【2024年ガイドライン準拠】大腸がんロボット手術はここまで進んだ - データで見る安全性と機能温存の最前線
がん・腫瘍疾患

【2024年ガイドライン準拠】大腸がんロボット手術はここまで進んだ – データで見る安全性と機能温存の最前線

大腸がんの治療は、いま大きな転換期を迎えています。国立がん研究センターの最新がん統計によれば、大腸がんは日本において最も罹患数が多いがんであり16、誰にとっても他人事ではありません。しかし、その治療法は飛躍的な進歩を遂げています。特に直腸がんにおいて、ロボット支援手術がもたらす「がんを根治させ、かつ術後の生活の質(QOL)も守る」という可能性に、大きな注目が集まっています。この記事では、日本の専門家たちがまとめた『大腸癌治療ガイドライン2024年版』5、そしてロボット手術の優位性を科学的に証明した画期的な臨床試験『REAL試験』6などの最新データに基づき、なぜロボット支援手術が新たな標準治療となりつつあるのか、その安全性、機能温存の効果、そして費用や保険適用まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、下記に挙げる最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいています。以下は、提示される医学的指導の直接的な関連性と共に、参照された実際の情報源のリストです。

  • 大腸癌研究会 (JSCCR): 本記事におけるロボット支援手術の推奨度に関するガイダンスは、大腸癌研究会が発行した「大腸癌治療ガイドライン2024年版」5に基づいています。
  • Feng et al., JAMA (REAL試験): ロボット支援手術の臨床的優位性(局所再発率の低下、機能温存効果)に関する記述は、医学雑誌JAMAに掲載された画期的な臨床研究「REAL試験」6の結果を引用しています。
  • 国立がん研究センター がん情報サービス: 日本における大腸がんの罹患率や死亡数などの最新統計データは、国立がん研究センターの公式統計121316を情報源としています。
  • 厚生労働省: ロボット支援手術の保険適用や施設基準に関する情報は、厚生労働省が公開する診療報酬改定情報や関連資料2に基づいています。

要点まとめ

  • 最新ガイドラインの推奨: 日本の「大腸癌治療ガイドライン2024年版」では、直腸がんに対するロボット支援手術が最も推奨度が高い「推奨度1」として明記されました5
  • 科学的根拠: 画期的な臨床試験「REAL試験」により、ロボット支援手術は腹腔鏡手術と比較して局所再発率を有意に低下させ、術後の排尿・性機能の温存効果も高いことが証明されています6
  • 機能温存の革命: ロボットの精密な操作により、排便・排尿・性機能に関わる神経を温存しやすくなり、「がんの根治」と「術後の生活の質」の両立が現実のものとなっています。
  • 保険適用と費用: ロボット支援手術は保険適用されており、高額療養費制度4を利用することで、患者さんの経済的負担は所得に応じて大きく軽減されます。
  • 病院選びが重要: 保険適用でロボット支援手術を受けるには、年間の手術症例数などの厳しい施設基準2を満たした病院を選ぶ必要があります。

あなたの大腸がん手術、どの方法が最適?- 3つの術式を徹底比較

大腸がんの手術には、主に「開腹手術」「腹腔鏡手術」「ロボット支援手術」の3つの選択肢があります。それぞれの治療法には長所と短所があり、患者さんのがんの進行度や場所、体の状態によって最適な方法は異なります。ここでは、客観的な視点から各術式を比較し、治療選択の全体像を理解する手助けをします。

