初期段階の白血病に要注意:よく誤解される13の症状
がん・腫瘍疾患

初期段階の白血病に要注意:よく誤解される13の症状

はじめに

みなさん、こんにちは、JHO編集部です。今回は、血液の健康に関する非常に重要なテーマを取り上げます。血液は、体内を循環しながら酸素や栄養素を運び感染症と戦い、そして血液の凝固を助けるなど、生命活動を支える多彩な機能を担っています。しかし、血液の状態に異常が生じると、体のさまざまな部分に影響が及びやすく、ときに深刻な症状を引き起こす可能性があります。特に、血液がんとして知られる状態は、初期症状がとても見逃されやすい特徴があり、発見が遅れると治療が難航することも少なくありません。そこでこの記事では、初期の血液がんの13の症状について詳細に解説し、早期発見の重要性と具体的な観察ポイントをお伝えします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

血液がんは、体の免疫や酸素運搬、栄養素の供給などに深く関わる血液細胞が異常増殖する病態です。この記事を読み、少しでも疑わしい症状を早めにキャッチすることで、早期受診や治療方針の選択に役立つかもしれません。是非、ご自身や周囲の方の健康管理にお役立てください。

専門家への相談

この記事に関しては、チュック・ファム (Trúc Phạm) 氏が担当しており、専門的なアドバイスは、チャン・キエン・ビン (Dr. Trần Kiến Bình, Cần Thơがん病院) が行っています。専門家による信頼性の高い情報に基づき、正確な内容をお届けします。ただし、この記事はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や状況によって適切な対応が異なる場合があります。なにか疑問や不安がある場合は、必ず医療の専門家にご相談ください。


1. 無原因のあざ

血液がんの初期段階では、特に血小板の減少が起こることが多く、その結果、出血しやすい状態になります。些細な接触や軽い衝撃でも皮膚にあざができやすいことが特徴です。通常の打撲では痛みや腫れの原因となった出来事を思い出せることが多いのですが、血小板の減少によるあざは、「これといった原因が思い当たらない」にもかかわらず出現します。あざは当初赤みを帯びていて、時間が経過すると色が変化し、より濃い紫色になったり、黄色っぽく変色していくことがあります。

  • たとえば、普段の生活の中で強くぶつけた覚えがないのに腕や脚にあざを頻繁に見つける場合、血液の状態に異常がある可能性があります。
  • あざを触ったときに、通常の打撲より柔らかい感触があることも特徴的です。

このようなあざの出現は、血小板が十分に働かないことで血管が損傷しやすくなると同時に、血液凝固機能が低下するために起こります。皮膚の状態をこまめに観察しておくことで、早期に異常を捉える助けになるでしょう。


2. 皮下出血の症候

初期の血液がんでは、皮膚表面に小さな赤い斑点(出血斑)や紫斑が生じることが多々あります。これは血液中の血小板数が減少し、毛細血管が傷ついたときに血液が皮下に漏れ出るためです。肌の色味によって現れ方はさまざまですが、色白の方は赤みが強く、肌がやや濃い色合いの方では紫や茶色っぽい色合いで認められます。

  • 圧迫しても色が消えないことが、よくあるアレルギー性の発疹などとの大きな違いです。
  • たとえば、理由もなく皮膚に赤い斑点が現れ、日を追うごとに広がったり濃くなったりする場合は、単なる皮膚炎ではなく血液の異常の可能性があります。

血液がんに伴う皮下出血のリスクとしては、毛細血管レベルで出血が起こりやすいことや、壊れた血管の修復機能が著しく低下することが挙げられます。こうした症状はよく見落とされがちですが、血液のトラブルを早期に示唆する重要な手がかりになるかもしれません。


3. 異常な皮膚の蒼白さ

貧血によって血液中の赤血球が不足すると、皮膚が異常に白っぽくなる場合があります。特に唇や舌、歯茎など粘膜の色が明らかに青白く見えるときは注意が必要です。これは、赤血球が担う酸素運搬能力が十分に発揮されていないサインともいえます。

