はじめに
こんにちは、皆さん。今回は、「JHO」編集部から子宮卵管造影検査について、できるだけ詳しく掘り下げてご紹介いたします。妊娠を望んでいる方や、不妊治療を検討・実施している方にとって、この検査は大きな意味を持つ可能性があります。一方で、「痛みはどの程度なのか」「体への影響はあるのか」「実際にどんな手順で行われるのか」といった疑問や不安を抱く方も少なくありません。今回の記事では、これらの疑問にできるかぎり答えつつ、検査の手順や注意点、検査後のケアに至るまで、幅広く解説していきます。検査を初めて受ける方や、受けるかどうか迷っている方にとって、有用な情報をお届けできれば幸いです。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
このトピックをより深く掘り下げるにあたって、現在Bệnh Viện Phụ sản Cần Thơに勤務している修士・医師Huỳnh Kim Dung博士の知見を参考にいたしました。Huỳnh Kim Dung博士は産婦人科領域において長年の経験を持ち、特に不妊治療の診断および治療法に精通している専門家です。この記事では、Huỳnh Kim Dung博士のアドバイスを踏まえながら、子宮卵管造影検査(以下、HSGと略称する場合があります)の重要性や注意点についても詳しく紹介していきます。
もっとも、本記事はあくまでも一般的な情報提供を目的としており、専門家による個別の診断や治療方針を代替するものではありません。検査を受けるかどうかの最終的な判断は、ご自身の体調や病歴などを十分に考慮し、必ず医療専門家と相談のうえで行ってください。
子宮卵管造影検査とは?
まず、この検査がどのようなものかを理解することから始めましょう。子宮卵管造影検査(HSG)は、X線を利用して子宮と卵管の内部状態を確認するための画像診断技術です。主に、不妊症の原因として考えられる卵管閉塞の有無や子宮内部の形態異常を調べる目的で行われます。卵管が詰まっているかどうかを早期に確認することは、不妊の要因を突き止めるうえでとても重要です。
検査の実施タイミングは、通常「月経が終了してから6日目から10日目のあいだ」が推奨されます。これは、子宮内膜が薄く、かつ妊娠中である可能性を回避できるタイミングであるためとされています。人によっては痛みを感じやすい場合もありますが、一般的には「婦人科検診程度の不快感」で済むことが多いと報告されています。
さらに、2021年にJournal of Minimally Invasive Gynecologyに掲載されたZhangらのシステマティックレビュー(doi:10.1016/j.jmig.2020.12.028)では、HSGの結果が卵管閉塞を診断するうえで一定の精度を持つことが確認されています。一方で、卵管内部のより詳細な状態を評価するためには、状況によっては他の検査(腹腔鏡検査など)を併用する必要性がある可能性も示唆されています。日本国内で行われる一般的な不妊検査でもHSGは重要なポジションを占めており、卵管因子が疑われる場合はほぼ必須といっても過言ではありません。
子宮卵管造影検査の手順と準備
検査の流れ
子宮卵管造影検査は、通常30分程度で完了する比較的短時間の検査です。具体的な流れは以下の通りです。
- トイレを済ませる
検査前に膀胱を空にしておくことが多くの施設で推奨されます。尿意による不快感を減らし、検査をスムーズに進めるためです。 - 婦人科検診の姿勢をとる
検査台に仰向けになり、両膝を広げるようにして固定されます。これは通常の婦人科検診と同様です。 - 膣へのスペキュラム挿入と消毒
医師がスペキュラム(膣鏡)を挿入して子宮頸部を視認し、必要に応じて消毒を行います。 - 子宮頸部への局所麻酔(必要に応じて)
痛みを最小限に抑えるため、子宮頸部の末端に局所麻酔を施すことがあります。ただし、必須ではなく、医師の判断や患者さんの希望によって行われる場合が多いです。 - 細いチューブの挿入と造影剤の注入
子宮頸部に細いプラスチックチューブを差し込み、造影剤をゆっくり注入していきます。注入時に下腹部が重くなるような圧迫感を覚える場合がありますが、多くは軽度かつ一時的です。 - X線撮影
造影剤が子宮内や卵管へ行き渡るタイミングでX線撮影が行われます。造影剤がスムーズに卵管を通っていれば、その画像から卵管の通過状態を確認できるわけです。 - 器具の取り外し
