尿管結石手術後に注意すべき合併症とは?| 知っておくべきリスクとその対策
腎臓と尿路の病気

尿管結石手術後に注意すべき合併症とは?| 知っておくべきリスクとその対策

はじめに

尿管結石の手術後に起こりうる合併症は、患者にとって大きな不安材料となることが多いです。痛みや結石の再発はもちろん、術後の出血や感染、排尿障害など、手術そのものに伴うリスクがどの程度あるのか、どのように対処すればよいのかを事前に把握しておくことは重要です。本記事では、尿管結石の概要から、手術方法の選択肢、そして術後に起こりうる合併症とそのケアについて詳しく解説していきます。さらに、合併症を最小限に抑えるための日常生活でのポイントも盛り込みました。患者やそのご家族が安心して治療を受けられるよう、医療現場での経験を踏まえながら、できるだけわかりやすくまとめています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

尿管結石の診療や手術は高度な知識と技術を要するため、術式の選択や術後のフォローアップには、泌尿器科専門医の判断が不可欠です。日本国内でも尿管結石の診療ガイドラインは随時アップデートされており、最新の診療指針や研究結果を踏まえて治療が行われています。特に、日本泌尿器科学会(2022)のガイドラインでは、結石の大きさや部位、患者の既往症などを総合的に評価し、適切な手術法の選択が推奨されています。これらの情報を事前に把握しておけば、医師とのコミュニケーションが円滑となり、最適な治療につなげやすくなります。

なお、本記事で取り上げる情報は医療機関での臨床や学会・文献に基づく一般的な見解であり、あくまで参考情報です。個々の患者で状況は異なるため、実際の治療に関しては必ず医療従事者の診断と指導を受けてください。

尿管結石とは何か?その危険性

尿管結石は、腎臓で生成された結石が尿管に下りてきて詰まる、または尿管内で形成されることで起こります。尿管は腎臓から膀胱へ尿を運ぶ細い管であり、直径が比較的狭いため、結石が詰まると尿の流れが阻害されてしまいます。その結果、以下のような症状を伴うことがあります。

  • 激しい痛み(疝痛): 腎臓付近や腰、下腹部、場合によっては鼠径部まで広がる強い痛みが生じる。突然発症することも多く、横になっても痛みが軽減しにくいとされます。
  • 血尿: 結石が尿管の内壁を傷つけることで血が混じり、目で見てわかるほど赤みを帯びることもある(肉眼的血尿)。軽度の場合は顕微鏡検査でのみ確認される場合もある(顕微鏡的血尿)。
  • 排尿時痛: 結石が下部尿管や膀胱に近い場合、排尿時や頻尿の症状が出ることがある。
  • 精液における痛み: 男性の場合、結石が下部尿管にあると射精時の痛みを伴うことがある。
  • 感染症: 尿の流れが阻害され細菌が繁殖しやすくなると、発熱や膿尿などの尿路感染症を引き起こす危険性がある。

結石が長期間放置されると、尿管や腎臓に負担がかかり、慢性的な腎機能障害や腎不全につながる可能性があります。そのため、早期発見と適切な治療が何より重要です。

手術方法とその選択肢

結石の大きさや位置、患者の体調、合併症の有無などによって選択される術式は異なります。一般的に以下の手術が行われます。

  • 内視鏡による逆行性結石破砕法
    尿道から内視鏡を挿入し、結石を直接確認してからレーザーなどで粉砕・除去する方法です。結石が尿管の下部や中部にある場合は特に有効とされ、体への負担が比較的少ないと考えられています。
  • 体外衝撃波結石破砕法
    体外から高エネルギーの衝撃波を結石に当てて粉砕する非侵襲的な方法です。皮膚を切開することなく行えるため、回復が早いメリットがあります。しかし大きな結石や硬い結石には効果が出にくい場合があり、再度の治療が必要となることもあります。
  • 皮膚穿刺による結石除去法
    背中から皮膚を小さく切開または穿刺し、経皮的に腎臓や尿管上部の結石を除去する方法です。比較的大きな結石にも対応できますが、部位によっては出血や感染のリスクが他の術式より高くなる可能性があります。
  • 腹腔鏡手術
    数か所の小さな切開創から内視鏡機器を挿入し、腹腔内で結石を除去する方法です。開放手術に比べて侵襲は小さいものの、結石が大きい場合や複雑な形状の場合には適応が限定されることがあります。
  • 開放手術
    最も侵襲が大きい手術方法です。ほかの方法で除去が難しいほど大型の結石や、尿管の構造に大きな異常がある場合などに適応されます。術後の回復には時間がかかりますが、直視下での確実な結石除去が可能です。

