鼻の問題は単なる些細な不快事ではなく、日本における重大な国民的健康課題です。何百万人もの人々が、日常生活の質や睡眠、そして労働生産性に影響を与える症状に日々苦しんでいます。統計はその問題の深刻さを示しており、日本では花粉症(かふんしょう)を含むアレルギー性鼻炎に約800万人が罹患していると推定されています1。さらに、副鼻腔炎(ふくびくうえん)の患者数は100万人から200万人にのぼると考えられています23。
こうした広範な健康課題に対応するため、耳鼻咽喉科医などの医療専門職は、薬物療法や手術などの治療に加えて、積極的な自己管理法をますます推奨しています。その中でも「鼻うがい」(はなうがい)は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの症状を管理するための、評価の高いセルフケアの一つとして注目されています4。鼻うがいとは、生理食塩水を用いて鼻腔を洗浄するシンプルな方法です。
一方で、「鼻に水を入れるなんて痛そう」「水泳のときのようにツーンとしそう」「むせてしまいそう」と不安に感じ、挑戦できずにいる方も少なくありません6。こうした不安の多くは、正しいやり方や安全な溶液についての情報が十分に伝わっていないことから生じています。適切な溶液と手順を守れば、鼻うがいは本来ほとんど痛みを伴わず、多くの人にとって続けやすいセルフケアになり得ます。
本記事の目的は、成人の方が鼻うがいを安全かつ快適に実践できるよう、科学的根拠に基づいた包括的なガイドを提供することです。日本の臨床現場で蓄積されてきた知見と世界的な研究成果を組み合わせ、日常生活の中で鼻うがいをどのように取り入れていけば良いのかを、わかりやすく整理します。
この記事の科学的根拠
本記事は、厚生労働省や日本の専門学会、国立がん研究センターなどの公的機関が公開している資料、およびシステマティックレビューや臨床ガイドラインなどの査読付き論文に基づき、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が作成しました。ここでは、鼻うがいに特に深く関係する代表的な情報源と、本記事の医学的ガイダンスとの関連性を簡単に紹介します。
- コクランレビュー: アレルギー性鼻炎に対する鼻うがいの有効性に関する本記事の説明とガイダンスは、コクランによるシステマティックレビューで示されたエビデンスに基づいています1011。
- 米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNSF): 慢性副鼻腔炎の治療における鼻うがいの位置づけや推奨度は、同学会が成人慢性副鼻腔炎に対する鼻洗浄の臨床診療ガイドラインで示した推奨に基づいています513。
- 米国食品医薬品局(FDA): 煮沸していない水道水を鼻うがいに使用したことで、海外でアメーバ(ネグレリア・フォーレリ)による致死的な感染症が報告された事例に基づき、鼻うがいには蒸留水・滅菌水・十分に煮沸して冷ました水のみを用いるべきだとする安全上の勧告が示されています30。
- 小林製薬株式会社: 一般的な市販製品(例:「ハナノア」)の使用方法や、発声しながら洗浄するテクニックなど、実際の手技に関する具体的なアドバイスは、同社が公開している解説ページの情報に基づいています815。
なお、情報の収集や構成案の整理にはAIツールも補助的に活用していますが、最終的な内容の確認・修正およびガイドラインとの照合は、すべてJHO編集部が行っています。
要点まとめ
- 正しい溶液を使用する: 鼻うがいには、体液と同じ浸透圧を持つ0.9%の生理食塩水を人肌の温度(36~40℃)に温めて使用することが、痛みを避けるための鍵です。
- 正しい姿勢と技術を徹底する: 常に前かがみになり、顎を胸に引いた姿勢を保ちます。「えー」または「あー」と発声しながら洗浄することで、耳管への水の侵入を防ぎ、中耳炎を予防します。