撮影が終わったらスペキュラムとチューブを取り外し、検査は終了となります。
この一連の流れの間に、下腹部にチクチクとした軽い痛みや圧迫感を感じることがありますが、通常は検査終了とともに落ち着く程度です。万が一、痛みが苦手な方や検査への恐怖心が強い方は、主治医に事前相談をして麻酔の有無などを確認しておくと安心です。
準備と注意点
- 月経周期の確認
妊娠の可能性を避けるため、通常は月経終了後6~10日目に行われます。月経周期が不規則な方は、あらかじめ医師に相談して検査日を調整してください。 - 感染症対策
子宮内に器具や造影剤を挿入するため、検査前に感染症の有無を確認することがあります。必要に応じて抗生物質が処方されるケースもあります。 - 持参物
診察券や保険証、他の検査結果(既に受けている場合)を忘れずに持参してください。病院によっては検査当日に生理用ナプキンやおりものシートの持参を推奨することもあります。
なお、2021年にCochrane Database of Systematic Reviewsで発表されたBosteelsらの研究(11(11):CD012644, doi:10.1002/14651858.CD012644.pub3)によれば、子宮卵管造影検査と他の検査(たとえば腹腔鏡検査)を比較した際、それぞれにメリットとデメリットがあるとされています。HSGは侵襲性が低く外来でも行いやすい一方、腹腔鏡ではより直接的な観察が可能になる場合もあり、個々の患者さんの状態に応じて選択・併用することが望ましいと結論づけられています。このように、検査自体の適応や方法は患者さんの状況によって異なりますので、主治医としっかり相談しましょう。
子宮卵管造影検査による副作用の可能性と重要性
検査後に起こりうる症状
子宮卵管造影検査のあと、以下のような症状が一時的に現れることがあります。
- 下腹部痛・圧迫感
軽い下腹部痛や違和感が数時間から数日続くことがあります。症状が軽度であれば通常は問題ありませんが、痛みが強い場合は早めに医療機関へ相談することをおすすめします。 - 少量の出血やおりもの
チューブを挿入した刺激などの影響で、少量の血性分泌物やおりものの増加がみられる場合があります。多量に出血する場合や長期間続く場合は注意が必要です。 - めまいや軽い頭痛
一時的に緊張や痛みに伴ってめまい、頭痛などを感じることがあります。
こうした症状は一般的には一過性ですが、下記のような重い症状や長引く症状が出た場合は、早めに医師の診断を受けてください。
- 激しい腹痛や持続する痛み
- 多量の出血や血性のおりものが続く
- 発熱や寒気、悪寒
- 吐き気や嘔吐が治まらない
放射線被曝について
子宮卵管造影検査ではX線が使用されますが、その放射線量は一般的に非常に低く、健康に重大な影響を及ぼすものではないとされています。放射線量が気になる場合は事前に担当医へ相談してみましょう。また、造影剤に対するアレルギーが極めてまれにみられることがあります。検査中に息苦しさや発疹、激しい痛みを感じた場合は、すぐに医療スタッフに伝えてください。
検査の重要性
子宮卵管造影検査の主な目的は、卵管の閉塞や子宮形態の異常を発見することです。妊娠においては、卵巣から排出された卵子が卵管を通過して子宮へと到達する必要があります。そのため、卵管が詰まっていると受精の成立が難しくなり、不妊の原因となります。HSGによってこうしたトラブルを早期に把握することで、必要に応じた治療やさらなる検査を適切なタイミングで行えるのです。
2022年にFertility and Sterilityに掲載された一部研究では、HSGの結果が自然妊娠の可能性を高める一因となる可能性があることが議論されています。これは、造影剤注入の過程で卵管内の軽度の粘液や血液塊が洗い流される「ウォッシュアウト効果」が考えられるからです。ただし、ウォッシュアウト効果に関してはまだ研究段階であり、全員に当てはまるわけではないため、過度な期待は禁物です。
結論と提言
結論
子宮卵管造影検査(HSG)は、不妊症の原因解析において非常に有用な検査手法といえます。卵管閉塞や子宮の形態異常などの要因を早期に見つけ出し、適切な不妊治療へ進むための第一歩となり得ます。この記事では、修士・医師Huỳnh Kim Dung博士の意見と合わせて、検査の具体的な流れや注意点、副作用の可能性などについて紹介しました。検査時の痛みや放射線被曝量など、気がかりな面もあるかもしれませんが、いずれも大半の方にとっては大きなリスクを伴わないと考えられています。
