この議論の医学的背景には、帝王切開後の重要な勧告、すなわち子宮が回復するための時間が必要であるという事実があります。医療専門家は、次回の妊娠までに少なくとも1年から2年待つことを推奨しています1。この期間は、子宮の切開創が完全に治癒するために不可欠です。帝王切開後1年以内の妊娠は、妊娠中の子宮破裂(生命を脅かす医学的緊急事態)や低出生体重児のリスクなど、深刻な合併症の危険性を著しく高める可能性があります2。
さらに、帝王切開後の妊娠自体が特有の危険性を伴います。稀ではあるものの極めて危険なリスクの一つに、帝王切開瘢痕部妊娠(Cesarean Scar Pregnancy – CSP)があり、この場合、胚が古い切開創に直接着床してしまいます3。この状態は大量出血やその他の重篤な合併症を引き起こす可能性があります。したがって、最初の月経周期が再開する前であっても妊娠する可能性があるため、出産後すぐに効果的な避妊法を導入することが極めて重要です1。
このような背景の中、腹腔へのアクセスがすでに確保されている帝王切開は、永久的な不妊手術を行う上で特に好都合な機会を提供します6。これら二つの手技を組み合わせることで、女性が経験する手術や麻酔の回数を最小限に抑えることができます。しかし、この利便性こそが懸念の出発点ともなります。不妊手術の決断は、単に手術方法を選択するだけではありません。それは複雑なトレードオフなのです。女性は、不妊手術自体の危険性と、意図せず不適切な時期に妊娠した場合の潜在的により深刻な危険性とを比較検討しなければなりません。このトレードオフを明確に理解することは、不安を賢明で自律的な決断に変えるための第一歩であり、女性を受動的に危険な手術を受け入れる立場から、自らの健康を積極的に管理する主体的な立場へと導くものです。
この記事の科学的根拠
本記事は、提示された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下の一覧には、実際に参照された情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性のみを記載しています。
- 米国産科婦人科学会(ACOG): 本記事における、十分な情報に基づく同意、代替避妊法、特に持続性可逆的避妊法(LARC)の重要性に関する指針は、ACOGが公表した複数の診療速報および委員会意見に基づいています62034。
- 米国における大規模後ろ向きコホート研究(2021年): 帝王切開時の卵管切除術と卵管結紮術の外科的合併症(例:出血、輸血)の比較データは、この数万人規模の研究に基づいています18。
- 米国CREST研究: 卵管結紮術後の妊娠失敗率および異所性妊娠の危険性に関する長期データは、この画期的な研究に基づいています12。
- 複数の系統的レビューおよび研究: 若年(30歳以下)での不妊手術後の後悔の危険性が高いという結論は、複数の研究を統合した系統的レビューによって裏付けられています31。また、卵管切除術による卵巣がん(特に高悪性度漿液性がん)の予防効果は、多数の科学的証拠によって支持されています1314。
要点まとめ
- 帝王切開は不妊手術を行う上で「好都合」な機会を提供しますが、その利便性ゆえに、精神的・身体的ストレス下で性急な決断を下す危険性も伴います。
- 近年、単に卵管を縛る「卵管結紮術」よりも、卵管を完全に切除する「卵管切除術」が新たな標準治療となりつつあります。これは、将来の卵巣がん(特に悪性度の高い漿液性がん)のリスクを大幅に低減する予防効果があるためです。
- 卵管切除術は、がん予防という大きな長期的利益がある一方で、卵管結紮術に比べて手術時間や出血、輸血などの短期的な外科的合併症のリスクがわずかに増加するという統計的データがあります。
- 不妊手術後の後悔は、特に30歳以下で手術を受けた女性、人間関係が不安定な状況で決断した女性において顕著に見られます。これは、手術の永続性と人生の予測不可能性との間に生じる不一致が主な原因です。
