この記事の科学的根拠
本稿は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的指針への直接的な関連性を示したものです。
- 日本大腸肛門病学会: 本稿における痔核の分類、従来の手術法(結紮切除術)、およびALTA療法の有効性に関する指針は、同学会発行の「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版」に基づいています1。
- 国際的な系統的レビューおよびメタアナリシス: レーザー痔核形成術(LHP)と従来の手術法を比較した際の、術後の痛み、回復期間、合併症のリスクに関する記述は、複数の国際的な医学論文データベース(PubMed、PMC)に掲載された研究結果に基づいています3413。
- 国内の専門クリニックによる臨床報告: クランプトレーザー法のような特定の先進的術式に関する具体的な治療成績(日帰り手術率、術後出血率など)は、専門クリニックが学会で発表したデータや公開情報に基づいています11。
要点まとめ
- レーザー痔手術は、従来の手術に比べ、術後の痛みが大幅に少なく、回復が早く、社会復帰までの期間が短いことが科学的に証明されています。
- 「レーザー手術」には、メスとして使う方法(保険適用)と、痔核を内部から焼灼・凝固させる方法(自由診療の場合あり)の2種類があり、混同しないことが重要です。
- 治療法は、従来の手術、ALTA療法、レーザー手術など多岐にわたります。それぞれに利点と欠点があり、最適な方法は痔の重症度(ゴリガー分類)や個人の希望によって異なります。
- 費用は、保険適用の場合は3割負担で2〜3万円程度ですが、自由診療となる先進的な術式では30〜50万円程度かかることもあります。事前に確認が必須です。
- 成功の鍵は、日本大腸肛門病学会の認定する専門医を見つけ、自身の状態と希望を率直に話し合い、治療法の選択肢について十分な説明を受けることです。
まずは知っておきたい「痔」の基本
痔の治療法を理解する前に、まず痔そのものについて正しく知ることが不可欠です。医学的に、痔核(いぼ痔)は、肛門管内部にある血管や結合組織からなる「肛門クッション」という正常な構造物が、何らかの原因でうっ血し、腫れ上がった状態を指します1。これは、直腸がんなど他の重篤な疾患と症状が似ている場合があるため、自己判断せずに専門医の診断を受けることが極めて重要です2。
痔の種類と原因
痔核は、解剖学的な位置によって主に2つの種類に分けられます。肛門の内外を分ける「歯状線」という境界線より上にできたものを内痔核、下にできたものを外痔核と呼びます1。多くの患者様は、この両方を合併しています。
痔の発生には、腹圧の上昇や肛門周辺の血流停滞が大きく関わっています。具体的には、長時間の座り仕事、重い物を持ち上げる職業、食物繊維の少ない食生活、妊娠・出産、慢性的な下痢などが危険因子として挙げられます1。これらは現代の生活習慣と密接に関連しており、痔が「生活習慣病」の一側面を持つことを示唆しています。この視点は、患者が病気に対して受動的になるのではなく、生活改善を通じて積極的に健康管理を行う上で非常に重要です。
あなたの痔はどの段階?ゴリガー分類の重要性
内痔核の重症度を客観的に評価するために、世界中で「ゴリガー分類(Goligher Classification)」という基準が用いられています。これは痔核の脱出(肛門の外に出ること)の程度に基づいた分類で、治療方針を決定する上で最も重要な指標となります1。
- I度: 痔核は腫れているが、排便時にも脱出しない。
- II度: 排便時に脱出するが、自然に元に戻る。
- III度: 排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない。
- IV度: 常に脱出したままで、指で押しても戻らない。
