【科学的根拠に基づく】喉の奥の「臭い玉(膿栓)」、正体は扁桃腺結石。原因と安全な取り方、治療法を専門医が徹底解説
耳鼻咽喉科疾患

【科学的根拠に基づく】喉の奥の「臭い玉(膿栓)」、正体は扁桃腺結石。原因と安全な取り方、治療法を専門医が徹底解説

喉の奥に、白や黄色っぽい米粒のような塊ができて、不快な臭いを放つ「臭い玉」。多くの方がこの経験に悩み、不安を感じています。この「臭い玉」は俗称であり、医学的には「膿栓(のうせん)」、より正確には「扁桃腺結石(へんとうせんけっせき)」と呼ばれます。これは単なる食べかすやゴミの塊ではありません。実は、生きた細菌が複雑な構造を作って定着した「生物膜(バイオフィルム)」なのです1。本記事では、JHO(JAPANESEHEALTH.ORG)編集委員会が、国内外の最新の研究報告や臨床ガイドラインに基づき、扁桃腺結石の科学的な正体、根本的な原因、ご自身でできる安全な対処法から、医療機関での専門的な治療法、さらには根治を目指す手術に至るまで、あらゆる情報を包括的かつ詳細に解説します。この記事を読めば、扁桃腺結石に関するあなたの疑問や不安が解消され、適切な次の一歩を踏み出すための確かな知識が得られるでしょう。


本記事の科学的根拠

本記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下の一覧には、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性が含まれています。

  • 複数の国際的研究論文およびレビュー(PMC, PubMed掲載): 本記事における扁桃腺結石の生物膜(バイオフィルム)としての性質、化学的・微生物学的構成、症状、および治療階層に関する指導は、これらの科学的文献に基づいています127
  • 日本の科学研究費助成事業(KAKEN)データベース: 扁桃腺結石に含まれる細菌種(特にプレボテラ属)と揮発性硫黄化合物(VSC)の産生、および口臭との直接的な関連性に関する記述は、日本の研究チームによる研究成果に基づいています5
  • 米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNSF)の臨床実践ガイドライン: 扁桃摘出術の適応に関する国際的な基準、特に反復性扁桃炎に対する「パラダイス基準」についての記述は、同学会のガイドラインに基づいています6
  • 日本の臨床現場からの報告および厚生労働省の統計データ: 日本国内における扁桃腺結石の有病率(CT画像診断による)、一般的な治療選択肢、および扁桃炎の罹患状況に関する記述は、日本の臨床報告や公的統計に基づいています132021

要点まとめ

  • 扁桃腺結石(臭い玉・膿栓)の正体は、食べかすなどではなく、細菌が作る「生物膜(バイオフィルム)」という生きた塊であり、これが強烈な口臭の主な原因です15
  • 主な原因は、扁桃の構造的な特徴(扁桃陰窩の深さ)や、反復する扁桃炎、口腔内の衛生状態などが挙げられます24
  • 自宅で安全に除去する方法は、うがいや咳払い、慎重な綿棒の使用などがありますが、無理な除去は扁桃を傷つける危険性があるため厳禁です412
  • 症状が重い場合や頻繁に再発する場合は、耳鼻咽喉科での吸引や洗浄、レーザー治療、そして根治的な治療法である扁桃摘出術(手術)が選択肢となります3254
  • 扁桃腺結石そのものが癌化することはありませんが、診断の際には他の疾患との鑑別が重要です2

扁桃腺結石(膿栓・臭い玉)とは?- ただのゴミではない「生きた細菌の塊」

多くの方が「臭い玉」や「膿栓」として認識しているものは、医学的には扁桃腺結石と呼ばれます。これは、喉の両側にある免疫器官「扁桃(口蓋扁桃)」の表面にある「扁桃陰窩(へんとういんか)」という小さな穴や窪みに形成されます2。扁桃は、外部からの病原体の侵入を防ぐ第一線の防衛基地のような役割を担っています34。この扁桃陰窩に、剥がれ落ちた細胞の死骸、食べ物の断片、そして様々な細菌が蓄積し、時間とともに石灰化することで結石となります1