- 持続性可逆的避妊法(LARC)、特に子宮内器具(IUD)や皮下インプラントは、不妊手術に匹敵する高い避妊効果を持ちながら、可逆的であるという大きな利点があります。これらは不妊手術の重要な代替選択肢です。
- 最良の決断を下すためには、妊娠中から医師と十分に話し合い、すべての選択肢(手術、LARC、その他の避妊法)の利益と危険性を比較検討し、自身の長期的視点に立った価値観と照らし合わせることが不可欠です。
第1部:女性の不妊手術を理解する:外科的アプローチ
賢明な決断を下すためには、まず外科手術の方法そのものを明確に理解することが不可欠です。女性の不妊手術は、妊娠能力を永久的に阻止することを目的とした手技です。重要な点として、これらの方法はホルモン機能、月経周期、または身体の女性的特徴に影響を与えないことを強調しておく必要があります。これらは単に、精子が卵子と出会うのを防ぐための物理的な障壁を作り出すだけです。
1.1. 伝統的な方法:卵管結紮術
卵管結紮術は、精子が卵管を通過して卵子と受精するのを防ぐために、卵管を塞ぐ、縛る、または切断する、古くから行われている永久的な不妊手術です8。
実施技術:卵管結紮術には様々な技術が存在します。帝王切開と同時、または出産直後に行われる状況では、修正Pomeroy法(modified Pomeroy technique)がしばしば好まれます9。この技術は、卵管の中央部分に小さなループを作り、その根元を吸収性の糸で固く縛り、ループを切除するというものです。他の方法には、クリップ(Filshieクリップなど)やリング(Falopeリングなど)を用いて卵管を閉塞させる方法があります9。出産直後に行われたFilshieクリップとPomeroy法を比較したある系統的レビューでは、失敗率と合併症の発生率は同等であるものの、技術的にはクリップの装着の方が容易である可能性が示されました10。しかし、別のレビューでは、チタン製クリップは出産後の部分卵管切除術と比較して効果が低く、日常的な使用は推奨されないと結論付けています11。
生理学的影響:最も一般的な誤解の一つは、卵管結紮術が子宮摘出術や卵巣摘出術と同一視されることです。この手技は早期閉経を引き起こさず、月経周期を変化させず、女性のホルモン機能に影響を与えません。卵巣は通常通り卵子とホルモンを産生し続けます。単に、卵子が卵管を通過して精子と出会うことができなくなるだけです8。
1.2. 新しい標準治療:両側卵管切除術
近年、臨床実践において大きな変化が起こり、従来の卵管結紮術よりも両側の卵管を完全に切除する手術が、ますます好まれる選択肢となっています。
手技の説明:両側卵管切除術は、その名の通り、両方の卵管を外科的に完全に除去する手術です12。
避妊以外の主な利益:卵巣がんリスクの低減。これこそが、このパラダイムシフトを推進する主な動機です。最も一般的で危険な「卵巣」がんの多く、特に高悪性度漿液性がんは、実際には卵巣から発生するのではなく、卵巣に近い卵管の末端(卵管采)にある前がん病変から発生するという科学的証拠がますます強固になっています。これらの病変は、漿液性卵管上皮内がんと呼ばれます13。
卵管全体を切除する手術(「機会的卵管切除術」と呼ばれる)を行うことで、医師はこれらの種類のがんの主要な発生部位を排除します。これにより、女性が生涯にわたって卵巣がんに罹患するリスクが大幅に減少します6。この利益は非常に大きいと認識されており、現在、国際的な医学会は、出産を終えた女性に対して他の婦人科手術(子宮摘出術など)の際に機会的卵管切除術を検討することを推奨しています1415。
採用率:米国では、機会的卵管切除術が卵管結紮術に代わって、帝王切開時に行われる最も一般的な不妊手術となり、世界的な臨床実践の大きな変化を示しています18。
