はじめに
大腸がんのステージ3に至った場合、どのような症状が現れ、どのように治療を進めればよいのか、多くの方が不安や疑問を抱かれることでしょう。ステージ3は大腸の壁を越えたがんがリンパ節にまで達しており、遠隔臓器には転移していない段階を指します。この段階では、がんの進行を食い止め、遠隔転移を予防するために積極的な治療が求められます。一方で、適切な治療とケアを行うことで、より良い予後が期待できるとされています。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、ステージ3の大腸がんに焦点を当て、症状から治療、予後に至るまでの詳細をできるだけわかりやすくまとめています。大腸がんに関心をお持ちの方、あるいはご自身やご家族が大腸がんと診断された方に向けて、正確な情報を提供し、治療や生活の見通しについて理解を深めていただくことを目的としています。医師のアドバイスや医療機関での検査・治療が必須となる分野ですので、本記事の内容はあくまで参考情報ですが、読者がより主体的に治療方針を検討するうえでの一助になれば幸いです。最後までお読みいただき、ご自身やご家族の状況に合わせて専門家と相談しながら最適な道を選択してください。
専門家への相談
本記事では、大腸がんステージ3の理解、症状、治療、予後に関する総合的な情報を提供するため、権威ある医療機関や研究機関(Cleveland Clinic、Cancer Research UK など)のデータや情報を参照しています。これらの組織は長年にわたり大腸がんの研究や治療を行い、専門家による最新の知見が蓄積されています。したがって、ここで紹介する内容は信頼できる情報をもとに編集されていますが、個々の患者さんの病状やライフスタイル、全身状態などによって最適な治療法は異なります。必要に応じて医師や看護師、薬剤師などの医療専門家と相談しながら、最適な治療計画を立てることが望ましいでしょう。
大腸がんステージ3 (III)の理解
大腸がんステージ3(III)とは?
大腸がんは、腸の内壁から発生する悪性の腫瘍です。一般的に、大腸がんのステージは0からIVまで分類され、数字が大きくなるほど進行度が高いことを意味します。ステージ3(III)は、がん細胞が大腸の壁を越え、近くのリンパ節にまで到達している状態を指します。ただし、肝臓や肺、脳などの遠隔臓器にはまだ転移していない段階です。
ステージ3に分類される具体的な条件としては、大腸の壁層を超えて浸潤し、周囲のリンパ節にがん細胞が確認されるものの、遠隔臓器にまで到達していないケースが挙げられます。このステージ3の中でも、進行度に応じてさらにサブステージ(IIIA、IIIB、IIIC)が設定されています。
- ステージIIIA
大腸の粘膜、粘膜下層、もしくは筋層にとどまっている場合で、周囲のリンパ節への転移が1~3か所確認される、または近傍組織への転移が認められる段階。比較的早期に近い段階ですが、リンパ節までがんが及んでいるため、適切な治療が不可欠です。 - ステージIIIB
がんが大腸の漿膜(外層)や腹腔内臓器を覆う組織層にまで進展しており、1~3か所以上のリンパ節に転移が確認される場合、あるいは筋層までの深さでもリンパ節転移の数が多い場合を指します。進行度はIIIAより高く、手術と化学療法を組み合わせた積極的な治療が求められます。 - ステージIIIC
がんがさらに広がり、腹膜に到達している、もしくは4~6個以上のリンパ節に転移が確認されている段階です。手術だけではなく術前・術後の化学療法や、必要に応じて放射線療法を組み合わせるなど、より複合的な治療が計画されることが多いです。
ステージ3は、適切な治療を行うことで完治や長期的な生存を目指すことが可能な段階とされています。日本国内の医療現場でも、手術や化学療法の進歩によって、症状のコントロールや延命効果が期待できるケースが多く報告されています。
なお、がんがさらなる段階に進行し、遠隔転移を伴うステージ4になると治療方針は大きく変化し、完治ではなく症状緩和を目的とした治療が中心になる場合もあります。よって、ステージ3の段階で発見・治療を行う意義は非常に大きいといえます。
ポイント
