【科学的根拠に基づく】美白洗顔料の真実:シミ予防とくすみ除去の科学的アプローチと正しい選び方の完全ガイド
皮膚科疾患

【科学的根拠に基づく】美白洗顔料の真実:シミ予防とくすみ除去の科学的アプローチと正しい選び方の完全ガイド

「美白洗顔料」と聞くと、多くの方が「洗うだけで肌が白くなる」「シミが消える」といった効果を期待されるかもしれません。しかし、現在市場に出回っている情報の多くは、科学的根拠よりも主観的な人気や口コミに偏りがちで、消費者に混乱を招いています1。JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会は、この問題を解決するため、本稿を執筆しました。本記事の目的は、単なる製品ランキングを提示することではありません。「美白」という言葉が持つ二つの全く異なる意味、すなわち「古い角質を除去し、肌の透明感を物理的に向上させること」と、「医薬部外品有効成分によってメラニンの生成を抑制し、将来のシミを予防すること」を科学的根拠に基づいて明確に区別し、読者一人ひとりがご自身の肌悩みに最適な解決策を見出すための知識を提供することです。この記事を読めば、「美白洗顔料」に現実的に何を期待でき、どのように製品を選び、どう使えば最大の効果が得られるのか、その全てが理解できるでしょう。

医学的査読:
本記事は、皮膚科専門医である友利新医師および上原恵理医師の公開情報や医学的見解を参照し、その指導内容を基にJHO編集委員会が責任を持って作成しました23


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性のみが含まれています。

  • 厚生労働省: 本記事における医薬部外品と化粧品の定義、および承認されている有効成分に関する記述は、厚生労働省が公開する「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト」および薬機法の規定に基づいています45
  • 日本皮膚科学会: ケミカルピーリング成分(AHA、BHA)の有効性に関する記述は、日本皮膚科学会が策定した「ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」に基づいています6。また、シミ治療に関する記述は、同学会が関連学会と合同で作成した「美容医療診療指針」を参考にしています7
  • 国際的な学術論文(PubMed/PMC掲載): ビタミンC誘導体、ナイアシンアミド、トラネキサム酸などの有効成分に関する作用機序や臨床試験の結果は、PubMed等の信頼できる学術データベースに掲載されたシステマティックレビューやランダム化比較試験(RCT)の結果に基づいています8910

要点まとめ

  • 洗顔料における「美白」には、古い角質を除去して「くすみを取る」物理的効果と、有効成分で「シミを予防する」薬理学的効果の2種類があります。
  • 洗顔料の主な役割は、既存のシミの「治療」ではなく、後続のスキンケアの浸透を高めるための「準備」です。
  • 製品は「人気」ではなく、酵素、クレイ、ピーリング成分、医薬部外品有効成分といった「作用機序」で選ぶことが重要です。
  • どんな美白ケアも、日々の紫外線対策がなければ効果は半減します。紫外線防御は美白の絶対的な土台です。
  • 正しい洗顔法(十分な泡立て、摩擦レス、適切なすすぎ)は、製品選びと同じくらい重要です。

第1部:『美白』の皮膚科学的基盤

「美白」を科学的に理解するためには、まずそのターゲットである「シミ」と「くすみ」が、なぜ、どのようにして肌に現れるのかを知る必要があります。その根本にある皮膚科学的なメカニズムから解説します。

1.1. シミ・くすみの発生機序:メラニン生成からターンオーバーまで

肌の色素沈着の根源には、メラニンという色素が存在します。メラニンは、皮膚の表皮基底層にあるメラノサイト(色素細胞)という工場で産生されます11。紫外線、ホルモンバランスの乱れ、摩擦による炎症などが刺激となると、メラノサイト内でチロシナーゼという酵素が活性化し、アミノ酸の一種であるチロシンを原料にメラニンの製造を開始します11

生成されたメラニンは、メラノソームという袋に詰め込まれ、周囲のケラチノサイト(表皮細胞)へと受け渡されます11。ケラチノサイトは、このメラニンを細胞核の上部に配置することで、紫外線から遺伝子情報を守る「天然の日傘」として機能させます。健康な肌では、このメラニンを含んだ細胞は、肌のターンオーバー(新陳代謝)によって約28〜40日周期で徐々に表面へ押し上げられ、最後は古い角質(垢)として自然に剥がれ落ちます12。しかし、加齢や生活習慣の乱れでこのサイクルが遅れると、メラニンが排出されずに蓄積し、これが「シミ」の正体となります。