この変化は深い意味を持ちます。不妊手術の選択は、もはや単なる家族計画の問題ではありません。それは、永久的な避妊法であると同時に、積極的ながん予防戦略という二重の目的を持つ決断となりました。これにより、手術前の話し合いはより複雑になりますが、同時に女性により多くの力を与えることにもなります。従来の卵管結紮術を選択することは、重要な予防的健康利益を見送ることを意味するかもしれません。したがって、十分なカウンセリングには、避妊の側面だけでなく、がん予防の可能性についても言及し、女性が自身の長期的な健康の優先順位に最も適した決断を下せるように支援する必要があります。
第2部:身体的利益と危険性の臨床的分析
いかなる外科的決断も、利益と危険性の比較検討を伴います。帝王切開後の不妊手術において、この分析は特に重要となります。この部では、「危険性」に関する核心的な懸念に直接応えるため、二つの主要な方法について、外科的リスクと避妊効果に焦点を当てたデータに基づく比較評価を提供します。
2.1. 外科的危険性:比較評価
卵管切除術と卵管結紮術の選択における主なトレードオフは、長期的ながん予防の利益と、ごくわずかではあるものの統計的に有意な術中合併症の増加とのバランスを取ることにあります。
比較データ:米国の数十万人の女性のデータを分析した大規模な研究は、具体的な数値を示しています。この研究によると、帝王切開と同時に卵管切除術を受けた女性は、卵管結紮術のみを受けた女性と比較して、外科的合併症の発生率がわずかに高くなりました18。
- 出血:卵管切除群で3.8%に対し、卵管結紮群では3.1%。
- 輸血:2.1%に対し、1.8%。
- その後の子宮摘出術:0.8%に対し、0.4%。
割合の差は小さいものの、大規模な集団に適用した場合、これらは統計的に有意であり、カウンセリングの過程で慎重に議論されるべきです。重要なのは、これらの危険性が依然として低い水準にあるということです。
手術時間:卵管を完全に切除することは、単に結紮するよりも手術時間がわずかに長くなる可能性があります。しかし、一部の研究では、双極電気メスのような現代的な手術器具を使用することで、従来の縫合結紮技術を用いるよりも卵管切除術の時間を短縮できる可能性が示されています1917。
帝王切開後の一般的な危険性:帝王切開直後に子宮に対して行われるいかなる手技も、基本的な危険性を伴うことを忘れてはなりません。分娩後の子宮は血管が非常に豊富で、収縮が不十分(子宮弛緩)になることがあり、出血の危険性が高まります。手術時間と麻酔時間の延長も考慮すべき要素です3。
2.2. 避妊効果、失敗率、およびその後の妊娠リスク
全体的な有効性:女性の不妊手術は、現在利用可能な最も効果的な避妊法の一つであり、非常に高い成功率を誇ります20。他の方法における飲み忘れなども含めた一般的な失敗率は、通常1%未満です23。理論上、両側の卵管を完全に切除する方法が最も効果的です。なぜなら、後に再開通する可能性のある卵管が存在しないからです12。
失敗率:非常に効果的ではありますが、100%絶対的な方法はありません。従来の卵管結紮術における10年間の累積失敗率は、使用された技術と手術時の女性の年齢に応じて、不妊手術1,000件あたり7.5件から54.3件の妊娠と、幅があります。重要かつ一貫した発見として、若年女性の方が失敗率が高いことが挙げられます12。
失敗後の異所性妊娠のリスク:これは極めて重要な点であり、卵管結紮術の失敗に関連する最も深刻なリスクの一つです。絶対的なリスクは低いものの(妊娠自体が稀なため)、もし女性が卵管結紮後に妊娠した場合、その妊娠が異所性妊娠(子宮外で、通常は卵管の残存部分で胎児が発育する、生命を脅かす医学的緊急事態)である可能性が著しく高まります9。このリスクは、卵管を完全に切除する方法では理論上完全に排除されます。
これらの複雑な情報を整理するために、以下の比較表は考慮すべき主要な要素をまとめたものです。このようにデータを提示することで、漠然とした不安を構造化されたリスク評価に変え、個人のリスク許容度に基づいて要素を検討することができます。