しかし、科学的に最も重要な概念は、扁桃腺結石が単なる無機質な石ではなく、「生物膜(バイオフィルム)」であるという点です1。生物膜とは、細菌が特定の表面に付着し、自らが分泌する粘液状の物質(細胞外基質)で覆われた、高度に組織化された共同体のことです。これを「細菌の都市」と考えると理解しやすいかもしれません。共焦点レーザー顕微鏡による観察では、外層には酸素を好む好気性菌、中間層には硝酸塩を還元する菌、そして中心部の核には活動していない嫌気性菌が存在するという、複雑な階層構造が明らかになっています1。日本の研究チームも、電子顕微鏡を用いてこの構造を確認しており、表面には球菌、核にはらせん菌や桿菌が存在することを報告し、この好気性菌と嫌気性菌の層状構造を裏付けています5

この生物膜構造こそが、扁桃腺結石が持つ厄介な性質、特に強烈な口臭の根本原因です。生物膜の中心部に潜む嫌気性菌は、タンパク質を分解する過程で、「揮発性硫黄化合物(VSC)」という物質を産生します1。これが、「腐った卵のような」と表現される特有の悪臭の正体です。生物膜の粘液状のバリアは、内部の嫌気性菌を酸素や抗菌薬から守る盾の役割を果たすため、口臭は持続し、単純なうがい薬や抗生物質の内服だけでは根本的な解決が難しいのです2。効果的な治療には、この生物膜を物理的に破壊または除去することが不可欠となります。

化学的には、結石の「石」の部分は、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)といったカルシウム塩が主成分です1。その他、マグネシウム、リン、アンモニアなども含まれています。微生物学的には、グラム染色によりグラム陽性球菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌が混在する多様な生態系であることが示されています1。特筆すべきは、ある日本の研究で、調査対象者全員の膿栓からプレボテラ属の細菌が同定され、全ての膿栓が悪臭の原因となる揮発性硫黄化合物を産生する能力を持つ細菌を含んでいたことが確認されたことです5

なぜ扁桃腺結石ができるのか?主な原因とリスク要因

扁桃腺結石が形成される背景には、いくつかの原因と危険因子が関与しています。これらを理解することは、予防と対策を考える上で非常に重要です。

主な原因と形成プロセス

扁桃腺結石の形成は、前述の通り、扁桃陰窩に様々なものが蓄積することから始まります。このプロセスは、主に以下の要素によって促進されます。

  • 扁桃の解剖学的構造: 扁桃陰窩が生まれつき大きい、または深い人は、食べかすや細菌などの異物が溜まりやすく、結石が形成される物理的な土壌となりやすいです4
  • 反復性扁桃炎: 頻繁に扁桃炎を繰り返すと、炎症によって扁桃組織に線維化が生じ、瘢痕組織が形成されます。これにより陰窩がより複雑で深くなり、異物がさらに排出されにくくなるという悪循環に陥ります2
  • 口腔内の細菌叢: 口腔内には多種多様な細菌が存在します。不十分な口腔衛生は、結石の核となる細菌の量を増やし、生物膜の形成を促進します4
  • 唾液の質の変化: 脱水や喫煙などは、唾液の分泌量を減らしたり、その性状を変化させたりする可能性があります。唾液には自浄作用があるため、その機能が低下すると結石ができやすくなります4

危険因子(リスクファクター)

以下の条件に当てはまる人は、扁桃腺結石ができやすいと考えられています。

  • 年齢: 小児よりも思春期以降の若年成人でより一般的に見られます1
  • 口腔衛生状態: 歯磨きやデンタルフロスの使用が不十分な場合、口内の細菌量が増加し、結石形成の危険性が高まります4
  • 喫煙習慣: 喫煙は口腔内の環境を悪化させる一因です4

日本における疫学データ

扁桃腺結石は一般的に稀な疾患と考えられがちですが、実際には小さな結石は臨床現場でよく見られる所見です16。ある日本の研究では、CT画像を用いて調査したところ、舌扁桃(舌の付け根にある扁桃組織)に結石が見られたのは4.8%で、特に40歳以上の年齢層でその割合が高いことが報告されています20。これは、日本国内の具体的な有病率を示す貴重なデータです。また、厚生労働省の患者調査によれば、急性咽頭炎や急性扁桃炎は、特に小児において外来受診の主要な理由の一つとなっています21。これは直接的に扁桃腺結石のデータではありませんが、その根本的な危険因子である扁桃炎が日本国民にとって非常に身近な疾患であることを示唆しています。