- 安全な水を選ぶ: 感染症の危険性を可能な限り避けるため、煮沸して冷ました水、滅菌水、または蒸留水を使用することが国際的な安全基準として推奨されています。
- 穏やかな圧力を心がける: ボトルを強く握らず、穏やかで均一な圧力で洗浄し、洗浄後は片方ずつ優しく鼻をかむことが重要です。
安全な鼻うがい入門
つらい鼻づまりや後鼻漏、繰り返すくしゃみや鼻水のせいで、日常生活や睡眠に大きな支障が出ていると、「何とか自分で少しでも楽になりたい」と感じる方は多いと思います。一方で、鼻うがいに興味はあっても「ツーンと痛そう」「耳に水が入って中耳炎にならないか不安」と、なかなか一歩を踏み出せない方も少なくありません。このボックスでは、そうした不安を抱える大人の方が、できるだけ安全かつ快適に鼻うがいを取り入れられるように、ポイントを整理してお伝えします。
鼻や副鼻腔のトラブルは、咳や息苦しさなどの呼吸器症状とも密接に関連しており、鼻うがいもそのセルフケアの一つとして位置づけられています。ここでは鼻うがいに絞って解説しますが、咳・息切れ・喘鳴・胸痛といった呼吸器症状全体のつながりや代表的な病気の全体像については、呼吸器疾患完全ガイドを合わせて読むことで、ご自身の状態をより立体的に理解しやすくなります。
鼻うがいが勧められる大きな理由は、鼻腔に付着した花粉やハウスダスト、ウイルス・細菌などの刺激物を物理的に洗い流し、同時に粘り気の強い鼻水を薄めて線毛運動を助けるという、シンプルかつ生理学的に筋の通った作用にあります。この「鼻の掃除」がうまくいかないと、鼻の奥から喉に流れ落ちる分泌物が咳を長引かせる一因になることも知られています。実際に、熱がないのに咳だけが続く背景には鼻や喉の慢性的な炎症が関わることが多く、その全体像は熱がないのに咳が続くのはなぜ?でも詳しく説明されています。
鼻うがいを始める前に大切なのは、「鼻うがいだけで問題をすべて解決しよう」と考えず、背景にある病気をきちんと意識することです。長く続く鼻づまりや黄色〜緑色の鼻水、「蓄膿症」と言われたことがある方などは、まず耳鼻咽喉科で副鼻腔炎の有無を評価してもらい、薬物療法や手術治療と併せて鼻うがいを位置づける必要があります。副鼻腔の炎症とその最新治療については、副鼻腔炎(蓄膿症)とは?で詳しく整理されているので、「自分はどういうタイプなのか」を確認しておくと安心です。
具体的な鼻うがいの手順としては、まず0.9%の生理食塩水を人肌(約36〜40℃)程度に温め、必ず蒸留水・滅菌水・十分に沸騰させて冷ました水を用いて調製することが重要です。洗面台の前で前かがみになり、顎を胸に近づけた姿勢をとり、ボトルのノズルを片方の鼻に軽く密着させたら、口から息をしながら「えー」または「あー」と発声しつつ、ボトルを強く握りすぎない程度のやさしい圧で溶液を流し込みます。このとき、反対側の鼻から出ても同じ側から戻ってきても構いません。片側が終わったらもう一方も同様に行い、その後は片方ずつそっと鼻をかみます。もし片側だけの鼻づまりが続く、あるいは一方だけ極端に通りが悪いと感じる場合は、片側だけの鼻づまりのような状態が隠れていないか、一度専門的な評価を検討しましょう。
安全に続けるためのポイントとしては、ボトルを強く握って勢いよく流し込まないこと、洗浄中や直後に耳の痛みを感じたらすぐに中止すること、そして終わったあとに強く鼻をかまないことが挙げられます。また、現在中耳炎と診断されている方や、鼻が全く通らないほどひどく詰まっている方、飲み込みの障害がある方などは、自己判断で鼻うがいを行わず、必ず医師に相談してください。頻度の目安は、普段の維持であれば1日1〜2回、花粉飛散期や症状が強い時期でも1日3回程度までとし、やりすぎて粘膜を荒らさないようにすることが大切です。
