【科学的根拠に基づく】排卵が終わった7つの確実なサイン|基礎体温・おりものの変化からPMS様症状まで徹底解説
女性の健康

【科学的根拠に基づく】排卵が終わった7つの確実なサイン|基礎体温・おりものの変化からPMS様症状まで徹底解説

多くの女性が抱く「排卵は、もう終わったのでしょうか?」という疑問は、ご自身の体を理解し、ライフプランを考える上で非常に重要です。特に、妊娠を希望している方にとっては、妊娠可能性の高い期間が終了したことを確認するため、また、自然な家族計画を実践している方にとっては、妊娠の可能性が低い時期を知るために、この知識は不可欠です1。この問いに正確に答える鍵は、排卵後に訪れる「黄体期(おうたいき)」という期間を深く理解することにあります。排卵が終わると、女性の体は「黄体期」と呼ばれる新しい段階に入ります。この時期は、卵子が排出された後の卵胞が「黄体」という組織に変化し、そこから「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンが大量に分泌されるのが特徴です2。これから解説する「排卵が終わったサイン」のほとんどは、このプロゲステロンの分泌増加によって引き起こされる、心と体の一連の変化なのです。

この記事の科学的根拠

この記事は、万人のための正確な医療情報提供というJAPANESEHEALTH.ORGの理念に基づき、信頼性の高い国内外の医学論文、専門機関の公開情報、学会の診療ガイドラインを基に、産婦人科専門医の監修のもと作成されています。提示される情報は、個別の診断に代わるものではなく、ご自身の健康状態を理解するための一助となることを目的としています。

  • 基礎体温に関する記述: 米国国立生物工学情報センター(NCBI)発行の文献や厚生労働省の研究班が監修する情報に基づき、プロゲステロンが基礎体温を上昇させる生理学的機序と、その正確な測定法、解釈について解説しています34
  • おりものの変化に関する記述: クリーブランド・クリニックなどの専門医療機関が公開する情報に基づき、排卵前後のホルモン変動が子宮頸管粘液の質をいかに変化させるかを詳述しています56
  • 黄体機能不全(LPD)に関する解説: 日本産科婦人科学会の診療ガイドラインや、米国国立医学図書館(PubMed)に掲載されたレビュー論文を参照し、その定義、診断基準、および妊娠への影響について医学的知見を提供しています78
  • 月経前症候群(PMS)様症状: 月経周期に伴う精神的・身体的症状に関する研究論文に基づき、黄体期におけるホルモン変動が気分や体調に与える影響を説明しています9

要点まとめ

  • 排卵の終了を家庭で最も確実に知る方法は、基礎体温の持続的な上昇(高温期の開始)と、おりもの(子宮頸管粘液)の質の変化という2つの客観的サインを確認することです。
  • 基礎体温は排卵日を「予測」するものではなく、排卵が「完了したこと」を後から確認するための遡及的なツールです。上昇した体温が3日間以上続くことで、排卵があったと確定できます。
  • おりものは、排卵期の「透明でよく伸びる」状態から、排卵後は「白く濁って粘着性がある、または乾燥した」状態へと劇的に変化します。
  • 胸の張り、眠気、気分の変動、腹部の張りなどの症状は、プロゲステロンが増加する「黄体期」に入ったことを示す支持的なサインであり、月経前症候群(PMS)の症状とほぼ同義です。
  • 基礎体温の高温期が常に10日未満の場合(黄体機能不全の疑い)や、数周期にわたり排卵の兆候が見られない場合は、婦人科への相談が推奨されます。

【重要】排卵前(妊娠しやすい時期)と排卵後(黄体期)のサイン比較表

多くの女性が混乱しやすいのが、「この症状は排卵が近いサインなのか、それとも終わったサインなのか」という点です。この曖昧さを解消するために、排卵前(妊娠しやすい時期)と排卵後(黄体期)の体の変化を直接比較できる一覧表を作成しました。この表は、両期間の主要ホルモンの違いが、いかに正反対の身体的サインを生み出すかを明確に示しています。エストロゲンが優位な排卵前は体が妊娠に向けて「受け入れる」準備をするのに対し、プロゲステロンが優位な排卵後は妊娠を「維持する」ための状態に移行します10。この根本的な違いを理解することが、日々の体調変化を読み解く上で最も強力なツールとなります。

