手首の脱臼 | 知っておくべき原因と治療法
筋骨格系疾患

手首の脱臼 | 知っておくべき原因と治療法

はじめに

こんにちは、JHO編集部です。今日のテーマは、日常生活で意外に潜んでいる「手首の脱臼」についてです。スポーツや日常のちょっとした動作で手首を負傷した経験をお持ちの方は少なくないかもしれません。とりわけ手首の脱臼は、適切な知識がないまま放置されやすい怪我であり、そのままにしてしまうとさらなる深刻な合併症を引き起こす可能性があります。この記事では、手首の脱臼の原因、症状、応急処置、治療法、そして予防策を詳しく解説し、日常のちょっとした場面でも十分に起こりうるリスクを再認識していただくことを目的としています。手首が痛むのを我慢し続けたり、「大したことはない」と放置してしまったりすると、将来的に思わぬ問題に悩まされる場合があります。本記事を参考に、早めの対策と適切な治療を心がけてみてください。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

手首の脱臼に関する情報は、Hello Bacsiの記事を基に構成しました。この記事の執筆には、デイケアクリニック&スパの修士号を持つ医師 – 教員グエン・フー・ドゥック・ミンによる専門的な見解が参考として含まれています。ただし、本記事で提供する情報はあくまでも一般的な健康情報であり、個々の症状や状況に応じた医師の診断・治療を優先する必要があります。怪我や痛みが続く、または症状が悪化していると感じたら、速やかに医療機関に相談しましょう。

手首の脱臼とは?

手首の脱臼とは、手首を構成する骨が本来あるべき正しい位置からずれてしまった状態を指します。手首は前腕の骨(橈骨と尺骨)手の骨(手根骨)が連結しており、それらを支える靭帯や筋肉、腱によって複雑かつ柔軟な動きが可能となっています。しかし、激しい衝撃や不自然な負荷がかかると、橈骨と尺骨の接合部や手根骨同士の連結が狂い、脱臼が起こるのです。

脱臼の程度が重症の場合、周囲の筋肉や靭帯、腱が断裂したり、神経を損傷したりするリスクが高まります。これによって、強い炎症や慢性的な痛み、可動域の制限など、長期的なトラブルに発展することも珍しくありません。また、日常生活での何気ない動作が引き金となるケースもあるため、“スポーツ時だけ気をつければいい”というものでもない点が重要です。

手首は、手の動作全般に深く関わる部位です。普段から多用するため、その分、繰り返し負荷を受けやすい部位でもあります。脱臼に気づかず放置すると、後々になってさらに複雑な障害が現れる可能性もありますので、適切な理解と早期対応が求められます。

手首脱臼の症状

手首脱臼で最も特徴的な症状は、激しい痛みです。痛みは手首を動かすたびに増強することが多く、前腕まで広がる場合もあります。加えて、以下のような症状が見られるケースが一般的です。

  • 手首周辺の腫れと内出血
    • 手首の周囲に赤みや紫色の内出血が生じることがあり、見た目でも負傷の程度が明らかにわかります。腫れがひどい場合には、皮膚表面が緊張して熱感を伴うこともあります。
  • 手首の運動機能の制限や物を持つ力の不足
    • 痛みのために手首を思うように動かせなくなり、日常生活での簡単な動作(例:コップを持ち上げる、カバンを運ぶなど)でも強い負荷と痛みを感じます。
  • 神経圧迫による指先のしびれや感覚異常
    • 手首を走行する神経が圧迫されると、指先にしびれや感覚の鈍さが生じます。この症状は物をつかむ際など、繊細な感覚が必要な場面で特に気づきやすくなります。
  • 骨の変位による手首の変形
    • 骨が本来の位置からずれているため、手首の輪郭が変形して見えることがあります。変形は鏡や他者からの指摘で初めて気づく人もいれば、痛みや違和感をきっかけに自覚する人もいます。

なお、手首の脱臼と骨折は症状が似ているため、痛みや腫れのみで自己判断するのは危険です。骨折や軟部組織の損傷を合併している可能性もあるので、必ず医療機関で正確な診断を受けるようにしましょう。

手首脱臼の原因

手首脱臼の原因は多岐にわたりますが、ポイントは手首の関節や靭帯が不安定になったり、強い衝撃が加わったりしたときに発生しやすいということです。特に、以下の状況でリスクが高まります。