鼻うがいは、正しい溶液・姿勢・圧の3つを守れば、痛みやトラブルを最小限にしながら、鼻や副鼻腔の負担を和らげる力強いセルフケアになり得ます。一方で、症状が強い、長期間改善しない、耳の痛みや片側だけのつまりが続くといった場合には、自己流で続ける前に耳鼻咽喉科を受診することが不可欠です。手洗い・うがいに「鼻うがい」を加えた日々の習慣として、できる範囲から少しずつ取り入れながら、ご自身の呼吸のしやすさや体調の変化を丁寧に観察していきましょう。
鼻うがいの科学的に証明された効果:なぜ効くのか
鼻うがいの効果は、単に「すっきりする」という感覚だけにとどまりません。それは上気道の健康を改善する明確な生理学的機序に基づいており、多くの臨床研究やガイドラインによって支持されています。
作用機序
鼻うがいの有効性は、主に二つの作用からもたらされます。
- 機械的洗浄: 鼻うがいの行為は、刺激物や病原体を鼻粘膜から物理的に洗い流す助けとなります。これには、花粉やハウスダストなどのアレルゲン、ウイルスや細菌などの病原体、そしてこれらの侵入者に対して体が作り出す炎症性メディエーターが含まれます5。
- 線毛機能の改善: 私たちの鼻の内部には、線毛(微細な毛)と呼ばれる自然の浄化システムがあり、粘液や異物を絶えず外に押し出す動きをしています。鼻うがいは粘性の高い鼻水を薄め、線毛の働きをより効果的にし、それによって鼻の自然な防御機構を回復・強化します5。
臨床的に認められた適用
これらの機序に基づき、鼻うがいは様々な症状に対して推奨されています。
- アレルギー性鼻炎(花粉症を含む): これは主要な適用の一つです。花粉やその他のアレルゲンを鼻から洗い流すことで、鼻のかゆみ、くしゃみ、鼻水といった症状を著しく軽減します。この効果は、コクランによるシステマティックレビューや日本の医師たちの臨床的コンセンサスによって支持されています10。
- 慢性副鼻腔炎(CRS): 国際的な臨床診療ガイドライン(CPG)は、慢性副鼻腔炎に対する主要な治療法として鼻うがいを強く推奨しています。粘液の浄化、炎症の軽減、そして持続的な症状の改善に役立ちます5。
- 急性上気道感染症(いわゆる風邪): 証拠によると、鼻うがいは風邪の症状を和らげ、薬の使用を減らすのに役立つ可能性がありますが、その証拠基盤は慢性副鼻腔炎ほど強力ではありません9。
- 術後ケア: 鼻うがいは、治癒を促進し鼻腔を清潔に保つため、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)後のケアの不可欠な一部です5。
証拠の質と推奨度合いの違いを理解することは重要です。一部のシステマティックレビューでは、完璧な臨床試験の実施が難しいことなどから、風邪やアレルギー治療における鼻うがいの証拠を「低い」と評価しているものもあります11。一方で、耳鼻咽喉科学会の臨床診療ガイドラインは、特に慢性副鼻腔炎において、その使用を「強く推奨」しています5。これは、鼻うがいが比較的安全で低コストであり、多くの患者で症状の軽減が報告されていることから、利益と害のバランスを考えた結果といえます。
安全な鼻うがいのための準備:キットと溶液
正しい準備は、安全で快適、かつ効果的な鼻うがい体験の鍵となります。ここでは、器具の選び方と溶液の作り方・選び方について整理します。
器具の選択(鼻うがい器)
様々な種類の鼻うがい器具があり、それぞれに長所と短所があります。
- スクイーズボトルタイプ: 日本で最も一般的なタイプです。使いやすく、水圧の調節が容易です。小林製薬の「ハナノア」のような市販品は、既製の溶液が付属しており便利です8。
- ポンプ式器具: 「ハナクリーンS」のような器具は、ポンプ機構を用いて安定した水流を作り出します16。
- ネティポット: ティーポットのような形状のこれらの器具は、重力を利用して水を鼻に通します。
- 自作の器具: 小さな注ぎ口のある清潔なドレッシングボトルなどの簡単なもので代用することも可能です17。