  • 涙袋を軽く引っ張って内側を見たときに、普段より白っぽい色味で血色が悪い場合、貧血や血液関連の異常が疑われます。
  • また、顔色がよくない状態が長く続いたり、疲れやすさが目立ったりする場合も、赤血球不足による酸素供給不足が原因かもしれません。

貧血は血液がん以外にもさまざまな原因によって起こりますが、血液がんの初期段階においてもしばしば見られる症状です。もし毎日のように疲れやすいと感じたり、息苦しさが続くような変化を自覚するなら、医療機関で血液検査を受けるのが望ましいでしょう。


4. 過度の疲労感

貧血が原因となり、通常の休息や十分な睡眠をとっても解消されない強い疲労感が続くことがあります。さらに、貧血による酸素不足と相まって、頭痛めまいなどの症状を伴うこともあり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

  • たとえば、通勤や家事などの軽度な活動でさえ頻繁に息切れやだるさを感じ、仕事や家庭での用事を継続するのが難しくなるような疲労感です。
  • 起床時から体が重く感じられ、一日の始まりから極度の疲れを感じる場合もあります。

こうした症状は慢性疲労やストレスとの区別が難しいですが、血液がんの疑いがある場合は、単なる休養では改善されにくいのが特徴です。体が求める酸素を十分に供給できていないため、筋力や持久力が落ち、倦怠感が日増しに強くなることがあります。


5. 持続的な高熱

原因不明の高熱が持続することは、血液がんの初期症状のひとつとしても知られています。特に38℃以上の高熱がしばしば続き、解熱剤を使ってもなかなか下がらないことが特徴です。これは、白血球の減少により体の免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、がん細胞そのものによる炎症反応が継続していたりするためです。

  • 風邪のような症状だと思ってしばらく様子を見ていても、高熱がいつまでも続く場合は注意が必要です。
  • インフルエンザの疑いがあって病院を受診したものの、検査結果が陰性であり、処方薬でも改善が見られない場合、血液がんなど他の要因を考慮するべきです。

このような発熱症状は、血液がん以外にも自己免疫疾患や感染症など様々な疾患が原因となることがありますが、長期化する高熱には十分な注意が求められます。


6. リンパ節の腫れ

リンパ節の腫れは、特にリンパ腫を代表とする血液がんでよく見られる症状です。腋窩(わきの下)や頸部、鼠蹊部(そけいぶ)などのリンパ節が腫大しても、痛みを伴わないケースが多いのが特徴です。これは、リンパ球の異常細胞がリンパ節に蓄積し、リンパ節自体が拡大するために起こります。

  • 一般的な風邪や感染症によるリンパ節の腫れは、痛みがあることが多く、一定期間で自然に治ることが多いです。しかし血液がんによるリンパ節の腫れは、痛みがなく長期にわたって持続する場合があります。
  • たとえば、首やわきの下にしこりのような腫れを感じ、それが数週間以上続き、痛みもないまま大きくなっていく場合は専門医の診断が必要です。

リンパ節の腫れを早期発見できれば、リンパ系のがんや血液細胞の異常をいち早く疑って検査につなげることが可能です。適切な医療機関での精密検査が望まれます。


7. 無原因の出血

血液がんの患者は、特に鼻や歯茎からの出血が頻繁に起こりやすくなります。また、手を切った際に通常よりも出血が止まりにくい場合が多いです。さらに、女性では月経時の出血が過度に多くなること、血尿や便に血が混じることも見られることがあります。極めて稀なケースですが、脳内出血(脳出血)のリスクが高まることもあり、大変危険です。これらの症状はいずれも、血小板の減少に起因しています。

  • たとえば、歯磨きのたびに歯茎から出血する、ほんの少しの擦り傷なのに出血が数十分以上続くといった症状は、血液凝固機能の異常を示す可能性があります。
  • 血液がんでは、血小板以外にも凝固因子のバランスが崩れることがあるため、怪我をしたときの止血が非常に難しくなる場合があります。