一方で「くすみ」は、より多様な原因によって引き起こされます。

  • 乾燥によるくすみ: 肌の水分不足でキメが乱れ、光が乱反射して肌が暗く見えます13
  • 血行不良によるくすみ: 血行が滞り、肌が酸素不足になることで青黒く、あるいは黄色っぽく見えます14
  • 角質肥厚によるくすみ: ターンオーバーの乱れで古い角質が厚く溜まり、肌の透明感が失われた状態です13

洗顔料が直接的にアプローチできるのは、主にこの「角質肥厚によるくすみ」や毛穴の汚れによる黒ずみです。これらを洗い流し、肌本来の明るさを取り戻すことが、洗顔における「美白」の第一の側面です。

1.2. 日本における『美白』の定義:化粧品と医薬部外品の決定的差異

日本国内で製品が「美白」効果を謳うには、薬機法(旧薬事法)に基づき、「化粧品」と「医薬部外品」という厳格な区分が存在します。この違いの理解は、製品評価の根幹をなします。

医薬部外品 (Quasi-Drugs)

医薬部外品とは、厚生労働省が「人体に対する作用が緩和」なものと定義し、特定の効果・効能が認められた有効成分を、定められた濃度で配合した製品です5。「美白」の文脈では、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」という効果が承認された有効成分がこれに該当します。代表的な成分には、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、コウジ酸、ナイアシンアミドなどがあります4。これらの成分を規定量配合した製品のみが、パッケージで「美白」や「シミ予防」といった薬理学的な効果を明確に表示できます。

化粧品 (Cosmetics)

一方、化粧品は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を明るく見せる」ことを目的とします5。特定の「効果・効能」を謳うことは禁じられています。したがって、化粧品に分類される洗顔料が「美白」という言葉を使う場合、それはあくまで「洗浄により古い角質や汚れを取り除くことによる物理的な効果」を指しており、メラニン生成を抑制する薬理作用を意味するものではありません。これは製品選択における最も重要な分岐点です。

1.3. 洗顔料における美白効果の限界と可能性

消費者は「美白洗顔料」という言葉から、シミが薄くなる、消えるといった劇的な効果を期待しがちです。しかし、科学的に見ると、洗顔料には「接触時間の限界 (The ‘Contact Time’ Limitation)」という本質的な制約があります。有効成分が肌の奥深く(メラノサイトが存在する基底層)まで到達し、効果を発揮するには一定の時間が必要ですが、洗顔料は数十秒から数分で洗い流されてしまいます11。この短い時間で有効成分が深部まで浸透することは物理的に極めて困難です。

この原則から、洗顔料の真の役割を次のように位置づけるべきです。

  1. 肌表面の浄化と角質ケア: 古い角質や汚れを適切に除去し、物理的に肌の透明感を向上させること15
  2. スキンケアの土台作り(ブースター効果): 肌を清浄にし、その後に使用する美容液など、美白ケアの主役となる「洗い流さない製品」の浸透性を高めること15

では、有効成分配合の医薬部外品洗顔料は無意味なのでしょうか。いいえ、付加価値は存在します。例えば、グリチルリチン酸ジカリウムのような抗炎症成分は、日々の洗顔で微細な炎症を抑え、ニキビ跡などの炎症後色素沈着(PIH)のリスクを低減する可能性があります16。これは将来のシミ予防において重要な意味を持ちます。

第2部:主要成分の有効性に関するエビデンスベース評価

ここでは、「美白」関連成分をその作用機序ごとに分類し、科学的根拠に基づいて評価します。物理的に透明感を向上させる成分と、薬理作用を持つ医薬部外品有効成分に分けて解説します。

2.1. 物理的・化学的角質除去による透明感向上成分

これらは主に化粧品分類の洗顔料で、「くすみケア」「毛穴ケア」の主役となる成分です。

酵素 (Enzymes)

作用機序: プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が古い角質を、リパーゼ(皮脂分解酵素)が毛穴の角栓や過剰な皮脂を分解します。これにより、肌のごわつきやざらつき、毛穴の黒ずみが改善され、肌の透明感が向上します15
代表製品: オバジC 酵素洗顔パウダー、スイサイ ビューティクリア パウダーウォッシュNなど15
注意点: 効果的ですが、過度な使用は肌のバリア機能を損なう可能性があるため、推奨使用頻度(週に数回など)を守ることが極めて重要です。

クレイ (Clay)