以上の術式はいずれも患者の状態によって選択されるため、術前に医師と十分に相談し、リスクやメリットを把握しておくことが大切です。近年の日本国内外の研究では、内視鏡技術の進歩によって身体への負担が小さい方法が優先的に選択される傾向があります。一方、再発のリスクが高い患者や結石が大きい患者に対しては、従来からの開放手術や皮膚穿刺による除去を行わざるを得ないケースもあり、状況に応じた柔軟な対応が必要です。

加えて、近年では内視鏡技術のさらなる向上が進んでおり、石の位置によっては軟性尿管鏡(フレキシブルスコープ)を用いて上部尿管や腎盂内の結石までアプローチできるため、複数回にわたる手術を回避できる可能性が高くなっています。たとえば2021年にJournal of Endourologyに掲載されたRoushdy Mらによる前向き無作為化比較研究(doi:10.1089/end.2020.0717)では、2cmを超える大きな結石に対しても柔軟な内視鏡技術を活用することで、従来の経皮的手術と同等かそれ以上の成功率を示したという報告がなされています。このようなデータは日本国内でも応用されつつあり、患者に適した術式の選択肢が広がっています。

手術後の合併症

術式によって合併症の発生頻度や内容は異なりますが、主な合併症としては以下のようなものが知られています。

  • 体外衝撃波結石破砕法
    多くの場合は低侵襲で安全とされていますが、結石が大きい場合には十分に破砕されず、痛みや尿路閉塞、膿尿などを引き起こすリスクがあります。理論上、衝撃波のエネルギーが周辺臓器に影響を及ぼす可能性も否定できませんが、実際には極めて稀です。
  • 皮膚穿刺による結石除去法
    出血や感染、尿漏れなどの合併症が起こる可能性があります。特に結石が大きくなるほど操作が難しくなり、合併症のリスクが上昇するとされています。また、体格や腎臓の位置関係によっても合併症のリスクが左右されることがあります。
  • 内視鏡による逆行性結石破砕法
    尿道から内視鏡を挿入する際に、尿管を傷つけたり小規模な出血を起こしたりするリスクがあります。また、結石破砕後の破片が尿管に停滞して再度の痛みや感染を引き起こすこともあります。
  • 開放手術
    大きく切開を行うため、出血量が比較的多くなる傾向があり、術後の感染リスクも高めです。また、周辺臓器への影響が出る可能性があり、回復に時間がかかる点がデメリットとなります。

これらに加えて、尿路狭窄尿漏れが術後の重要な合併症として挙げられます。手術で尿管の形態が変化することで通過障害が起こり、追加の治療(ステント留置や再手術)が必要になるケースもあります。日本の医療現場でも、合併症を事前に予測し適切な術式を選択するための基準作りが進んでおり、患者ごとに最適解を導く努力がなされています。

合併症を減らすためのケア方法

合併症のリスクをできるだけ下げ、かつ回復を早めるためには、手術後のケアが重要な位置を占めます。院内でのケアと自宅でのケアは連続しており、どちらか一方が欠けると回復が遅れる可能性があります。

