（以下、最終的な記事本文のみを提示いたします。指示や注釈などは一切含まれておりません。）
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
こんにちは、JHO編集部です。本日は、睡眠の質を向上させる手助けをするための技術に関してお話ししたいと思います。皆さんは、多相睡眠という言葉を聞いたことがありますか？睡眠は健康に欠かせない要素であり、日々の生活においても極めて重要です。しかし、現代の忙しい生活環境では、睡眠の質が妨げられることが多く、十分な休息を得られない方も少なくありません。そんな中、睡眠障害を正確に評価し、改善策を検討するうえで役立つ技術の一つとして、多相睡眠検査（ポリソムノグラフィー）がよく知られています。この記事では、この多相睡眠検査がどのようにして私たちの健康管理に役立つのかを、より深く、そして実践的な観点も交えて詳しく解説していきます。
専門家への相談
この記事の内容は、Nguyễn Thường Hanh医師による助言を元に作成されており、さらにPhương Quỳnh氏が執筆・更新を行っています。こうした専門家の知識を参考にすることで、情報の正確性と信頼性を高め、読者の皆様に役立つ内容をお届けできるよう努めています。ただし、本記事で紹介する内容はあくまでも情報提供を目的としたものであり、個々の医療アドバイスではありません。睡眠に関する疑問や症状に心当たりのある方は、必ず医師や睡眠専門医などの医療専門家にご相談ください。
多相睡眠とは？
多相睡眠検査、すなわちポリソムノグラフィーは、睡眠障害を診断するために極めて重要な評価方法です。一晩を通じて脳波や呼吸、心拍数など多角的な生理学的指標を測定し、睡眠にまつわる問題点を洗い出すことを目的としています。通常は夜間に行われますが、夜勤シフトや特別な生活リズムをもつ方のために、朝方に検査を行う場合もあります。多相睡眠検査を通じて、医師は患者の睡眠中に起こる身体の変化を客観的に把握し、睡眠障害の原因を特定することが可能となります。
日本でも近年、仕事や学業のストレス、長時間労働などで睡眠リズムが乱れがちになる傾向が強まっています。こうした背景から、睡眠の質をより深く分析し、適切な治療方針を立てるために多相睡眠検査が行われるケースが増えています。睡眠は心身の回復に欠かせない基本要素ですので、睡眠障害の早期発見と対処は、生活の質を向上させるうえで非常に大切だと考えられています。
多相睡眠検査の目的
多相睡眠検査の最大の目的は、睡眠段階（ノンレム睡眠とレム睡眠）のサイクルや、そのサイクルの安定性を細かく評価することです。私たちの睡眠は、ノンレム睡眠（NREM）で始まり、その後にレム睡眠（REM）へ移行する流れを一晩で数回繰り返します。ノンレム睡眠時には脳波が大きく変化し、身体や脳が休息状態に入ります。レム睡眠時には脳が活発に働き、夢を見ることが多いとされています。一般的にこの一連のサイクルはおよそ90分程度で一巡し、夜間の睡眠中に4～6回ほど繰り返されます。
しかし、何らかの睡眠障害がある場合、このスムーズなサイクルが乱れることがあります。たとえば、睡眠中に何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群（特に閉塞性）があると、深い睡眠段階への移行が阻害されやすくなり、脳や身体の十分な休息が得られなくなります。多相睡眠検査はこのような問題を可視化し、正しい診断を行ううえで欠かせない手段となるのです。
具体的には、以下のような状況・疑いがある場合に多相睡眠検査が強く推奨されることが多いです。
- 睡眠時無呼吸症候群やその他の呼吸関連障害
夜間に10～30秒程度呼吸が止まる症状があり、心拍数や血中酸素濃度にも影響が生じる可能性があります。長期的には心筋梗塞や狭心症といった心疾患リスクの上昇、記憶力や集中力の低下なども引き起こしうると報告されています。 - 周期性四肢運動障害
手足が意図せず動くことで睡眠が断続的に邪魔されることがあり、レストレスレッグス症候群（RLS）の一因となる可能性があります。 - ナルコレプシー
脳の障害により通常の睡眠サイクルが崩れ、昼間の耐えがたい眠気や突然の居眠りなどを特徴とする比較的稀な疾患です。多相睡眠検査を行うことで、レム睡眠への移行のタイミングや総睡眠時間の偏りなどが詳細に分かります。 - レム睡眠行動障害