無原因の出血症状は緊急度の高いサインであり、早めの受診によって治療のタイミングを逃さないことが大切です。


8. 呼吸困難

血液がんの中でも、赤血球の減少腫瘍が肺を圧迫するような状態では、呼吸困難息切れが生じやすくなります。軽い動作だけでも呼吸が乱れたり、安静時でさえ呼吸が苦しくなることもあります。心拍数が速くなり、時には不整脈がみられることもあります。

  • たとえば、階段を数段上っただけで著しい息切れに襲われたり、安静にしているのに胸が苦しくて眠れない夜が続く場合は、血液中の酸素供給が著しく不足している可能性があります。
  • 肺に直接的な異常がないにもかかわらず呼吸困難が続くときは、血液そのものに問題があるか、あるいはリンパ腫などで胸腔内に腫瘍ができている可能性も視野に入れるべきです。

呼吸困難は生活の質を大きく損なうだけでなく、酸素不足が進行すると心臓や脳など重要臓器への影響も懸念されます。早めの医療機関受診が推奨されます。


9. 夜間の寝汗

夜間の睡眠中に突如として大量の汗をかき、寝具や衣服がびっしょり濡れるほどになる症状は寝汗と呼ばれ、特にリンパ腫白血病の一部でよく報告されています。夏の暑い時期や体温調節の乱れなどでも寝汗は起こり得ますが、気温や寝具の問題がないのに毎晩のように大量の汗をかく場合は注意が必要です。

  • 大量の寝汗で夜中に何度も目が覚めてしまい、結果的に睡眠の質が低下して疲労感が抜けないというケースも少なくありません。
  • こうした寝汗の原因としては、がん細胞が分泌するサイトカインなどの生理活性物質が体温調節中枢に影響を及ぼす可能性が考えられていますが、はっきりとした機序はまだ完全に解明されていません。

寝汗は熱帯夜や自律神経の乱れでも起こりますが、発熱や体重減少、リンパ節の腫れなどほかの症状と併発する場合は、血液に関連する疾患を疑ったほうが安全です。


10. 骨の痛み

血液がんのなかでも、骨髄腫白血病などは骨の構造そのものに影響を及ぼしやすく、骨に鋭い痛み鈍い痛みが生じることがあります。特に胸骨、腕、胸部、髋部、脚など、骨髄が豊富な部位に症状が集中しやすいといわれています。

  • 運動後や夜間など、体を休める時間帯に痛みが増す場合があり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
  • 骨がもろくなった結果、骨折を起こしやすくなる例も報告されています。

たとえば、繰り返す骨折や慢性的な骨の痛みがある場合、整形外科的な問題だけでなく、血液がんによる骨破壊を考慮すべきです。骨の痛みはしばしば加齢や関節症と混同されがちですが、血液がんの初期段階で表れる重要な兆候になり得ます。


11. 腹部の問題

血液がんの一部では、異常な血球脾臓や肝臓に蓄積し、それらの臓器が腫大することがあります。脾臓や肝臓の腫大は、腹部膨満感食後の早い満腹感、左あるいは右の肋骨下に位置する領域の違和感として自覚されることがあります。

  • 食欲がないわけでもないのに、少量の食事で「いっぱいになった」と感じる、あるいは腹部膨満感が続くという場合は、脾臓や肝臓が拡大して胃を圧迫しているかもしれません。
  • 特に左側の肋骨下の違和感は脾臓腫大を示唆することが多く、血液がんや血液疾患が背景にある可能性があります。

脾臓が大きくなっていると、日常的な疲労感や免疫力の低下を引き起こすこともあり、ほかの症状と合わせて総合的に判断する必要があります。


12. 無原因の体重減少

血液がん細胞の存在により体内の新陳代謝が大きく乱れると、摂取カロリーや生活習慣に大きな変化がないにもかかわらず、無意識に体重が減少していくことがあります。これはがん細胞がエネルギーを奪うだけでなく、ホルモンバランスや免疫反応にも影響を及ぼすためと考えられています。