これって扁桃腺結石?主な症状セルフチェック

小さな扁桃腺結石は、何の症状も引き起こさないことが多く、偶然発見されることも少なくありません7。しかし、結石が大きくなったり、数が増えたりすると、様々な不快な症状が現れることがあります。以下に挙げる症状に心当たりがないか、確認してみましょう。

  • 口臭(こうしゅう): 最も一般的で、患者さんにとって最も悩ましい症状です2。研究によれば、口臭を訴える人の75%に扁桃腺結石が見られたのに対し、正常な呼吸の人ではわずか6%であったという強い相関関係が示されています3。これは、前述の通り、細菌が産生する揮発性硫黄化合物(VSC)が直接的な原因です。
  • 喉の違和感・異物感: 喉の奥に何かが詰まっているような、引っかかっているような感覚です1
  • 喉の痛み(咽頭痛)・嚥下痛: 特に結石が大きい場合に、喉の痛みや食べ物を飲み込む際の痛み(嚥下痛)を感じることがあります2
  • 目に見える白い塊: 口を大きく開けて鏡を見ると、喉の奥の扁桃に白や黄色っぽい米粒大の塊が見えることがあります3
  • その他の症状: 咳、耳の痛み(関連痛)、口の中に不快な味がする、といった症状が現れることもあります3

これらの症状、特に持続的な口臭や喉の違和感がある場合は、扁桃腺結石の存在を疑う一つのきっかけとなります。

自宅でできる扁桃腺結石の安全な取り方と予防法

扁桃腺結石を発見した際、多くの方がまず考えるのが「自分で取れないか」ということでしょう。ここでは、自宅で安全に行える対処法と、何よりも重要な予防法について解説します。

予防が第一:口腔ケアと生活習慣

扁桃腺結石の管理における第一の防御線は、良好な口腔衛生と生活習慣の維持です16。新たな結石の形成を防ぎ、既存のものを悪化させないために、以下の点を心がけましょう。

  • 徹底した口腔清掃: 毎日の丁寧な歯磨きはもちろんのこと、舌の表面も舌ブラシなどで清掃し、細菌の温床となる舌苔(ぜったい)を取り除くことが重要です。また、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて、歯と歯の間の細菌量を減らすことも効果的です4
  • うがいの習慣: 日本では特に予防策として推奨される「うがい」は、非常に有効です12。食後に水やぬるま湯で強くうがいをすることで、扁桃陰窩に入り込んだ食べかすを洗い流し、清潔に保つ助けになります。温かい食塩水でのうがいは、小さな結石を剥がれやすくする効果も期待できます3
  • 十分な水分補給: 体内の水分が不足すると唾液の分泌が減り、口腔内の自浄作用が低下します。こまめに水分を摂取し、口の中が乾かないようにしましょう4
  • 禁煙: 喫煙は口腔内の環境を悪化させるため、避けるべきです4

やさしく除去する方法

目に見える範囲にあり、取れかかっている小さな結石については、以下の方法を試すことができます。ただし、絶対に無理はせず、優しく行うことが大原則です。

  • 咳払いやうがい: 強い咳払いや、前述のうがいによって、自然にポロっと取れることがあります。これが最も安全な方法です。
  • 綿棒の使用: 清潔な綿棒で、結石の周囲を「優しく」押すことで、結石が陰窩から出てくることがあります4決して、結石そのものを直接つついたり、強くこすったりしないでください。扁桃の粘膜は非常にデリケートであり、傷つけると出血や感染の原因となります12
  • 口腔洗浄器(ウォーターピックなど)の使用: 低い水圧に設定した口腔洗浄器の水流を当てることで、結石を洗い流せる場合があります4。ただし、水圧が強すぎると粘膜を傷つける危険性があるため、使用には細心の注意が必要です。
健康に関する注意事項
爪楊枝、ピンセット、指など、鋭利なものや不潔なもので扁桃腺結石を取ろうとすることは絶対におやめください。扁桃組織を深く傷つけ、重大な出血や感染症を引き起こす可能性があります。不安な場合や、自分で安全に取れない場合は、必ず専門医に相談してください。

