前立腺肥大は危険か?| そのリスクと対処法を探る
腎臓と尿路の病気

前立腺肥大は危険か?| そのリスクと対処法を探る

はじめに

こんにちは、JHOです。今回は、多くの男性に見られる健康上の問題である前立腺肥大について詳しくお話しします。年齢を重ねるにつれ、前立腺肥大のリスクが高まることはよく知られています。実際、50歳から80歳代の男性に一般的に見られる症状であり、適切な管理を怠ると日常生活の質(QOL)に大きく影響を及ぼす可能性があります。しかし、本当にそれほど危険なのでしょうか。また、どのように対処すればよいのでしょうか。本稿では前立腺肥大の症状、原因、治療法について、最新の知見や研究も踏まえながら詳しく解説していきます。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

前立腺を含む泌尿器系のトラブルは、個々の体質や生活習慣、年齢、既往歴などによって症状や重症度が異なる場合があります。そのため、自己判断で対処するとかえって悪化を招くリスクが否定できません。特に以下のような傾向がある方は、早めの受診を検討することが大切です。

  • 夜間頻尿や排尿の勢いの低下などの症状が気になる
  • 50歳以上で排尿トラブルを経験し始めた
  • 家族歴として前立腺肥大を抱える男性親族がいる
  • 他の持病(糖尿病、高血圧、心疾患など)を抱えている

ご自身の症状や状態に応じて、専門の泌尿器科医やかかりつけの医師に相談してください。本記事では、信頼できる国際的・国内外の医療機関や研究の情報を参照しつつ、前立腺肥大に関する基礎的な知識から対策までをわかりやすく解説します。ただし、ここで提供する内容はあくまでも一般的な情報であり、個別の診断や治療行為を行うものではありません。あらゆる治療法・予防策を実践する前に、必ず医療専門家に相談するようお願いいたします。

前立腺肥大とは何か?

前立腺肥大(benign prostatic hyperplasia:BPH)は、前立腺内の細胞が過剰に増殖し、その結果として尿道を圧迫してしまう状態を指します。前立腺は膀胱の下部にあり、尿道を取り囲むように存在するため、ここが肥大すると尿の通り道を狭くしてしまいます。これは加齢とともに男性ホルモンのバランスなどが変化することで起こるとされ、決して珍しい病態ではありません。

一方で、前立腺肥大と前立腺がんは異なる疾患です。前立腺がんと比べて、前立腺肥大は悪性腫瘍ではないため直接的に「がんリスク」を高めることはありません。しかし、尿道が長期間圧迫される状態が続くと、排尿障害や関連する合併症を引き起こす可能性があります。代表的な症状や合併症には、以下のようなものがあります。

  • 急性尿閉(急に尿が出なくなる状態)
  • 慢性的な尿閉(常に尿が出にくく、残尿が多い)
  • 尿路感染症(膀胱炎など)
  • 膀胱や腎臓への負荷や損傷
  • 膀胱結石
  • 血尿

これらの症状の中でも、とくに尿がほとんど出なくなる急性尿閉は危険とされます。尿が膀胱内に長時間とどまると、感染リスクが上昇し、最悪の場合は腎機能障害や腎不全を引き起こす可能性が否定できません。

前立腺の基本的な役割

前立腺は男性特有の臓器で、主に精液の一部(前立腺液)を分泌しています。精液をアルカリ性に保つ役目などがあり、精子の運動性や寿命を維持するために欠かせない存在です。このように生殖機能を支えるために重要な臓器であるものの、加齢による変化が起こりやすく、多くの男性で何らかの前立腺のトラブルが見られるようになります。

前立腺肥大はなぜ起こるのか? 〜原因とメカニズム〜

前立腺肥大のはっきりした原因は完全には解明されていませんが、主に加齢に伴うホルモンバランスの変化が関与するといわれています。男性ホルモンであるテストステロンは年齢とともに減少する傾向がありますが、前立腺内ではこのテストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)という活性の高い物質に変化し、細胞増殖を促す作用を持つと考えられています。

ただし、加齢だけが要因ではなく、次に挙げるようなさまざまな要因が複合的に関与している可能性があります。

  • 遺伝的要因:家族歴に前立腺肥大がある場合、発症リスクが高まる
  • 肥満やメタボリックシンドローム:内臓脂肪とホルモンバランスの乱れ
  • 心疾患や循環器疾患:血液循環や内分泌系への影響
  • 2型糖尿病:インスリン抵抗性や代謝異常による影響
  • 運動不足:代謝や血流の低下
  • 勃起不全:ホルモン動態や血管機能の関連