  • たとえば、運動量や食事量が変わっていないのに2~3か月のあいだに急激に2~3kg、あるいはそれ以上減少した場合は、体内で深刻な異常が進行している可能性があります。
  • 意図的なダイエットではなく、むしろ食事をしっかり摂っているにもかかわらず体重が落ちる場合は、早急に精密検査を受けることが望ましいです。

急激な体重減少は体力や免疫力の低下にもつながり、ほかの症状と併発すると健康リスクが一気に高まります。


13. 急性の血液がんの症状

急性の血液がん(急性骨髄性白血病など)では、症状が急激に現れ、短期間で体調が大きく崩れるケースがあります。これは、異常な白血球が爆発的に増殖することで、体内の正常な血液細胞が置き換えられ、酸素供給や免疫力、凝固機能などが一気に衰えてしまうためです。

  • 呼吸困難神経系の異常、意識障害などが突発的に起こり、最悪の場合には数日から数週間のうちに生命の危機に瀕することもあります。
  • 特に、突然の強い倦怠感や立ち上がれないほどの疲労、出血や感染症が重なって現れる場合には、早急な医療対応が必要です。

急性血液がんは進行が非常に速いため、一刻も早い発見と専門的治療が重要です。もし疑わしい症状が重なる場合は自己判断を避け、必ず医療機関を受診しましょう。


早期発見の重要性を支える最新の研究

血液がんの早期発見や治療効果を高めるために、近年はさまざまな研究が進められています。たとえば、分子生物学的解析遺伝子プロファイリングを用いた診断が行われることで、従来よりも早期に血液がんの種類や進行度を判定できる可能性が高まっています。

さらに、急性白血病においては分子標的薬の開発や、免疫療法と呼ばれる治療が研究・臨床応用されており、再発を抑制する効果が期待されています。以下に、ここ4年以内(2020年以降)に発表された海外の主要な研究の一例を挙げ、早期発見や治療の重要性を補足します(実際に学会等で議論・報告されている研究に基づく情報です)。

  • **急性骨髄性白血病(AML)**における新たな治療選択肢に関する研究(DiNardo CDら, 2020, New England Journal of Medicine, 383(7):617-629, doi:10.1056/NEJMoa2012971)
    こちらの研究では、Azacitidine(アザシチジン)とVenetoclax(ベネトクラクス)の併用療法を新たに導入した結果、高齢患者や移植が難しいとされる患者においても寛解率が向上し、生存期間の延長が期待できると報告されました。早期の段階で患者を的確に選別し、この治療法を適用することが予後改善に寄与するとされています。
  • **びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)**に対する新薬Polatuzumab vedotinの効果(Sehn LHら, 2020, Journal of Clinical Oncology, 38(2):155-165, doi:10.1200/JCO.19.00172)
    再発性または難治性のDLBCL患者に対し、Polatuzumab vedotinの併用療法が著しく高い治療効果を示しました。この研究結果は、がん細胞を特異的に攻撃する抗体薬物複合体の有用性を示唆しており、早期診断によって速やかに適切な治療を導入することで、患者の転帰を改善できる可能性が高いと考えられます。

これらの新しい治療選択肢や診断技術の進歩は、日本国内でも同様に注目されており、医療機関や研究機関で導入が検討されています。したがって、もし上記で述べた初期症状に心当たりがある場合、早期に医療機関を訪れることで、こうした新たな治療の恩恵を受けられる可能性があります。


結論と提言

血液がんの初期症状は、無原因のあざ皮下出血強い疲労感感染症にかかりやすい状態など、一見すると「一時的な体調不良」で片づけてしまいそうなものばかりです。ところが、こうした症状が慢性的・反復的に続く場合は、血液の異常が潜んでいるおそれがあります。特に、早期の血液がんを見逃すと治療が大変難しくなるため、些細な違和感でも「様子見を続ける」よりは、専門家による診察を受けることが重要です。

  • 自己判断は避け、身体に異変を感じたら、早めに医療機関で血液検査や画像検査を受けましょう。
  • 血液がんは種類や進行度によって治療法が多岐にわたるため、専門医の判断を仰ぐことで適切な治療計画を立てることができます。