この分類は、いわば「治療のロードマップ」です。例えば、ALTA(アルタ)療法はII度からIV度の内痔核に適応があり1、国際的なレーザー痔核形成術(LHP)の研究は主にII度とIII度を対象としています3。したがって、患者様自身が医師から「あなたの痔は〇度です」という説明を受け、自分の状態を正確に把握することが、治療への第一歩となります。
日本の痔治療の現状:専門医の重要性
痔は日本において非常にありふれた疾患で、人口の21.6%から55%が罹患しているとの推計もあります5。しかし、これほど多くの人が悩んでいるにもかかわらず、実際に手術が必要となるのは患者全体の1〜2割程度です6。
ここで注意すべきは、治療を行う医師の専門性の違いです。2014年の厚生労働省の統計によると、肛門疾患の治療を行う医師4,501人のうち、真の専門医(日本大腸肛門病学会専門医)はわずか432人(約10%)でした7。この事実は、患者が受ける治療の質や選択肢が、診察を受ける医師によって大きく異なる可能性を示唆しています。一般外科医は、レーザーやALTA療法といった先進的で低侵襲な技術に精通していない場合があります。したがって、本稿では「どの治療法か」だけでなく、「誰が治療を行うか」という視点から、専門医を探すことの重要性を強調します。
「レーザー痔手術」とは?実は1種類ではない治療法
患者様が「レーザー手術」という言葉を聞くとき、多くの場合、単一の画期的な方法を想像するかもしれません。しかし、実際には「レーザー」は一つの道具であり、その使い方によって治療法は大きく異なります。この違いを理解することが、混乱を避け、適切な治療を選択するための鍵となります。
道具としてのレーザー:レーザーメス
一つ目の使い方は、レーザーを「極めて精密なメス」として利用する方法です。主に炭酸ガス(CO2)レーザーが用いられ、非接触で組織を蒸散させることで切開します。電気メスと比較して、周囲組織への熱によるダメージを3分の1に抑えられるとされています8。この場合、レーザーは従来の結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)という標準的な手術において、メスの代わりを果たすに過ぎません。そのため、この方法は保険診療の範囲内で行われ、レーザー使用の有無によって費用が変わることはありません8。
治療法としてのレーザー:レーザー凝固法・LHP
二つ目の使い方は、レーザーそのものを「治療手技」として用いる方法です。こちらは半導体(ダイオード)レーザーなどが使われ、痔核を切除するのではなく、内部から熱を加えて凝固・収縮させることを目的とします(レーザー凝固法)9。国際的に「レーザー痔核形成術(Laser Hemorrhoidoplasty – LHP)」として研究されているのは、主にこのタイプの治療法であり、波長980nmのダイオードレーザーがよく用いられます3。このような特殊な手技や、クリニック独自の先進的な術式は、自由診療となる場合があります。
一部の医師からは、レーザーが万能ではないという指摘もあります。例えば、複雑な痔瘻(じろう)には不向きであったり、必ずしも従来法より痛みが少ないわけではないという意見です10。したがって、患者様は医師に対して「提案されているのは、レーザーをメスとして使う保険適用の手術ですか?それとも、レーザーで焼灼する特別な治療法ですか?」と具体的に質問することが極めて重要です。
先進的レーザー手術の実際:複合的アプローチ
最先端の治療では、レーザーを単独で使うのではなく、他の治療法と組み合わせることで高い効果を上げています。
- クランプトレーザー法: ある専門クリニックが開発したこの方法は、複数の技術を組み合わせた好例です。1) CO2レーザーで痔核の根元を血流ごとクランプして切除し、2) 残存組織を丁寧に郭清(かくせい)、そして3) 内痔核部分にはALTA療法(ジオン注射)を併用して出血を予防します11。このクリニックは、この方法により日帰り手術率100%、翌日仕事復帰率99.7%、術後出血合併症0%という優れた成績を2023年の日本大腸肛門病学会で報告しています11。