ステージ3(III)は「リンパ節転移あり、遠隔転移なし」の状態を指し、サブステージによって治療方針が変わる可能性があります。最適な治療を受けることにより、良好な予後を得られることも多いのです。
症状
大腸がんステージ3(III)の症状と兆候
大腸がんの症状は、がんの位置(結腸か直腸かなど)、大きさ、リンパ節転移の数や周辺組織への浸潤の程度によってさまざまです。一般的に、ステージ3では腸壁を越えて周囲へ侵襲しているため、症状が出やすくなります。代表的な症状は以下のとおりです。
- 血便
トイレやトイレットペーパーに血が付着する、黒色便や鮮紅色の便が出るなど。下血の色調は腫瘍の位置によって異なることがあります。右側結腸が原発巣の場合は黒っぽい便、左側結腸や直腸付近の場合は赤みの強い便が出やすいといわれています。 - 排便習慣の変化
下痢や便秘が続く、排便後も残便感が残るなど、以前とは違う排便パターンが見られます。特に一週間以上続くような変化があれば注意が必要です。 - 腹痛や腹部不快感
腹部に持続的な違和感や痛みが生じることがあります。腫瘍の大きさや位置によって痛みの程度や感じ方が変わり、慢性的な鈍痛として現れる場合もあれば、急性の強い痛みとして発症する場合もあります。 - 腹部膨満感
お腹が張った感じが続いたり、食後に胃がもたれる感覚が続く場合があります。腸管が狭くなっていることでガスがたまりやすくなることが理由の一つとされています。 - 嘔吐
がんによる腸管の狭窄が進むと、消化物が通過しづらくなり、嘔吐を引き起こす場合があります。24時間以上続く嘔吐や悪心を訴える場合は早めの受診が望まれます。 - 体重減少
食欲低下や消化吸収障害などが重なり、原因不明の体重減少が見られます。本人が意識していなくても、家族や周囲が気づくことがあります。 - 貧血症状や疲労感
長期間にわたる微量出血や栄養障害により貧血を起こしやすくなり、倦怠感や息切れ、疲れやすさを感じることもあります。 - 腸閉塞や腸穿孔のリスク
腫瘍が腸管をほぼ塞いでしまうと腸閉塞を起こし、激しい腹痛や嘔吐が続くことがあります。場合によっては穿孔を起こして腹膜炎に至るリスクも否定できません。
これらの症状のいずれか、あるいはいくつかが組み合わさって現れる場合もあります。大腸がんは初期段階だと症状がはっきりしないことが多いのですが、ステージ3になると腫瘍の進展度合いが高いため、症状が出てから受診し、診断されるケースも少なくありません。いずれにせよ、上記のような異常を感じたら速やかに医療機関を受診し、専門的な検査を受けることが大切です。
補足
大腸がんの症状はほかの消化器疾患とも重なる部分があるため、自己判断で放置すると進行を許してしまう可能性があります。便に血液が混じる場合でも、痔や肛門周辺の裂傷など別の要因で出血していることもありますが、まずは医師の診察で正確に原因を突き止めることが不可欠です。
治療
大腸がんステージ3(III)の治療法
大腸がんステージ3においては、根治を目指すことが十分に可能とされており、主に「手術」と「化学療法(抗がん剤)」を組み合わせた治療が中心となります。がん細胞をできるだけ取り除き、再発や遠隔転移を防ぐためにも、複数の治療法を併用するアプローチが一般的です。患者さんの年齢や全身状態、腫瘍の大きさや部位によって個別化された治療計画が立案されます。
- 外科的切除(手術)
大腸がんの手術では、腫瘍が存在する部位の大腸と、その周囲のリンパ節を含めて切除することが原則となります。たとえば、右側の結腸に腫瘍がある場合は「右半結腸切除術」、S状結腸にある場合は「S状結腸切除術」、直腸に近い部分にある場合は「直腸切除術(低位前方切除術、腹会陰式直腸切断術など)」といった方法が検討されます。近年の外科治療では、腹腔鏡下手術やロボット支援手術など、侵襲を抑える手術法も広く導入されています。特にステージ3でも、リンパ節転移が数個程度であれば腫瘍を完全切除できる可能性が高く、術後の生活の質(QOL)を高めるための再建手術が行われることもあります。
- 化学療法(術後補助化学療法)