特徴 排卵前 (妊娠しやすい時期のサイン) 排卵後 (黄体期のサイン)
主要ホルモン エストロゲン プロゲステロン
基礎体温 低温期 高温期 ($0.3 \sim 0.5^\circ\text{C}$上昇)4
おりもの 量が増え、透明でよく伸びる (卵の白身状)10 量が減り、白く濁って粘着性がある、または乾燥6
子宮頸管 柔らかく、高く、開いている 硬く、低く、閉じている
気分・エネルギー 活発、社交的になる傾向 眠気、イライラ、気分の落ち込み11
胸の張り あまりない 張りや痛みを感じることがある2

排卵が終わったことを示す「2つの確定的サイン」

家庭で排卵の終了を最も確実に確認できる方法は、これから紹介する2つのサインを組み合わせて観察することです。これらは、ホルモンバランスの変化が直接的に体に現れる、客観的な指標と言えます。

確定的サイン①:基礎体温の持続的な上昇(高温期の開始)

なぜ体温が上がるのか?プロゲステロンの役割

基礎体温が上昇するメカニズムは、ホルモンの働きによって明確に説明できます。排卵が起こると、卵子を放出後の卵胞は黄体へと変化し、プロゲステロンの産生を開始します12。クリーブランド・クリニックの情報によると、このプロゲステロンが脳の視床下部にある体温調節中枢に作用し、体の設定体温をわずかに引き上げるのです3。その結果、基礎体温は通常よりも$0.3 \sim 0.5^\circ\text{C}$上昇し、この状態が次の月経まで続く「高温期」が始まります1。高温期は、黄体期と同義であり、その開始は排卵が完了したことを示す直接的な証拠です2

何を確認すべきか?「3日間の持続」が鍵

一度体温が上昇しただけでは、排卵があったと断定することはできません。風邪や寝不足など、他の要因でも体温は変動するからです。Natural Cyclesのような専門機関が強調するように、排卵を確定する上で最も重要なのは、上昇した体温が3日間以上連続して持続することを確認することです13。この持続的な上昇パターンが、一時的な変動ではなく、プロゲステロンによる安定したホルモン変化が起こったことを示唆するのです。

【最重要インサイト】BBTは「過去」を確定するツールであり、「未来」を予測するものではない

基礎体温(BBT)に関して最も一般的に見られる誤解は、その役割についてのものです。メイヨー・クリニックの解説にもあるように、基礎体温は、排卵日を「予測」するためのものではなく、排卵が「完了したこと」を後から「確認」するための遡及的な(retrospective)ツールであるという点を明確に理解する必要があります14
この点を理解するためには、ホルモンの分泌タイミングを考えることが重要です。体温を上昇させるプロゲステロンは、排卵が起こった後に形成される黄体から分泌されます1。したがって、体温の上昇が確認できるのは、必ず排卵が起こった後になります。さらに、「3日間の持続」を確認する頃には、排卵日からすでに数日が経過していることになります。これは、妊娠可能性が最も高い期間がすでに終了していることを意味します14。この事実は、妊娠を希望する方々にとって、タイミング法の戦略を立てる上で極めて重要です。基礎体温の記録は、その周期の性交渉のタイミングを決めるためというよりは、数ヶ月にわたって記録を続けることで自身の排卵パターンを把握し、次周期以降の予測精度を高めるためのものなのです。実際に、あるレビュー論文によれば、基礎体温だけで排卵日を正確に特定できる精度は約22%と低いという報告もあり、これは基礎体温が「位相を確認するツール」としての役割を裏付けています15

正確な測定法と注意点

信頼できるデータを得るためには、正しい方法で測定を続けることが不可欠です。以下のチェックリストを参考にしてください。

  • 専用の体温計を使用する: 小数点以下2桁まで測定できる**婦人体温計(基礎体温計)**を使用します1
  • 測定のタイミングと場所: 毎朝、目が覚めたらすぐに、起き上がったり、話したり、水分を摂ったりする前に、舌の下(舌下)で測定します1
  • 十分な睡眠: 正確な測定値のためには、毎晩少なくとも3〜4時間の連続した睡眠が必要です14
  • 変動要因を記録する: 体温に影響を与える可能性のある要因(病気、発熱、ストレス、アルコールの摂取、夜勤、旅行による時差など)があった場合は、体温と一緒に記録しておきましょう14