作用機序: モロッコ溶岩クレイやモンモリロナイトといったクレイは、微細な多孔質構造を持ち、負に帯電しています。これにより、正に帯電した皮脂汚れや古い角質を磁石のように吸着し、マイルドに除去します15
代表製品: b.glen クレイウォッシュ、洗顔専科 パーフェクトホワイトクレイなど1517
利点: スクラブのような物理的刺激が少なく、比較的マイルドな使用感が特徴です。

ピーリング成分 (Peeling Agents)

作用機序: グリコール酸や乳酸(AHA)、サリチル酸(BHA)は、角層細胞同士の接着を化学的に緩め、剥離を促進します。これによりターンオーバーを正常化させ、メラニンを含む古い角質をスムーズに排出します。その有効性は、日本皮膚科学会の「ケミカルピーリングガイドライン」によっても裏付けられています6
代表製品: サンソリット スキンピールバー15
注意点: 効果と刺激性は濃度とpHに依存します6。敏感肌の方は、低濃度の製品から試すことが賢明です。

2.2. 医薬部外品有効成分の作用機序とエビデンス

ここでは、医薬部外品に配合が許可された有効成分を、そのエビデンスレベルと共に評価します。これらの成分の有効性は主に「洗い流さない」製品で検証されており、洗顔料への配合は付加価値的な意味合いが強いことを再度強調します。

抗炎症成分 (Anti-inflammatory Agents)

成分名: グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)、グリチルレチン酸ステアリルなど13
作用機序と美白への関連性: 優れた抗炎症作用でニキビや肌荒れを防ぎます。炎症はメラノサイトを刺激し、シミの原因となるため(炎症後色素沈着)、日々の炎症を抑えることは、間接的にシミを予防する重要なケアとなります16
代表製品: オルビスユー ドット フォーミングウォッシュなど18

美白有効成分 (Active Whitening Agents)

ビタミンC誘導体 (Vitamin C Derivatives)
作用機序: L-アスコルビン酸 2-グルコシドなどが代表的です19。①チロシナーゼ酵素の活性阻害、②できてしまったメラニンの還元(色を薄くする)、③抗酸化作用など、複合的な効果を持ちます8。その有効性は数多くの臨床研究で支持されており、皮膚科学で最もエビデンスが豊富な成分の一つです8
代表製品: オルビス ブライト ウォッシュ19

ナイアシンアミド (Niacinamide / ビタミンB3)
作用機序: メラノサイトで作られたメラニンが、表皮細胞へ輸送されるプロセスを阻害し、色素が表面化するのをブロックします9。さらに、皮膚バリア機能の強化作用も報告されています20
エビデンス: 複数のランダム化比較試験で、シミ治療の標準薬であるハイドロキノンに匹敵する有効性を示しつつ、副作用が少ないことが確認されています20

トラネキサム酸 (Tranexamic Acid)
作用機序: メラノサイトを活性化させる情報伝達物質(プラスミン)の働きを阻害し、メラニン生成の初期段階を抑制します7。特に、肝斑の治療でその有効性が注目されています。
エビデンス: 内服薬としての肝斑への有効性は確立されており、外用薬としての有効性もメタアナリシスによって支持されています10。「美容医療診療指針」でも肝斑治療の選択肢として言及されています7
代表製品: トランシーノ薬用クリアウォッシュEX18

第3部:製品の再評価:作用機序に基づく分類と科学的分析

従来の「人気トップ10」のようなランキングは、異なる作用を持つ製品を同列に並べるため、科学的に無意味です。本稿ではランキングを廃止し、読者が自身の目的に合った製品を論理的に見つけられるよう、作用機序に基づいた3つの新カテゴリーを提案します。

3.1. 【医薬部外品】有効成分による「予防」と「肌荒れケア」

対象ユーザー: 将来のシミを予防したい、ニキビや肌荒れを防ぎたい、炎症を起こしやすい敏感肌の方。
主たる作用: 抗炎症成分が肌荒れを防ぎ、炎症後色素沈着のリスクを低減します16。美白有効成分がメラニン生成プロセスに介入し、シミの発生を根源から予防します19
代表製品例: トランシーノ 薬用クリアウォッシュEX、オルビス ブライト ウォッシュ、オルビスユー ドット フォーミングウォッシュ1819

3.2. 【角質ケア特化型】酵素・クレイ・ピーリング成分による「くすみ除去」

対象ユーザー: 肌のごわつき、ざらつき、毛穴の黒ずみや角栓、古い角質によるくすみに悩む方。
主たる作用: 酵素がタンパク質や皮脂を分解15、クレイが汚れを吸着15、ピーリング成分が角層の剥離を促進6。肌表面の物理的な問題を解決し、即時的に透明感を向上させます。
代表製品例: スイサイ ビューティクリア パウダーウォッシュN(酵素)、b.glen クレイウォッシュ(クレイ)、サンソリット スキンピールバー AHAマイルド(ピーリング)15