- レーザー凝固法: 痔核にICG(インドシアニングリーン)という薬剤を注射し、半導体レーザーを照射して痔核を凝固・縮小させる方法です。痛みや出血が非常に少ないとされますが、内痔核を完全に取り除くものではない場合があります9。
クランプトレーザー法のような複合的アプローチの成功は、レーザーの精密な切除能力と、ALTA療法の止血・硬化作用という、それぞれの長所を巧みに組み合わせた結果です。これにより、従来法の弱点であった術後出血のリスクを大幅に低減し、安全な日帰り手術を可能にしています。低侵襲治療の未来は、単一の魔法の技術ではなく、こうした賢明な組み合わせの中にあるのかもしれません。
国際的な科学的根拠に基づく評価
レーザー痔核形成術(LHP)の有効性については、多数の国際的な系統的レビューやメタアナリシス(複数の研究結果を統合して分析する手法)が行われています。従来型の切除術(Conventional Hemorrhoidectomy – CH)と比較した際の主な知見は以下の通りです。
- 術後の痛みが有意に少ない: 術後1日目と7日目の痛みスコアが明らかに低い4。
- 回復が早い: 日常生活や仕事への復帰が早く、平均で約9日早いという報告がある13。
- 術後出血のリスクが低い: 術後の出血合併症の発生率が低い4。
- 手術時間が短い: 手術そのものにかかる時間が短い4。
一方、長期的な再発率に関しては、見解が分かれる部分もあります。LHPと従来法で12ヶ月後の再発率は同等であるという報告もあれば413、別の分析では、PPH(器械吻合式痔核手術)やTHD(経肛門的痔動脈結紮術)といった他の低侵襲手術は従来法より再発率が有意に高いと結論付けています14。
これらの科学的根拠が示す結論は一貫しています。それは、レーザー手術の最大の価値は「術後の体験の向上(痛みの軽減と早期回復)」にあるということです。長期的な有効性も概ね良好ですが、再発率の低さという点では、依然として従来法が「ゴールドスタンダード(標準治療)」とされています。この事実は、患者様への明確でバランスの取れたメッセージとなります。「レーザー手術は、快適さと迅速な回復を優先する場合の、科学的に裏付けられた優れた選択肢です。ただし、従来法と比較した長期的な再発率については、医師との十分な話し合いが必要です。」
レーザー手術のメリット・デメリット:従来の手術やALTA療法との比較
治療法を選択するにあたり、レーザー手術を他の選択肢と比較することは不可欠です。ここでは、標準治療である「結紮切除術」と、もう一つの代表的な低侵襲治療「ALTA療法」との違いを明確にします。
ゴールドスタンダードとの比較:結紮切除術
結紮切除術(例:ミリガン・モルガン法)は、痔核を根元から切除する従来からの手術法です。皮膚や粘膜を含めて切除するため、傷口が大きくなり、術後の痛みが強く、通常は1週間程度の入院または自宅療養が必要となります11。しかし、その一方で、日本大腸肛門病学会のガイドラインでは、治癒率が高く再発率が低いことから最も強く推奨されています(推奨度1、エビデンスA)1。メタアナリシスでも、他の低侵襲手術より再発率が低いことが確認されています14。
ここには明確なトレードオフ(一得一失)が存在します。結紮切除術は「確実性」を重視する方法であり、目先の痛みは強いものの、長期的な効果が高いです。対して、レーザー手術は「快適性」を重視する方法であり、痛みは少ないものの、再発のリスクはわずかに高い可能性があります。どちらが「良い」かではなく、患者様が何を優先するか(目先の痛みと回復期間を避けることか、将来の再手術の可能性を最小限にすることか)によって、最適な選択は異なります。
もう一つの低侵襲治療との比較:ALTA(ジオン)療法
ALTA療法は、痔核に硬化剤(ジオン)を注射し、切除することなく硬化・縮小させる治療法です。痛みはほとんどなく、日帰りで実施可能です15。学会のガイドラインでも、脱出を伴う内痔核に対する有用な低侵襲治療として推奨されています(推奨度2、エビデンスC)1。