グラフの読み解き方:正常パターンと注意すべきサイン

数周期にわたり基礎体温を記録すると、ご自身の健康状態に関する貴重な情報が見えてきます。

  • 正常な黄体期: 高温期は通常10日から14日間続きます4
  • 黄体機能不全の可能性: 高温期が常に10日未満で終わる場合、黄体機能不全(LPD)が疑われます。これはプロゲステロンの分泌が不十分な状態で、着床を妨げる一因となるため、医師への相談が推奨されます16
  • 無排卵周期の可能性: グラフが低温期と高温期の二相に分かれず、全体的に低いまま、あるいはギザギザで不安定な状態が続く場合、その周期は排卵が起こっていない可能性があります4
  • 妊娠の可能性: 高温期が16日〜18日以上続いている場合は、妊娠している可能性が考えられます4

確定的サイン②:おりものの質的変化(非妊娠期への移行)

なぜおりものが変わるのか?エストロゲン減少とプロゲステロン増加の影響

おりもの(子宮頸管粘液)の変化もまた、ホルモンバランスを直接反映する信頼性の高いサインです。排卵前、卵胞から分泌されるエストロゲンのレベルがピークに達すると、おりものは精子が子宮内をスムーズに移動できるよう、量が多く、透明で、滑りやすく、よく伸びる状態(生卵の白身に例えられる)になります10。しかし、排卵が終わるとエストロゲンは急激に減少し、代わりに黄体から分泌されるプロゲステロンが優位になります。プロゲステロンは、おりものの性質を正反対に変える働きをします。具体的には、おりものの水分量を減らし、白く濁らせ、粘り気のあるクリーム状やのり状にするか、あるいは分泌量そのものを著しく減少させて乾燥させます2。この変化は、排卵後に子宮頸管を閉鎖し、精子や細菌などの侵入を防ぐ「粘液栓」を形成する役割を担っており、体が非妊娠期(または妊娠維持期)に移行したことを示す明確なサインです17

何を確認すべきか?「伸びる」から「伸びない・ベタつく」への変化

確認すべき最も重要なポイントは、おりものの「伸展性(伸び)」の劇的な変化です。排卵期の指でつまむと数センチ以上も伸びるおりものが18、排卵後はすぐにちぎれる、ベタベタする、あるいはポロポロとした状態に変わります17。この「伸びる」状態から「伸びない」状態への移行が、妊娠しやすい期間の終わりを告げるサインとなります。

観察のポイントと注意点

日々の観察を習慣にすることで、この変化を捉えやすくなります。

  • 観察方法: 清潔な指で膣の入り口付近を拭うか、排尿前にトイレットペーパーで拭き取って、その色や質感を確認します。粘り気は、親指と人差し指でつまんで伸ばしてみるとよくわかります19
  • 記録: 基礎体温表などに、「のり状」「クリーム状」「乾燥」など、自身の言葉で記録しておくと、周期ごとのパターンが見えやすくなります19
  • 注意すべき要因: 性的に興奮した際の分泌液、性交後の精液、クロミッドなどの排卵誘発剤、膣内の感染症などは、おりものの見た目を変える可能性があります19。また、月経直前に再びおりものが増えることがありますが、これを排卵期のおりものと混同しないように注意が必要です19

排卵後を裏付ける「5つの支持的サイン」(PMS様症状)

これから紹介する5つのサインは、それ自体で排卵の終了を断定するものではありませんが、体がプロゲステロン優位の黄体期に入ったことを示す有力な手がかりとなります。多くのメディアではこれらの症状を「排卵日の症状」として紹介することがありますが、生理学的にはこれは不正確です。これらの症状は、排卵直後から次の月経までの約2週間にわたる黄体期全体を通じて現れるのが一般的であり、月経前症候群(PMS)の症状とほぼ同義です2。これらのサインの出現は、「あなたは排卵後のフェーズにいます」という体からのメッセージと捉えるのが最も正確な解釈です。

支持的サイン③:胸の張りや痛み

排卵後、プロゲステロンは将来の妊娠に備えて乳腺組織を発達させるよう働きかけます2。この作用により、乳腺内の血流が増加し、乳房が張る、重く感じる、触れると痛いといった症状が現れることがあります。これは黄体期に非常によく見られる症状の一つです。