表1:帝王切開後の不妊手術法の比較分析
特徴 | 卵管結紮術(例:Pomeroy法) | 両側卵管切除術 |
---|---|---|
手技の概要 | 卵管の一部を切断、結紮、または閉塞させる。 | 両方の卵管を完全に除去する。 |
避妊効果(10年間の失敗率) | 1,000件あたり7.5~54.3件、技術と年齢による12。 | 理論上最も効果的。長期データは収集中12。 |
異所性妊娠のリスク(失敗時) | 著しく増加する9。 | 理論上排除される。 |
卵巣がんリスクの低減 | わずかに減少する可能性はあるが、卵管切除術ほどではない。 | 漿液性がんのリスクを大幅に低減する14。 |
手術時間 | より短い。 | わずかに長いが、技術により最適化可能19。 |
出血リスク(結紮術比) | 基準レベル。 | わずかに増加(オッズ比 約1.24)18。 |
輸血リスク(結紮術比) | 基準レベル。 | わずかに増加(オッズ比 約1.16)18。 |
第3部:心理的側面:後悔の理解と最小化
身体的な危険性に加え、おそらく最も大きな非外科的リスクであり、しばしば深刻な不安の根源となるのが、長期的な後悔です。不妊手術の決断は、身体だけでなく、女性の心理や人生にも深く影響を及ぼします。この側面を率直に認め、探求することは、真に包括的な決断を下す上で非常に重要です。
3.1. 不妊手術後の後悔という現象:深い洞察
不妊手術後の後悔は、実際に起こりうる重大な結果です。それは稀な感情ではありません。世界中の研究によると、後悔の割合は研究対象の集団や手術後の期間によって、3%未満から26%までと幅広い範囲で変動します26。米国の研究では、不妊手術を受けた女性の4分の1もの人が、生殖能力の回復を望んでいると表明しています28。
日本の文脈では、オンラインフォーラムや患者の議論から得られる逸話的な証拠が、この決断の感情的な重荷を鮮明に描き出しています。多くの女性が、帝王切開の際に「ついでに」という形で、深い考察なしに決断してしまったと後悔の念を共有しています24。また、「授かりものだから、それを自分で断ち切るのはつらい決断だった」と述べ、個人の決断と文化的・社会的価値観との間の葛藤を示している人もいます29。これらの物語は、統計データに身近で共感しやすい文脈を提供します。
後悔は様々な形で現れます。卵管再建手術への明確な希望、失われた生殖能力に対する持続的な悲しみ、または術後合併症(実際には月経の変化や性機能障害などの合併症は手技自体が原因でないことが多いものの、それらの認識が後悔の感情に寄与する可能性がある)による不満などです27。
3.2. 後悔の主要な予測因子を特定する
ここがこのセクションの最も重要な部分です。後悔は偶然に起こるものではありません。それは、手術前に特定可能な具体的な要因と密接に関連しています。これらの要因を理解することは、女性が自分自身のリスクを評価するのに役立ちます。
- 不妊手術時の年齢:これは、研究で特定された最も強力かつ一貫した予測因子です。
- 時期と状況:陣痛、帝王切開、または中絶といった身体的・精神的にストレスの多い時期に永続的な決断を下すことは、後悔の割合が高いことと関連しています9。これは「利便性の罠」を示唆しています。「ついでに」手技を行うことの容易さが、その決断の重大性と永続性を覆い隠してしまう可能性があるのです。
- 人間関係の動態:これは極めて重要でありながら、しばしば見過ごされがちな要因です。
- その他の要因:手術前の不十分なカウンセリング、パートナーからのプレッシャー、子供の数が少ないこと、または不妊手術後に子供を失う悲劇なども、後悔のリスクを高める要因となります2730。