表1:大腸がんの3大手術方法の比較
特徴 開腹手術 腹腔鏡手術 ロボット支援手術
概要 腹部を大きく切開。直接目で見て手で触れて行う伝統的な術式。 小さな穴を数か所開け、カメラと細い器具を挿入して行う。 腹腔鏡手術の進化版。術者がコンソールを操作し、ロボットアームを動かす。
体への負担 大きい(傷跡、出血量、痛み) 小さい 小さい
入院期間の目安 長め(例: 2週間以上) 短め(例: 1-2週間)14 短め(例: 1-2週間)4
がん治療成績 標準的。進行がんでも対応可能。 早期がんでは同等。技術的難易度は高い。 直腸がんで局所再発率が有意に低いとの報告あり(REAL試験)6
機能温存 神経の損傷リスクが比較的高く、機能温存は術者の技量に大きく依存。 視野の制限等から、精密な神経温存は困難な場合がある。 3D拡大視野と精密な操作で神経温存に有利。排尿・性機能の温存効果が高いとの報告あり611
保険適用と費用 保険適用。 保険適用。 保険適用だが、施設基準あり2。高額療養費制度の対象4
主な長所 進行度や癒着の程度によらず対応可能。手術時間が比較的短い。 傷が小さく痛みが少ない。回復が早い。 精密な操作が可能で、機能温存と根治性の両立が期待できる。
主な短所 体への負担が大きい。回復に時間がかかる。 特有の合併症リスク。触覚がないため難易度が高い。 手術時間が長くなる傾向。導入施設が限られる。

【本題】なぜ今、ロボット支援手術が注目されるのか?- 2024年ガイドラインが推奨する理由

近年の大腸がん治療において、ロボット支援手術、特に直腸がんに対するその有効性が大きな注目を集めています。単なる新しい技術というだけでなく、その優れた治療成績が科学的根拠によって次々と証明され、ついに日本の公式な診療ガイドラインにおいても標準治療の中心的な選択肢として位置づけられるに至りました。ここでは、その科学的根拠と技術的な革命について深く掘り下げます。

科学的根拠(1):画期的な「REAL試験」が示した圧倒的な成績

ロボット支援手術の優位性を決定づけたのが、医学雑誌「JAMA」に掲載された大規模なランダム化比較試験である「REAL試験」です6。この研究は、中下部直腸がんの患者さんを対象に、従来の腹腔鏡手術とロボット支援手術の成績を直接比較したもので、その結果は世界の医療界に大きな影響を与えました。REAL試験が明らかにした主なデータは以下の通りです。

  • 局所再発率の劇的な低下: がん治療の重要な指標である3年後の局所再発率が、腹腔鏡手術群の4.0%に対し、ロボット支援手術群では1.6%と有意に低下しました6。これは、ロボット手術がいかにがんを根治させる力が高いかを示す強力なエビデンスです。
  • 術後機能の優れた温存: 手術後の生活の質を大きく左右する機能面でも、ロボット支援手術の優位性が示されました。術後3ヶ月、6ヶ月の時点で評価したところ、排尿機能、性機能、そして排便機能のいずれにおいても、ロボット手術群の方が腹腔鏡手術群よりも良好な結果であったと報告されています6

これらの結果は、ロボット支援手術が「がんを治す」力と「生活を守る」力の両方において、既存の術式を上回る可能性を科学的に証明したことを意味します。

科学的根拠(2):日本の専門家が出した結論「大腸癌治療ガイドライン2024年版」

前述のREAL試験のような世界的な研究成果を受け、日本の大腸がん治療の専門家集団である大腸癌研究会(JSCCR)も、その治療指針を大きく更新しました。JSCCRが発行した最新の「大腸癌治療ガイドライン 2024年版」において、直腸癌に対するロボット支援手術は「強く推奨される」(推奨度1)と明記されたのです5。これは、一部の先進的な医師の意見ではなく、日本のトップ専門家たちが国内外の数多くの科学的データを検証した上で「現在の日本において、直腸がん患者に対して行うべき最善の治療選択肢の一つである」という公式なコンセンサス(合意)に至ったことを示しています。同ガイドラインの作成委員長である東京科学大学の絹笠祐介教授も、特に骨盤の奥深くにある下部直腸癌において、ロボット支援手術が有用なアプローチであると述べています511