病院での治療が必要なケースとは?耳鼻咽喉科の専門的な選択肢

自宅でのケアで改善しない場合や、症状が重く生活の質に影響を与えている場合は、専門家である耳鼻咽喉科医の診察を受けることが推奨されます17。特に、以下のようなケースでは、医療機関での治療を検討すべきです。

  • 自宅でのケアを続けても、結石が頻繁に再発する。
  • 口臭や喉の違和感が強く、日常生活や社会生活に支障が出ている。
  • 結石が大きく、痛みや嚥下困難を伴う。

耳鼻咽喉科では、以下のような専門的な処置や治療が行われます。

専門医による処置(保険適用)

日本の多くの耳鼻咽喉科クリニックでは、保険診療の範囲内で以下の処置が標準的に行われています。ただし、これらは対症療法であり、結石が再発する可能性があるため、定期的な通院が必要になることがあります13

  • 吸引・掻爬(きゅういん・そうは): 専用の吸引器具や、丸みを帯びた器具(鈍匙)を用いて、扁桃陰窩に溜まった結石や膿を安全に除去します3
  • 洗浄: 生理食塩水などを用いて扁桃陰窩を洗浄し、細かい異物や細菌を洗い流します1

侵襲を抑えた治療法

レーザー治療(レーザークリプトリシス): これは、レーザーを用いて扁桃陰窩を蒸散させ、浅くすることで、異物が溜まりにくくする治療法です25。再発を減らす効果が期待できますが、この治療法については専門家の間でも意見が分かれています。米国のクリーブランド鼻・副鼻腔・睡眠センターのような施設では積極的に行われている一方で28、日本の慶友銀座クリニックなど一部の施設では、レーザーによる瘢痕形成が将来的な扁桃摘出術を困難にする可能性があるとして、推奨しない立場を取っています27。したがって、レーザー治療は単純でリスクのない選択肢ではなく、その長期的な利点と欠点について、担当の耳鼻咽喉科医と十分に話し合う必要があります。

治療法の比較

患者さんが自身の状況に最も適した選択をするために、各治療法の特徴をまとめた以下の表を参考にしてください。これは、複数の情報源から得られたデータを、利用者の視点で整理したものです4

表1: 扁桃腺結石の治療法比較
治療法 実施場所 侵襲度 費用/保険 長所・短所
うがい 自宅 自己負担 長所: 安全、容易に実施可能。
短所: 小さく、取れかかった結石にしか効果がない。
綿棒での除去 自宅 自己負担 長所: 目に見える結石に効果的な場合がある。
短所: 慎重に行わないと扁桃を傷つける危険性がある。
専門医による吸引・洗浄 耳鼻咽喉科 保険適用 長所: 専門家による安全で効果的な除去。
短所: 再発の可能性があり、複数回の通院が必要な場合がある。
レーザー治療 耳鼻咽喉科 自費診療が多い 長所: 再発を減らす可能性がある。
短所: 治療法に議論があり、瘢痕のリスク、高額な費用。
扁桃摘出術(手術) 病院 保険適用 長所: 根治的で永続的な解決策。
短所: 外科手術であり、リスクと回復期間を要する。

最終手段としての扁桃摘出術(手術)

扁桃腺結石の再発を永続的に防ぐ唯一の根治的な治療法は、扁桃そのものを外科的に切除する「扁桃摘出術」です4。小さな結石が原因で手術が必要になることは稀ですが16、結石が非常に大きい、治療に抵抗性である、または口臭や慢性的な不快感といった症状が重く、生活の質(QOL)を著しく損なっている場合には、手術が検討されます7

扁桃腺結石のみを理由とした手術には、反復性扁桃炎に対する「パラダイス基準」のような明確な頻度に基づく厳格なガイドラインは存在しません6。したがって、手術を受けるかどうかの決定は、患者さん自身の症状の重さや、それが日常生活に与える影響の大きさに基づく、より主観的なものとなります17。手術後は、数日から2週間程度の喉の痛みや、食事制限、安静期間が必要となります29

手術適応の考え方

患者さんが手術について検討する際、しばしばその基準について混乱が生じます。以下の表は、国際的なガイドラインと日本国内での一般的な判断基準を比較し、意思決定の助けとなるように作成されました。

表2: 扁桃摘出術の適応基準 – 国際ガイドラインと日本の実情
手術の主な理由 国際的なガイドラインの目安(例: AAO-HNS) 日本での一般的な判断基準
反復性扁桃炎 パラダイス基準:過去1年で7回以上、過去2年で各年5回以上、過去3年で各年3回以上の扁桃炎エピソード6 国際基準に準じることが多い(例: 年4回以上など)32
扁桃腺結石 頻度に基づく明確なガイドラインは存在しない。 生活の質(QOL)への影響に基づき判断。難治性の口臭、繰り返す不快感・異物感、心理社会的な影響などが考慮される17

よくある質問(FAQ)

Q1: 扁桃腺結石は人にうつりますか?

