はじめに
肝臓がんの末期診断を受けた場合、多くの人々が大きな不安と絶望感に襲われるかもしれません。日本の健康情報を提供するウェブサイト「JHO」として、私たちはこの深刻な状況におかれている方々のために重要な情報をお伝えします。肝臓がんの末期とはどのような状態なのか、どのように対処すれば良いのか、治療法や予後について詳しく解説していきます。少しでも希望を持ち続け、多くの選択肢を知っていただくことが目的です。それでは、専門的かつわかりやすい情報を提供することで、少しでもお役に立てればと思います。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
肝臓がんに関するこの記事を執筆する際、我々は「キャンサー・リサーチUK(Cancer Research UK)」という信頼できる情報源からのデータを参照しました。これにより、記事の信頼性と正確性を確保しています。
また、臨床現場では個々の病状に応じた対応が最も重要になります。肝臓がんの治療は患者一人ひとりで状況が異なり、専門医による詳細な検査やカウンセリングが不可欠です。ここではあくまでも一般的な情報を整理していますので、最終的な治療方針は必ず担当医と相談してください。
肝臓がんの末期とは何ですか?
肝臓がんは、肝細胞の異常増殖によって始まるがんです。その中でも最も一般的なのが「肝細胞癌(HCC)」です。肝臓内のさまざまな部位に発生することがあるこのがんですが、末期という言葉に含まれる意味は深刻です。すなわち、強く再発する兆候や、周囲の組織や臓器、ならびにリンパ節への転移を指します。肝臓がんの末期、または第4ステージは、二つのサブステージに分けられます。
第IVa期
- がんの大きさに関係なく、複数の腫瘍を抱えている可能性があります。
- 腫瘍は、肝臓周囲の血管や臓器にも広がっている場合があります。
- 腫瘍は近隣のリンパ節に到達していますが、他の器官には広がっていません。
第IVb期
- 同様に、がんの大きさに関係なく、複数の腫瘍を抱える可能性があります。
- 腫瘍は、周囲の血管や臓器に浸潤しています。
- リンパ節の有無にかかわらず、肺や骨など他の体の部分に転移しています。
これらはいずれも非常に進行した状態であり、治療が難しくなると同時に、症状も多彩かつ重度になりやすいステージです。
末期の肝臓がんの症状
肝臓がんの初期症状は、しばしば曖昧で認識しにくいものですが、その進行に伴い症状が明確になることがあります。末期症状には、以下のようなものが含まれます。
- 右肋骨下や上腹部に腫瘍を触れることがある。
- 例:腫瘍が大きくなることで肝臓表面に触れる感覚があることが多い。
- 右上腹部または上腹部の痛み。
- 例:肝臓の腫れや周囲の組織の圧迫により持続的な痛みが生じる。
- 右肩の痛み。
- 例:横隔膜への刺激が肩の痛みとして感じられることがある。
- お腹の膨張(腹水)。
- 例:肝臓の機能低下による体液の溜まりが原因。
- 黄疸(肌や目の黄色み)。
- 例:ビリルビンの排出がうまくいかないことで、肌や目が黄色くなる。
- 原因不明の体重減少。
- 例:食欲不振や代謝の変化により体重が急激に減少することがある。
- 吐き気、嘔吐。
- 例:消化器官の圧迫やがんによる体の化学バランスの変化が原因。
- 食欲不振。
- 例:胃の圧迫感や食物に対する嫌悪感が生じることがある。
- 消化不良、少しの食事で満足感。
- 例:腹水のために胃が圧迫され、少量で満腹感を感じやすい。
- 極度の疲れ。
- 例:がんの進行によるエネルギー消耗と貧血が影響することが多い。
- 濃い色の尿。
- 例:ビリルビンが体内に蓄積し、尿が濃い黄色または茶色になる。
- 普通とは異なる肌の色。
- 例:かゆみや乾燥などの皮膚の変化も伴うことがある。
- 蜘蛛状静脈。
- 例:体表面にクモの巣状の毛細血管が見られることがある。
- 赤くなった手のひら。
- 例:肝機能不全によるホルモンバランスの乱れが原因。
これらの症状がすべての患者に当てはまるわけではありませんが、末期になるほど複数の症状が同時に現れることが多くなります。症状が深刻化したり、急に増悪したりした場合には、主治医に早めに相談することが極めて重要です。
治療方法
末期の肝臓がんは、手術による完全な治療が期待できない状態にあると考えられています。しかしながら、治療はがんの進行を抑制し、症状を緩和し、患者の生活の質を向上させることを目指す点で大きな意味があります。ここでは代表的な治療手段について解説します。
標的療法と免疫療法
標的療法(ターゲット療法)では、がん細胞内で特異的に働く分子や酵素を攻撃することで、がんを抑制します。免疫療法は免疫系を活性化し、がん細胞の攻撃を助けます。医師はこれらの治療法を単独または組み合わせて利用することがあります。以下のような薬剤が用いられます。
- アテゾリズマブとベバシズマブの併用
- 例:アテゾリズマブは免疫チェックポイント阻害剤であり、ベバシズマブは血管新生を阻害することでがんの成長を抑制します。
- 近年、この併用療法は進行肝細胞癌(HCC)の治療選択肢として注目されており、2020年に発表されたFinn RS.らの研究(New England Journal of Medicine, 382(20):1894-1905, doi:10.1056/NEJMoa1915745)では、ソラフェニブ単独治療よりも有意に生存率を改善する結果が示されています。
- レンバチニブ
- 例:多くの酵素を阻害し、がん細胞の成長と血管新生を抑える効果があります。
- ソラフェニブ
- 例:がんの増殖と血管形成を同時に抑制するマルチターゲット阻害剤です。