また、血液がんの治療や予後は今まさに大きく変化しつつあります。分子標的薬や免疫療法の進歩によって、過去よりも高い生存率や生活の質(QOL)の向上が期待されています。大切なのは、できるだけ早期に異常を見つけ、医療機関を受診することです。


専門家への相談のすすめ

この記事で紹介した症状はあくまでも一般的な例であり、誰にでも該当するわけではありません。しかし、もし気になる症状や長期間にわたる体調不良を感じたら、まずは血液内科や腫瘍内科など専門の医師に相談することを強くおすすめします。血液検査や画像診断(CT、MRI、PET-CTなど)、骨髄穿刺検査など、総合的な検査を行うことで正確な診断が得られます。

  • 専門医は症例数の多い医療機関に所属していることが多く、診断精度や治療経験が豊富です。疑いがある場合は大きな病院やがん専門病院を選ぶのも一つの方法です。
  • 予防や早期発見の観点から、定期的な健康診断での血液検査を受けることも有効です。特に家族に血液疾患の既往がある方や、体調不良が長引きやすい方は注意が必要です。

生活習慣やセルフケアの補足

血液がんの発症には遺伝的要因やウイルス感染、環境要因など、多岐にわたるリスクファクターが考えられています。ただし、明確な原因が判明しない場合も少なくありません。以下のような生活習慣やセルフケアを心がけることで、体調の変化を早期にキャッチしたり、全身の健康を維持したりすることが期待されます。

  • バランスの良い食生活
    野菜や果物、良質なたんぱく質、適度な炭水化物をバランスよく摂取しましょう。特に体調不良時には栄養バランスが偏りやすくなるため、意識的に栄養素を補うことが大切です。
  • 定期的な運動
    適度な有酸素運動や筋力トレーニングは血行を促進し、ストレス軽減にも役立ちます。ただし、疲労感が強い場合は運動の強度や量を調整し、専門家のアドバイスを受けるのが望ましいです。
  • 十分な睡眠と休息
    夜間の寝汗や疲労感があるときこそ、できるだけ睡眠環境を整え、質の高い休息を確保してください。体の回復力を高めるためにも重要です。
  • ストレス管理
    長期的なストレスは免疫力の低下を招き、体調不良を引き起こす原因にもなります。趣味やリラクゼーション法を活用してストレスを軽減することが、健康管理の面でも有益です。

生活習慣を整えることで免疫バランスを保ち、体内の異変に早めに気づけるようになると考えられています。ただし、これらはあくまで一般的な健康管理の一環であり、血液がんの予防を完全に保証するものではありません


同じ症状でも別の疾患の可能性も

ここまでご紹介した症状は、血液がん以外のさまざまな疾患でも起こりえます。たとえば、無原因のあざや出血傾向は血友病などの凝固障害でも見られますし、発熱や疲労感は多くの慢性疾患や自己免疫疾患の一症状としても現れます。したがって、自己判断で「血液がんだ」と思い込むのではなく、医師の診察を受けて正確な診断を行うことが大切です。


予後と治療の進歩

血液がんにはさまざまなタイプがあり、治療方法や予後は病型・進行度・患者さんの体力や合併症の有無などによって大きく左右されます。一般的には以下のような治療法が行われています。

  • 化学療法(抗がん剤)
    代表的な治療手段であり、複数の薬剤を組み合わせて異常細胞を抑制します。副作用の管理が重要です。
  • 放射線療法
    リンパ腫や骨髄腫など、一部の血液がんでは患部に直接放射線を照射し、腫瘍細胞を減少させる方法が用いられます。
  • 造血幹細胞移植
    自家移植と同種移植の2種類があります。ドナーから提供された健康な造血幹細胞によって正常な血液細胞を再生させることが目的です。適切なドナー探しや移植後の拒絶反応対策がカギとなります。
  • 分子標的薬・免疫療法
    がん細胞の特定の遺伝子変異やシグナル伝達経路をターゲットにした薬剤、およびがん免疫を活性化させる薬剤(CAR-T細胞療法を含む)などの開発が進み、治療効果の向上が期待されています。

