妊娠後期の発熱は危険?母体と赤ちゃんへの影響を解説
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妊娠後期の発熱は危険?母体と赤ちゃんへの影響を解説

はじめに

妊娠中に体が熱を帯びる経験は、多くの妊婦が直面するごく一般的な現象ですが、特に妊娠の最後の3か月(妊娠後期)に発熱すると、その影響がいっそう気になることが多くなるでしょう。健康的な妊娠を望む多くの妊婦にとって、発熱がどのように影響するのかを理解しておくことは非常に重要です。本記事では、妊娠末期における発熱の原因や潜在的な影響、そして安全に体温を下げるための方法について、より詳細に解説します。この記事は「JHO」として日本の医学ジャーナルに執筆し、私たちが得た知見をお伝えしますので、どうぞ最後までお読みいただければと思います。

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本文では、専門家として博士(医学)レ・ヴァン・トゥアン(Lê Văn Thuận)の見解に基づいて情報をお届けしています。この情報は婦人科学の観点からの信頼できる指導を提供し、妊娠中の健康に関する疑問を解消する助けとなるでしょう。妊娠中の身体的な変化や発熱に対してどのように対処すべきかについて、専門的なアドバイスを通じて安心感を提供いたします。

妊娠中の発熱を見分ける方法

妊娠中に体温が上昇することは決して珍しいことではありません。しかし、実際に発熱しているかどうかを確認するためには正確な方法が必要です。体温を測る際には、以下の5つの部位で計測することができます。

  • 額(おでこ)
    額に測定器を当てることで簡単に測定できます。外出先などですぐに確認しやすい方法で、初期の目安として便利です。
  • 耳(鼓膜温度計を使用)
    耳での測定は鼓膜温度計を使用することで、比較的正確に体温を把握できます。鼓膜は内部温度に近いため、正確性が高いとされています。
  • 口腔(口の中)
    口腔温は体内温度に近く、一般的に多くの家庭でも取り入れられている測定方法です。水分の摂取直後などは少し時間をおいてから測定するのが望ましく、安定した数値を得やすいことが特長です。
  • 脇の下
    脇の下での測定は、多くの妊婦が採用している方法です。安全で手軽ですが、外部環境の影響を受けやすいため、正確さを保つためには一定時間しっかり挟むなど注意が必要です。
  • 直腸(最も正確な方法とされる)
    直腸での測定は内部温度に近いため、ほかの測定方法に比べて非常に正確性が高いといわれています。ただし妊娠中はお腹が大きくなるため、測定が難しい場合もあります。医療現場では正確な体温を把握する目的で使用されることがあります。

通常、日中の体温が1℃〜2℃ほど上昇することはあり得ますが、以下のような測定結果が得られた場合には発熱の可能性が高いと考えられます。

  • 脇の下での測定で37.2℃以上
  • 口腔での測定で37.8℃以上
  • 額、耳、または直腸での測定で38℃以上

これらは、体が通常の範囲を超えて温度が上昇しているかどうかを確認するための目安となります。体温が大きく上がると、健康上の問題につながる可能性があります。そのため、早めに管理・対処することが大切です。

妊娠末期の発熱の原因

妊娠の最後の3か月(妊娠後期)に発熱する理由は多岐にわたります。ここでは代表的な原因について、さらに詳しく解説します。

  • 耳の感染症(中耳炎)
    中耳炎は耳の中で炎症が起きる感染症です。妊娠中はホルモンバランスの変化や免疫力の低下により感染リスクが高まることがあります。耳の痛みや発熱、場合によっては耳からの分泌物が見られることもあります。
  • 食中毒
    腐敗した食べ物や汚染された食材を摂取することによって体内で細菌やウイルスが増殖し、発熱を引き起こすことがあります。食中毒は、下痢や嘔吐、激しい腹痛を伴うことが多いため、妊娠中の妊婦と胎児に対して重大な影響を及ぼす可能性があります。日頃の食事管理や衛生管理が非常に重要です。
  • 泌尿生殖器系の感染(特に羊膜炎や尿路感染症)
    妊娠中は尿路感染症のリスクが高まりやすく、特に羊膜炎は胎児を包む膜(羊膜)に感染が及ぶ非常に危険な状態です。羊膜炎が進行すると、早期破水や早産を引き起こすことがあるため、早急な治療が不可欠です。また、頻尿や排尿時の痛みなどを伴う一般的な尿路感染症も放置すると腎盂腎炎に発展する恐れがあり、注意が必要です。
  • 肺炎
    肺炎は肺に感染が及ぶ状態で、発熱、咳、呼吸困難などの症状が現れます。妊娠中は呼吸機能に負担がかかりやすいため、肺炎にかかった場合には胎児への酸素供給が不十分になる可能性も指摘されています。速やかな医療機関の受診が重要です。
  • 呼吸器のウイルス感染(風邪やインフルエンザ、COVID-19など)
    妊娠中は呼吸器系の感染にも注意が必要です。風邪やインフルエンザ、COVID-19などは高熱や倦怠感が続きやすく、重症化すると妊婦や胎児の健康に深刻な影響を与える可能性があります。インフルエンザに対するワクチン接種は、妊娠中の合併症予防に有効であると考えられており、多くの医療機関で推奨されています。
  • 尿路感染症
    膀胱や尿道、腎臓に至るまで感染が広がる可能性があり、発熱や下腹部痛、排尿時の痛み、尿の濁りなどが主な症状です。軽度であっても放置すれば重篤化する場合があるため、早期に医師の診断・指示を仰ぐことが重要です。

