフチェック
- 会話の聞き取りにくさ
家族や友人との会話で「何度も聞き返している」「話が少し早かったり小声だったりすると聞き取れない」などのケースが増えたかどうかを注意深く確認します。 - テレビやオーディオの音量
以前よりもテレビの音量を大きくしないと聞こえにくい場合、聴力の変化が生じている可能性があります。家族や同居人が「音が大きい」と感じるようなら要注意です。 - 耳鳴りやこもった感じ
キーンという耳鳴りや、耳が塞がったような「こもり感」が頻繁に続く場合は、内耳の疲労や炎症、初期の難聴サインの可能性があります。 - 周囲が騒がしいときの聞き分け
レストランや人混みの場所で複数人と話すとき、他の人の会話がほとんど聞き取れないと感じるなら、聴力の一部が低下しているかもしれません。
これらの項目に複数当てはまる場合は、耳鼻咽喉科などを早めに受診し、聴力検査を受けることを検討してください。聴力の問題は、早い段階で発見・対処すればリスクを最小限に抑えられる可能性があります。
国際的視点からみる聴覚保護の重要性
WHOによる警鐘
世界保健機関(WHO)は、2019年以降「Make Listening Safe」イニシアチブを中心に、若年層のレクリエーション音響機器の安全な使用法について注意喚起を強めています。2021年に公表された「World report on hearing」では、2050年までに世界人口の約25億人が何らかの聴力低下を抱える可能性を指摘し、その中には騒音性難聴やイヤホン・ヘッドホンなどによるレクリエーション性の音響曝露も含まれるとされています。特にスマートフォンや音楽プレーヤーを日常的に使う若者層はリスクが高いとみられており、日本においても例外ではありません。
The Lancet掲載の研究
国際的な医学誌The Lancetでは、継続的に「Global Burden of Disease(GBD)Study」のデータを用いて世界各地の疾病や障害の動向を報告しています。2021年に公表された報告(DOI:10.1016/S0140-6736(21)01513-X)では、聴力低下を抱える人々の数が世界的に増加していると再確認され、その原因の一つに「安全でない音量レベルでの音楽鑑賞」が挙げられています。これは先進国・途上国を問わず、日常的にヘッドホンやイヤホンを利用する人口が増えている現実を反映した結果と考えられます。
こうした研究やデータは、過度な音量曝露による聴覚リスクが決して一部の国や年齢層だけの問題ではなく、国際的かつ世代を問わない深刻な課題であることを物語っています。日本国内でも、通勤・通学時間にイヤホンで音楽や動画を見る人は多く、公共の場であっても個々人が小さなパーソナル空間を形成しやすい社会構造があるともいえます。だからこそ、一人ひとりが音量や使用時間に配慮し、必要に応じて聴力検査を受けるといった意識の変革が求められているのです。
ヘッドホンやイヤホンを安全に使うための具体的ガイドライン
1. 音量を数値化して管理する
- スマートフォンのアプリやデシベル計を活用
「デシベルX」「サウンドメーター」などのアプリを活用すれば、自分がどの程度の音量で音を聴いているのか数値で客観的に把握できます。慣れないうちはわざわざ測定するのが面倒に感じるかもしれませんが、自分の耳がどの程度の音圧にさらされているか理解することは非常に大切です。 - 60-60ルールを意識する
音量は最大出力の60%以下に抑え、1回の連続使用は60分を目安に。長時間聞く場合でも、1時間おきに数分~十数分程度の休憩を挟んでください。
2. ノイズキャンセリング機能を活用
- 周囲の騒音が大きいとき
電車や飛行機など、どうしても周囲の音がうるさい場面ではノイズキャンセリングヘッドホンを使うと、音量を上げずに音声をはっきり聞き取れます。これにより耳への負担を減らせるでしょう。 - 歩行や自転車走行時は注意
ノイズキャンセリングによって外部音が遮断されすぎると、事故を招く危険性が高まります。外を移動する際には使用を控える、もしくは外部音を取り込む機能(「外音取り込みモード」「アンビエントモード」など)があれば活用するなど、状況に応じた使い方を心がけましょう。
3. 耳への圧迫感を少なくする
- イヤーチップやパッドを最適化
イヤホンのイヤーチップは、材質やサイズが多数発売されています。耳道に過度な圧迫を感じる場合は、もう少し小さいサイズやソフト素材を試してみるのも良い方法です。ヘッドホンのパッド部分も定期的に交換できるタイプがあり、装着感の改善に加え衛生面でもメリットがあります。 - 長時間の連続使用を避ける