いいえ、うつりません。扁桃腺結石は感染症ではなく、個人の口腔内の環境と扁桃の構造に起因するものであり、他人に伝染することはありません17

Q2: 飲み込んでしまっても大丈夫ですか?

はい、一般的に無害です。扁桃腺結石は、細菌の死骸や食べかす、カルシウム塩などで構成されており、自然に剥がれて飲み込んでしまっても、胃酸で分解されるため健康上の問題を引き起こすことは通常ありません15

Q3: 放置すると癌(がん)になりますか?

いいえ、扁桃腺結石そのものが癌化するという直接的な関連性を示す証拠はありません。ただし、非常に稀ですが、扁桃の腫瘤(しゅりゅう)が悪性腫瘍である可能性もあるため、自己判断で「ただの結石だ」と決めつけず、しこりや痛みが続く場合は専門医による鑑別診断が重要です2

Q4: 扁桃腺を取るデメリットはありますか?

扁桃摘出術は一般的な手術ですが、全ての手術と同様にリスクは伴います。主なものには、術後の出血や強い痛みがあります。また、扁桃は歴史的に免疫機能の一部を担うと考えられてきましたが、成人において扁桃を摘出することが免疫力全体に重大な悪影響を与えるという明確な証拠はありません29。手術の利益と不利益については、必ず担当医と十分に話し合ってください。

結論

扁桃腺結石、すなわち「臭い玉」や「膿栓」は、単なる汚れではなく、細菌が形成する「生物膜」という複雑な構造物です。その正体を科学的に理解することは、なぜ強烈な口臭が発生するのか、そしてなぜ一部の治療法が他よりも効果的であるのかを解明する鍵となります。多くの小さな結石は無症状ですが、口臭や喉の違和感など、生活の質を損なう症状を引き起こすことも少なくありません。

対策の基本は、日々の丁寧な口腔ケアと、うがいなどの予防習慣です。自分で除去を試みる際は、扁桃を傷つけないよう最大限の注意を払う必要があります。症状が改善しない、または頻繁に再発して悩んでいる場合は、躊躇せずに耳鼻咽喉科の専門医に相談することが最善の道です。専門医は、安全な除去から、再発を抑えるための治療、そして根治を目指す扁桃摘出術まで、あなたの状況に応じた最適な選択肢を提示してくれます。