3.3. 【総合バランス型】保湿と洗浄を両立し、肌の土台を整える

対象ユーザー: 洗顔による乾燥やつっぱりが気になる、肌全体のコンディションを健やかに保ちたい全ての方。
主たる作用: ヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分を豊富に配合し、洗浄によるバリア機能の低下を最小限に抑制。潤いを守りながら汚れを落とし、健康な肌の土台を築きます。
代表製品例: SOFINA iP リニュー ムース ウォッシュ、ロゼット 洗顔パスタ ホワイトダイヤ1517

『美白関連洗顔料の科学的根拠に基づく包括的比較表』

商品名 メーカー 分類 主な作用成分 作用機序の科学的解説 主な目的と対象者 エビデンス・引用元
トランシーノ薬用クリアウォッシュEX 第一三共ヘルスケア 医薬部外品 トラネキサム酸, グリチルリチン酸2K メラニン生成を促す情報伝達物質(プラスミン)をブロックしシミを予防。抗炎症作用で肌荒れも防ぐ。 肝斑が気になる肌、炎症を起こしやすい肌のシミ予防。 7
オルビス ブライト ウォッシュ オルビス 医薬部外品 L-アスコルビン酸 2-グルコシド, グリチルリチン酸2K ビタミンC誘導体がチロシナーゼ活性を阻害しメラニン生成を抑制。抗炎症作用で肌を健やかに保つ。 将来のシミを予防したい、肌全体の透明感が欲しい。 19
スイサイ ビューティクリア パウダーウォッシュN カネボウ 角質ケア(酵素) プロテアーゼ, リパーゼ 2種の酵素が古い角質(タンパク質)と角栓(皮脂)を分解・除去。くすみやざらつきを改善する。 毛穴の黒ずみ、角栓、肌のごわつきが気になる。 15
b.glen クレイウォッシュ b.glen 角質ケア(クレイ) モンモリロナイト 天然クレイが持つイオンの力で、汚れや古い角質を肌に負担をかけずに吸着・除去する。 敏感肌だが毛穴ケアをしたい、潤いを保ちたい。 15
サンソリット スキンピールバー AHAマイルド サンソリット 角質ケア(ピーリング) グリコール酸 (0.6%) AHAが角層の結合を緩め、ターンオーバーを促進。日本皮膚科学会のガイドラインでも言及される成分。 肌のごわつき、くすみが気になる、ホームピーリングを試したい。 6
SOFINA iP リニュー ムース ウォッシュ 花王 総合バランス型 炭酸ガス, 保湿成分 高濃度炭酸泡が血行を促進し、肌のコンディションを向上。保湿成分が潤いを守り、しっとり洗い上げる。 乾燥が気になる、血行不良によるくすみが気になる。 15

第4部:専門家による実践的ガイダンス

製品知識だけでなく、それをどう実践するかがスキンケアの成否を分けます。ここでは、皮膚科医の知見を基に、効果的な洗顔法とリスク管理について詳述します。

4.1. 皮膚科医が推奨する「肌を育む」洗顔法

多くの専門家が、製品選び以上に「洗い方」の重要性を強調しています14。間違った洗顔は、どんな優れた製品の効果をも損ないます。友利新医師や上原恵理医師らの見解を基にした、肌を育む洗顔法の要点は以下の通りです2

  • 泡立ての重要性: 手のひらを逆さにしても落ちないほど弾力のある「硬い泡」を作ることが理想です12。この泡がクッションとなり、物理的な摩擦を最小限に抑えます。泡立てネットの使用が強く推奨されます12
  • 摩擦レス洗顔: 指で肌をゴシゴシこする行為は、バリア機能を破壊し、乾燥や炎症、さらには摩擦による色素沈着(シミ)を誘発する最大の原因です21。泡を肌の上で「転がす」ように、指が直接肌に触れないことを意識してください22
  • すすぎの温度と回数: 熱すぎるお湯は必要な皮脂まで奪い、冷たすぎる水は汚れが落ちにくくなります。32℃程度のぬるま湯が理想です22。すすぎ残しは肌トラブルの原因になるため、髪の生え際まで最低10回以上は丁寧に洗い流しましょう19
  • 洗顔料の適量: 使用量が少ないと十分な泡が立たず、洗浄力が落ちるだけでなく、摩擦が大きくなる悪循環に陥ります。製品に記載された推奨量を守ることが、効果的な洗顔の前提条件です12