レム睡眠中に通常なら筋肉の活動が抑制されるはずが、何らかの異常によって身体を動かし、夢に合わせた行動をとってしまう症状です。 - 睡眠中の異常行動
夜間に無意識のうちに歩き回る、突然叫ぶなどの行動が見られる場合、他の精神疾患や神経学的疾患の可能性も含めて慎重な区別が求められます。 - 原因不明の慢性的な不眠
長期にわたって不眠を訴える一方で、検査数値や問診からだけでは原因が特定できないケースです。多相睡眠検査を実施することで、実際の睡眠構造に乱れがあるのか、あるいは別の要因が潜んでいるのかを判断できます。 - 識別評価
けいれんや不随意運動が睡眠中に起こっている可能性がある場合、てんかんとの区別や他の神経学的障害との鑑別を行う目的で検査が行われることがあります。
多相睡眠検査は、これら睡眠障害の診断だけにとどまらず、診断結果に応じて治療法を決定・調整する段階でも大いに役立ちます。たとえば睡眠時無呼吸症候群が疑われれば、陽圧呼吸療法（CPAP）の導入を検討する際の基礎資料となります。あるいは、周期性四肢運動障害であれば、必要に応じて薬物療法や生活習慣の見直しが行われるでしょう。
近年の研究例から見る多相睡眠検査の重要性
多相睡眠検査の有用性は、世界各国の研究で積極的に報告されています。たとえば、2021年にSleep Medicine Clinicsで発表されたZucconiとFerriの研究（“Assessment of Sleep Disorders and Diagnostic Procedures.” Sleep Medicine Clinics. 2021;16(4):545-559. doi:10.1016/j.jsmc.2021.08.001）では、睡眠障害を抱える患者の正確な診断にはポリソムノグラフィーが不可欠であると結論づけられています。この研究は約600名の患者データを解析し、そのうち睡眠時無呼吸症候群を含む呼吸障害が疑われる200名ほどに対して多相睡眠検査を実施したところ、問診のみでは見落としていた症例が約20%あったと報告しています。日本国内の生活リズムや就労環境においても、似たような状況が存在すると考えられており、適切な検査を通じた早期発見と早期治療は多くの患者さんに恩恵をもたらす可能性があると指摘されます。
多相睡眠検査のリスク
多相睡眠検査は比較的安全な検査方法とされています。身体に複数のセンサーを装着するため、粘着テープや電極を貼り付けた部分の肌に軽微なかぶれやかゆみが起こることはあるものの、ほとんどが軽度にとどまります。原則的には非侵襲的な手技であり、痛みを伴わないことが特徴です。そのため、高齢者や基礎疾患を有する患者でも実施可能なケースが多いとされています。
ただし、リスクがゼロではない点にも注意が必要です。たとえば、心疾患を有する方で検査中に血中酸素濃度の変動が顕著に現れた場合、そのまま入院して追加の精密検査を行うことがあります。検査に伴う睡眠環境の変化や緊張感から、普段と異なる睡眠状態になってしまう可能性も考慮に入れなければなりません。こうした面を踏まえても、多相睡眠検査による得られる情報は診断や治療方針の決定に非常に重要ですので、医師と相談して慎重に実施を検討することが大切です。
多相睡眠検査の準備
多相睡眠検査は、通常は夜21時頃から翌朝6時頃までの一晩を通じて行われます。検査当日は、開始前の準備に60〜90分ほどかかることが一般的です。センサーの装着や機器の調整時間、検査室への移動などを考慮して、早めに病院や睡眠研究センターを訪問することが多いです。
アルコールやカフェインの制限
検査の精度を高めるために、検査日当日の午後や前日はアルコールやカフェインを含む飲食物を避けるよう指示されることがほとんどです。アルコールは入眠を促すように感じられる場合がありますが、実際には睡眠の質を低下させる作用があり、睡眠サイクルを乱す一因となり得ます。カフェインに関しては、覚醒状態を持続させる作用が強いため、寝つきを悪くしたり、睡眠の維持を妨げたりします。そのため、多相睡眠検査の前にはコーヒーやお茶、炭酸飲料やチョコレートなど、カフェインを含むものの摂取は原則控えるようにします。
昼寝を控えること
また、検査日には日中の昼寝を避けることも重要です。昼寝をしてしまうと夜間の睡眠状況が普段と異なり、検査結果に影響を与える恐れがあります。可能な限り、日常生活に近い状態で検査を受けることが望ましいため、普段の就寝時刻や起床時刻に合わせて準備を進めることが推奨されます。