  • 転倒などで手首を不自然な形で地面についた場合
    • 例えば階段から足を踏み外して転倒し、咄嗟に手をついたときなどに起こりやすいです。手のひらで体重を受け止めると、手首に大きな負荷がかかり、関節がずれてしまうことがあります。
  • 先天的に靭帯が弱い人
    • 生まれつき関節が柔らかかったり、靭帯が伸びやすかったりする人は、ちょっとした動作でも手首が脱臼しやすい傾向があります。遺伝的要因やコラーゲン異常などが背景にあるケースもあります。
  • 手首を酷使するスポーツ(体操、テニス、バレーボールなど)
    • 手首を繰り返し酷使するスポーツでは、靭帯や筋肉への負荷が大きく、損傷が蓄積しやすくなります。無理なフォームやオーバートレーニングによって手首を傷めると、脱臼のリスクがさらに高まります。
  • 交通事故などの強い衝撃
    • 車や自転車、バイクでの事故は、手首に想定以上の力が加わる典型的なケースです。骨折や神経損傷を伴う重度の脱臼になる可能性もあるため、迅速な医療介入が必要です。
  • 過去に手首を負傷した経験がある人
    • 一度手首を負傷すると、関節や靭帯が完全に回復するまでに時間がかかることがあります。治癒が不十分なまま再び手首に負荷がかかると、弱い部分が再度外れる(再脱臼する)リスクが高まるのです。
  • 日常的な動作の繰り返しによる微細損傷
    • パソコン作業やスマートフォンの操作など、同じ動作を長時間繰り返すことで、手首の関節や靭帯に少しずつダメージが蓄積する場合があります。こうした微細損傷が積み重なると、ある日突然に脱臼を起こす可能性が高まります。

実際に、近年の研究ではパソコン作業などの反復動作が手首の関節に与えるストレスが想像以上に大きいことが示唆されています。そのため、仕事や趣味で長時間手を使う方は、普段から手首を動かす角度や負荷を意識することが重要とされています。

手首脱臼の応急処置

手首が不自然に曲がり、強い痛みや腫れがあると感じた場合には、迅速な応急処置が必要です。一般的に、次のような「R-I-C-E」と呼ばれる手順が役立ちます。

  1. REST(安静)
    • 手首を動かさず、可能な限り安静を保ちます。無理に骨を元の位置へ戻そうとするのは危険です。もし動かす必要がある場合は、三角巾やタオルなどを使って手首を固定し、負荷を最小限に抑えましょう。
  2. ICE(冷却)
    • 氷を柔らかい布で包み、痛む部分を20分程度冷やします。直接肌に氷を当てると凍傷のリスクがあるため、布やタオルを介して冷やしましょう。20分冷やしたら20分休む、といったサイクルで繰り返すと効果的です。
  3. COMPRESSED(圧迫)
    • 弾性包帯やサポーターなどを用いて、やさしく圧迫します。過度にきつく巻くと血行不良を引き起こす恐れがあるので、巻き加減には注意してください。圧迫によって腫れをある程度抑える効果が期待できます。
  4. ELEVATED(高挙)
    • 心臓より高い位置に手首を上げることで、患部に血液が滞留しにくくなり、腫れや炎症が抑えられます。座っているときはクッションの上に腕を置き、横になっているときは枕を活用するなどして手首を支えましょう。

応急処置を行っても変形が著しい、強い痛みが続く、内出血が拡大するなどの症状がある場合は、ただちに医療機関を受診することが大切です。自己流の処置で骨の位置を戻すのは大変危険であり、神経や血管を傷つけるリスクがあるため避けましょう。

手首脱臼の診断と治療

手首脱臼が疑われるとき、まず行われるのはレントゲン検査(X線撮影)です。骨折の有無や脱臼の程度を把握するために必須の検査といえます。必要に応じてMRI(磁気共鳴画像法)CT(コンピュータ断層撮影)などを追加し、靭帯や腱、軟骨、神経の状態を詳しく評価する場合もあります。

治療法としては、以下のようなアプローチがとられます。

  • 徒手整復(としゅせいふく)
    • 骨折がない場合は、一般的に徒手整復で骨を正しい位置に戻す施術が行われます。これは医師の経験や技術に依存するため、絶対に自分で試みてはいけません。整復時には痛みを抑えるために鎮痛剤や局所麻酔が使用されることがあります。
  • 物理療法(リハビリテーション含む)
    • 痛みを緩和し、関節可動域や筋力を回復するために行われるのが物理療法です。針灸やマッサージ、温熱療法、電気刺激などが用いられるケースもあり、患者の症状や状態に合わせてプログラムが組まれます。特に慢性的な痛みを伴う場合や神経症状が残っている場合に効果的です。
  • 固定(ギプス・シーネ)
    • 正しい位置に整復した後、ギプスやシーネで固定することで骨が安定し、治癒を促すことができます。固定期間は数週間から1か月以上に及ぶことが多く、この間は手首を動かせない不便さと向き合う必要があります。早期にリハビリを開始するかどうかは、医師の指示や治癒の進捗に左右されます。
  • リハビリテーション
    • 固定が外れた後、再び手首をスムーズに動かせるようになるには、ストレッチや軽い筋力トレーニングが欠かせません。専門の理学療法士の指導を受けながら、徐々に可動域を広げ、筋肉や靭帯を強化していきます。手首の柔軟性が十分に戻らないうちに無理をすると、再脱臼のリスクが高まるので注意が必要です。