生理食塩水:痛みのない鼻うがいの秘訣
これは不快感を避けるための最も重要なステップです。
- なぜ真水はダメなのか: 通常の水道水(真水、まみず)で鼻うがいをすると、ツーンとした激しい痛みを引き起こします。これは、真水の浸透圧が体液と異なり、鼻粘膜の細胞を傷つけるためです6。
- 黄金律:生理食塩水: 0.9%の食塩水は「等張(とうちょう)」と呼ばれ、血液や他の体液と同じ塩分濃度であることを意味します。これにより、鼻粘膜に接触しても優しく、刺激がありません19。
- 自宅でできる調製法: 500ミリリットルの水に4.5グラムの食塩(小さじ一杯程度に相当)を溶かすという、広く認められた簡単なレシピで自宅で容易に調製できます19。重要なのは、岩塩(がんえん)や味塩(あじしお)のようなヨウ素や他のミネラルを含まない、純粋な食塩(しょくえん)を使用することです23。
- 水の品質 – 重大な安全注意点: 水源は最も重要な安全要素です。絶対的な安全を確保するため、常に蒸留水、滅菌水、または十分に煮沸して冷ました水を使用してください19。米国食品医薬品局(FDA)は、煮沸されていない水道水に含まれるアメーバ(ネグレリア・フォーレリ)による、稀ではあるものの致死的な感染症例について警告しています30。日本の水道水の品質は非常に高いですが23、世界的な安全基準に従い、煮沸した水や滅菌水を用いることが、最も責任ある安全なアプローチです。
- 最適な温度: 溶液は体温に近い温度(人肌、ひとはだ)、約36~40℃に温めるべきです。冷たすぎる水は刺激となり、熱すぎる水は粘膜を傷つける可能性があります5。
溶液の種類:等張液、高張液、その他の添加物
- 等張液と高張液: 等張液(0.9%)は、快適さと日常的な使用のための標準です5。高張液(より高い塩分濃度、例:2–3%)は、ひどい鼻詰まりを緩和するのにより効果的である可能性がありますが、一時的な灼熱感や刺激を引き起こす可能性も高くなります26。まずは等張液から始めることをお勧めします。
- その他の添加物: 一部の市販品には、快適な感覚をもたらすためにグリセリンやメントールなどの添加物が含まれている場合があります8。臨床ガイドラインでは、特定の臨床状況に応じてキシリトールやステロイドといった選択肢も言及されていますが、これらは医師の指導の下で使用されるべきです5。
表1:自作溶液と市販溶液の比較
| 特徴 | 自作溶液 | 市販溶液(例:ハナノア) |
|---|---|---|
| 費用 | 低い | 中程度 |
| 利便性 | 準備に手間がかかる | 便利ですぐに使える |
| 成分 | 塩と水のみ | 添加物(メントール、グリセリン等)を含む場合がある |
| 無菌性 | 使用者に依存 | 無菌性が保証されている |
鼻うがいの詳細なステップバイステップガイド
このセクションは、複数の信頼できる情報源からの推奨を組み合わせた、実践的なステップバイステップガイドです。各ステップを落ち着いて、優しく行ってください。
- ステップ1:正しい姿勢を準備する
洗面台の上で前かがみになり、顎を少し胸の方へ引きます。強調点:絶対に頭を上げないでください。これが中耳炎を防ぐための第一かつ最も重要な防御線です15。 - ステップ2:洗浄の準備
器具のノズルを片方の鼻孔にそっと挿入し、ぴったりと快適に密着させます。ノズルを深く押し込みすぎないでください。口を開けて、口で穏やかに呼吸します9。 - ステップ3:発声しながら洗浄する
口呼吸を続けながら、ボトルを優しく握って溶液を鼻に流し込みます。要点:「えー」または「あー」と声を出し続けてください。この行為は軟口蓋を引き上げ、耳への通路を塞ぎ、溶液が耳に流れ込むのを防ぎます8。一部の耳鼻咽喉科医は、軟口蓋をより効果的に引き上げるとされる「えー」という音を好みますが、どちらも有効です23。 - ステップ4:溶液を自然に排出させる