興味深いことに、ALTAとレーザーは競合するだけでなく、相互に補完しあう関係にあります。前述のクランプトレーザー法のように、最先端の治療では両者が併用されます11。ALTAは内痔核の治療に非常に効果的であり、レーザーは外痔核やスキンタグ(皮垂)の精密な切除に優れています。つまり、同じ問題の異なる側面に対処するのです。したがって、患者様への説明としては、「ある患者さんにとってはALTAかレーザーかの選択になりますが、より複雑な痔を持つ別の患者さんにとっては、効果を最大化し副作用を最小限にするために、両方の技術を一度の手術で使うことが最善の治療法となる場合があります」という形が適切でしょう。
【表1】主な痔の治療法 総合比較表
以下の表は、各治療法の主な特徴をまとめたものです。医師との相談の際に、ご自身の希望を伝えるための参考にしてください。
基準 | レーザー手術 (LHP/クランプ法など) | 結紮切除術 | ALTA療法 (ジオン注射) |
---|---|---|---|
メカニズム | レーザーエネルギーによる切除・焼灼・凝固 | メスによる物理的な切除 | 薬剤注入による硬化・縮小 |
侵襲度 | 小~中 | 高 | 極小 |
術後の痛み | 少ない~中程度 | 強い | ほとんどない |
回復期間 | 早い (数日~1週間) | 遅い (数週間) | 非常に早い (1~2日) |
入院 | 多くは日帰り | 通常入院 (または1週間の自宅療養) | 日帰り |
費用 (3割負担) | 約2~3万円 (自由診療の場合あり) | 約2~3万円 | 約1.5~2万円 |
再発率 | 低い~中程度 | 極めて低い | 中程度 (手術よりは高い) |
適応 | 内痔核/外痔核 (II~IV度) | 内痔核/外痔核 (III, IV度), 複雑な症例 | 内痔核 (II~IV度, 大きな外痔核がない場合) |
主な情報源 | 8, 11 | 1 | 1, 15 |
【体験談から学ぶ】手術後の痛みと回復のリアルな道のり
患者様にとって最も関心が高いのは、手術後の実際の体験でしょう。「どれくらい痛いのか」「いつから普通の生活に戻れるのか」といった現実的な疑問にお答えします。
回復期間(ダウンタイム)の現実
回復過程は、手術法や個人の状態によって異なります。先進的なレーザー手術を行うクリニックでは「肉体労働も含め、翌日から仕事に復帰可能」と報告していますが11、より慎重な情報源では数日間の自宅療養を推奨しています6。傷が完全に治癒するには1〜2ヶ月を要するのが一般的です6。
この「翌日復帰可能」という宣伝文句と、「数日間の安静」という慎重な助言には、一見矛盾があるように見えます。しかし、これはどちらも真実であり得ます。職種(デスクワークか肉体労働か)、個人の痛みの感じやすさ、手術の規模によって体験は変わるため、「誰でも同じ」という画一的な説明は不正確です。したがって、多角的な視点を提供することが重要です。「多くの患者様、特に先進的なレーザー手術を受けた方は、非常に早く事務仕事に復帰できますが、数日間は不快感が続く可能性を想定しておくのが賢明です。『ダウンタイム』とは、単に仕事を休む期間ではなく、飲酒や激しい運動を控え、適切な創傷治癒を促すための期間も含まれます。」
術後ケアと痛みの管理
術後のケアは、快適な回復のために極めて重要です。主なポイントは以下の通りです。
- 痛みの管理: 必要に応じて処方された鎮痛剤を使用します。術後の痛みで最もつらいのは、術後当日の夜と、術後最初の排便時と言われています18。
- 排便の管理: 便を柔らかくする薬(緩下剤)を使用し、いきまずにスムーズな排便を心がけます。
- 温浴(座浴): 温かいお風呂に浸かることは、痛みを和らげ、血行を促進する上で「魔法のよう」に効果的だとされています18。
- 生活上の制限: 術後約2週間は、飲酒や香辛料の多い食事を避けることが推奨されます。また、激しい運動も同期間は控える必要があります11。
費用と保険のすべて:自己負担はいくら?自由診療になるケースとは?