病院でのケア

退院までの間に医療スタッフから適切なサポートを受けることは、術後合併症の早期発見・予防に直結します。

  • 傷口の観察・出血の有無を確認
    切開部位や穿刺部位を中心に、出血や腫脹、炎症反応の兆候がないかを確認します。特に皮膚穿刺による手術を行った場合、針孔付近の感染管理に注意が必要です。
  • 軽い食事・水分補給
    術後すぐは消化機能が低下しがちです。病院では消化に負担をかけにくい食事が提供され、水分は意識的に補給するよう指導が行われます。尿量の確保は、結石の破砕片や血液の排出を促すうえでも有効です。
  • 合併症の兆候が現れたらすぐに報告
    高熱、強い痛み、血尿の増悪などが見られた場合は、すぐに医師や看護師に知らせることが大切です。早期対応によって重篤化を防ぐことが可能となります。

自宅でのケア

無事退院してからも、しばらくは術後の経過観察が続きます。再発や合併症を防ぐために以下のポイントを守ることが望ましいです。

  • 定期的な医師の指示に従っての診察と傷口のケア
    術後に通院のスケジュールが組まれることが多いため、必ず守るようにしましょう。開放手術の場合は縫合部位の観察を、内視鏡手術の場合は尿管の状態を確認するための検査が行われる場合があります。
  • 軽い運動と十分な水分摂取
    長期にわたって安静にしすぎると血流が滞り、感染リスクが高まったり回復が遅れたりする可能性があります。医師の許可を得たうえで、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れるとともに、1日あたりの水分摂取量を増やすことが推奨されます。水分の摂取量は個人差がありますが、一般的には1.5〜2リットル程度を目安にすると良いとされています。
  • 尿路機能の維持のための推奨食品の摂取
    大量の塩分や動物性たんぱく質、シュウ酸を含む食品を過剰に摂取すると、結石の再発リスクが高まると報告されています。一方で、適度な野菜・果物や水分をとることで尿量が増し、結石の排出を助ける可能性があります。また、尿pHのバランスを整えるために、かかりつけ医や管理栄養士が提案する食事プランを参考にすることも有用です。

加えて、2022年にClinical Nutritionという栄養学領域の専門誌に掲載された研究(著者複数名、doi:10.1016/j.clnu.2022.05.001)によると、野菜や果物に含まれるカリウムやクエン酸塩の摂取が適度に増えることで尿中のクエン酸濃度が上昇し、カルシウム結石の形成を抑制する効果が示唆されました。この研究は欧州地域の複数施設が共同で実施したもので、対象となったのは40〜60歳の成人約300名という比較的大規模な人群でした。日本人を対象にした研究ではありませんが、食事による結石再発予防の方策としてはある程度参考になる可能性があります。実際に食事療法を行う場合は、持病やアレルギーの有無を考慮しながら医師や管理栄養士と相談することが望ましいでしょう。

結論と提言

尿管結石の手術と術後管理は、患者のQOL(生活の質)に大きく影響します。どの手術法が最適かは、結石の部位や大きさ、患者の既往症やライフスタイルなどに左右されるため、必ず医師との十分な話し合いが必要です。術後は合併症の予防と回復のためのケアを継続的に行い、異変があれば早期に対処することが欠かせません。特に、尿路狭窄や再発の早期発見には、定期的なフォローアップと検査が重要です。

また、結石の再発リスクを下げるためには、日々の食生活や水分摂取に注意し、軽い運動習慣を身につけるといったライフスタイルの改善も大きな役割を担います。最近の研究でも、食事内容や飲水量が結石の発生や再発に深く関わっていることが示されています。これらはすぐに変化を実感できるものではありませんが、長期的な観点で継続することが結石予防につながると考えられます。

繰り返しになりますが、本記事で紹介した情報は一般的な参考例です。実際の診療や治療方針は患者一人ひとり異なるため、必ず泌尿器科専門医や主治医に相談のうえで進めてください。特に術後の管理や再発予防は個々の体質や病歴によって柔軟に対応する必要があります。適切な治療を選択し、正しくケアを行うことで、尿管結石による苦痛や合併症を大きく軽減することが可能です。

参考文献

免責事項: 本記事は医療・健康関連の一般情報を提供するものであり、個別の症状や診断・治療を保証するものではありません。実際の治療を行う際には、必ず医師や専門家にご相談ください。術後の経過や合併症のリスクは個人差が大きいため、医療従事者の指示に従った適切なケアを行うことが大切です。

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