最新の研究に基づく治療の傾向

2021年にKhorbiらが医学誌Injuryに発表した研究(doi:10.1016/j.injury.2020.12.053)によると、重度の手根骨脱臼(特に月状骨周囲脱臼)の患者においては適切なタイミングでの手術的整復と固定が合併症を減らし、長期的な機能回復に寄与する可能性が高いと報告されています。また同じく2021年に、Leung ND.らはThe Journal of Hand Surgery Global Online(doi:10.1016/j.jhsg.2021.01.002)にて、人口ベースの解析に基づき、初期段階での迅速な診断・治療が重要である点を強調しています。これらの報告は日本人患者にも当てはまりやすいと考えられ、特にスポーツ愛好家や日常的に手を酷使する職業の方は早めの診断・治療が極めて重要といえます。

再発予防と日常生活でのケア

手首脱臼の再発を防ぐためには、適切なサポートと予防策が欠かせません。とくにスポーツや重労働、長時間のパソコン作業など、手首を頻繁に使う方は以下の点に気を配りましょう。

  • サポーターやテーピングの活用
    • スポーツ時や負荷のかかる作業時には、あらかじめサポーターやテーピングを利用し、手首の可動域をある程度制限することが効果的です。これにより急激な外力が加わった際のダメージを軽減できます。
  • 手首の筋力トレーニング
    • リハビリ終了後も継続して軽い筋力トレーニングを行い、手首周辺の筋肉や靭帯を強化します。具体的には、手首をゆっくり曲げ伸ばしする運動や、軽いダンベル(もしくはペットボトル)を使った前腕の屈伸運動などが有用です。
  • 休憩とストレッチの習慣
    • 長時間の作業をする際は、定期的に休憩をとりましょう。その際に手首や前腕のストレッチを行い、筋肉や靭帯の緊張をほぐすことが大切です。休みなく作業を続けると微細な損傷が積み重なり、再発リスクが高まる可能性があります。
  • 適切な姿勢と動作
    • パソコン作業などでは、机や椅子の高さを調整し、手首を不自然な角度にしないよう配慮しましょう。テニスやゴルフなどのスポーツでも、誤ったフォームで行うと手首に余計な負荷がかかるため、専門家の指導を受けるのが望ましいです。

こうした日常的なケアを怠ると、たとえ一度は治った手首でも、少しのきっかけで再脱臼する恐れがあります。痛みが少しでもぶり返す場合や、違和感が続く場合は早めに医療機関を受診し、再評価してもらうことが重要です。

結論と提言

手首の脱臼は、日常生活で起こりうる身近な怪我でありながら、放置すると慢性痛や変形、可動域障害などの深刻な問題に発展するリスクをはらんでいます。重度の脱臼の場合は神経や血管へのダメージも懸念されるため、早期発見・早期対応が何より大切です。

  • 痛みや変形、腫れがある場合は自己判断せず医療機関へ
    • 「たぶん大丈夫」「そのうち治るはず」と放置するのは非常に危険です。X線検査やMRIなどの画像診断を受け、骨折や周囲組織の損傷の有無を正確に把握しましょう。
  • 適切な治療とリハビリで再発を予防
    • 専門医による徒手整復や、必要に応じた固定、リハビリテーションをしっかり行うことで、将来的な後遺症を最小限に抑えることが期待できます。再発のリスクを減らすためには、スポーツ時のサポーター活用や日常のストレッチ・筋力トレーニングを継続することが重要です。
  • スポーツや長時間作業時の予防策
    • テーピングやサポーターの使用、フォームの見直し、適度な休憩とストレッチなど、日常生活やスポーツシーンにおける予防策を意識しましょう。同じ動作を長時間続ける場合は小まめに休憩をはさみ、手首にかかる負担を分散させる工夫が大切です。
  • 痛みを我慢せず、異常を感じたら即受診
    • 痛みや腫れ、しびれなどが1日以上続くようであれば、ただちに医師に相談するのが望ましいです。初期治療が遅れるほど、完全回復までに時間がかかる可能性が高くなります。

結論として、手首の脱臼は「気をつけていれば避けられる」だけでなく、万一生じてしまっても「早めに適切な治療を受ければ回復できる」怪我です。健康な手首を守るために、普段からの注意と対策を怠らないようにしましょう。

なお、手首を保護する工夫として、荷物を持つときに左右の手でバランスよく支える、デスクワークの合間にこまめに手首のストレッチをするなども有効です。簡単な取り組みの積み重ねが、大きな怪我の予防につながります。

注意事項と免責

本記事の内容は一般的な医療・健康情報を提供するものであり、正式な医療アドバイスの代替とはなりません。個々の症状や体質、既往歴によって最適な治療法は異なるため、必ず医師や理学療法士などの専門家に相談し、適切な検査と診断を受けてください。痛みやしびれなどの症状が強い場合、または経過が思わしくないと感じた場合は、速やかに医療機関を受診し、指示に従いましょう。

参考文献

重要: 本記事は参考情報として提供しております。特定の症状や治療方針については、必ず医師や専門家にご相談ください。ここでの情報は個人の健康状態を保証するものではなく、万一のトラブルや再発を確実に防止するものでもありません。自分の体を守るために、早めの受診と適切なケアを心がけましょう。

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