1日中かけっぱなしで作業をしていると、耳や頭部周辺に疲労が蓄積します。適度に外して休憩を取り、耳への負担を和らげましょう。
4. 定期的な聴力検査
- 年齢や使用状況に応じて頻度を決める
50歳以上や、大音量環境下(工場、ライブハウス、イベント会場など)で働く方は年1回以上の検査を推奨します。若年層でも、日常的に高音量で長時間ヘッドホンを使うなら、定期検査を受けて早期に異常を発見できるようにしておくと安心です。 - 専門家によるアドバイス
聴力検査の結果、特定の周波数帯での聴力低下が認められた場合は、医師やオーディオロジストとともに具体的な対策を検討します。補聴器の早期導入が必要なケースや、生活習慣を大きく見直す必要があるケースもあります。
もし聴力低下を感じたら
軽度の症状でも早めに受診を
聴力低下は、最初のうちは本人が「ちょっと聞こえづらい」「周囲の人からテレビの音が大きいと指摘された」などで気づきやすい場合もありますが、注意を払わないと見逃しやすい症状でもあります。放置した結果、慢性的な難聴へ進行すると、補聴器の助けがないと日常生活に支障をきたすほど聞こえづらくなってしまうこともあるのです。
耳鼻咽喉科医の診察では、聴力検査によって異常の種類や程度が明確になります。特に、加齢性難聴や突発性難聴、メニエール病など、早期治療が望ましい病態も存在します。軽度な症状であっても専門機関を受診することが、長い目で見れば自分の生活の質を守ることにつながります。
認知機能との関連
前述のように、難聴の進行はコミュニケーション障害による社会的孤立感や脳への刺激減少をもたらし、認知症などのリスクを高める可能性があります。特に高齢者の場合、軽度の聴力低下でも生活全般に及ぼす影響は大きく、介護や在宅ケアの必要性へと直結するリスクも指摘されています。自分や家族の耳の健康を守るためにも、少しでも不安を感じたら早急に対処しましょう。
日常生活でできる耳のセルフケア
- 耳掃除のやりすぎに注意
耳垢は耳道を保護する役割も担っています。綿棒などで奥まで掃除しすぎると、かえって耳垢を奥に押し込んだり、外耳道を傷つけて炎症を起こすリスクが高まります。 - 運動や血流改善
体全体の血流が悪いと、内耳への栄養補給も滞りやすくなります。適度な有酸素運動やストレッチなどを行い、耳周辺を含む全身の血液循環を良好に保ちましょう。運動により体温が上がると、内耳への血流も増えやすくなるとされています。 - ストレスの軽減
ストレスは交感神経を緊張させ、血管を収縮させる要因となり得ます。これによって耳への血流が減り、耳鳴りや難聴を悪化させる可能性があります。休日のリラックス法や適度な運動、十分な睡眠などを意識して、ストレスを溜め込みすぎないライフスタイルを心がけるとよいでしょう。 - 十分な水分とバランスの良い食事
耳の健康は内耳の血流や栄養状態とも密接に関係しています。塩分の過剰摂取などはメニエール病の悪化要因にもなるといわれており、野菜や果物、タンパク質をバランスよくとり、水分不足にならないようこまめな水分補給を心がけることも大切です。
安全ガイドラインのまとめ
ここまで解説してきた内容を改めて整理し、ヘッドホンやイヤホンを安全に使うためのポイントをまとめます。どれも日常のちょっとした工夫や意識で取り入れられるものばかりなので、ぜひ実践してみてください。
- 音量と時間を管理する
- 60-60ルール(音量は最大の60%以下、1回の使用は60分以内)
- 外出先でも音量を上げすぎない習慣をつける
- ノイズキャンセリング機能を賢く使う
- 騒音が激しい場所では有効だが、歩行や運転中は使い方に注意
- 必要な場面とそうでない場面を使い分け、安全性を確保する
- 耳を休ませる
- 長時間の連続使用を避け、合間に休憩を挟む
- 睡眠時のイヤホン装着は基本的に推奨されない
- 定期的な聴力チェック
- 年齢や職業、使用状況に応じて聴力検査を受ける
- 疑わしい症状があれば早期受診し、深刻化を防ぐ
- 日常の耳ケアと健康管理
- 耳掃除のやりすぎに注意
- 適度な運動とストレス対策で血流を良好に保つ
- バランスの良い食生活や十分な水分摂取を心がける
推奨事項(参考用)
本記事の内容は一般的なガイドラインを示したものであり、個々の症状や体質に合わせた対応が必要な場合もあります。特に既に難聴や耳鳴りの症状がある方は、以下の推奨事項を踏まえつつ、必ず医師や専門家に相談のうえで適切な対応を取ってください。