近年は研究の進歩により、血液がんの治療効果と生存率が向上傾向にあります。ただし、これらの治療法は早期発見・早期診断が前提となる場合が多く、初期段階で適切な治療を開始することが予後に大きく影響します。


日本国内での血液がん医療体制と今後の展望

日本国内でも、血液がんへの対策や治療レベルの向上に向けた取り組みが行われています。がん拠点病院や総合病院の血液内科では、患者さん一人ひとりの病状に合わせてチーム医療が提供され、化学療法だけでなくサポーティブケアやリハビリテーションにも力を注いでいます。

  • 臨床研究の活発化
    大学病院や研究機関では、新薬の臨床試験や分子生物学的研究が盛んに行われています。今後さらに治療の選択肢が増える可能性が高く、患者さん自身も最新の情報を得ることで治療方針を考えやすくなるでしょう。
  • 患者支援制度の充実
    医療費助成や相談支援センターの設置など、血液がん患者さんが安心して治療を継続できるような制度や環境整備も進んでいます。治療だけでなく、社会復帰や生活の質の向上も重要な課題です。
  • 患者同士の情報共有
    患者会やSNS、オンラインコミュニティなどを通じ、同じ病気を経験した人同士が情報を共有したり、心の支えになるケースが増えています。医療者の情報に加えて、実際の患者経験や工夫を知ることで不安が軽減されることもあります。

こうした医療体制や社会的支援の向上により、血液がんの診断や治療を巡る環境は以前に比べて格段に良くなっています。一方で、患者数の増加や高齢化に伴う複合的な問題、治療費の問題など、新たな課題も生じています。早期発見・早期治療が有効であることは変わりませんので、定期的な健康診断や些細な症状への注意がますます大切になるでしょう。


注意事項と今後のアクション

最後に、本記事で示した情報はあくまで一般的な健康情報・医学情報であり、全ての人に当てはまるわけではありません。また、個々の病状や状態によって必要な検査・治療は異なります。したがって、以下の点を強調しておきます。

  • 本記事はあくまで参考情報
    医療行為を行うものではなく、個人の診断を確定するものでもありません。あくまで、初期症状の目安や血液がんの可能性を理解するきっかけとしてご活用ください。
  • 専門家に相談することが第一
    気になる症状がある、または症状が長期化している、あるいは上記の症状が複数見られる場合は、医師の診察を受けるようにしてください。自己判断で放置すると治療のタイミングを逸するリスクがあります。
  • 医療機関や公的機関の情報を活用
    日本国内には、がん相談支援センターや公的機関(自治体など)の相談窓口があります。医療費助成や制度の利用なども含め、必要な支援を受けましょう。
  • 早期発見・早期受診の習慣化
    定期的に血液検査や健康診断を受けることで、血液がんだけでなくその他の疾患も早期に発見できる場合があります。特に家族歴がある方は、日頃から自己チェックを心がけるとともに、医師に相談して計画的に検査を受けましょう。

参考文献

(以下、本文中で言及した新しい研究例)

  • DiNardo CDら (2020) “Azacitidine and Venetoclax in Previously Untreated Acute Myeloid Leukemia.” New England Journal of Medicine, 383(7), 617-629. doi:10.1056/NEJMoa2012971
  • Sehn LHら (2020) “Polatuzumab Vedotin in Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma.” Journal of Clinical Oncology, 38(2), 155-165. doi:10.1200/JCO.19.00172

最後に

この記事が、血液がんに関する初期症状の理解や日常生活でのチェックポイントを考えるうえで、少しでもお役に立てれば幸いです。もし上述の症状に心当たりがあったり、違和感が長期間にわたって続くと感じる場合は、速やかに医師の診断を受けてください。血液がんは早期発見・早期治療が大切であり、適切な時期に対応することで予後を大きく改善できる可能性があります。

なお、本記事の情報はあくまで参考であり、最終的な診断・治療方針の決定には必ず医師や専門医の助言を求めてください。医療機関での検査や相談を遠慮なく活用し、正確な情報と安心を手に入れていただきたいと思います。どうぞお大事にお過ごしください。

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