たとえば、肥満がある場合は体内の脂肪細胞から分泌されるサイトカインやホルモンが前立腺周辺の微小環境に影響を与え、結果的に前立腺肥大を進行させる一因になりうるといわれています。さらに生活習慣として喫煙や過度な飲酒を続けることも、血管障害やホルモン変動を通じて前立腺に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。

前立腺肥大のリスク要因

前述の通り、男性が年を取るにつれて前立腺肥大のリスクは上がりますが、特定の要因を持つ男性は発症率がさらに高まります。以下に改めて代表的なリスク要因をまとめます。

  • 家族歴:近親者に前立腺肥大を経験した人がいる
  • 肥満、心疾患、循環器疾患、2型糖尿病:生活習慣病の存在
  • 運動不足:血流や代謝の低下
  • 勃起不全:ホルモンバランスや血管機能への影響

特に50歳以上になったら、こうしたリスクが重なる場合は定期的な検診が推奨されます。前立腺特異抗原(PSA)値の測定をはじめ、泌尿器科での診察を定期的に受けておくことで、早期発見と早期介入が可能になります。

前立腺肥大の症状

前立腺肥大の症状は「下部尿路症状(LUTS)」と呼ばれる一連の排尿障害が中心で、代表的には以下が挙げられます。

  • 弱い尿流や途切れる尿流
  • 排尿開始まで時間がかかる、排尿時に力まないと出ない
  • 尿をしてもすっきり感がない(残尿感)
  • 夜間頻尿
  • 急に尿意を感じ、我慢しづらい(切迫感や失禁)
  • 一日に何度もトイレに行くほどの頻尿
  • 尿後滴下(排尿後もしばらく尿が垂れる)
  • 射精後や排尿時の痛み

症状の進行度や個人差は大きく、軽度であれば日常生活に支障を感じない場合もあります。しかし、すでに尿流低下や残尿感が強く出ているような場合には、前述した合併症につながる恐れがあります。とくに夜間頻尿が続くと睡眠の質が下がり、疲労や集中力低下、生活リズムの乱れが起こりやすくなります。

早期受診の意義

これらの症状が出ていても「年のせいだから仕方がない」と放置する方は少なくありません。しかし、早期発見・早期治療により症状を和らげ、合併症を防ぐことは十分可能です。また、似たような症状を引き起こす疾患(前立腺がんや尿路結石など)も存在するため、専門医の診断を受けることが重要です。

前立腺肥大の診断

前立腺肥大が疑われる場合、通常は泌尿器科で以下のような検査や問診を経て総合的に診断が下されます。

  1. 問診・症状評価
    • 排尿パターン、夜間頻尿の回数、尿の勢い、残尿感など
    • 生活習慣や飲水量、服薬の有無
  2. 身体診察
    • 直腸指診(肛門から指を挿入し、前立腺の大きさや硬さを触診)
    • 下腹部の触診
  3. 血液検査
    • 前立腺特異抗原(PSA)値の測定:前立腺がんとの鑑別に有用
    • 一般的な血液検査(肝機能や腎機能の指標など)
  4. 尿検査
    • 感染の有無(尿路感染症)や血尿の確認
  5. 画像検査
    • 腹部超音波検査(前立腺の大きさ・形状、残尿量の計測など)
    • 必要に応じてMRIやCTスキャン

これらの結果を総合的に判断することで、前立腺肥大の程度や他疾患の除外診断が行われます。症状が軽度であれば経過観察のみになる場合もあれば、薬物治療や手術を検討するケースもあります。

症状が現れたらどうするべきか?

もし上記のような症状が日常生活に影響を及ぼすようになったら、迷わず医療機関を受診しましょう。とくに次のような兆候がある場合は放置せず、早めに専門医の診察を受けることが推奨されます。

  • 尿が出にくい状態が急激に悪化し、排尿困難を感じる
  • 夜間頻尿で熟睡できず、生活リズムが崩れている
  • 下腹部や尿道に痛みを伴う(感染症の可能性)

自己流の対処でサプリメントや漢方薬を試しただけでは根本的な改善が期待できない場合もあります。また、前立腺がんなどほかの疾患の可能性を除外する意味でも、専門家のアドバイスが重要です。

前立腺肥大の治療法

前立腺肥大の治療には大きく分けて3つのアプローチがあります。

  1. 生活習慣の改善
  2. 薬物療法
  3. 手術療法

軽度から中等度の症状であれば、まずは生活習慣の見直しや薬物療法が検討されます。一方、症状が重度で尿閉や合併症が起きている場合には、手術療法を考慮しなければならないケースもあります。