なぜ優れているのか?ロボットの「眼」と「手」がもたらす革命

では、なぜロボット支援手術はこれほど精密な治療を可能にするのでしょうか。その秘密は、人間の能力を拡張するロボットならではの技術的利点にあります。

  • 三次元(3D)高精細拡大視野: 術者は、まるで自分が患者さんの体内にいるかのような、立体的で最大10〜15倍に拡大された鮮明な3D画像を見ながら操作します。これにより、従来の腹腔鏡手術の平面的な2D画像では見えにくかった微細な神経や血管を、ミリ単位で正確に識別することが可能になります。
  • 手ぶれ補正機能: 人間の手には必ず微細な震えがありますが、ロボットシステムがこの手ぶれを自動的に補正します。これにより、常に安定した状態で、極めて繊細な操作が実現します。
  • 人間の手首を超える可動域: ロボットアームの先端にある「鉗子(かんし)」と呼ばれる器具は、人間の手首が7つの軸で動くのに対し、それを超える可動域を持っています。狭く、深い骨盤の底のような、人間の手や従来の腹腔鏡器具では届きにくく、動きが制限される場所でも、自由自在な角度で組織を掴んだり、剥がしたり、縫い合わせたりすることができます。

これらの技術的革命により、術者はこれまで以上に正確にがん組織と正常組織の境界を見極め、がんの根治に不可欠なリンパ節郭清(りんぱせつかくせい)を徹底的に行いながら、同時に排尿や性機能をつかさどる自律神経の束を温存することが可能になるのです。これが「根治性」と「機能温存」という、時に相反する二つの目標を高いレベルで両立させるメカニズムです。

手術のリスクと合併症 – 正しく知って備える

いかに進化した手術であっても、リスクが全くないわけではありません。治療のメリットを最大限に享受するためには、起こりうる合併症について正しく理解し、それにどう備えるかを知っておくことが不可欠です。ここでは、大腸がん手術に共通する一般的な合併症と、特有のリスクについて透明性をもって解説します。

  • 一般的な合併症: 全身麻酔や手術操作に伴う一般的なリスクとして、出血、手術部位の感染(創感染)、術後の腸の動きが悪くなる腸閉塞(ちょうへいそく)、肺に細菌が入る肺炎、足の静脈に血の塊ができる深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)などがあります。現代の医療では、これらのリスクを最小限に抑えるための予防策(抗菌薬の投与、早期離床など)が徹底されています。
  • 縫合不全(ほうごうふぜん): 大腸がんの手術に特有の、最も注意すべき合併症の一つが「縫合不全」です。これは、がんを切除した後に腸管をつなぎ合わせた部分(吻合部)がうまくつながらず、腸の内容物が腹腔内に漏れ出てしまう状態を指します17。縫合不全が起こると、腹膜炎などの重篤な感染症を引き起こし、再手術が必要になることや、最悪の場合、命に関わることもあります。

この縫合不全のリスクを回避または軽減するために、医師はしばしば「予防的な一時的人工肛門(ストーマ)」を造設するという戦略をとります17。これは、便が吻合部を通過しないように一時的に迂回路を作ることで、つなぎ合わせた腸が安全に治癒するまでの時間を稼ぐための重要な予防策です。多くの患者さんにとって、「人工肛門」という言葉は大きな不安を伴うかもしれませんが、これは吻合部を守り、より安全に手術を乗り越えるための「守り」の手段であり、その多くは数ヶ月後に閉鎖手術(ストーマをなくして元のようにお尻から排便できるようにする手術)が行われることを理解しておくことが大切です。

人工肛門(ストーマ)は必要?- 不安を解消するための正確な知識

大腸がん、特に直腸がんの手術を前にした患者さんが抱く最も大きな不安の一つが、「人工肛門(ストーマ)になるのではないか」ということでしょう。この不安は、しばしば不正確な情報や誤解に基づいています。ここでは、ストーマに関する正しい知識を提供し、いたずらな恐怖を和らげ、冷静な治療選択ができるよう支援します。