洗髪や体の清潔
頭皮や体にセンサーを装着する際に、油分や整髪料などが残っていると正確にデータを取得できない場合があります。そのため、検査当日は髪をしっかり洗って整髪料を使わない、肌に保湿クリームや化粧品を塗らないなどの指示を受けることがあります。普段よりも少し早めにシャワーを浴び、清潔な状態で検査に臨むことを意識するとよいでしょう。
多相睡眠検査のプロセス
検査中
多相睡眠検査は、睡眠研究センターや病院の専用検査室で行われることが一般的です。患者は検査のために一晩滞在する必要があるので、就寝に慣れたパジャマや、寝やすい衣類を持参すると落ち着いて検査に臨むことができます。検査室はできるだけリラックスできるよう配慮されており、室内はホテルの客室のように整えられていることも多いです。照明や音も調整しやすく、防音性の高い部屋が用意される場合もあります。
室内にはカメラと音声システムが設置されており、技術者がモニタリングを行いながら患者と連絡を取れる仕組みになっています。万が一、検査中に異常が見られた場合には、技術者から声をかけられることもあります。
装着されるセンサー
検査の際は、以下のようなセンサーが装着されます。
- 脳波を測定する電極：頭皮とこめかみ付近
- 眼球運動の測定電極：まぶた周辺
- 心電図モニター：胸部
- 呼吸センサー：鼻・口周辺、胸と腹部の動き
- 血中酸素飽和度（SpO2）モニター：指先など
- いびき・音声モニター：マイク
- 手足の動きモニター：足首や手首にセンサー
これらの機器によって、睡眠中の脳の電気活動、眼球運動、心拍数、呼吸パターン、身体の動きなどを総合的に記録します。多角的な測定を行うことで、睡眠時のさまざまなイベント（呼吸停止や頻繁な覚醒、足の不随意運動など）を客観的に捉えることができます。必要に応じて、検査中に陽圧呼吸療法（CPAP）を試みたり、酸素投与を行ったりする場合もあります。これは、睡眠時無呼吸症候群が強く疑われるケースで、治療効果の予測を兼ねて行われることがあります。
検査後
翌朝起床したらセンサー類がすべて取り外されます。多くの場合、そのまま自宅に帰ることが可能で、日中の通常生活に支障が出にくいのもこの検査の特長です。検査室で記録されたデータは大量かつ多次元的な情報を含むため、専用ソフトウェアを用いて睡眠専門医や検査技術者が詳細に分析します。
脳波からはノンレム睡眠・レム睡眠の移行パターンや、覚醒・半覚醒状態の有無が分かります。心拍数や呼吸パターン、血中酸素飽和度の変動は、睡眠時無呼吸症候群や心肺系の問題を示唆する指標になるかもしれません。手足の動きに関する情報は、周期性四肢運動障害やレストレスレッグス症候群などを判断する上で重要です。また、ビデオと音声の記録から、睡眠中に異常行動をしていないかも確認されます。
検査結果
検査結果は、睡眠専門医により総合的に評価されます。多相睡眠検査から得られる主な指標としては、以下のようなものが挙げられます。
- 脳波と眼球運動
睡眠サイクルの正常な流れ（ノンレム睡眠→レム睡眠）が保たれているかを判断する重要な手がかりです。睡眠に入るまでの潜時や、各段階にとどまる時間なども解析されます。 - 心拍数、呼吸、血中酸素飽和度の変化
睡眠中に呼吸が止まっている（無呼吸）時間がどれほどあるか、血中酸素飽和度が大きく下がっていないかなどをチェックします。無呼吸が一定回数以上（たとえば1時間あたり5回以上など）記録されると、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。 - 手足の動きや周期性四肢運動
足や手が意図せず動き、脳や身体が微覚醒状態になっている場合、それが睡眠の質を大きく損なう原因となります。これにより、日中の疲労感や倦怠感が強くなることもあります。 - 睡眠中の異常行動
レム睡眠行動障害や夢遊症など、ビデオと音声で捉えられる異常行動の有無を評価します。夢の内容と連動した激しい動きなどが認められれば、レム睡眠行動障害が示唆されます。
最終的な診断は、これら多面的なデータを医師が総合的に解釈して下します。その際、患者の既往歴やライフスタイル、他の検査結果などもあわせて考慮し、必要とされる治療方針が提案されます。たとえば、睡眠時無呼吸症候群が確定すれば、CPAPなどの治療機器を使うかどうか、あるいは口腔内装置の装着や生活習慣の見直しを優先するかなどが検討されるでしょう。ナルコレプシーであれば、薬物療法や睡眠スケジュール管理の重要性が強調されるかもしれません。周期性四肢運動障害の場合は、筋弛緩剤や鉄分不足の補正などが検討される場合もあります。