生活習慣の改善

  • 適度な水分摂取のバランス
    こまめに水分をとることは重要ですが、就寝前や外出時に過剰に摂取すると夜間頻尿や排尿切迫感が強くなることがあります。飲水のタイミングを調整する、あるいはカフェインやアルコールを控えるなどの工夫が有効です。
  • 肥満対策・運動習慣
    ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどの運動は、血行促進やホルモンバランスの改善に寄与します。肥満を解消することは前立腺肥大だけでなく、生活習慣病の予防にも役立ちます。
  • 排尿習慣の再点検
    トイレを我慢するクセがあると、膀胱に余分な負荷がかかり、残尿が増える恐れがあります。排尿をしたくなったら早めにトイレへ行くことを習慣づけましょう。
  • その他(喫煙・飲酒)
    喫煙は血管収縮を促し、前立腺周辺の血流障害を招く可能性が指摘されています。また、過度のアルコール摂取は膀胱刺激のリスクを高め、夜間頻尿の一因になります。

薬物療法

薬物療法は、前立腺肥大の第一選択肢として広く用いられます。代表的な薬剤には以下が挙げられます。

  • α(アルファ)受容体遮断薬(アルファーブロッカー)
    前立腺や膀胱頸部の平滑筋を弛緩させ、尿道の通りを改善します。比較的速やかに症状を和らげる効果が期待できる一方で、めまいや低血圧を引き起こす場合があるため注意が必要です。
  • 5α還元酵素阻害薬
    前立腺内でテストステロンをDHTに変換する酵素を阻害し、前立腺容積を徐々に縮小させる作用があります。ただし効果が出るまでに数カ月以上かかることが多く、根気よく服用を続ける必要があります。

軽度の前立腺肥大であれば、アルファーブロッカーのみでも十分症状をコントロールできるケースがあります。一方、前立腺体積が大きく、合併症リスクが高い場合は、5α還元酵素阻害薬が併用されることがあります。

手術療法

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、重度の症状・合併症(慢性尿閉、腎機能障害など)が認められる場合には手術療法が検討されます。代表的な手術としては、以下の方法があります。

  • 経尿道的前立腺切除術(TURP)
    尿道から内視鏡を挿入し、内側から肥大した前立腺組織を削り取る方法。長年にわたって行われてきた標準的な手術であり、高い有効性が期待できるものの、出血や射精障害などのリスクがあります。
  • ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)
    レーザーを用いて前立腺組織を削り取る方法。出血リスクが低く、術後の回復が比較的早いとされますが、高度な技術を要するため対応可能な医療機関が限られます。
  • その他のレーザー治療
    グリーンライトレーザー(PVP: photoselective vaporization of the prostate)など、複数のレーザー治療法が開発されています。出血リスクの軽減や術後の入院期間短縮などのメリットがある一方、施設や術者の熟練度によって適応が左右されます。

2022年にInternational Journal of Urologyに掲載されたLioらの研究(doi: 10.1111/iju.14938)によれば、レーザーを中心とした低侵襲手術(ミニマルインベイシブ手術)が近年注目を浴びており、従来のTURPに匹敵する効果を発揮しつつ、入院期間や出血量のリスクを低減させられる可能性が示唆されています。ただし、すべての患者に適応できるわけではなく、手術前の評価や手術設備、術者の経験などを総合的に考慮する必要があります。

再発予防と治療中の注意点

前立腺肥大は加齢とともに進行する可能性があるため、一度治療や手術を行っても時間を経て再び症状が出てくるケースがあります。そこで、治療後も以下の点に留意することが望まれます。

  • 定期検診の継続
    PSA値の測定や残尿量のチェックなどは再発防止や他疾患の早期発見につながります。
  • 生活習慣の維持・改善
    適度な運動、食事の見直し、禁煙の徹底などは治療効果の維持にも寄与します。
  • 薬の服用を勝手に中断しない
    症状が改善しても、医師の指示なく服薬をやめると、再度症状が悪化する可能性があります。

心理面への影響とサポート

前立腺肥大に伴う夜間頻尿や排尿困難は、QOLの低下を招き、心理的ストレスやうつ状態につながる恐れがあります。周囲に相談しづらいデリケートな問題であるだけに、一人で悩み続ける方も少なくありません。しかし、適切に治療を行えば改善が期待できる症状でもあります。家族やパートナーに理解を得たり、専門医やカウンセラーに相談したりすることで、精神的な負担を軽減できる場合があります。

予防の可能性はあるのか?