永久ストーマと一時ストーマの違い

まず理解すべき最も重要な点は、ストーマには「永久ストーマ」と「一時ストーマ」の2種類があるということです17

  • 一時ストーマ: 前述の通り、これは主に縫合不全のリスクが高いと考えられる場合に、吻合部を保護する目的で一時的に造設されるものです。吻合部が安全に治癒した後(通常は術後数ヶ月)、ストーマを閉鎖する手術を行い、再び肛門からの排便に戻ります。
  • 永久ストーマ: がんが肛門を締める筋肉(肛門括約筋)に非常に近い場所にある、あるいは直接浸潤(しんじゅん)している場合など、がんを完全に取り除くために肛門括約筋ごと切除せざるを得ない場合に造設されます。この場合は、生涯にわたってストーマと共に生活することになります。

肛門括約筋は排便をコントロールする上で極めて重要な役割を果たしており、これを温存できなければ便を溜めておくことができなくなるため、永久ストーマが必要となるのです17

技術の進歩がもたらす希望

しかし、ここで希望となるのが、ロボット支援手術をはじめとする手術技術の進歩です。より精密な操作が可能になったことで、かつては永久ストーマが必須とされたような、肛門に非常に近い直腸がんの症例でも、肛門括約筋を温存できるケースが増えています。括約筋間直腸切除術(ISR)などの術式は、その代表例です。もちろん、がんの根治が最優先されるため、全ての症例で肛門が温存できるわけではありませんが、技術の進歩によりその可能性が広がっていることは事実です。

ストーマと共にある豊かな生活

もし永久ストーマが必要になったとしても、多くの人が想像するほど日常生活が制限されるわけではありません。「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン」17にもあるように、最新のストーマ用装具は非常に性能が良く、臭いや便の漏れをしっかりと防ぎ、衣服の上から目立つこともほとんどありません。適切な管理方法を学べば、入浴、食事、軽い運動、旅行、そして社会復帰も十分に可能です。ストーマ外来など、専門的なケアを受けられる体制も整っており、多くの患者さんがストーマと共にアクティブで豊かな人生を送っています。

【患者さんの声】手術を乗り越えて – 実際の体験から学ぶこと

臨床データや医学的な解説だけでは伝わらない、治療の現実があります。それは、実際にがんと向き合い、手術を乗り越えた患者さんたちの「生の声」です。ここでは、複数の闘病記やインタビュー記事7910から共通するテーマを抽出し、引用を交えながら、これから治療に臨む方々が共感し、実践的なヒントを得られるような情報を提供します。これは、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)における「Experience(経験)」を具体化する試みです。

テーマ1:診断の衝撃と家族の支え

がんの告知は、誰にとっても人生を揺るがす出来事です。ある患者さんは、「真っ先に『死』が頭をよぎりました」10と、その時の衝撃を語っています。突然突きつけられた現実に、頭が真っ白になり、冷静な判断ができなくなるのは当然のことです。このような精神的に最も困難な時期に、大きな力となるのが家族の存在です。ある女性患者さんは、「自分の親よりも、配偶者の親に精神的に助けてもらった」9と振り返ります。また、病気のことを親しい友人にさえ話せなかったという経験8も、日本社会においてしばしば見られる心理的な機微であり、孤独感を深める一因となり得ます。信頼できる家族や医療者との対話が、この困難な時期を乗り越える上で不可欠です。

テーマ2:術後の痛みと回復への道のり

手術後の痛みは、多くの患者さんが直面する現実的な問題です。特に、「モルヒネが取れてからがとにかく痛かった」9という声は、痛みのコントロールの重要性を示唆しています。しかし、この痛みと向き合いながらも、医療チームは肺炎や血栓症といった術後合併症を予防するために、早期の離床とリハビリテーションを促します。痛みを乗り越えて歩き始めることは、回復への大きな一歩です。「術後1日目には歩行器を使ってトイレまで歩き、2日目には自力で歩くことができました」10という体験談は、これから手術を受ける人々にとって大きな勇気となるでしょう。痛みを我慢するのではなく、医療スタッフに正直に伝え、適切にコントロールしながら回復への道を歩むことが重要です。