これらの感染症リスクだけでなく、バイクラムヨガ(ホットヨガ)や暑く湿った環境下での運動も体温を上昇させる要因となります。さらに、一部の研究では、長時間のサウナや熱いお風呂での入浴が体温を上昇させ、とりわけ妊娠初期においては先天性欠損症を引き起こすリスクを高めると指摘されています。これらの活動は安全を最優先して、妊娠中は避けることが推奨されるケースが多いです。

妊娠末期の発熱は危険か?

妊娠期間中に見られる発熱がどのように影響するかを理解しておくことは、とても大切です。特に妊娠初期の発熱は、胎児の神経管欠損リスクを高める可能性があるとされています。それでは、妊娠末期(妊娠後期)の発熱はどのようなリスクがあるのでしょうか。

妊娠末期の発熱は、とりわけ早期分娩のリスクを高める可能性があると指摘されています。体が高熱状態になると、子宮収縮が促進されやすくなることがあり、結果として早産を誘発するリスクが増すからです。感染症に起因する発熱であれば、胎児への影響も重大になり得ます。特に、感染症が胎児に伝播する場合には、重度の合併症や妊娠の継続が困難になる状況も考えられ、医療従事者による迅速な対応が必須となります。

さらに、インフルエンザに妊娠末期で感染すると、重症化しやすいとされる報告もあります。高熱や全身の倦怠感、食欲不振などの症状が長引いた場合には、母体だけでなく胎児の健康に悪影響が及ぶリスクが高まります。そのため、迅速に医療機関を受診し、必要な検査や治療を受けることが推奨されます。

なお、2020年に発表されたある後ろ向き研究(Causes and consequences of fever during pregnancy: A retrospective study in a gynaecological emergency department – PMC)によると、妊娠中の発熱にはさまざまな要因が関与し得る一方で、適切な治療と管理が行われれば大多数のケースで重篤化を回避できるとされています。また2021年の報告(Fever During Pregnancy: Etiology and Fetomaternal Outcomes | SpringerLink)では、妊娠後期における発熱に早期から対処することで、母子双方のアウトカムが改善する可能性が示唆されました。これらの研究からも、妊婦が発熱に気づいた際には迅速かつ適切な対応が極めて重要であることがわかります。

妊娠末期の発熱に対処する方法

妊娠末期に発熱した場合、まずは安全な方法で体温を下げることが求められます。最も大事なのは、薬を自己判断で使用しないことです。必ず医療機関で適切な診断を受け、医師の指示に従ってください。もしすぐに医療機関を受診できない状況であれば、一時的な応急処置として、妊婦が比較的安全に使用しやすいとされる解熱薬のアセトアミノフェン(カロナール)を指示に基づいて服用する方法があります。このときは用法・用量を必ず厳守し、不安があれば早急に医療従事者に相談しましょう。

自己管理のポイント

  • ぬるま湯に浸した清潔なタオルで額や首を冷やす
    この方法は体温を自然に下げるのに効果的で、すぐに実践できる手段です。額や首は血管が多く通る部位のため、効率良く体温を調節することができます。
  • 水分を多く摂取して脱水を防ぐ
    妊娠中は通常時より水分が失われやすいだけでなく、発熱時にはさらに汗をかきやすいので、水分補給を怠らないことが重要です。水、スポーツドリンクなどを少量ずつこまめに摂取し、体内の水分バランスを保ちましょう。
  • 十分な休息を取る
    発熱時は体が多くのエネルギーを消耗します。横になって体力を回復させることが、免疫力を高め自然治癒を促すうえでも大切です。無理をして動くより、しっかり休むことを優先します。
  • 消化にやさしい食事(お粥やスープ、シンムジなど)を摂取する
    胃腸への負担を減らしつつ、必要な栄養を確保するためには消化の良い食事が適しています。例えば、お粥や野菜スープは体を温めながらエネルギーを補給でき、発熱時にも比較的食べやすいとされています。
  • 直接風や冷気に当たりすぎないようにする
    エアコンや扇風機の風が直接身体に当たると、体温が急激に変化するだけでなく体力も奪われやすくなります。適度に室内の空気を循環させながら、体温調節を自然な形で行うよう心がけましょう。