溶液は鼻腔を通り、反対側の鼻孔または口から排出されます。これは完全に正常なことです。特に鼻が詰まっている場合、溶液が挿入した鼻孔から逆流することも正常です。これらの結果はすべて許容範囲です。特定の経路で溶液を無理に排出しようとしないでください23。 - ステップ5:反対側で繰り返す
溶液の約半分を各鼻孔に使用します。 - ステップ6:洗浄後に優しく鼻をかむ
両方の鼻を洗浄した後、強く鼻をかんではいけません。まず、両方の鼻孔から穏やかに息を吐き出し、残った溶液の大部分を排出します。次に、指で片方の鼻を塞ぎ、反対側から優しく鼻をかみます。もう一方も同様に繰り返します23。頭を左右に傾けることも、残った溶液を排出するのに役立ちます23。 - ステップ7:器具の洗浄
使用後は毎回、石鹸と水で器具をよく洗い、細菌の繁殖を防ぐために完全に自然乾燥させてください16。
重大な安全注意点:リスクなく実践する方法
これらの安全規則を遵守することは、鼻うがいが害を及ぼすことなく利益をもたらすことを保証するために最も重要です。
黄金律:中耳炎の予防
これは不適切な技術による最も一般的で深刻な合併症です。以下の警告を心に留めてください。
- 圧力の制御: 決してボトルを強く握らないでください。優しく均一な圧力を使用します。耳に痛みを感じたらすぐに中止してください15。
- 姿勢は絶対: 常に前かがみになり、決して頭を上げないでください15。
- 飲み込まない: 洗浄中に唾液や溶液を飲み込むことは避けてください。この行為は耳管(耳と鼻をつなぐ管)を開き、液体が耳に流れ込む原因となり得ます19。
- 洗浄後のケア: 洗浄後に決して強く鼻をかんではいけません15。
注意すべき、または避けるべき人(禁忌)
以下に当てはまる方は、自己判断で鼻うがいを行う前に必ず医師に相談してください。
- 現在、耳の感染症(中耳炎)にかかっている、または最近かかった人18。
- 鼻がひどく詰まっていて、溶液が通らない人15。
- 嚥下障害(えんげしょうがい)のある人(溶液を肺に誤嚥する危険性があるため)15。
- 耳や副鼻腔の手術を受けたことがある人は、始める前に必ず医師に相談してください。
- がん治療中などで免疫力が低下している人、ステロイドや免疫抑制薬を長期に服用している人などは、感染症リスクを避けるため、鼻うがいを始める前に必ず主治医に相談してください30。
適切な頻度
頻度の目安を守ることも、安全に続けるために重要です。
- 通常の予防や軽度のアレルギーに対しては、1日1~2回が推奨される頻度です17。
- 花粉の飛散が多い時期や症状が重い場合は、3回まで増やすことができます8。
- 洗浄しすぎると、鼻粘膜の保護層である粘液を洗い流し、自然な微生物叢を破壊する可能性があるため、有害となることがあります18。
表2:鼻うがいのすべきこと・してはいけないこと(クイック安全チェックリスト)
| やるべきこと | やってはいけないこと | |
|---|---|---|
| 姿勢 | 前かがみになり、顎を胸につける。 | 頭を上げる、または後ろに反らす。 |
| 溶液 | 0.9%の生理食塩水を使用する。 | 煮沸していない真水(水道水)を使用する。 |
| 温度 | 人肌(36~40℃)の温かい溶液を使用する。 | 冷たすぎる、または熱すぎる水を使用する。 |
| 圧力 | ボトルを優しく、均一に握る。 | 強く、または急に握る。 |
| 洗浄後 | 片方ずつ優しく鼻をかむ。 | 強く鼻をかむ。 |
| 頻度 | 維持のためには1日1~2回。 | 1日に何度も洗浄しすぎる。 |
よくある質問(FAQ)とトラブルシューティング
このセクションでは、一般的な質問や複雑な問題に対して、提示された証拠に基づいて直接的に回答します。
質問:水が片方の鼻から入って、同じ鼻から出てきてしまいます。やり方が間違っていますか?