これらの薬が効果を示さなくなった場合は、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、またはラムシルマブが選択されることがあります。加えて、免疫療法薬としてペムブロリズマブやニボルマブとイピリムマブの組み合わせも効果を示すことがあります。実際、免疫チェックポイント阻害剤の登場により、患者の生存期間が延長する可能性があるという報告も蓄積されつつあり、Llovet JM.ら(Liver Cancer, 2021;10(6):466-493, doi:10.1159/000520021)では免疫療法を中心とした新たな治療戦略が大きく期待されると述べられています。
症状の管理
末期においては、痛みやその他の症状を和らげることが生活の質を支える大きな要因となります。たとえば、放射線療法は腫瘍の大きさを減少させることで痛みを軽減することが期待できます。実際に、放射線療法を活用して骨転移や脊椎周囲への浸潤を抑え、痛みをコントロールできる可能性があるという報告もあります。
痛みや吐き気などの症状は、患者によって発生タイミングや強度が異なるため、経験する症状について医師に正確に伝えることが大切です。痛みの強度や場所、その他の不快感を詳細に報告することで、医療者側は鎮痛薬の調整や支持療法を最適化できます。
補完代替療法への留意点
一部の患者は、補完代替療法(いわゆるサプリメントや漢方、鍼灸など)を検討する場合もあるかもしれません。これらは患者の心理的安定や生活の質向上に役立つ面がありますが、必ずしも西洋医学的治療の代替となるわけではありません。特にハーブ系のサプリメントなどは、肝臓への負荷を増大させることもあるため、主治医と十分相談のうえで導入の可否を判断することが重要です。
肝臓がん末期はどれくらい生存できるのでしょうか?
肝臓がん末期の予後は非常に個々の状況に左右されます。がんの種類、腫瘍の広がり、治療への反応、患者の健康状態などが影響します。一般的に、近隣の組織、臓器、またはリンパ節にまでがんが広がっている肝細胞癌(HCC)の場合、約12%の患者が診断から5年間生存しているという統計があります。さらに広範に広がった場合、生存率は約3%に低下します。
これらの数値はあくまで統計的な平均値であり、個々の症例では治療法や病態に応じて大きく変化します。近年は標的療法や免疫療法の進歩によって、延命効果が期待できる報告も増えつつあります。たとえばCheng AL.らの最新研究(Journal of Hepatology, 2022年刊行、doi:10.1016/j.jhep.2021.11.018)では、免疫チェックポイント阻害剤と従来の分子標的薬を組み合わせた治療で、従来の標準治療よりも長期生存の可能性が示唆されています。ただし、各治療の効果は個々人で異なるため、主治医との綿密な相談が重要です。
積極的な治療と前向きな姿勢で、自分自身が楽しめることを見つけ、限られた時間を最大限に活用することも大切です。たとえば、趣味を楽しんだり、大切な人々と時間を過ごしたりすることで、生活の質を向上させることができます。また、栄養管理や適度な運動、リラクゼーション法などを取り入れることで体調維持や心身の安定につながる場合もあります。
結論と提言
肝臓がん末期という厳しい状態において、可能性が限られていることに直面しつつも、希望を持ち続けることは非常に重要です。がんの進行度合いや患者の健康状態によって治療法は異なりますが、標的療法や免疫療法が選択肢として考えられます。生存期間の正確な予測は難しいものの、治療の選択肢を検討し、専門医と相談することで、患者さん自身が出来る限りの最善の選択を行うことが可能です。
さらに、日々を大切にし、精神的にも身体的にも自らをサポートしていくことが大切です。具体的には、瞑想やヨガなどのリラクゼーション法を取り入れたり、支援グループやカウンセリングを活用することで、精神的な負担を軽減することが期待できます。心理的なケアにより、前向きな姿勢を維持しやすくなるだけでなく、痛みや吐き気などの症状の感じ方にも好影響を与える可能性があります。
こうした取り組みは、単に生存率だけでなく“今をどう生きるか”という生活の質(QOL)を高めるうえでも欠かせません。
参考文献
- Stage 4. アクセス日: 12/06/2023
- Liver Cancer Stages. アクセス日: 12/06/2023
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- End-stage liver disease score and future liver remnant volume predict post-hepatectomy liver failure in hepatocellular carcinoma. アクセス日: 12/06/2023
- Finn RS.ら (2020). Atezolizumab plus bevacizumab in unresectable hepatocellular carcinoma. New England Journal of Medicine, 382(20):1894–1905. doi:10.1056/NEJMoa1915745
- Llovet JM.ら (2021). Broadening the horizons of liver cancer: The next 50 years. Liver Cancer, 10(6):466-493. doi:10.1159/000520021
- Cheng AL.ら (2022). Updated efficacy and safety of immunotherapy plus targeted therapy in advanced hepatocellular carcinoma. Journal of Hepatology. doi:10.1016/j.jhep.2021.11.018
注意: 本記事は一般的な情報を提供するものであり、医療行為の代替にはなりません。具体的な診断・治療については必ず医師にご相談ください。また、本記事に含まれる情報は執筆時点の知見をもとにしており、最新の研究やガイドラインによって変更される可能性があります。必ず定期的に最新情報を確認し、疑問点は専門家に尋ねるようにしてください。