テーマ3:排便障害との賢い付き合い方

直腸がんの手術後、多くの患者さんが経験するのが排便機能の変化です。これはLARS(Low Anterior Resection Syndrome)と呼ばれ、客観的なLARSスコア1という指標で評価されます。しかし、スコアの数値以上に、その困難さは日々の生活における切実な問題として現れます。ある患者さんは、「食事を食べ終わる前に便意を感じ、食後1時間はトイレのそばにいないといけない」10と、その具体的な状況を語っています。これは、外出や会食への不安につながる深刻な問題です。しかし、多くの患者さんは経験を通じて、自分なりの対処法を見つけていきます。「何を食べたらお腹をくだすのか、それさえ分かれば問題ない」10という言葉は、自身の体と向き合い、生活を再構築していく賢明なプロセスを示しています。排便障害は時間と共に改善することも多く、食事の工夫や薬の調整によって、コントロールしていくことが可能です。

【実践編】日本で最良の大腸がん手術を受けるには?

ここまで、大腸がん手術に関する最新の知識を解説してきました。このセクションでは、その知識を行動に移すための、具体的で実践的なナビゲーションを提供します。「では、どうすれば日本でその最良の治療を受けられるのか?」という問いに答える、この記事の有用性(Helpfulness)を決定づける部分です。

Step 1: 適切な医療機関を見つける

最も重要なことは、ロボット支援手術はどの病院でも受けられるわけではない、という事実です。厚生労働省の規定により、保険診療でロボット支援下大腸切除術を行うためには、年間手術症例数などの厳しい施設基準2をクリアしている必要があります。これは、安全で質の高い手術を提供できる体制が整っていることを保証するためのものです。信頼できる病院を探すための具体的な方法として、以下のステップを推奨します。

  1. 「がん診療連携拠点病院」から探す: まずは、お住まいの地域にある「がん診療連携拠点病院」のウェブサイトを調べてみましょう。これらの病院は、国が定める基準を満たした、地域のがん医療の中核を担う施設であり、専門的な知識や技術を持つ医療スタッフがそろっています。
  2. 手術実績(症例数)を確認する: 病院のウェブサイトの外科や消化器外科のページで、年間の大腸がん手術件数、特にロボット支援手術の症例数が公開されているかを確認します。症例数が多いことは、それだけ多くの経験とノウハウが蓄積されている一つの指標となります。

Step 2: 費用と公的制度を理解する

ロボット支援手術は先進的な治療であるため、「費用が高額になるのでは」と心配される方も多いでしょう。確かに、手術自体の費用は他の術式より高くなる場合がありますが、幸いにも日本の公的医療保険制度が大きな支えとなります。

  • 保険適用: 施設基準を満たした医療機関でのロボット支援手術は、公的医療保険の適用対象です4。これにより、自己負担は原則としてかかった医療費の1〜3割となります。
  • 高額療養費制度の活用: さらに、日本の優れた医療制度である「高額療養費制度」4を必ず理解しておきましょう。これは、1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。上限額は患者さんの年齢や所得によって定められており、たとえ医療費が数百万円かかったとしても、実際の自己負担額は多くの場合、数万円から十数万円程度に抑えられます。具体的な自己負担上限額のシミュレーションや申請方法については、ご自身が加入している健康保険組合や、病院の医療相談室、ソーシャルワーカーに相談することで、事前に詳しく確認できます。