一方で、検査を行うかどうかは個々人の体質や病歴、治療方針などによって違ってくるため、主治医としっかり相談して決めることが大切です。検査によって得られる情報は、今後の不妊治療の方向性や治療効果を把握するうえで非常に貴重なものです。正確な知識と理解を持って検査に臨み、不安を軽減しながら最適な治療へ進んでいただければと思います。
提言
- 医療専門家との相談は必須
検査や治療を受ける際は、ご自身の病歴、アレルギー歴、現時点での症状などを含めて、医療専門家に詳しく伝えることが大切です。特に感染症のリスクや麻酔の有無などは事前に確認しておきましょう。 - 検査後の体調管理
検査当日は念のため、激しい運動や長時間の移動は避け、できる限り安静に過ごすことをおすすめします。下腹部痛や少量の出血は一時的な場合が多いですが、体調に変化があったり、痛みや出血が強まったりした際には早めに医療機関を受診してください。 - 治療方針の見直し
検査の結果によっては、不妊治療の方針を再検討したり、別の追加検査を行ったりする必要が出てきます。結果をもとに医師やカウンセラーとしっかり相談し、ベストな治療計画を立てることが重要です。 - 必ず専門家の意見を確認する
インターネットや書籍など、情報源はさまざまありますが、最終的には個々の症例に合わせた判断が必要です。気になる点や疑問点は遠慮せず専門家へ質問しましょう。
重要な注意
ここで述べた情報は、あくまで一般的な知識および国内外の文献を参考とした情報提供であり、個別の医療行為を指示・保証するものではありません。十分な臨床的エビデンスが存在する内容もあれば、まだ研究段階の事象もあります。いかなる場合でも自己判断のみで治療を進めるのではなく、必ず医師や専門家に相談のうえで最終的な決定を行ってください。
参考文献
- Imaging techniques for assessment of tubal status アクセス日: 2022年3月13日
- Hysterosalpingography(ACOG) アクセス日: 2022年3月13日
- Hysterosalpingography(RadiologyInfo) アクセス日: 2022年3月13日
- Hysterosalpingogram(Radiopaedia) アクセス日: 2022年3月13日
- Hysterosalpingogram (HSG)(ASRM) アクセス日: 2022年3月13日
- Zhang L.ら (2021) “Comparison of Hysterosalpingography and Laparoscopy in the Diagnosis of Female Infertility: A Systematic Review,” Journal of Minimally Invasive Gynecology, 28(4), 651–668, doi:10.1016/j.jmig.2020.12.028
- Bosteels J.ら (2021) “Hysterosalpingography versus laparoscopy for diagnosing tubal pathology in subfertile women,” Cochrane Database of Systematic Reviews, 11(11):CD012644, doi:10.1002/14651858.CD012644.pub3
以上のように、子宮卵管造影検査は卵管や子宮形態の状態を評価し、不妊の原因究明に役立つ手法です。検査自体の時間はさほど長くはなく、大きな副作用も比較的まれとされています。しかし、実際には痛みや不安を覚える方もいるため、事前に医師と十分に情報交換をすることが望まれます。検査結果を適切に活用し、必要に応じて別の検査や治療を組み合わせることで、より適切な不妊治療や健康管理へとつながることを願っております。もし検査を受けることを検討している場合は、本記事で得た知識をあくまで参考情報としつつ、ぜひ医療専門家のアドバイスを優先していただければと思います。お体と向き合いながら、より良い選択をしていただけるよう願っています。