これらの要因を分析すると、より深い真実が明らかになります。後悔のリスクは、医学的な手技そのものよりも、永続的な外科的決断と、女性の予測不可能な人生の軌道との間の不一致に大きく関係しているのです。28歳の女性が、現在の生活状況ではこれ以上子供を望まないと完全に確信しているかもしれません。しかし、手術は永続的ですが、彼女の人生(人間関係、経済状況、願望)はそうではありません。手術は彼女の生殖能力を特定の時点に固定しますが、人生は進化し続けます。35歳での離婚と再婚は、彼女の生殖に関する目標を完全に変えてしまう可能性があります。したがって、ここでの「リスク」とは、時間的な不一致なのです。母性こそが女性の本質であると見なす社会的圧力(出産奨励主義)も、生活環境が変化した場合にこれらの後悔の感情を増幅させる可能性があります32。
これは、カウンセリングのあり方を変える必要があります。質問は「今、これ以上子供が欲しくないと確信していますか?」だけでなく、「今後10年、20年で、あなたが予測できない形で人生や願望が変わる可能性を考慮しましたか?」でなければなりません。これははるかに難しい会話ですが、はるかに重要なのです。
表2:不妊手術後の後悔の主要な予測因子
リスク要因 | 後悔への影響(定性的・定量的) | 主要な根拠 |
---|---|---|
年齢(30歳未満 vs 30歳以上) | 最も強力な予測因子。30歳以下の女性は後悔のリスクが2倍高い。 | 2631 |
時期(帝王切開/中絶時 vs 他の時期) | ストレス下での決断は後悔のリスクを高める。 | 25 |
人間関係の状況(手術時) | 未婚の同棲者が最も後悔のリスクが高い(33.3%)、既婚者(21.4%)と比較して。 | 28 |
人間関係の変化(手術後) | 離婚や新しいパートナーの出現が後悔の主な原因。 | 28 |
カウンセリングの質 | 不十分なカウンセリングや情報不足感は後悔のリスクを高める。 | 27 |
第4部:良い決断の基盤:カウンセリングと代替選択肢
リスクを分析した後、次のステップは問題から解決策へと移行することです。良い決断は、何を避けるべきかを理解するだけでなく、利用可能な代替選択肢と、医療提供者と質の高い対話を行う方法を知ることから生まれます。この部では、読者が自律的で賢明な選択をするために必要なツールを提供します。
4.1. 共同意思決定とインフォームド・コンセントの原則
インフォームド・ディシジョン(十分な情報に基づく決断)は、患者が十分な情報を提供され、率直に議論する機会を得て初めて可能となります。これが、インフォームド・コンセント(十分な情報に基づく同意)という医の倫理原則の基盤です。
国際的なコンセンサス:米国産科婦人科学会(ACOG)や英国王立産科婦人科学会(RCOG)といった世界の主要な医学団体は、不妊手術のカウンセリングは単発のイベントではなく、プロセスであるべきだと強調しています。このプロセスは、出生前ケアの早い段階で開始し、強制されることなく、女性が熟慮の末に決断を下すための十分な時間を与えるべきです62533。手術台に上がる直前に同意書に署名することは、この基準を満たしません。
「満たされないニーズ」の問題:注目すべき事実に、出産後の不妊手術を希望しながらも、最終的に手技を受けられない女性がかなりの数いるということがあります。原因は、手術室の不足、保険の問題、または同意書の未完了といった制度上の障壁であることが多いです21343536。これは、妊娠中から早期にロジスティクスや書類手続きの問題に取り組むことの重要性を強調しています。
質の高いカウンセリングの内容:徹底的な話し合いには、以下の要素が含まれなければなりません25。
- 手技の永続性と不可逆性。
- 各特定方法の失敗率。
- 方法が失敗した場合の異所性妊娠のリスク。
- 出産直後に手技を行った場合の後悔のリスクが高いこと。
- 特に持続性可逆的避妊法(LARC)を含む、すべての代替避妊法に関する包括的な評価。
4.2. 可逆的な代替選択肢の包括的概観
医療技術の進歩は、永続的でない効果の高い多くの避妊選択肢をもたらしました。その中で、持続性可逆的避妊法(Long-Acting Reversible Contraception – LARC)は、検討すべき最も重要な代替選択肢です。