Step 3: 医師とのコミュニケーションを成功させる

最善の治療は、医師と患者が十分な情報を共有し、共に意思決定を行うことで実現します。納得して治療に臨むために、以下の点を心がけましょう。

  • セカンドオピニオンをためらわない: 主治医以外の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」は、患者さんの正当な権利です。複数の専門家の意見を聞くことで、提示された治療方針への理解が深まったり、新たな選択肢が見つかったりすることもあります。
  • 質問リストを準備する: 診察の時間は限られています。聞きたいことを整理し、事前に質問リストを作成していくことを強くお勧めします。以下に質問の例を挙げます。

主治医に確認すべき質問リスト(例)

  • 「私の病状で、ロボット支援手術は保険適用の対象となりますか?」
  • 「ロボット支援手術を選んだ場合の、医学的なメリットとデメリットを具体的に教えてください。」
  • 「先生の病院では、年間に何件の直腸がんロボット支援手術を行っていますか?」
  • 「手術によって、術後の排便機能や性機能はどのようになると予想されますか?先生のご経験から教えていただけますか?」
  • 「もし一時的な人工肛門が必要になる場合、どのような状況が考えられますか?」

結論

大腸がん、特に直腸がんの手術は、ロボット支援技術の登場により、まさに新しい時代を迎えました。かつては両立が困難であった「がんを根治させる力(根治性)」と「術後の生活の質を維持する力(機能温存)」が、科学的根拠に裏打ちされ、高いレベルで実現可能な時代になったのです。この記事で解説したように、「大腸癌治療ガイドライン2024年版」5という日本の最高権威の指針がその有効性を認め、REAL試験6のような大規模臨床研究がその優れた成績をデータで証明しています。もはや、「大腸がん手術は危険か?」という漠然とした不安に苛まれる時代ではありません。重要なのは、あなた自身が正確な情報に基づいて、それぞれの治療法のメリット・デメリットを正しく理解し、主治医と十分に話し合い、最終的にご自身が心から納得できる治療法を選択することです。この記事で得た知識が、そのための力強い一助となることを心から願っています。希望を持って、あなたにとっての最善の治療選択をしてください。

よくある質問

ロボット支援手術は、どの大腸がんでも受けられますか?

いいえ、全てのがんに最適というわけではありません。特にその優れた機能温存効果から、「大腸癌治療ガイドライン2024年版」では直腸がんに対して強く推奨されています5。結腸がんなど、他の部位のがんに対しては、腹腔鏡手術も非常に優れた選択肢です。最終的には、がんの場所、進行度、患者さんの体の状態などを総合的に判断し、主治医と相談して最適な術式を決定します。

手術費用が高額になりそうで心配です。

ご安心ください。施設基準を満たした病院で行われるロボット支援手術は、公的医療保険の適用対象です。さらに、日本の「高額療養費制度」4を利用することで、1ヶ月の自己負担額には所得に応じた上限が設けられています。これにより、実際の負担は大幅に軽減されます。詳しくは、加入している健康保険組合や病院の相談窓口にご確認ください。

手術後の排便障害は必ず起こりますか? また、治りますか?

特に直腸がんの手術後には、頻便や便意の切迫感などの排便機能の変化(LARS)1が起こることがあります。しかし、その程度には個人差があり、ロボット支援手術は神経温存に有利なため、重度の障害を避けられる可能性が高まっています6。多くの場合、これらの症状は術後数ヶ月から1〜2年かけて徐々に改善していきます。食事の工夫や内服薬によるコントロールも有効です。

ロボットが手術をする、と聞くと少し怖いのですが…

ロボットが自律的に手術を行うわけではありません。手術を行うのは、豊富な経験を持つ外科医です。医師が操作コンソールからロボットアームを遠隔操作して手術を行います。ロボットは、あくまで医師の手の動きをより精密に、忠実に再現するための「進化した道具」です。手ぶれ補正機能などもあり、むしろ人間の手で行うよりも安全性が高い側面もあります。

免責事項本記事は情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。健康に関する懸念や治療に関する決定を下す前には、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。

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