支持的サイン④:眠気、だるさ、気分の変動

黄体期に多くの女性が経験する強い眠気や気分の浮き沈みは、気のせいではなく、明確なホルモンの影響によるものです。

  • 眠気とだるさ: プロゲステロンには鎮静作用があります。特に、プロゲステロンが体内で分解されて生成される「アロプレグナノロン」という物質は、脳内のGABA受容体(リラックス効果をもたらす神経伝達物質の受容体)に作用し、強い眠気を引き起こします11。体が「休息モード」に入ったサインと考えることができます。
  • 気分の変動: 黄体期にはエストロゲンが減少し、プロゲステロンが増加するというダイナミックなホルモン変動が起こります。この変動が、気分の安定に関わるセロトニンやドーパミンといった脳内の神経伝達物質のバランスに影響を与え、イライラ、不安感、涙もろさ、気分の落ち込みなどを引き起こすことがあります9。これらはPMSや、より重篤な月経前不快気分障害(PMDD)の典型的な症状であり、黄体期に入ったことを強く示唆します2

支持的サイン⑤:腹部の張り(膨満感)や便秘

お腹周りの不快な症状も、プロゲステロンの仕業です。

  • 腹部の張り: プロゲステロンには、体内に水分や塩分を保持しやすくする作用があります。これにより、体がむくみやすくなり、お腹が張るような膨満感を感じることがあります2
  • 便秘: プロゲステロンは、平滑筋を弛緩させる(緩める)作用を持っています。この影響が腸にも及ぶと、腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなり、内容物の通過が遅くなるため、便秘になりやすくなります11

支持的サイン⑥:肌荒れやニキビ

黄体期、特に月経が近づくにつれてニキビができやすくなるのは、プロゲステロンの影響です。プロゲステロンは皮脂の分泌を促進する作用があるため、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビや吹き出物といった肌トラブルの原因となります4

支持的サイン⑦:その他(腰痛、軽い下腹部痛など)

排卵の瞬間に起こる鋭い「排卵痛」とは別に、排卵後1〜2日にわたって、鈍い下腹部痛や腰痛が続くことがあります。これは、排卵時に卵胞から排出された卵胞液や少量の血液が腹膜を軽く刺激することが原因と考えられています11。これらの症状も、排卵というイベントが完了したことを示唆するサインの一つです。

専門家による深掘り解説:あなたの体で何が起きているのか

体のサインを正しく読み解くことは、自身の健康状態を把握し、必要な場合は専門家の助けを求めるための第一歩です。ここでは、サインが通常と異なるパターンを示す場合に考えられることについて、医学的知見に基づき解説します。

「排卵後のサイン」が見られない場合:無排卵周期の可能性

もし1周期を通じて、基礎体温が上昇せず二相性を示さなかったり、おりものが排卵期特有の伸びる状態に変化しなかったりする場合、その周期は排卵が起こらなかった「無排卵周期」である可能性が考えられます4。健康な女性でも、ストレスや体調不良などによって、たまに無排卵周期が起こることは珍しくありません。しかし、これが数周期にわたって続く場合は、不妊の主要な原因の一つであり、日本産科婦人科学会の診療ガイドラインでも指摘されているように、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの背景疾患が隠れている可能性もあるため、婦人科での検査が推奨されます20

黄体機能不全(LPD)とは?妊娠を望むなら知っておきたいこと

「黄体機能不全(Luteal Phase Defect, LPD)」は、妊娠を考える上で非常に重要な概念です。これは、家庭で記録する基礎体温からその兆候を捉えることができます。黄体機能不全とは、排卵後に黄体が十分な量のプロゲステロンを産生できない状態を指します8。プロゲステロンは、受精卵が着床するために子宮内膜を厚く、柔らかく維持する役割を担っています21。そのため、プロゲステロンが不足すると、子宮内膜が不安定になり、受精卵がうまく着床できなかったり、着床しても維持できずにごく初期の流産(化学流産)に至ったりする原因となります8
臨床的には、黄体期の期間が12日未満であることや、黄体期中期の血中プロゲステロン値が$10 \text{ ng/mL}$未満であることが診断基準の一つとされています7。これを家庭での観察に置き換えると、基礎体温の高温期が常に10日未満で終わってしまうというパターンが、黄体機能不全を疑う最も重要なサインとなります16。もしご自身の基礎体温グラフでこのような傾向が繰り返し見られる場合は、専門医に相談し、適切な評価を受けることが重要です。