扁桃腺結石は、生命を脅かす病気ではありませんが、その不快な症状は心理的にも大きな負担となり得ます。正しい知識を持ち、必要に応じて専門家の助けを借りることで、この悩みから解放され、より快適な毎日を取り戻すことが可能です。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. Rio AC, Franchi-Teixeira AR, Nicola EM. Tonsillolith: A polymicrobial biofilm. J Postgrad Med. 2016;62(2):129. doi:10.4103/0022-3859.173202. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4529540/
  2. Al-Joburi AG, Al-Hadithy A, Al-Shaham A, Al-Khafaji K. A giant tonsillolith. Cureus. 2018;10(5):e2586. doi:10.7759/cureus.2586. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5938656/
  3. Tonsil stones. In: Wikipedia [Internet]. [place unknown]: Wikimedia Foundation; 2024 [cited 2025 Jun 26]. Available from: https://en.wikipedia.org/wiki/Tonsil_stones
  4. Tonsil Stones: Bad Breath, Causes, And Treatment. Colgate [Internet]. [place unknown]: Colgate-Palmolive Company; [date unknown] [cited 2025 Jun 26]. Available from: https://www.colgate.com/en-us/oral-health/bad-breath/tonsil-stones-and-bad-breath
  5. 口蓋扁桃の膿栓と口臭との関連についての生化学的ならびに微生物学的検討. KAKEN — 研究課題をさがす [インターネット]. [発行地不明]: 国立情報学研究所; [更新日不明] [引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791614
  6. American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery Foundation. AAO-HNSF Clinical Practice Guideline (Update): Tonsillectomy in Children. [Internet]. Alexandria (VA): AAO-HNSF; 2019 [cited 2025 Jun 26]. Available from: https://www.entnet.org/wp-content/uploads/2021/04/tonsillectomy_in_children_miniseminar_slides_updated_final_published_feb_2019.pptx
  7. Ram S, Sinner WN. Tonsillolith. Cureus. 2021;13(6):e15911. doi:10.7759/cureus.15911. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8218315/
  8. Tonsils. In: Cleveland Clinic [Internet]. Cleveland (OH): Cleveland Clinic; [updated 2022 Jul 25; cited 2025 Jun 26]. Available from: https://my.clevelandclinic.org/health/body/23459-tonsils
  9. 膿栓. In: Wikipedia [インターネット]. [発行地不明]: Wikimedia Foundation; [更新日不明] [引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%86%BF%E6%A0%93
  10. Pardell N, Valero J, Pardell E, Cobo R. Tonsillitis and Tonsilloliths: Diagnosis and Management. Am Fam Physician. 2023;107(1):62-70. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36689967/
  11. Takahashi K, Fuchihata H, Yamakawa K, Aoyagi M. Lingual tonsillolith: prevalence and imaging characteristics evaluated on 2244 pairs of panoramic radiographs and CT images. Dentomaxillofac Radiol. 2018;47(6):20170438. doi:10.1259/dmfr.20170438. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5965738/
  12. 厚生労働省. 性・年齢階級別にみた主な傷病. 平成14年患者調査の概況 [インターネット]. [発行地不明]: 厚生労働省; [更新日不明] [引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/02syoubyo/1-3.html
  13. 扁桃ににおいの出る白い粘液がたまり口臭が気になる. 笠井耳鼻咽喉科クリニック [インターネット]. [発行地不明]: 笠井耳鼻咽喉科クリニック; [更新日不明] [引用日: 2025年6月26日]. Available from: http://www.entkasai.justhpbs.jp/hentounousenshou.pdf
  14. Cleveland Clinic. Tonsil Stones. [Internet]. Cleveland (OH): Cleveland Clinic; [updated 2022 Mar 2; cited 2025 Jun 26]. Available from: https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21505-tonsil-stones
  15. 口臭の原因になる臭い玉(膿栓)とは?取り方や予防方法を解説!. wakanote [インターネット]. [発行地不明]: わかもと製薬; [更新日 2023年3月28日; 引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://wakamoto-pharm.co.jp/wakanote/oral-care/tonsil-stone/
  16. What are the treatment options for tonsil stones?. Dr.Oracle AI Medical Assistant [Internet]. [place unknown]: Dr.Oracle; [date unknown] [cited 2025 Jun 26]. Available from: https://www.droracle.ai/articles/159003/treatment-of-tonsil-stones
  17. Laser treatment for snoring, mild sleep apnea, tonsil stones and nasal obstruction. Cleveland Nasal Sinus & Sleep Center [Internet]. Cleveland (OH): Cleveland Nasal Sinus & Sleep Center; [date unknown] [cited 2025 Jun 26]. Available from: https://www.clevelandnasalsinus.com/snoring-sleep-apnea-laser-treatments.html
  18. 口臭外来. 慶友銀座クリニック [インターネット]. 東京: 慶友銀座クリニック; [更新日不明] [引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://www.ginzaclinic.com/s-mouse/
  19. Mayo Clinic. Tonsillectomy. [Internet]. Rochester (MN): Mayo Clinic; [updated 2023 Feb 21; cited 2025 Jun 26]. Available from: https://www.mayoclinic.org/tests-procedures/tonsillectomy/about/pac-20395141
  20. 竹野幸夫. 扁桃炎[私の治療]. 日本医事新報社 [インターネット]. 2023 [引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=17745
  21. 厚生労働省. 性・年齢階級別にみた主な傷病(複数回答). 平成14年患者調査の概況 [インターネット]. [発行地不明]: 厚生労働省; [更新日不明] [引用日: 2025年6月26日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/02syoubyo/1-3a.html
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