LARCの方法:
- 子宮内器具(IUD):一般に「避妊リング」として知られています。主に2つのタイプがあります。
- ホルモン付加IUD(例:ミレーナ、カイルナ):子宮内で少量のプロゲスチンホルモンを放出し、子宮頸管粘液を濃くし、子宮内膜を薄くする作用があります。5年から8年間使用可能です。
- 銅付加IUD(例:パラガード):ホルモンを含まず、精子にとって好ましくない環境を作り出すことで機能します。最大10年から12年間使用可能です。
- 避妊インプラント(例:ネクスプラノン):腕の皮下に埋め込まれる小さく柔軟な棒で、プロゲスチンホルモンを放出し、3年から5年間効果が持続します。
優れた有効性:LARC法は99%以上の避妊効果を持ち、不妊手術と同等の効果があります16。最も重要かつ根本的な違いは、完全に可逆的であることです。器具を取り外せば、女性の生殖能力は正常に戻ります。
出産直後の挿入:IUDの大きな利点の一つは、出産直後(胎盤娩出直後)に挿入できることで、最初から高く持続的な避妊効果をもたらします5。
LARC技術の台頭は、不妊手術の伝統的な役割に根本的な挑戦を突きつけました。以前は、女性が「一度きりで忘れられる」最高効率の避妊法を望むなら、不妊手術が第一の選択肢でした23。今日、LARCはその状況を完全に変えました。女性は、生活環境や希望が変わった場合に除去できる方法で、同様の「使用者に依存しない」避妊の安全性を得ることができます。これは、不妊手術がもはや最も効果的な避妊法を求める女性にとって唯一の答えではないことを意味します。不妊手術について説明するカウンセリングで、LARC法に同等の注意と配慮を払わないものは、不完全であり、現代の医の倫理基準に適合しない可能性があります16。これは、選択肢を検討している女性にとって極めて重要な情報です。
その他の方法:全体像を把握するため、コンドーム(性感染症予防に重要)、経口避妊薬、避妊パッチ、避妊注射など、他の選択肢も存在することを認識しておく必要があります23。
日本の費用背景:費用も現実的な要素です。例えば、日本のあるクリニックでは、帝王切開と同時に行う不妊手術の費用は約47,850円です37。この数字は、他の方法の長期的な費用と比較するための参考になります。
結論:個人的な決断:医師との対話のためのフレームワーク
帝王切開時に不妊手術を受けるべきかどうかの決断は、女性が自身の身体と未来について下すことができる最も深く個人的な決断の一つです。すべての人にとって「正しい」あるいは「間違った」答えというものはありません。本報告書の最終的な目的は、特定の勧告をすることではなく、あなたが賢明な決断、つまり将来後悔や不安を感じるのではなく、自信と平穏を感じられる決断を下すために必要な知識、背景、ツールを提供することです。
このプロセスには、一連の複雑なトレードオフを検討することが含まれます。
- 利便性 vs 決断の質:帝王切開時に「ついでに」不妊手術を行うことの容易さと、ストレス下で永続的な決断を下すことによる後悔のリスクの増加。
- がん予防 vs 外科的リスク:卵管切除術による卵巣がんリスク低減という長期的利益と、術中合併症のわずかな増加。
- 永続性 vs 柔軟性:不妊手術の絶対的な確実性と、LARC法の同等の効果および回復可能性。
パートナーや医師とのこの重要な対話を進めるために、以下に自己省察および医師への質問のためのフレームワークを提示します。これはチェックリストではなく、深い対話の出発点です。
自己省察のための質問:
- 1から10の尺度で、将来いかなる状況下でもこれ以上子供を望まないという確信度はどのくらいですか?
- 今後5年、10年、15年で人生の大きな変化(例:新しいパートナー、経済状況の大きな変動、子供を失うこと)がこの決断にどう影響するか、本当に考えましたか?
- 自分の年齢に基づくと、統計的な後悔のリスクはどのくらいですか?そのリスクレベルに納得できますか?