手術後には、再発や微小転移を防ぐ目的で化学療法が行われることが一般的です。特にステージ3では、術後の補助化学療法(adjuvant chemotherapy)が推奨されることが多く、代表的なレジメンとしてFOLFOX(5-FU、leucovorin、oxaliplatin)やCapeOx(capecitabine、oxaliplatin)が選択されます。患者さんの体力や副作用のリスクを考慮して、投与量やスケジュールが調整されます。化学療法によってがん細胞の増殖を抑制し、再発リスクの低減を図る意義は大きく、多くの臨床試験でも術後補助化学療法の有用性が示唆されています。ただし、副作用として吐き気、下痢、脱毛、末梢神経障害などが現れる可能性があるため、治療中は医師・看護師と連携し、必要に応じて支持療法(制吐剤の使用など)も受けながら進めていくことが望まれます。
- 術前化学療法
腫瘍が大きく、手術による完全切除が困難と判断される場合には、術前に化学療法を行い、腫瘍を縮小させたうえで手術を実施するケースもあります。この場合、手術後も追加の化学療法を行うことがあり、総合的な治療計画のもとで進められます。 - 放射線療法
結腸がんよりも直腸がんで施行されることが多いですが、腫瘍が直腸に近い位置で進行度が高い場合や、術前・術後の補助療法として放射線療法を組み合わせるケースがあります。局所制御を高めることで、再発を抑えたり、腫瘍の縮小を図ったりする目的で活用されます。
こうした治療法の組み合わせによって、再発率や遠隔転移の確率をできるだけ下げ、治療後のQOLを高めることが目指されます。日本でも、化学療法薬の開発や外科的治療の進歩により、ステージ3の大腸がん治療は年々成果を挙げています。
治療を選択する際の注意点
- 年齢、合併症の有無、生活背景などにより最適な治療法は異なります。
- 化学療法や放射線療法は副作用があるため、治療のメリットとデメリットを理解し、医療チームと十分に話し合うことが重要です。
- ステージ3であっても、術後の定期的な検査やフォローアップを欠かさず行うことで再発を早期に発見・対応できる可能性が高まります。
予後
大腸がんステージ3(III)の予後
ステージ3の大腸がんはリンパ節転移を伴うため、再発リスクがステージ1・2より高い傾向にあります。しかし、適切な治療を行えば長期生存が期待できることも事実です。イギリスの公的機関の統計(2016年~2020年のデータ)によれば、ステージ3の大腸がん患者の約65%が診断後5年以上生存していると報告されています。これは同様の治療水準がある日本をはじめ、他国でもほぼ同等の傾向が確認されています。
日本国内でも、手術技術や化学療法の進化、そして早期発見の体制整備によって、ステージ3からの5年生存率は大きく向上してきました。地域や医療施設による若干の差はありますが、患者さんの体力や腫瘍の性質、治療に対する反応などが良好な場合には、さらに高い生存率が報告されるケースもあります。
予後に影響を与える要因
- リンパ節転移の数
転移しているリンパ節の個数が少ないほど予後は良好になりやすいとされています。- 腫瘍の切除率
完全切除が可能であれば長期生存の可能性は高まります。- 患者さんの全身状態
がん以外の合併症や高齢などで体力が低下している場合、治療の選択肢が制限されることがあります。- 化学療法への反応
術前・術後化学療法で腫瘍が縮小し、再発リスクが低減した場合には、より良い結果が得られる可能性があります。大規模研究例
大腸がん術後の補助化学療法に関しては、過去20年にわたり多くの臨床試験が行われており、ステージ3においても化学療法を受けることで再発率が低下し、生存率が上昇することが示されています。特にFOLFOXなどのレジメンが標準治療として位置づけられている背景には、こうした大規模研究による科学的エビデンスの蓄積があります。
また、ここ数年で注目されている個別化医療の進展によって、遺伝子変異の有無や腫瘍の分子生物学的特性に応じた治療薬の開発が進められています。例えば、特定の分子標的薬が適応となる患者さんでは、さらなる延命効果が期待できる可能性も指摘されています。これらの治療法はまだ一部の施設や臨床試験段階の場合もありますが、今後さらに進歩することで、ステージ3の大腸がん治療の選択肢がますます広がると考えられます。
なお、近年は術後の補助化学療法についても期間やレジメンを最適化する試みが進められており、患者さんの副作用リスクと治療効果をバランスよく考慮することが重視されています。さらに、地域によっては臨床試験の枠組みの中で新たな薬剤やアプローチを試す機会もあるため、主治医や専門機関と連携して最新の治療情報を得ることが有用です。