なお、自己管理の範囲を超えて症状が悪化したり、強い腹痛や出血など別の異常が見られたりした場合は、速やかに医療機関を受診してください。

発熱を未然に防ぐための日常生活での工夫

妊娠中は、感染症を予防し、発熱の原因を減らすことが重要です。日常生活で取り入れられる工夫として、以下のような対策があります。

  • 手洗いとうがいを徹底する
    外出先から戻ったら、こまめに手洗いとうがいを行い、ウイルスや細菌の侵入を可能な限り防ぎましょう。特にインフルエンザや風邪が流行する季節には、マスク着用と合わせて基本的な予防策を実践することが推奨されます。
  • 栄養バランスの良い食事を心がける
    バランスの良い食事は免疫力を高める要となります。タンパク質、ビタミン、ミネラルを豊富に含む食材を取り入れ、身体が抵抗力を維持できるようにしましょう。妊娠中はつわりなどで思うように食べられない時期もありますが、工夫して栄養を確保することが大切です。
  • 適度な運動を行う
    体力の維持や血行促進を目的として、妊婦体操やウォーキングなどの軽い運動を習慣化すると良いでしょう。ただし、体調が悪いときや発熱が疑われる場合、あるいは医師から運動制限の指示が出ている場合は無理をしないでください。
  • 十分な睡眠と休養を確保する
    妊娠中は普段以上に疲れやすく、免疫力が低下しやすいといわれています。睡眠時間をしっかり確保することで、身体の回復と免疫機能をサポートしましょう。
  • 定期的な健康チェックと予防接種
    妊婦健診で医療機関に通う際、医師に疑問点を質問しながら最新の情報を得ることが大切です。インフルエンザなど季節性の感染症が流行する時期には、医師と相談のうえワクチン接種を検討してみてください。

結論と提言

妊娠中の発熱は無視できない症状であり、特に妊娠後期であれば適切な管理と迅速な対応が求められます。発熱の原因やその影響について理解を深めることで、妊婦自身と胎児の健康を守るための行動をとりやすくなります。妊娠中は普段以上に定期的な健康チェックを行い、何か異常を感じたらただちに医療機関を受診しましょう。さらに、医師からの指示に従い、安全で効果的な方法で熱を下げたり感染症を防いだりすることが重要です。

また、家族やパートナーなど周囲のサポートも不可欠です。妊娠中は体調の変動が大きく、精神的にも不安になりやすいため、身近な人々の協力は大きな支えになります。家事や買い物の手伝い、病院への付き添いなど、日常生活におけるサポートが妊婦の体調管理を助け、さらに安心感を与えてくれます。周囲と協力して安全で快適な妊娠生活を送ることが、母体と胎児双方の健やかな成長につながるでしょう。

医師への相談と妊娠中の注意点

妊娠後期の発熱は、早産や胎児への影響など多くのリスクをはらんでいます。万が一、高熱や激しい痛みなど深刻な症状を感じたら、自己判断で解熱薬を多用するのではなく、速やかに医療機関を受診してください。とくに呼吸困難や胸の痛み、強い頭痛、意識障害などがある場合は緊急性が高い可能性があります。また、一見軽症だと思われる症状であっても、妊娠中は身体の状態が通常とは異なるため、専門家の判断を仰ぐことが大切です。

妊婦健診の際には、発熱時の対処法や避けるべき活動について医師や助産師に相談することも有効です。妊娠週数や個人の体調、既往歴などによってリスクが異なるため、個別の指導を受けることが最も安心といえます。

免責事項

本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を代替するものではありません。妊娠中の体調管理や治療方針に関しては、必ず医師や専門家の指導を受けてください。ここで紹介した情報や研究結果はあくまで参考として提示しているものであり、個々の症状や状況に応じた最適な判断は専門家による診断が必要です。

参考文献

上記の文献は、国際的にも信頼性が高いと考えられる機関や学術誌の情報を主に参照しています。各妊婦の状況によって対応や治療が異なりますので、気になる点があれば必ず専門家にご相談ください。妊娠中の発熱は適切な管理によって大部分が早期に改善できる可能性があり、速やかな対応が母体と胎児双方の安全につながります。無理をせず、まずは医療の専門家のアドバイスを受けながら、日常生活における感染対策や栄養、休養管理をしっかり行っていきましょう。

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