- 今、これを検討している主な理由は何ですか?単に利便性のためですか、それとも代替選択肢を深く検討しましたか?
医師に尋ねるべき質問:
- 私の場合、先生はどの方法(卵管結紮術または卵管切除術)を推奨しますか、そしてその理由は何ですか?私個人にとっての具体的なリスクと利益を説明していただけますか?
- 先生が使用する特定の方法の失敗率はどのくらいですか?失敗した場合の異所性妊娠のリスクは何ですか?
- 子宮内器具(IUD)や避妊インプラントのようなLARC法について詳しく話し合うことはできますか?それらの効果は不妊手術と比較してどうですか?出産直後にIUDを挿入することは可能ですか?
- 先生の経験上、この手技を受けた後、女性が最も満足すること、そして最も後悔することは何ですか?
最終的に、目標は客観的に「最良の」方法を選ぶことではなく、あなたにとって最良の方法を見つけることです。十分な理解、正直な自己省察、そして開かれた対話に基づいて下された決断が、今後長年にわたるあなたの健康と幸福のための最も確固たる基盤となるでしょう。
よくある質問
帝王切開時の不妊手術(卵管切除・結紮)は痛みを伴いますか?
手術自体は帝王切開の麻酔(通常は脊椎麻酔や硬膜外麻酔)が効いている間に行われるため、手術中に痛みを感じることはありません。術後は、帝王切開自体の創部の痛みがありますが、不妊手術がその痛みを大幅に増加させることは通常ありません。術後の痛みは、処方される鎮痛薬で管理されます。
卵管切除や結紮をすると、ホルモンバランスが崩れたり、月経がおかしくなったり、更年期が早まったりしますか?
いいえ、影響しません。卵管切除術も卵管結紮術も、卵子と精子の通り道である卵管にのみ作用します。ホルモンを産生する卵巣には触れません。したがって、これらの手術がホルモンバランスを崩したり、月経周期を変化させたり、更年期を早めたりすることはありません8。
将来、もし後悔してもう一度子供が欲しくなったらどうなりますか?
これがこの決断の最も重大な側面です。不妊手術は「永久的」なものとして考えられるべきです。卵管を結紮した場合、顕微鏡下で卵管を再吻合する手術(卵管鏡下卵管形成術)がありますが、成功率は100%ではなく、保険適用外で高額です。また、手術後に異所性妊娠のリスクが高まります。卵管を切除した場合は、再建は不可能です。その場合、子供を授かる唯一の方法は体外受精(IVF)となります。したがって、少しでも将来子供が欲しくなる可能性が残っている場合は、IUDなどの持続性可逆的避妊法(LARC)を強く検討することが推奨されます。
卵管切除術は卵管結紮術よりどのくらい危険性が高いのですか?
大規模な研究によると、卵管切除術は卵管結紮術に比べて、出血や輸血などの合併症のリスクが統計的にわずかに高いことが示されています(例えば、出血リスクは3.1%から3.8%に増加)18。この差は絶対値としては小さいですが、無視できるものではありません。一方で、卵管切除術には将来の卵巣がんのリスクを大幅に低減するという大きな長期的利益があります。この「短期的なわずかなリスク増」と「長期的な大きな利益」を天秤にかけることが、カウンセリングの重要なポイントとなります。
IUD(避妊リング)などのLARCは、本当に不妊手術と同じくらい効果がありますか?
はい。LARC(IUDや皮下インプラント)は、実際の使用環境において99%以上の避妊効果があり、不妊手術に匹敵します16。これらの方法の大きな利点は、使用者が毎日何かをしたり、性交のたびに使用したりする必要がない「使用者への依存度が低い」点です。そして最大の違いは、もし望むならいつでも取り外して妊娠可能な状態に戻れる「可逆性」です。このため、多くの国際的なガイドラインでは、永続的な決断を下す前にLARCを重要な選択肢として検討することを強く推奨しています。
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