結論
大腸がんステージ3は、リンパ節へがん細胞が転移しているものの、遠隔臓器には達していない段階であり、適切な治療を受けることで長期生存が期待できる重要な局面です。手術、化学療法(抗がん剤)、場合によっては放射線療法などを組み合わせることにより、治癒もしくは再発リスクの大幅な低減を目指すことができます。実際、イギリスなどのデータからもわかるように、ステージ3であっても5年生存率が60~70%に達する報告があるなど、希望を持てる段階でもあります。
多くの患者さんにとっては、術後の化学療法をうまく乗り越えることが予後改善のカギになります。副作用とどう向き合うか、治療期間中の栄養管理やメンタルケアをどのように行うかなど、医療チームとの連携が重要です。患者さんご自身やご家族が治療の選択肢について正しい知識を持ち、納得したうえで最適な治療計画を練り上げることが、より良い結果へとつながります。
提言
- 早期発見の徹底
ステージ3まで進行してからの治療よりも、より早期で発見できれば治療法の幅や予後はさらに良好となります。定期的な健康診断や大腸内視鏡検査などは非常に有用です。特に40~50代以降の方は便潜血検査や内視鏡検査を定期的に受けることが推奨されます。 - 積極的な治療と専門家との連携
ステージ3では手術と化学療法が治療の柱となりますが、患者さんの状態によって放射線療法や分子標的薬の利用など、複合的な戦略が組まれることもあります。医師、看護師、薬剤師、栄養士など多職種が協力し合い、患者さんを総合的にサポートする体制が重要です。 - 生活習慣とメンタルケアの重要性
治療中や術後は、食事や運動、ストレスケアなど日常生活にも注意を払う必要があります。栄養バランスの良い食事を心がけ、適度な運動や十分な睡眠を取ることが免疫力や体力の維持に寄与します。また、治療にともなう不安やストレスを軽減するために、心理カウンセリングや患者会への参加などのサポートを活用することも検討してください。 - 再発予防と定期検診
ステージ3で治療を受けた後、一定期間が経過すると「もう治ったのでは」と自己判断しがちですが、再発を早期に発見するためにも術後の定期的なフォローアップ(画像検査、血液検査など)は欠かせません。医師の指示に従って定期検診を行い、万が一再発が見つかった場合も早期に治療を再開できるようにしておきましょう。 - 周囲の理解とサポート
大腸がんの治療は長期に及ぶことが多く、その間に体調が変化しやすいものです。家族や友人、職場の同僚など周囲のサポートがあると、患者さんは治療に集中しやすくなります。必要に応じて医療ソーシャルワーカーなどの専門家に相談し、公的支援や地域サポートを活用することも有効です。
免責事項・注意喚起
本記事の内容は、あくまで大腸がんステージ3に関する一般的な知識と最新情報の一部をまとめたものであり、個別の診断や治療方針を決定する目的ではありません。実際の治療は患者さんの年齢や全身状態、合併症の有無、がんの進行度や種類によって大きく変わります。したがって、本記事は医療行為の代替ではなく、あくまで参考としてご利用ください。症状の有無にかかわらず、医療機関での定期的な検診を受け、専門家の判断を仰ぐことが何よりも重要です。
大切なお知らせ
- がんを含めた重篤な疾患は、自己判断や民間療法のみで対処するのは非常に危険です。
- 本記事では一般的な医学・医療情報を紹介していますが、最終的な判断と対応は医師の指導・診察に基づいて行ってください。
- 気になる症状がある場合は、早めに専門医を受診し、適切な検査・治療を受けましょう。
参考文献
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NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines): Colon Cancer.
Version 3.2023. (閲覧には会員登録等が必要な場合があります)
(この記事は大腸がんステージ3の情報を広くまとめたものであり、治療方針を最終決定する際には必ず主治医や専門家の意見を優先してください。定期検査の受診や体調の変化への注意を怠らず、納得のいく治療を選択することが大切です。)