前立腺肥大を完全に予防する確立した方法は現在のところ見つかっていませんが、健康的な生活習慣を維持することでリスクを減らせる可能性はあります。特に肥満やメタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を持つ方は、以下の点を意識することで前立腺だけでなく全身の健康も守れるでしょう。

  • 栄養バランスの良い食事
    野菜や果物、魚、良質なタンパク質を取り入れ、飽和脂肪酸や過度な糖分を抑える
  • 適度な運動
    週に数回のウォーキングや自転車、水泳など、有酸素運動を中心に継続
  • ストレス管理
    睡眠をしっかりとり、趣味やリラクゼーション法を活用し、過度なストレスを避ける
  • 定期的な健康診断
    50歳以上になったら年1回以上の泌尿器科検査を検討

前立腺肥大に関する最新の研究動向

近年、ホルモン療法や遺伝子レベルのアプローチなど、多方面から前立腺肥大の治療や進行予防に関する研究が進んでいます。加齢男性におけるホルモン動態と前立腺組織の相互作用をより詳しく解明することで、従来の薬物療法よりも効果的かつ副作用の少ない新薬の開発が期待されています。また、生活習慣病と前立腺肥大の関係を大規模な疫学調査や臨床試験で検証する動きも活発です。

たとえば近年(2020年以降)の国内外の学会発表や論文では、「前立腺周囲脂肪組織から分泌されるさまざまなサイトカインが、前立腺内の炎症や線維化に関与する」という説が注目を集めています。そこで肥満を改善することで、前立腺の慢性炎症を抑制し、ひいては前立腺肥大の進行を遅らせられる可能性が示唆されています。これらの知見は今後の新しい治療法や予防策に結びつく可能性があるとして研究が進められており、日本の臨床現場にも順次応用されることが期待されています。

日常生活でできる対策

前立腺肥大は加齢による変化が大きいとはいえ、日々の生活習慣を見直すことは症状の緩和や進行予防に有益です。以下のポイントを意識してみましょう。

  • 就寝前の水分摂取を控える
    夜間頻尿がつらい場合は、睡眠に入る数時間前から過度な水分補給を避けるのが一般的です。
  • カフェインやアルコールの摂取量を管理する
    カフェインやアルコールには利尿作用があり、頻尿を悪化させやすいので、摂り過ぎに注意しましょう。
  • 骨盤底筋エクササイズ
    いわゆる骨盤底筋体操(男性版のケーゲル体操)は、排尿コントロールの改善に役立つと指摘されています。具体的には肛門や尿道を締めるように意識する運動を1日に数回行う方法です。
  • 適切な睡眠とストレスケア
    睡眠不足は体全体のホルモンバランスや自律神経に影響を与えます。十分な睡眠時間を確保するほか、ストレスを溜めこまない生活を心がけましょう。

医師に伝えるべき情報

受診時、医師が治療方針を判断するためにも、次のような情報を具体的に伝えるようにすると診断がスムーズです。

  • 症状の始まりと経過、どのようなタイミングで悪化・改善するか
  • 夜間頻尿の回数や尿漏れの頻度
  • 既往症(糖尿病、心疾患、高血圧など)や現在の服薬状況
  • 食事習慣や運動習慣、飲酒・喫煙の量
  • 家族歴:前立腺肥大や前立腺がんの既往があるかどうか

手術後の生活と注意点

手術を受けた場合、多くは入院が必要になります。術式によって入院期間や術後経過は異なりますが、一般的には数日から1週間程度で退院が可能です。術後は次の点に注意しましょう。

  • 排尿管理
    術後しばらくは尿道カテーテルが留置される場合があります。自己抜去しないよう十分に注意するとともに、抜去後も尿意や残尿感などを確認します。
  • 感染予防
    排尿経路への感染リスクを低減するため、医師の指示に従った抗菌薬の内服や水分摂取を心がけます。
  • 過度な運動や重い荷物の持ち上げを控える
    血尿リスクや出血リスクを避けるため、医師が許可するまで無理な運動は控えます。
  • 定期的な通院
    再発や合併症を早期発見するため、術後検診を定期的に受ける必要があります。術後のPSA値測定や画像検査、膀胱鏡検査など、医師の指示に従い継続しましょう。

生活の質(QOL)向上のために

前立腺肥大が進行すると、夜間頻尿や失禁などで外出がおっくうになり、社会生活に制限が生じることもあります。これが心理的ストレスを増大させ、結果として孤立やうつ状態を引き起こす場合があります。そのため、QOL向上の観点からは以下のような工夫も大切です。