- 音量は控えめに
前述した60-60ルールや70dB以下を意識し、聴覚への負担を最小限にする。音量が大きいほど、短時間でもリスクは高くなる。 - 騒音環境下では保護具も検討
もし職場や趣味で大音量・騒音環境にさらされる場合は、耳栓やイヤーマフ、ノイズキャンセリングヘッドホンなどを活用して耳を守る。 - 専門家に相談する
耳鼻咽喉科医による定期的な聴力チェックを受け、少しでも異変を感じたら早めに受診。認知機能への影響も含めたトータルなケアを検討。 - 十分な臨床的エビデンスが欠如している対策は慎重に
インターネット上では耳鳴りや難聴に効果があるとされるサプリメントや民間療法が数多く紹介されていますが、信頼性や有効性が科学的に十分立証されていない場合も多々あります。取り入れる前に、医師や薬剤師などに必ず相談しましょう。
結論
ヘッドホンやイヤホンは、私たちの生活を豊かにしてくれる一方で、使い方を誤れば大切な聴覚をむしばんでしまうリスクをはらんでいます。若いころは耳の不調を実感しにくく、多少の大音量でも「大丈夫」と思いがちですが、耳へのダメージは少しずつ積み重なっていき、年齢を重ねてから顕在化することが少なくありません。
- 長時間使用する際は適度に休憩を挟む
- 音量は可能な限り低めに設定する
- 騒がしい環境ではノイズキャンセリングを活用し、安全面とのバランスにも注意する
- 定期的に聴力検査を受け、早期に変化をとらえる
こうした心がけが、今後の人生を通して「聞こえる喜び」を維持するために欠かせないカギとなります。世界保健機関(WHO)や国際的な研究でも示されているように、ヘッドホンやイヤホンの使用と聴覚障害の関連性は無視できません。技術の進歩によって便利になった反面、正しい知識と意識の欠如が深刻な健康リスクを生む可能性があるのです。
本記事を通じて得た情報を参考に、ご自身やご家族の耳の健康を守る行動を始めてみてください。日本の生活環境でも、音量管理や聴力検査をこまめに行うことで、リスクを確実に低減できます。何より大切なのは、少しでも疑問や不安を抱いたら専門家へ相談することです。耳の健康を守ることは、コミュニケーション能力や生活の質を守ることと同義といえるでしょう。
参考文献
- How Headphones, Earbuds Can Slowly Harm Your Hearing Over Time – アクセス日: 09/05/2022
- Healthy headphone use: How loud and how long? – アクセス日: 09/05/2022
- Earbuds – アクセス日: 09/05/2022
- Headphones, earbuds impact younger generations’ future audio health – アクセス日: 09/05/2022
- Noise-Induced Hearing Loss – アクセス日: 09/05/2022
- Hearing Loss and Incident Dementia – アクセス日: 09/05/2022
参考文献(補足資料):
- World Health Organization (WHO). World report on hearing. 2021年発行
- GBD 2019 Hearing Loss Collaborators. “Hearing loss prevalence and years lived with disability, 1990–2019: findings from the Global Burden of Disease Study 2019.” The Lancet. 2021; 397(10278): 996–1009. DOI:10.1016/S0140-6736(21)01513-X
本記事で取り上げた内容は一般的な参考情報に過ぎません。実際に耳鳴りや聴こえにくさ、難聴の進行が疑われる場合は、自己判断で終わらせず、早めに医療機関を受診し、専門家の診断を仰いでください。聴覚は一度失われると回復が難しいことが多く、コミュニケーションや生活の質に大きな影響を与えるものです。どの年代にとっても、耳を守る意識を持ち続けることは、豊かな人生を送るうえで非常に重要だといえます。どうか、日々の生活において適度な音量管理と耳のセルフケアを意識し、必要に応じて専門家の助言を得るようにしてください。気づいたときからでも遅くはありません。今日からあなたの耳を、未来を守る一歩を始めましょう。