回答:いいえ、これは特に鼻が詰まっている場合や始めたばかりの場合には完全に正常なことです。それでも鼻腔は洗浄されています。水を反対側から出そうと圧力を上げないでください。練習を重ねるうちに、流れがスムーズになる可能性があります23。
質問:等張食塩水と高張食塩水のどちらを使うべきですか?
回答:ほとんどの人と日常的な使用には、優しくて効果的な等張食塩水(0.9%)が推奨されます。高張食塩水はひどい鼻詰まりを緩和するのにより強力ですが、一時的な灼熱感を引き起こす可能性があります。医師に相談した後、または等張食塩水で効果が不十分な場合の選択肢と考えるのが最善です5。
質問:日本の水道水を使うのは本当に安全ではないのですか?
質問:1日に何回鼻うがいをすべきですか?
回答:通常の維持と予防のためには、1日1~2回で十分です。洗いすぎると鼻を刺激する可能性があります。アレルギーの季節のピーク時や風邪をひいている時は3回まで増やせますが、自分の体の声を聞きながら無理のない範囲で行ってください6。
質問:耳が痛くなったらどうすればいいですか?
回答:直ちに中止してください。これは圧力が強すぎるか、技術が正しくない兆候です。手順を見直し、十分に前かがみになっているか、連続して発声しているかを確認してください。優しい技術でも痛みが続く場合は、鼻うがいを中止し、耳の問題を起こしやすい基礎疾患がある可能性も考えられるため、耳鼻咽喉科医に相談してください23。
質問:科学的証拠が一貫していないように見えます。本当に効果があるのでしょうか?
回答:これは研究上の証拠と臨床実践の間に生じやすい違いに関連します。鼻うがいのような物理的な処置に対して完璧なプラセボ対照試験を行うことは非常に困難ですが、その高い安全性、低コスト、多くの患者さんで報告されている症状軽減の経験により、この方法は世界中の臨床ガイドラインで強く推奨されています5。エビデンスの質が「中等度」や「低い」と評価されている部分があっても、「害が少なく、得られる可能性のある利益が大きい」という観点から、現時点では日常的なセルフケアとして有用と考えられています。
結論:鼻うがいを日々の健康習慣に取り入れる
結論として、鼻うがいは、正しく行われれば、一般的な鼻や副鼻腔の問題を管理するための安全で効果的な、科学的証拠に裏打ちされた自己管理法です。
成功と安全のため、常に最も重要な3つの点を忘れないでください。
- 正しい溶液を使う:体温に合わせた0.9%の生理食塩水。
- 正しい技術を使う:前かがみになり、「えー」または「あー」と発声する。
- 穏やかな圧力で、洗浄後は優しく鼻をかむ。
鼻うがいを、手洗い・うがい(「手洗い・うがい・鼻うがい」、てあらい・うがい・はなうがい)と同様に、健康的な生活様式における積極的な一部と考えてください6。それは、あなた自身の呼吸器の健康を管理する力を与えてくれます。
最後に、強力かつ責任ある行動喚起として:もし症状が重い、改善しない、または持続的な耳の痛みなどの合併症が発生した場合は、耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)に相談することが不可欠です。このガイドは教育目的のみを目的としており、専門的な医療アドバイスに代わるものではありません。
免責事項 この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医療アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。
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