  • トイレ環境の整備
    自宅のトイレを明るくし、夜間でもスムーズに行けるように手すりを付けるなどのバリアフリー対応を検討します。
  • 吸水パッドや防水シーツの利用
    失禁が心配な方は、吸水パッドを使用したり就寝時に防水シーツを敷くなどして、万が一のときでも負担を軽くします。
  • 家族や周囲の理解
    排尿トラブルはデリケートで相談しづらい内容ですが、悩みを共有できる相手がいると精神的な負担が和らぎます。医療従事者や家族とのコミュニケーションを大切にしましょう。

前立腺肥大と勃起不全の関連

前立腺肥大を抱える男性の中には、勃起不全(ED)を同時に発症している方も珍しくありません。EDは年齢や生活習慣、血管機能、ホルモンバランス、心理的要因など多数の因子が複雑に絡むため、前立腺肥大だけが原因ではない場合も多いです。しかし、前立腺肥大が進行し排尿障害が悪化すると、ストレスや血行不良などを通じてEDリスクが上昇する可能性があります。

また、前立腺肥大の薬物療法に使用されるα受容体遮断薬がEDに良い影響を与えることもあれば、場合によっては逆に性機能に影響が出るケースも報告されています。いずれにしても、勃起不全は放置されるとQOLの低下を招くため、恥ずかしがらずに医師に相談することが望ましいでしょう。

性生活への影響

前立腺肥大が直接性行為を阻害するわけではありませんが、頻尿や残尿感、夜間頻尿による睡眠不足などが重なると、性生活に取り組む気力やパフォーマンスが低下する場合があります。性行為においても、男性の下部尿路機能と心理状態は密接に関係しているため、治療の一環としてパートナーと話し合いながら前向きに対処する姿勢が大切です。

海外での治療動向と日本への応用

欧米を中心に、前立腺肥大の治療は近年ますます低侵襲化が進んでいます。特にアメリカやヨーロッパでは、前述したレーザー療法や水蒸気を用いた手術など、新しい技術が次々に導入されています。これらの技術の一部はすでに日本でも導入され始めており、適応基準の検討や保険診療での扱いなどが議論されています。

日本国内では、高齢化が急速に進む一方で、医療技術と情報提供の整備が進展しているため、従来に比べれば早期に新しい治療法が導入される傾向にあります。ただし、実際に受けられる治療の選択肢は、各医療機関の設備や専門医の経験、患者個々の病態によって異なります。最新技術が常に最良というわけではないため、患者と医師がしっかりコミュニケーションをとり、メリット・デメリットを比較検討するプロセスが大切です。

医療費・保険制度

前立腺肥大の治療にかかる費用は、治療法によって大きく異なります。日本では健康保険制度のもと、多くの診療や手術に保険が適用されますが、自由診療の扱いになる医療や先進医療などの場合は高額になることもあります。たとえばレーザー治療などは、施設や機種によって保険適用の有無が違う場合があります。いずれにせよ、費用面で不安がある場合は、事前に病院やクリニックの医療相談窓口で確認するとよいでしょう。

患者同士の情報交換とコミュニティ

排尿障害や前立腺肥大は、プライベートな内容であるがゆえに周囲の人に相談しづらいかもしれません。しかし、近年はインターネット上で患者同士が情報交換できるコミュニティやサポートグループが存在します。ただし、ネット上には正確性に疑問のある情報も多いため、医療専門家の監修があるサイトや、実際に医療機関が運営する患者会を利用するのがより安全です。

治療を受けるか迷っている方へ

「症状はまだ軽いし、病院に行くほどではないかもしれない」「手術は怖いから避けたい」といった理由で受診を先延ばしにしている方もいるでしょう。しかし、前立腺肥大は放置して悪化すると、急に尿がまったく出なくなる急性尿閉や、腎機能障害など重大な問題につながるリスクがあります。早期に相談しておけば、重症化を防ぎ、生活の質を維持できる可能性が高くなります。怖がらず、まずはかかりつけ医や泌尿器科専門医に相談してみることをおすすめします。

おわりに ~正しい知識と早期受診の重要性~

前立腺肥大は、50代以降の男性が高確率で直面する可能性がある病態です。加齢によるホルモンバランスの変化や生活習慣など、さまざまな要因が重なって生じるため、「年だから仕方ない」と放置しがちですが、適切な治療やケアによって十分に症状を抑え、QOLを維持することができます。
とくに日本では平均寿命が長く、高齢になっても社会活動に積極的に参加したいという方も多いため、前立腺の健康管理はますます重要なテーマになると考えられます。

本記事で紹介した情報はあくまでも一般的な内容であり、個人差があります。症状に気づいたら早めに受診し、医療専門家の指導を受けるようにしましょう。

参考文献

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