治療費は、患者様にとって治療法を選択する上での大きな要因です。ここでは、費用の仕組みを明確に解説します。
標準的な痔の結紮切除術は、切除にメスを使おうとレーザーを使おうと、日本の公的医療保険が適用されます(保険適用)。その場合、患者様の自己負担は原則3割となり、日帰り手術で約20,000円から30,000円が目安となります8。
しかし、特定の状況下では治療が自由診療となり、費用が30万円から50万円、あるいはそれ以上に高額になることがあります21。これは、患者様が「レーザー手術は保険適用」と聞いていた場合に、大きな驚きと混乱を招く可能性があります。自由診療となる主なケースは以下の通りです。
- 病状が複雑な場合: 複数の痔核があったり、他の肛門疾患を合併している場合など、標準的な手術の範囲を超える処置が必要なとき21。
- 特殊な先進技術を用いる場合: クリニックが独自に開発した術式や、まだ標準治療として確立されていない最先端の治療法を用いるとき。
- クリニックの方針: 一部のクリニックでは、専門性の高い日帰り手術モデルを維持するために、原則として自由診療で運営している場合があります22。
したがって、費用に関する明確な「消費者向けガイド」を提供することが、患者様の利益を守る上で不可欠です。受診の際には、必ず以下の質問をしてください。
- 「この治療は保険適用ですか?」
- 「どのような場合に自由診療になりますか?」
- 「書面での見積もりをいただくことは可能ですか?」
これらの質問は、予期せぬ高額請求を避けるための重要なステップです。
失敗しないための肛門科の選び方
治療の成否は、適切な医師と医療機関を選ぶことにかかっています。「名医」のリストは存在しますが24、ある人にとっての最良の医師が、別の人にとってもそうであるとは限りません。費用を最優先する人と、価格を問わず最新技術を求める人では、「最良の医師」は異なります。ここでは、ご自身の優先順位に基づいて最適な選択をするためのチェックリストを提案します。
- 専門医の資格を確認する: まず、日本大腸肛門病学会が認定する専門医を探しましょう7。これは、一定水準以上の知識と技術を持つ医師であることの客観的な証明です。
- 経験と手術件数を尋ねる: 経験豊富な医師やクリニックは、良好な治療結果の強い指標です。年間1,500件以上の手術実績があるような施設は、一つの目安となるでしょう11。
- コミュニケーションと透明性を評価する: 信頼できるクリニックは、明確でバランスの取れた情報を提供し、患者のプライバシーを尊重し、一つの方法だけでなく全ての選択肢を説明してくれます23。
- 費用に関する方針を明確にする: 前述の通り、保険診療を主軸としているのか、自由診療が中心なのかを事前に確認することが重要です。
このチェックリストを活用することで、単に有名な医師を探すのではなく、ご自身の価値観や病状に本当に合った「パートナー」としての医師を見つけることができるでしょう。
よくある質問
手術中の痛みは本当にありませんか?
はい、手術中は麻酔が効果的に効いているため、痛みを感じることはありません。局所麻酔、腰椎麻酔、静脈麻酔など、手術の内容や患者様の状態に応じて最適な麻酔法が選択されます18。
手術後、一番痛いのはいつですか?どうすれば和らぎますか?
一般的に、術後当日の夜と、術後初めての排便時が痛みの頂点とされています。痛みに対しては、処方される鎮痛剤を適切に使用することが基本です。また、体を温めて血行を良くする温浴(座浴)は、痛みを和らげるのに非常に効果的です18。
レーザー手術なら、本当に次の日から仕事に行けますか?
多くの方が可能ですが、これは職種や個人の状態に大きく依存します。デスクワークであれば翌日からの復帰も十分可能ですが、肉体労働や長時間の立ち仕事の場合は、数日間の安静が推奨されることもあります。無理をせず、数日間は安静にできる計画を立てておくのが賢明です6。
レーザー手術は保険が適用されますか?費用はいくらですか?
従来の手術と比べて、再発の可能性は高いですか?
どんな痔でもレーザーで治療できますか?
いいえ、全ての痔がレーザー治療の対象となるわけではありません。適応は、痔の重症度(ゴリガー分類)、大きさ、内外痔核の割合などによって決まります。例えば、非常に大きな外痔核成分を持つ場合や、複雑な痔瘻を伴う場合は、他の方法が推奨されることがあります。最終的な判断は、専門医による詳細な診察の上で下されます1。
結論
レーザーによる痔核手術は、もはや特別な治療法ではなく、科学的根拠に裏打ちされた有力な選択肢です。その最大の利点は、従来の手術につきものであった術後の激しい痛みを大幅に軽減し、驚くほど早い社会復帰を可能にすることにあります。これは、患者様の生活の質(QOL)を劇的に改善する、大きな進歩と言えるでしょう。
しかし、レーザー手術が全てにおいて万能なわけではありません。治療法の選択は、快適性と回復の速さというレーザーの利点と、従来法が持つ極めて低い再発率という確実性との間で、何を優先するかという個人の価値観に基づいた判断となります。また、「保険適用」と「自由診療」の違いを正確に理解し、費用面での納得感を得ることも重要です。
最終的に最も大切なことは、信頼できる肛門科専門医を見つけ、ご自身の症状とライフスタイル、そして不安に思うことを率直に伝えることです。この記事で得た知識を基に、医師と対等な立場で話し合い、ご自身にとって真に最善の治療法を選択されることを、JHO編集委員会は心より願っています。
参考文献
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