結論と提言
結論
多相睡眠検査（ポリソムノグラフィー）は、睡眠障害の正確な診断と効果的な治療計画の策定に欠かせない有用な技術です。睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなど、さまざまな要因が絡む疾患では、問診だけでは得られない詳細情報が明らかになるため、適切な治療に結びつく可能性が大幅に高まります。睡眠は身体と心の両面で回復をもたらす基礎的な行為であり、睡眠不足や睡眠の質の低下は長期的に見ると心血管疾患、認知機能の低下、精神健康面のリスク要因につながりやすいと考えられています。
もしご自身が深刻な睡眠不足や日中の強い眠気、夜間の異常行動などに思い当たる点がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診し、専門家の評価を受けるのが望ましいです。早期に正しい診断を受ければ、日常生活の質が高まり、将来的な健康リスクを低減することにもつながるでしょう。
提言
JHO編集部としては、睡眠に問題を感じる場合には専門家の助言を受けることを強く推奨します。多相睡眠検査は時間と手間がかかる手技ですが、その分だけ得られる情報量も多く、非常に価値の高い検査です。また、以下のような生活習慣の見直しや、睡眠環境の調整も大切です。
- 睡眠環境の整備
寝室の温度・湿度を快適に保ち、照明や音を調整することで、より深い睡眠を得やすくなります。睡眠中の照明は暗めに、寝室に時計やスマートフォンなどの光源を置かないように工夫すると、体内時計が正常に働きやすくなります。 - 就寝前のリラックス習慣
就寝直前にスマートフォンを操作したり、強い光を見たりすると、脳が覚醒状態を保ちやすくなります。軽いストレッチや入浴などで体を温め、ゆったりとした音楽を聴くなど、脳と体をリラックスさせる習慣を取り入れるとよいでしょう。 - 規則正しい生活リズム
就寝時間や起床時間をできるだけ一定にすることは、体内時計（概日リズム）の安定に寄与します。平日と休日とで起床時間が大きく変動しないように心がけるだけでも、睡眠の質が向上しやすくなります。 - 運動と食事
適度な運動は睡眠の深さを増すといわれていますが、就寝直前の激しい運動は逆効果となる可能性があります。日中にウォーキングや軽い筋力トレーニングを取り入れる程度がちょうどよいとされています。食事については、寝る直前の過度な飲食は避け、バランスの良い食事をとることを意識しましょう。
上記のように生活習慣や環境面に配慮しても睡眠の質が改善しない、あるいは夜間の呼吸停止や過度の眠気など特定の症状がある場合には、多相睡眠検査を含む専門的な診断が必要になるかもしれません。本記事で示した情報はあくまで一般的な参考資料であり、個別の病状や身体状況によってはさらに詳細な検査や医師の判断が不可欠です。どうぞ専門の医療機関や睡眠クリニックなどを積極的に活用してください。
参考文献
- Polysomnography (sleep study) – Mayo Clinic（アクセス日: 2019年5月30日）
- How a Sleep Study Works – WebMD（アクセス日: 2019年5月30日）
- Polysomnography – Healthline（アクセス日: 2019年5月30日）
（※上記リンク先はいずれも睡眠検査の概要を分かりやすく解説しており、基礎的な理解に役立ちます。さらに詳しい内容を知りたい方や検査を検討されている方は、かならず医師にご相談のうえ、情報を活用してください。また、睡眠障害や検査・治療法に関しては継続的に研究・ガイドラインが更新される場合もあるため、新しい知見を取り入れている医療機関や専門医に問い合わせることをおすすめします。）
重要な注意事項
本記事は、睡眠に関する一般的な情報を提供することを目的としています。十分な臨床的エビデンスがある分野もあれば、まだ研究途上で専門家の間で意見が分かれる内容も存在します。個々の体調や症状に応じた正確な診断・治療方針は、医師などの医療専門家によって決定されるべきです。記載された情報はあくまでも参考としてご活用ください。万が一、睡眠障害や健康上の問題が疑われる場合には、できるだけ早期に専門家の診療を受けてください。