4.2. 陥りやすい誤解とリスク管理

美白への関心が高いほど、誤った情報からかえって肌にダメージを与えてしまうことがあります。

誤解1:「ゴシゴシ洗えばシミは落ちる」という幻想

これは最も危険な誤解です。シミは肌表面の汚れではなく、表皮内部に蓄積したメラニン色素です11。物理的に強くこすってもシミは落ちません。むしろ、強い摩擦は炎症を引き起こし、メラノサイトをさらに活性化させ、シミをより濃くする最悪の結果を招きます21

誤解2:「美白洗顔料だけでシミは消える」という過度な期待

本稿で繰り返し強調したように、洗顔料の役割は「角質ケア」と「予防」が主です。すでに定着したシミを「治療」するには力不足です。「美容医療診療指針」でも、シミ治療にはQスイッチレーザーや光治療(IPL)、あるいは医師が処方するハイドロキノンやトレチノインといった外用薬が強く推奨されています7。本格的なシミ治療は皮膚科専門医の領域だと正しく認識することが重要です。

リスク管理:角質ケア製品の過剰使用とパッチテスト

酵素やピーリング成分配合の製品は効果的ですが、「やりすぎ」は禁物です。毎日使用したり、複数の角質ケア製品を併用したりすると、バリア機能が低下し、敏感肌を招く可能性があります。必ず製品推奨の使用頻度を守り、肌の調子を見ながら調整してください。また、新しい化粧品を使用する前には、必ず腕の内側などでパッチテストを行い、アレルギー反応が出ないかを確認する習慣をつけましょう。

よくある質問

質問1:ゴシゴシ強く洗えば、シミは早く薄くなりますか?

いいえ、絶対にやめてください。シミは肌の内部にあるメラニン色素の集まりであり、表面の汚れではありません11。物理的に強くこすることは、肌に微細な炎症を引き起こし、その刺激でメラノサイトがさらに活性化してしまい、シミを濃くする原因になります21。美白ケアにおいて、摩擦は百害あって一利なしです。

質問2:医薬部外品の美白洗顔料を使えば、今あるシミは消えますか?

医薬部外品の美白有効成分の主な効果は「メラニンの生成を抑え、これからできるシミやそばかすを防ぐ」ことです4。洗顔料は肌への接触時間が短いため、単体で既に定着してしまったシミを消すほどの効果を期待するのは困難です。本格的なシミ治療には、レーザー治療や処方薬など、皮膚科専門医による診断と治療が必要になります7

質問3:酵素洗顔やピーリング洗顔は毎日使っても良いですか?

推奨されません。これらの角質ケア製品は効果的ですが、毎日の使用は肌に必要な角質まで取り除きすぎてしまい、肌のバリア機能を低下させる可能性があります。その結果、乾燥や赤み、ヒリつきなどのトラブルを招きかねません。ほとんどの製品は週に数回の使用を推奨していますので、必ず製品ごとの指示に従い、ご自身の肌状態をよく観察しながら使用頻度を調整してください。

結論

本レポートを通じて、JHO編集委員会は「美白洗顔料」に関する科学的根拠に基づいた新しい評価軸を提示しました。洗顔料における「美白」には、「くすみ除去」という物理的効果と、「シミ予防」という薬理学的効果の二つの側面があります。そして、洗顔料の最も重要な役割は、既存のシミの「治療」ではなく、その後のスキンケア効果を高めるための「準備」にあると理解することが不可欠です。

真の美白肌を目指すために、本日より以下の4つのステップを実践してください。

  1. 正しい洗顔の実践:ご自身の目的に合った製品を選び、摩擦レスを徹底した「肌を慈しむ」洗顔を習慣にしてください。
  2. 洗い流さないケアの重視:洗顔後の「ゴールデンタイム」に、エビデンスの豊富な美白有効成分(ビタミンC誘導体、ナイアシンアミド、トラネキサム酸など)を含む美容液やクリームを使用してください。これこそが美白への最も効果的な投資です。
  3. 紫外線対策の徹底:いかなる美白ケアも、日々の紫外線対策なくしては成り立ちません。日焼け止めの使用は、全ての美白ケアの絶対的な土台です。
  4. 専門家への相談:セルフケアで改善しない頑固なシミは、自己判断で高価な製品を試すのではなく、速やかに皮膚科専門医を受診してください。医療機関でしか受けられない、より効果的で安全な治療法が存在します7
免責事項本記事は情報提供を目的としたものであり、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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