医師への相談を検討すべき症状

ほとんどの排卵後のサインは生理的なもので心配ありませんが、以下のような症状が見られる場合は、子宮内膜症や卵巣の疾患、感染症など、他の病気が隠れている可能性も考えられます。ご自身の体を守るため、早めに婦人科を受診することを強く推奨します。

  • 日常生活に支障をきたすほどの強い痛み: 排卵中または排卵後に、鎮痛剤を飲んでも治まらない、動けないほどの激しい下腹部痛や腰痛がある場合10
  • 異常な出血: 月経と同程度の量の出血がある、または少量の出血が3日以上だらだらと続く場合10
  • 異常なおりもの: おりものが黄色や緑色をしている、強い悪臭がある、カッテージチーズのようなポロポロした状態である、といった変化は感染症のサインです6
  • 基礎体温の明らかな異常: 基礎体温の高温期が常に10日未満である(黄体機能不全の疑い)16
  • 排卵の兆候が数周期ない: 基礎体温が二相性にならない状態が何ヶ月も続く(無排卵の疑い)4

よくある質問

Q1: 排卵後、おりものはどうなりますか?

A: 排卵が終わると、プロゲステロンの影響でおりものは量が減り、白く濁ってベタベタした質感になるか、ほとんど分泌されず乾燥した状態になります。これは、精子の侵入を防ぎ、子宮内を保護的な状態に保つための正常な変化です6

Q2: 高温期はいつから始まり、何日間続きますか?

A: 高温期は、排卵の翌日ごろから始まります。期間は通常10日〜14日間続きます。もし高温期が10日未満で終わる状態が続く場合は「黄体機能不全」の可能性があり、逆に16日以上続く場合は「妊娠」の可能性が考えられます4

Q3: 排卵後の症状と妊娠超初期症状の違いは?

A: 残念ながら、両者の症状は非常によく似ており、症状だけで区別することはほぼ不可能です。胸の張り、眠気、だるさ、気分の変動、便秘といった症状は、プロゲステロンの作用によるものであり、妊娠していてもしていなくても黄体期には起こり得ます12。唯一の客観的な違いは、妊娠が成立した場合、高温期が16日以上続き、予定日を過ぎても月経が来ないことです14

Q4: 排卵が終わったのに出血があります。大丈夫ですか?

A: 排卵後1〜2日以内に見られるごく少量のピンク色や茶色のおりもの(中間期出血)は、排卵に伴うホルモンバランスの急激な変化によって起こることがあり、多くの場合、心配は不要です10。しかし、出血量が月経並みに多い、鮮血が出る、3日以上続くといった場合は、他の原因も考えられるため、婦人科にご相談ください10

結論

排卵が終わったことを示すサインを理解することは、ご自身の体のリズムを知り、ライフプランを主体的に考えるための強力なツールとなります。最も信頼性の高いサインは、基礎体温の持続的な上昇と、おりものが「伸びる」状態から「伸びない・ベタつく」状態への質的な変化です。この2つの「確定的サイン」を捉えることが、排卵の終了を確認する上での基本となります。胸の張りや眠気、気分の落ち込みといった「支持的サイン」は、排卵の終了を直接証明するものではありませんが、体がプロゲステロン優位の「黄体期」に入ったことを教えてくれる重要な手がかりです。これらのサインと上手に付き合うことで、月経前の不調(PMS)にも備えることができます。最も大切なのは、これらのサインを1周期だけでなく、数ヶ月にわたって記録し、ご自身のユニークなパターンを把握することです。体の声に耳を傾け、変化を記録する習慣は、健康管理の質を大きく向上させます。そして、もし気になる症状や通常と異なるパターンが見られた場合は、決して一人で悩まず、産婦人科医という専門家とパートナーシップを築き、パーソナライズされたアドバイスを求めることを躊躇しないでください。

免責事項本記事は情報提供を目的としたものであり、専門的な医学的アドバイスを提供するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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